説明

ガルバニ電池式センサ

【課題】センサの使用に伴って電極とリードとの電気的導通が不安定となることを防止することのできるガルバニ電池式センサを提供する。
【解決手段】ガルバニ電池式センサ100は、対極5は電解液収容部12内に配置され、作用極3と対極5との間には、電解液収容部12の開口部12aの少なくとも一部を閉じるようにケース本体1に支持される固定部材7であって、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによってケース本体1の支持部11bに対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、作用極用リード4は、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによって隔膜2及び作用極3の少なくとも一方と固定部材7との間で押圧されて固定される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニ電池式センサに関するものであり、より詳細には、電極の消耗に拘わらずに良好なセンサ出力を得ることのできるガルバニ電池式センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、室内、トンネル内、マンホール内、煙道内、或いは医療用機器内などにおける酸素濃度の監視や管理のために、小型、軽量、しかも比較的安価であるガルバニ電池式センサが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ガルバニ電池式ガスセンサは、定電位電解式ガスセンサのように外部より電圧を印加する代わりに、内部に消耗性の電極を有し、それ自体が電池として働くようになっている。従って、電源を必要としないため、例えば定電位電解式ガスセンサと比べて、より簡便な装置である。しかし、ガルバニ電池式ガスセンサでは、徐々に電極が消耗することは避けられない。
【0004】
例えば、ガルバニ電池式センサとして酸素センサを例として更に説明すると、ガルバニ電池式酸素センサは、ケース本体に、測定対象ガスである酸素を検出する作用極であるカソードと、対極であるアノードとが設けられている。カソード及びアノードは、隔膜としての多孔性のガス透過膜(ガス拡散膜)で外部と仕切られた空間である電解液収容部(電解槽)内に配置される。隔膜は、一般に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂系の撥水性(疎水性)多孔質膜から成る。隔膜を透過した酸素ガスは、電解液収容部内に収容された電解液に溶解してカソードに接触する。そして、この酸素は、カソードにおいて還元され、この時に酸素濃度に応じてカソードとアノードとの間に、その電気化学反応に応じて電流が流れる。カソードとアノードとの間に流れる電流は、各電極から引き出されたリードを介して外部に導かれ、両者を抵抗を介して接続するなどしてセンサの出力として取り出される。従って、この出力値を計測することによって、酸素ガスの濃度に換算することができる。
【0005】
ガルバニ電池式酸素センサにおいては、一般に、カソードとしては、白金、金などの貴金属等の触媒電極が用いられ、アノードとしては卑金属である鉛の電極が用いられる。この場合、カソードでは酸素(O2)が還元され、一方アノードでは鉛(Pb)が酸化されて溶解する。従って、アノードである鉛は、センサの使用に伴って徐々に消耗する。
【0006】
そして、従来のガルバニ電池式センサには、カソードと電解液収容部の底部との間にカソード用リード、電解液を含んだ保水材、アノード、及びアノード用リードを積層状態で配置し、それぞれを押圧することで、カソード及びアノードとそれぞれのリードとを接触させているものがある。図14は、このような構造の従来のガルバニ電池式センサの一例の概略断面構成を示す。ここでは、ガルバニ電池式センサは、酸素センサであるものとする。
【0007】
図14に示すガルバニ電池式センサ200は、電解液Sを収容する電解液収容部212を有するケース本体201と、電解液収容部212を液密的に封止するように配置され測定対象ガスを透過させる隔膜202と、隔膜202の電解液収容部212側の面上に設けられたカソード203と、カソード203に接触するように配置されるカソード用リード204と、電解液収容部212内に配置されたブロック形状のアノード205と、アノード205に接触するように配置されるアノード用リード206と、隔膜202の電解液収容部212とは反対側の面上に配置されるシール部材としてのOリング208と、Oリング208を介して隔膜202をケース本体201に押し付ける押さえ部材としてのワッシャー209及びケース蓋210と、を有する。
【0008】
カソード用リード204は、Oリング208を介して隔膜202がケース本体201に押し付けられることによって、カソード203とアノード205との間で押圧されて、カソード203に圧接する。又、この時、アノード用リード206は、アノード205と電解液収容部212の底部との間で押圧されて、アノード205に圧接する。
【0009】
又、図14に示すガルバニ電池式センサ200では、一端部側がカソード203とアノード205との間に配置され、他端部側がアノード205とケース本体201との間に配置された、連続した保水材218が設けられている。従って、カソード用リード204は、カソード203と保水材218とに挟持され、アノード用リード206は、アノード205と保水材218とに挟持される。保水材218が十分に電解液Sを含むことによって、センサの姿勢に拘わらずにカソード203とアノード205との間の電気的導通を取ることができる。
【特許文献1】特開平6−109694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図14に示すような構造のガルバニ電池式センサ200では、センサの使用当初には、隔膜202に設けられたカソード203、カソード用リード204、保水材218、アノード205、アノード用リード206、保水材218、ケース本体201と順次に重ねられたサンドイッチ構造において互いに押し合うことで、カソード203とカソード用リード204、及びアノード205とアノード用リード206を、それぞれ良好に接触させることができる。
【0011】
しかしながら、センサの使用に伴って、アノード205はアノード溶解によって徐々に消耗する。そのため、図15に破線及び一点鎖線で模式的に示すように、アノード溶解によってアノード205が小さくなると、上述のようなサンドイッチ構造によって互いに押し合っていた力が弱まり、カソード203とカソード用リード204、及びアノード205とアノード用リード206の接触がそれぞれ不良となり、ガルバニ電池式センサ200の出力に影響を与えることがあった。このアノード溶解は、ガルバニ電池式センサの原理に基づくものであり、これを避けることはできない。
【0012】
又、従来、センサの使用に伴って、カソード203の表面に、鉛酸化物が析出することがあった。このように、カソード203の表面に鉛酸化物が析出することによっても、カソード用リード204とカソード203との電気的導通が不安定になり、ガルバニ電池式センサ200の出力に影響を与えることがあった。
【0013】
従って、本発明の目的は、センサの使用に伴って電極とリードとの電気的導通が不安定となることを防止することのできるガルバニ電池式センサを提供することである。
【0014】
本発明の更に詳細な目的の1つは、センサの使用に伴う消耗による電極の形状変化に拘わらず、電極とリードとの良好な電気的導通を取ることのできるガルバニ電池式センサを提供することである。
【0015】
本発明の更に詳細な他の目的の1つは、センサの使用に伴う電極表面への析出物によって電極とリードとの電気的導通が不安定となることを防止することのできるガルバニ電池式センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は本発明に係る定電位電解式センサにて達成される。要約すれば、本発明は、電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記隔膜及び前記作用極の少なくとも一方と前記固定部材との間で押圧されて固定されることを特徴とするガルバニ電池式センサである。
【0017】
本発明の一実施態様によると、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記作用極に圧接する。
【0018】
本発明の一実施態様によると、前記対極は、独立して前記電解液収容部内に固定される。前記対極は、ブロック状部材から成っていてよい。
【0019】
本発明の他の実施態様によると、前記対極は、前記電解液収容部内に充填され、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記固定部材によって前記電解液収容部内に固定される。前記対極は、(i)線状部材若しくは複数の線状部材の集合体、又は(ii)複数の粒状部材の集合体から成っていてよい。そして、好ましい一実施態様によると、前記電解液収容部に収容される電解液は、前記電解液収容部の容積の1/100以上1/10以下であり、当該ガルバニ電池式センサの使用前に前記電解液収容部の残りの容積は実質的に前記対極によって占められている。
【0020】
本発明の一実施態様によると、前記固定部材は、前記電解液収容部内の電解液を透過させる。
【0021】
本発明の一実施態様によると、前記対極用リードは、前記対極と前記ケース本体との間で押圧されて前記対極に圧接する。又、前記対極用リードは、前記対極に接着されてもよい。
【0022】
又、本発明の他の態様によると、電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記作用極と前記固定部材との間で押圧されて前記作用極に圧接し、前記対極は、独立して前記電解液収容部内に固定されるブロック状部材から成ることを特徴とするガルバニ電池式センサが提供される。
【0023】
更に、本発明の他の態様によると、電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記隔膜及び前記作用極の少なくとも一方と前記固定部材との間で押圧されて固定され、前記対極は、前記電解液収容部内に充填され、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記固定部材によって前記電解液収容部内に固定される、(i)線状部材若しくは複数の線状部材の集合体、又は(ii)複数の粒状部材の集合体から成ることを特徴とするガルバニ電池式センサが提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、センサの使用に伴って電極とリードとの電気的導通が不安定となることを防止することができる。本発明の一態様によれば、より詳細には、センサの使用に伴う消耗による電極の形状変化に拘わらず、電極とリードとの良好な電気的導通を取ることができる。又、本発明の他の態様によれば、より詳細には、センサの使用に伴う電極表面への析出物によって電極とリードとの電気的導通が不安定となることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係るガルバニ電池式センサを図面に則して更に詳しく説明する。
【0026】
実施例1
図1は、本発明に係るガルバニ電池式センサの一実施例の概略断面を示す。本実施例では、ガルバニ電池式センサ(以下、単に「センサ」ともいう。)100は、酸素センサとして構成される。
【0027】
センサ100は、概略、電解液Sを収容する電解液収容部12を有するケース本体1と、電解液収容部12を液密的に封止するようにケース本体1に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜2と、隔膜2の電解液収容部12側の面上に設けられた作用極であるカソード3と、カソード3に接触するように配置される作用極用リードであるカソード用リード4と、電解液収容部12内の電解液Sを介してカソード3との間の電気的導通が取られる対極であるアノード5と、アノード5に接触するように配置される対極用リードであるアノード用リード6と、隔膜2の電解液収容部12とは反対側の面上に配置されるシール部材としての弾性部材であるOリング8と、Oリング8を介して隔膜2をケース本体1に向けて押し付ける押さえ部材としてのワッシャー9及びケース蓋10と、カソード用リード4と対極用リード6とがそれぞれ接続されてセンサ100の外部との電気信号の授受を行うためのコンタクト部材としての第1、第2のコンタクトピン15A、15Bと、を有する。センサ100は、使用に伴ってアノード5がアノード溶解によって消耗する。
【0028】
そして、本実施例では、センサ100は、カソード3とカソード用リード4、及びアノード5とアノード用リード6のそれぞれの接触状態が、アノード溶出による経時的なアノード5の形状変化に影響されずに、良好に電気的導通を取ることができるように構成されている。
【0029】
即ち、先ず、本実施例では、カソード3とアノード5との間に位置して、固定部材7がケース本体1に設置されている。カソード用リード4は、この固定部材7とカソード3とによって図中上下より押し付けられ、カソード3に圧接した状態で固定される。固定部材7は、堅牢な材料にて形成されており、この時の押し付け力では実質的に変形しないようになっている。又、本実施例では、固定部材7は、それ自体が電解液保持部材として機能する多孔質体で構成され、電解液Sが電解液収容部12から供給されて、常にカソード3の表面に電解液Sが接触するようになっている。
【0030】
一方、アノード用リード6は、アノード5とケース本体1との間でアノード用リード6を押し付けた状態でアノード5を接着剤16でケース本体1に接着することによって、アノード5に圧接した状態で固定される。又、本実施例では、この接着剤16が、アノード5とアノード用リード6の接触部が電解液Sに接触しないようにする封止手段として機能するようになっている。
【0031】
以下、図2及び図3をも参照して更に詳しく説明する。図2は、図1に示すセンサ100の組立部分断面を示す。又、図3は、図1に示すセンサ100のケース本体1の上面を示す。
【0032】
ケース本体1は、図1及び図2において下側の大径部1Aと上側の小径部1Bとを有する。大径部1A及び小径部1Bは、略同心の略円筒形状を有している。大径部1Aには、小径部1Bとの会合面側に開口部12aを有する電解液収容部12が形成されている。電解液収容部12は略円柱状の凹部として形成されている。電解液収容部12の底部12cの略中心には、アノード5を配置して固定するためのアノード固定溝12bが形成されている。アノード固定溝12bは、電解液収容部12の内径よりも小さい内径を有し、電解液収容部12と略同心の略円柱状の凹部として形成されている。又、電解液収容部12の開口部12aよりも、大径部1Aと小径部1Bとの会合面側に、固定部材7を配置するための固定部材配置部11が形成されている。即ち、固定部材配置部11は、電解液収容部12よりも拡径された、電解液収容部12と略同心の略円柱状の穴として形成されており、電解液収容部12の開口部12aと、この固定部材配置部11との会合面には、段部11bが形成されている。固定部材7は、この固定部材配置部11に嵌合又は遊嵌し、段部11bにおいてケース本体1に支持されるようになっている。
【0033】
固定部材配置部11は、大径部1Aと小径部1Bとの会合面において、小径部1Bの中空部14内に開口している。この固定部材配置部11の開口部11aの内径は、小径部1Bの中空部14の内径よりも小さい。従って、大径部1Aと小径部1Bとの会合面には、固定部材配置部11の開口部11aを取り囲む概略円環状の台部14bが形成されている。
【0034】
ここで、本実施例では、電解液収容部12は、アノード5の電解液収容部12内への配置時に、アノード5を開口部12a側から底部12cに形成されたアノード固定溝12bまで移動させることができるようになっている。即ち、電解液収容部12及びその開口部12aの内径はアノード5の外径よりも大きくなっており、開口部12aの外部から電解液収容部12内へのアノード5の移動を許すようになっている。そして、固定部材7は、この電解液収容部12の開口部12aの少なくとも一部(本実施例では全部)を閉じる(覆う)ように配置される。
【0035】
更に、ケース本体1には、一方の端部が台部14b上に開口した第1のリード穴13Aと、一方の端部がアノード固定溝12bに開口した第2のリード穴13Bとが設けられている。第1、第2のリード穴13A、13Bのそれぞれの他方の端部は、共通のリード接続用空間17に開口している。又、リード接続用空間17からケース本体1の外部に突出して、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bが設けられる。
【0036】
後述して更に詳しく説明するように、カソード用リード4の一方の端部は、隔膜2の表面に形成されたカソード3と固定部材7との間で押圧されて、カソード3に圧接する。又、アノード用リード6の一方の端部は、アノード5とケース本体1に形成されたアノード固定溝12bの底部との間で押圧されて、アノード5に圧接する。カソード3及びアノード5のそれぞれとの接触部から引き出されたカソード用リード4、アノード用リード6は、所望により折り返され、第1、第2のリード穴13A、13B内を通ってリード接続用空間17へと至る。そして、リード接続用空間17内で、カソード用リード4及びアノード用リード6のそれぞれの他方の端部が、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bとそれぞれ電気的に接続される。
【0037】
上述のように、本実施例のセンサ100は酸素センサとして構成されている。本実施例では、隔膜2としては、測定対象ガスである酸素ガスを透過する多孔性のガス透過性膜として、PTFE製の薄膜を用いた。隔膜2としては、シリコーン膜などのその他の多孔性高分子膜を使用することもできる。
【0038】
又、本実施例では、カソード3としては、白金の薄膜電極を用いた。薄膜電極は、例えば、隔膜上に、導電体(貴金属など)をスッパッタリング法や蒸着法により付着させる方法、或いは導電体(貴金属など)を樹脂で固める方法等の成膜方法により形成される。本実施例では、カソード3は、高分子膜に膜形成材と電極材料(導電性微粒子)との混合物を塗布して加熱焼成することによって形成される。即ち、本実施例では、カソード3は、高分子膜としてのPTFE膜(隔膜)2上に、導電性微粒子としての白金粉末を、膜形成材としてのPTFE樹脂粉末を用いて薄膜状に固める方法により形成した。尚、ガルバニ電池式センサの作用極としては、白金の他、パラジウム、金、銀などの貴金属、或いはカーボンも使用することができる。隔膜2と、隔膜2上に薄膜状に形成されたカソード3とを有して、電極担持膜(隔膜部材)20が構成される。
【0039】
又、本実施例では、アノード5としては鉛(Pb)電極を用いた。アノード5は、アノード溶解によって徐々に消耗するので、カソード3よりも大きな体積を有する円柱形のブロック(塊)状電極が用いられる。
【0040】
又、本実施例では、電解液Sとしては1M(=mol/L)の酢酸/酢酸ナトリウム溶液を用いた。電解液Sとしては、硫酸(H2SO4)などのその他の酸溶液、アルカリ溶液、或いは塩溶液を使用することもできる。
【0041】
又、本実施例では、カソード用リード4、アノード用リード6としては、白金から成る平坦リードを使用した。又、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bとしては、金メッキした真鍮製のものを使用した。
【0042】
ここで、カソード3は概略円盤状に形成されており、その直径は固定部材配置部11の開口部11aの内径と同等又はそれよりも小さい。一方、隔膜2は、固定部材配置部11の開口部11aの内径よりも大きく、且つ、小径部1Bの中空部14の内径と同等又はそれよりも小さい直径を有する概略円盤形状に形成されている。そして、隔膜2とカソード3は、互いに略同心的に形成されており、又電解液収容部12と略同心的に配置される。これにより、カソード3は固定部材配置部11の開口部11aの内側に配置されるが、隔膜2は固定部材配置部11の開口部11aの内側には配置されず、この隔膜2の外縁部より内側の所定範囲が台部14b上に配置される。
【0043】
センサ100を組み立てる際には、例えば、先ず、カソード用リード4とアノード用リード6とを、それぞれ第1、第2のリード穴13A、13Bに挿通し、それぞれの一方の端部がリード接続用空間17内で第1、第2のコンタクトピン15A、15Bに電気的に接続されるように、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bをケース本体1に取り付ける。
【0044】
次に、アノード固定溝12bの底部に開口した第2のリード穴13Bから外部に伸長しているアノード用リード6の端部を屈曲させて、アノード固定溝12bの底部に配置する。この時、アノード用リード6の端部を複数回折り返して、アノード固定溝12b内に配置されるアノード用リード6が集合的に厚みを増した状態としてもよい。
【0045】
次に、アノード5を、固定部材配置部11の開口部11a、及び電解液収容部12の開口部12aを通して電解液収容部12内に移動させ、アノード5の一方の端部をアノード固定溝12b内に配置する。アノード5は、その一方の端部がアノード固定溝12bに嵌合又は遊嵌するようになっており、電解液収容部12内で容易に位置決めすることができる。又、アノード5をアノード固定溝12bに配置することによって、アノード5とアノード固定溝12bの底部との間にアノード用リード6が挟持される。
【0046】
次に、アノード5とアノード固定溝12bの底部との間でアノード用リード6を押圧した状態で、アノード固定溝12bの縁部と、アノード固定溝12bから突出しているアノード5の外周部との間の隙間を埋めるように、アノード5の周囲の全周にわたり接着剤16を盛り付ける。本実施例では、接着剤16は、アノード5をケース本体1に固定する固定手段として機能すると共に、アノード5とアノード用リード6との接触部に電解液収容部12内の電解液Sが接触しないように、その接続部を電解液収容部12内の電解液Sに対して液密的に封止する封止手段として機能する。この封止手段としては、電解液Sに対して十分な耐性を有するものを用いることが好ましい。又、アノード5やアノード用リード6と接触しても望ましくない電流を発生することがないように絶縁性の材料であることが好ましい。又、アノード5の固定手段を兼ねる場合には、良好な接着性を有している必要がある。例えば、電解液Sとして用いられる硫酸に対して十分な耐性を有する耐薬品性の樹脂、例えば、接着剤を好適に用いることができる。本実施例では、封止手段として、アノード5の固定手段を兼ねるエポキシ樹脂接着剤を用いた。尚、この接着剤は更に、第1、第2のリード穴13A、13Bの少なくとも一方を封止するために用いることもできる。
【0047】
次に、センサ本体1に設けられた支持部としての固定部材配置部11の段部11b上に固定部材7を配置する。本実施例では、固定部材7の外径は、固定部材配置部11の内径と略同一又は若干小さくされているので、固定部材7は容易に固定部材配置部11に嵌合又は遊嵌させて、段部11b上に配置することができる。固定部材7を段部11b上に配置した状態で、固定部材7とアノード5との間には十分な間隙が設けられている。従って、固定部材7をケース本体1に配置する際に、アノード5が干渉することはない。又、本実施例では、固定部材7を段部11b上に適正に配置した状態で、固定部材7の上面と台部14とはほぼ同一平面となるようになっている。尚、固定部材7は所望により固定部材配置部11に接着等により固定してもよい。
【0048】
本実施例では、固定部材7は、それ自体が電解液保持部材として機能する多孔質体で構成されている。特に、本実施例では、固定部材7は、多孔質セラミックで形成した厚さ1.0mm、直径20mmの円盤状部材である。固定部材7は、セラミックス繊維で形成することもできる。より具体的には、多孔質セラミック又はセラミック繊維としては、アルミニウム系化合物、珪酸系化合物、などを好適に用いることができる。本実施例では、多孔質セラミックから成る固定部材7は、酸化アルミニウムを用いて形成した。従って、固定部材7は、比較的堅牢であって、後述する隔膜5のケース本体1への押し付け力では実質的に変形しない。又、固定部材7は、電解液Sが電解液収容部12から供給されて、含浸された状態になる。それ自体が電解液保持部材として機能する固定部材7としては、上記多孔質セラミックの他、ポリエステル、プラスチックなどの多孔質樹脂から成る部材を用いることができる。この場合も、固定部材7は、後述する隔膜5のケース本体1への押し付け力では実質的に変形しないようにする。
【0049】
このように、カソード3とアノード5との間に、電解液収容部12の開口部12aの少なくとも一部を閉じるように独立してケース本体1に支持された固定部材7が設けられている。この固定部材7は、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによってケース本体1に設けられた支持部としての固定部材配置部11の段部11bに対して押圧される。固定部材7は、隔膜2をケース本体1に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢である構成とする。又、本実施例では、固定部材7が電解液保持部材としても機能する。
【0050】
尚、電解液Sは、典型的には、固定部材7をケース本体1に配置する前に、開口部12a側から注ぎ込むことによって、電解液収容部12内に収容することができる。或いは、これに代えて又は加えて、固定部材7をケース1に配置した後に、固定部材7を介して浸透させることにより、電解液Sを電解液収容部S内に収容するようにしてもよい。更に、ケース本体1に別途電解液収容部12に連通する電解液注入部を設けて、センサ100の組み立てが終了した後にその電解液注入部を介して電解液収容部12に電解液Sを注入するようにしてもよい。
【0051】
次に、台部14b上に開口した第1のリード穴13Aから外部に伸長しているカソード用リード4の端部を、次に配置する電極担持膜20上のカソード3に接触するように屈曲させる。こうして、カソード用リード4の一方の端部近傍を固定部材7上に配置する。
【0052】
次に、電極担持膜20を、カソード3と固定部材7との間にカソード用リード4を挟むように、台部14b上に配置する。上述のように、電解液収容部12内に所定量の電解液Sが収容されることにより、固定部材7に十分に電解液Sが含浸される。これにより、センサ100の姿勢に拘わらず、常にカソード3の表面に電解液Sが接触するようになっている。
【0053】
尚、本実施例では、固定部材7は、電解液収容部12の開口部12aの全部を閉じるように固定部材配置部11に配置される。しかし、これに限定されるものではなく、固定部材7は、電解液収容部12の開口部12aの一部を閉じるように配置されるものであってもよい。例えば、固定部材7は、電解液収容部12の開口部12aにおいて対向する縁部に形成された一対の段部に掛け渡された、橋状構造としてもよい。この場合、固定部材7によって覆われていない領域は、電解液収容部12から隔膜2(或いはカソード3)まで遮るもの無く連通する。つまり、固定部材11は、隔膜2がケース本体に対して固定されることで、カソード用リード4を隔膜2及びカソード3の少なくとも一方に押し付けて固定する台として機能すればよい。通常、カソード用リード4を固定部材7によって隔膜2に押し付けて固定するようになっていれば、カソード用リード4はカソード3に良好に接触し、カソード3に対するカソード用リード4の電気的接続を良好に確保することができる。特に、本実施例では、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによって、カソード用リード4は、固定部材7とカソード3との間で押圧されてカソード3に圧接する。このように、好ましくは、カソード3は、固定部材7との間にカソード用リード4を挟んで押し付けるようにする。これによって、より確実にカソード用リード4をカソード3に電気的に接続することができる。
【0054】
以上のようにしてケース本体1にアノード5、電極担持膜20(即ち、カソード3及び隔膜2)を配置した状態で、Oリング8が取り付けられたワッシャー9がケース本体1上に配置される。そして、ケース蓋10が、ワッシャー9をケース本体1に押圧するようにして、ケース本体1に取り付けられる。
【0055】
即ち、ワッシャー9は、被検ガスを通過させるための取入口9aが略中心に形成されたリング状部材であり、ケース本体1側の外縁部が切り欠かれてシール部材保持部(段部)9bが形成されている。ワッシャー9の取入口9aの内径は、固定部材配置部11の開口部11aの内径よりも小さく、本実施例では約0.3mmとされている。又、ワッシャー9の最大外径は、ケース本体1の小径部1Bの中空部14及びその開口部14aの内径と同等又はそれよい若干小さい。そして、このワッシャー9は、Oリング8が設けられた側から、ケース本体1の小径部1Bの中空部14内に配置される。
【0056】
これにより、Oリング8が、台部14b上に配置された電極担持膜20の外縁部近傍に配置される。本実施例では、第1のリード穴13Aは、台部14b上において、固定部材配置部11の開口部11bの縁部よりに開口している。従って、電極担持膜20の隔膜2は、台部14bの全周にわたって、直接Oリング8と台部14bとの間に挟持される。又、Oリング8は、ケース本体1の小径部1Bの中空部14の内壁に圧接する。これにより、電解液収容部12は、隔膜2の外側に対して液密的に封止される。尚、Oリング8の他にゴムパッキンなどのその他の弾性部材をシール部材として用いてもよい。
【0057】
ケース蓋10は、その内周面に、ケース本体1の小径部1Bの外周に形成されたネジ部14cに噛合するネジ部10bが形成されている。又、ケース蓋10は、被検ガスを通過させるための通気口(ガス導入孔)10aが略中心に形成されている。この通気口10aは、ワッシャー9の取入口9aと略同径で、ケース蓋10をケース本体1に取り付けた状態で取入口9aと略同心に配置される。
【0058】
こうして、Oリング8を備えたワッシャー9をケース本体1に配置した後に、ケース蓋10をケース本体1の小径部1Bに螺合することにより、ケース蓋10の通気口10aを取り巻くフランジ部10cにより、ワッシャー9をケース本体1に押圧することができる。
【0059】
本実施例では、ケース本体1、ワッシャー9、ケース蓋10はプラスチックによって成型されている。
【0060】
尚、ケース蓋10は、螺合によりケース本体1に固定することに限定されるものではなく、例えば、圧入嵌合によってケース本体1に固定されるものであってもよい。又、本実施例では、押さえ部材は、シール部材たるOリング8を直接押圧するワッシャー9と、このワッシャー9を押圧してケース本体1に取り付けるケース蓋10との2個の部材に分かれている。これにより、螺合によりケース蓋10をケース本体1に固定する場合には、シール部材を押しつける動作と、螺合のための回転動作とを簡易な構成で分離し、隔膜2にしわ等が発生するのを好適に防止することができる。但し、所望により押さえ部材は単一の部材であってもよいし、或いは更に多数(3個以上)の部材に分かれて構成されていてもよい。
【0061】
このように、本実施例のセンサ100では、カソード3とアノード5とは、それぞれ独立して作用極用リード4とアノード用リード6とに電気的に接続されている。
【0062】
即ち、カソード用リード4は、アノード5とは独立してケース本体1に支持された電解液Sを吸収する堅牢な材料から成る固定部材7によって、カソード3に押し付けられる。これに対して、固定部材7の図中下方を電解液収容部12として、その底部にアノード5を配置する。これにより、カソード3とカソード用リード4とは、アノード溶解に関係なく、常に同じ接触状態で確実に接触させることができる。
【0063】
一方、アノード用リード6は、ケース本体1に固定されるアノード5によって、電解液収容部12の底部(より詳細には、ケース本体1に形成されたアノード固定溝12bの底部)に押し付けられる。そして、アノード5とアノード用リード6との接触部を、アノード5の周囲に塗布した封止手段としての接着剤16によって電解液Sから遮断することで、この部分に電解液Sが接触してアノード5が溶解することを防止する。これにより、アノード5とアノード用リード6とは、アノード溶解に関係なく、常に同じ接触状態で確実に接触させることができる。
【0064】
尚、カソード3は、典型的には厚さが数百Å〜数μm程度と極めて薄いため、カソード用リード4を接着等することは困難であるが、アノード5に対してはアノード用リード6を接着することもできる。従って、例えば、アノード固定溝12b内でアノード用リード6をアノード5に、上述の封止手段と同様の材料から成る接着剤で接着して固定することができる。この場合は、この接着剤によってアノード5とアノード用リード6との接触部が液密的に封止されるようになっていれば、アノード5の固定手段としての接着剤16は、必ずしもアノード5とアノード用リード6との接触部を電解液収容部12内の電解液Sに対して液密的に封止するように設けなくてもよい。
【0065】
更に、本実施例によれば、カソード3とアノード5との間に配置される固定部材7は、電解液収容部12内へのアノード5の配置時にアノード5を外部から電解液収容部12内へ移動させ得るように開口した開口部12aの少なくとも一部(本実施例では全部)を閉じるように取り外し可能に配置される。これにより、簡単な構造によってカソード5とカソード用リード6との接続を確実にすると共に、センサ100の組み立てを極めて容易とすることができる。
【0066】
以上、本実施例によれば、アノード溶解によってアノード5が小さくなっても、カソード3とカソード用リード、及びアノード5とアノード用リード6の接触不良を防止して、常に良好なセンサ出力を得ることができる。
【0067】
実施例2
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例のガルバニ電池式センサの基本構成は、実施例1のものと同じである。従って、実施例1のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0068】
図4は、本実施例のセンサ100の概略断面を示す。図5は、図4に示すセンサ100の組立部分断面を示す。又、図6は、図4に示すセンサ100のケース本体1の上面を示す。本実施例では、固定部材7の構成が実施例1とは異なる。
【0069】
即ち、本実施例では、固定部材7を堅牢な材料で作成すると共に、この固定部材7に設けられた貫通孔7aを通して、電解液Sを吸収する電解液保持部材18を設ける。この電解液保持部材18は、本実施例では、少なくとも電解液収容部12内の電解液S及びカソード3に接触するように配置される。特に、本実施例では、カソード用リード4は、カソード3と電解液保持部材18との間に挟持されるようになっている。
【0070】
更に説明すると、本実施例では、固定部材7は、プラスチックによって成型された、厚さ1.0mm、直径20mmの円盤状部材である。より具体的には、固定部材7を形成するプラスチックとしては、塩化ビニル、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレンなどを好適に用いることができる。本実施例では、塩化ビニルを用いた。
【0071】
本実施例の固定部材7の外形は、実施例1における多孔質体から成る固定部材の外形と略同一とされている。従って、本実施例の固定部材7は、実施例1と同様に、固定部材配置部11の段部11b上に配置されて、ケース本体1によって支持されるようになっている。又、この固定部材7は、比較的堅牢であって、隔膜2のケース本体1への押し付け力では実質的に変形しない。
【0072】
又、この固定部材7には、カソード3が配置される側の側面から、アノード5が配置される側の側面へと貫通する、貫通孔7a、7aが設けられている。そして、この貫通孔7a、7aを通して、電解液保持部材としての保水シート18を、電解液収容部12内の電解液S及びカソード3の両方に接触するように配置する。本実施例では、帯状に形成された保水シート18の両端部を、固定部材7のカソード3が設けられる側の側面から各貫通孔7a、7aを通し、次いで固定部材7のアノード5が設けられる側の側面上でその端部同士が重なり合うようにして、保水シート18を固定部材7に巻き付ける。
【0073】
このように、プラスチック板から成る固定部材7に保水シート18を巻き付けることによって、固定部材7の図中上側であるカソード3側の保水シート18は、カソード3と接触し、一方固定部材7の図中下側であるアノード5側の保水シート18は、電解液Sに浸漬される。これにより、電解液Sが保水シート18に吸収されて、常に電解液Sがカソード3に接触する。又、本実施例では、カソード用リード4は、カソード3と保水シート18との間に挟持されてカソード5に圧接するようになっている。この場合も、保水シート18は、アノード5とは独立してケース本体1に支持された堅牢な材料から成る固定部材7によってカソード3に向けて押し付けられているので、カソード3とカソード用リード4とは、アノード溶解に関係なく、常に同じ接触状態で確実に接触させることができる。
【0074】
尚、図4及び図5に示すように、固定部材7に更なる貫通孔7bを設けて、固定部材7を介したカソード3と電解液収容部12内の電解液Sとの接触を促進するようにしてもよい。これにより、保水シート18に析出物が付着したような場合にも、固定部材7の更に多数の貫通孔7a、7bを通して電解液Sを保水シート18に供給したり、直接カソード3に電解液収容部12内の電解液Sを接触させたりすることができる。
【0075】
本実施例では、保水シート18として、ポリエステル繊維から成る不織布のシートを用いた。電解液保持部材としては、上記不織布のシートの他、スポンジ、濾紙などを用いることもできる。又、本実施例では、保水シート18を固定部材7に巻き付けたが、これに限定されるものではなく、電解液保持部材は、固定部材7を通してカソード3と電解液収容部12内の電解液Sと接触するようになっていればよい。従って、例えば、本実施例にて用いた帯状の保水シート18であれば、固定部材7のアノード5が設けられる側の側面に重ね合わせるように折り返さずに、単に電解液Sに浸漬されるように固定部材7に懸架された状態のままとしてもよい。
【0076】
以上、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、センサ100をより安価で簡易な構成とすることができる。
【0077】
実施例3
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例のガルバニ電池式センサは、実施例1、2のものと同様の基本構成を有する。本実施例において、実施例1、2のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付している。本実施例においても、ガルバニ電池式センサは、酸素センサとして構成されている。
【0078】
図7は、本実施例のセンサ100の概略断面を示す。図8は、図7に示すセンサ100の組立部分断面を示す。又、図9は、図7に示すセンサ100のケース本体1の上面を示す。
【0079】
実施例1、2では、センサ100は、カソード3とカソード用リード4、及びアノード5とアノード用リード6のそれぞれの接触状態が、アノード溶出による経時的なアノード5の形状変化に影響されずに、良好に電気的導通を取ることができるように構成した。実施例1、2にて説明したセンサ100の構成によれば、カソード用リード4は、カソード3に押し付けられて、両者の接触状態はセンサ100の使用を通して良好に維持されるようになっている。従って、センサ100の使用に伴うカソード3の表面への鉛酸化物の析出による影響は、通常は問題とならない程度である。
【0080】
これに対して、本実施例では、鉛酸化物がカソード3の表面へ析出するのを抑えることで、カソード3の表面に鉛酸化物が析出することにより、カソード3とカソード用リード4との電気的導通が不安定となることを防止する。又、本実施例では、センサ100の使用に伴うアノード5の消耗による形状変化の影響が発生し難くすると共に、環境面からの配慮も行っている。
【0081】
即ち、本実施例では、センサ100は、アノード5の表面積を十分に大きくして、その一方で電解液Sの量を極力抑えた構造とする。アノード5としては、電解液収容部12内に充填されて、アノード5の表面積を十分に大きくすることができるように、線材又は粒状物を好適に用いることができる。又、本実施例においても、実施例1、2と同様に、カソード3とアノード5との間に固定部材7が配置される。そして、隔膜2がセンサ本体1に対して固定されることによって、カソード用リード4は、この固定部材7と、隔膜2及びカソード3の少なくとも一方との間で押圧されて固定される。又、本実施例では、アノード5は、隔膜2がセンサ本体1に対して固定されることによって、固定部材7によって電解液収容部12内に固定される。これにより、カソード3に析出物が付着することを防止することができる。又、アノード溶解によるアノード5の全体としての形状変化の影響を少なくすることができる。以下、更に詳しく説明する。
【0082】
ケース本体1は、概略、実施例1、2と同様の構成を有する。即ち、ケース本体1は、図7及び図8において下側の大径部1Aと上側の小径部1Bとを有する。大径部1A及び小径部1Bは、略同心の略円筒形状を有している。大径部1Aには、小径部1Bとの会合面側に開口部12aを有する電解液収容部12が形成されている。電解液収容部12は略円柱状の凹部として形成されている。又、電解液収容部12の開口部12aよりも、大径部1Aと小径部1Bとの会合面側に、固定部材7を配置するための固定部材配置部11が形成されている。即ち、固定部材配置部11は、電解液収容部12よりも拡径された、電解液収容部12と略同心の略円柱状の穴として形成されており、電解液収容部12の開口部12aと、この固定部材配置部11との会合面には、段部11bが形成されている。固定部材7は、この固定部材配置部11に嵌合又は遊嵌し、段部11bにおいてケース本体1に支持されるようになっている。
【0083】
固定部材配置部11は、大径部1Aと小径部1Bとの会合面において、小径部1Bの中空部14内に開口している。この固定部材配置部11の開口部11aの内径は、小径部1Bの中空部14の内径よりも小さい。従って、大径部1Aと小径部1Bとの会合面には、固定部材配置部11の開口部11aを取り囲む概略円環状の台部14bが形成されている。
【0084】
電解液収容部12は、アノード5を開口部12a側から電解液収容部12内へと移動させることができるようになっている。そして、固定部材7は、この電解液収容部12の開口部12aの少なくとも一部(本実施例では全部)を閉じる(覆う)ように配置される。
【0085】
更に、ケース本体1には、一方の端部が台部14b上に開口した第1のリード穴13Aと、一方の端部が電解液収容部12の底部12cに開口した第2のリード穴13Bとが設けられている。第1、第2のリード穴13A、13Bのそれぞれの他方の端部は、共通のリード接続用空間17に開口している。又、リード接続用空間17からケース本体1の外部に突出して、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bが設けられる。
【0086】
後述して更に詳しく説明するように、カソード用リード4の一方の端部は、隔膜2の表面に形成されたカソード3と固定部材7との間で押圧されて、カソード3に圧接する。又、アノード用リード6の一方の端部は、アノード5とケース本体1に形成された電荷域収容部12の底部12cとの間で押圧されて、アノード5に圧接する。カソード3及びアノード5のそれぞれとの接触部から引き出されたカソード用リード4、アノード用リード6は、所望により折り返され、第1、第2のリード穴13A、13B内を通ってリード接続用空間17へと至る。そして、リード接続用空間17内で、カソード用リード4及びアノード用リード6のそれぞれの他方の端部が、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bとそれぞれ電気的に接続される。
【0087】
隔膜2、カソード3としては、実施例1にて説明したものと同様のものを使用することができる。本実施例では、特に、実施例1と同様に、隔膜2としてPTFE製の薄膜、カソード3として白金薄膜を使用した。
【0088】
一方、本実施例では、アノード5としては、その表面積を十分に大きくするように、電解液収容部12内に充填される、線状部材又は複数の線状部材の集合体を用いた。線状部材は、1本のものをそのまま使用しても、又は複数本に分割(切断)されたもの纏めて使用してもよい。つまり、線状部材は、規則的又は不規則的に、湾曲又は屈曲されて纏められた、不織布状の金属繊維成形物又は集合体であってよい。アノード5の表面積を十分に大きくすることができ、又アノード5の全体としての消耗による形状変化の影響を少なくすることができる点などから、この線状部材の直径は、0.1mm以上2.0mm以下であることが好ましい。本実施例では、この線状部材として、直径0.5mmの鉛(Pb)線(東邦トレード社製:鉛毛)を用いた。
【0089】
尚、アノード5としては、上記の線状部材の代わりに、電解液収容部12に充填される、複数の粒状部材の集合体を用いることができる。好ましくは、この粒状部材は実質的に球形である。アノード5の表面積を十分に大きくすることができ、又アノード5の全体としての消耗による形状変化の影響を少なくすることができる点などから、この粒状部材の粒径は0.1mm以上3mm以下であることが好ましい。球状の鉛(Pb)(例えば、東邦トレード:鉛粒)を用いることができる。
【0090】
そして、本実施例では、電解液Sの量を極力少なくする。電解液収容部12に収容される電解液Sは、電解液収容部12の容積の1/100以上1/10以下であることが好ましい。そして、センサ100の使用前において、電解液収容部12の残りの容積は、実質的にアノード5によって占められているようにする。これにより、電解液Sの量は、電解液収容部の容積が同等である従来のセンサにおける電解液量の約1/20以上1/10以下とすることが好ましい。
【0091】
電解液Sの量が上述の範囲よりも多いと、センサ100の使用に伴って、カソード3の表面に鉛酸化物が析出し易くなる。一方、上述の範囲よりも少ないと、電解液Sの量が少な過ぎ、電解液保持部材(本実施例では固定部材7が兼ねる)へ吸収される電解液Sの量が減少すると、電気的導通が悪くなり短時間で感度が低下してしまう。
【0092】
より具体的には、本実施例では、電解液収容部12の容積が約1.8mlであるのに対して、センサ100の使用前に電解液Sの量は0.03ml(即ち、電解液収容部12の容積の1/60)であった。又、本実施例では、鉛線の重量は20gであった。又、本実施例では、電解液Sの量は、電解液収容部の容積が同等である従来のセンサにおける電解液量の約1/20であった。
【0093】
又、電解液Sとしては1M(=mol/L)の酢酸/酢酸ナトリウム溶液を用いた。電解液Sの量を極端に少なくしているので、反応効率を良くするために、電解液Sの濃度は比較的濃くすることが好ましい。好ましくは、0.1M〜5Mである。
【0094】
尚、前述のように、電解液Sとしては、硫酸(H2SO4)などのその他の酸溶液、アルカリ溶液、或いは塩溶液を使用することもできる。
【0095】
本実施例では、カソード用リード4、アノード用リード6、及び第1、第2のコンタクトピン15A、15Bとしては、実施例1のものと同様のものを使用した。
【0096】
ここで、カソード3は概略円盤状に形成されており、その直径は固定部材配置部11の開口部11aの内径と同等又はそれよりも小さい。一方、隔膜2は、固定部材配置部11の開口部11aの内径よりも大きく、且つ、小径部1Bの中空部14の内径と同等又はそれよりも小さい直径を有する概略円盤形状に形成されている。そして、隔膜2とカソード3は、互いに略同心的に形成されており、又電解液収容部12と略同心的に配置される。これにより、カソード3は固定部材配置部11の開口部11aの内側に配置されるが、隔膜2は固定部材配置部11の開口部11aの内側には配置されず、この隔膜2の外縁部より内側の所定範囲が台部14b上に配置される。
【0097】
センサ100を組み立てる際には、例えば、先ず、カソード用リード4とアノード用リード6とを、それぞれ第1、第2のリード穴13A、13Bに挿通し、それぞれの一方の端部がリード接続用空間17内で第1、第2のコンタクトピン15A、15Bに電気的に接続されるように、第1、第2のコンタクトピン15A、15Bをケース本体1に取り付ける。
【0098】
次に、電解液収容部12の底部12cに開口した第2のリード穴13Bから外部に伸長しているアノード用リード6の端部を屈曲させて、電解液収容部12の底部12cに配置する。この時、アノード用リード6の端部を複数回折り返して、電解液収容部12内に配置されるアノード用リード6が集合的に厚みを増した状態としてもよい。
【0099】
次に、アノード5を、固定部材配置部11の開口部11a、及び電解液収容部12の開口部12aを通して電解液収容部12内に配置する。この時、本実施例では、アノード5としての線状部材を、電解液収容部12に適合するようにプレスして適当に成形した後に、電解液収容部12内に適当に圧縮するなどして配置する。その後、後述するように、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによって、アノード5は、固定部材7によって電解液収容部12内に固定される。こうしてアノード5を電解液収容部12内に配置することによって、アノード5と電解液収容部12の底部12cとの間にアノード用リード6が挟持される。
【0100】
尚、アノード5として粒状部材が用いられる場合には、開口部11a、12a側から適当量の粒状部材が電解液収容部12内に充填される。その後、上記同様に、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによって、粒状部材が集合して成るアノード5は、固定部材7によって電解液収容部12内に固定される。
【0101】
ここで、本実施例においても、実施例1にて説明したものと同様の固定手段及び/又は封止手段として機能する接着剤を使用して、アノード5とアノード用リード6とを接着したり、その周囲を埋めたりすることができる。又、上述のように、アノード5を固定部材7で電解液収容部12内に固定することに加えて、例えば本実施例のように線材が纏められて成るアノード5を用いるような場合に、上述のような接着剤を用いてアノード5を電解液収容部12内に固定してもよい。更に、この接着剤を用いて、第1、第2のリード穴13A、13Bの少なくとも一方を封止することもできる。
【0102】
次に、センサ本体1に設けられた支持部としての固定部材配置部11の段部11b上に固定部材7を配置する。本実施例では、固定部材7の外径は、固定部材配置部11の内径と略同一又は若干小さくされているので、固定部材7は容易に固定部材配置部11に嵌合又は遊嵌させて、段部11b上に配置することができる。固定部材7を段部11b上に配置すると、固定部材7の下部(電解液収容部12側)は、アノード5と接触して上から圧縮するようにしてアノード5を電解液収容部12内で固定するようになる。又、本実施例では、固定部材7を段部11b上に適正に配置した状態で、固定部材7の上面と台部14とはほぼ同一平面となるようになっている。尚、固定部材7は所望により固定部材配置部11に接着等により固定してもよい。
【0103】
固定部材7としては、実施例1にて説明したものと同様のものを使用することができる。本実施例では、固定部材7は、実施例1と同様に、多孔質セラミックで形成した厚さ1.0mm、直径20mmの円盤状部材である。即ち、本実施例では、固定部材7は、比較的堅牢であって、後述する隔膜5のケース本体1への押し付け力では実質的に変形しない。又、本実施例では、固定部材7自体が電解液保持部材として機能し、電解液Sが電解液収容部12から供給されて、含浸された状態になる。
【0104】
このように、カソード3とアノード5との間に、電解液収容部12の開口部12aの少なくとも一部を閉じるように独立してケース本体1に支持された固定部材7が設けられている。この固定部材7は、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによってケース本体1に設けられた支持部としての固定部材配置部11の段部11bに対して押圧される。それと共に、固定部材7はアノード5を上から圧縮するようにして固定する。本実施例では、アノード5は上述のように線状部材、或いは複数の粒状部材である。線状部材では電解液収容部12内に収まるようにプレス成型等をしているが、これを電解液収容部12内に挿入しても一部分は電解液収容部12内に収まらず開口部12aからはみ出すこともある。又、粒状部材ではセンサ本体100を横に傾けたりすると転がって電解液収容部12内から開口部12aを経て外部へ出てしまう虞もある。このようなことから、固定部材7には、アノード5を電解液収容部12内に固定するような機能を発揮させることもできる。更に、アノード5と電解液収容部12の底部12cにあるアノード用リード6を上から挟持するようにもなる。これによってカソード3とカソード用リード4、アノード5とアノード用リード6の良好な電気的接続を常に得ることができるようになる。固定部材7は、隔膜2をケース本体1に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢である構成とする。又、本実施例では、固定部材7が電解液保持部材としても機能する。
【0105】
電解液Sは、実施例1にて説明したのと同様にして、電解液収容部12に収容することができる。
【0106】
次に、台部14b上に開口した第1のリード穴13Aから外部に伸長しているカソード用リード4の端部を、次に配置する電極担持膜20上のカソード3に接触するように屈曲させる。こうして、カソード用リード4の一方の端部近傍を固定部材7上に配置する。
【0107】
次に、電極担持膜20を、カソード3と固定部材7との間にカソード用リード4を挟むように、台部14b上に配置する。上述のように、電解液収容部12内に所定量の電解液Sが収容されることにより、固定部材7に十分に電解液Sが含浸される。これにより、センサ100の姿勢に拘わらず、常にカソード3の表面に電解液Sが接触するようになっている。
【0108】
尚、前述のように、本実施例では、固定部材7は、電解液収容部12の開口部12aの全部を閉じるように固定部材配置部11に配置される。しかし、これに限定されるものではなく、固定部材7は、電解液収容部12の開口部12aの一部を閉じるように配置されるものであってもよい。例えば、実施例1にて説明したような他の態様を採用することもできる。
【0109】
以上のようにしてケース本体1にアノード5、電極担持膜20(即ち、カソード3及び隔膜2)を配置した状態で、Oリング8が取り付けられたワッシャー9がケース本体1上に配置される。そして、ケース蓋10が、ワッシャー9をケース本体1に押圧するようにして、ケース本体1に取り付けられる。
【0110】
本実施例では、Oリング8、ワッシャー9、ケース蓋10の構成、作用は、実施例1のものと同様である。
【0111】
本実施例によれば、アノード5の表面積を十分に大きくすることにより、アノード反応物(鉛酸化物等)がアノード5の表面に析出しても実効面積が十分に大きいため、感度への影響を無視できる。従って、大気など高濃度酸素の連続測定でも長期間感度が安定して計測を行うことができる。又、電解液量を少なくすることで、電解液に溶出したアノード反応物が移動してカソード3の表面で析出することで生じる感度低下を抑えることができる。従って、本実施例によれば、カソード3の表面への鉛酸化物の析出を抑制することができる。このように、本実施例によれば、センサ100の使用に伴うカソード3の表面への鉛酸化物の析出によりカソード3とカソード用リード4との電気的導通が不安定となることを、鉛酸化物の析出自体を少なくすることによって良好に防止することができる。
【0112】
又、本実施例では、実施例1と同様、カソード3とアノード5とは、それぞれ独立して作用極用リード4とアノード用リード6とに電気的に接続されている。即ち、カソード用リード4は、アノード5とは独立してケース本体1に支持された固定部材7と隔膜2及びカソード3の少なくとも一方に押し付けられる。本実施例では、特に、カソード用リード4は、固定部材7とカソード3との間で押圧される。従って、カソード3とカソード用リード4とは、アノード5の状態に関係なく常に同じ接触状態で確実に接触させることができる。
【0113】
更に、本実施例によれば、電解液Sを極端に少なくしたことによる上述のような作用に加え、アノード5が線材(又は粒状体)から成る充填物であるため、アノード溶解によるアノード5の全体としての形状変化の影響を少なくすることができる。そのため、センサ100の使用にともなってアノード5とアノード用リード6との電気的導通が不安定となることも防止することができる。
【0114】
以上、本実施例によれば、センサ100の使用に伴うカソード3の表面への析出物によってカソード3とカソード用リード4との電気的導通が不安定となることを防止することができる。又、センサ100の使用に伴うアノード5の消耗による形状変化の影響が発生し難くすることができる。従って、本実施例によれば、常に良好なセンサ出力を得ることができる。
【0115】
実施例4
次に、本発明に係る他の実施例について説明する。本実施例のガルバニ電池式センサの基本構成は、実施例3のものと同じである。従って、実施例3のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0116】
図10は、本実施例のセンサ100の概略断面を示す。図11は、図10に示すセンサ100の組立部分断面を示す。又、図12は、図10に示すセンサ100のケース本体1の上面を示す。本実施例では、固定部材7の構成が実施例3とは異なる。
【0117】
即ち、本実施例では、固定部材7を堅牢な材料で作成すると共に、この固定部材7に設けられた貫通孔7cを通して、電解液Sを吸収する電解液保持部材18を設ける。この電解液保持部材18は、本実施例では、少なくとも電解液収容部12内の電解液S、アノード5及びカソード3に接触するように配置される。特に、本実施例では、カソード用リード4は、カソード3と電解液保持部材18との間に挟持されるようになっている。
【0118】
更に説明すると、本実施例では、固定部材7は、プラスチックによって成型された、厚さ1.0mm、外径20mm、内径10mmのワッシャー状部材である。即ち、本実施例では、固定部材7は、その略中央に、カソード3が配置される側の側面から、アノード5が配置される側の側面へと貫通する、貫通孔7cが形成されている。本実施例では、カソード3は、貫通孔7cと略同心的に配置され、その直径は、貫通孔7cの内径と同等又はそれよりも小さい。本実施例におけるワッシャー状の固定部材7の材料としては、実施例2にて説明したものと同様のものを使用することができる。本実施例では、塩化ビニルを用いた。
【0119】
本実施例の固定部材7の外形は、実施例3における多孔質体から成る固定部材の外形と略同一とされている。従って、本実施例の固定部材7は、実施例3と同様に、固定部材配置部11の段部11b上に配置されて、ケース本体1によって支持されるようになっている。又、この固定部材7は、比較的堅牢であって、隔膜5のケース本体1への押し付け力では実質的に変形しない。
【0120】
又、この固定部材7の略中央に形成された貫通孔7cを通して、電解液保持部材としての保水パッド18を、電解液収容部12内の電解液S、アノード5及びカソード3に接触するように配置する。本実施例では、保水パッド18は、ワッシャー状の固定部材7の上記貫通孔7cに充填されるようにして配置される。
【0121】
このように、プラスチック板から成る固定部材7の貫通孔7cに保水パッド18を配置することによって、固定部材7の図中上側であるカソード3側の保水パッド18は、カソード3と接触し、一方固定部材7の図中下側であるアノード5側の保水パッド18は、電解液Sに浸漬され、且つ、本実施例ではアノード5に接触する。これにより、電解液Sが保水パッド18に吸収されて、常に電解液Sがカソード3に接触する。それと共に、固定部材7のうち貫通孔7c以外の部分では、実施例3と同様に、隔膜2がケース本体1に対して固定されることによってアノード5が固定部材7により電解液収容部12内に固定される。こうしてアノード5を電解液収容部12内に配置することによって、アノード5と電解液収容部12の底部12cとの間にアノード用リード6が挟持される。
【0122】
又、本実施例では、カソード用リード4は、カソード3と保水パッド18との間に挟持されてカソード5に圧接するようになっている。即ち、本実施例では、カソード用リード4は、隔膜2と固定部材7との間で押圧されると共に、固定部材7の略中央に形成された貫通孔7cの位置ではカソード3と保水パッド18との間で押圧される。即ち、カソード3は、アノード5との間に保水パッド18とカソード用リード4とを挟んで押し付けるようになっている。この場合も、カソード用リード4が固定部材7によって隔膜2に押し付けられるようになっているので、通常、貫通孔7cの位置におけるカソード用リード4とカソード3との電気的接続を良好に確保することができる。更に、保水パッド18は、アノード5によってカソード3に向けて押し付けられるので、カソード3とカソード用リード4とは、アノード5の状態に関係なくほぼ常に同じ接触状態で確実に接触させることができる。
【0123】
尚、実施例2にて説明したのと同様にして、固定部材7に更なる貫通孔を設けて、固定部材7を介したカソード3と電解液収容部12内の電解液Sとの接触を促進するようにしてもよい。又、固定部材と電解液保持部材の構成として実施例2のものと同様のものを用いることも可能であり、この場合にも、好ましくは、電解液保持部材は、少なくとも電解液収容部12内の電解液S、アノード5及びカソード3に接触するようにする。
【0124】
本実施例では、保水パッド18として、ポリエステル繊維から成る不織布のパッドを用いた。電解液保持部材としては、上記不織布のパッドの他、スポンジ、濾紙などを用いることもできる。
【0125】
以上、本実施例によれば、実施例4と同様の効果が得られると共に、センサ100をより安価で簡易な構成とすることができる。
【0126】
本発明の効果を実証するために、上記各実施例のセンサ100を用いて以下の実験を行った。
【0127】
(実験例1)
実施例1、2に従うセンサ(酸素センサ)100と、図14に示す従来の構成のセンサ200とをそれぞれ10個ずつ用意した。そして、各センサの使用初期と、2ヶ月使用後とで、酸素ガス(0%〜100%)に対するセンサ出力の変動を測定した。
【0128】
その結果、図14に示す従来の構造のセンサ200については、センサ出力の変動が±30%以上となるものがあった。これに対して、実施例1、2に従うセンサ100では、センサ出力の変動はいずれも±2%以下であった。
【0129】
(実験例2)
次に、実施例3、4に従うセンサ(酸素センサ)100の使用に伴うセンサ出力の変動について確認した。ここでは、代表例として、実施例4に従うセンサ100を用いた場合の結果を示すが、実施例3に従うセンサ100を用いても同様の結果が得られた。
【0130】
又、比較のために、実施例4に従うセンサ100と概略同様の構成を有するが、アノード5を実施例1にて用いたブロック(塊)状のものに変更したセンサを用いて同様の実験を行った。
【0131】
実施例4に従うセンサ100では、電解液Sの量は電解液収容部12の容積の1/60で、0.03mlであった。これに対し、比較例のセンサでは、電解液Sの量は電解液収容部12の容積の1/3で、0.6mlであった。即ち、比較例のセンサでは、電解液Sの量は、実施例4に従うセンサ100の約20倍である。
【0132】
結果を図13に示す。図13に示す結果から、実施例4に従うセンサ100は、比較例と比べてより良好なセンサ出力の安定性を示すことが分かる。測定終了後にカソード3の表面を観察したところ、実施例4に従うセンサ100では、鉛酸化物(酸化鉛等)の析出はほとんど見られなかったが、比較例のセンサでは、カソード3の表面に鉛酸化物が析出していた。実施例4に従うセンサ100においては、カソード3の表面への鉛酸化物の析出自体を抑制することができために、センサ出力がより安定であったものと考えられる。
【0133】
以上、本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0134】
例えば、上述の実施例では、ガルバニ電池式センサは酸素センサであるものとして説明したが、当業者には周知のように、ガルバニ電池式センサは、酸素の他、硫化水素、水素などのその他のガスの測定のためにも用いられる。本発明は、このような酸素以外の他のガスを検出対象とするガルバニ電池式センサに対しても等しく適用することができ、上述したものと同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明に係るガルバニ電池式センサの一実施例の概略断面図である。
【図2】図1に示すガルバニ電池式センサの組立部分断面図である。
【図3】図1及び図2に示すガルバニ電池式センサが備えるケース本体の上面図である。
【図4】本発明に係るガルバニ電池式センサの他の実施例の概略断面図である。
【図5】図4に示すガルバニ電池式センサの組立部分断面図である。
【図6】図4及び図5に示すガルバニ電池式センサが備えるケース本体の上面図である。
【図7】本発明に係るガルバニ電池式センサの他の実施例の概略断面図である。
【図8】図7に示すガルバニ電池式センサの組立部分断面図である。
【図9】図7及び図8に示すガルバニ電池式センサが備えるケース本体の上面図である。
【図10】本発明に係るガルバニ電池式センサの更に他の実施例の概略断面図である。
【図11】図10に示すガルバニ電池式センサの組立部分断面図である。
【図12】図10及び図11に示すガルバニ電池式センサが備えるケース本体の上面図である。
【図13】本発明に係るガルバニ電池式センサの一実施例における出力の安定性を示すグラフ図である。
【図14】従来のガルバニ電池式センサの一例の概略断面図である。
【図15】図13に示すガルバニ電池式センサにおけるアノード溶解によるアノードの形状変化を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0136】
1 ケース本体
2 隔膜
3 カソード(作用極)
4 カソード用リード(作用極用リード)
5 アノード(対極)
6 アノード用リード(対極用リード)
7 固定部材
8 Oリング(シール部材)
9 ワッシャー(押さえ部材)
10 ケース蓋(押さえ部材)
16 接着剤(封止手段、固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、
前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記隔膜及び前記作用極の少なくとも一方と前記固定部材との間で押圧されて固定されることを特徴とするガルバニ電池式センサ。
【請求項2】
前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記作用極に圧接することを特徴とする請求項1に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項3】
前記対極は、独立して前記電解液収容部内に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項4】
前記対極は、ブロック状部材から成ることを特徴とする請求項3に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項5】
前記対極は、前記電解液収容部内に充填され、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記固定部材によって前記電解液収容部内に固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項6】
前記対極は、(i)線状部材若しくは複数の線状部材の集合体、又は(ii)複数の粒状部材の集合体から成ることを特徴とする請求項5に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項7】
(a)前記対極として、線状部材若しくは複数の線状部材の集合体が用いられる場合には、該線状部材の直径は0.1mm以上2.0mm以下であり、(b)前記対極として、複数の粒状部材の集合体が用いられる場合には、該粒状部材の粒径は0.1mm以上3mm以下であることを特徴とする請求項6に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項8】
前記電解液収容部に収容される電解液は、前記電解液収容部の容積の1/100以上1/10以下であり、当該ガルバニ電池式センサの使用前に前記電解液収容部の残りの容積は実質的に前記対極によって占められていることを特徴とする請求項5、6又は7に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項9】
前記固定部材は、前記電解液収容部内の電解液を透過させることを特徴とする請求項1〜8のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項10】
前記固定部材は、多孔質部材であることを特徴とする請求項9に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項11】
前記固定部材は、多孔質セラミックス又は多孔質樹脂から成ることを特徴とする請求項10に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項12】
前記固定部材に設けられた貫通孔を通して、電解液を吸収する電解液保持部材が設けられており、該電解液保持部材は、少なくとも前記電解液収容部内の電解液及び前記作用極に接触するように配置されることを特徴とする請求項9に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項13】
前記固定部材に設けられた貫通孔を通して、電解液を吸収する電解液保持部材が設けられており、該電解液保持部材は、少なくとも前記電解液収容部内の電解液、前記対極及び前記作用極に接触するように配置されることを特徴とする請求項9に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項14】
前記作用極用リードは、前記作用極と前記電解液保持部材との間に挟持されることを特徴とする請求項12又は13に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項15】
前記対極用リードは、前記対極と前記ケース本体との間で押圧されて前記対極に圧接することを特徴とする請求項1〜14のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項16】
前記対極用リードは、前記対極に接着されることを特徴とする請求項1〜15のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項17】
前記対極と前記対極用リードの接触部に前記電解液収容部内の電解液が接触しないように、前記接触部を前記電解液収容部内の電解液に対して液密的に封止する封止手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項18】
前記封止手段は、接着剤であることを特徴とする請求項17に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項19】
前記封止手段は、前記対極を前記電解液収容部内に固定するための固定手段を兼ねることを特徴とする請求項17又は18に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項20】
前記電解液収容部の開口部は、前記対極を外部から該電解液収容部内へ移動させ得るように開口することを特徴とする請求項1〜19のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項21】
更に、前記隔膜の前記電解液収容部とは反対側の面上に配置されるシール部材と、前記シール部材を前記隔膜に押し付ける押さえ部材と、を有し、前記隔膜は、前記固定部材を取り囲むように前記ケース本体に形成された台部の全周にわたって、直接前記シール部材と前記台部との間に挟持されることを特徴とする請求項1〜20のいずれかの項に記載のガルバニ電池式センサ。
【請求項22】
電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、
前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記作用極と前記固定部材との間で押圧されて前記作用極に圧接し、前記対極は、独立して前記電解液収容部内に固定されるブロック状部材から成ることを特徴とするガルバニ電池式センサ。
【請求項23】
電解液を収容する電解液収容部を備えるケース本体と、前記電解液収容部を液密的に封止するように前記ケース本体に対して固定されて測定対象ガスを透過させる隔膜と、前記隔膜の前記電解液収容部側の面上に設けられた作用極と、前記電解液収容部内の電解液を介して前記作用極との間の電気的導通が取られる対極と、作用極用リードと、対極用リードと、を有するガルバニ電池式センサにおいて、
前記対極は前記電解液収容部内に配置され、前記作用極と前記対極との間には、前記電解液収容部の開口部の少なくとも一部を閉じるように前記ケース本体に支持される固定部材であって、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記ケース本体の支持部に対して押圧される固定部材が設けられており、前記固定部材は、前記隔膜を前記ケース本体に対して固定する力によっては実質的に変形しないよう十分に堅牢であり、前記作用極用リードは、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記隔膜及び前記作用極の少なくとも一方と前記固定部材との間で押圧されて固定され、前記対極は、前記電解液収容部内に充填され、前記隔膜が前記ケース本体に対して固定されることによって前記固定部材によって前記電解液収容部内に固定される、(i)線状部材若しくは複数の線状部材の集合体、又は(ii)複数の粒状部材の集合体から成ることを特徴とするガルバニ電池式センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−101948(P2008−101948A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283122(P2006−283122)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)