説明

ガレクチン−3の免疫アッセイ

本発明は、試料中のガレクチン−3を特異的かつ定量的に検出するための方法および組成物に関する。本発明の実施態様は、補足結合部分および標識化結合部分がガレクチン−3のN末端上の非重複エピトープを特異的に認識する検出アッセイを包含する。さらなる実施態様は、被験者における心不全の存在および重症度の指標となるガレクチン−3濃度範囲の確立方法、ならびにガレクチン−3濃度に基づいて被験者の臨床結果を予測する方法を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2008年10月29日出願の、米国仮特許出願第61/109,366号の利益およびこれに対する優先権を主張し、この全体の開示が本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
心不全(HF)は、アメリカ合衆国における主要な公衆衛生の問題である。およそ500万人がこの疾患に罹患し、患者数は着実に増加している。HFは、一般的であるが、特に高齢者にとっては深刻かつ複雑な臨床症候群である。HFは、心臓が、身体の要求に見合う十分な血液を拍出することができない状態を指す。不十分な拍出は、肝臓、腹部、下肢および肺における鬱血および他の体液の滞留を生じる。従って、HFは、鬱血性心不全(CHF)とも呼ばれているが、全ての患者が体液の滞留を示すわけではないため、用語HFが好ましい。HFは、結果的に患者を徐々に悪化させ、しばしば心血管系死亡率を招く。従って、多くの患者が、診断後1年〜5年以内に死亡する。しかしながら、一部では長期間にわたり安定したままの患者もいる。HFは、心筋梗塞または再灌流傷害によって引き起こされる心虚血とは全く異なる疾患である。
【0003】
HFの症状には、倦怠、虚弱、頻脈または不整脈、息切れ、持続性の咳または喘鳴、下肢または腹部のむくみ、体液の滞留による急激な体重の増加、食欲不振または吐き気、および胸痛が包含される。現在、HFの重要な診断試験は、構造異常があるかどうか決定するため、包括的断層心エコー図と共にドップラー血流研究である。この試験において、心機能の重要な測定である、心室から拍出された血液画分(駆出率、EF)を測定することができる。正常な心臓の駆出率は、およそ60%である。また、下記試験の1以上を使用してもよい:ラジオアイソトープ心室造影、磁気共鳴画像(MRI)、全血球計算、尿検査、血清電解質、グリコヘモグロビンおよび血液脂質、腎臓および肝機能試験、甲状腺機能試験、胸部X線写真、および12誘導心電図(12−lead electrocardiogram)。
【0004】
加えて、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)等のバイオマーカーの血液試験を実施してもよい。BNPは心筋細胞の伸長に応じて上方制御される。したがって、高レベルのBNPは、ストレス下の心臓の指標であり、心不全の良好な指標となる。しかしながら、炎症等の心不全において役割を果たす他の機序は、BNPの上昇によって反映されない可能性がある。
【0005】
HF発症リスクにある患者の早期特定は、急速な進行を防止し得る可能性がある。従って、実際にそうなる前に、心不全を発症しそうな患者を特定できることが望ましい。加えて、深刻な合併症を発症するか、または早期に死亡するリスクのある心不全に罹患した患者を特定できることが好ましい。
【0006】
現在の方法は、確実にHFを除外することは可能であるが、確実に心不全の存在を証明することはおろか、確立したHFの結果(outcome)を予測することもできない。このため、HFの症状の発現可能性を予測するための、および重症度、疾患のステージを評価し、および/またはすでに確立した心不全の結果を予測するための、の簡便かつ確実な方法が必要とされている。
【0007】
心不全において役割を果たす他の機序を反映する、さらなる生化学的マーカーを見出すため、心不全に進展した高血圧のラットと、代償性の状態にある(remained compansated )高血圧のラットを比較し、どの遺伝子が上方制御したのかを測定するためのマイクロアレイ研究が実施された(非特許文献1)。心不全に進展したラットにおいて最も強く上方制御していた遺伝子は、ベータ−ガラクトシド結合レクチンであるガレクチン−3であった。この知見は、Sharmaらによる研究において確認され、高いガレクチン−3レベルが、高血圧症のラットモデルにおける心不全発症の予兆となることを示した(非特許文献2)この研究は、さらに、心不全および過度のコラーゲン沈着を引き起こす、外部から適用されたガレクチン−3の能力を実証した。最近では、ヒト血漿および血清中のガレクチン−3濃度が、HFの重症度と相関していた(特許文献1および、対応する米国特許出願番号10/575,745を参照)。
【0008】
ガレクチンは、それらのガラクトース特異的結合によって特徴づけられたタンパク質のファミリーを構成する。全てが、炭水化物認識ドメインまたはCRDとして公知のそれらの構成領域における共通アミノ酸配列を共有している。現在、15の哺乳類ガレクチンが同定されている。一つのサブグループは、ガレクチン1,2,5,7,10,13,14および15を含有し、それぞれが単一CRDを含む。二番目のサブグループは、単一種、ガレクチン−3を含有し、PGA等の短いアミノ酸配列の繰り返しを含むN末端ドメインに連結した一つのCRDを含む。三番目のガレクチンサブグループは、ガレクチン4,6,8,9および12を含有し、それぞれが、可変長のリンカーによってつながれた二つのCRDを含む。全てのガレクチンは、顕著なアミノ酸配列相同性を有し、多くがヒトの循環器系にみられる。
【0009】
ガレクチン−3に関するアッセイは存在するが、いずれも日常的な臨床使用には適さない。これまでの好適なアッセイは、検体としてのガレクチン−3の複雑性のため、本技術分野(the art)が避けてきた。ガレクチン−3は、他の14の哺乳類ガレクチンと高度な配列類似性を共有する(特に保存された炭水化物認識ドメイン(CRD)において)ため、試料中のガレクチン−3を他のガレクチンと明確に判別することは難しい。他のガレクチンのうち、HFとの関連が公知のものはない。特異的、再現性のある検出アッセイの開発を妨げてきたガレクチン−3の他の特性は、様々なタンパク質、炭水化物、核酸および脂質に結合するガレクチン−3の性質である。血液試料等の体液において再現可能にガレクチン−3を定量的に測定するに十分に、産業的に頑健であり、感度がよくかつ特異的なアッセイが開発されれば、HFの診断および管理は改善され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2005/040817号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schroenら(2004)Circ.Res.95(5):515−22.
【非特許文献2】Sharmaら、2004 Circulation 110(19):3121−8
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
臨床試料中のガレクチン−3の検出方法は、現在、確認され、開発されている。現在、ガレクチン−3のN末端の少なくとも2つの個別の非重複エピトープに特異的に結合する2つの結合部分の使用が、HFを伴う被験者の診断および結果の予測に必要な再現性、特異性および感度を提供することが可能な様々な特異的サンドイッチアッセイ形式を産生するために使用可能であるということが発見されている。従って、本発明は、臨床試料中のガレクチン−3レベルを検出するための方法およびキットを提供する。これは、改善された疾患の管理を可能とし、トリアージおよび管理に有用な診断/予後の情報を提供する。
【0013】
1つの側面において、本発明は、試料中のガレクチン−3濃度を検出するためのキットに関する。キットは、2つの結合部分(例えば、モノクローナル抗体)を包含し、これらの少なくとも1つが検出可能な標識で標識化されている。各二つの結合部分は、下記113アミノ酸配列を含むガレクチン−3のN末端部分上の間隔をあけたエピトープ(spaced−apart epitope)にそれぞれ結合する:
【0014】
【化1】

1つの実施様態において、結合部分は、下記ガレクチン−3アミノ酸配列の内の1つの少なくとも一部によって定義されたエピトープとそれぞれ結合する:
【0015】
【化2】

これらが直線状エピトープを説明する一方、N末端の2次構造および3次構造によって生み出され、配列の間隔をあけた部分からのアミノ酸を含むエピトープを使用してもよい。
【0016】
他の実施様態において、ガレクチン−3検出に使用される結合部分は、モノクローナル抗体であり、例えば、M3/38,9H3.2および87B5である。M3/38は、ガレクチン−3のN末端上の直線状エピトープ
【0017】
【化3】

)を検出する。M3/38は、ラットハイブリドーマM3/38.1.2.8HL.2(そのクローンはATCC(登録商標)番号TIB−166によりアメリカンタイプカルチャーコレクションにおいて見出され得る)の上清から調製された。9H3.2は、ガレクチン−3の最もN末端における直線状エピトープ
【0018】
【化4】

を検出する。9H3.2は、マウスモノクローナルIgGであり、プロテインAを使用して親和性精製される。9H3.2は、Millipore(Millipore,290コンコードロード,ビレリカ,マサチューセッツ州01821,アメリカ合衆国)、カタログ番号:MAB4033から入手可能である。87B5は、
【0019】
【化5】

の部分を含む非直線状エピトープを検出する。87B5は、マウス‐マウスハイブリドーマ(X63−Ag8.653×BALB/cマウス脾臓細胞)クローン87B5から調製され、プロテインAを使用して親和性精製されたIgG2aである。87B5は、Immuno−Biological Laboratories(IBL,8201セントラルアベニューNE,スイートP,ミネアポリス,ミネソタ州55432アメリカ合衆国)から入手可能である。
【0020】
その他の側面において、本発明は被験者由来の試料中のヒトガレクチン−3レベルを検出するための方法に関する。当該方法は、試料を二重結合部分サンドイッチアッセイに供することを包含する。この方法において、少なくとも一つの結合部分は検出可能な標識で標識化され、各々の結合部分は、上記されているようなガレクチン−3のN末端部分上のそれぞれの非重複エピトープに対して特異的である。1つの実施様態において、検出可能な標識は、酵素またはフルオロフォアである。サンドイッチアッセイは、定量的結果または定性的結果(例えば、閾値を超えるガレクチン−3濃度の存在または非存在を示す結果)を提供してもよい。閾値は、例えば5〜10ng/ml、10〜15ng/ml;15〜20ng/ml;20〜25ng/ml;25〜30ng/ml;30〜35ng/ml、または35〜40ng/mlの範囲であってもよい。
【0021】
当該方法は、アッセイにおいて得られた結果と、ガレクチン−3濃度に対する結果に関連するデータセット(例えば標準曲線)とを比較して、試料中のガレクチン−3濃度を決定する工程、および、その後、推測されるガレクチン−3の濃度を、被験者がHFに罹患しているまたはHF発症のリスクがあるというリスクに関係づけ、その被験者のHFのステージもしくは重症度を評価する工程という、追加の工程を包含してもよい。もちろん、HFに罹患しているまたは発症のリスクを伴う被験者、または、被験者のHFのステージもしくは重症度を評価するため、結果とリスクとを直接的に互いに関係づけてもよい。当該方法は、傾向を得るために長期間繰り返されてもよい。被験者のHFを発症するリスクを決定するため、または被験者のHFのステージもしくはその重症度を評価するため、付加的な変数(例えば、被験者の身長、体重、年齢、性別、他のバイオマーカーのレベル等であるが、これらに限定されない)を考慮してもよい。
【0022】
他の側面において、本発明は、被験者由来の試料中のガレクチン−3濃度が15〜20ng/mlの範囲の閾値を超えるかどうかの決定を包含する、被験者における心不全の発症または進行のリスクを検出する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明によって開発されたタイプのダブルモノクローナルサンドイッチアッセイの漫画図である。
【図2】図2は、本発明の特性を説明するのに役立つガレクチン−3濃度とシグナルとを関連づける代表的な仮説の標準曲線である。
【図3】図3は、本発明の特性を説明するのに役立つガレクチン−3濃度とシグナルを関連づける代表的な第2の仮説の標準曲線である。
【図4】図4は、実施例2Eに記載される急性非代償性HF研究における、17.6ng/mlの閾値を超える、およびその閾値を下回るベースラインのガレクチン−3レベルを有する被験者に関する代表的な生存確率曲線である。
【図5】図5は、実施例2Fに記載される慢性HF研究Iにおける17.6ng/mlの閾値を超える、およびその閾値を下回るベースラインのガレクチン−3レベルを有する被験者に関する代表的な生存確率曲線である。
【図6】図6は、実施例2Gに記載される慢性HF研究IIにおける17.6ng/mlの閾値を超える、およびその閾値を下回るベースラインのガレクチン−3レベルを有する被験者に関する代表的な生存確率曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書において使用される用語「定量化する(quantify)」および「定量化する(quantitate)」は、試料対標準品試料または別の試料において(例えば、試料中のその濃度、質量、モルまたは容量に関して)、ガレクチン−3の量またはガレクチン−3の相対量を測定するプロセスを指す。
【0025】
本明細書において使用される用語「心不全」、「HF」、「鬱血性心不全」、または「CHF」は、血液を満たすか、または血液を排出する心室の能力を損なう複雑な臨床症候群を指す。損なわれた左心室(LV)の心筋機能を伴う大多数のHF患者において、いかなる構造的または機能的な心障害もHFを引き起こし得る。HFの徴候は、呼吸困難(息切れ)、疲労および体液鬱滞(fluid retention)を包含する。米国心臓協会(AHA)は、HF発症においての4つの段階を識別した。ステージAおよびBにおいて患者は、明確な危険因子を示すが、いまだHFを発症していない。ステージCおよびDにおいて患者は、現在HFの症候を呈するか、または過去にHFの症候を示した。例えば、ステージAの患者は、損なわれた左心室(LV)機能を示さない冠動脈疾患、高血圧症また糖尿病等の危険因子を有する患者である。ステージBの患者は、無症候性であるが、損なわれたLV機能、肥大または幾何学的な心室ひずみ(geometric chamber distortion)等の心臓の構造異常またはリモデリング(remodeling)を有する。ステージCの患者は、心臓の異常を有し、症候性である。ステージDの患者は、最大の医療処置にもかかわらず症状を呈する難治性HFを有する。彼らは、典型的に、繰り返し入院するか、または専門的な介入なしに病院を出ることができない。
【0026】
ガレクチン−3
ガレクチン−3(GenBankアクセッション番号:NC_000014.7(遺伝子)およびNP_002297.2(タンパク質))は、それらのガラクトース特異的結合によって特徴づけられる、15の哺乳類ベータガラクトシド結合レクチンまたは『ガレクチン』のうちの1つである。ガレクチン−3は、文献において、LGALS3、MAC−2抗原、炭水化物結合蛋白質(CBP)−35、ラミニン結合タンパク質、ガラクトース特異的レクチン3、mL−34、L−29、hL−31、イプシロンBPおよびIgE結合タンパク質として様々に呼ばれてきた。ガレクチン−3は、カルボキシル末端炭水化物認識ドメイン(CRD)およびアミノ末端タンデムリピートから構成されている(Liu,F.−T.(2000)Role of galectin−3 in inflammation.In Lectins and Pathology.M.CaronおよびD.Seve,eds.Harwood Academic Publishers,Amsterdam,The Netherlands,p.51;Liu,F.−T.ら(1995)Am.J.Pathol.147:1016)。ガレクチン−3は、通常、マクロファージはもちろん、樹状細胞およびクッパー細胞をも包含する、多くの器官の上皮および様々な炎症細胞に分布する(Flotte,T.J.ら(1983)Am.J.Pathol.111:112)。
【0027】
ガレクチン−3は、細胞−細胞接着、細胞マトリクス相互作用、食作用(phagocytosis)、細胞周期、アポトーシス、新脈管形成およびmRNAスプライシングを包含する、様々な細胞プロセスにおいて役割を果たすことが示されてきた。ガレクチン−3は、細胞内および細胞外の作用の両方を介して機能することが示されてきた(Sano,H.ら(2000)The Journal of Immunology,165:2156−2164)。それは、ヘテロ核リボヌクレオタンパク質(hnRNP)の構成成分であり(Laing,J.G.ら(1998)Biochemistry 27:5329)、プレmRNA(pre−mRNA)スプライシングにおける因子であり(Dagher,S.F.ら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1213)、および、細胞周期を制御すること(Kim,H.−R.C.ら(1999)Cancer Res.59:4148)およびBcl−2ファミリーメンバーとの相互作用を介してT細胞アポトーシスを妨げること(Yang,R.−Y.ら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:6737)が見出されている。一方、単球/マクロファージ(Sato,S.ら(1994)J.Biol.Chem.269:4424)および上皮細胞(Lindstedt,R.G.ら(1993)J.Biol.Chem.268:11750)から分泌されるガレクチン−3は、単球/マクロファージ(Liu,F.−T.(1993)Immunol Today 14:486)、肥満細胞、好中球およびリンパ球(Hsu,D.K.,S.R.ら(1996).Am.J.Pathol.148:1661)等の様々なタイプの細胞の活性化において細胞外分子として機能することが実証されてきた。ガレクチン−3は、単球およびマクロファージのための新規な化学遊走物質として作用することが示されてきた(Sano,H.ら(2000)The Journal of Immunology,2000,165:2156−2164)。ガレクチン−3は、癌、炎症および心不全等の疾病および病状に関係している。国際特許公開公報番号WO2005/040817に開示されるように、ガレクチン−3の定量化は、HFの重症度を診断および検出、ならびに結果を予測するためのアッセイにおける使用に特に好適である。
【0028】
他の哺乳類ガレクチンと異なり、ガレクチン−3は、以下のアミノ酸配列を含む、異型のN−末端ドメインを含む:
【0029】
【化6】

検査から認めることができるように、ガレクチン−3のN末端配列は、他の哺乳類ガレクチンの配列と非類似であるが、介在するプロリン、グリシン及びチロシンリッチ領域を伴う、PGAYPG(X)1−4(配列番号2)タイプの複数の反復を含む。N末端ドメインの反復配列の存在は、検出アッセイの開発を複雑にする、ガレクチン−3特異的な異なる潜在的エピトープの数を減少させる。しかしながら、N末端エピトープは、確実にガレクチン−3と他の哺乳類ガレクチンを区別可能であることが現に発見された。本明細書に開示されるアッセイの使用により、ガレクチン−3の臨床結果を、確実かつ再現可能に、被験者におけるHFの存在、重症度および進行のステージと関連させることが可能である。代表的なN末端エピトープは、
【0030】
【化7】

を包含するが、これらに限定されない(ここで、文字は、標準アミノ酸コードを表わす)。
他のエピトープは、一次構造上に間隔をあけたアミノ酸を含むN末端上に現われるが、三次構造においては共に提示され、これらは、また、本発明のアッセイにおいて使用される結合剤によって処理(addressed)され得る。
【0031】
サンドイッチアッセイによるガレクチン−3の検出
本発明の方法によれば、ガレクチン−3の濃度は、特異的にガレクチン−3のN末端部分に結合する一対の結合部分を使用して、体液試料で定量化されてもよい。「結合部分」は、ポリペプチドまたはペプチドと選択的にまたは優先的に結合または相互作用する分子を指す。結合部分の例は、抗体、ガレクチン結合タンパク質(GBP)相互作用融合タンパク質、ペプチドアプタマー、アヴィマー(avimer)、Fab、sFv、アドネクチンおよびAffibody(登録商標)リガンド等のタンパク質;DNAおよびRNA(ヌクレオチドアプタマーを包含する)等の核酸、ならびに膜脂質等の脂質を包含するが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の方法および組成物を、HF診断用に、血清等の臨床試料中のガレクチン−3濃度を検出するために使用することができる。本発明の方法によれば、ガレクチン−3の検出において使用される試験サンプルは、任意の体液または組織試料であってもよく、全血、血清、血漿またはリンパ液、および好ましさは劣るが、尿、胃液、胆汁、唾液、汗、および脊髄液、便または筋肉生検を包含するが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、試料は血液試料である。他の実施態様において、試料は血漿試料である。また、血清試料を使用してもよい。さらに、体液は処理されても(例えば血清)、処理されなくてもよい。被験者から体液を得る方法は、当業者に公知である。
【0033】
本発明の方法によれば、ガレクチン−3は「サンドイッチ」アッセイを用いて検出および定量化される。この実施態様において、ガレクチン−3のN末端上の非重複部位(「エピトープ」)に特異的に結合するモノクローナル抗体等の2つの分子(「結合部分」)が使用される。図1を参照。典型的には、1つの結合部分は、それがガレクチン−3に結合し、捕捉する固体表面上に固定化される。従って、この第1結合部分も、本明細書において捕捉結合部分と呼ばれる。第2結合部分のガレクチン−3複合体への結合が、ガレクチン−3が捕捉されたことを示すように、例えば、フルオロフォア、酵素、または着色粒子で第2結合部分を検出可能に標識する。シグナル強度は、試料中のガレクチン−3濃度に比例する。従って、第2結合部分も、本明細書において、検出結合部分または標識結合部分と呼ばれる。結合部分は、ガレクチン−3のN末端の一部に特異的に結合する限り、どのようなタイプの分子であってもよい。好ましい実施態様において、使用される結合部分は、モノクローナル抗ガレクチン−3抗体(すなわち、ガレクチン−3のN末端113アミノ酸の別々の部分に対して産生された、あるいはその部位に結合するために選択された単クローン)である。
【0034】
そのようなアッセイ手法は、2−部位イムノメトリックアッセイ法(two− site immunometric assay method)、すなわち「サンドイッチ」法または(抗体が結合剤である場合)「サンドイッチイムノアッセイ」と呼ばれ得る。当該技術分野において公知であるように、捕捉抗体および検出抗体を、試験試料と同時または順次接触させてもよい。逐次的な方法(時に「前進(forward)」法と呼ばれる)は、試料と共に捕捉抗体をインキュベーションし、そしてその後の所定時間に標識化検出抗体を添加することによって達成され得る。あるいは標識化検出抗体を、最初に試料とともにインキュベーションし、その後、当該試料を捕捉抗体に曝露してもよい(時に、「逆行」法と呼ばれる)。任意の必要なインキュベーション(複数可)の後(短期間であってもよい)の後、標識を検出し、また、測定してもよい。そのようなアッセイは、様々なハイスループット臨床検査室アナライザーの使用を通し、ケアの目的で(with point of care)または家庭用試験デバイスを包含する、当業者に公知の多数の特定の形式において実行されてもよい。
【0035】
1つの実施態様において、ベースライン感度レベルを超える生体試料中のガレクチン−3の存在が、側方流動アッセイにおける捕捉ゾーンの上流または捕捉ゾーンでのサンドイッチ相互作用の形成を可能にする、サンドイッチ方式において、側方流動デバイスを使用してもよい。例えば、米国特許番号6,485,982を参照。本明細書に使用される捕捉ゾーンは、ガレクチン−3の捕捉に好適な抗体分子か、またはビオチン化複合体の捕捉用の固定化アビジン等の捕捉結合部分を含有してもよい。例えば、米国特許番号6,319,676を参照。また、デバイスは、捕捉ゾーンでの捕捉に好適な発光標識を組込んでもよい(ガレクチン−3濃度は捕捉部位でのシグナル強度に比例する)。好適な標識は、ポリスチレンミクロスフェア上に固定化された蛍光標識を包含する。また、着色粒子を使用してもよい。
【0036】
本発明の方法において使用され得る他のアッセイ形式は、フロースルーデバイス(flow−through device)を包含するが、これに限定されない。例えば、米国特許番号4,632,901を参照。フロースルーアッセイにおいて、1つの結合部分(例えば、抗体)は、膜表面の規定の領域に固定化される。その後、この膜を、デバイスを通して試料容量を送るための貯蔵器(reservoir)としてはたらく吸収層(absorbent layer)にのせる。固定に続き、膜上の残りのタンパク結合部位を、非特異的な相互作用を最小化するためにブロックする。操作において、試料中の抗体に特異的な任意の検体が固定化された抗体に結合するように、膜に生体試料を添加し、濾過する。第二工程において、サンドイッチを完了するため、捕捉マーカーと反応する標識化二次抗体を添加または放出してもよい。あるいは、二次抗体を試料と混合し、単一工程において添加されてもよい。ガレクチン−3が存在する場合、着色スポットは膜表面上に現れる。
【0037】
最も一般的な酵素免疫測定法は、「酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)」である。ELISAは、標識化(例えば、酵素連結)形態の抗体を使用して抗原の濃度を検出および測定する技術である。異なる形態のELISAが存在し、それは当業者に周知である。当該技術分野において公知のELISAに関する標準的な技術は、“Methods in Immunodiagnosis”,第2版,Rose及びBigazzi編集,John Wiley&Sons,1980;Campbellら,“Methods and Immunology”,W.A.Benjamin,Inc.,1964;およびOellerich,M.(1984),J.Clin.Chem.Clin.Biochem.22:895−904に記載される。
【0038】
「サンドイッチELISA」において、抗体(例えば、抗ガレクチン−3)は、固相(すなわち、マイクロタイタープレート)に連結され、抗原(例えば、ガレクチン−3)を含有する生体試料に曝露される。その後、固相を、非結合抗原を除去するために洗浄する。その後、標識化抗体(例えば、酵素連結)は、結合抗原に結合し、抗体−抗原−抗体サンドイッチを形成する。抗体に連結され得る酵素の例は、アルカリフォスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、ウレアーゼおよびβ−ガラクトシダーゼである。酵素結合抗体は基質と反応して、測定することができる着色した反応生成物を生じる。この測定値を使用して、例えば、その測定値をガレクチン−3標準曲線と比較することにより、試料中に存在するガレクチン−3濃度を得ることができる。被験者からの試料中のガレクチン−3濃度は閾値を超えるか、または下回って測定され得る。閾値は、例えば5〜10ng/ml、10〜15ng/ml;15〜20ng/ml;20〜25ng/ml;25〜30ng/ml;30〜35ng/ml、または35〜40ng/mlの範囲であってもよい。
【0039】
本発明のキットおよび方法による使用に好適な本明細書に記載される免疫測定法のいずれもが、抗体に代えて任意の結合部分も使用することができる。
【0040】
結合部分
本発明の好ましい実施態様において、抗ガレクチン−3抗体(好ましくはモノクローナル抗体)は結合部分として使用される。
【0041】
モノクローナル抗体
本発明の好ましい実施態様において、モノクローナル抗体が使用される。モノクローナル抗体は、任意の真核生物、原核生物、またはファージクローンを包含する単一のクローンに由来する抗体を指す。モノクローナル抗体は、2つのタンパク質(すなわち、重鎖および軽鎖)を含むか、または2つのタンパク質からなってもよい。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレー技術の使用、またはこれらの組み合わせを包含する当該技術分野において公知の多様な技術の1つを使用して調製され得る。
【0042】
抗ガレクチン−3モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein(1975),Nature.256:495によって記載されるような精ハイブリドーマ(seminal hybridoma)法を包含する、任意の公知の方法論を使用して調製され得る。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を、免疫剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生することが可能なリンパ球を誘発するために免疫剤で免疫する。あるいは、リンパ細胞はin vitroで免疫されてもよい。
【0043】
免疫剤は、典型的にはガレクチン−3ポリペプチドの少なくとも一部、またはそれらの融合タンパク質を包含する。例えば、任意のガレクチン−3のN末端エピトープを含む合成ポリペプチドまたは組換えポリペプチドを、免疫剤として使用してもよい。代表的なN末端エピトープは、
【0044】
【化8】

を包含するが、これらに限定されない。融合タンパク質は、キャリアタンパク質(例えばキーホールリンペットヘモシニアン(KLH,EMD Biosciences,サンディエゴ,カリフォルニア州)、BSA(EMD Biosciences,サンディエゴ,カリフォルニア州)、またはオボアルブミン(Pierce,Rockford,III)にポリペプチドを融合させることにより作製され得る。免疫剤は、様々な標準法のうちのいずれかに従うアジュバントを用いて、または用いずに哺乳動物に投与されてもよい。免疫剤は、1度だけ投与されてもよいが、好ましくは標準ブースティングスケジュールに従って1回より多く投与される。
【0045】
一般に、ヒト起源の細胞が望まれる場合には、末梢血リンパ球(「PBL」)が使用されるか、または非ヒト哺乳類源が望まれる場合には、脾臓細胞もしくはリンパ節細胞が使用されるかのいずれかである。その後、リンパ球を、ポリエチレングリコール等の好適な融合剤を使用して不死化された細胞株と融合して、ガレクチン−3のN末端部分上のエピトープに対して適切な特異性および親和性を有する種についてスクリーニングされたハイブリドーマ細胞集団を形成する(Goding,(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,pp.59−103)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳類細胞、特にげっ歯類、ウシおよびヒト起源のミエローマ細胞である。通常、ラットまたはマウスミエローマ細胞株が採用される。ハイブリドーマ細胞を、好ましくは、非融合、不死化細胞の成長または生存を阻害する1以上の物質を含有する好適な培養培地中で培養してもよい。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠乏する場合、ハイブリドーマの培養培地は、典型的には、(それらの物質がHGPRT欠損細胞の成長を抑制する)ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを包含する(「HAT培地」)である。
【0046】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体生産細胞による抗体の安定した高レベルの発現を支持し、HAT培地等の培地に感受性なものである。より好ましい不死化細胞株は、例えば、ソーク・インスティテュート・セル・ディストリビューションセンター(サンディエゴ、カリフォルニア州)およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(マナッサス、ヴァージニア)から得ることができるマウスミエローマ細胞株である。また、ヒトミエローマおよびマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株は、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor,J.(1984)Immunol.,133:3001;Brodeurら,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc., New York,(1987)pp.51−63)。
【0047】
その後、例えば、標識化ガレクチン−3N末端ポリペプチドを用いたスクリーニングによって、ガレクチン−3のN末端に対して向けられたモノクローナル抗体の存在について、ハイブリドーマ細胞が培養される培養培地をアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって生産されたモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降、またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)等のin vitro結合アッセイによって測定される。そのような技術およびアッセイは、当該技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、MunsonおよびPollard(1980),Anal.Biochem.,107:220のスキャッチャード解析によって測定され得る。結合特異性を測定する様々な解析プロトコルは、キット、またはサービスとして商業的に入手可能である。
【0048】
また、モノクローナル抗体は、米国特許番号4,816,567に記載されたもの等の組換えDNA法によって作製されてもよい。適切なモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブの使用によって)単離し、配列決定することができる。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。一旦分離されれば、組換えの宿主細胞中にモノクローナル抗体の合成を得るため、DNAは発現ベクター中に置かれ、その後、それらは免疫グロブリンタンパク質を他に(otherwise)産生しないサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞等の宿主細胞中にトランスフェクトされる。また、DNAは、例えば、相同なマウス配列(米国特許番号4,816,567;Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851)に代えて、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することにより、または非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全てまたは一部に免疫グロブリンコード配列を共有結合することによって改変されてもよい。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインと置換することができ、またはキメラ二価抗体を作出するために本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインと置換することができる。
【0049】
抗体は一価抗体であってもよい。一価抗体の調製方法は、当該技術分野において周知である。例えば、1つの方法は、免疫グロブリン軽鎖および改変された重鎖の組換え発現を含む。重鎖は、重鎖架橋を防ぐように、一般にFc領域の任意の箇所で切断される。あるいは、適切なシステイン残基が別のアミノ酸残基と置き換えられるか、または架橋を防ぐように欠失される。
【0050】
また、in vitro法は、一価の抗体を調製するために好適である。そのフラグメント(特にFabフラグメント)を産生するための抗体の消化は、当該技術分野において公知の常用技術を用いて達成され得る。
【0051】
また、抗体をファージディスプレーライブラリーを使用して産生することもできる(HoogenboomおよびWinter(1991),J.Mol.Biol.227:381;Marksら(1991),J.Mol.Biol,222:581)。さらに、ColeらおよびBoernerらの技術は、モノクローナル抗体の調製に利用可能である(Coleら(1985),Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77およびBoernerら(1991),J.Immunol.,147(1):86−95)。同様に、抗体を、トランスジェニック動物(例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されたマウス)へ免疫グロブリン遺伝子座を導入することにより作製することができる。
【0052】
また、抗体を、上記のような公知の選択および/または変異誘発法を使用して親和性成熟させてもよい。好ましい親和性成熟抗体は、成熟抗体が調製される出発抗体よりも5倍、より好ましくは10倍、さらに好ましくは20倍または30倍より大きい親和性を有する。特に好ましい実施態様において、ガレクチン−3を検知するために使用される抗体はモノクローナル抗体(例えば、M3/38、9H3.2および87B5)である。M3/38は、ガレクチン−3のN末端上の直線状エピトープ
【0053】
【化9−1】

を検出する。M3/38は、ラットハイブリドーマM3/38.1.2.8HL.2の上清から調製され、そのクローンはアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションにおいてATCC(登録商標)番号TIB−166により見出され得る。9H3.2は、ガレクチン−3の最もN末端の直線状エピトープ
【0054】
【化9−2】

を検出する。9H3.2は、マウスのモノクローナルIgGであり、プロテインA(protein A)を用いて親和性精製される。9H3.2はMillipore(Millipore,290コンコードロード,ビレリカ,マサチューセッツ州01821,USA)から、カタログ番号:MAB4033により入手可能である。87B5は、
【0055】
【化9−3】

の部分を含む非直線状エピトープを検出する。87B5は、マウス−マウスハイブリドーマ(X63−Ag8.653×BALB/cマウス脾臓細胞)クローン87B5から調製され、プロテインAを用いて親和性精製されたIgG2aである。87B5は、Immuno−Biological Laboratories(IBL,8201 セントラルアベニューNE,スイートP,ミネアポリス,ミネソタ州55432 USA)から入手可能である。
【0056】
現在の好ましい実施態様においては、捕捉結合部分は、抗ガレクチン−3モノクローナル抗体M3/38であり、標識化検出結合部分が2次抗ガレクチン−3モノクローナル抗体87B5である。これらの抗体に対して与えられた表記(designation)は、制限されない。他の実施態様において、捕捉抗体は9H3.2であり、標識化検出結合部分はM3/38である。また、上記エピトープを認識する他の抗体を使用してもよい。
【0057】
他の結合部分を、本発明の方法およびキットと共に使用してもよい。結合部分の例は、タンパク質、ペプチドアプタマー、アヴィマー、アドネクチンおよびAffibody(登録商標)配位子;DNAおよびRNA等の核酸(ヌクレオチドアプタマーを包含する)、および膜脂質等の脂質を包含するが、これらに限定されない。
【0058】
アプタマー
ヌクレオチドアプタマーは、選択される標的への高い親和性で結合する、小さなペプチドまたは小さなヌクレオチド配列である。ヌクレオチドアプタマーは、in vitroの選択またはin vitroの進化とも呼ばれる、試験管内進化法(systematic evolution of ligands by exponential enrichment)(SELEX)と呼ばれる選択プロセスによって産生される。この手法において、標的分子は、大きく、無作為に作出されたオリゴヌクレオチドライブラリーに曝露される。非結合オリゴヌクレオチドを、幾つもの方法(通常、アフィニティークロマトグラフィー)によって混合物から分離する。結合されたままのオリゴヌクレオチドを溶出し、増幅する。その後、標的分子を、新たに合成されたオリゴヌクレオチドに曝露し、非結合配列を分離するために徐々にストリンジェントを高めた条件で選択プロセスを数ラウンド繰り返す。その後、結果として生じるオリゴヌクレオチドを、それらの実体(identity)を決定するために配列決定する。米国特許出願番号07/536,428;米国特許番号5,475,096;および米国特許番号5,270,163を参照。
【0059】
ペプチドアプタマーは、典型的には短い可変ペプチドドメインからなる。ペプチドアプタマーは、両端でタンパク質スキャフォールドへと結合した可変ペプチドループを含む。この二重構造の拘束は、ペプチドアプタマーの結合親和性を抗体のそれに匹敵するレベル(ナノモル範囲)まで著しく増加する。可変ループ長は、典型的には10〜20のアミノ酸であり、スキャフォールドは、可溶性且つ小型の任意のタンパク質(バクテリアタンパク質チオレドキシンA等)であってもよい。可変ループを、チオレドキシンAの還元活性部位内(野生型タンパク質における−Cys−Gly−Pro−Cys−ループ)に挿入することができ、2つのシステイン側鎖がジスルフィド架橋を形成することができる。ペプチドアプタマーの選択は、酵母ツーハイブリッド系等の異なるシステムを使用して行われ得る。ペプチドアプタマーのさらなる議論については、国際特許公報番号WO2007/117657を参照。
【0060】
アヴィマー
アヴィマー(結合活性(avidity)マルチマー)は、標的に対する低い親和性の複数の領域を含有する短いペプチド配列である。低親和性の複数の固有領域の存在は、高親和性結合部分の産生のために共に作用する。小さいサイズおよび高ジスルフィド密度は、アヴィマーの低い免疫原性に寄与する。対象のタンパク質に対する高い結合親和性を有するアヴィマーを同定するため、高度に多様なモノマーのプールを合成組換えによって生み出す。このモノマーのプールは、ファージディスプレーまたは他の好ましいスクリーニング法を用いて標的タンパク質に対してスクリーニングされ得る。一旦候補が見つかれば、他のモノマーが添加され、新たな二量体のライブラリーが標的に対してスクリーニングされる。反復の後、その標的タンパク質に対して非常に高い結合親和性を有する三量体が分離される(Silvermanら(2005),Nature Biotechnology 23,1556−1561を参照)。
【0061】
アドネクチン
アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンの特定ドメインの天然アミノ酸配列のバックボーン、および無作為化配列を含有する1〜3の標的ループからなる。アドネクチンは、対象の治療標的を特異的に認識する能力に基づいてスクリーニングされ、単離される(例えば、米国特許番号6,818,418を参照)。
【0062】
Affibody(登録商標)リガンド
Affibody(登録商標)リガンドは、「スキャフォールド」ドメインおよび可変ドメインからなる小さなペプチドである。「スキャフォールド」ドメインは、非システインスリーへリックスバンドルドメイン(ブドウ球菌プロテインAに基づく構造)を含む。可変ドメインは、対象の標的に対してスクリーニングされ得る無作為に作出された配列を含有する。Affibody(登録商標)リガンドライブラリーを構築し、ライブラリーを対象のタンパク質への高い結合親和性を有する候補を見つけるためにスクリーニングすることができる。Nygren,P.−Å.(2008)FEBS Journal 275,2668−2676を参照。
【0063】
天然に存在する結合パートナー
ガレクチン−3のN末端に結合する天然に存在するガレクチン−3結合パートナーを、単離または組換えで産生することができ、結合部分として使用できる。ガレクチン−3結合パートナーまたはそのフラグメントを、アッセイの特定の制約(constraint)に依存して、捕捉結合部分または検出結合部分のいずれかとして使用することができる。ガレクチン−3結合パートナーの例は、ミコール酸およびリポポリサッカリド(Barboniら(2005)FEBS Letters 579:6749−6755)を包含するが、これらに限定されない。加えて、ガレクチン−3の循環は、自己免疫反応を誘発し、結果として正常および病的状態の両方において血清中のガレクチン−3に対する自己抗体の生成を生じる(Jensen−Jarolimら(2001)J Clin Immunol.21(5):348−56;Limら(2002)Biochem Biophys Res Commun.295(1):119−24;Mathewsら(1995)J Clin Immunol.15(6):329−37)。これらの自己抗体は、ガレクチン−3のN末端ドメイン上のエピトープに対する標的となるようである(上記Mathewsら)。
【0064】
捕捉
捕捉結合部分の重要な特性は、それが試験混合物の残部からの分離手段を提供するということである。従って、当該技術分野において理解されているように、捕捉結合部分は、すでに固定されるか、不溶性の形態(すなわち、試験溶液の残部から複合体を分離することを可能にする形態)でアッセイに導入され得る。あるいは、固定化は、試料へ捕捉結合部分の可溶性形態の導入後のガレクチン−3を含む免疫複合体の捕捉によって行われてもよい。固定化捕捉結合部分の例は、磁気粒子、ラテックス粒子、マイクロタイタープレートウェル、膜、チップ、ビーズ、キュベット、アレイ、または他の反応容器もしくはホルダー等の固相に共有結合でまたは非共有結合で接着された結合部分である。可溶性捕捉結合部分の例は、リガンド(例えば、ハプテン、ビオチン等)によって化学的に改変された結合部分であり、それはガレクチン−3を包含する複合体の選択的捕捉を可能にするためのホックとして作用する。固相に捕捉結合部分をつなぐ方法は、当該技術分野において周知である。これらの方法は、例えば、二官能性結合剤を採用してもよく、または固相は接触する分子を結合する反応性基(エポキシドまたはイミダゾール等)によって誘導体化されてもよい。異なる標的タンパク質に対する生物特異的捕捉試薬を、同じ場所で混合することができ、またはそれらを異なる物理的配置もしくは処理可能な(addressable)配置で固相表面に結合させることができる。
【0065】
標識
本発明の方法によれば、使用される標識は、当該技術分野において従来から公知の任意のものから選択され得る。好ましい標識は、より正確な定量化を可能とするものである。標識の例は、蛍光性部分、酵素、電気化学的活性種、放射性同位体、化学発光分子、ラテックスまたは金粒子、検知可能なリガンド等(例えば、リガンドに対する標識化結合パートナーの2次結合によって検出できる)等を包含するが、これらに限定されない。好ましい実施態様において、標識は酵素または蛍光性分子である。結合部分に標識を付ける方法は、当該技術分野において周知であり、共有結合および非共有結合を包含する。
【0066】
1つの実施態様において、結合部分は、蛍光性化合物によって標識化され得る。蛍光標識化結合部分が適切な波長の光に曝露された場合、その存在は、その後、発光した蛍光によって検出され得る。最も一般に用いられている蛍光性標識化合物のなかには、Cy3およびCy5(シアニン染料ファミリーの水溶性の蛍光染料−「Cy」染料)、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒドおよびフルオレサミンがある。
【0067】
他の実施態様において、酵素に結合部分を連結することによって、検出結合部分を検出可能に標識化する。酵素は、次には、その基質に曝露された場合、例えば分光光度法、蛍光定量法または視覚的方法によって検出され得る化学的部分を産生するように基質と反応する。本発明の結合部分を検出可能に標識化するために使用され得る酵素は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ブドウ球菌ヌクレアーゼ、デルタ―V−ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ−グリセロリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ―ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース−VI−リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼおよびアセチルコリンエステラーゼを包含するが、これらに限定されない。
【0068】
また、検出は、放射性標識化結合部分を用いて達成され得る。そして、放射性免疫測定法の使用を通して、結合部分の検出が可能である。放射性同位体は、ガンマカウンターまたはシンチレーションカウンターの使用のような手段、またはオートラジオグラフィーによって検出され得る。本発明の目的のために特に有用な同位体は、H、131I、35S、14C、そして好ましくは125Iである。
【0069】
また、結合部分は、化学発光化合物にそれをつなぐことにより検出可能に標識化され得る。その後、化学発光結合部分の存在は、一連の化学反応の間に生じる発光の存在を検出することにより測定される。特に有用な化学発光標識化化合物の例は、ルミノール、ルシフェリン、イソルミノール、セロマティックアクリジニウムエステル(theromatic acridinium ester)、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。
【0070】
ガレクチン−3の代替形態
ガレクチン−3は、検出可能な異なる質量によって特徴づけられる複数の異なる形態で試料中に存在する。これらの形態は、翻訳前修飾、翻訳後修飾またはこれらの両方から生じ得る。翻訳前修飾形態は、対立遺伝子変異体、スプライス変異体、およびRNAエディティングフォームを包含する。翻訳後修飾形態は、とりわけ、タンパク質分解による切断(例えば、親タンパク質のフラグメント)、複合体化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、酸化、メチル化、システイン化、スルホン化、およびアセチル化から生じる形態を包含する。ガレクチン−3の修飾形態は、それらが適切なN末端エピトープを保持する限り、本発明の方法によって検出され得る。
【0071】
診断・予後用途
本発明のガレクチン−3アッセイを、HF発症リスクを伴う被験者の同定、またはHFに罹患した被験者の同定に使用することができる。この方法において、HF発症のリスクが同定された患者または他の被験者を、本発明のイムノアッセイを用いて経時的に体液から定量化されたガレクチン−3レベルの変化についてモニターしてもよい。特定の実施態様において、HF発症のリスクが同定された被験者は、経時的に、例えば毎月、年4回、年2回、毎年、2年ごと、または5年ごとに彼または彼女のガレクチン−3レベルをモニターしてもよい。
【0072】
他の実施態様において、被験者におけるHFの存在、ステージもしくは重症度を測定するための診断マーカーとして、または試料中のガレクチン−3の濃度を測定し、この結果と、ガレクチン−3濃度とヒト被験者のHF疾患の重症度またはステージが相関するデータとを比較することにより、彼または彼女の予後を予測するための診断マーカーとして、ガレクチン−3を使用してもよい。本明細書に記載される診断および/または予後の予測方法は、当該技術分野において通常使用される他の診断および/または予後の予測方法(ドップラー解析による心エコー図、ラジオアイソトープ心室造影、磁気共鳴画像(MRI)、全血球計算、尿検査、血清電解質、グリコヘモグロビンおよび血液脂質、腎臓および肝臓機能試験、甲状腺機能試験、胸部X線写真、12誘導心電図、BNP等のバイオマーカーに関する血液試験等)等と組み合わせてもよい。
【0073】
他の使用
また、本発明の方法およびキットは、ガレクチン−3濃度の増加または濃度の減少によって特徴づけられる他の状態の検出における使用に好適である。このガレクチン−3の発現は、炎症(Flotteら(1983)Am.J.Pathol.111:112.)、細胞増殖(Agrwalら(1999)J.Biol.Chem.264:17236)および細胞分化(Nangia−Makkerら(1993).Cancer Res.53:1)の間、ならびにウイルスタンパク質によるトランスアクチベーションを通して(Hsu,D.ら(1996)Am.J.Pathol.148:1661)上方制御される。また、その発現は、腫瘍性の形質転換によって影響される。例えば、ガレクチン−3の上方制御は、特定のタイプのリンパ腫(Hsu,D.ら(1996)Am.J.Pathol.148:1661)および甲状腺癌(Fernadez,P.L.ら(1997)J.Pathol.181:80)において見出される一方、ガレクチン−3は、結腸癌(Lotz,M.M.ら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3466)、乳癌(Castronovo,V.,F.A.ら(1996)J.Pathol.179:43.)、卵巣癌(Van den Bruele,F.A.ら(1994)Eur.J.Cancer 30A:1096)および子宮癌(Van den Bruele,F.A.ら(1996)Hum.Pathol.27:1185)等の他のタイプの悪性疾患において下方制御される。ガレクチン−3の発現は、原発性脳腫瘍のグレードおよび悪性度と強い相関がある(Bresalier,R.ら(1997).Cancer 80:776)。
【0074】
ガレクチン−3は、糖尿病および高血圧症における自己免疫障害および血管合併症を包含する、多くの他の疾患、状態および障害において役割を果たす。ガレクチン−3は、炎症性疾患によって影響を受けた組織において検出されている。例えば、ガレクチン−3は、炎症性眼疾病(Hrdlickova−Celaら(2001),Br J Ophthalmol,85:1336−40)を伴う患者の涙の中に検出された。また、増加したガレクチン−3レベルは、ヒト粥状動脈硬化病変においても記録されている(Ohshimaら(2003),Arthritis Rheum,48:2788−95;Nachtigalら(1998),Am J Pathol,152:1199−208)。
【0075】
キット
また、本発明は、HFのリスクの増加の検出、HFの存在の診断、HFの重症度の決定、HFを伴う被験者の予後の予測に有用なガレクチン−3の定量化のためのキットを提供する。キットは、体液中のガレクチン−3のレベルを定量化するための、1以上の結合部分を含んでいてもよい。例えば、キットは、ガレクチン−3のN末端上のエピトープを特異的に認識する捕捉結合部分および検出結合部分を含むことができる。捕捉結合部分および検出結合部分は、ガレクチン−3に対して免疫特異的な抗体を含んでもよい。1つの実施態様において、キットは2つの抗ガレクチン−3モノクローナル抗体(例えばM3/38、9H3.2または87B5)を含む。キットに存在する捕捉結合部分は、固体表面(例えば、プラスチックもしくはガラス容器、またはスライドであるが、これらに限定されない)へあらかじめ結合させてもよい。キットは、試料と結合部分とを混合するための容器をさらに含んでもよい。そのような容器は、検出結合部分によって産生されるシグナルを検出することが可能な検出器具による使用に好適であるり得る。キットは、同一の疾患を示す2次マーカーのレベルを測定するための1以上の試薬(例えば、異なる抗体)をさらに含んでもよい。
【0076】
本発明のキットは、さらに下記の1以上を含んでもよい:(1)ガレクチン−3レベル測定用キットの使用のための指示書;(2)キットに存在する任意の抗体の標識化結合パートナー;(3)その上に任意のそのような抗体を固定化する固相(試験紙(reagent strip)等);ならびに(4)診断的使用、予後的使用、または治療的使用、またはそれらの任意の組み合わせに関して規制の承認を示すラベルまたは挿入物。抗体に対する標識化結合パートナーが提供されない場合、抗体そのものを検出可能なマーカー(例えば、化学発光部分、酵素部分、蛍光部分、または放射性部分)で標識化することができる。
【実施例】
【0077】
本発明を、さらに以下の実施例によって説明する。実施例は説明の目的でのみ提供され、いかなる方法によっても本発明の範囲および内容を限定するものとして解釈されない。
【0078】
実施例1:
ヒトガレクチン−3の定量的検出のための酵素結合免疫吸着測定法
ヒトガレクチン−3ELISAは、EDTA血漿中のヒトガレクチン−3の定量的検出のための酵素結合免疫吸着測定法である。試料中に存在するヒトガレクチン−3、または抗体に結合した標準品(standard)をマイクロウェルに吸着させた。インキュベーションの後、非結合物質を洗浄工程の間に除去した。抗ヒトガレクチン−3抗体に結合したHRPが添加され、コーティング抗体によって捕捉されたガレクチン−3に結合した。インキュベーションの後、非結合HRP結合体を洗浄工程の間に除去し、そしてHRPと反応性の基質溶液をウェルに添加した。着色生成物は、試料中または標準品中に存在するヒトガレクチン−3の量に比例して形成された。反応を酸の添加によって停止し、450nmの吸光度を測定した。標準曲線は7つのヒトガレクチン−3標準品希釈物から調製され、そしてヒトガレクチン−3試料の濃度を決定した。血漿を、血液試料の凝固および分離後、凝結塊または細胞からできるだけ早く除去した。目に見える沈殿を含有する試料を、アッセイにおける使用に先立って澄明化した。著しく溶血した標本または脂血標本は使用されなかった。試料を等分し、生物活性ヒトガレクチン−3の損失を回避するため−20℃で凍結保存した。アッセイに先立って、凍結試料を室温まで徐々にもどし、穏やかに混合した。
【0079】
アッセイにおける使用のため以下の試薬を調製した。50mlの洗浄バッファー濃縮物(20×、1%Tween20を含むPBS)を、清潔な1000mlのメスシリンダーへ混合することにより洗浄バッファー(1×)を調製した。最終容量は脱イオン水により1000mlにし、この溶液を穏やかに混合した。最終溶液のpHを7.4に調整した。洗浄バッファー(1×)を清潔な洗瓶に移した。
【0080】
清潔な100mlのメスシリンダーへ5mlのアッセイバッファー濃縮物(20×、1%Tween20および10%BSAを含むPBS)を添加することにより、アッセイバッファーを調製した。最終容量を脱イオン水で100mlし、この溶液を穏やかに混合した。
【0081】
清潔なプラスチックチューブ中のアッセイバッファー(1×)において、濃縮HRP結合体溶液を1:100の比率で希釈した。ヒトガレクチン−3標準品を蒸留水の添加によって60ng/mlまで希釈し、混合物を完全かつ均質な可溶化を確保するために穏やかに回転した。希釈物の作製に先立ち、再構成された標準品を10分間放置した。
【0082】
外部標準品希釈物を作製するため、7本のチューブを、各々の標準ポイントに対して1つ、表記した(Sl、S2、S3、S4、S5、S6、S7)。連続希釈物を、1:2の比率で以下のように調製した:225μlの試料希釈剤を各チューブへピペットで移した。225μlの再構成された標準品(濃度=60ng/ml)を、最初のチューブへピペットで移し、Slと表記し、そして混合した(標準品1の濃度=30ng/ml)。225μlのこの希釈物を第2のチューブへピペットで移し、S2と表記して、完全に混合してから次の移動を行った。この連続希釈を、さらに5回繰り返して標準曲線のポイントを作成した。試料希釈剤はブランクとしての役割を果たした。
【0083】
凍結乾燥されたヒトガレクチン−3を、蒸留水中で下記容量まで再構成した:高コントロール(180μl、56〜84ng/ml)、中コントロール(200μl、32〜48ng/ml)および低コントロール(130μl、3.4〜5.8ng/ml)。バイアルを、内容物の定量的可溶化を確保するために回転させた。再構成されたコントロールを10分間放置した。
【0084】
各試料、標準品、ブランクおよび任意選択のコントロール試料は、2つ組でアッセイされるべきである。マイクロウェルストリップ(strip)を、1ウェルあたりおよそ400μlの洗浄バッファーで2度洗浄し、洗浄の間にマイクロウェル内容物を充分に吸引した。吸引の前に約10〜15秒間、ウェル中に洗浄バッファーを放置した。
【0085】
最後の洗浄工程の後、ウェルを空にし、マイクロウェルストリップを余分な洗浄バッファーを除去するために吸収紙に軽く打ちつけた。マイクロウェルストリップは乾燥されなかった。
【0086】
100μlの標準品(Sl〜S7)を、表1に従って標準品ウェル中にピペットで移した。
【0087】
【表1】

100μlの試料希釈剤を、2つ組のブランクウェルに添加した。80μlの試料希釈剤を、試料ウェルに添加した。20μlの各試料を、2つ組の試料ウェルに添加した。ウェルを粘着フィルムで覆い、200rpmに設定されたマイクロプレート振盪機上で1時間室温(18〜25℃)でインキュベートした。粘着フィルムを除去し、ウェルを空にした。マイクロウェルストリップを、上記のように3回洗浄した。
【0088】
次に、100μlの希釈されたHRP結合体を、ブランクウェルを含む全てのウェルに添加した。ウェルを、粘着フィルムで覆い、200rpmに設定されたマイクロプレート振盪機上で1時間室温(18〜25℃)でインキュベートした。粘着フィルムを除去し、ウェルを空にした。マイクロウェルストリップを、上記のように3回洗浄した。
【0089】
その後、100μlのTMB基質溶液(テトラメチル−ベンジジン)を各ウェルに添加した。マイクロウェルストリップを、30分間室温(18°〜25℃)でインキュベートし、強い光への直接的な曝露を回避した。
【0090】
各ウェルへ100μlの停止溶液(1Mリン酸)を素早くピペッティングすることによって、酵素反応を停止した。各マイクロウェルの吸光度を、一次波長として450nmを使用して分光光度計(場合により、参照波長として620nm;610nm〜650nmは容認できる)上で読んだ。プレートリーダーを、ブランクウェルの使用により製造業者の指示書に従ってブランクとした(blanked)。試料および標準品の両方の吸光度を測定した。2つ組の標準品および試料の各セットについて平均吸光度を計算した。
【0091】
標準曲線を、横軸上のヒトガレクチン−3濃度に対する縦軸上の各標準品濃度に関する平均吸光度をプロットすることにより作成した。最適適合曲線を、グラフのポイントを通って引いた。図2を参照。
【0092】
循環ヒトガレクチン−3の濃度を、縦軸上の平均吸光度を見つけて標準曲線まで水平線を延長することにより、各試料について決定してもよい。交差点で、垂線を横軸まで延長し、対応するヒトガレクチン−3濃度を読んだ。
【0093】
試料を1:5(試料20μl+試料希釈剤80μl)に希釈したため、標準曲線から読まれた濃度に希釈係数(×5)を掛けた。代表的な標準曲線を図2に示す。
【0094】
【表2】

性能特性
感度
希釈培地(平均プラス3標準偏差)のものより顕著有意に高い吸光度に帰着する検体濃度として規定されるヒトガレクチン−3の検出限界(LoD)は、0.09ng/ml(12の独立したアッセイの平均値)と決定された。
【0095】
再現性
イントラアッセイ再現性(アッセイ内の再現性)を、4つの独立した試験において評価した。各アッセイを、異なる濃度のヒトガレクチン−3を含有する8つの血漿試料について6つの複製物を用いて行った。2つの標準曲線を各プレート上で実行した。下記データは、各試料の平均ヒトガレクチン−3濃度および変動係数を示す(表3を参照)。計算された全体的なイントラアッセイ変動係数は4.2%であった。
【0096】
【表3】

インターアッセイ再現性(1つの実験室内のアッセイ間再現性)を、4つの独立した実験において評価した。各アッセイを、異なる濃度のヒトガレクチン−3を含有する8つの血漿試料について6つの複製物を用いて行った。2つの標準曲線を各プレート上で実行した。下記データは、各試料の24の測定で計算された、平均ヒトガレクチン−3濃度および変動係数を示す。計算された全体的なインターアッセイ変動係数は4.0%であった。
【0097】
【表4】

添加回収率
添加回収率は、3つの個別の血漿試料へ3レベルのヒトガレクチン−3を添加する(spiking)ことにより評価された。回収率は各々2つの複製物を用いた4つの独立した実験において決定された。これらの実験において、ブランクとして、添加していない(unspiked)血漿試料を使用した。全体的な平均回収率は101%であった(表5を参照)。
【0098】
【表5】

希釈並行性
異なるレベルのヒトガレクチン−3を有する4つの血漿試料を、連続する2倍希釈で解析した。回収率は、各々4つの複製物を用いた4つの独立した実験において測定された。全体的な平均回収率は88.6%であった(表6を参照)。
【0099】
【表6】

試料安定性
凍結解凍安定性
血漿試料のアリコートを、−20℃で保存し、3回解凍し、そしてヒトガレクチン−3レベルを測定した。検出されたヒトガレクチン−3の免疫反応性に、凍結および解凍による有意な損失はなかった。
【0100】
貯蔵安定性
血漿試料のアリコートを−20℃、2〜8℃、室温(RT)、および37℃で保存し、24時間後にヒトガレクチン−3のレベルを測定した。上記条件下での保存中に検出されたヒトガレクチン−3の免疫反応性の有意な損失はなかった。
【0101】
実施例2A:ガレクチン−3を検出するためのキット
表7は、ガレクチン−3検出用の代表的なキットの構成部品を示す。
【0102】
【表7】

1つの抗ガレクチン−3抗体、M3/38は、マイクロタイタープレートのウェル表面上にコーティングされて、試料中のガレクチン−3分子を結合するための捕捉抗体としての役割をはたす一方、他の抗ガレクチン−3抗体(ホースラディシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ガレクチン−3抗体(87B5))が溶液中に提供されて、捕捉抗体に結合するガレクチン−3分子を検出するための検出抗体として機能する。M3/38および87B5を本実施例において使用したが、これらの特異的抗体の使用は本発明のキットおよび方法で必要ではない。
【0103】
ガレクチン−3コントロール(C1およびC2)は、組換えのヒトガレクチン−3で添加された(spiked)タンパク質マトリクスから構成された。
【0104】
実施例2B:組換えガレクチン−3コントロールの検出
実施例2Aのキットを、ガレクチン−3レベルを定量化するための、マイクロタイタープレートに基づくELISAアッセイにおいて使用した。ガレクチン−3に対する2つのモノクローナル抗体が、キットに包含された。このアッセイにおいて、下記段落で非常に詳しく記載されるように、標準品および品質管理物質をウェルへ導入し、60分間インキュベートした。このインキュベーションの間、標準品に存在するガレクチン−3はウェル表面にコーティングされた捕捉抗体に結合された。後の洗浄工程は、非結合ガレクチン−3を含む試料で、導入された全ての非結合物質を除去した。その後、検出抗体をウェルへ導入し、60分間インキュベートした。この時間の間、抗体―抗原―抗体複合体が形成された。あらゆる非結合の検出抗体を除去する洗浄工程の後、テトラメチルベンジジン(TMB)基質が添加され、HRPの存在下で青色を生じた。発色は、硫酸の添加によって20分後に停止され、450nmの吸光度で読まれる黄色に変色した。標本の試験結果を検量線(calibration curve)から読んだ。吸光度は、標本中のガレクチン−3レベルに比例した。
【0105】
使用に先立ち、全てのアッセイ構成成分を30分間室温にした。プレートを含有するパウチを開いた後、万が一プレートフレームから意図せずにに離されたときのため、各ストリップの一番上の表面を、パーマネントインクで番号付けした。脱イオン水を使用し、10×洗浄濃縮物(WC)の1:10希釈物を調製した。希釈されたバッファーを、2〜8℃で保存した。
【0106】
7つのガレクチン−3標準品のセットを、標準品(S1、組換えヒトガレクチン−3、1バイアルあたり12ng)の連続希釈によって調製した。キャリブレーションの範囲は0.156ng/mL〜10.0ng/mLであった。
【0107】
使用前に、ガレクチン−3標準品(S1)の1個のバイアルを、300μLの脱イオン水により再構成し、続いて、900μLのアッセイ希釈剤を添加した。周期的なボルテックスおよび穏やかな回転を伴う、バイアルの室温での15〜20分の静置によって、再構成水がバイアル内部の全表面積を濡らすことを確実にした。標準品の完全溶解を、使用に先立って得た。
【0108】
ガレクチン−3コントロール(C1およびC2)の各々の1個のバイアルを、250μLの脱イオン水で再構成した。周期的なボルテックスおよび穏やかな回転を伴う、バイアルの室温での15〜20分の静置によって、再構成水がバイアル内部の全表面積を濡らすことを確実にした。C1およびC2の完全溶解を、使用に先立って得た。
【0109】
各再構成されたコントロール(C1およびC2)を、使い捨てのホウ珪酸ガラスもしくはポリプロピレン、または他のタンパク質結合が低いプラスチック試験管もしくはバイアル中でアッセイ希釈剤(AD)を使用して10倍(1:10)に希釈した。各希釈物を、ボルテックスまたは回転により混合した。再構成されたコントロールの最小25μLを希釈に使用した。希釈を、外部で(すなわち、ウェル中希釈ではない)かつ使用直前に行った。
【0110】
標準品を使用直前に希釈した。6本の使い捨てチューブを、2〜7番までの番号を表記した。250μLのアッセイ希釈剤(AD)を、各標識化チューブへピペットで入れた。次に、250μLのガレクチン−3標準品(S1)を、チューブ2にピペットで入れ、穏やかに混合した。その後、250μLをチューブ2からチューブ3に移し、穏やかにボルテックスした。次に、250μLをチューブ3から4へ移し、チューブ7までこのプロセスを継続した。
【0111】
マイクロタイタープレートウェルを、コントロール、希釈された標準品およびブランクの各々として指定した。全ての試料を、2つ組で(すなわち、ブランク、希釈された標準品およびコントロール)試験した。
【0112】
100μlの各試料を、希釈容器から直接、ガレクチン−3捕捉抗体で覆われたマイクロタイタープレートの2つ組のウェルへ移した。ウェルを清潔なプレートシールで覆い、振盪せずに20〜25℃で1時間インキュベートした。
【0113】
プレートをインキュベートしている間、標識化抗体を、下記表8に示される希釈スキームに従って、アッセイ希釈剤で1:30に希釈した。
【0114】
【表8】

次に、プレートシールを除去し、1サイクルあたり15秒の浸漬時間を伴って4洗浄サイクルを実行するようにプログラムされた機械的ウォッシャーを使用し、1ウェルあたり400μLの希釈された洗浄バッファーでウェルを洗浄した。4回目の洗浄の後、ウェルを吸収性のペーパータオル上にそれらを軽く打ちつけることにより空にした。
【0115】
次に、100μLの希釈された検出溶液を、各ウェルにピペットで入れた。ウェルを清潔なプレートシールで覆い、振盪せずに20〜25℃で1時間インキュベートした。プレートシールを除去し、1サイクルあたり15秒の浸漬時間を伴って4洗浄サイクルを実行するようにプログラムされた機械的ウォッシャーを使用し、1ウェルあたり400μLの希釈された洗浄バッファーでウェルを洗浄した。4回目の洗浄の後、ウェルを吸収性のペーパータオル上にそれらを軽く打ちつけることにより空にした。
【0116】
100μLのTMB基質(TS)を、各ウェルにピペットで入れ、そしてこのプレートを暗闇で20〜25℃で20分間インキュベートした。
【0117】
50μLの停止溶液(ST)を、各ウェルにピペッティングした。各ウェルの内容物を、清潔なピペットチップを使用して内容物を上下に引いて混合するか、または穏やかにプレートの側面を軽くたたくことにより混合した。ウェルの内容物は青から黄色になった。いかなる泡も、各ウェルの液体表面から除去し、いかなる汚れまたは液体もウェル外部から除去した。
【0118】
各ウェルの吸光度を、停止液添加の30分以内に450nmでマイクロプレートリーダーにおいて測定した。
【0119】
アッセイ工程を終えた後、各標準品およびコントロールの吸光度を、マイクロプレートリーダーを使用して、450nmで読んだ。アッセイ用の標準曲線を、下記手法を使用して決定した。ブランクの平均吸光度を、標準品およびコントロールを含む全てのデータから引いた。吸光度(Abs450)値の平均、標準偏差および変動係数(CV)を、2つ組の標準品およびコントロールの各セットについて計算した。コントロールのいずれかが、20%を超える2つ組のCVを有する場合、全プレートを棄却し、全ての標本を、新しい試薬を使用して再分析した。平均の最小二乗最適化を伴う第三次多項式曲線あてはめについての適切な曲線あてはめ手段は、各標準品希釈物から使用された。最終ガレクチン−3濃度を得るため、測定された濃度に10(標本およびコントロールの希釈係数)を掛けた。コントロール値は許容域内にあると確認された。ブランク値は、最低の検量用試料(calibrator)よりも低いと確認された。ブランク値が、最低の検量用試料値を超えた場合(例えば、ブランクが引かれる場合、低い検量用試料値はマイナスである)、アッセイを繰り返した。
【0120】
代表的な検量線を図3に示し、各希釈された標準品の吸光度に対する代表値を表9に示す。
【0121】
【表9】

実施例2C:臨床試料中の組換えガレクチン−3の検出
実施例2Bにおいて概説された方法を、以下に概説される追加の工程を組込み、臨床試料の添加により行った。
【0122】
標準品およびコントロールを再構成する間、各試験標本を使い捨てのホウ珪酸ガラスもしくはポリプロピレン、または他のタンパク質結合が低いプラスチックチューブもしくはバイアル中のアッセイ希釈剤(AD)を用いて10倍(1:10)に希釈した。各希釈物を、攪拌または回転によって、希釈に使用されている血清または血漿の最低25μLと混合した。希釈を、外部で(すなわち、ウェル中希釈ではない)かつ使用直前に行った。
【0123】
アッセイ工程を終えた後、各標本の吸光度をマイクロプレートリーダーを使用して、450nmで読んだ。吸光度は標本中のガレクチン−3濃度に比例した。標本およびコントロール中のガレクチン−3濃度は、既知の濃度のガレクチン−3を有する標準品のそれと比較される、標本の吸光度との関係に基づいた。
【0124】
アッセイ用の標準曲線を、下記手法を使用して各個別のプレートについて割り当てた。ブランクの平均吸光度を、標準品、コントロールおよび試験標本を包含する全てのデータから引いた。吸光度(Abs450)値の平均、標準偏差および変動係数(CV)を、2つ組の標準品、コントロールおよび試験標本の各セットについて計算した。20%を超える2つ組のCVを有する標本を再解析した。コントロールのいずれかが、20%を超える2つ組のCVを有する場合、全プレートを棄却し、全ての標本を、新しい試薬を使用して再分析した。平均の最小二乗最適化を伴う第三次多項式曲線あてはめについての適切な曲線あてはめ手段は、各標準品希釈物から使用された。未知の標本およびコントロールの濃度は、第三次多項方程式に基づいて計算された。最終ガレクチン−3濃度を得るため、測定された濃度に10(標本およびコントロールの希釈係数)を掛けた。コントロール値は許容範囲内にあると確認された。アッセイコントロールから承諾しがたい結果が得られた場合、アッセイを繰り返した。ブランク値は、最低の検量用試料よりも低いと確認された。ブランク値が、最低の検量用試料値を超えた場合(例えば、ブランクが引かれる場合、低い検量用試料値はマイナスである)、アッセイを繰り返した。
【0125】
アッセイの測定範囲
臨床標本を用いたガレクチン−3アッセイの測定範囲は、1.32〜96.6ng/mLであることが実証された。アッセイは、およそ0.1〜10.0ng/mLの範囲に及ぶ7つの標準品により較正された。測定が検量用試料によって括弧で括られた(bracketed)範囲内に生じるように、アッセイに先立ち、各試験試料(すなわち、コントロールまたは被験者(subject)標本)を、1:10にあらかじめ希釈した。アッセイの線形性は、臨床検査室標準研究所評価プロトコル6(Clinical Laboratory Standards Institute Evaluation Protocol 6)(CLSI−EP6)の推奨に従って確立された。血清および血漿標本を調製し、ガレクチン−3濃度の臨床的に意味のある測定範囲に及ぶように希釈した。アッセイは、96.6ng/mLまで直線的であることが実証された。測定範囲の下端は、定量限界(LoQ)によって定義され、それは1.32ng/mLと決定された。
【0126】
性能特性
精度
ガレクチン−3アッセイの精度を、CLSI EP5−A2ガイドラインに従った評価で評価した。ガレクチン−3濃度の範囲に及ぶ3つの血漿プールを、20日間に亘って1日当たり2実行(run)で2つ組で分析した。実行内の、実行から実行の(run−to−run)、日から日の(day−to−day)、および総精度の推定値を計算し、許容できると決定した。結果を表10に要約する。
【0127】
【表10】

また、精度は、CLSI EP5−A2ガイドラインに従い、CLIA認証の3つの臨床検査室で評価された。合計変動係数(CV)は、3つのCLIAが認証された臨床検査室サイトにわたって5.60%〜16.89%の範囲であり、すべてのサイトで許容される結果を提供した。
【0128】
解析感度
ガレクチン−3アッセイの解析感度は、CLSI EP17−Aガイドラインの推奨に従って確立された。
ブランク限界(LoB): LoB=0.86ng/mL
検出限界(LoD):LoD=1.13ng/mL
定量限界(LoQ):LoQ=1.32ng/mL
解析特異性
ガレクチン−3アッセイは、以下の化合物の存在下で試験された場合、いかなる顕著な交差反応性も示さなかった:ガレクチン−1、ガレクチン−2、ガレクチン−4、ガレクチン−7、ガレクチン−8、ガレクチン−9、ガレクチン−12、コラーゲンIおよびコラーゲンIII(全て、500ng/mLの濃度において)。上記潜在的な交差反応物の交差反応性の平均%は0.3%またはそれ未満である。
【0129】
直線性
測定範囲に亘る直線性を、CLSI−EP6の推奨に従って評価した。試料を、血清および血漿標本へガレクチン−3を添加することにより調製し、その後ガレクチン−3アッセイによって解析した。結果は、アッセイが1.24〜96.6ng/mLまで直線であることを示す。測定範囲の下端は定量限界(LoQ)によって定義され、それは個別の研究において1.32ng/mLであると決定された。
【0130】
要約すると、ガレクチン−3アッセイの測定範囲は1.32ng/ml〜96.6ng/mLである。
【0131】
干渉物質
ガレクチン−3アッセイを、CLSI EP7−Aの推奨に従って、内因性および外因性の両方の潜在的な干渉物質の影響について評価した。結合したビリルビン(5mg/dLまで)、非結合ビリルビン(15mg/dLまで)、アルブミン(BSA、12g/dLまで)、トリグリセリド(3000mg/dLまで)、コレステロール(250mg/dLまで)およびクレアチニン(5mg/dLまで)は、アッセイにおいていかなる干渉も示さない。精製ヘモグロビン(500mg/dLまで)は、ガレクチン−3アッセイにおいて干渉を示さなかった;しかしながら、包装された血球溶解物は干渉を示す。ヒト抗マウス抗体(HAMA)およびリウマチ因子(RF)は、ガレクチン−3アッセイとの顕著な正の干渉を生じる。
【0132】
ガレクチン−3アッセイは、34の一般的な薬学的物質(HF薬物(表11を参照)を包含する)の存在下で試験された場合、著しい影響を受けなかった;
【0133】
【表11】

高用量フック効果
500ng/mLまでのガレクチン−3レベルにおける高用量フック効果はない。
【0134】
添加回収率
6人の被験者の適合された血清およびEDTA血漿試料と共に、アッセイ希釈剤に、5つの異なる添加レベル(15ng/mL、25ng/mL、50ng/mL、75ng/mLおよび90ng/mL)で、ヒトガレクチン−3を添加した研究において、血清中の平均パーセント回収率は総平均パーセント回収率81.7%を伴って79.7%〜84.6%に及び、EDTA血漿中の平均パーセント回収率は総平均パーセント回収率78.1%を伴って71.4%〜81.4%に及んだ。この研究は、アッセイ希釈剤マトリクスと比較して、血清/血漿マトリクス中の添加された量のガレクチン−3の回収率における差異を実証した。この効果は、恐らく同様の添加回収実験において観察されるが、それは臨床の測定に影響を及ぼさない。
【0135】
実施例2D:既知の心疾患のない被験者からの臨床試料中のガレクチン−3の検出
前向き観察研究において、ガレクチン−3レベルは、1,092のバンクに預けられた、既知の心臓病はないが、そのほかでは年齢および性別分布がHF患者集団に似ている被験者からの血漿試料の解析によって測定された。標本は、60〜80歳の間の女性(n=572)、および55〜80歳の間の男性(n=520)からであった。この参照集団は、次のような異なる民族的背景の個人を含んだ:黒人(n=305、27.9%)、白人(n=686、62.8%)、ヒスパニック(n=42、3.8%)、アジアまたは太平洋の島民(n=30、2.7%)、および明示されなかった(n=29、2.7%)。血漿試料は、研究参加者からEDTAを含有するチューブへ採取された。血液を処理し、その後血漿を−20℃またはそれより低温で凍結した。
【0136】
全ての被験者は、実施例2Cに記載されるガレクチン−3アッセイを使用により、検出できるガレクチン−3レベルを有した。ガレクチン−3参照範囲値(表12を参照)の分布を使用するノンパラメトリック法は、正常値の上限(ULN)に基づくガレクチン−3に対する17.6ng/mLの単一閾値を確立した。ULNは、性別または年齢非依存的に、ガレクチン−3値の分布の第90百分位数として定義される。
【0137】
【表12】

実施例2E:急性非代償性HFを伴う被験者からの臨床試料中のガレクチン−3の検出
急性非代償性HFと診断された被験者における実施例2C記載のガレクチン−3アッセイの実用性を評価するため、ガレクチン−3レベルを、181のバンクに預けられた急性非代償性心不全(ADHF)研究からのEDTA血漿試料について測定した。ADHF研究は、救急科(4)において呼吸困難を現わした被験者を登録した、アメリカ合衆国において行なわれた前向き観察研究であった。急性非代償性HFと診断された181人の被験者に関するベースライン試料において、血漿ガレクチン−3濃度を測定した。被験者を4年間フォローアップした。参照範囲集団(実施例2Dに記載)から得られたガレクチン−3閾値17.6ng/mLを用いて、上昇したベースラインガレクチン−3を伴う被験者(n=68)のカテゴリーを定義した。患者は、最も低い四分位に比べ最も高い四分位のガレクチン−3レベルで、およそ3倍高い死の危険があった。コックス回帰生存率分析およびカプラン−マイヤー分析は、上昇したベースラインガレクチン−3は、年齢、性別、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス、左室駆出率、喫煙状態および糖尿病状態に関する調整の後であっても、死亡リスクの重要な予測因子であることを実証した(図4を参照)。
【0138】
【表13】

実施例2F:慢性心不全被験者からの臨床試料中のガレクチン−3の検出(慢性HF研究I)
慢性HF研究Iは、静脈内薬物投与の必要性を包含する、入院が必要であると考えられる典型的な徴候および症候の組み合わせに基づいて診断されるNYHAクラスII〜IVを含んだ。被験者は退院の際に登録されたが、その時点で彼らは標準薬物治療により安定していなければならなかった。ガレクチン−3濃度を、592人の被験者の利用可能なベースライン試料についてガレクチンアッセイ使用することにより測定した。参照範囲集団(実施例2Dに記載)から得られたガレクチン−3閾値17.6ng/mLを用いて、上昇したベースラインガレクチン−3を伴う被験者(n=363)のカテゴリーを定義した。退院後のいかなる時でも、最も低い四分位に比べ最も高い四分位のガレクチン−3レベル患者について、死の危険はおよそ3倍高かった。コックス回帰生存率分析およびカプラン−マイヤー分析は、上昇したベースラインガレクチン−3は、年齢、性別、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス、左室駆出率、喫煙状態および糖尿病状態に関する調整の後であっても、死亡リスクの重要な予測因子であることを実証した(図5を参照)。
【0139】
【表14】

実施例2G:慢性心不全被験者からの臨床試料中のガレクチン−3の検出(慢性HF研究II)
慢性HF研究IIは、慢性のNYHAクラスIIIまたはIV HFを有する患者を登録した。HFの診断は、縮小された左室収縮機能もしくは左室駆出率(LVEF)、または保持された左室収縮機能を伴う拡張機能障害の心エコーまたはラジオアイソトープ心室造影所見と共に、典型的なHFの臨床徴候および症候によって確立された。患者は、登録時、標準薬物治療により安定していた。
【0140】
ガレクチン−3濃度を、232人の被験者についてのベースライン試料に対して、ガレクチンアッセイを用いて測定した。参照範囲集団(実施例2Dに記載)から得られたガレクチン−3閾値17.6ng/mLを用いて、上昇したベースラインガレクチン−3を伴う被験者(n=118)のカテゴリーを定義した。最も低い四分位に比べ最も高い四分位のガレクチン−3レベルの患者について、3〜6年のフォローアップ期間に亘り、死の危険はおよそ2倍高いことを示した。コックス回帰生存率分析およびカプラン−マイヤー分析は、上昇したベースラインガレクチン−3は、年齢、性別、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラス、左室駆出率、喫煙状態および糖尿病状態に関する調整の後であっても、死亡リスクの重要な予測因子であることを実証した(図6を参照)。
【0141】
【表15】

参照による編入
本明細書中に引用された特許文書および科学的論文の各々の全開示は、全ての目的のため、参照によって組込まれる。
【0142】
等価物
本発明は、その精神またはその本質的特徴から外れることなく、他の具体的形態で実施されてもよい。従って、上述の実施態様は、本明細書に記載された本発明を制限するのではなく、むしろ全ての点で例示であると考えるべきである。本発明の範囲は、従って、上述の記載によるよりも、むしろ添付の特許請求の範囲によって示され、そして本特許請求の範囲の等価物の意味および範囲内に含まれる全ての変形は、それに包含されるものと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のガレクチン−3の濃度を検出するためのキットであって、1つが検出可能な標識で標識化され、各々が、下記アミノ酸配列:
【化10】

を含むガレクチン−3のN末端部の間隔をあけたエピトープにそれぞれ結合している、第1結合部分および第2結合部分を含むキット。
【請求項2】
前記検出可能な標識が酵素またはフルオロフォアである、請求項1のキット。
【請求項3】
前記結合部分が、それぞれ、下記からなる群より選択されるガレクチン−3アミノ酸配列の部分の少なくとも1種により定義されるエピトープに結合する、請求項1または2のキット。
【化11】

【請求項4】
前記結合部分がモノクローナル抗体である、請求項1〜3のいずれかのキット。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体が、9H3.2、87B5およびM3/38からなる群より選択される、請求項4のキット。
【請求項6】
前記抗体が、
【化12】

を含むエピトープに結合する、請求項4または5のキット。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体がマウス抗体である、請求項4〜6のいずれかのキット。
【請求項8】
被験者由来の試料中のヒトガレクチン−3のレベルを検出する方法であって:
前記試料を二重結合部分サンドイッチアッセイに供すること、少なくとも1つの前記結合部分が検出可能な標識で標識化されること、前記結合部分の各々が下記アミノ酸配列:
【化13】

を含むガレクチン−3のN末端部のそれぞれの非重複エピトープに特異的であること、を含む方法。
【請求項9】
前記サンドイッチアッセイが、閾値をこえるガレクチン−3濃度の存在または非存在を示す定性的結果を提供する、請求項8の方法。
【請求項10】
前記被験者由来の前記試料中の前記閾値ガレクチン−3濃度が15〜20ng/mlの範囲にある、請求項9の方法。
【請求項11】
前記被験者由来の前記試料中の前記閾値ガレクチン−3濃度が20〜25ng/mlの範囲にある、請求項9の方法。
【請求項12】
前記被験者由来の前記試料中の前記閾値ガレクチン−3濃度が25〜30ng/mlの範囲にある、請求項9の方法。
【請求項13】
前記被験者由来の前記試料中の前記閾値ガレクチン−3濃度が30〜35ng/mlの範囲にある、請求項9の方法。
【請求項14】
前記サンドイッチアッセイが前記ガレクチン−3濃度を示す定量的結果を提供する、請求項8の方法。
【請求項15】
前記試料中の前記ガレクチン−3の濃度に相関するデータについての前記サンドイッチアッセイの結果と、前記被験者の心不全(HF)の症状を発現するリスクの結果または前記被験者の診断されたHF疾患の重症度の結果に関連するデータとを比較する追加の工程を含む、請求項8〜14のいずれかの方法。
【請求項16】
さらに、傾向を得るために長期間反復することを含む、請求項8〜15のいずれかの方法。
【請求項17】
被験者における心不全の発症または進行のリスクを検出する方法であって、前記被験者由来の試料中のガレクチン−3濃度が少なくとも15ng/mlの閾値を上回るかどうかを決定することを含む方法。
【請求項18】
前記閾値が15〜20ng/mlの範囲にある、請求項17の方法。
【請求項19】
前記閾値が20〜25ng/mlの範囲にある、請求項17の方法。
【請求項20】
前記閾値が25〜30ng/mlの範囲にある、請求項17の方法。
【請求項21】
前記閾値が30〜35ng/mlの範囲にある、請求項17の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2012−507724(P2012−507724A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534781(P2011−534781)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/062616
【国際公開番号】WO2010/096126
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(506057638)ビージー メディシン, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】