説明

ガレクチン9誘導因子

ガレクチン−9は、レクチンとしての活性を有する生理活性物質で種々の細胞で発現が認められ、発現量と腫瘍の転移能間に相関が認められるなど、様々な生理現象に関与することが予測されつつある。該ガレクチン−9の産生・遊離をコントロールすることを可能にする物質は、抗腫瘍や抗炎症作用を誘導するなどの活性を期待でき、その解明が求められている。ある種の腫瘍細胞膜可溶化分画にガレクチン9の産生・遊離を誘導する因子「ガレクチン9誘導因子」が存在することを見出した。該因子は、コンカナバリンA吸着分画、Resource QTMイオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラムなどを利用し、濃縮化活性保有分画として得られる。該因子のガレクチン9誘導活性を利用した測定試薬、医薬、アッセイなどの開発が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ガレクチン9誘導活性を有する因子、すなわち、ガレクチン9誘導因子に関し、特にはヒトのガレクチン9誘導因子を含む哺乳動物のガレクチン9誘導因子に関する。本発明は、該ガレクチン9誘導因子の利用技術にも関する。
【背景技術】
本発明者等のグループはヒトT細胞由来好酸球遊走因子のクローニングに成功し、それによりそれがTureci等が報告したヒトガレクチン9(非特許文献1)のバリアント、エカレクチンであることを見出した(非特許文献2)。さらに、本発明者等のグループはエカレクチンとガレクチン9は同一の物質であることを明らかにし、ヒトのガレクチン9はそのリンクペプチドの長さの違いにより、ショートタイプ、メディアムタイプ、ロングタイプの3種類があることをも明らかにした(非特許文献7)。
【非特許文献1】 Tureci O.et al.,J Biol Chem.,Mar.7,1997,272(10):6416−22
【非特許文献2】 Matsumoto R.et al.,J Biol Chem.,1998,273:16976−84
【発明の開示】
ガレクチン−9は、レクチンとしての活性を有する生理活性物質であって、組織肥満細胞、好酸球、マクロファージ、T細胞、B細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、種々の腫瘍細胞などでその発現が認められてきており、その発現量と腫瘍の転移能との間に相関が認められるなど、様々な生理現象に関与することが予測されつつある。該ガレクチン−9の産生や遊離をコントロールすることを可能にする物質は、抗腫瘍効果や抗炎症作用を誘導するなどの活性を期待できることから、その解明が求められている。ガレクチン9は、活性化Tリンパ球のアポトーシスを誘導するなど様々な生体に重要な生理活性に関与していると考えられる。したがって、ガレクチン9の産生・遊離などを制御することにより、様々な生理現象、生物活性現象を制御することが可能になると思われる。生体でのガレクチン9量、ガレクチン9発現及び遊離の制御を可能とする因子は、医薬としても有望と期待される。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、ある種の細胞膜可溶化分画(以下、「mf」という)に、ガレクチン9(以下、「Gal−9」という)産生・遊離を誘導する因子が存在することを見出した。特に、腫瘍細胞膜可溶化分画にGal−9産生・遊離を誘導する因子が存在することを見出した。また、該mfに、投与部位にGal−9産生細胞の浸潤とそれらの細胞からのGal−9の産生・遊離を誘導する因子が存在することも見出している。本明細書では、該因子を「ガレクチン9誘導因子」と呼称することとする。該因子の生物活性・生理活性からみて、該因子を利用することで、抗腫瘍効果や抗炎症作用を誘導することが可能になる。
本発明は以下のものを提供している。
〔1〕 B細胞リンパ腫由来細胞株BALL−1細胞より得られる細胞膜可溶化分画にその生物活性が存在することが同定できるガレクチン9誘導因子であって、該ガレクチン9誘導因子の生物活性は、少なくとも以下:
(1) ガレクチン9誘導活性、
(2) 標的腫瘍細胞としてMeth−Aザルコーマを使用したインビボ試験で腫瘍細胞の増殖抑制又は腫瘍の拒絶を誘起する、
(3) 抗腫瘍活性、
(4) インビトロ試験で末梢血単核球におけるナチュラル・キラー活性を誘導する、
(5) 末梢血単核球を使用した試験で、ガレクチン9 mRNAの発現のアップレギュレーション、
(6) 末梢血単核球を使用した試験で、細胞質におけるガレクチン9タンパクの発現の有意な上昇、
(7) 組織病理学的検査で注射した部位に好酸球及び単核細胞からなり、少ない数の好中球を伴った肉芽組織が認められる、
(8) 注射した部位の皮筋層の上や下の結合組織で多くの肥満細胞が見出される、
(9) 腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周り又は腫瘍組織に炎症細胞(主には好酸球及びいくらかの肥満細胞)の浸潤を有している領域が見出される、
(10)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で核濃縮を示す腫瘍細胞が見出される、及び
(11)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周囲又は腫瘍組織にメタクロマジーを示す肥満細胞の集積が確認される、
から成る群から選ばれたものにより同定できるものであることを特徴とするヒト由来のガレクチン9誘導因子。
〔2〕 B細胞リンパ腫由来細胞株BALL−1細胞が放射線照射処理されたものであることを特徴とする上記〔1〕記載のガレクチン9誘導因子。
〔3〕 BALL−1細胞をプロテアーゼ阻害剤の存在下、界面活性剤と一緒にホモジュナイズ処理して可溶化した細胞膜可溶化分画に存在することを特徴とする上記〔1〕又は〔2〕記載のガレクチン9誘導因子。
〔4〕 B細胞リンパ腫由来細胞株より得られた細胞膜可溶化分画より、コンカナバリンAカラムクロマトグラフィー、陰イオンカラムカラムクロマトグラフィー、及びハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーから成る群から選ばれた処理で精製及び/又は濃縮できるものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子。
〔5〕 上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子を含有することを特徴とする細胞にガレクチン9を誘導する試薬。
〔6〕 上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子と細胞とを接触せしめることを特徴とする細胞にガレクチン9を誘導する方法。
〔7〕 上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子を含有することを特徴とする医薬。
〔8〕 抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤又は副腎皮質ステロイドホルモン代替剤であることを特徴とする上記〔7〕記載の医薬。
〔9〕 ヒト由来のものであることを特徴とする上記〔1〕〜〔4〕のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子。
【発明の効果】
本発明により、ガレクチン9誘導因子が同定され、その精製が行われたことから、その精製ガレクチン9誘導因子を使用しての医薬品開発、ガレクチン9の関与する生理現象、生物活性についての研究開発が進展する。特に、ガレクチン9誘導因子は、細胞膜可溶化分画及び該画分よりコンカナバリンA吸着分画、Resource QTMイオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラムなどを利用することにより、濃縮した活性保有分画として得られる。該因子を投与することで、NK様活性を増強する活性、抗腫瘍活性などの生物活性を得ることができるので、そのガレクチン9誘導活性を利用した測定試薬、医薬、アッセイなどの開発が可能になる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、BALL−mfの抗腫瘍活性についての試験結果を示す。(a)腫瘍増殖に及ぼすBALL−mfの抑制作用を示す。中黒丸:BALL−mfで処置された動物における腫瘍の重量。中黒四角:Daudi−mfで処置された動物における腫瘍の重量。中抜き丸:PBSで処置された動物における腫瘍の重量。処置後18日目でBALL−mfによる腫瘍増殖抑制作用は顕著であった(n=10,p<0.05)。(b)Meth−A担癌マウスにおける腫瘍の拒絶作用についての試験結果を示す。中黒丸:BALL−mfで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数。中黒四角:Daudi−mfで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数。中抜き丸:PBSで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数。χ二乗解析(n=10,p=0.0006)。
図2は、組織病理学的検査:Meth−A担癌マウスを処置した後27日目に皮膚部位を切り出し、固定化処理後、ギムザ染色した生物組織の形態を示す写真である。BALL−mf処理(a)。Daudi−mf処理(b)。好酸球はEを付した矢印で示してある。
図3は、組織病理学的検査:Meth−A担癌マウスをBALL−mf処置した後27日目に腫瘍部位を切り出し、固定化処理後、ギムザ染色(a)又はトルイジン青染色(b)した生物組織の形態を示す写真である。同様に、Daudi−mf処理したマウスの腫瘍部位を切り出し、固定化処理後、ギムザ染色(c)した生物組織の形態を示す写真も示す。好酸球はEを付した矢印で示してあり、肥満細胞はMを付した矢印で、好中球はNを付した矢印で、そして核濃縮を示すMeth−A細胞は矢印単独で示されている。
図4は、BALL−mfをマウス背部皮内に注射後24時間後の組織を採取し、ギムザ染色後組織学的に検討した結果を示す生物組織の形態を示す写真である。リンパ球や組織肥満細胞とともに著明な好酸球の浸潤が見られる。浸潤細胞を検討すると、多くの肥満細胞や好酸球(矢印)と少数のリンパ球やマクロファージの浸潤が認められた。
図5は、コントロールとしてDaudi−mfをマウス背部皮内に注射した場合では、リンパ球系の細胞の浸潤が著明であるが好酸球の浸潤は見られない。肥満細胞や好酸球の浸潤は見られず、リンパ球の浸潤が著明であった。
図6は、BALL−mf注射後の浸潤細胞がガレクチン9 mRNAを有するか否かの検討のためin situハイブリダイゼーションを行った。結果は(a)肥満細胞は大量のガレクチン9 mRNAを有していた。好酸球、マクロファージ、線維芽細胞も軽度有していた。(b)筋板(panniculus carnosus muscle)直上部に肥満細胞の浸潤が見られ、大量のガレクチン9 mRNAを有していた。コントロールのDaudi−mf注射では、筋板部には肥満細胞の浸潤は見られなかった(c)。また、浸潤したリンパ球にはガレクチン9は見られなかった。
図7は、ガレクチン9誘導因子によるインビボ効果を示す。BALL−mf注射局所におけるガレクチン9産生細胞及び保有細胞を明らかにするためにin situハイブリダイゼーション(A)、及び免疫染色法(B)を用いてそれぞれ検討した。in situハイブリダイゼーション(A)では、ガレクチン9産生細胞は肥満細胞がメインで、その他線維芽細胞、リンパ球、好酸球などがガレクチン9の遺伝子を持っていた。免疫染色(B)でも、上記の細胞がガレクチン9を細胞質内に保有していることが分かった。これらのことから、BALL−mf刺激によりこれらの炎症細胞からガレクチン9の産生・遊離が惹起され、炎症反応が誘導されることが示唆された。
図8は、BALL−mfによるガレクチン9産生・遊離効果についての検討結果を示す。マウス腹腔細胞をBALL−mfで刺激した後、mRNAを抽出し、ガレクチン9 mRNA量をRT−PCR法で検討すると、ガレクチン9 mRNAの発現がBALL−mfによって軽度ではあるが、増強されることが分かった。さらに、ウェスタンブロット法やFACS解析を行った。FACS解析によりBALL−mf刺激細胞において細胞質内ガレクチン9蛋白は減少していることが明らかになった。この結果は、BALL−mfは、ガレクチン9の産生を増強するが、むしろガレクチン9遊離を誘導することが示唆された。
図9は、BALL−mfによるガレクチン9産生・遊離効果についての検討結果を示す。BALL−mf刺激PCの培養上清中にガレクチン9の遊離が誘導されたか否かを検討するために、好酸球遊走活性を測定した。結果は、好酸球遊走活性の増強が見られ、しかもその活性は抗ガレクチン9抗体カラムに吸収されることから、ガレクチン9の遊離が増強されることが分かった。BALL−mfによる好酸球遊走活性は抗ガレクチン9抗体によっては吸収されるが、抗ガレクチン8抗体によっては吸収されない。よって、ガレクチン9誘導因子による作用と考えられる。肥満細胞系細胞のみならず、好酸球系、マクロファージ系細胞、T細胞系細胞でもガレクチン9誘導因子によってガレクチン9の産生が誘導された。
図10は、インビボでのBALL−mfの抗腫瘍活性を調査した結果を示す。BALL−mfはMeth−A腫瘍の生着及び増殖を抑制することが分かった。χ2乗検定でもコントロール群(PBS処置群)での35匹中29匹、Daudi−mf処置群で25匹中22匹で生着、増殖したが、BALL−mf処置群では30匹中24匹で排除されるか、生着しなかった。
図11は、腫瘍組織の免疫組織学的解析を行った結果を示す組織の形態を示す写真である。抗ガレクチン9抗体を用いて免疫組織染色を行うと、BALL−mf処置群では周囲にはガレクチン9を著明に持つ肥満細胞の浸潤が見られ(A)、腫瘍内にも肥満細胞が浸潤していた(B)。腫瘍細胞内にもガレクチン9が発現していた(A)。一方、Daudi−mf処置群ではガレクチン9発現細胞の浸潤は見られず、腫瘍細胞における発現もほとんど見られなかった。
図12は、ガレクチン9によるMeth−A腫瘍細胞のアポトーシス誘導活性を調べた結果を示す。ガレクチン9はMeth−A細胞のアポトーシスを誘導する。
図13は、BALL−mfをレンチル−レクチン(Lentil−Lecftin)アフィニティによるガレクチン9誘導因子の精製と抗腫瘍効果について調べた結果を示す。レンチル−レクチンカラムで非吸着、吸着分画に分け、その活性について調べた結果、ガレクチン9誘導活性は主に吸着分画に見られた。また、抗腫瘍活性測定実験では、吸着分画にはオリジナルに匹敵する抗腫瘍活性が認められた。好酸球や肥満細胞の浸潤もオリジナルと同様であった。図中、○はPBSで、□はEffluentで、■はEluateで、●はOriginalである。
図14は、誘導因子の等電点分画と抗腫瘍活性について調べた結果を示す。レクチンカラム吸着分画をロトフォー法にて等電点分画して得られた分画で刺激した末梢血単核球からRNAを採取し、ガレクチン9発現をRT−PCR法にて検討した。RT−PCR法にてF−1,F−2及びF−4に明らかなガレクチン9発現の増強が見られた。
図15は、図14で示された等電点分画して得られた分画の抗腫瘍活性について調べた結果を示す。F−2とF−3に強い抗腫瘍活性が誘導されている。F−1及びF−4では、PBSと同様か、逆に、腫瘍細胞の増殖を亢進している。F−2及びF−3に含まれる誘導因子に抗腫瘍活性が見られる。組織染色で好酸球や肥満細胞の浸潤が認められた。
図16は、BALL−mfをCon Aアフィニティカラムクロマトグラフィーで精製した結果を示す。BALL−mfをCon Aカラムで非吸着、吸着分画に分画し、SDS−PAGEを行った結果、異なるタンパク質のバンドが見られた。
図17は、Con Aカラムで分画された分画について、抗腫瘍効果を検討した結果を示す。吸着分画により強い抗腫瘍活性が見られた。このことから抗腫瘍効果を示す誘導因子はマンノース又はグルコースを持つ糖タンパク質であることが分かった。
図18は、BALL−mfのCon Aカラム吸着分画の細胞傷害活性について検討した結果を示す組織の写真である。
図19は、Con Aカラム吸着分画を陰イオンカラム(RESOURCE Q)で精製処理し得られた分画について、各画分(A〜G)の抗腫瘍効果を検討した結果を示す。
図20は、Con Aカラム吸着分画を陰イオンカラムで分画した結果得られた分画Dの濃度を変えての抗腫瘍活性を調べた結果を示す。濃度依存性に抗腫瘍活性が認められる。
図21は、陰イオンカラム(RESOURCE Q)精製処理し取得分画Dをヒドロキシアパタイトカラム(CHT2−I)で分画した結果(溶出パターン)及び取得した各分画の電気泳動の結果を示す写真である。
図22は、ヒドロキシアパタイトカラム(CHT2−I)で精製処理されて得られた各分画につき抗腫瘍活性を調べた結果を示す。同時に、分画Dの電気泳動の結果を示す写真も示してある。
【発明を実施するための最良の形態】
本明細書中、Gal−9産生・遊離細胞としては、肥満細胞、好酸球、マクロファージ、T細胞、B細胞、線維芽細胞、血管内皮細胞、種々の腫瘍細胞などが挙げられる。該ガレクチン9誘導因子を含むものとしては、B細胞株由来のmf(例えば、human acute lymphoblastoid leukemia(ALL)から樹立されたhuman cell line:BALL−1など)、そのコンカナバリンA吸着分画に溶出されるmf、Resource QTMイオン交換カラムから溶出されるmf、ハイドロキシアパタイトカラムから溶出される分画などが挙げられる。
該ガレクチン9誘導因子は、その有する生物活性、例えばガレクチン9誘導活性をインビトロあるいはインビボにて検知・測定することにより、確認することが可能である。例えば、インビトロでのガレクチン9誘導活性は、上記したようなGal−9産生・遊離細胞をmfで刺激した後、RT−PCR、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法、免疫組織染色法、ELISA法、ELISPOT法、RIA法などにより、Gal−9 mRNAやGal−9タンパク質を定量的あるいは定性的に解析して測定される。当該細胞の細胞培養液を使用し、RT−PCR、ウエスタンブロット法、フローサイトメトリー法、免疫組織染色法、ELISA法、ELISPOT法、RIA法などにより、Gal−9タンパク質を定量的あるいは定性的に解析して測定することもできる。また、インビボにおけるガレクチン9誘導活性は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、サルなどの動物に、mfを投与した後、ガレクチン−9産生細胞の浸潤やGal−9遊離の増強を指標に測定できる。また、腫瘍細胞におけるGal−9の直接的ないし間接的な増強を指標にそれを測定することもできる。
該動物としては、代表的には実験動物が挙げられ、投与法としては、皮内、皮下、筋肉内、静脈又は動脈、腹腔内注射したり、飲食させるなどが挙げられる。
ガレクチン9誘導因子を作用させることにより、腫瘍細胞の凝集やアポトーシスを誘導することができ、さらには抗腫瘍活性を得ることができ、CD4陽性T細胞のアポトーシスを誘導することができ、その過剰な反応に起因するアレルギーや自己免疫疾患を制御することが可能となり、炎症の抑制を図ることが可能となる。
本発明によるガレクチン9誘導因子は、ガレクチン9の発現を誘導する活性を有することによって特徴付けられる。該因子は、その存在あるいはその発現により、有意にガレクチン9の発現を誘導することによって特徴付けられる。該因子は、ガレクチン9を誘導することを介して様々な生理活性及び/又は生物活性を発現する。
本発明のガレクチン9誘導因子は、例えば放射線照射処理されたB細胞リンパ腫由来細胞株BALL−1細胞より得られる。本発明のガレクチン9誘導因子を得るために利用することができるBALL−1細胞は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection(ATCC),Manassas,Virginia,USA)、厚生労働省国立医薬品食品衛生研究所JCBR Cell Bank:ヒューマンサイエンス研究資源バンク(Japanese Collection of Research Bioresources(JCBR),National Institute of Health Sciences(NIHS),Ministry of Health,Labor and Welfare,Japan:Health Science Research Bioresources Bank,Japan Health Sciences Foundation,Osaka,Japan)より入手することができる。上記細胞株は、10%牛胎児血清(fetal calf serum;FCS)含有のRPMI1640培地等のヒト由来細胞の培養に用いられる一般的な培地で培養される。培養培地は、該細胞株が増殖し得るものである限り特に限定されないが、例えば、糖類、アミノ酸類、ビタミン類、その他の有機栄養素、微量無機塩類等を含有する液体栄養培地などが使用できる。増殖させた後に、必要に応じて放射線照射処理をし、場合によっては、さらに培養した後、細胞を回収し(例えば、遠心分離などして回収し)、緩衝液中で破砕等(例えば、ガラスビーズを使用した物理的破砕、超音波処理あるいは酵素などによる生化学的手法)して無細胞抽出液とする。
典型的には、本発明のガレクチン9誘導因子は、BALL−1細胞より得られる細胞膜可溶化分画より濃縮あるいは分離及び/又は精製することができる。該細胞膜可溶化分画は、例えばBALL−1細胞をプロテアーゼ阻害剤(例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリドなど)の存在下界面活性剤と一緒にホモジュナイズ処理して可溶化せしめ、次に遠心処理して、上清液を得、これを透析せしめ、次に0.2μmの孔径のフィルターを通過せしめることにより調製できる。本発明のガレクチン9誘導因子は、該細胞膜可溶化分画から、蛋白質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など)、透析、陽イオン交換クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過、疎水性クロマトグラフィーや、キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどを単独あるいは適宜組み合わせることにより精製する事ができる。例えば、DEAE−セファロース(Sepharose)などを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー、ブルー−セファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー、Mono Q HR 5/5(FPLCシステム、アマシャム・ファルマシアバイオテク)などの高性能液体クロマトグラフィーシステム等を経て電気泳動的にほぼ単一バンドにまで精製することができる。代表的な場合では、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によりほぼ単一バンドのものとして取得することが可能である。
具体的な場合、本発明のガレクチン9誘導因子は、前記BALL−1細胞の細胞膜可溶化分画より、コンカナバリンAカラムクロマトグラフィー、陰イオンカラムカラムクロマトグラフィー、及びハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーから成る群から選ばれた処理で精製及び/又は濃縮できる。なお、タンパク質の定量は、市販のタンパク質アッセイキットを使用して行われ、例えば色素結合法により行うことができ、タンパク質自動分析装置を使用しても行うことができる。
本発明のガレクチン9誘導因子をコードするDNAは、例えば、以下のような方法によってそれを単離処理に付すことが可能である。本発明の誘導因子を精製後、N末端アミノ酸配列を解析する。該誘導因子のアミノ酸配列解析では、精製物を必要に応じて、リジルエンドペプチダーゼ、V8プロテアーゼなどの酵素により切断後、逆相液体クロマトグラフィーなどによりペプチド断片を精製後、プロテインシーケンサーによりアミノ酸配列を解析する。配列解析では、複数のペプチド断片を利用してそのアミノ酸配列を決めることができる。決定したアミノ酸配列を元にPCR用のプライマーを設計し、誘導因子生産細胞の染色体DNAもしくは、cDNAライブラリー(市販のものであってもよい)を鋳型とし、アミノ酸配列から設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことにより本発明のDNAの一部を得ることができる。この際、ヒトゲノムデータベース(GenBankTM,DNA Data Bank of Japan(DDBJ)など)を適切なプログラム(例えば、BLASTプログラムなど)を使用して検索するなどして利用することができる。さらに、得られたDNA断片をプローブとして、誘導因子生産細胞の染色体DNAの制限酵素消化物をファージ、プラスミドなどに導入し、大腸菌を形質転換して得られたライブラリーやcDNAライブラリーを利用して、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーションなどにより、所望のDNAを得ることができる。また、PCRにより得られたDNA断片の塩基配列を解析し、得られた配列から、既知のDNAの外側に伸長させるためのPCRプライマーを設計し、誘導因子生産細胞の染色体DNAを適当な制限酵素で消化後、自己環化反応によりDNAを鋳型としてインバースPCRを行うことにより(Ochman,H.et al.,Genetics,120:621−623(1988);Innis,M.et al.(Ed.),PCR:Application & Protocols,Academic Press,New York(1989))、また、RACE法(Rapid Amplification of cDNA Ends,Frohman,M.A.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:8998(1988);Innis,M.A.et al.(Ed.),PCR Protocols:A guide to methods and applications,pp28−38,Academic Press,New York(1990),駒野徹編、生物化学実験法47 PCR実験マニュアル、学会出版センター(JSSP))などにより所望のDNAを得ることも可能である。なお、当該所望のDNAは、以上のような方法によってクローニングされたゲノムDNA、あるいはcDNAの他、合成によって得ることもできる。
本発明のガレクチン9誘導因子は、その生物活性を、少なくとも以下:
(1) ガレクチン9誘導活性、
(2) 標的腫瘍細胞としてMeth−Aザルコーマを使用したインビボ試験で腫瘍細胞の増殖抑制又は腫瘍の拒絶を誘起する、
(3) 抗腫瘍活性、
(4) インビトロ試験で末梢血単核球におけるナチュラル・キラー活性を誘導する、
(5) 末梢血単核球を使用した試験で、ガレクチン9 mRNAの発現のアップレギュレーション、
(6) 末梢血単核球を使用した試験で、細胞質におけるガレクチン9タンパクの発現の有意な上昇、
(7) 組織病理学的検査で注射した部位に好酸球及び単核細胞からなり、少ない数の好中球を伴った肉芽組織が認められる、
(8) 注射した部位の皮筋層の上や下の結合組織で多くの肥満細胞が見出される、
(9) 腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周り又は腫瘍組織に炎症細胞(主には好酸球及びいくらかの肥満細胞)の浸潤を有している領域が見出される、
(10)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で核濃縮を示す腫瘍細胞が見出される、及び
(11)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周囲又は腫瘍組織にメタクロマジーを示す肥満細胞の集積が確認される、
から成る群から選ばれたものにより同定して行われることができる。典型的には、ガレクチン9誘導活性を指標にすることができる。ガレクチン9誘導活性は、本発明のガレクチン9誘導因子を添加した場合と、それを添加していない場合とで、ガレクチン9の存在量の変化、ガレクチン9活性の変化、ガレクチン9発現活性の変化、ガレクチン9 mRNA量の変化などをアッセイして同定できる。ガレクチン9並びにガレクチン9発現活性は、例えば国際公開第02/37114号パンフレット(WO 02/37114 A1)に開示のアッセイ法などを参考にして行うことができる。
本発明では、「遺伝子組換え技術」を利用して所定の核酸・ポリヌクレオチドなどを単離・配列決定したり、組換え体を作製したり、所定のタンパク質・ペプチドを得ることができる。本明細書中使用できる遺伝子組換え技術としては、当該分野で知られたものが挙げられ、例えばJ.Sambrook et al.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(2nd Edition,1989 & 3rd Edition,2001);D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1 to 3,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);“Methods in Enzymology”series,Academic Press,New York、例えばR.Wu ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.68(Recombinant DNA),Academic Press,New York(1980);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.100(Recombinant DNA,Part B)& 101(Recombinant DNA,Part C),Academic Press,New York(1983);R.Wu et al.ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.153(Recombinant DNA,Part D),154(Recombinant DNA,Part E)& 155(Recombinant DNA,Part F),Academic Press,New York(1987);R.Wu ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.216(Recombinant DNA,Part G),Academic Press,New York(1992);R.Wu ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.217(Recombinant DNA,Part H)& 218(Recombinant DNA,Part I),Academic Press,New York(1993);P.M.Conn ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.302(Green Fluorescent Protein),Academic Press,New York(1999);S.Weissman ed.,“Methods in Enzymology”,Vol.303(cDNA Preparation and Characterization),Academic Press,New York(1999)などに記載の方法あるいはそこで引用された文献記載の方法あるいはそれらと実質的に同様な方法や改変法が挙げられる(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)。
本明細書中、「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短い一本鎖又は二本鎖のポリヌクレオチドで、好ましくはポリデオキシヌクレオチドが挙げられ、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,Vol.28,p.716−734(1989)に記載されているような既知の方法、例えば、フォスフォトリエステル法、フォスフォジエステル法、フォスファイト法、フォスフォアミダイト法、フォスフォネート法などの方法により化学合成されることができる。通常合成は、修飾された固体支持体上で合成を便利に行うことができることが知られており、例えば、市販されている自動化された合成装置、例えば、Applied Biosystems 3400 DNA synthesizer(Applied Biosystems),ABI 3900 High−Throughput DNA synthesizer(Applied Biosystems)などを用いて行うことができる。該オリゴヌクレオチドは、一つ又はそれ以上の修飾された塩基を含有していてよく、例えば、イノシンなどの天然においては普通でない塩基あるいはトリチル化された塩基などを含有していてよいし、場合によっては、マーカーの付された塩基を含有していてよい。
本明細書中、「ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(polymerase chain reaction)」又は「PCR」とは、一般的に、H.A.Erlich ed.,PCR Technology,Stockton Press,1989などに記載されたような方法を指し、例えば、所望のヌクレオチド配列をインビトロで酵素的に増幅するための方法を指している。一般に、PCR法は、鋳型核酸と優先的にハイブリダイズすることのできる2個のオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成を行うようなサイクルを繰り返し行うことを含むものである。典型的には、PCR法で用いられるプライマーは、鋳型内部の増幅されるべきヌクレオチド配列に対して相補的なプライマーを使用することができ、例えば、該増幅されるべきヌクレオチド配列とその両端において相補的であるか、あるいは該増幅されるべきヌクレオチド配列に隣接しているものを好ましく使用することができる。プライマーは、好ましくは5個以上の塩基、さらに好ましくは10個以上の塩基からなるオリゴヌクレオチド、より好ましくは18〜25個の塩基からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
PCR反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、上記文献の他、例えばR.Saiki,et al.,Science,230:1350,1985;R.Saiki,et al.,Science,239:487,1988;D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);M.A.Innis et al.ed.,“PCR Protocols:a guide to methods and applications”,Academic Press,New York(1990));M.J.McPherson,P.Quirke and G.R.Taylor(Ed.),PCR:a practical approach,IRL Press,Oxford(1991);M.A.Frohman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002(1988)などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
PCR反応は、代表的な場合には、例えば鋳型(代表的にはDNA)と対象核酸に基づいてデザインされたプライマーとを、10×反応緩衝液(Taq DNAポリメラーゼに添付されている)、dNTPs(デオキシヌクレオシド三リン酸dATP,dGTP,dCTP,dTTPの混合物)、Taq DNAポリメラーゼ及び脱イオン蒸留水と混合する。混合物を、例えば、GeneAmpTM PCR system 2700(Applied Biosystems)などの自動サーマルサイクラーを用いて一般的なPCRサイクル条件下にそのサイクルを25〜60回繰り返すが、増幅のためのサイクル数は適宜目的に応じて適当な回数とすることができる。PCRサイクル条件としては、例えば、変性90〜95℃ 5〜100秒、アニーリング40〜60℃ 5〜150秒、伸長65〜75℃ 30〜300秒のサイクル、好ましくは変性94℃15秒、アニーリング58℃15秒、伸長72℃45秒のサイクルが挙げられるが、アニーリングの反応温度及び時間は適宜実験によって適当な値を選択できるし、変性反応及び伸長反応の時間も、予想されるPCR産物の鎖長に応じて適当な値を選択できる。アニーリングの反応温度は、通常プライマーと鋳型DNAとのハイブリッドのTm値に応じて変えることが好ましい。伸長反応の時間は、通常1000bpの鎖長当たり1分程度がおおよその目安であるが、より短い時間を選択することも場合により可能である。
所定の核酸を同定したりするには、ハイブリダイゼーション技術を利用することができる。該ハイブリダイゼーションは、上記「遺伝子組換え技術」を開示する文献記載の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができ、例えば、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法、ハイブリダイゼーション・トランスレーションアッセイ法、プラス・マイナス法などを使用できる。例えば、ハイブリダイゼーションは、DNAなどの核酸を含有しているサンプルを担体(ナイロンフィルターなどの膜を含めたもの)に転写せしめ、必要に応じ変成処理、固定化処理、洗浄処理などを施した後、その担体(例えば、膜など)に転写せしめられたものを、必要に応じ変成させた標識プローブDNA断片と、ハイブリダイゼーション用バッファ中で反応させて行われる。なお、プローブなどを放射性同位体などによって標識するには、市販の標識キット、例えばランダムプライムドDNAラベリングキット(Boehringer Mannheim)などを使用してプローブ用DNAを[α−32P]dCTP(Amersham)などを用いて標識し、放射活性を持つプローブを得ることにより行うことが出来る。また、該標識は、当該分野で知られた方法で行うことができ、例えばジゴキシゲニン、蛍光色素、ビオチン−アビジン系などによって行うこともできる。
ハイブリダイゼーション処理は、普通約35℃〜約80℃、より好適には約50℃〜約65℃で、約15分〜約36時間、より好適には約1時間〜約24時間行われるが、適宜最適な条件を選択して行うことができる。例えば、ハイブリダイゼーション処理は、約55℃で約18時間行われる。ハイブリダイゼーション用バッファとしては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができる。転写した担体(例えば、膜など)の変成処理としては、アルカリ変性液を使用する方法が挙げられ、その処理後中和液や緩衝液で処理するのが好ましい。また担体(例えば、膜など)の固定化処理としては、普通約40℃〜約100℃、より好適には約70℃〜約90℃で、約15分〜約24時間、より好適には約1時間〜約4時間ベーキングすることにより行われるが、適宜好ましい条件を選択して行うことができる。例えば、フィルターなどの担体を約80℃で約2時間ベーキングすることにより固定化が行われる。転写した担体(例えば、膜など)の洗浄処理としては、当該分野で普通に使用される洗浄液、例えば1M NaCl、1mM EDTAおよび0.1% Sodium Dodecyl sulfate(SDS)含有50mM Tris−HCl緩衝液,pH8.0などで洗うことにより行うことができる。膜を含めた担体としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、例えば、ナイロンフィルターなどを挙げることができる。
上記アルカリ変性液、中和液、緩衝液としては、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いることができ、アルカリ変性液としては、例えば、0.5M NaOHおよび1.5M NaClを含有する液などを挙げることができ、中和液としては、例えば、1.5M NaCl含有0.5M Tris−HCl緩衝液,pH8.0などを挙げることができ、緩衝液としては、例えば、2×SSPE(0.36M NaCl、20mM NaHPOおよび2mM EDTA)などを挙げることができる。またハイブリダイゼーション処理に先立ち、非特異的なハイブリダイゼーション反応を防ぐために、必要に応じて転写した担体(例えば、膜など)はプレハイブリダイゼーション処理することが好ましい。このプレハイブリダイゼーション処理は、例えば、プレハイブリダイゼーション溶液[50%formamide,5×Denhardt’s溶液(0.2%ウシ血清アルブミン、0.2%polyvinyl pyrrolidone),5×SSPE,0.1%SDS,100μg/mL熱変性サケ精子DNA]などに浸し、約35℃〜約50℃、好ましくは約42℃で、約4〜約24時間、好ましくは約6〜約8時間反応させることにより行うことができるが、こうした条件は当業者であれば適宜実験を繰り返し、より好ましい条件を決めることができる。ハイブリダイゼーションに用いる標識プローブDNA断片の変成は、例えば、約70℃〜約100℃、好ましくは約100℃で、約1分間〜約60分間、好ましくは約5分間加熱するなどして行うことができる。なお、ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じた方法で行うことができるが、本明細書でストリンジェントな条件とは、例えばナトリウム濃度に関し、約15〜約50mM、好ましくは約19〜約40mM、より好ましくは約19〜約20mMで、温度については約35〜約85℃、好ましくは約50〜約70℃、より好ましくは約60〜約65℃の条件を示す。
ハイブリダイゼーション完了後、フィルターなどの担体を十分に洗浄処理し、特異的なハイブリダイゼーション反応をした標識プローブDNA断片以外の標識プローブを取り除くなどしてから検出処理をすることができる。フィルターなどの担体の洗浄処理は、当該分野で普通に使用されるものの中から選んで用いて行うことができ、例えば、0.1% SDS含有0.5×SSC(0.15M NaCl,15mMクエン酸)溶液などで洗うことにより実施できる。
ハイブリダイズした核酸は、代表的にはオートラジオグラフィーにより検出することができるが、当該分野では各種の技術手法が知られており、そうした方法の中から適宜選択して検出に用いることもできる。検出したシグナルに相当する核酸バンドを、適切な緩衝液、例えば、SM溶液(100mM NaClおよび10mM MgSO含有50mM Tris−HCl緩衝液、pH7.5)などに懸濁し、ついでこの懸濁液を適度に希釈して、所定の核酸を単離・精製、そしてさらなる増幅処理にかけることができる。所定の核酸を保有するサンプル(例えば、ファージ粒子、組換えプラスミド又はベクターなど)は、当該分野で普通に使用される方法でそれを精製分離することができ、例えば、グリセロールグラジエント超遠心分離法(Molecular cloning,a laboratory manual,ed.T.Maniatis,Cold Spring Harbor Laboratory,2nd ed.78,1989)などにより精製することができる。ファージ粒子などからは、当該分野で普通に使用される方法でDNAを精製分離することができ、例えば、得られたファージなどをTM溶液(10mM MgSO含有50mM Tris−HCl緩衝液、pH7.8)などに懸濁し、DNase IおよびRNase Aなどで処理後、20mM EDTA、50μg/ml Proteinase K及び0.5%SDS混合液などを加え、約65℃、約1時間保温した後、これをフェノール抽出ジエチルエーテル抽出後、エタノール沈殿によりDNAを沈殿させ、次に得られたDNAを70%エタノールで洗浄後乾燥し、TE溶液(10mM EDTA 含有10mM Tris−HCl緩衝液、pH8.0)に溶解するなどして得られる。また、目的としているDNAは、サブクローニングなどにより大量に得ることも可能であり、例えばサブクローニングは、宿主として大腸菌を用いプラスミドベクターなどを用いて行うことができる。こうしたサブクローニングにより得られたDNAも、上記と同様にして遠心分離、フェノール抽出、エタノール沈殿などの方法により精製分離できる。本明細書において、核酸は、一本鎖DNA、二本鎖DNA、RNA、DNA:RNAハイブリッド、合成DNAなどの核酸であり、またゲノムDNA、ゲノミックDNAライブラリー、細胞由来のcDNA、合成DNAのいずれであってもよい。
本発明に従えば、解明されているガレクチン9遺伝子の構造並びに当該DNA配列についての知見を利用し、ターゲットの、ゲノムDNA、mRNAのスクリーニング及びガレクチン9発現活性、ガレクチン9活性、さらにはガレクチン9誘導活性などの検知のためのプローブ並びにプライマーの設計などが可能である。特異的検出用プローブ並びにプライマーとしては、実質的にガレクチン9誘導活性を特異的に検出することを可能にするものであればよい。代表的には、国際公開第02/37114号パンフレット(WO 02/37114 A1)に開示の遺伝子のうちの特徴的な配列部分を検出することを可能にするものが挙げられ、好ましくは特異的検出に役立つものであれば該ガレクチン9遺伝子の一部を検出するものも許容される。例えば、ヒトガレクチン9をPCRで得るには、

のプライマーセットを使用できる他、実施例に記載のプライマーセットなどが挙げられる。
検出に使用されるプローブ並びにプライマーは、好適には核酸断片あるいはオリゴヌクレオチドであり、そうしたものは所定の遺伝子に特異的にハイブリダイズすることが求められる。検出に有効な場合では、ハイブリダイズ形成をして有効に結合しているものが好ましく、そうした目的では、例えば5個又は10個以上の連続した塩基を含んでいるオリゴヌクレオチド、好ましくは15個又は25個以上の連続した塩基を含んでいるオリゴヌクレオチド、さらに好ましくは30個又は50個以上の連続した塩基を含んでいるオリゴ(又はポリ)ヌクレオチドが挙げられる。標的配列に有効にハイブリダイズ形成できる塩基配列を有するオリゴ(又はポリ)ヌクレオチドは、当該選択された塩基配列の一端又は両端に別のヌクレオチドあるいはヌクレオチド鎖が付加されていてもよいし、本明細書で説明してあるような標識(マーカーあるいはレポーターなども含む)などが結合せしめてあってもよい。標識は、例えばPCRの過程で取り込まれるものであってもよい。標識は、当該分野で広く利用されているものを使用でき、例えば放射性物質、蛍光性物質、発光性物質、酵素など、さらにビオチン−アビジン系などであってよい。好適にはプローブは、検知を容易にするため標識されていてよい。遺伝子の単離にあたっては、PCR法、さらには逆転写酵素(RT)を用いたPCR法(RT−PCR)を利用することが出来る。定量的な測定を目的として競合PCR法を行うこともできる。例えば、所定のcDNAをプローブとして用いれば、例えばノーザン・ブロティング、サザン・ブロティング、in situハイブリダイゼーションなどにより細胞中での特有の遺伝子などを検出・測定できる。
検知に際して所定の遺伝子を特異的に増幅するためには、プライマーとしては増幅すべき配列の両端を規定する一対のオリゴヌクレオチドからなるものを使用するが、本明細書で開示したオリゴヌクレオチドあるいは本発明で定義した所定の特異的オリゴヌクレオチドの一つとユニバーサルプライマーの一つとからなる一対のオリゴヌクレオチドから構成されるものを使用することもできる。
当該プライマーは、増幅すべき配列の鎖の延長の開始に使用され、PCR法だけでなく、LCR法、TAS法などの増幅法で使用できる。該プライマーの用途は、特定の核酸増幅法に限定されるものではなく、様々な用途・適用・目的に利用できる。
該検出方法では、核酸試料を上記「遺伝子組換え技術」に記載の方法で入手し、必要に応じて、ターゲット遺伝子を特異的に増幅することができるプライマーを用いて増幅反応を行ない、増幅が生じたか否かを検定する。従って、本発明の方法においては、既知のDNA,mRNAなどの核酸抽出法又は他の適当な核酸抽出方法を用いることができる。抽出されたDNA,mRNAなどの核酸の増幅は、任意の増幅方法、例えばPCR法、RT−PCR法等により行なうことができる。増幅操作からの生成物は、例えば、電気泳動、例えばアガロースゲル電気泳動を行なった後、増幅されたDNAの有無について常法により、例えばエチジウムブロマイドの染色剤で染色した後UV照射により検出することができる。あるいは、所定のプローブにより検出することができる。例えば、ガレクチン9遺伝子の発現が被験試料中にない場合には増幅が生じないかあるいは低レベルであるから、例えば、ブロッティング法、逆ブロッティング法等、増幅生成物の分離を伴わない検出方法を用いることもできる。
本明細書中で標的とする関連タンパク質あるいはポリペプタイド、そのフラグメント、さらにはDNAを含めた核酸(mRNAやオリゴヌクレオチドを含む)は、それらを単独あるいは有機的に使用し、更にはアンチセンス技術、モノクローナル抗体を含めた抗体、組換え細胞(形質転換体)などとも適宜組合わせて、ゲノミックス及びプロテオミックス技術に応用できる。核酸アレイ、タンパク質アレイを使用した遺伝子発現解析、遺伝子機能解析、タンパク質間相互作用解析、関連遺伝子解析をすることが可能である。例えば、核酸アレイ技術では、cDNAライブラリーを使用したり、PCR技術で得たDNAを基板上にスポッティング装置で高密度に配置して、ハイブリダイゼーションを利用して試料の解析が行われる。
該アレイ化は、針あるいはピンを使用して、あるいはインクジェトプリンティング技術などでもって、スライドガラス、シリコン板、プラスチックプレートなどの基板のそれぞれ固有の位置にDNAが付着せしめられることによりそれを実施することができる。該核酸アレイ上でのハイブリダイゼーションの結果得られるシグナルを観察してデータを取得する。該シグナルは、螢光色素などの標識(例えば、Cy3,Cy5,BODIPY,FITC,Alexa Fluor dyes(商品名),Texas red(商品名)など)より得られるものであってよい。検知にはレーザースキャナーなどを利用することもでき、得られたデータは適当なアルゴリズムに従ったプログラムを備えたコンピューターシステムで処理されてよい。また、タンパク質アレイ技術では、タグを付された組換え発現タンパク質産物を利用してよく、二次元電気泳動(2−DE)、酵素消化フラグメントを含めての質量分析(MS)(これにはエレクトロスプレーイオン化法(electrospray ionization:ESI),マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(matrix−assisted laser desorption/ionization:MALDI)などの技術が含まれ、MALDI−TOF分析計、ESI−3連四重極分析計、ESI−イオントラップ分析計などを使用してよい)、染色技術、同位体標識及び解析、画像処理技術などが利用されることができる。したがって、本発明には上記で得られるあるいは利用できる酵素遺伝子系など及びそれに対する抗体に関連したソフトウエア、データベースなども含まれてよい。
本発明での検知・測定は、免疫染色、例えば組織あるいは細胞染色、免疫電子顕微鏡、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイまたは非競合型イムノアッセイで行うことができ、放射免疫測定法(RIA),FIA,LIA,EIA,ELISAなどを用いることができ、B−F分離を行ってもよいし、あるいは行わないでその測定を行うことができる。好ましくはRIA,EIA,FIA,LIAであり、さらにサンドイッチ型アッセイが挙げられる。例えばサンドイッチ型アッセイでは、一方を本発明のガレクチン9ポリペプチドに対する抗体あるいはガレクチン9の関連ペプチド断片に対する抗体とし、他方をガレクチン9のC末端側残基に対する抗体とし、そして一方を検出可能に標識化する(もちろん、その他の組み合わせも可能であり、目的に応じて適宜デザインできる)。同じ抗原を認識できる他の抗体を固相に固定化する。検体と標識化抗体及び固相化抗体を必要に応じ順次反応させるためインキュベーション処理し、ここで非結合抗体を分離後、標識物を測定する。測定された標識の量は抗原、すなわちガレクチン9ポリペプチド抗原の量と比例する。このアッセイでは、不溶化抗体や、標識化抗体の添加の順序に応じて同時サンドイッチ型アッセイ、フォワード(forward)サンドイッチ型アッセイあるいは逆サンドイッチ型アッセイなどと呼ばれる。例えば洗浄、撹拌、震盪、ろ過あるいは抗原の予備抽出等は、特定の状況のもとでそれら測定工程の中で適宜採用される。特定の試薬、緩衝液等の濃度、温度あるいはインキュベーション処理時間などのその他の測定条件は、検体中の抗原の濃度、検体試料の性質等の要素に従い変えることができる。当業者は通常の実験法を用いながら各測定に対して有効な最適の条件を適宜選定して測定を行うことが出来る。
ガレクチン9の測定系としては、例えば組織に対しては免疫染色(METHODS,24,289−296(2001);J Immunol Methods,47(2),129−144(1981);ibid.,150(1−2),5−21,23−32 & 151−158(1992);Cancer J,7(1),24−31(2001)等)、免疫電子顕微鏡(Mol Biotechnol,7(2),145−151(1997);J Electron Microsc Tech.,19(1),57−63 & 64−79(1991);ibid.,19(3),305−315(1991)等)といった蛋白測定系、in situ hybridizationといった発現遺伝子測定系が、組織抽出物に対してはEIA,RIA,FIA,LIA,ウエスタンブロッティング(J Electron Microsc(Tokyo),45(2),119−127(1996);Methods Biochem Anal.,33,1−58(1988);Methods Enzymol.,271,177−203(1996);ibid.,305,333−345(2000);J Immunol Methods,152(2),227−236(1992);ibid.,170(2),177−184(1994);ibid.,195(1−2),149−152(1996);口野嘉幸他編、「遺伝子・タンパク質、実験操作 ブロッティング法」、株式会社ソフトサイエンス社、昭和62年11月10日発行など)といった蛋白測定系、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNaseプロテクションアッセイ、RT−PCR(reverse transcription polymerase chain reaction)、Real−Time PCR(Clinical Chemistry,46:11,1738−1743(2000))といった発現遺伝子測定系、そして血中、体液などに対してはEIA,RIA,FIA,LIA,ウエスタンブロッティングといった蛋白測定系を有利に利用できる。また直接ガレクチン9誘導因子の測定系を構築してそれを有利に利用できる。
EIAの測定系において、例えば競合法では、抗ガレクチン9抗体を固相化抗体として使用し、標識抗原及び非標識抗原(抗原としては、ガレクチン9あるいはそのフラグメントペプチドなどが挙げられる)を使用するし、また非競合法で、例えばサンドイッチ法では、固相化抗ガレクチン9抗体や標識抗ガレクチン9抗体を利用できる他、抗ガレクチン9抗体を直接標識したり、固相化せずに、抗ガレクチン9抗体に対する抗体を標識したり、固相化して行うこともできる。感度増幅法としては、例えば、非酵素標識一次抗体との組み合わせでは、高分子ポリマーと酵素と一次抗体を利用するもの(Envision試薬を応用したもの;Enhanced polymer one−step staining(EPOS))が挙げられ、非酵素標識二次抗体との組合せでは、例えばPAP(peroxidase−antiperoxidase)法などの酵素と抗酵素抗体複合体の組合せ、SABC(avidin−biotinylated peroxidase complex)法などのビオチン標識二次抗体とビオチン標識酵素−アビジン複合体の組合せ、ABC(streptavidin−biotin complex)法、LSAB(labeled streptavidin−biotin)法などのビオチン標識二次抗体とビオチン標識酵素−ストレプトアビジン複合体の組合せ、CSA(catalyzed signal amplification)法などのSABCとビオチン標識タイラマイドと酵素標識ストレプトアビジンの組合せ、高分子ポリマーで二次抗体と酵素を標識してあるものなどが挙げられる。
本発明の測定法においては、好適に免疫学的測定法が用いられるが、その際の固相担体としては、抗体などタンパク質を良く吸着するポリスチレン製、ポリカーボネイト製、ポリプロピレン製あるいはポリビニル製のボール、マイクロプレート、スティック、微粒子あるいは試験管などの種々の材料および形態を任意に選択し、使用することができる。
測定にあたっては至適pH、例えばpH約4〜約9に保つように適当な緩衝液系中で行うことができる。特に適切な緩衝剤としては、例えばアセテート緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、フォスフェート緩衝剤、トリス緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ボレート緩衝剤、グリシン緩衝剤、炭酸塩緩衝剤、トリス−塩酸緩衝剤、ベロナール緩衝剤などが挙げられる。緩衝剤は互いに任意の割合で混合して用いることができる。抗原抗体反応は約0℃〜約60℃の間の温度で行うことが好ましい。
これら個々の免疫学的測定法を含めた各種の分析・定量法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて、本発明の当該対象物質あるいはそれと実質的に同等な活性を有する物質に関連した測定系を構築すればよい。
これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編,「ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和49年発行;入江 寛編,「続ラジオイムノアッセイ」,講談社,昭和54年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」,医学書院,昭和53年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第2版),医学書院,昭和57年発行;石川栄治ら編,「酵素免疫測定法」(第3版),医学書院,昭和62年発行;H.V.Vunakis et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.70(Immunochemical Techniques,Part A),Academic Press,New York(1980);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.73(Immunochemical Techniques,Part B),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.74(Immunochemical Techniques,Part C),Academic Press,New York(1981);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.84(Immunochemical Techniques,Part D:Selected Immunoassays),Academic Press,New York(1982);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.92(Immunochemical Techniques,Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods),Academic Press,New York(1983);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.121(Immunochemical Techniques,Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies),Academic Press,New York(1986);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.178(Antibodies,Antigens,and Molecular Mimicry),Academic Press,New York(1989);M.Wilchek et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.184(Avidin−Biotin Technology),Academic Press,New York(1990);J.J.Langone et al.(ed.),“Methods in Enzymology”,Vol.203(Molecular Design and Modeling:Concepts and Applications,Part B:Anibodies and Antigens,Nucleic Acids,Polysaccharides,and Drugs),Academic Press,New York(1991)などあるいはそこで引用された文献(それらの中にある記載はそれを参照することにより本明細書の開示に含められる)〕。
ガレクチン9発現遺伝子(cDNAなどのDNA及びmRNAなどのRNAを含む)を、上記した「遺伝子組換え技術」に従い、当該分野で特定の遺伝子の発現を検知測定するために知られた手法、例えばin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロッティング、ドットブロット、RNaseプロテクションアッセイ、RT−PCR、Real−Time PCR(Journal of Molecular Endocrinology,25,169−193(2000)及びそこで引用されている文献)、DNAアレイ解析法(Mark Shena編、“Microarray Biochip Technology”,Eaton Publishing(2000年3月))などによって検知・測定して、ガレクチン9誘導因子活性を検知できる。こうした技術を利用したガレクチン9発現遺伝子測定系、それに利用する試薬、方法、プロセスなどは、すべて本発明のガレクチン9誘導因子活性検出剤、ガレクチン9誘導因子活性検出法及びそれに利用するシステムに含まれる。該in situハイブリダイゼーションには、例えばノンRI in situハイブリダイゼーションが含まれてよく、そこには、例えば直接法及び間接法が含まれてよい。該直接法は、例えば核酸プローブに検出可能な分子(レーポーター)が直接結合しているものを使用し、該間接法は、例えばレーポーター分子に対する抗体などを使用してシグナルを増幅せしめているものである。核酸プローブ中のオリゴヌクレオタイドには、官能基(例えば、第一級脂肪族アミノ基、SH基など)が導入されており、こうした官能基にハプテン、螢光色素、酵素などが結合せしめられていてもよい。核酸プローブの標識としては、代表的にはジゴキシゲニン(DIG)、ビオチン、フルオレッセインなどが挙げられるが、上記したように抗体のところで説明した標識から適宜選択して使用することができるし、また多重ラベリングも利用でき、さらに標識抗体も利用できる。核酸プローブの標識法としては、当該分野で知られた方法から適宜選択して使用できるが、例えばランダムプライム法、ニック・トランスレーション法、PCRによるDNAの増幅、ラベリング/テイリング法、in vitro transcription法などが挙げられる。処理された試料の観察には、当該分野で知られた方法から適宜選択して使用できるが、例えば暗視野顕微鏡、位相差顕微鏡、反射コントラスト顕微鏡、螢光顕微鏡、デジタルイメージング顕微鏡、電子顕微鏡なども使用できるし、さらにフローサイトメトリーなどによることもできる。本発明では、ガレクチン9及びガレクチン9発現遺伝子をガレクチン9誘導因子のマーカーとして使用することができ、それにより、様々な形態のガレクチン9誘導因子活性検出剤あるいはガレクチン9誘導因子検出及び/又は測定剤、ガレクチン9誘導因子活性検出法あるいはガレクチン9誘導因子検出及び/又は測定法、さらにはガレクチン9誘導因子活性検出あるいはガレクチン9誘導因子検出及び/又は測定試薬セットあるいはシステムを作成でき、ガレクチン9誘導因子の精製・同定・単離・利用において役立つばかりでなく、それらは優れている。
本発明では、ガレクチン9の産生・遊離を誘導することによる、ガン転移抑制作用を得るための方法、それに使用する試薬、あるいはキット、システム(検知・測定系を含む)などを提供する。ガレクチン9の生体内濃度、あるいは発現をコントロールすることで、抗腫瘍剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤、抗炎症剤及び副腎皮質ステロイドホルモン代替用活性成分剤を提供できる。また、ガレクチン9誘導因子を利用して、グルココルチコイドの示す薬理作用・生物活性を利用した分野への応用が可能である。
アレルギーや自己免疫疾患はCD4陽性Tリンパ球の過剰免疫反応により惹起されるし、難治性アレルギーや自己免疫疾患の治療にはステロイドや免疫抑制剤が用いられる。ガレクチン9は、これらの反応においてその関与が明らかであることから、ガレクチン9誘導因子は、免疫抑制作用、抗炎症作用、抗アレルギー活性を示すことが期待でき、抗腫瘍剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤、抗炎症剤及び副腎皮質ステロイドホルモン代替剤として利用可能である。
本発明の活性成分〔例えば、ガレクチン9誘導因子、それを含有する液体等〕を医薬として用いる場合、通常単独或いは薬理的に許容される各種製剤補助剤と混合して、医薬組成物又は医薬調製物などとして投与することができる。好ましくは、経口投与、局所投与、または非経口投与等の使用に適した製剤調製物の形態で投与され、目的に応じていずれの投与形態(吸入法、あるいは直腸投与も包含される)によってもよい。
また、本発明の活性成分は、各種医薬、例えば抗腫瘍剤(抗がん剤)、腫瘍移転阻害剤、血栓形成阻害剤、関節破壊治療剤、鎮痛剤、消炎剤及び/又は免疫抑制剤と配合して使用することもでき、それらは、有利な働きを持つものであれば制限なく使用でき、例えば当該分野で知られたものの中から選択することができる。
そして、非経口的な投与形態としては、局所、経皮、静脈内、筋肉内、皮下、皮内もしくは腹腔内投与を包含し得るが、患部への直接投与も可能であり、またある場合には好適でもある。好ましくはヒトを含む哺乳動物に経口的に、あるいは非経口的(例、細胞内、組織内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、腹腔内、胸腔内、脊髄腔内、点滴法、注腸、経直腸、点耳、点眼や点鼻、歯、皮膚や粘膜への塗布など)に投与することができる。具体的な製剤調製物の形態としては、溶液製剤、分散製剤、半固形製剤、粉粒体製剤、成型製剤、浸出製剤などが挙げられ、例えば、錠剤、被覆錠剤、糖衣を施した剤、丸剤、トローチ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、マイクロカプセル剤、埋込剤、粉末剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、注射剤、液剤、エリキシル剤、エマルジョン剤、灌注剤、シロップ剤、水剤、乳剤、懸濁剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スプレー剤、吸入剤、噴霧剤、軟膏製剤、硬膏製剤、貼付剤、パスタ剤、パップ剤、クリーム剤、油剤、坐剤(例えば、直腸坐剤)、チンキ剤、皮膚用水剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、塗布剤、輸液剤、注射用液剤などのための粉末剤、凍結乾燥製剤、ゲル調製品等が挙げられる。
医薬用の組成物は通常の方法に従って製剤化することができる。例えば、適宜必要に応じて、生理学的に認められる担体、医薬として許容される担体、アジュバント剤、賦形剤、補形剤、希釈剤、香味剤、香料、甘味剤、ベヒクル、防腐剤、安定化剤、結合剤、pH調節剤、緩衝剤、界面活性剤、基剤、溶剤、充填剤、増量剤、溶解補助剤、可溶化剤、等張化剤、乳化剤、懸濁化剤、分散剤、増粘剤、ゲル化剤、硬化剤、吸収剤、粘着剤、弾性剤、可塑剤、崩壊剤、噴射剤、保存剤、抗酸化剤、遮光剤、保湿剤、緩和剤、帯電防止剤、無痛化剤などを単独もしくは組合わせて用い、それとともに本発明のタンパク質等を混和することによって、一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態にして製造することができる。
非経口的使用に適した製剤としては、活性成分と、水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る媒体との無菌性溶液、または懸濁液剤など、例えば注射剤等が挙げられる。一般的には、水、食塩水、デキストロース水溶液、その他関連した糖の溶液、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類が好ましい注射剤用液体担体として挙げられる。注射剤を調製する際は、蒸留水、リンゲル液、生理食塩液のような担体、適当な分散化剤または湿化剤及び懸濁化剤などを使用して当該分野で知られた方法で、溶液、懸濁液、エマルジョンのごとき注射しうる形に調製する。
注射用の水性液としては、例えば生理食塩液、ブドウ糖やその他の補助薬(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)を含む等張液などが挙げられ、薬理的に許容される適当な溶解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノールなど)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(たとえばポリソルベート80TM,HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)又は浸透圧調節のための試薬、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、アスコルビン酸などの酸化防止剤、吸収促進剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
非経口投与には、界面活性剤及びその他の薬学的に許容される助剤を加えるか、あるいは加えずに、水、エタノール又は油のような無菌の薬学的に許容される液体中の溶液あるいは懸濁液の形態に製剤化される。製剤に使用される油性ベヒクルあるいは溶剤としては、天然あるいは合成あるいは半合成のモノあるいはジあるいはトリグリセリド類、天然、半合成あるいは合成の油脂類あるいは脂肪酸類が挙げられ、例えばピーナッツ油、トウモロコシ油、大豆油、ゴマ油などの植物油が挙げられる。例えば、この注射剤は、通常本発明化合物を0.1〜10重量%程度含有するように調製されることができる。
局所的、例えば口腔、又は直腸的使用に適した製剤としては、例えば洗口剤、歯磨き剤、口腔噴霧剤、吸入剤、軟膏剤、歯科充填剤、歯科コーティング剤、歯科ペースト剤、坐剤等が挙げられる。洗口剤、その他歯科用剤としては、薬理的に許容される担体を用いて慣用の方法により調製される。口腔噴霧剤、吸入剤としては、本発明化合物自体又は薬理的に許容される不活性担体とともにエアゾール又はネブライザー用の溶液に溶解させるかあるいは、吸入用微粉末として歯などへ投与できる。軟膏剤は、通常使用される基剤、例えば、軟膏基剤(白色ワセリン、パラフィン、オリーブ油、マクロゴール400、マクロゴール軟膏など)等を添加し、慣用の方法により調製される。
歯、皮膚への局所塗布用の薬品は、適切に殺菌した水または非水賦形剤の溶液または懸濁液に調剤することができる。添加剤としては、例えば亜硫酸水素ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムのような緩衝剤;酢酸または硝酸フェニル水銀、塩化ベンザルコニウムまたはクロロヘキシジンのような殺菌および抗真菌剤を含む防腐剤およびヒプロメルローズのような濃厚剤が挙げられる。
坐剤は、当該分野において周知の担体、好ましくは非刺激性の適当な補形剤、例えばポリエチレングリコール類、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等の、好ましくは常温では固体であるが腸管の温度では液体で直腸内で融解し薬物を放出するものなどを使用して、慣用の方法により調製されるが、通常本発明化合物を0.1〜95重量%程度含有するように調製される。使用する賦形剤および濃度によって薬品は、賦形剤に懸濁させるかまたは溶解させることができる。局部麻酔剤、防腐剤および緩衝剤のような補助薬は、賦形剤に溶解可能である。
経口的使用に適した製剤としては、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、トローチのような固形組成物や、液剤、シロップ剤、懸濁剤のような液状組成物等が挙げられる。製剤調製する際は、当該分野で知られた製剤補助剤などを用いる。錠剤及び丸剤はさらにエンテリックコーティングされて製造されることもできる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。
また、活性成分がタンパク質やポリペプチドである場合、ポリエチレングリコール(PEG)は、哺乳動物中で極めて毒性が低いことから、それを結合させることは特に有用である。また、PEGを結合せしめると、異種性化合物の免疫原性及び抗原性を効果的に減少せしめることができる場合がある。該化合物は、マイクロカプセル装置の中に入れて与えてもよい。PEGのようなポリマーは、アミノ末端のアミノ酸のα−アミノ基、リジン側鎖のε−アミノ基、アスパラギン酸又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のα−カルボキシル基、又はある種のアスパラギン、セリン又はトレオニン残基に付着したグリコシル鎖の活性化された誘導体に、簡便に付着させることができる。
タンパク質との直接的な反応に適した多くの活性化された形態のPEGが知られている。タンパク質のアミノ基と反応させるのに有用なPEG試薬としては、カルボン酸、カルボネート誘導体の活性エステル、特に、脱離基がN−ヒドロキシスクシンイミド、p−ニトロフェノール、イミダゾール、又は1−ヒドロキシ−2−ニトロベンゼン−4−スルフォネートであるものが挙げられる。同様に、アミノヒドラジン又はヒドラジド基を含有するPEG試薬は、タンパク質中の過ヨウ素酸酸化によって生成したアルデヒドとの反応に有用である。
本発明の活性成分は、その投与量を広範囲にわたって選択して投与できるが、その投与量及び投与回数などは、処置患者の性別、年齢、体重、一般的健康状態、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬物の組み合わせ、患者のその時に治療を行なっている病状の程度に応じ、それらあるいはその他の要因を考慮して決められる。
医薬品製造にあたっては、その添加剤等や調製法などは、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十四改正 日本薬局方解説書、平成13年6月27日発行、株式会社廣川書店;一番ヶ瀬 尚 他編 医薬品の開発12巻(製剤素剤〔I〕)、平成2年10月15日発行、株式会社廣川書店;同、医薬品の開発12巻(製剤素材〔II〕)平成2年10月28日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して適用することができる。
本発明の活性成分は、本明細書で説明している、(a)ガレクチン9産生及び遊離の誘導を介して、ガレクチン9が担う生物活性をコントロールして、例えばヒトガレクチン9が正常細胞には傷害活性を示さず、腫瘍細胞に対して細胞傷害活性を示すという性状、腫瘍細胞に対してアポトーシスを誘導するが、正常細胞にはアポトーシスを誘導しないという性状、悪性細胞の転移性を抑制するという性状、活性化された免疫細胞、特には活性化したCD4陽性T細胞のアポトーシスを誘導する活性(これに対しレスティングT細胞、特にCD4陽性レスティングT細胞(ヘルパーT細胞)のアポトーシス誘導はそれを誘導しないという性状)などを利用する上で有用であり、抗腫瘍剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤、抗炎症剤、副腎皮質ステロイドホルモンと同様な活性を利用する薬剤として有望である。
本明細書において、ナチュラル・キラー細胞の細胞傷害性の測定を行うことができる。活性物質の刺激によるナチュラル・キラー(NK)細胞の細胞傷害性の測定法については、当該分野で知られた方法の中から選んでそれを適用できるし、市販のアッセイキットを利用して行うことができる。市販アッセイキットとしては、例えばLDH Cytotoxicity Detection Kit(TaKaRa)などが挙げられる。代表的な細胞傷害性の測定法は、細胞から放出される乳酸脱水素酵素(LDH)を測定することにより細胞傷害を測定するもので、該LDHは通常では細胞膜を通過しないが、細胞膜が傷害を受けると細胞外、すなわち培地中に放出される。そこで放出されたLDHをその乳酸を脱水素化してピルビン酸とNADHを生成する活性に基づいてアッセイするものである。該生成NADHはジアホラーゼの触媒でテトラゾリウム塩を還元し、490nmの吸収をもつ赤色のホルマザン色素を形成するので、490nmの吸光度量の増大でLDH活性をの測定できる。この手法では、死細胞又は細胞膜に傷害をうけた細胞の数は、培養上清中のLDH酵素活性の増加として現れるので、これにより細胞傷害活性が測定される。
別のアッセイ法では、単核白血球(mononuclear leukocyte;MNL)を取得して、該細胞(3×10個/mL)を活性物質(例えば、BALL−mf、IL−2など)による刺激あるいはコントロールの無刺激(例えば、PBSによる処理)をし、適切な培地(例えば、抗菌・抗真菌性溶液(antibiotic antimycotic solution;Sigma chemicals,St.Louis,MO,USA)を添加した10% FCS含有RPMI 1640培地など)中で培養する。培養後その細胞を標的細胞に対するエフェクター細胞として使用する。一方、標的細胞K562はNa51CrO(Daiichi Radioisotope Laboratories,東京;比活性,1mCi/mL)でもって処理してラベルする(50μCi/10個細胞)。その細胞を2回洗った後、さらに37℃で30分間培養する。細胞は洗った後に1×10個/mLとなるように再懸濁される。そのラベルされた細胞を96−ウェルの丸底型マイクロタイタープレートの各ウェルに入れ(1×10個細胞/ウェル、3セット)、エフェクター細胞:標的細胞比(E:T比)10〜40でもってエフェクター細胞と一緒にインキュベーション処理する。自然に生ずるCr放出をみるために培地単独の中でインキュベーション処理した標的細胞を使用し、最大のCr放出をみるために1N HClを加えた中でインキュベーション処理した標的細胞を使用する。
プレートは、37℃で4時間インキュベーション処理され、350gで6分間遠心処理され、上澄み液(100μL)を得、ガンマカウンター(Aloka,東京)を使用して上清液の放射活性を測定する。
細胞のリシス%を次式により計算する:

平均値±SEで細胞毒性を示し、統計的な有意性はStudent’sテストを使用して評価できる。
明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
【実施例】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
なお、以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNAクローニングではJ.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis,“Molecular Cloning”,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)及びD.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1 to 4,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);PCR法を使用する場合には、H.A.Erlich ed.,PCR Technology,Stockton Press,1989;D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995)及びM.A.Innis et al.ed.,“PCR Protocols”,Academic Press,New York(1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols)や添付の薬品等を使用している。
【実施例1】
〔腫瘍細胞膜可溶化〕
腫瘍細胞として、B細胞リンパ腫由来細胞株,BALL−1細胞及びDaudi細胞を使用して、その細胞膜可溶化分画を調製した。可溶化処理は、Hirashima,M.et al.,Immunol.Letters,36:273−281(1993)及びSeki,M.et al.,Int.Arch.Allergy Immunol.,114:2−5(1997)に記載の方法に改変を加えた方法で行った。10% FCS含有のRPMI1640培地中で培養されたBALL−1細胞を出発原料とした。収穫されたBALL−1細胞を1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)−PBSにて再浮遊した(1×10cell/5mL)。液体窒素と室温水とを使用し、凍結・融解処理を4回行った(凍結・融解×4回)。次にソニケーター処理(output=4,duty cycle%=50、氷上、4分間(実質2分間程度))を行った。ソニケーター処理は2分間行って次に休み、また2分間行うという操作をした。得られた破砕物を遠心分離にかけた。遠心分離処理は、100,000 G,1時間,4℃の条件で実施した。
遠心分離処理して得られたペレットを、上記BALL−1細胞を1mM PMSF−PBSにて再浮遊した時と同量の50mM Tris−HCl(pH8.2),1mM EDTA及び1% CHAPSからなる液に再浮遊し、ホモジナイゼーション処理した。ホモジナイズ処理は、10mL又は20mLのテフロン(登録商標)・ガラスホモジナイザーを使用し、氷上でペレットが完全に無くなるまで数分間行った。得られた生成物を遠心分離にかけた。遠心分離処理は、20,000G(15,000rpm),30分間,4℃の条件で実施した。
上清液(Sup(MF))を回収した。吸光度(Optical Density:OD)を測定した。ブランクには、50mM Tris−HCl(pH8.2),1mM EDTA及び1% CHAPSからなる液を用いた。得られた上清液をPBSに対して徹底的に透析せしめ、次に0.2μmLの孔径のフィルターを通過せしめ、腫瘍細胞膜可溶化分画(mf)を得る。それを使用まで−80℃で保存した。また、20% FCS含有のRPMI1640培地中で培養されたDaudi細胞(2×10個/mL)についても同様に処理しmfを得、それを使用まで−80℃で保存した。
〔腫瘍細胞の調製〕
標的腫瘍細胞として、Meth−Aザルコーマを使用した。Meth−Aザルコーマ細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS),100U/mLペニシリン,100μg/mLストレプトマイシン及び0.25μg/mLアムホテリシンBを含有するRPMI 1640培地中で維持された。培養された細胞(1×10個/100μL PBS液)をBalb/cマウスの背中に皮下接種した。3週間後、生育した腫瘍を切取り、2cmの大きさに切り分け、1mg/mLコラーゲナーゼ(I型、Sigme C−0130;Sigma,St.Louis,MO,USA)を添加した10%FBS含有RPMI 1640培地中に置いた。混合物をマグネチックスタラーで一定に撹拌しながら37℃で1.5時間ホモジュネート化処理し、綿のガーゼを通した後、PBSで2回洗い、ついでPBSに再度懸濁した(2×10個/mL;生細胞率,約90%)。
〔腫瘍の増殖及び拒絶〕
Meth−A細胞(1×10個/50μL)をBALB/cマウス(7週齢の雄,n=10/群)の背中に皮下接種した。接種後直ぐに100ng/200μLのBALL−mfあるいはDaudi−mfをその動物の該腫瘍細胞接種部位の周りに皮下注射した(100μL/部位)。コントロールとしては、PBSを使用した。注射を3日毎に繰り返した。週に3回該動物の体重及び該腫瘍の大きさ(短軸,a及び長軸,b)を測定した。腫瘍の容積(V)をAttia et al.,Cancer Res.,26:1787−1800(1966)に記載の方法に従って次式:V(mm)=0.4×a×bにより計算して求めた。
〔ガレクチン9のRT−PCR〕
BALL−mf,Daudi−mfあるいはPBSでもって処理された細胞よりTRIZOL試薬(Gilbco,BRL)を使用して全RNAを単離した。Gene Amp RNA PCRキット(Perkin Elmer)を使用して0.5μgの全RNAをワンステップの逆転写処理をしてDNAを調製し、次にポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)により、マウスガレクチン9又はヒトガレクチン9及びGAPDHの転写産物を増幅した。逆転写(RT)反応及びPCRは、キット製造業者の指示に従って行った。すなわち、Amersham Pharmacia Biotechを通じて合成した次なるプライマー配列:
ヒトガレクチン9

マウスガレクチン9

を使用した。
30回PCRサイクルを繰り返してすべての転写産物を増幅した。すべての反応は、GeneAmp PCR System 9600(Perkin Elmer Applied Biosystems)中で行った。PCR産物は、UVで可視化するように臭化エチジウム(1μg/mL)を含有する1.5%アガロースゲルにかけた。それぞれのPCR産物は精製した。ガレクチン9 PCR産物のシークエンシングは、ABI PRISM Big Terminator Dye Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(Perkin Elmer Applied Biosystems)を使用して行った。
各反応において、次なる試薬:8μLのTerminator Reaction Mix,500ngのPCR産物,3.2pmolのGal−9用プライマー及び脱イオン水をチューブに添加した。DNAのシークエンシングは、GeneAmp PCR System 2400上で行った。
低分子のバンドのところのPCR産物及び高分子のバンドのところのPCR産物の双方から得られた配列が、リンカーベプチド領域の長さが異なっているガレクチン9の配列に対応していた。最終的には、NIH image 1.61プログラムを使用してバンドの強度を測定した。
〔ウエスタン・ブロティング〕
(1) ウサギ抗ヒト組換え体ガレクチン−9CT血清からのヒト組換え体ガレクチン−9CT特異抗体の精製
ヒトGal−9のC−末端側ドメインで免疫したウサギから精製ポリクローナル抗体(ヒトGal−9に対する抗体)を得た。その抗体はGal−9のC−末端側ドメイン結合Sepharoseを使用して精製したもので、該抗体はマウスGal−9を認識することも確認している。
1.抗血清の硫安分画(粗IgG画分の作製)
氷冷下ガラス製ビーカーに抗血清(ウサギ抗ヒト組換え体ガレクチン−9CT血清、100mL)とリン酸緩衝生理食塩液(以下、PBS,100mL)を入れ,該液を30mmのテフロン(登録商標)撹拌子を使ってマグネチックスターラーの上で撹拌しながら飽和硫酸アンモニウム溶液(100mL)を毎分5mLの速さで滴下した。飽和硫酸アンモニウム溶液をすべて添加した後、さらに30分間撹拌を続けた。得られた液を遠心管に移し、13,000rpm(RPR−16ローター、17,000xG、高速遠心機、日立工機(株))で30分間(4℃;以後特に指定のない場合、遠心操作は4℃で行う)遠心した。上清を捨て、沈殿物に100mLのPBS(氷冷;以後特に指定のない場合、氷冷したPBSを使用する)を加えて溶解した。得られた液を20mmのテフロン(登録商標)撹拌子を入れたビーカーに移した。上記と同様の操作で、氷冷下飽和硫酸アンモニウム溶液(67mL)を滴下し、さらに30分間撹拌した。得られた液を遠心管に移し、13,000rpm(RPR−16ローター、高速遠心機、日立工機(株))で30分間遠心した。上清を捨て、沈殿をPBS(50mL)に溶解した。液を透析チューブ(ダイアライシスメンブラン27、和光純薬工業(株))に入れ、PBSに対して透析処理した。透析後透析チューブ内の液を遠心管に移し、13,000rpm(RPR−16ローター)で30分間遠心した。上清10mLあたり0.05mLの10%(w/v)アジ化ナトリウムを加え、プラスチックボトルに入れて4℃で保存した(粗IgG画分)。
2.抗原カラムを用いたアフィニティー精製
上記行程1.で作製した粗IgG画分(50mL)に等量のPBS(40mmol/Lラクトース及び0.05%(w/v)アジ化ナトリウムを含有)を加え、希釈粗IgG画分液とした。GST−組換え体ガレクチン−9CT(10〜20mg)固定化ハイトラップNHS−活性化カラム(5ml、Amersham Biosciences社)をペリスタポンプに接続し、20mLのPBS(20mmol/Lラクトース含有)でカラムを洗浄することにより平衡化した(流速:毎分2ml)。平衡化したカラムに希釈粗IgG画分液を流し(流速:毎分1ml)、カラムから流出する最初の5mLを捨て、その後の流出液をプラスチックボトルに集めた。粗IgG画分を流し終わったら、さらに5mLのPBSを流してその流出液も同じプラスチックボトルに集めた。プラスチックボトル内の液を再度同じ条件でカラムに流し、その際の流出液もプラスチックボトルに集めた。次に、カラムを50mLのPBS(20mmol/Lラクトース含有)で洗浄する(流速:毎分2mL)。流出液の最後の2mLを試験管に集め、PBS(20mmol/Lラクトース含有)を対照として280nmの吸光度を測定する。吸光度が0.02以上であった場合は、さらに10mLのPBS(20mmol/Lラクトース含有)で洗浄する。流出液の最後の2mLの吸光度を測定し、吸光度が0.02以下になるまでこの操作を繰り返す。次に、カラムに30mLの0.2mol/Lグリシン−塩酸(pH2.5)を流し(流速:毎分1mL)、流出液を2mLずつ分画する。各画分の280nmの吸光度を測定し、吸光度0.1以上の画分を一つにまとめる。1mol/L 2−アミノ−2−ヒドロキシメチル1,3−プロパンジオール(以下、トリス)とpHメーターを用いて、この溶出画分のpHを7〜7.5に調節する。カラムは、40mLのPBS(0.05%(w/v)アジ化ナトリウム含有)で平衡化して(流速:毎分2mL)4℃で保存した。溶出画分を透析チューブ(ダイアライシスメンブラン20、和光純薬工業(株))に入れ、PBSに対して透析処理した(4℃)。透析チューブ内の液を遠心管に移し、13,000rpm(RPR−18ローター、17,000xG、高速遠心機、日立工機(株)))で30分間遠心した。上清10mLあたり0.1mLの10%(w/v)アジ化ナトリウムを加え、プラスチックボトルに入れて4℃で保存した(アフィニティー精製抗−9CT抗体)。
3.アフィニティー精製抗組換え体ガレクチン−9CT抗体からの組換え体ガレクチン−7交差抗体の除去
GST−組換え体ガレクチン−7(5−10mg)固定化ハイトラップNHS−活性化カラム(5mL、Amersham Biosciences社)をペリスタポンプに接続し、20mLのPBSで洗浄した(流速:毎分2mL)。GST−組換え体ガレクチン−7固定化カラムカラムに上記2.で得られたアフィニティー精製抗組換え体ガレクチン−9CT抗体を流し(流速:毎分0.5mL)、カラムから流出する最初の4mLを捨てその後の液をプラスチックボトルに集めた。アフィニティー精製抗組換え体ガレクチン−9CT抗体を流し終わったら、さらに5mLのPBSを流してその流出液も同じプラスチックボトルに集めた。プラスチックボトルに集めた流出液を、再度同じ条件でカラムに流し、同じ要領で流出液を集める。280nmの吸光度を測定し、4℃にて保存した(最終精製抗組換え体ガレクチン−9CT抗体標品)。該カラムに0.2mol/Lグリシン−塩酸(pH2.5)を流し(流速:毎分1mL)、吸着したガレクチン−7交差抗体を溶出して得ることができる。
(2) 免疫染色
細胞ペレットにリシスバッファ(10mM Tris−HCl,0.15M NaCl,2mM EDTA,2mM EGTA、そして新しく添加した0.5mM PMSF,10μg/mLのleupeptin,antipain,pepstatin A及び1mM DTT)を加えてからソニケーション処理して細胞ライゼートを調製した。
次に細胞ライゼートにSDSを加え、サンプル混合物を100℃で5分間加熱処理し、次いで氷の上に置いた。各サンプルは、12%アクリルアミド−SDSゲルにかけ、分離せしめられたタンパク質をPVDF膜(BioRad Laboratories)に転写せしめた。非特異的結合を0.1% Tween−20含有PBS液(PBS−T)中の5%スキムミルク液を使用してブロックした。該PVDF膜をPBS−Tで数回洗った後、PBS−Tで希釈した10μg/mLの精製抗組換え体ガレクチン−9CT抗体と共に1時間インキュベーション処理した。次にPVDF膜を洗った後、ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG(Amersham Pharmacia Biotech)を含有するPBS−Tと共に45分間インキュベーション処理した。ELCキット(Amersham Pharmacia Biotech)中のECL−HRP基質液に該PVDF膜を浸漬し、XJB−1 X線フィルム(Kodak)にあてて露光せしめてバンドを可視化せしめた。
〔フロー・サイトメトリー解析〕
細胞表面に結合したガレクチン9の発現を調べるため、遠心処理して細胞を集め、0.05% NaN及び2%仔ウシ胎児血清(FCS)を含有するPBS(PBS+)でもって洗い25μg/mLのウサギ抗ヒトGal−9抗体の存在下に氷の上で30分間インキュベーション処理した。細胞をPBS+で数回洗った後、FITC結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共に30分間氷の上でインキュベーション処理した。
ガレクチン9の細胞内での発現を調べるには、Jacob,M.C.et al.,Cytometry,12:550−558(1991)及びSumner,H.et al.,J.Immunol.Methods,136:259−267(1991)に記載の方法をすこし改変して行った。
すなわち、細胞を氷冷4%パラフォルムアルデヒド含有のPBSでもって10分間固定化処理した。細胞をPBS+で洗った後、サポニンバッファ(0.1%サポニン及び0.01M HEPESバッファを含有するPBS,pH7.4)中の25μg/mLのウサギ抗ヒトGal−9抗体を添加した後、その細胞を室温で30分間インキュベーション処理し、ついで氷の上で30分間FITC結合ヤギ抗ウサギIgG抗体(Santa Cruz Biotechnology)と共にインキュベーション処理した。
SYSTEM IITM Software Version 1.0を使用しているCOULTER EPICS XL−MCLフローサイトメトリーでスキャッターゲージ(15000 events)で規定した細胞全部のガレクチン9染色につき解析した。フローサイトメトリーの至適配置及び流動系を確認するためには、Flow−checkTM蛍光粒子(fluorospheres;COULTER Corporation)を用いた。
〔組織病理解析〕
腫瘍細胞の接種27日後に腫瘍を切取り、その重量を測定した。10%中性に緩衝化されたホルムアルデヒド溶液で組織病理検査用サンプルを固定化した後、パラフィン包埋組織を4μmの厚さの切片とし、脱パラフィン処理、再水和化処理、そしてヘマトキシリンとエオシンあるいはギムサ試薬(Giemsa’s reagent)で染色した。
〔in situハイブリダイゼーション〕
BALL−mfを注射された部位に蓄積した細胞がガレクチン9 mRNAを含有しているか否かを調べるためにin situハイブリダイゼーションを行った。
DIG RNAラベリングキット(SP6/T7;Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,独国)を使用してin vitroトランスクリプション法によりジゴキシゲニンでラベルされたRNAプローブを合成した。PCRで増幅されたガレクチン9のcDNA断片(ヌクレオチド配列の第500〜1208番の塩基;Matsumoto,R.et al.,J.Biol.Chem.,273:16976−13984(1998))を、pGEM−T Easy Vector(Promege,Madison,WI,米国)に入れてクローニングし、線型にされたプラスミドDNAをin vitroトランスクリプションのための鋳型DNAとして使用した。センスプローブ及びアンチセンスプローブを合成し、ネガティブコントロールとしてセンスプローブを使用した。ハイブリダイゼーションプロトコルは4μmのパラフィン切片に適用され、試薬製造業者のプロトコルに従って行われた。37℃で2時間プロテイナーゼKで消化処理した後ハイブリダイゼーションは20μLのハイブリダイゼーション液中の1μg/mLのプローブと共に43℃で一晩カバースリップ下に行われた。ストリンジェント条件下の洗浄の後、ジゴキシゲニン検出キット(Roche Molecular Biochemicals)を使用してジゴキシゲニンラベルを可視化した。コントロールとしては、当該センスプローブを使用した場合及びプローブを除いた場合を使用した。
〔結果〕
〔腫瘍の増殖カーブ及び腫瘍の拒絶比率〕
Balb/cマウスにMeth−Aザルコーマを接種した後、腫瘍の増殖の及ぼすBALL−mf,Daudi−mf及びPBSの効果を調べた結果、すべての群で腫瘍細胞は最初の2週間同様に増殖した(図1(a))。Daudi−mf処置群及びPBS処置群のマウスの双方においては、その後も腫瘍細胞は増殖を続け、この二つの群のマウスのうちには腫瘍の大きさについては格別の差異は無かった(図1(a))。
一方、BALL−mf処置群のマウスでは、2週間後には腫瘍の大きさは減少に転じはじめ、18日後ではDaudi−mf処置群及びPBS処置群のマウスの場合よりも顕著に腫瘍の大きさは小さくなっていた(図1(a))。ところで、実験期間中これら三群のマウスの間ではその体重に格別の差異は無かった。10匹のマウスのうちの1匹ではじめてBALL−mf処置後第20日目に腫瘍が拒絶されているのが観察され、そして第22日目にはさらに3匹のマウスで、第25日目にはさらに4匹のマウスでもそれぞれ観察された。BALL−mf処置されたマウス10匹のうち8匹で腫瘍は第27日目には完全に拒絶されたが、PBS処置群のマウスやDaudi−mf処置群のマウスでは10匹のうち僅かに1匹で拒絶されただけであった。
これらの結果から、BALL−mfが抗腫瘍活性(図1(b),カイ二乗(χ)解析,p=0.0006)を有することが示された。
〔組織病理学的検査〕
組織病理学的に調べて、腫瘍周囲のBALL−mf注射部位における細胞の反応を解明した。図2aに示すように、BALL−mfを注射したマウスではその注射した部位に主に好酸球(Eを付した矢印)及び単核細胞からなり、少ない数の好中球を伴った肉芽組織がみられた。Daudi−mfで処理されたマウスでも肉芽組織がみられたが、浸潤細胞は主に単核細胞であり、好酸球ではなかった(図2b)。BALL−mfを注射した部位の皮筋層の上や下の結合組織には多くの肥満細胞が見出されたが、Daudi−mfを注射した部位の皮筋層の上の結合組織ではほんの僅かの肥満細胞があっただけであった。
さらに、腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査を行った。図3aに示すように、BALL−mfで処理されたマウスでは腫瘍の周りに又は腫瘍組織に炎症細胞(主には好酸球〔Eを付した矢印〕及びいくらかの肥満細胞〔Mを付した矢印〕であって、好中球ではない)の浸潤を有している領域が見出された(図3a)。核濃縮(矢印のみの付されたもの)を示す腫瘍細胞も見出した(図3a)。図3bに示すように、腫瘍の周囲又は腫瘍組織にメタクロマジーを示す肥満細胞の集積が確認された。比較してみると、Daudi−mfで処理されたマウスの腫瘍の周囲の組織では著しい細胞内浸潤が見られた(図3c)が、驚いたことに、無数の好中球(Nを付した矢印)及び単核細胞が腫瘍組織の周りに見出された。該部位には少ない数の好酸球及び肥満細胞が検出され、核濃縮を示す腫瘍細胞をみつけることはできなかった(図3c)。
〔in situハイブリダイゼーション〕
注射部位でのガレクチン9を発現している細胞の種類を決定するためin situハイブリダイゼーションを行った。その結果、皮下の筋板(panniculus carnosus muscle)下に好酸球の浸潤がみられ、その部では主として肥満細胞、その他の線維芽細胞、リンパ球、好酸球がガレクチン9を産生していることが分かった(図6a)。正常では通常筋板の周辺では肥満細胞は見られないが、BALL−mf注射により筋板部にガレクチン9を持つ肥満細胞の浸潤が見られた(図6b)。図6aに示すように、BALL−mfを注射した部位にGal−9 mRNAを発現している細胞をみつけた。そのGal−9 mRNAを強く発現している細胞は、形態学的並びにギムサ染色では肥満細胞であるようにみえる(図6a及び6b)。当該部位の単核細胞、好酸球、線維芽細胞等もGal−9 mRNAを発現していたが、肥満細胞と比較するとはるかに低いレベルであった(図6a)。一方、Daudi−mfを注射した部位では陽性の細胞は殆どみられなかった(図6c)。
Meth−Aザルコーマ担癌マウスをBALL−mfでもってin vivo処置すると、腫瘍の排除がみられ、その腫瘍排除はおそらくナチュラル・キラー(NK)細胞の活性化やガレクチン9の産生・遊離増強によるものである。また、腫瘍の周囲組織に好酸球増加が生じている。悪性腫瘍の予後と腫瘍の支持組織中に浸潤する細胞の種類との間には相関性があることはよく知られている。例えば、腫瘍の周囲にリンパ球浸潤がある患者では良好な予後となっている。これはリンフォカイン産生及び/又はNK細胞の活性化の結果であるかもしれない。
腫瘍の支持組織の好酸球増加は、良好な予後と結びついているのかもしれないが、好中球の増加している組織及び/又は末梢血中の好中球:リンパ球の比率が高いと、予後が良くないことに相関しているようである。この説明の一つとしては、好酸球は、好中球よりもより細胞毒活性を示し、おそらくはそれは好酸球ペルオキシダーゼに依存したヒドロキシラジカルの生成によるものであるのかもしれない。殺腫瘍性好酸球が腫瘍細胞に接着することが、プロテインキナーゼの活性化と関連性があることも示されている。
BALL−mfで処理されたマウスでは腫瘍の周囲組織で好中球でなくて好酸球の浸潤が見出された。一方、Daudi−mfで処理されたマウスでは主に好中球の浸潤が誘導されていた(図2a及び図2b)。
BALL−mfで誘導された組織の好酸球増加はBALL−mfにより当該部位に誘導されたガレクチン9と相関していると考えられる。これまで本発明者等はガレクチン9がガレクチンファミリーに属するもので、新規な且つ強力な好酸球ケモアトラクタントであることを見出している。
好酸球に加えて、肥満細胞の浸潤が腫瘍及びBALL−mfの注射部位の周囲組織で誘導されている(図2及び6)。ところで、肥満細胞も好酸球と同様に良好な予後と結びついているかもしれないことが既に示されている。また、好酸球は、IL−4に仲介される抗腫瘍活性に関与するかもしれないことが既に示されている。本発明者等はこれまでにIL−4でもっての短時間の刺激によりPPDの誘導によるガレクチン9の産生が増加せしめられるが、末梢血単核細胞からのIL−5産生が抑制されることを示している。肥満細胞は、炎症部位における主要なIL−4源でありうることから、当該部位の肥満細胞は好酸球の集積に関与しているのかもしれない。また、in situハイブリダイゼーションの結果に基づくなら肥満細胞はBALL−mf処置部位においての重要なガレクチン9源であるようにみえる(図6)。
また、本発明者等はこれまでにヒトの末梢血単核細胞を放射線照射処理BALL−1細胞と共に培養すると、NK活性〔腫瘍細胞株K562(NK−感受性細胞)及びその他の腫瘍細胞株(例えば、LAK−感受性細胞Daudi,KMG−2(グリオブラストーマ細胞),KATOIII(胃癌)など)の両方に対して〕が増強されることを示している。本発明では、ガレクチン9によりMeth−Aに対して細胞傷害性とNK様活性(その活性は低いものであるが)を増強することを見出している。総合すると、BALL−mfにより活性化されたNK細胞はその他の腫瘍細胞にも有効であることが示唆されるものであった。
腫瘍接種後2週間までの間はBALL−mfで処理されたマウス,Daudi−mfで処理されたマウス及びPBSで処理されたマウスの間では腫瘍の成長は同様なものであった(図1(a))。このことにより、BALL−mfはNK活性やガレクチン−9産生の原因となっている因子を有していることが示唆される。
BALL−mfで処理されたマウスとDaudi−mfで処理されたマウスとの間では腫瘍細胞の外観は異なっている。BALL−mfで処理されたマウスでは腫瘍の周囲の繊維状の組織に極めて近接した腫瘍細胞の幾つかで核濃縮を発見しているが、一方、Daudi−mfで処理されたマウスでは核濃縮を示す細胞は、見られなかった(図3a及び図2c)。ガレクチン類がアポトーシスに重要な役割を果たしていることは良く知られている。例えば、ガレクチン1はT細胞のアポトーシスを誘導することが示されている一方で、ガレクチン3は細胞死を妨げることも示されている。最近、ガレクチン7の過剰な発現が、UVBで誘導される日焼けのケラチノサイトのアポトーシスプロセスに関与するかもしれないことが示されている。ガレクチン9に関しては、マウスのガレクチン9が胸腺細胞や活性化Tリンパ球のアポトーシスを誘導することが報告されている。
BALL−mfで腫瘍細胞を刺激してもガレクチン9の発現やアポトーシスの誘導は見られなかった。ガレクチン9そのものでは、腫瘍細胞のアポトーシスが誘導された。このことからBALL−mfは直接的に腫瘍細胞に作用することにより抗腫瘍効果を示すのではなく、T細胞や肥満細胞におけるガレクチン9発現や遊離を誘導することにより、抗腫瘍効果を示すことが示唆された。
インビトロの組織標本の結果及びPCでの免疫染色の結果を総合すると、肥満細胞、マクロファージ、顆粒球(特に好酸球)がガレクチン9保有細胞であることが明らかで、肥満細胞株MC9を用いて実験を行った。肥満細胞株MC9におけるガレクチン9発現を調べた。MC9細胞をBALL−mfで刺激すると、細胞表面ガレクチン9発現は、24時間では軽度増強されたが、細胞質内ガレクチン9発現の増強は見られない。
【実施例2】
〔ガレクチン9誘導因子の精製〕
実施例1で得られたBALL−1細胞由来膜可溶化分画(BALL−1mf)を出発物質として使用し、精製処理を行った。
レンチルレクチンカラムで非吸着分画と吸着分画に分けたところ、主に吸着分画にガレクチン9誘導活性が見られた。また、抗腫瘍実験では、該吸着分画にオリジナルに匹敵する抗腫瘍活性が認められた。好酸球や肥満細胞の浸潤もオリジナルと同様の結果が得られた。
レクチンカラム吸着分画をロトフォー法にて等電点分画して得られた分画を使用して刺激した末梢血単核球からRNAを採取し、RT−PCR法でガレクチン9発現について検討した。RT−PCR法では、上記等電点分画して得られた分画F−1,F−2及びF−4に明らかなガレクチン9発現の増強が認められた。これらの等電点分画して得られた分画の抗腫瘍活性ついて検討した。その結果、分画F−2とF−3に強い抗腫瘍活性が誘導されていることが認められた。F−1及びF−4では、PBSと同様か、逆に、腫瘍細胞の増殖を亢進せしめている。分画F−2とF−3に含まれる誘導因子に抗腫瘍活性が認められる。その画分では、組織染色で、好酸球や肥満細胞の浸潤が認められた。
【実施例3】
〔BALL−1細胞の可溶化〕
10% FCS含有のRPMI 1640培地中で培養されたBALL−1細胞を出発原料とした。収穫されたBALL−1細胞を1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)−PBSにて再浮遊した(1×10cell/5mL)。液体窒素と室温水とを使用し、凍結・融解処理を4回行った(凍結・融解×4回)。次にソニケーター処理(output=4,duty cycle%=50、氷上、4分間(実質2分間程度))を行った。ソニケーター処理は2分間行って次に休み、また2分間行うという操作をした。得られた破砕物を遠心分離にかけた。遠心分離処理は、100,000 G,1時間,4℃の条件で実施した。
遠心分離処理して得られたペレットを、上記BALL−1細胞を1mM PMSF−PBSにて再浮遊した時と同量の5mM Tris−HCl(pH8.2),1mM EDTA及び1% CHAPSからなる液に再浮遊し、ホモジナイゼーション処理した。ホモジナイズ処理は、10mL又は20mLのテフロン(登録商標)・ガラスホモジナイザーを使用し、氷上でペレットが完全に無くなるまで数分間行った。得られた生成物を遠心分離にかけた。遠心分離処理は、20,000 G,30分間,4℃の条件で実施した。
上清液(Sup(MF))を回収した。吸光度(Optical Density:OD)を測定した。ブランクには、50mM Tris−HCl(pH8.2),1mM EDTA及び1% CHAPSからなる液を用いた。
〔カラムクロマトグラフィー精製〕
(1) 上記で得られたMFをコンカナバリンA(Con A)をリガンドとした担体を使用したカラムクロマトグラフィーにかけた。
Con AセファロースビーズとMFとを(1:1)で混合し、4℃、O/Nでローテート。MFの濃度が濃いときは、PBS(−)で2倍に希釈して混合した。次に、これをカラムにアプライした。
カラム条件:
ポリプレップ クロマトグラフィーカラム(BIO−RAD 731−1550)
カラムボリューム1.6〜2mL
落下=Elu:22Gで自然落下、Ft,wash:針なしで自然落下
ビーズ=Con Aセファロースビーズ(ファルマシア)
(ビーズ前処理:HOで洗った(wash)後、1,000rpmで1分間、4℃で遠心した後、平衡化した)
平衡化バッファ=1mM CaCl,0.1% CHAPS含有のTBS
(ゲル量の10倍以上の量流す)
WASH=平衡化バッファ
Elute=Fr.1〜2:0.1Mホウ酸バッファ(pH6.5)(Borate)
Fr.3〜:0.2Mホウ酸、0.15M NaCl
保存=0.02% NaN含有PBS、4℃キープ
溶出してきたFtを回収した。WASHは平衡化バッファをアプライボリュームと同じ量流した。Elutionバッファをアプライし、栓をして20分間室温に保つ。1mLずつ、5分おきにチューブに回収する。OD(280nm)をチェックする。
(2) Con Aアフィニティカラムクロマトグラフィー処理分画を陰イオンカラムクロマトグラフィーにかけた。
上記で得られたBALL−1 Mf ConA−fraction,9mL(0.1M borate−NaOH(pH6.5)で溶出)を陰イオンカラムRESOURCE Qカラム(1mL,アマシャム・バイオサイエンス)のクロマトグラフィーにかけた。
バッファ:A,10mM Tris−HCl(pH7.5),0.03% CHAPS
B,10mM Tris−HCl(pH7.5),1M NaCl,0.03% CHAPS
グラジエント:%B=0→100 in 25min.
Flow rate:1mL/min.
Fraction volume:1mL
モニター:UV(A280nm)0−0.05
Conductivity,0−100mS
サンプルはStrata Clean Resin(Stratagene,CA,USA)を使用して濃縮した(×10)。濃縮したサンプルはSDS−PAGE:12%ゲル、SYPRO Orange(Molecular Probes,Inc.,USA)で染色)にかけた。
(3) RESOURCE Qカラムクロマトグラフィー処理分画をハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにかけた。
上記で得られたRESOURCE Q−fraction(fraction Nos.14−17)をハイドロキシアパタイトカラムCHT2−Iカラム(Bio−Rad)を使用したクロマトグラフィーにかけた。
カラム:CHT2−I(Bio−Rad),2mL
バッファ:A,10mM Na−Pi(pH6.8),0.03% CHAPS,0.05% NaN
B,500mM Na−Pi(pH6.8),0.03% CHAPS,0.05% NaN
グラジエント:%B=0→80 in 30min.
Flow rate:1mL/min.
Fraction volume:1mL
モニター:UV(A280nm)0−0.02
Conductivity,0−50mS
サンプルはStrata Clean Resin(Stratagene,CA,USA)を使用して濃縮した(×40)。濃縮したサンプルはSDS−PAGB:12%ゲル、SYPRO Orange(Molecular Probes,Inc.,USA)で染色)にかけた。
(4) RESOURCE Qカラムクロマトグラフィー処理分画Dをハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにかけた。
上記のRESOURCE Q処理で得られた分画DをハイドロキシアパタイトカラムCHT2−Iカラム(Bio−Rad)を使用したクロマトグラフィーにかけた。
カラム:CHT2−I(Bio−Rad)
バッファ:A,10mM Na−Pi(pH6.8),0.03% CHAPS
バッファ:B,500mM Na−Pi(pH6.8),0.03% CHAPS
グラジエント:%B 0→180 in 30min.
Flow rate:1mL/min.
Fraction volume:1mL
モニター:UV(A280nm)0−0.02
Conductivity,0−50mS
サンプルはStrata Clean Resin(Stratagene,CA,USA)を使用して濃縮した(×40)。濃縮したサンプルはSDS−PAGE:12%ゲル、SYPRO Orange(Molecular Probes,Inc.,USA)で染色)にかけた。
〔BALL−mfクロマトグラフィー精製分画の生物活性〕
細胞腫瘍株膜可溶化分画をレンチルレクチンカラム、続いて等電点分画法により精製を行ことにより、抗腫瘍活性を有する4分画がガレクチン9誘導因子含有画分候補として絞り込まれた。しかし、回収される蛋白量が少なく、次の精製ステップに進むには多大な労力と時間を要するため、改めて抽出法や精製法の調査し、検討を行った。かくして、レンチルレクチンカラムと同様の結合特異性を有し、かつ結合量の多いコンカナバリンA(Con A)カラムを用いて精製を行った。膜可溶化分画をCon Aカラムの吸着・非吸着分画に分画した。BALL−mfをCon Aカラムで非吸着分画、吸着分画に分画し、SDS−PAGEで電気泳動したところ、異なるタンパク質のバンドが認められた(図16)。各分画をMeth−A担癌マウスに皮下注射したところ、吸着分画(A)に強い抗腫瘍活性が認められた(図17)。非吸着分画(B)ではPBSに比して腫瘍増殖は抑制されたが、腫瘍は排除されなかった(表1)。吸着分画を投与した周囲の組織標本を光学顕微鏡下で観察すると、腫瘍細胞では表層の細胞に核濃縮を示す細胞が見られ、アポトーシスの可能性が示唆された(図18)。一方で正常細胞に対する細胞障害活性は認められなかった。
次に、陰イオン交換カラム(RESOURCE Q)により精製を試みた。各フラクションの電気泳動パターンより、7つに分画(溶出順に仮称:A,B,C,D,E,F,G)し、各分画の抗腫瘍活性を検討した(図19)ところ、分画Dに最も強い抗腫瘍活性が認められた。更に分画Dの濃度を変えて(希釈倍率:1,200、6,000、30,000倍)抗腫瘍活性を調べたところ、濃度依存性に抗腫瘍活性が認められた(図20)。組織標本を作製しての実験により、細胞障害活性のがん細胞特異性について検討することができる。

陰イオンカラムRESOURCE Qにて精製後、RESOURCE Qカラムクロマトグラフィー処理分画Dをハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにかけて、A〜Eの分画を得た(図21)。図21には、各分画のSDS−PAGEの結果も示してある。上記と同様にして抗腫瘍活性を調査したところ、ヒドロキシアパタイトカラムCHT2−I分画Dの抗腫瘍活性が他の分画と比較して最も強いことを観察した(図22)。図22には、該分画のSDS−PAGEの結果も示してある。
図1において、各符号は次のものを指している。
図1(a)では、
●:BALL−mfで処置された動物における腫瘍の重量
■:Daudi−mfで処置された動物における腫瘍の重量
○:PBSで処置された動物における腫瘍の重量
図1(b)では、
●:BALL−mfで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数
■:Daudi−mfで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数
○:PBSで処置された動物のうち腫瘍拒絶のあった動物の数
【産業上の利用可能性】
本発明では、ガレクチン9誘導因子が同定され、その精製が行われたことから、その精製ガレクチン9誘導因子を使用しての医薬品開発、ガレクチン9の関与する生理現象、生物活性についての研究開発に利用できる。特に、ガレクチン9誘導因子は、細胞膜可溶化分画及び該画分よりコンカナバリンA吸着分画、Resource QTMイオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラムなどを利用することにより、濃縮した活性保有分画として得られる。該因子を投与することで、NK様活性を増強する活性、抗腫瘍活性などの生物活性を得ることができるので、そのガレクチン9誘導活性を利用した測定試薬、医薬、アッセイなどの開発が可能である。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【配列表フリーテキスト】

【配列表】


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】





【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
B細胞リンパ腫由来細胞株BALL−1細胞より得られる細胞膜可溶化分画にその生物活性が存在することが同定できるガレクチン9誘導因子であって、該ガレクチン9誘導因子の生物活性は、少なくとも以下:
(1) ガレクチン9誘導活性、
(2) 標的腫瘍細胞としてMeth−Aザルコーマを使用したインビボ試験で腫瘍細胞の増殖抑制又は腫瘍の拒絶を誘起する、
(3) 抗腫瘍活性、
(4) インビトロ試験で末梢血単核球におけるナチュラル・キラー活性を誘導する、
(5) 末梢血単核球を使用した試験で、ガレクチン9 mRNAの発現のアップレギュレーション、
(6) 末梢血単核球を使用した試験で、細胞質におけるガレクチン9タンパクの発現の有意な上昇、
(7) 組織病理学的検査で注射した部位に好酸球及び単核細胞からなり、少ない数の好中球を伴った肉芽組織が認められる、
(8) 注射した部位の皮筋層の上や下の結合組織で多くの肥満細胞が見出される、
(9) 腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周り又は腫瘍組織に炎症細胞(主には好酸球及びいくらかの肥満細胞)の浸潤を有している領域が見出される、
(10)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で核濃縮を示す腫瘍細胞が見出される、及び
(11)腫瘍の周囲組織の組織病理学的検査で腫瘍の周囲又は腫瘍組織にメタクロマジーを示す肥満細胞の集積が確認される、
から成る群から選ばれたものにより同定できるものであることを特徴とするヒト由来のガレクチン9誘導因子。
【請求項2】
B細胞リンパ腫由来細胞株BALL−1細胞が放射線照射処理されたものであることを特徴とする請求項1記載のガレクチン9誘導因子。
【請求項3】
BALL−1細胞をプロテアーゼ阻害剤の存在下、界面活性剤と一緒にホモジュナイズ処理して可溶化した細胞膜可溶化分画に存在することを特徴とする請求項1又は2記載のガレクチン9誘導因子。
【請求項4】
B細胞リンパ腫由来細胞株より得られた細胞膜可溶化分画より、コンカナバリンAカラムクロマトグラフィー、陰イオンカラムカラムクロマトグラフィー、及びハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーから成る群から選ばれた処理で精製及び/又は濃縮できるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子を含有することを特徴とする細胞にガレクチン9を誘導する試薬。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子と細胞とを接触せしめることを特徴とする細胞にガレクチン9を誘導する方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一記載のガレクチン9誘導因子を含有することを特徴とする医薬。
【請求項8】
抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、免疫抑制剤、自己免疫疾患用剤又は副腎皮質ステロイドホルモン代替剤であることを特徴とする請求項7記載の医薬。

【国際公開番号】WO2004/096851
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【発行日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505935(P2005−505935)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006212
【国際出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(500507630)株式会社ガルファーマ (7)
【Fターム(参考)】