説明

ガンマ量子反応の位置及び時間を測定するストリップ装置と方法及び陽電子放射断層撮影においてガンマ量子反応の位置及び時間を測定するストリップ装置の使用方法

本件発明の主題事項は、ガンマ量子の反応の場所および時間を測定するストリップ装置および方法、および陽電子放射トモグラフィでガンマ量子の反応の場所および時間を決定する装置の使用法に関する。より詳細には、本発明は、体内における特定の物質の濃度の空間分布及びそれらの時間的な濃度変化を決定する方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ量子反応の位置及び時間を測定するストリップ装置および方法、並びに陽電子放射断層撮影においてガンマ量子反応の位置及び時間を測定する装置の使用方法に関するものである。具体的には、本発明は、体内における特定の物質の濃度の空間分布及びそれらの時間的な濃度変化を測定する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影は、体内における特定の物質の濃度の空間分布及びそれらの時間的な濃度変化の測定に基づくものである。そのため、患者には、陽電子を放出する放射性同位元素で標識した医薬が投与される。放射性マーカーは、陽電子の放出により崩壊するように選択される。断層撮影は、マーカーからの陽電子及び体の原子からの電子が接触すると互いに対対消滅し、その質量がガンマ量子の形でエネルギーに変換されることを利用するものである。高い頻度で、これらは、厳密に511 keVに相当するエネルギーで連続してラインに沿って飛ぶ2つのガンマ量子である。対消滅は、通常、マーカーの崩壊からわずか数ミリメーターで発生する。これにより、PET(陽電子放射断層撮影)画像の鮮明度の限度が決まる。PETトモグラフィ装置は、対消滅する量子が飛んだ方向を測定することにより放射性マーカーを位置づけることを可能にする。
【0003】
放射線検出器は、通常、患者を取り囲むリングを構成するレイヤー状に配置される。現在、全ての商業用PETトモグラフィ装置は、検出に無機シンチレータ材を使用している。シンチレータに達するガンマ量子のエネルギーは、部分的あるいは全体的に材料の電子に伝わり、シンチレータの原子及び分子のイオン化及び下方遷移により閃光を発する。これらの閃光は、シンチレータに接続された光電子増倍管により電気的パルスに変換される。シンチレータ材で発生した光子の数は、量子が電子に転送したエネルギーに比例する。同様に、光電子増倍管が発生させた電気信号の電荷は、光電子増倍管ウインドウに入射する光子の数に比例する。
【0004】
511 keVに相当するガンマ量子のエネルギーには、光電効果とコンプトン効果という2つの重要なプロセスがある。第1のプロセスにおいて、ガンマ量子の全てのエネルギーが電子に転送され、第2のプロセスにおいて、電子の散乱角に応じてエネルギーの一部のみが転送される。これらのプロセスの結果、記録された信号の電荷のスペクトラムは、コンプトン効果に相当する連続分布、および光電効果に相当するピークとからなる。この最大限の分離により、511 KeVのエネルギーの対消滅量子が乱されずにシンチレータに達した場合とそれ以外の場合とが区別できるようになる。
【0005】
現在の断層撮影装置では、通常、約5センチx5センチのサイズで、その上、反射材により互いに分離された0.5センチx0.5センチのより小さいサイズにブレーズされたシンチレーションクリスタルを使用している。各シンチレーションモジュールの端部は、光を電気インパルスに変換する光電子増倍管に接続されている。この配置により、ガンマ量子反応の位置を、小さいユニットのサイズに相当する精度で測定することが可能である。従って、更に分析することで、量子がそのユニットの中に吸収されたと推測される。これにより画像が不鮮明になり、トモグラフィの軸から離れれば離れる程、対消滅がおこり、大きいのがシンチレータモジュールである。ガンマ量子が検出器に到達した時間差を測定することにより量子が飛んだ線に沿った対消滅の位置を計算して画像の鮮明度を向上させようとしている。
【0006】
文献では、この技術は、TOF(Time Of Flight=タイムオブフライト)として知られ、時間測定を用いるトモグラフス(断層撮影装置)は、PET−TOFと呼ばれる。同技術を効率的に応用するには、無機シンチレータに基づく現在の断層撮影装置では達成不可能な数十ピコセカンドの時間分解能が必要である。
【0007】
米国特許出願第2006/060823号(2006年3月26日公開)には、フレキシブルな複合物を用いた放射線検出シンチレータに関する発明が記載されている。この複合物は、希土酸化物を添加した高密度オキシオルトケイ酸塩(oxyorthosilicate)(例えば、LSO: Ce、LSO:Sm、あるいはGSO:Ce)を、シンチレータから放出される放射線に対して透明であるバインダーで迅速に混合することで作られる。複合物は、均一であり、大きい寸法で異なる形状に作ることが可能である。これらの複合物は、断層撮影装置(400 nm)に相当する応答の範囲の放射線を放出するため、検出器の効率を向上させる。
【0008】
米国特許出願第2008/237470号(2008年10月2日公開)には、プラスチックのマトリックスに埋め込まれたシンチレーションコンポーネントのナノ粒子を含むシンチレーション検出器が提案されている。このナノ粒子は、金属酸化物、金属オキソハライド(metal oxohalides)、金属酸硫化物(oxysulphide metals)あるいはメタルはライド(metal halides)などの材料からなる。プラスチックマトリックスにセットする前に粒子を有機材料やポリマーでコーティングすることができるようにしたナノ粒子の新しい作成方法が開発された。二酸化チタンナノ粒子を利用してプラスチックマトリックスの反射率と一致させる技術も開発された。シンチレータは、シンチレーション検出器を構成する少なくとも1つの光検出器システムと接続することができ、デジタルX線イメージング、マモグラフィー、CT、PETあるいはSPECTなどのX線イメージングシステム、あるいは放射線の安全な検出器や地下の放射線の検出器としても使用することができる。
【0009】
米国特許出願第2008/296505号(2008年12月4日公開)及び国際公開WO2007/082126号(2007年7月19日公開)には、タイムオブフライト(TOF、 Time Of Flight)の画像を再現する方法が開示されている。この方法ではイメージングシステム10のテストエリア14において調査対象物のアウトラインを得る。その対象物から放出された放射線に関する事象(events)が記録され、電子データに変換される。その対象物の外部からの入射放射線に相当する電子データは除外され、最終画像が、残りの電子データから再現される。
【0010】
米国特許出願第2004/173752号(2004年9月9日公開)では、シンチレータ素材に特定のハイブリッド有機/無機ペロブスカイトを使用した場合、放射線がサブナノ秒の速さで光領域において発生し、そのシンチレータがPETトモグラフィにおけるガンマ放射線の検出器として使用することができる、とされていいる。この発明によると、PETスキャナーは、特定フォーミュラの化合物から選択されたシンチレータ-ベースのハイブリッド有機/無機ペロブスカイトを含むものである。PETトモグラフィで現在用いられているシンチレータの反応速度は、その方法で得られる解像度の制約のため、非常に限定されたものである。この問題を解決するために、シンチレータの反応速度は、約0.1nsでなければならないとが推定された。このようなシンチレータの開発により、同方法で得られた時間的分解能を制限することが可能となった。この出願には、そのようなシンチレータの製造方法や構成が、約数立方センチメートルの単位で記載されている。しかしながら、患者の体における陽電子の吸収に由来する自然の不確実性の状態である、応答系統(lines of response)に沿って空間分解能を達成するためには、必要な時間分解能は50psより良くなければならず、また人体全体を経済的にイメージングするにはメータのオーダで高速のシンチレータが必要である。
【0011】
欧州特許出願第2047297号(2008年4月21日公開)には、タイムオブフライト測定に基づくPETトモグラフ(断層写真撮影装置)100が開示されている。この装置は、検知器106、データ収集システム120、コンプライアンスシステム122、及び再現ユニット129を含むものである。画像の要素は、異なる応答系統から収集された陽電子データが異なる時間分解能により特徴づけられるように、システム100の時間分解能に影響を及ぼす。これらの時間分解能は、対応する応答系統に沿って記録された事象の位置を測定するのに用いられる。
【0012】
陽電子放出型断層撮影に使用されるガンマ量子のインタラクションの位置及び時間を測定する解決法に焦点を絞った上記研究にも拘わらず、高原子番号の原子を添加したプラスチックシンチレータを使用する放射線検出の効果的な解決法が引き続き必要とされており、それによりTOP技術の効果的な利用に必要な時間分解能を得ること、及び比較的容易にどのようなサイズの有機シンチレータも製造することが可能であるためPETトモグラフ(断層撮影装置)の製造価格を大幅に低減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願第2006/060823号(2006年3月26日公開)
【特許文献2】米国特許出願第2008/237470号(2008年10月2日公開)
【特許文献3】米国特許出願第2008/296505号(2008年12月4日公開)
【特許文献4】国際公開WO2007/082126号(2007年7月19日公開)
【特許文献5】米国特許出願第2004/173752号(2004年9月9日公開)
【特許文献6】欧州特許出願第2047297号(2008年4月21日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、陽電子放出断層撮影装置において使用されるガンマ量子の反応の位置と時間を決定する解決法を得るために使用されるリソースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によって、上記特定の目的が実現され、またタイムオブフライトの決定と得られた時間分解能の制限に関する最高水準の技術において説明された問題の解決法が得られた。
【0016】
本件発明の主題事項は、好ましくは原子番号が少なくとも50である原子が添加されたプラスチックシンチレータストリップで構成されたシンチレーションチェンバで作られたガンマ量子の位置及び時間を決定(測定)する装置に関するものである。シンチレーションストリップの表面は、内側からいわゆるバウンダリアングル(boundary angle)よりも大きい角度で表面に入射した光子を反射し、同ストリップの前端または後端に達するシンチレータ材料における量子の吸収から生ずる光子が光電子増倍管に光コネクタを介して伝導される。前記ストリップの軸に垂直な面におけるガンマ量子の着弾点(point of impact)は、信号を登録したモジュールの位置から決定され、シンチレーションチェンバに沿った位置は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間差に基づいて決定される。シンチレータストリップにおいて量子が反応した時間は、前方及び後方光電子増倍管において測定された時間の算術平均として計算される。そして、決定されて再現された一連の線LOR及びこれらの線に沿った対消滅点の位置が、トモグラフィック(断層撮影)画像を提供する。
【0017】
好ましくは、光コネクタ材料は、屈折率が類似する場合接続位置の光子の反射が最小化されるため、屈折率が、シンチレータの屈折率と最も類似するように選択される。
【0018】
好ましくは、生じた光パルスは、シンチレータに光学的に接続された光電子増倍管により電気信号に変換される。同光電子増倍管は、ハウジングに固定されユニット全体を保護する取り付けプレートに取り付けられる。
【0019】
好ましくは、シンチレータと光電子増倍管との光学的接続は、シリコンジェルや粘性物質で直接的に、あるいはライトガイドを介して行われ、ストリップは、互いに光学的に分離され、好ましくは遮光性フォイルを用いて分離され、各ストリップは、個別にラップされる。
【0020】
好ましくは、同装置は、図1乃至図5に示されている。
【0021】
本発明の2つ目の主題事項は、ガンマ量子反応の位置と時間を決定する方法において、シンチレーションストリップの表面が、いわゆるボーダーアングル(Border angle)よりも大きい角度で内側の表面に入射した光子を反射し、同ストリップは光学的に互いに分離されていて、そして前記ストリップの前端および後端に達するシンチレータ材料における量子の吸収により生じた光子は、光コネクタを通して光電子増倍管に伝導されることを特徴とする。
【0022】
ストリップの軸に垂直な面におけるガンマ量子の着弾点(point of impact)は、信号を登録したモジュールの位置から決定され、シンチレーションチェンバに沿った位置は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間差に基づいて決定される。シンチレータストリップにおいて量子が反応した時間は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間の算術平均として計算され、両方の光電子増倍管における信号の幅に基づいてガンマ量子と衝突する電子のエネルギーを測定し、その後、測定された時間差に基づいたLORに沿ったガンマ量子反応の位置及び対消滅の位置の座標に基づいてLOR線を特定し、その後、測定された一連の再現された線LOR及びその線に沿った対消滅点の位置が、断層撮影画像を提供する。
【0023】
好ましくは、電子回路は、信号の発生の振幅と時間をバイナリ形式でコンピュータに送信されるディジットに変換し、それに基づいて、患者の体の放射線メーカーの密度の分布が再現される。
【0024】
好ましくは、この方法は、陽電子放射断層撮影において使用される。
【0025】
本発明のもう1つの目的は、陽電子放射断層撮影における前記装置を使用することである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付図面により、解決法がより良く説明される。
【図1】図1は、ストリップトモグラフ(断層撮影装置)の一般的構成を示す。
【図2】図2は、前記トモグラフ(断層撮影装置)におけるストリップ8の配置例を示す。
【図3】図3は、単一検出モジュールの構成を示す。
【図4a】図4aは、光電子増倍管11の取り付けの一例を示す。
【図4b】図4bは、光電子増倍管11の取り付けの一例を示す。
【図5】図5は、光電子増倍管が発生させるインパルスの振幅及び時間に関する情報を収集する電子システムの論理図の一例を示す。 図面における記号は、以下のとおりである。1:患者を診察するためのシンチレーションチェンバ2:チェンバ及び光電子増倍管のハウジング3:電子回路のハウジング4:断層撮影画像を再現するコンピュータ5:モニタ6:プリンタ7:患者をシンチレーションチェンバに移動させるプラットフォーム8:シンチレーションストリップ9:フォイル10:ライトガイド11:光電子増倍管12:分圧器13:電力ケーブル14:信号ケーブル15:光電子増倍管を取り付けるためのプレート16:光電子増倍管のチューブのための孔17:プラスチックカバー18:信号スプリッター19:弁別器20:コインシデンスシステム21:遅延線22:TDC−time to digit converter23:ADC- charge to digit converter24:信号ケーブル
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下は、解決法をより良く理解するための本発明の実施例である。
【実施例】
【0028】
図1は、放射性医薬品を投与した後に患者が搬入されるシンチレーションチェンバ1を有する装置の一般的な構成を示すものである。患者の体内における放射線マーカーの崩壊によって生じるガンマ量子は、シンチレーションチェンバ内で光フラッシュを発生させる。その結果生じる光パルスは、シンチレーションチェンバ及びユニット全体のケーシング2の間の前方及び後方部分に配置された光電子増倍管により電子信号に変換される。光電子増倍管からの信号は、ケーブルにより、シンチレーションチェンバのケーシングに沿って設置されたハウジング3内に位置する電子機器に送信される。
【0029】
その電子回路は、信号の振幅び発生時間をディジットに変換し、それらはバイナリー形式4でコンピュータに送信され、それに基づいて患者の体内における放射線マーカーの密度の配分が再現される。その画像は、スクリーン5で表示し、印刷6し、あるいはコンピュータのディスクに保存することができる。検査を行うためには、患者はプラットフォーム7に横たわり、このプラットフォームは、患者側から一列に配置され、プラスチックカバーを備えたシンチレーションチェンバ1内に滑り込ませるようになされている。
【0030】
シンチレーションチェンバ1は、高原子番号の原子、この実施例の場合は鉛、が添加されたプラスチックのシンチレータストリップを有する。図2は、シンチレーションストリップ8の配置例を示すものである。シンチレーションストリップの表面は、いわゆるバウンダリアングル(boundary angle)よりも大きい角度で表面に入射した光子を内側から反射させるために、ダイヤモンドブレードで削られ、あるいは研磨されるべきである。ストリップは、遮光性フォイル9で光学的に分離されている。そうさせる1つの方法は、それぞれのストリップを別々にフォイルで包む方法である。シンチレータ材料におけるガンマ量子の吸収で発生し、ストリップの前端あるいは後端に達する光の光子は、ライトガイド10を経て光電子増倍管10に伝導される。
【0031】
単一検出器モジュールの概略構成が図3に示されている。光学的ライトガイド10は、シンチレータが作られる材料の屈折率に近い屈折率の光学的接着剤でシンチレーションストリップに取り付けられている。ライトガイド材料は、その屈折率が、シンチレータの屈折率に類似するように選択されるべきである。同様の光の係数は、接続部分における光子の反射を抑制する。ライトガイドを光電子増倍器11と組み合わせるには、適当なジェルあるいはシリコンゴムを使用する。
【0032】
電圧は、光電子増倍管と種類が適切に一致する分圧器12を使って光電子増倍管ダイノード11に配分される。同分圧器は、図1の符号3で記された、電子回路のハウジング内に位置する電源に接続された電圧ケーブル13により供給される。光電子増倍管11からの信号は、信号ケーブル14により電子機器に送られる。
【0033】
図4は、光電子増倍管の取り付け例を示すものである。光電子増倍管は、取り付けプレート15に取り付けられ、それは装置全体2のハウジングに固定されている。光電子増倍管15を保持するプレートには、光電子増倍管のケースと同じ形および大きさに調整された孔16が形成されており、相対的なセットアップと距離は、必要な解像度、ストリップの厚さ、及び装置の価格にあわせて最適化される。患者側からは、プラスチックカバー17が見える。
【0034】
図5は、光電子増倍管が発生させる電子パルスの幅及び時間に関する情報を得るための電子システムの例示的なブロック図である。これらは、光電子増倍管に達する光信号の時間と幅に深く関係している。
【0035】
第1ステップにおける情報を分析するプログラムは、適切な相対的距離で配置された少なくとも2つのストリップにおいて信号が登録された事象(events)の選択を行う。同時に、各ストリップにおける信号は、前方及び後方の両方の光電子増倍管により登録されなければならない。また、更なる処理は、一定の時間間隔(数ナノ秒)の範囲内の信号にだけ行われる。そして、以下の式に基づいて、ストリップの前方及び後方に達する信号の時間差をもとにチェンバ(座標Z)に沿った反応の位置を決定する。
【0036】
【数1】

【0037】
上記の式において、betaはシンチレータストリップにおける光信号の速度であり、C1は、較正定数である。
【0038】
時間の測定に基づいたシンチレーションチェンバに沿ったガンマ量子の弾着点(point of impact)の決定は、本発明の主要な特徴である。ストリップの軸に垂直な面〈図2のxy〉における着弾点(point of impact)は、信号を登録したモジュールの位置から決定される。シンチレーションストリップにおける量子の反応の時間は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間の算術平均として決定される。
【0039】
【数2】

【0040】
上記の式において、C2は、較正定数である。
【0041】
両側の光電子増倍管における信号の振幅を知ることで、ガンマ量子と反応した電子のエネルギーを計算することが可能である。以下の式を使って第一近似の計算を行う。
【0042】
【数3】

【0043】
ここに、C3は、較正定数である。
【0044】
r=(x、y、z)の座標を知ることで、LORのガンマ量子r1及びr2 ラインの両方の反応の位置を決定することができる。
【0045】
r1、r2、t1及びt2が分かれば、cが光の速度である場合、Delta(LOR)=(t2−t1)/2*cの式を使ってLOR線における崩壊の位置を計算することができる。 従って、崩壊の位置は、以下の式で計算される。
【0046】
【数4】

【0047】
上記装置は、一連の再現されたLOR線及びその線に沿った崩壊の位置を提供するものである。それらの情報に基づいて、画像再現技術により断層撮影画像が得られる。
【0048】
提案された解決法により、陽電子放射断層撮影におけるガンマ量子を登録する装置を作ることができ、同装置は、画像を記録するチェンバの拡張は、シンチレーションストリップの長さの拡大にだけ関係し、光電子増倍管、ライトガイド、及び信号処理の電子回路の数はそのままであるため、価格はスキャナーの大きさにより大幅に上昇しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンチレーションチェンバを備え、ガンマ量子の反応の位置と時間を決定するストリップ装置において、前記シンチレーションチェンバ(1)は、少なくとも原子番号50の原子が添加されたプラスチックのシンチレータ(8)のストリップで構成され、シンチレーションストリップ(8)の表面は、いわゆるバウンダリーアングルよりも大きい角度で内側から入射する光子を反射し、ストリップ(8)の前端又は後端に達するシンチレータ材料に吸収されるガンマ量子から生じる光の光子は、ライトガイド(10)で光電子増倍管(11)に伝導され、ストリップの軸に垂直な面におけるガンマ量子の弾着点はその信号を記録したモジュールの位置から測定され、シンチレーションチェンバに沿った位置は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間差に基づいて測定され、シンチレータストリップにおいて量子が反応した時間は、前方および後方の光電子増倍管において測定された時間の算術平均として計算され、両側の光電子増倍管における信号の振幅に基づいてガンマ量子と衝突する電子のエネルギーを測定し、その後、ガンマ量子の反応の位置及びLORに沿った崩壊の位置の座標に基づいてLOR線を特定し、その後、特定された一連の再現された線LOR及びその線に沿った崩壊の位置が断層撮影画像を提供することを特徴とする。
【請求項2】
ライトガイドの材料の屈折率は、シンチレータの屈折率に最も類似するように選択され、類似する光の係数は、接続部分の光子の反射を抑えるものであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
発生した光インパルスは、ライトガイドに光学的に接続された光電子増倍管(11)により電気信号に変換され、光電子増倍管(11)は、ユニット全体(2)のハウジングに取り付けられた取り付けプレート(15)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
ライトガイドを光電子増倍管(11)に連結するのにジェルあるいはシリコンゴムを使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
ストリップ(8)は、好ましくは遮光性フォイルを使って光学的に互いに分離されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
各ストリップ(8)が別々にラップされていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
図1から図5に示された特徴を備えた、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
ガンマ量子の反応の位置と時間を測定する方法において、
シンチレーションストリップ(8)の表面は、いわゆるバウンダリーアングルよりも大きい角度で内側から入射する光子を反射し、ストリップ(8)は、互いに光学的に分離されていて、ストリップ(8)び前端又は後端に達するシンチレータ材料に吸収されるガンマ量子から生じる光の光子は、ライトガイド(10)で光電子増倍管11に伝導され、ストリップの軸に垂直な面におけるガンマ量子の着弾点はその信号を記録したモジュールの位置から測定され、シンチレーションチェンバに沿った位置は、前方及び後方の光電子増倍管において測定された時間差に基づいて決定され、シンチレータストリップにおいて量子が反応した時間は、前方および後方の光電子増倍管において測定された時間の算術平均として計算され、両側の光電子増倍管における信号の振幅に基づいてガンマ量子と衝突する電子のエネルギーを決定し、その後、ガンマ量子の反応の位置及びLORに沿った崩壊の位置の座標に基づいてLOR線を特定し、その後、特定された一連の再現された線LOR及びその線に沿った崩壊の位置が断層撮影画像を提供することを特徴とする。
【請求項9】
前記電子回路は、信号の振幅と発生の時間をディジットに変換し、バイナリ形式(4)でコンピュータに送信し、それに基づいて患者の体における放射線マーカーの密度の配分が再現されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が陽電子放射断層撮影機において使用されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から7に記載された陽電子放射断層撮影装置を使用する方法。

【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図5】
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【図1】
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【図4b】
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【公表番号】特表2012−533734(P2012−533734A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520560(P2012−520560)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/PL2010/000062
【国際公開番号】WO2011/008119
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(509341396)ユニバーシテット ヤギエロンスキ (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIWERSYTET JAGIELLONSKI
【住所又は居所原語表記】ul. Golebia 24, PL−31−007 Krakow Poland
【Fターム(参考)】