説明

ガードバー

【課題】乗員がドアを閉めるためのプルハンドルとして前方部分を使用する際における操作性の良いガードバーを提供する。
【解決手段】車両用ドア1のウインドウガラスが出没する位置の車室側に設けられて前記ウインドウガラスの没入し切らない上縁部分を保護するガードバー3に関し、乗員がドア1を閉めるためのプルハンドルとして前方部分を掴んだ際に指先を掛けられるよう該前方部分の車幅方向外側に凹部7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガードバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トラック等の大型車両では、乗員(特に運転者)の側方視界を極力大きく確保する観点からドアの窓部の下縁を下げた設計が成されているが、このように窓部の下端を下げると、ドアのウインドウガラスが収容される部分の高さ寸法が短くなり、ウインドウガラスの完全収容が難しくなる。
【0003】
ウインドウガラスを最下降位置まで下げても上端部分が僅かに飛び出した状態で残ってしまうと、ドア内に没入し切らないウインドウガラスの上縁部分が乗員と接触する虞れがあるため、図5に示す如く、ドア1のウインドウガラス2が出没する位置の車室側には、前記ウインドウガラス2の没入し切らない上縁部分を保護するためのガードバー3が設けられている。図5中における4はシート、5はステアリングハンドル、6はシフトレバーを夫々示している。
【0004】
前記ガードバー3は、単にウインドウガラス2の上縁部分を保護するためだけではなく、ドア1を閉める時のプルハンドルとしても利用されるようになっており、ガードバー3をプルハンドルとして使用する際には、乗員がシート4に着座した状態でガードバー3を手で掴んでドア1を車室側に引くように操作が行われる。
【0005】
この際、ドア1が比較的大きく開いている場合は、乗員は手を車幅方向外側に伸ばしてガードバー3の後方部分を掴み、自然な動作でドア1を車室側に引くことができるが、ドア1が比較的小さく開いている場合は、ガードバー3の後方部分を掴んで引こうとすると、腕が最初から折り畳まれた窮屈な姿勢で引かなければならないためにドア1を閉め難く、寧ろ少し腕を伸ばして届くガードバー3の前方部分を掴んで引く方がドア1を閉め易い。
【0006】
尚、この種のガードバー3に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−126980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、比較的大きく開いたドア1のガードバー3の後方部分を掴む場合には、ガードバー3に対し略直角な方向から前記後方部分を掴むことができるが、比較的小さく開いたドア1のガードバー3の前方部分を掴む場合には、ガードバー3に沿うような浅い角度で前記前方部分を掴む姿勢となるために掴み難く、指先を掛けるところもなかったために指滑りしてドア1を引き損ねることがあり、比較的小さく開いたドア1の閉操作に関して操作性が悪い場合があった。
【0009】
更に付言すれば、図5に示してある通り、一般的なガードバー3の形状は、意匠的な美観を醸し出すために、前方部分が後方部分よりも前後方向に太く形成されてドア1の窓部の下縁から立ち上がり、後方に向かうにつれ徐々に細く断面変化して比較的細めで略均等な太さの後方部分を形成するようになっていたため、前方部分が後方部分よりも掴み難い太さになっているという事情もあった。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、乗員がドアを閉めるためのプルハンドルとして前方部分を使用する際における操作性の良いガードバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両用ドアのウインドウガラスが出没する位置の車室側に設けられて前記ウインドウガラスの没入し切らない上縁部分を保護するガードバーであって、乗員がドアを閉めるためのプルハンドルとして前方部分を掴んだ際に指先を掛けられるよう該前方部分の車幅方向外側に凹部を形成したことを特徴とするガードバー、に係るものである。
【0012】
而して、このようにすれば、乗員が比較的小さく開いたドアを閉めようとしてガードバーの前方部分を掴んだ際に、該前方部分の車幅方向外側にある凹部に指先をしっかりと掛けて掴むことが可能となり、指滑りしてドアを引き損なうような事態が未然に回避されるので、比較的小さく開いたドアの閉操作に関して操作性が大幅に向上されることになる。
【0013】
また、本発明においては、ガスインジェクション成形を採用して全体形状を一体的に形成することが好ましく、このようにすれば、前方部分が凹部の形成により外観的に太くなっても(或いは、意匠的な美観を演出するためにガードバーの前方部分が当初から外観的に太くなっていたとしても)、この凹部が中空部(ガス穴)の流路断面積を狭める役割を果たすので、該凹部の大きさや凹み量の調整により中空部(ガス穴)の流路断面積の急激な変化を回避することが可能となり、これにより内圧の急激な変化も回避できて艶むらの少ない良好な外観品質を保つことが可能となる。
【0014】
即ち、単純に前方部分が後方部分よりも太く形成されているガードバーをガスインジェクション成形により一体成形しようとすると、前方部分から後方部分にかけての中空部(ガス穴)の流路断面積が急激に変化し、これに伴い内圧の急激な変化を招いて外観に艶むらが発生してしまうので、成形後に塗装を施して外観品質を上げるといったコストのかかる後処理を施さなければならなくなるが、本発明の場合は、そのようなコストのかかる後処理を施さなくても済む。
【発明の効果】
【0015】
上記した本発明のガードバーによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0016】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、乗員が比較的小さく開いたドアを閉める際に、ガードバーの前方部分を凹部に指先をしっかりと掛けて掴むことができ、指滑りしてドアを引き損なうような事態を招くことなくドアを容易に且つ確実に閉めることができるので、ガードバーの前方部分をプルハンドルとして使用する際における操作性を従来より大幅に向上することができる。
【0017】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、前方部分が凹部の形成により外観的に太くなっても(或いは、意匠的な美観を演出するためにガードバーの前方部分が当初から外観的に太くなっていたとしても)、この凹部により中空部(ガス穴)の流路断面積を狭めて該流路断面積の急激な変化を回避し、これによりガスインジェクション成形時における内圧の急激な変化を回避することができるので、艶むらの少ない良好な外観品質のガードバーを一体成形することができ、成形後に塗装を施して外観品質を上げるといった後処理を施さなくて済むことでコストの削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1のガードバーを車室側から見た斜視図である。
【図3】図2のIII−III矢視の断面図である。
【図4】図2のIV−IV矢視の断面図である。
【図5】従来例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図5と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0021】
図1は本形態例のガードバー3を車外から見た斜視図、図2は図1のガードバー3を車室側から見た斜視図であり、これら図1及び図2に示している通り、本形態例においては、乗員がドア1を閉めるためのプルハンドルとしてガードバー3の前方部分(図1中の右側部分、図2中では左側部分)を掴んだ際に指先を掛けられるように、該前方部分の車幅方向外側に凹部7が形成されている。
【0022】
ここで、前記ガードバー3は、ガスインジェクション成形を採用して全体形状を一体的に形成するようにしており、より具体的には、閉じられた金型内に溶融樹脂を射出し、直後に窒素ガス等の不活性ガスを溶融樹脂の内部に注入することにより該溶融樹脂を金型内面に密着させ、溶融金属が冷却固化した後にガスの圧力を抜き、金型を開くことにより中空部を持った射出成形品としてガードバー3を得るようにしている。
【0023】
即ち、斯かるガスインジェクション成形により一体的に成形されたガードバー3における前方部分の断面は、図3に示す如き中空部8(ガス穴)を備えたものとなり、また、前記ガードバー3における後方部分の断面は、図4に示す如き中空部8(ガス穴)を備えたものとなる(図3は図2のIII−III矢視での断面、図4は図2のIV−IV矢視での断面である)。
【0024】
而して、このようにガードバー3を構成すれば、乗員が比較的小さく開いたドア1を閉めようとしてガードバー3の前方部分を掴んだ際に、該前方部分の車幅方向外側にある凹部7に指先をしっかりと掛けて掴むことが可能となり、指滑りしてドア1を引き損なうような事態が未然に回避されるので、比較的小さく開いたドア1の閉操作に関して操作性が大幅に向上されることになる。
【0025】
また、本形態例においては、ガスインジェクション成形を採用して全体形状を一体的に形成するようにしているので、ガードバー3の前方部分が凹部7の形成により外観的に太くなっても(或いは、意匠的な美観を演出するためにガードバー3の前方部分が当初から外観的に太くなっていたとしても)、前記凹部7が中空部8(ガス穴)の流路断面積を狭める役割を果たすので、該凹部7の大きさや凹み量の調整により中空部8(ガス穴)の流路断面積の急激な変化を回避することが可能となり、これにより内圧の急激な変化も回避できて艶むらの少ない良好な外観品質を保つことが可能となる。
【0026】
即ち、単純に前方部分が後方部分よりも太く形成されているガードバー3をガスインジェクション成形により一体成形しようとすると、前方部分から後方部分にかけての中空部8(ガス穴)の流路断面積が急激に変化し、これに伴い内圧の急激な変化を招いて外観に艶むらが発生してしまうので、成形後に塗装を施して外観品質を上げるといったコストのかかる後処理を施さなければならなくなるが、本形態例の場合は、そのようなコストのかかる後処理を施さなくても済む。
【0027】
従って、上記形態例によれば、乗員が比較的小さく開いたドア1を閉める際に、ガードバー3の前方部分を凹部7に指先をしっかりと掛けて掴むことができ、指滑りしてドア1を引き損なうような事態を招くことなくドア1を容易に且つ確実に閉めることができるので、ガードバー3の前方部分をプルハンドルとして使用する際における操作性を従来より大幅に向上することができる。
また、ドア1が極めて大きく開いているような際にも、ガードバー3の後方部分よりも手が届き易い前方部分を掴んで引く場合があるが、このような場合も、ガードバー3の前方部分を凹部7に指先をしっかりと掛けて掴むことができるので、その操作性を従来より著しく向上することができる。
【0028】
更に、前方部分が凹部7の形成により外観的に太くなっても(或いは、意匠的な美観を演出するためにガードバー3の前方部分が当初から外観的に太くなっていたとしても)、この凹部7により中空部(ガス穴)の流路断面積を狭めて該流路断面積の急激な変化を回避し、これによりガスインジェクション成形時における内圧の急激な変化を回避することができるので、艶むらの少ない良好な外観品質のガードバー3を一体成形することができ、成形後に塗装を施して外観品質を上げるといった後処理を施さなくて済むことでコストの削減を図ることができる。
【0029】
尚、本発明のガードバーは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 ドア
2 ウインドウガラス
3 ガードバー
7 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのウインドウガラスが出没する位置の車室側に設けられて前記ウインドウガラスの没入し切らない上縁部分を保護するガードバーであって、乗員がドアを閉めるためのプルハンドルとして前方部分を掴んだ際に指先を掛けられるよう該前方部分の車幅方向外側に凹部を形成したことを特徴とするガードバー。
【請求項2】
ガスインジェクション成形を採用して全体形状を一体的に形成したことを特徴とする請求項1に記載のガードバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162233(P2012−162233A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26189(P2011−26189)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】