説明

キサントフィル含有赤色繭及び赤色絹糸

【課題】染色によらないで天然由来の赤色色素を有する絹糸、及びカイコへ餌から赤色色素を投与することによって天然由来の赤色色素を含む絹の簡便な製造する方法。
【解決手段】黄血黄繭系統のカイコ(カロテノイドを摂取し腸管からの吸収から絹糸腺への移送に関する遺伝子を有するカイコ)に、赤色キサントフィルを投与することによって、赤色繭糸、赤色絹糸及びシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄血黄繭系統のカイコに、赤色キサントフィルを投与することによって得られる赤色キサントフィル含有赤色繭、その繭から製造されるシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物及び赤色キサントフィル含有赤色絹糸、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にカイコは白色絹を産生するため、有色の絹を製造するには染色を行う必要があった。これまで有色絹を製造する方法としては、染料を硫酸ソーダ溶液に溶解させた溶液に絹を入れて加熱し、着色後水洗して乾燥を行う方法が知られている。作業工程が多く上に各工程に時間を要し、また温度と時間の管理が難しいため工業的ではなく、着色の度合いが困難であった。
色素をカイコの気門から吸収させて有色絹糸を製造する方法(特許文献1、特許文献2、特許文献3)、カイコに染料を塗布して有色絹糸を製造する方法(特許文献4)が知られている。これらは、浸漬時間や塗布量の管理が難しく、絹の着色性を均一にするには困難であった。
【0003】
野蚕や黄血黄繭系統のカイコなどは、カロテノイド結合タンパク質(CBP)を有し、餌由来で摂取したカロテノイドを中腸から体液、体液から絹糸腺へ取り込むことができ、餌に含まれているカロテノイドを含む繭を作ることが知られている(非特許文献1、2)。例えば、野蚕はルテインを含む薄緑色の繭を形成し、その繭から薄緑色の絹糸を作るのに用いられている。また、黄血黄繭系統のカイコは、餌のクワ由来のルテインを含む黄色〜薄緑色の繭を形成することが知られている。
【0004】
カイコは狭食性でありクワやクワを配合した一部の飼料しか食べず、カイコが食性を有していない赤色キサントフィルを含む餌を摂取すること、黄血黄繭系統のカイコに、赤色キサントフィルを投与することによって赤色を呈するキサントフィル含有繭を得ることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 日本国特開平3−193904号公報
【特許文献2】 日本国特開平6−237670号公報
【特許文献3】 日本国特開平6−296448号公報
【特許文献4】 日本国特開2000−333555号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】 PANS,2007,104(21),8941−8946
【非特許文献2】 蛋白質 核酸 酵素,2008,53(2),125−131
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
絹糸を赤色素で染色することなく、カイコが吐く繭に赤い色素を含有させることによって、赤色繭・赤色絹糸を容易に製造することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、黄血黄繭系統のカイコに、赤色キサントフィルを投与することによって赤色を呈するキサントフィル含有繭を産生することを見いだし、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0009】
黄血黄繭系統のカイコに、赤色キサントフィルを投与することによって赤色を呈するキサントフィル含有繭、その繭から製造される赤色キサントフィル含有絹糸及びシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物を製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の繭をデジタルカメラで撮影したものである。アスタリールはフリー体で5%のアスタキサンチンを含む。
【図2】実施例2の繭をデジタルカメラで撮影したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
黄血黄繭系統のカイコに、餌などに含めて赤色キサントフィルを投与することによって、繭の形成時に赤色を呈するキサントフィル含有繭を製造することができる。この繭を精錬することによって、キサントフィルを含有する赤色の絹糸を得ることができる。同時に精錬時の溶解層からシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物を得ることができる。
【0012】
本発明における黄血黄繭系統のカイコとは、中腸から体液、体液から中部絹糸腺へのカロテノイドを取り込むことができる種類のカイコであり、外的特徴としては体液がほぼ黄色のため幼虫時にはほぼ黄色であり、また形成した繭はほぼ黄色を呈する。これらの要因としてはカロテノイド結合タンパク質(CBP;carotenoid−binding protein)を発現していることが重要であるとの研究がなされている(蛋白,2008,53(2),125−131)。
【0013】
本発明では、黄血黄繭系統のカイコであればいずれの系統のものも用いることができ、繭の大きさや繭の色調、食性などによって適宜選ぶことができる。通常の白繭系統などのカイコであっても、黄血黄繭系統のカイコの黄血黄繭に関係する遺伝子を導入することによって遺伝子改変したカイコを用いても良い。
【0014】
また、本発明においてはカイコには、繭にカロテノイドを含有する絹糸昆虫も含まれるものとする。絹糸昆虫では、鱗翅目の昆虫が好ましく、さらにカイコガ科が好ましく、例えば、クワコ、テンサン、サクサン、インドサクサン、エリサン、アナフェ・レティキュラタである。
【0015】
本発明における赤色のキサントフィルとは、キサントフィルのそれぞれの単体で黄色がかっているものではなく、比較的に赤色の濃い種類である。これらは、末端構造に特異性を有しているため、吸収性が特に高く、カロテノイドのうち、末端に「3−hydroxy」、「3−Keto β−」、「4−Keto β−」、「6−keto κ−」の構造を有するグループである。例えば、アスタキサンチン、アドニルビン、アドニキサンチン、エキネノン、ロドキサンチン、カンタキサンチン、アマロウシアキサンチン、フコキサンチノール、ペリジニン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、カロキサンチン、ハロシンチアキサンチン、カプサンチン、カプサンチノール、カプソルビンなどである。好ましくは、アスタキサンチン、ゼアキサンチンである。
【0016】
これらの赤色キサントフィルは、植物、動物、微生物などの天然物、天然物から抽出されたもの及び化学合成品を用いることができる。天然物からの物質の抽出物は、その原料種類、産地及び製造方法は特に限定されない。本発明の記載で、特に記載がない限り、キサントフィルはキサントフィル及び/又はそのエステル体を含む。さらに、キサントフィルのエステルにはモノエステル体及び/又はジエステル体を含む。キサントフィルのエステルを形成する脂肪酸としては、天然に存在する低級又は高級飽和脂肪酸、あるいは低級又は高級不飽和脂肪酸によりエステル化されたエステル類をあげることができる。
【0017】
特にアスタキサンチン及びその脂肪酸エステルは、天然物由来のもの又は合成により得られるもののいずれも用いることができるが、体内での吸収性から天然由来のアスタキサンチン脂肪酸エステルが好ましい。この天然由来としては、例えば、ヘマトコッカス藻、ファフィア酵母、オキアミの粉砕品、及びこれらの抽出物を用いることができる。カイコは食性が狭いことから、臭いや独特の味がしないものがよく、植物であるヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンが最も好ましい。ヘマトコッカス藻由来のアスタキサンチンのうち、空気との遮断下、有機溶媒中で粉砕と抽出を同時に行って得られるアスタキサンチン含有オイルは、最も原料由来の臭気や酸廃由来の臭気が少なく好ましい。
【0018】
本発明の赤色カロテノイド含有繭糸は、赤色カロテノイドの合計が繭糸全体1gに対して、10〜2000μg含有し、好ましくは20〜1000μg含有し、より好ましくは100〜500μg含有する。後述の赤色キサントフィル含有絹、シルクプロテイン−キサントフィル複合組成物においても、同量の赤色カロテノイドを含む。本発明の赤色カロテノイド含有繭糸の赤色強度は、実施例記載の方法によって求められ、32〜100であり、好ましくは38〜100であり、より好ましくは41〜100である。赤色カロテノイド自体が呈する赤色強度の違いにもよるが、繭糸中の赤色カロテノイドの含量が多いほど赤色強度が大きくなり、繭糸中の赤色カロテノイドの含量によって、赤色を自由に調節することができる。
【0019】
黄血黄繭系統のカイコに、赤色のキサントフィルを摂取させる方法としては、人工飼料と赤色キサントフィルを混合または桑葉に赤色キサントフィルを展着あるいは浸漬するなどによって行うことができる。餌としては天然の桑葉、及び通常市販されている人工のカイコ用餌であればいずれも用いることができる。
【0020】
赤色キサントフィルを投与する時期としては、繭を作る直前の第4〜5齢に投与すればよく、好ましくは第5齢である。第5齢のうち餌を大量に摂取する日は、絹糸腺でセリシンとフィブロインを盛んに産生する時期であり、キサントフィルを投与すると繭にもっとも赤着色しやすい。
【0021】
キサントフィルの投与量としては、目安としては1頭のカイコ当たり1回分の餌として、キサントフィルの摂取量を0.01〜1mg、好ましくは0.02〜0.5mgとなるように餌とともに摂取させることができる。これらキサントフィルの投与量は、ゲージあたりのカイコの頭数を元に与えるエサの量を元に、0.01〜1mg/gdietとしてエサを与えることができる。カイコの成長具合に合わせて、餌の量は調節する。
【0022】
赤色の繭を形成したなら、繭を取り出し、通常の方法によって繭の処理を行う。ここで取り出した赤色繭の糸は、精錬を行うことによって、絹糸と可溶成分に分けることができる。繭の糸はフィブロイン層の周りに複数のセリシン層で被覆された構造である。絹糸は主にフィブロインを中心とした部分であり、可溶成分は主にセリシンを中心とした部分である。カイコの種類によって絹糸と可溶成分でのキサントフィルの含有量は変わるが、セリシンの部分により多くのキサントフィルを含む傾向がある。
【0023】
赤色キサントフィル含有絹糸は、家蚕や野蚕などで行われている方法によって繭を精錬することによって得ることができる。精錬方法としては、例えば、温水やアルカリ水溶液、アルコールなど精錬条件を設定して可溶部分を溶出させ、ついで、糸を紬出して赤色キサントフィル含有絹糸を製造する。
【0024】
可溶成分を含む溶液から溶媒成分や不溶物を除去して、シルクプロテイン−キサントフィル複合組成物を得る。溶媒除去や不溶物を除去する方法は、一般に絹糸製造時の副生成物として得られているシルクプロテインと同様の方法によって行うことができる。また、繭を粉砕、洗浄することによって、繭からシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物を製造することができる。
【0025】
本発明の赤色キサントフィル含有絹は、酸化や光に対するキサントフィルの安定性が向上している。これはキサントフィルがセリシンやフィブロインなどの絹糸のタンパク質と複合体を形成しているためと考えられる。キサントフィル含有絹は、絹織物などに用いることができる。キサントフィルの吸収性を向上するため、この絹糸を粉末化し、化粧品や健康食品などに用いることができる。
【0026】
さらには、本発明の赤色キサントフィル含有絹は、抗酸化能力が強いキサントフィルを含有してため、光や酸化物質に対して絹自体の耐候度を高めることができる。
【0027】
シルクプロテイン−キサントフィル複合組成物は、キサントフィル単体の場合と比べて水への溶解度、皮膚や消化管からの吸収性が高く、いわゆるシルクプロテインやキサントフィルが配合されている化粧品や医薬品、食品に用いることができる。高吸収性とシルクプロテイン−キサントフィルの相乗効果が得やすい。
【0028】
化粧品や皮膚外用剤の形態には、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等の医薬品などとすることができる。上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、各種皮膚栄養成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、色剤、水、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0029】
飲食物としては、一般の飲食物や機能性食品に配合して用いることができる。機能性食品は、栄養機能食品や特定保健用食品などの保健機能食、特別用途食品など、政府や団体などによって効用効果の表示許可したものである。一般の飲食物としては、健康食品、サプリメント、一般食品や一般飲料として用いることができる。一般の飲食物や機能性食品の形状としては、摂取量が決めやすいことから、前述医薬品と同様の形態、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投与形態、シロップ及び懸濁液のような液体投与形態で摂取することができる。上記医薬品用製剤で用いる成分のうち、食品で使用可能なものを選択でき、その他に乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、又は、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料及び色素などを配合してもよい。本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。
【0030】
一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、又は果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料又は非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコール又はリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。
【0031】
前述のキサントフィルの投与量を予め含有する餌を赤色繭色製造用の餌として用いることができる。餌に配合する成分は、通常、カイコ用の餌として用いられている成分に配合すればよい。
【実施例】
【0032】
本発明をさらに詳細に説明にするために以下に実施例をあげるが、本発明がこの実施例のみに限定されない。
[餌の調製]
原種飼蚕用の餌(日本農産工業(株)製)100g、沸騰水300g及び適量のアスタリールを混合し、100℃のオートクレーブに10分間処理したのち、冷蔵して固形状の餌を調製した。この固形の餌をスライスして、蚕に投与した。
アスタキサンチンは、アスタリール50F(富士化学工業(株)製)を用いた。アスタキサンチンをフリー体換算で5%含有する。
[繭のカロテノイド含有量]
繭の一部を切り取り、水および80%エタノールによる、加熱抽出を繰り返して得たキサントフィル画分からエタノールを留去したのち石油エーテルで抽出し、HPLCにて測定した。
[赤色強度]
繭のデジタルカメラで写真を取り、その画像データを画像ソフト[PaintShopProVer7.00、JascSoftware社製]を用い、赤色部分である緑チャンネルのピークを測定し、最も明るい部分を0、最も暗い部分を100として赤色濃度を求めた。
[目視試験]
試料を3人で見て確認した。下記の規準に従って等級を付けた。
− :アスタキサンチン投与なしで黄色の繭色
+ :わずかに赤色を呈した。
++ :やや赤色を呈した。
+++ :赤色を呈した。
【0033】
[実施例1] アスタキサンチン投与量の差
N4(黄血黄繭系統)の5齢幼虫120頭をそれぞれ20頭の6群に分け第5齢の1日〜5日にかけて、アスタリールを配合した餌を投与した。昼12時間、夜12時間のサイクルで30cmのケージの中で飼育した。1〜2日は餌のスライスを3枚、3〜5日はそれぞれの日に3枚のスライス餌を与えた。続いて繭を作らせて、赤色繭を得た。アスタリールの餌の配合量を変えて飼育した結果を表1に示す。図1にモノクロ写真を示す。
アスタキサンチン投与量は、各群へ1回分のエサに含まれる総量である。
【0034】
【表1】

【0035】
投与するアスタキサンチンの濃度が多くなるに従って、繭のアスタキサンチン含有量が増加していることが分かる。アスタキサンチン含量が多くなるに従って繭の赤身が増加していた。また、アスタキサンチン投与群のカイコは体液が赤色を呈していたが、無投与群は自然な黄色のままであった。アスタキサンチンの投与量が0であっても黄色に着色しているのは、餌由来のルテインが含まれているためである。
【0036】
[実施例2] アスタキサンチン投与日の差
カイコN4(黄血黄繭系統)の5齢幼虫120頭をそれぞれ20頭の6群に分け第5齢の1日〜5日にかけて、アスタリール2mg/g Dietを配合した餌を投与した。昼12時間、夜12時間の光周期で30cmのケージの中で飼育した。1〜2日は餌のスライスを3枚、3〜5日はそれぞれの日に3枚のスライス餌を与えた。続いて繭を作らせて、赤色繭を得た。アスタリールの餌を投与する日決めて飼育した結果を表2に示す。投与の日以外はアスタリールを含有しない餌を与えた。
【0037】
【表2】

【0038】
投与日が繭の形成期に近づいているほど繭の赤色が強くなっていることが分かる。全日投与した群が最も赤が強く、投与しない群は最も着色していない。絹糸腺でセリシンとフィブロインの生産時期が多い時期にアスタキサンチンを投与すると効果が高い。
【0039】
[実施例3] カロテノイド含有量
実施例1と同様の条件でカイコにパプリカ色素抽出物(パプリカ色素抽出物、カプサンチンを主体とするカロテノイド色素をカロテノイド総量として10%含有、投与量としては1mg/g Diet)を投与した。実施例1のアスタリール投与なし、アスタリール2mg/g Diet投与量繭、パプリカ色素投与1mg/g Diet投与繭の含量を測定した。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】


【0041】
繭には、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、β−カロテン、ルテインが含まれている。移行するカロテノイドは選択制があり、アスタキサンチンはルテインよりも移行しやすいことが分かる。
【0042】
[実施例4] 赤色絹糸の製造
実施例2の1〜5日の全日に渡ってアスタリールを投与した繭と無投与の繭をとり、それぞれ80〜90℃の湯で精錬し、絹を取り出した。アスタリールを投与した繭から取り出した絹糸は、綺麗な赤色を呈していたが、無投与の繭から取り出した絹糸は、黄色であった。
【0043】
[実施例5] シルクプロテイン−アスタキサンチン複合物退色試験
実施例2の1〜5日の全日に渡ってアスタリールを投与した製造繭を80〜90℃に加熱した水および80%エタノール中で繰返し抽出した後、絹を取り出して抽出液を得た。得られた抽出液を蒸発乾固させて、シルクプロテイン−アスタキサンチン複合物の赤色粉末を得た。
【0044】
[実施例6] 退色試験
全日に渡ってアスタリールを投与した繭、それと同濃度に調製したアスタリールのアルコール溶液をビーニールパックに入れ室内で4週間放置し退色の度合いを見た。ここで退色の度合いは、遮光下冷蔵庫で保存した物との比較を視覚によった。
【0045】
【表4】

【0046】
本発明の方法によって得られたアスタキサンチン含有繭は退色安定性が高いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイドを摂取し腸管からの吸収から絹糸腺への移送に関する遺伝子を有するカイコに、赤色キサントフィルを投与することによって得られる赤色キサントフィル含有赤色繭。
【請求項2】
請求項1の赤色キサントフィル含有繭の可溶層を取り出すことによって得られるシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物。
【請求項3】
請求項1の赤色キサントフィル含有繭から精錬することによって得られる赤色キサントフィル含有赤色絹。
【請求項4】
赤色キサントフィル含有繭を製造するためのカイコ用赤色キサントフィル含有飼料。
【請求項5】
カロテノイドを摂取し腸管からの吸収から絹糸腺への移送に関する遺伝子を有するカイコに、赤色キサントフィルを投与することによる赤色キサントフィル含有赤色繭の製造方法。
【請求項6】
請求項5の赤色キサントフィル含有繭の可溶層を取り出すことによって得られるシルクプロテイン−キサントフィル複合組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項5の赤色キサントフィル含有繭から精錬することによって得られる赤色キサントフィル含有赤色絹製造方法。

【図1】
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