説明

キックペダル付きスケートボード

【課題】後部車輪7を駆動する機構を操作者が乗るボード2の下面側に設けず、ボード2の高さを低く設定して趣向性を向上させるキックペダル付きスケートボード25を提供する。
【解決手段】操作者によって力が加えられるキックペダル11とキックペダル11に加えられる力によって回動する回動軸13を中心として隣接する歯車と噛み合う歯形15とが形成されるアーム体9と、歯形15に噛み合う従動歯車16と、従動歯車16が回転する回転軸17に取り付けられ従動歯車16とともに回転する第1スプロケット18と、後部車輪7の車軸8に取り付けられ第1スプロケット18とチェーン23で連結される第2スプロケット21とを備え、従動歯車16と第1スプロケット18とは、アーム体9の後方であって後部車輪7の車軸8の前方に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キックペダル付きスケートボードに関し、より詳細には、後部車輪を駆動する機構を操作者が乗るボードの下面側に設置せず、ボードの高さを自由に設定することができるキックペダル付きスケートボードの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術における後部車輪77を駆動する機構を示す概略図である。従来からキックペダル72を踏み込むことで後部車輪77をチェーン駆動して走行するキックペダル付きスケートボード71がある。キックペダル72は、ボード73の後方で揺動可能に支持され、キックペダル72の下端部74はボード73の下面側に突出する。下端部74には、スプロケット75が設けられる。後部車輪77の回転軸に設けられたスプロケット76の上側にチェーン78が掛けられる。チェーン78の一端部はスプロケット76の後方に設けられたスプロケット79を経由してボード73の下面前部に引張りコイルばね80を介して支持される。スプロケット76の上側に掛けられたチェーン78の他端部は、後部車輪77の前方に位置するスプロケット75を経由してボード73後方に設けられるブラケット81に固定される。操作者がキックペダル72を後方に踏み込むと、スプロケット75が前方に移動する。スプロケット75の移動に伴ってスプロケット76上側のチェーン78が前方に引っ張られ、後部車輪77は進行方向に回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作者が乗るボード73の下面側にはスプロケット75とチェーン78とが設けられるので、ボード73の高さは、スプロケット75とチェーン78とを設けることができる高さとされる。
本発明の目的は、後部車輪を駆動する機構を操作者が乗るボードの下面側に設けず、ボードの高さを低く設定して趣向性を向上させるキックペダル付きスケートボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために本発明は、スケートボードを操作する操作者によって力が加えられる外力作用部と前記外力作用部に加えられる力によって回動する回動軸を中心として隣接する歯車と噛み合う歯形とが形成されるアーム体と、前記歯形に噛み合う従動歯車と、前記従動歯車が回転する回転軸に取り付けられ前記従動歯車とともに回転する第1スプロケットと、後部車輪の車軸に取り付けられ前記第1スプロケットとチェーンで連結される第2スプロケットとを備え、前記従動歯車と前記第1スプロケットとは、前記アーム体の後方であって前記後部車輪の車軸の前方に配置されるものである。また本発明は、前記外力作用部は、前記アーム体に回動可能に支持されて、アーム体の右側部分と左側部分とへ位置の切り替えが可能とされているものである。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明によれば、前記従動歯車と前記第1スプロケットとは、前記アーム体の後方であって前記後部車輪の車軸の前方に配置されるので、後部車輪を駆動する機構を操作者が乗るボードの下面側に設けず、ボードの高さを低く設定して趣向性を向上させるキックペダル付きスケートボードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態における後部車輪駆動機構1を示す断面図である。
【図2】後部車輪駆動機構1を示す平面図である。
【図3】アーム体9を固定する固定ピン34を示す斜視図である。
【図4】固定ピン34を設けた部分の断面図である。
【図5】キックペダル11を示す斜視図である。
【図6】キックペダル11が固定された状態における取り付け部の断面図である。
【図7】キックペダル付きスケートボード25の外観図である。
【図8】従来技術における後部車輪77を駆動する機構を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、第1の実施形態について説明する。図7は、キックペダル付きスケートボード25の外観図である。キックペダル付きスケートボード25は、ボード2と、後部車輪7と、ハンドル取り付け部材60に支持された前輪ホイール59と、ハンドル取り付け部材60の上端のハンドル58とを有する。ハンドル取り付け部材60、前輪ホイール59およびハンドル58は、折りたたみ可能である。後部車輪駆動機構1は、ボード2の後方に設けられるハウジング3に収容される。図1は、本発明の実施形態における後部車輪駆動機構1を示す断面図である。図2は、後部車輪駆動機構1を示す平面図である。ハウジング3は、断面コの字形であり開口部4を後方にして配置される。ハウジング3は、対向する両端面5a,5bを連結する平面部6がボード2の後端にねじ止めされる。
ハウジング3の奥側には、アーム体9が取り付けられる。アーム体9は、ボード2に乗る操作者の後方に設置され、ハウジング3の上方に突出する。アーム体9の1端部10には、操作者によって力が加えられるキックペダル11が設けられる。キックペダル11は、外力作用部である。キックペダル11については後に詳述する。アーム体9の他端部12には、アーム体9が回動する回動軸13が設けられる。アーム体9は、図示しない軸受を介して回動軸13に取り付けられる。回動軸13の両端面14a,14bは、ハウジング3にねじ止めされる。操作者がキックペダル11を後方に踏み込むと、アーム体9は回動軸13を中心に回動する。アーム体9の他端部12の後方周縁部には、回動軸13を中心に隣接する歯車と噛み合う歯形15が形成される。
アーム体9の後方には、アーム体9に形成される歯形15と噛み合う従動歯車16が設置される。従動歯車16は、アーム体9の回動方向とは反対方向に回転する。本実施形態においては、従動歯車16として平歯車が用いられる。従動歯車16の回転軸17には、従動歯車16とともに回転する第1スプロケット18が取り付けられる。従動歯車16と第1スプロケット18とは、図示しない軸受を介して回転軸17に取り付けられる。回転軸17の両端面19a,19bは、ハウジング3にねじ止めされる。
従動歯車16の後方であってハウジング3の開口部4に配置される後部車輪7の車軸8には、ハブ20とともに回転する第2スプロケット21が取り付けられる。ハブ20と第2スプロケット21とは、図示しない軸受を介して車軸8に取り付けられる。車軸8の両端面22a,22bは、ハウジング3にねじ止めされる。第1スプロケット18と第2スプロケット21とはチェーン23で連結される。
【0008】
後部ホイール24を支持するハブ20には、図示しないラチェット機構が設けられる。ハブ20が駆動されるとラチェット機構が働き、後部ホイール24はハブ20とともに回転する。ハブ20が駆動されていないときにはラチェット機構が解除され、後部ホイール24はハブ20を伴わず単独で回転する。したがって、操作者がキックペダル11を踏み込んでハブ20を駆動しているときには、キックペダル付きスケートボード25は加速され、キックペダル11を踏み込んでいないときには、キックペダル付きスケートボード25は惰性で走行する。
第1スプロケット18と第2スプロケット21との間にはテンショナー26が設けられる。テンショナー26は、下側のチェーン23に設けられる。テンショナー26は、ハウジング3の端面5aに取り付けられる。これによって、チェーン23の緩みが防げるので、第2スプロケット21からチェーン23が外れることを防止することができる。
【0009】
第1スプロケット18と第2スプロケット21との組み合わせを変えることによって、操作者がキックペダル11を踏み込んだときの後部ホイール24が回転する回数を変えることができる。これによって、キックペダル11を踏み込んだときのキックペダル付きスケートボード25の移動距離を変えることができる。
アーム体9には、引張りコイルばね27が取り付けられる。引張りコイルばね27の一端部は、取り付けピン28に取り付けられる。取り付けピン28は、アーム体9の下部前方にねじ止めされる。引張りコイルばね27の他端部は、ハウジング3に設けられたブラケット29に固定される。ブラケット29は、アーム体9の回動軸13後方に設けられる。操作者が、引張りコイルばね27のばね力に抗してキックペダル11を踏み込み、踏み込んだキックペダル11から足を離すと、アーム体9は、引張りコイルばね27のばね力によって、キックペダル11を踏み込んでいないときの状態に戻される。平面部6の上部には、アーム体9が当接する凸部31が形成され、アーム体9の位置決めがされる。
ハウジング3には、アーム体9のストッパー30が設けられる。ストッパー30は略円筒形であり、ストッパー30の両端面32a,32bがハウジング3にねじ止めされる。ストッパー30は、アーム体9の他端部12前方に設けられる。操作者がキックペダル11を踏み込むとアーム体9が回動する。他端部12がストッパー30に当接し、アーム体9の回動が制限される。他端部12が当接するストッパー30の円筒部側面33には、緩衝材として、たとえば図示しないゴム材が貼られる。
図3は、アーム体9を固定する固定ピン34を示す斜視図である。図4は、固定ピン34を設けた部分の断面図である。ハウジング3には、操作者が踏み込んだ状態でアーム体9を固定する固定ピン34が設置される。固定ピン34は、コイルばね35が装着され、ハウジング3に形成された挿通孔36に挿通される。アーム体9には、凹部37が形成される。凹部37は、回動軸13の近傍であって、回動軸13を基準として取り付けピン28とは反対側に形成される(図1参照)。アーム体9に形成される凹部37は、キックペダル11が最も踏み込まれたときに、固定ピン34の中心軸上に位置するように形成される。
操作者は、キックペダル11を踏み込んだ状態で、固定ピン34を凹部37に差し込み、キックペダル11から足を離す。アーム体9は、引張りコイルばね27のばね力によって前方に引張られ、凹部37に差し込んだ固定ピン34の側面38が凹部37の側面39に圧接する。これによって、固定ピン34は、コイルばね35の力に打ち勝って、凹部37に差し込まれた状態を維持し、アーム体9はキックペダル11が踏み込まれた状態で固定される。
アーム体9の固定を解除する場合には、固定されたアーム体9のキックペダル11を踏む。凹部37は、略楕円形状であり固定ピン34が差し込まれた状態で遊びを持っているので、操作者がキックペダル11を踏むと、ピン34の側面38に圧接する凹部37の側面39が固定ピン34の側面38から離れる。固定ピン34は、コイルばね35のばね力によってハウジング3の端面5bの方向に引込む。固定ピン34は、凹部37に差し込まれる前の元の位置に戻る。
図5は、キックペダル11を示す斜視図である。図6は、キックペダル11が固定された状態における取り付け部の断面図である。キックペダル11は、キックペダル支持部材40に取り付けられる。キックペダル支持部材40のキックペダル11が取り付けられる一端部に対する他端部には回転軸41が設けられる。回転軸41は、アーム体9の1端部に形成される貫通孔42に嵌入される。回転軸41の両端面43a,43bにはエンドプレート44がねじ止めされアーム体9に支持される。回動軸41に隣接してピン45が設けられる。端部にコイルばね46を備えたピン45は、孔47に挿入される。孔47の開口部にはリテーナ48が設けられる。リテーナ48はピン45の段付き部49に当接し、ピン45が孔47から抜け出ることを防止する。
ピン45の側面50には切欠き部51が形成される。切欠き部51を形成する上部の面52の傾斜は側面50に対して緩やかに形成される。切欠き部51を形成する下部の面53は、概ね側面50と直交するように形成される。キックペダル支持部材40の他端部側の側面54には、球面状の凹部55が形成される。切欠き部51と凹部55とに囲まれる空間には、金属製のボール56が設置される。図6に示すように、コイルばね46の力でピン45が押されると、上部の面52がボール56を押し、ボール56がピン45から突出して凹部55に嵌る。これによって、キックペダル11は、アーム体9に位置決め状態で固定される。図示しないが、固定されたキックペダル11は、図6において紙面に垂直な方向に位置する。
キックペダル11が固定された状態でピン45を押すと、上部の面52によるボール56の押圧力が解除される。すると、ボール56が凹部55に入り込もうとする力も解除される。それによってボール56は、凹部55から離れることが可能となりキックペダル11の固定状態は解除される。ボール56は、凹部55から離れると、上部の面52と下部の面53とによって形成された切欠き部51に収容される。このように操作者は、回動軸41を中心としてキックペダル11を回動させることができる。キックペダル支持部材40の両側に凹部55を設けることで、キックペダル11をアーム体9の右側と左側のいずれの位置にも固定することができる。キックペダル支持部材40の先端部にも凹部55を設けると、図5の状態でキックペダル11を固定することができる。キックペダル11の踏み込み状態でアーム体9を固定したうえで、キックペダル11を図5の姿勢とすることで、キックペダル11がアーム体9から側方に突出せず、これをコンパクトにたたむことができる。
図7は、キックペダル付きスケートボード25の外観図である。ボード2の上面に突出するアーム体9は後方に押し下げた状態で固定されるので、操作者がハンドル58と前輪ホイール59が取り付けられたハンドル取り付け部材60を後方に折りたたむときに、ハンドル58とアーム体9とが干渉しない。これによって、折りたたんだキックペダル付きスケートボード25の高さを低くすることができるので、持ち運びに便利である。
【0010】
ボード2の側部61には、スタンド62が設けられる。操作者は、スタンド62を立てることによってキックペダル付きスケートボード25を立てた状態で停めることができる。
このように、キックペダル付きスケートボード25を操作する操作者によって力が加えられるキックペダル11とキックペダル11に加えられる力によって回動する回動軸13を中心として隣接する歯車と噛み合う歯形15とが形成されるアーム体9と、歯形15に噛み合う従動歯車16と、従動歯車16が回転する回転軸17に取り付けられ従動歯車16とともに回転する第1スプロケット18と、後部車輪7の車軸8に取り付けられ第1スプロケット18とチェーン23で連結される第2スプロケット21とを備えるキックペダル付きスケートボード25において、従動歯車16と第1スプロケット18とは、アーム体9の後方であって後部車輪7の車軸8の前方に配置されるので、後部車輪7を駆動する機構をボード2の下面側に設けず、ボード2の高さを低く設定して趣向性を向上させるキックペダル付きスケートボード25を提供することができる。
また、キックペダルは、アーム体9に回動可能に支持されて、アーム体9の右側部分と左側部分とへ位置の切り替えが可能とされているので、操作者の趣向に合わせたキックペダル11の配置をすることができる。
【符号の説明】
【0011】
1 後部車輪駆動機構
2,73 ボード
3 ハウジング
4 開口部
5a,5b,19a,19b,22a,22b,32a,32b,43a,43b 端面
6 平面部
7,77 後部車輪
8 車軸
9 アーム体
10 1端部
11,72 キックペダル
12 他端部
13 回動軸
15 歯形
16 従動歯車
17,41 回転軸
18 第1スプロケット
20 ハブ
21 第2スプロケット
23,78 チェーン
24 後部ホイール
25,71 キックペダル付きスケートボード
26 テンショナー
27,80 引張りコイルばね
28 取り付けピン
29,81 ブラケット
30 ストッパー
31 凸部
33 円筒部側面
34 固定ピン
35 コイルばね
36,42 貫通孔
37,55 凹部
38,39,50,54 側面
40 キックペダル支持部材
44 エンドプレート
45 ピン
46 コイルばね
47 孔
48 リテーナ
49 段付き部
51 切欠き部
52 上部の面
53 下部の面
56 ボール
58 ハンドル
59 前輪ホイール
60 ハンドル取り付け部材
61 側部
62 スタンド
74 下端部
75,76,79 スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケートボードを操作する操作者によって力が加えられる外力作用部と前記外力作用部に加えられる力によって回動する回動軸を中心として隣接する歯車と噛み合う歯形とが形成されるアーム体と、前記歯形に噛み合う従動歯車と、前記従動歯車が回転する中心軸に取り付けられ前記従動歯車と共に回転する第1スプロケットと、後部車輪の車軸に取り付けられ前記第1スプロケットとチェーンで連結される第2スプロケットとを備え、前記従動歯車と前記第1スプロケットとは、前記アーム体の後方であって前記後部車輪の車軸の前方に配置されることを特徴とするキックペダル付きスケートボード。
【請求項2】
前記外力作用部は、前記アーム体に回動可能に支持されて、アーム体の右側部分と左側部分とへ位置の切り替えが可能とされていることを特徴とする請求項1に記載のキックペダル付きスケートボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−279580(P2010−279580A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135797(P2009−135797)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(500514579)ジェイディジャパン株式会社 (20)