説明

キッチンカウンタ

【課題】外観を損なうことなく天板の張り出し部を補強部材によって補強することができるキッチンカウンタを提供する。
【解決手段】本発明のキッチンカウンタ10は、キャビネット部13と、キャビネット部13の上部に設けられ、かつキャビネット部13から張り出す張り出し部22を有する天板14と、天板14とは線膨張係数の異なる材質で形成され、天板14におけるキャビネット部13の上方領域R1と張り出し部22の領域R2とに亘って天板14の裏面に設けられた補強部材21とを備えており、補強部材21の長さ方向の一部が天板14に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンカウンタ、例えばキッチンとリビングとの間に設置される対面式等のキッチンカウンタに関する。
【背景技術】
【0002】
キャビネット(収納部)の上部に設けられた天板にシンクやコンロを備えたキッチンカウンタが広く利用されている。特に、近年においては、キッチンとリビングルームとの双方からアクセスすることが可能であり、キッチンで作った料理等を直接リビングルーム側へ供給することができる対面式のものが普及している。
また、この種の対面式のキッチンカウンタには、リビングルーム側からのアクセスや使い勝手をより良くするために、天板をリビングルーム側へ水平に張り出したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−137591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたキッチンカウンタは、例えば図10に示すように、天板100の張り出し部101を支持するために、張り出し部101の裏面とキャビネット部105の背面パネル102との間にL字形状の補強部材103が取り付けられている。さらにこの補強部材103が外部に露出するのを防止するために、当該補強部材103を覆い隠すカバー部材104がキッチンカウンタの幅全体に亘って設けられている。
しかし、特許文献1のキッチンカウンタは、補強部材103そのものは外部に露出しないものの、比較的大型のカバー部材104が外部に露出してしまうため、さほど外観が向上するとは言い難い。
【0005】
したがって、本発明は、天板の張り出し部を補強する補強部材やそのカバー部材によって外観が悪化してしまうのを防止するキッチンカウンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のキッチンカウンタは、キャビネット部と、前記キャビネット部の上部に設けられ、かつ前記キャビネット部から張り出す張り出し部を有する天板と、前記天板とは線膨張係数の異なる材質で形成され、前記天板における前記キャビネット部の上方領域と前記張り出し部の領域とに亘って前記天板の裏面に設けられた補強部材と、を備えており、前記補強部材が、その長さ方向の一部において前記天板に固定されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、天板の裏面には、キャビネット部の上方領域と張り出し部の領域との広い領域に亘って補強部材が設けられているので、従来技術(特許文献1参照)のようにL字型の補強部材を使用する必要が無く、天板の裏面から補強部材が大きく突出することもない。したがって、当該補強部材が外部に露出しないようにカバー部材を設けたとしてもこのカバー部材が大きく露出することはなく、外観を悪化させることもほとんどない。
【0008】
また、補強部材の長さ方向の全体を天板の裏面に固定したとすれば、天板と補強部材との線膨張係数の違いによって、温度変化に伴う反りが天板に生じることがあるが、本発明では、補強部材がその長さ方向の一部において天板に固定されているので、このような天板の反りを抑制することができる。
【0009】
(2)前記補強部材は、前記天板における前記キャビネット部の上方領域内で前記天板に固定されていることが好ましい。
天板がキャビネット部から張り出す張り出し部を備えているキッチンカウンタにおいては、特にキャビネット部によって支持されていない張り出し部において天板が反りやすくなる。したがって、天板におけるキャビネット部の上方領域内で補強部材を固定することによって張り出し部における反りの発生を確実に抑制することができる。
【0010】
(3)また、前記補強部材は、前記張り出し部とは反対側の端部において前記天板に固定されていることがより好ましい。この構成によって張り出し部における反りの発生をより確実に抑制することができる。
【0011】
(4)前記天板は人工大理石であってもよく、前記補強部材は金属製であってもよい。本発明は、線膨張係数の差が大きい人工大理石の天板と金属製の補強部材とを組み合わせた場合に非常に有効である。特に、人工大理石からなる天板の反りを適切に抑制することで、人工大理石が有する高級感やインテリア性を損なうことはほとんどない。
【0012】
(5)前記補強部材はパイプ材であることが好ましい。上述のように、補強部材の長さ方向の一部において天板に固定すると、補強部材の長さ全体を天板に固定した場合に比べて支持強度が低下するが、この補強部材をパイプ材とすることによって補強部材の重量増を抑制しつつ曲げ剛性を高め、天板の支持強度を確保することができる。
【0013】
(6)前記補強部材の両側部に間隔をあけて裏貼材が設けられ、前記補強部材と前記裏貼材との間に、前記補強部材を前記天板の裏面に固定するための接着剤が充填されていることが好ましい。このように構成することで、補強部材の両側部に接着剤の充填スペースを区画形成することができ、この充填スペースに接着剤を充填することによって補強部材を天板の裏面に容易に接着することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のキッチンカウンタによれば、外観を損なうことなく天板の張り出し部を補強部材によって補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るキッチンカウンタの斜視図である。
【図2】同キッチンカウンタの側面図である。
【図3】図1のA部で示す部分の天板の底面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図3のV−V断面図である。
【図6】キッチンカウンタの分解斜視図である。
【図7】キッチンカウンタの背面図である。
【図8】背面パネルの裏面(接着面)を示す正面図である。
【図9】補強部材の他の実施形態を示す断面図である。
【図10】従来技術に係るキッチンカウンタの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係るキッチンカウンタの斜視図、図2はキッチンカウンタの側面図である。キッチンカウンタ10は、内部に収納空間が形成され、前面に収納空間を開閉する扉11等が設けられたキャビネット部13と、このキャビネット部13の上部に設けられた天板14と、この天板14に設けられたシンク15と、同じく天板14に設けられたガスコンロやIHヒーター等の加熱調理器16とを備えている。
【0017】
天板14の左右方向両側には、開口18、19が形成され、一方(右側)の開口18には加熱調理器16が装入され、他方(左側)の開口19には、シンク15が装入されている。この加熱調理器16とシンク15とは、室内におけるキッチンカウンタ10の配置等に応じて左右の配置が適宜変更される。
【0018】
本実施形態の天板14は、アクリル系やポリエステル系等の樹脂材料に無機充填剤や硬化剤等を配合して硬化させた樹脂含有成形体からなる人工大理石が使用されている。また、天板14は、平面視で長方形状に形成されており、キャビネット部13の左右方向の幅に亘る左右方向幅と、キャビネット部13の前後方向の幅を超えてさらに後側(図1において使用者が立つ側を前側とした場合の後側)に張り出す前後方向幅とを有している。
【0019】
天板14の裏面側には、当該天板14を補強するための補強部材21が設けられている。この補強部材21は、パイプ材やフラットバー等の金属製の長尺材から構成され、左右方向に間隔をあけて複数本(図示例では3本)設けられている。各補強部材21は、天板14におけるキャビネット部13の上方領域R1と、キャビネット部13から後側へ張り出す張り出し部22の領域R2とに亘る範囲で前後方向に沿って配置されている。なお、本実施形態では、曲げ剛性の向上と軽量化とを図るために補強部材21としてパイプ材(角パイプ)が用いられている。
【0020】
図3は、図1のA部で示す部分の天板14の底面図である。天板14の裏面側には、補強部材21の他に裏貼材23A,23Bが設けられ、この裏貼材23A,23Bは天板14を補強する機能を有する。この裏貼材23A,23Bは、合板等の木材や合成樹脂材により形成された断面矩形状の帯板材又はブロック材等からなり、補強部材21の配置箇所と開口18,19とを除く範囲で略口型又は略目型に枠組みされている。また、裏貼材23A,23Bは、キャビネット部13の上方領域R1と張り出し部22の領域R2との各領域に区画されて個別に設けられている。
【0021】
図4は、図3のIV−IV断面図であり、図5は、図3のV−V断面図である。
図3及び図4に示すように、キャビネット部13の上方領域R1において、補強部材21の左右両側には間隔をあけて裏貼材23Aが設けられており、この間隔には接着剤24が充填され、この接着剤24によって天板14に補強部材21が接着されている。この接着剤24としては、ウレタン系やシリコーン系の接着剤が使用されている。
【0022】
図3に示すように、接着剤24の充填範囲は、張り出し部22とは反対側の補強部材21の端部側(前端部側)であって、補強部材21の長さL1の略1/3の範囲L2とされている。接着剤24が充填される範囲L2の張り出し部22側の端部には堰き止め部材26が設けられている。
【0023】
図3及び図5に示すように、張り出し部22の領域R2において、補強部材21の左右一方側には裏貼材23Bが当接するように配置され、左右他方側には間隔をあけて裏貼材23Bが設けられている。この左右一方側の裏貼材23Bに補強部材21を当接させることにより、当該補強部材21の位置決めを容易に行うことができる。
また、張り出し部22の領域R2において、補強部材21及び裏貼材23Bの下面には化粧パネルからなるカバー部材27が設けられており、このカバー部材27によって補強部材21及び裏貼材23Bが外部に露出しないように覆われている。
【0024】
以上の構成において、本実施形態の天板14には、特に張り出し部22の補強のために、キャビネット部13の上方領域R1と張り出し部22の領域R2とに亘って配置された長尺の補強部材21が設けられているので、従来のようにL字型の補強部材103(図10参照)を使用しなくても、好適に天板14を補強することができ、この補強部材21が天板14の下面から大きく突出することもない。そのため、補強部材21を覆うカバー部材27によって外観を損なうこともない。
【0025】
また、天板14は人工大理石であるのに対して、補強部材21は金属製であり、両者の線膨張係数(熱膨張率)が異なっている。そのため、温度変化による膨張・収縮量が互いに異なり、補強部材21と天板14との接着部において、温度変化に伴うバイメタル現象により天板14に反りが生じる可能性がある。しかしながら、本実施形態では、天板14と補強部材21とは、当該補強部材21の長さの一部、具体的には略1/3の範囲L2のみで接着されているので、温度変化による天板14の反りの発生を可及的に抑制することができる。
【0026】
特に、補強部材21は、張り出し部22の領域R2においては天板14に接着されておらず、キャビネット部13の上方領域R1において天板14に接着されているので、張り出し部22における反りの発生を確実に抑制することができ、さらに、補強部材21は、張り出し部22から最も離れた端部において天板14に接着されているので、張り出し部22における反りの発生をより確実に抑制することができる。
【0027】
また、補強部材21は、裏貼材23Aとの間に形成された隙間に接着剤24を充填することによって天板14の裏面に接着されている。したがって、裏貼材23Aによって接着剤24の充填スペースを区画形成することができ、この充填スペースに接着剤を充填することによって補強部材を天板の裏面に接着することができるので、当該接着作業を容易に行うことができる。
【0028】
図6は、キッチンカウンタの分解斜視図、図7は、キッチンカウンタ10の背面図、図8は、背面パネル31の裏面(接着面)を示す正面図である。
キッチンカウンタ10のキャビネット部13は、収容空間を形成する本体部29と、本体部29の側面を覆う側面パネル30と、背面を覆う複数枚の背面パネル31と、この背面パネル31の下地材32とを備えている。また、図2に示すように、本体部29の前面には例えば木質調の表面を有する扉11が設けられ、背面パネル31の表面も扉表面と同意匠とされている。
【0029】
図8に示すように、背面パネル31の裏面には、格子状に両面テープ35が貼付されるとともに、その外側及び内側にシリコーン系の接着剤34が塗布され、これらシリコーン系の接着剤34と両面テープ35とによって背面パネル31が下地材32に接着されている。また、図7に示すように、各背面パネル31の隙間には、エッジ材36が設けられている。
【0030】
従来、背面パネル31は、扉11と同意匠にするために、扉11と同一の材料を用いて構成されており、そのため肉厚が厚く(15〜20mm程度)、重量も大きくなり、運搬やカット作業等の取り扱いが煩雑であった。また、下地材32に対する取り付けも、接着剤や両面テープだけでなくネジによる固定が必要であった。また、扉11と比べてサイズも大きいことから非常に高価であった。
【0031】
これに対して本実施形態では、背面パネル31として薄肉(例えば厚さ3mm程度)の化粧面材を使用しており、低コストで大型化が可能であり、背面パネル31間の隙間を可及的に小さくして、外観を向上することができるという利点がある。また、下地材32に対する接着もネジ等を使わずに接着剤34や両面テープ35で行うことができるので、この点においてもコストを下げることが可能となっている。
【0032】
図9は、補強部材の他の実施形態を示す断面図である。上記実施形態では、補強部材21としてパイプ材を用いていたが、これに限らず図9に例示するような形鋼材(軽量形鋼を含む)を用いることができる。図9(a)は、補強部材21として溝形鋼を使用したもの、図9(b)は、同じくH形鋼を使用したもの、図9(c)は、同じくリップ溝形鋼を使用したものである。これらの例においてもパイプ材を用いた場合と同様に、補強部材21の曲げ剛性の向上と軽量化とを図ることができ、天板の支持強度を十分に確保することができる。図9に示すもの以外に山形鋼、I形鋼、ハット形鋼等の他の形鋼を補強部材21として使用することもできる。
【0033】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
例えば、上記実施形態では、補強部材21は、張り出し部22とは反対側の前端部において天板14に接着されているが、長さ方向の中途部や、後端部(張り出し部22の領域R2内)において接着されていてもよい。また、上記実施形態では、補強部材21の接着長さを全体長さの略1/3としていたが、天板14の支持強度(補強強度)が確保できる限りにおいて、これよりも長く又は短くすることが可能である。また、天板14に対する補強部材21の固定は、接着剤24に限らずネジ止め等の他の手段であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10: キッチンカウンタ
13: キャビネット部
14: 天板
21: 補強部材
22: 張り出し部
23: 裏貼材
24: 接着剤
27: カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット部と、
前記キャビネット部の上部に設けられ、かつ前記キャビネット部から張り出す張り出し部を有する天板と、
前記天板とは線膨張係数の異なる材質で形成され、前記天板における前記キャビネット部の上方領域と前記張り出し部の領域とに亘って前記天板の裏面に設けられた補強部材と、を備えており、
前記補強部材が、その長さ方向の一部において前記天板に固定されていることを特徴とするキッチンカウンタ。
【請求項2】
前記補強部材が、前記天板における前記キャビネット部の上方領域内で前記天板に固定されている請求項1に記載のキッチンカウンタ。
【請求項3】
前記補強部材が、前記張り出し部とは反対側の端部において前記天板に固定されている請求項2に記載のキッチンカウンタ。
【請求項4】
前記天板が人工大理石であり、前記補強部材が金属製である請求項1〜3のいずれかに記載のキッチンカウンタ。
【請求項5】
前記補強部材がパイプ材である請求項1〜4のいずれかに記載のキッチンカウンタ。
【請求項6】
前記補強部材の両側部に間隔をあけて裏貼材が設けられ、前記補強部材と前記裏貼材との間に、前記補強部材を前記天板の裏面に固定するための接着剤が充填されている請求項1〜5のいずれかに記載のキッチンカウンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−83324(P2011−83324A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236495(P2009−236495)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000108661)タカラスタンダード株式会社 (51)
【Fターム(参考)】