説明

キッチン部材

【課題】汚れの低付着性と、水による易洗浄性とを兼ね備えたキッチン部材を提供する。
【解決手段】キッチン部材1の表面に、構造中に下記式(a)で表される親水性基5と、下記式(b)で表される撥油性基とを有するフッ素系オリゴマー3を含有する樹脂組成物を塗布成膜した被膜2を形成する。
CF3−(CF2n− …(a)
R−(O−CH2−CH2m− …(b)
但し、式(a)中のnは1〜20の整数を示す。また、式(b)中のRはCH3又はHを示し、mは1〜100の整数を示す。このため、被膜2の表面に撥水性基4と親水性基5とが分布する。撥水性基4の表面エネルギーが低いことから被膜2が静的な撥油性を発揮して汚れが付着しにくくなる。また親水性基5が存在することから被膜2に汚れが付着した場合には被膜2と汚れとの間に水が浸入しやすくなり、汚れを浮き上がらせて容易に除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンパネル、レンジフード、ガステーブル、厨房用加熱調理器等のキッチン部材に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン部材に対する防汚表面処理としては、ターゲットとする汚れに応じて、撥水撥油性、親水親油性等の性質を有する塗膜が適宜形成されている。例えば調理器具や厨房家具類にフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の撥水撥油性塗装がを施したもの(特許文献1,2参照)や、キッチンシンクやレンジフードのフィルタに親水親油塗装を施したもの(特許文献3〜5参照)等がある。
【特許文献1】特開2000−342359号公報
【特許文献2】特開2006−130743号公報
【特許文献3】特開2001−173058号公報
【特許文献4】特開2001−152367号公報
【特許文献5】特開2006−292326号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の撥水撥油塗装や親水親油塗装には、それぞれ長所と短所があり、充分な防汚性を発揮することができない場合がある。すなわち撥水撥油塗装は、優れた非粘着性と低付着性とを有し、汚れが付着しにくいものであるが、水と油が混じった複合的な汚れが付着すると、水によって油が押し広げられて拭き取りにくくなってしまう。また親水親油塗装の場合は水による易洗浄性に優れ、油汚れも水洗すれば除去しやすいが、汚れが固着してしまっている場合には除去しにくくなるという問題がある。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、汚れの低付着性と、水による易洗浄性とを兼ね備えたキッチン部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係るキッチン部材1は、構造中に下記式(a)で表される撥水性基4と、下記式(b)で表される親水性基5とを分子内に複数有するフッ素系オリゴマー3を含有する樹脂組成物を塗布成膜した塗膜が表面に形成されていることを特徴とする。
【0006】
CF3−(CF2n− …(a)
R−(O−CH2−CH2m− …(b)
但し、式(a)中のnは1〜20の整数を示す。また、式(b)中のRはCH3又はHを示し、mは1〜100の整数を示す。
【0007】
このため、被膜2の表面に上記式(a)で示される撥水性基4と式(b)で示される親水性基5とが分布し、式(a)で示される撥水性基4の表面エネルギーが低いことから被膜2が静的な撥油性を発揮して汚れが付着しにくくなると共に、式(b)で示される親水性基5が存在することから被膜2に汚れが付着した場合には被膜2と汚れとの間に水が浸入しやすくなり、汚れを浮き上がらせて容易に除去することが可能となる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記式(b)におけるRがHであることを特徴とする。
【0009】
この場合、式中のRがCH3である場合よりも被膜2の親水性が優れたものとなり、水による易洗浄性が更に向上する。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、上記フッ素系オリゴマー3中における、上記式(a)で表される撥水性基4と、上記式(b)で表される親水性基5との、前者対後者のモル比が、50:50〜5:95であることを特徴とする。
【0011】
この場合、親水性基5の量を充分に確保して水による易洗浄性の効果を充分に発揮させると共に、撥油性基の量を充分に確保することでフッ素系オリゴマー3の被膜2中への沈み込みを抑制して塗膜の表面近傍におけるフッ素系オリゴマー3の分布量を充分に維持し、親水性の効果を充分に発揮させることができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、上記樹脂組成物が、紫外線硬化型又は放射線硬化型のアクリル樹脂であることを特徴とする。
【0013】
この場合、被膜2形成のための硬化過程においてフッ素系オリゴマー3中の親水性基5が硬化性樹脂との反応で消費されることを防止して被膜2の親水性を維持すると共に、高架橋密度による強固な被膜2を形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、親水性基5と撥水性基4とを併せ持つ被膜2をキッチン部材1の表面に形成することで、汚れの低付着性と水により易洗浄性とが共に優れたキッチン部材1を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施をするための最良の形態について説明する。
【0016】
本発明に係るキッチン部材1は、その表面に、フッ素系オリゴマー3を含有する樹脂組成物を塗布成膜した塗膜が形成されている。
【0017】
キッチン部材1には、キッチンパネル、レンジフード、ガステーブル、厨房用加熱調理器等のような、台所に設置され、或いは台所で使用される種々の部材や器具が含まれる。
【0018】
フッ素系オリゴマー3を含有する樹脂組成物としては、前記フッ素系オリゴマー3を必須成分とし、必要に応じてこの樹脂組成物を硬化成膜可能にするための硬化性樹脂を含有させる。
【0019】
上記樹脂組成物に含有されるフッ素系オリゴマー3は、構造中に下記式(a)で表される撥水性基4と、下記式(b)で表される親水性基5とを分子内に複数有する
CF3−(CF2n− …(a)
R−(O−CH2−CH2m− …(b)
式(a)中のnは1〜20の整数を示す。また、式(b)中のRはCH3又はHを示し、mは1〜100の整数を示す。
【0020】
特に式(b)中のRがHであれば、CH3の場合よりも親水性に優れ、水による易洗浄性が更に高くなる。
【0021】
ここで、式(a)中のnの値を1〜20とするのはフッ素系オリゴマー3により被膜2に充分な撥水性を付与すると共にフッ素系オリゴマー3と他の成分との相溶性を確保するためであり、この値が20を超えるとフッ素系オリゴマー3を組成物中に充分に溶解させることが困難となる。また、式(b)中のmの値を1〜100とするのはフッ素系オリゴマー3により被膜2に充分な親水性を付与すると共に組成物中でフッ素系オリゴマー3がゲル化せずに安定して存在ようにするためであり、この値が100を超えると組成物中でフッ素系オリゴマー3がゲル化して安定して存在し得ないおそれがある。
【0022】
また、このフッ素系オリゴマー3には、アクリロイル基、アルコキシシリル基等の結合性ユニットや、ジメチルシロキサン鎖等の滑り性付与ユニットが含まれていても良い。
【0023】
このようなフッ素系オリゴマー3としては、適宜の構造のものを挙げることができるが、例えば下記式(A)で示される構成単位と、下記式(B)で示される構成単位とで構成される共重合体を挙げることができる。
【0024】
【化1】

【0025】
ここで、式(A)中のRfは上記式(a)で示される撥水性基4を示し、R1はH又はCH3を示す。また、式(B)中のEOは上記式(b)で示される親水性基5を示し、R2はH又はCH3を示す。
【0026】
このようなフッ素系オリゴマーは適宜の単量体を共重合して定法により合成することができるが、例えば式(A)で示される構成単位を得るための単量体としてはHO(C24O)4(C36O)8(C24O)4COCH=CH2、HO(C24O)4(C36O)8(C24O)4COC(CH3)=CH2、HO(C24O)10(C36O)20(C24O)10COCH=CH2、HO(C24O)10(C36O)20(C24O)10COC(CH3)=CH2、HO(C24O)20(C36O)40(C24O)20COCH=CH2、HO(C24O)20(C36O)40(C24O)20COC(CH3)=CH2、CH2=CHCOO(C24O)4(C36O)8(C24O)4COCH=CH2、CH2=C(CH3)COO(C24O)4(C36O)8(C24O)4COC(CH3)=CH2、CH2=CHCOO(C24O)10(C36O)20(C24O)10COCH=CH2、CH2=C(CH3)COO(C24O)10(C36O)20(C24O)10COC(CH3)=CH2、CH2=CHCOO(C2H4O)20(C36O)40(C24O)20COCH=CH2、CH2=C(CH3)COO(C24O)20(C36O)40(C24O)20COC(CH3)=CH2等を挙げることができる。
【0027】
また、式(B)で示される構成単位を得るための単量体としてはC817CH2CH2OCOCH=CH2、C817CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C1021CH2CH2OCOCH=CH2、C1021CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C1225CH2CH2OCOCH=CH2、C1225CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C613CH2CH2OCOCH=CH2、C613CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C817CH2CH2CH2OCOCH=CH2、C817CH2CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、C817CH2CH2CH(CH3)OCOCH=CH2、C817CH2CH2CH(CH3)OCOC(CH3)=CH2、C49CH2CH2OCOCH=CH2、C49CH2CH2OCOC(CH3)=CH2等を挙げることができる。
【0028】
また、このフッ素系オリゴマー3の、ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量Mwは、好ましくは1000〜100000の範囲、更に好ましくは3000〜100000の範囲となるようにする。このMwが1000に満たないと充分な表面張力低下能力が得られず、均一な膜を形成することが困難となるおそれがあり、またこのMwが100000を超えると組成物中のフッ素系オリゴマー3と他の成分との相溶性が充分ではなくなるおそれがある。
【0029】
また、このようなフッ素系オリゴマー3における、上記式(a)で示される撥水性基4と、上記式(b)で示される親水性基5との、前者対後者のモル比(Rf:EO)は、50:50〜5:95の範囲であることが好ましい。この範囲において、被膜2の水による易洗浄性を特に向上することができる。これに対して、親水性基5に対する撥水性基4の比率が前記範囲よりも大きいと、親水性基5が少なくなるため、水による易洗浄性の効果が充分には発揮されなくなるおそれがある。また、親水性基5に対する撥水性基4の比率が前記範囲よりも小さいと、フッ素系オリゴマー3が被膜2中に沈み込みやすくなって、塗膜の表面近傍におけるフッ素系オリゴマー3の分布量が少なくなり、親水性の効果が充分に発揮されなくなるおそれがある。また、Rf:EOが30:70〜10:90の範囲であると、汚れの低付着性や易洗浄性を更に向上することができる。
【0030】
このようなフッ素系オリゴマー3は、樹脂組成物の固形分量に対して0.1〜20重量%の範囲で含有することが好ましい。この範囲において、充分な被膜2強度を維持しつつ、高い易洗浄性を発揮することができる。これに対して、前記含有量が20重量%に満たないと充分な易洗浄性が得られないおそれがあり、また20重量%を超えると充分な被膜2強度が得られないおそれがある。
【0031】
硬化性樹脂としては、特にその種類は制限されないが、硬化過程においてフッ素系オリゴマー3中の親水性基5(OH基)と反応せず、且つ高架橋密度の被膜2を形成可能なものを用いることが好ましく、特に紫外線硬化型又は放射線硬化型のアクリル樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
このようなアクリル樹脂としては、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレートなどの光硬化性(メタ)アクリレート系モノマーを重合して得られる樹脂が挙げられる。
【0033】
また、アクリル樹脂と併用される光重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを生成する一般的な開始剤を挙げることができる。具体的な化合物としては、例えばベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチルチオキサントン等が挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの光重合開始剤は、一種単独で用いるほか、複数種を併用することができる。
【0034】
このような硬化性樹脂は、樹脂組成物の固形分量に対して80〜99.9重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0035】
また、上記光重合開始剤と共に、ジ−n−ブチルアミン、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンテトラミン等の増感剤を使用することもできる。
【0036】
また、この樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整等のためにメチルエチルケトン等の溶剤を加えたり、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、密着助剤等の適宜の添加剤を添加することもできる。
【0037】
このような樹脂組成物をカーテンコータ、ロールコータ等の適宜の手法によりキッチン部材1の表面に塗布した後、硬化成膜して、被膜2を形成する。樹脂組成物の硬化成膜は、この樹脂組成物中の硬化性樹脂の種類に応じた適宜の手法により行うことができ、すなわち硬化性樹脂が紫外線硬化型又は放射線硬化型のアクリル樹脂である場合には、紫外線又は適宜の放射線を照射することで硬化成膜することができる。このとき、被膜2の膜厚は1〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0038】
このようにキッチン部材1の表面に形成された被膜2では、図1に模式的に示すように、この被膜2の表面に上記式(a)で示される撥水性基4と式(b)で示される親水性基5とが分布する。このような被膜2では、式(a)で示される撥水性基4の表面エネルギーが低いため、この被膜2が静的な撥油性を発揮し、汚れが付着しにくくなる。また、式(b)で示される親水性基5が存在するため、被膜2に汚れが付着した場合には被膜2と汚れとの間に水が浸入しやすくなり、汚れを浮き上がらせて容易に除去することが可能となる。このように、式(a)に示される撥水性基4と式(b)で示される親水性基5との作用によって、汚れの低付着性と水による易洗浄性とを実現することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の具体的な実施例を示すことで本発明を更に詳述する。
【0040】
(実施例1)
上記式(a)で表される撥水性基4と式(b)で表される親水性基5とを分子内に複数有し、式(b)中のRがHであり、且つRf:EOが15:85であるフッ素系オリゴマー3(AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS−385」、固形分20%)23.4gと、硬化性樹脂としてアクリルウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ユニディック17−806」、固形分85%)100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート8.5gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキユアー184」)5gとを混合した。これに、メチルエチルケトンを300g加えて、10分間攪拌した。
【0041】
このようにして得られた樹脂組成物を、平面視10cm×15cmの寸法のアクリル板の表面にスプレー塗布した後、60℃の雰囲気下で15分間加熱乾燥し、更に紫外線硬化装置を用いて紫外線を照射し、厚み5μmの被膜2を形成した。
【0042】
(実施例2)
上記式(a)で表される撥水性基4と式(b)で表される親水性基5とを分子内に複数有し、式(b)中のRがHであり、且つRf:EOが37:63であるフッ素系オリゴマー3(AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンS−383」、固形分100%)4.68gと、硬化性樹脂としてアクリルウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ユニディック17−806」、固形分85%)100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート8.5gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキユアー184」)5gとを混合した。これに、メチルエチルケトンを300g加えて、10分間攪拌した。
【0043】
このようにして得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして被膜2を形成した。
【0044】
(実施例3)
上記式(a)で表される撥水性基4と式(b)で表される親水性基5とを分子内に複数有し、式(b)中のRがHであり、且つRf:EOが67:33であるフッ素系オリゴマー3(AGCセイミケミカル株式会社製「サーフロンKH−40」、固形分100%)4.68gと、硬化性樹脂としてアクリルウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ユニディック17−806」、固形分85%)100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート8.5gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキユアー184」)5gとを混合した。これに、メチルエチルケトンを300g加えて、10分間攪拌した。
【0045】
このようにして得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして被膜2を形成した。
【0046】
(比較例1)
アクリルウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ユニディック17−806」、固形分85%)100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート8.5gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキユアー184」)5gとを混合した。これに、メチルエチルケトンを300g加えて、10分間攪拌した。
【0047】
このようにして得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして被膜2を形成した。
【0048】
(比較例2)
式(a)に示す撥油性基を含まず且つ式(b)に示す親水性基5を含むビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン(ライオン株式会社製「エソミンC/12」)4.68gと、アクリルウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ユニディック17−806」、固形分85%)100gと、ペンタエリスリトールトリアクリレート8.5gと、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製「イルガキユアー184」)5gとを混合した。これに、メチルエチルケトンを300g加えて、10分間攪拌した。
【0049】
このようにして得られた樹脂組成物を用い、実施例1と同様にして被膜2を形成した。
【0050】
(油ハジキ性評価)
接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、型式:CA−A)を用い、各実施例及び比較例で得られた被膜2表面での、オレイン酸(ナカライテスク株式会社製)の接触角を測定した。この測定結果を油ハジキ性の指標とし、下記表1に示す。
【0051】
(油拭取り性試験)
各実施例及び比較例で形成された被膜2表面に、オレイン酸とイソプロピルアルコールを1:5の比率で混合した混合液を10g/m2の塗布量でスプレー塗布した後、60℃の雰囲気下で15分間加熱乾燥することでイソプロピルアルコールのみを揮発させた。この被膜2表面を、日本製紙クレシア株式会社製の商品名「キムタオル」で水拭きした後、被膜2の表面を目視で観察した。この観察結果に基づいて油除去の程度を下記判断基準で判断し、下記表1に示す。
◎:油残りが殆ど観測されない。
○:油残りが少し観測される。
×:油残りが全体に観測される。
【0052】
【表1】

【0053】
この結果、実施例1〜3では比較例1,2よりも優れた油ハジキ性を有すると共に、油拭取り性も良好であり、汚れの低付着性と、水による易洗浄性とを兼ね備えていることが確認できた。このうち、フッ素系オリゴマー3中におけるRf:EOが50:50〜5:95である実施例1,2では、特に優れた結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0055】
1 キッチン部材
2 被膜
3 フッ素系オリゴマー
4 撥水性基
5 親水性基

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造中に下記式(a)で表される撥水性基と、下記式(b)で表される親水性基とを分子内に複数有するフッ素系オリゴマーを含有する樹脂組成物を塗布成膜した被膜が表面に形成されていることを特徴とするキッチン部材。
CF3−(CF2n− …(a)
(但し、nは1〜20の整数を示す。)
R−(O−CH2−CH2m− …(b)
(但し、RはCH3又はHを示し、mは1〜100の整数を示す)
【請求項2】
上記式(b)におけるRがHであることを特徴とする請求項1に記載のキッチン部材。
【請求項3】
上記フッ素系オリゴマー中における、上記式(a)で表される撥水性基と、上記式(b)で表される親水性基との、前者対後者のモル比が、50:50〜5:95であることを特徴とする請求項1又は2に記載のキッチン部材。
【請求項4】
上記樹脂組成物が、紫外線硬化型又は放射線硬化型のアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のキッチン部材。

【図1】
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【公開番号】特開2009−127015(P2009−127015A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306609(P2007−306609)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】