説明

キナゾリン誘導体及びその製造方法

【課題】医薬品、特に癌の治療および予防薬の製造中間体として有用な新規なキナゾリン誘導体、及びその工業的に有用な製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)
【化1】


〔式中、各記号は明細書の記載と同義である。〕で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物とそれらを用いた新規キナゾリン誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品および生理活性物質の合成中間体、特に癌の治療および予防薬の製造中間体として有用な新規なキナゾリン誘導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(1a)
【0003】
【化1】

【0004】
{式中、各記号は、例えば、mは1又は2の整数を、Rはハロゲン原子を、R’、R''のいずれか一方は、
【0005】
【化2】

【0006】
(式中、Xは−C(O)−を表し、R、RおよびRはそれぞれ独立して、置換されていても良いC〜Cアルキルを表す。)を、R、Rの残りの一方が、
【0007】
【化3】

【0008】
[式中、m’は0〜3の整数を表し、R,Rはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC〜Cアルキルを表し、R11、R12はそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cアルキルを表し、Yは、
【0009】
【化4】

【0010】
(式中、pおよびqはそれぞれ独立して2もしくは3の整数を表し、Zは−O−、又はカルボニルを表す。)を表す。]である。}で表されるようなキナゾリン誘導体が、EGF受容体とHER2受容体の双方に対する阻害作用(デュアル阻害作用)を示し、癌細胞増殖抑制作用を有することが知られている(特許文献1参照)。
【0011】
このようなキナゾリン誘導体の一般的な合成例として、Pd等の金属試薬の存在下、R’がニトロ基若しくはアミノ基、R’’が塩素原子若しくは臭素原子であるキナゾリン化合物と、置換されたアルキン化合物とを反応させ、アルキニルキナゾリン誘導体とした後、対応するアミノ体へと変換後、ビニルアミドへと誘導する例が知られている。
【0012】
上記の方法では、キナゾリン化合物とアルキン化合物とを結合する反応は、高温条件下で行なわれる。
【0013】
また、Pd触媒を用いた炭素−炭素結合生成反応において、室温付近での反応条件が種々検討されているが、いずれも高価で不安定な試薬を使用している(非特許文献1参照)。そのため、この反応を工業的スケールで行うには、試薬の入手や取り扱いが容易な手法を見いだす必要があった。
【0014】
上記以外にも、アミノキナゾリン誘導体からビニルアミドキナゾリン誘導体へと変換する工程の収率が十分満足できるものではなかった。
アミノキナゾリン誘導体のアミノ基をビニルアミド化する際の収率は、一般的に低収率である事が知られている(非特許文献2、3参照)。これはビニル基による重合化が原因ではないかと推測されており、オキサゾリジノン誘導体における同様の反応に関して、その詳細が報告されている(非特許文献4、5参照)。
【0015】
以上の事から、ビニルアミドキナゾリン誘導体を工業的スケールで製造するためには、アルキニルキナゾリン誘導体の合成法に加え、ビニルアミド基の構築をより高収率で行う手法を見いだす必要があった。
【特許文献1】WO02/066445国際公開公報
【非特許文献1】Org. Lett., 2000, 2, 1729.
【非特許文献2】J. Med. Chem., 1999, 42, 1803.
【非特許文献3】J. Med. Chem., 2000, 43, 1387.
【非特許文献4】Tetrahedron Lett., 1996, 52, 13523.
【非特許文献5】J. Org. Chem., 1995,60,2271.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
一般式(1a)で表されるようなキナゾリン誘導体を工業的に製造にするには上記のような課題を解決することが必要である。
【0017】
即ち、本発明の課題は、(1)キナゾリン化合物とアルキン化合物との反応条件を緩和にすること、及び(2)ビニルアミド基をより高収率で構築することにより、工業的に有利な製造方法を提供すること、並びに当該製造方法における新規な合成中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
Pd触媒の酸化的付加反応において、SP2炭素で置換された有機ハロゲン化物では対応するヨード体がブロモ体及びクロロ体よりも反応性が高いことが知られている(Palladium Reagent and Catalysts, Tsuji, J. Eds.; John Wiley & Sons: Chichester, 1995; Chapter 1)。
本発明者らは、一般式(I)
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、mは0〜3の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、−S(O)12(式中、fは0〜2の整数を表し、R12はC〜Cアルキル基を表す。)、−NR1314(式中、R13及びR14はそれぞれ独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルカノイル基、又はC〜Cアルキルスルホニル基を表す。)、C〜Cアルケニル基、又は、C〜Cアルキニル基を表し、R、Rの何れか一方は、下記一般式(II)
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12のアラルキル基、又は置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表し、Rは−SO15、−SOR15、又は、−OR15(式中、R15は置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12アラルキル基、又は、置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表す。)を表し、R、Rの残りの一方がヨウ素原子を表す。ただし、mが2又は3を表す場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表されるキナゾリン誘導体と一般式(VII)
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R8a、R9aはそれぞれ独立して、水素原子、又は水酸基若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基を表わし、pは0〜3の整数を表し、R10a、R11aはそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cアルキル基を表し、Yaは水素原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルカノイルオキシ基、4位に置換されていてもよいC〜Cアルキル基を有するピペラジン−1−イル又は置換されていてもよいC〜Cアルキルで2置換されたアミノを表す。)で表されるアルキン化合物とを反応させることを検討した。
その結果、対応するヨード体を用いることにより、クロル体及びブロモ体と比較して、より工業的に有利な条件で、キナゾリン化合物(I)とアルキン化合物(VII)とのカップリング反応を行うことに成功した。
【0025】
また、本発明者らは、ビニルアミドキナゾリン誘導体を製造する際に、ビニルアミドキナゾリン誘導体の重合化を抑制すること等による収率向上を試みた。即ち、一般式(VIII)
【0026】
【化8】

【0027】
{式中、m’及びR1aは前記一般式(I)のm及びR1と同義であり、R16及びR17の何れか一方は、下記一般式(IX)
【0028】
【化9】

【0029】
[式中、R4a、R5a、及びR6aは前記一般式(II)と同義であり、R7aは−SO15、−SOR15又は−OR15(式中、R15は置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12アラルキル基、又は置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表す。)を表す。]を表し、R16及びR17の残りの一方が、下記一般式(X)
【0030】
【化10】

【0031】
(式中、各記号は前記一般式(VII)と同義である。)を表す。}で表される化合物のようなβ位に脱離能を有する官能基で置換されたキナゾリン誘導体を製造した後、一般式(XI)
【0032】
【化11】

【0033】
[式中、m’及びR1aは前記一般式(VIII)と同義であり、R18及びR19の何れか一方は、−NHCO−CR4a=CR5a6a(式中、R4a、R5a、及びR6aは前記一般式(IX)と同義である。)を表し、R18及びR19の残りの一方が、下記一般式(XII)
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、各記号は前記一般式(X)と同義である。)を表す。]で表されるビニルアミドキナゾリン誘導体に変換するのを検討した結果、高収率かつ緩和な条件で変換反応を行うことに成功し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、例えば、癌の治療薬等の医薬品の製造中間体となり得る新規なキナゾリン誘導体を提供することが出来る。また、このキナゾリン誘導体を用いることにより、医薬品の効率よい製造方法を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
即ち、本発明の要旨は、下記(1)ないし(24)に関する。
(1)下記一般式(I)
【0038】
【化13】

【0039】
[式中、mは0〜3の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、−S(O)12(式中、fは0〜2の整数を表し、R12はC〜Cアルキル基を表す。)、−NR1314(式中、R13およびR14はそれぞれ独立して水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルカノイル基又はC〜Cアルキルスルホニル基を表す。)、C〜Cアルケニル基、又は、C〜Cアルキニル基を表し、R、Rの何れか一方は、下記一般式(II)
【0040】
【化14】

【0041】
(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12のアラルキル基、又は、置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表し、Rは−SO15、−SOR15、又は、−OR15(式中、R15は置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12アラルキル基、又は、置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表す。)を表し、R、Rの残りの一方がヨウ素原子、又は、下記式(III)
【0042】
【化15】

【0043】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は、水酸基若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基を表わし、pは0〜3の整数を表し、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cアルキル基を表し、Yは水素原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルカノイルオキシ基、4位に置換されていてもよいC〜Cアルキル基を有するピペラジン−1−イル、又は、置換されていてもよいC〜Cアルキルで2置換されたアミノを表す。)を表す。ただし、mが2又は3を表す場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【0044】
(2)mが2であり、Rがハロゲン原子であり、Rが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又は、メチルチオ基を表す。)であり、Rがヨウ素原子、又は、下記一般式(IV)
【0045】
【化16】

【0046】
(式中、R8’、R9’はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基であり、Y’はモルホリノ基、又は4−メチルピペラジン−1−イルを表す。)である前記(1)に記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【0047】
(3)以下の化合物からなる群より選ばれる、前記(1)又は(2)の何れかに記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物:N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド。
【0048】
(4)化合物がN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである前記(3)に記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【0049】
(5)下記一般式(V)
【0050】
【化17】

【0051】
[式中、m及びRは前記(1)と同義であり、R2a、R3aの何れか一方は、前記(1)の一般式(II)と同義であり、R2a、R3aの残りの一方がヨウ素原子を表す。]で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物と、下記一般式(VI)
【0052】
【化18】

【0053】
(式中、各記号は前記(1)の一般式(III)と同義である。)で表される化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を反応させ、前記(1)記載の一般式(I)で表されるキナゾリン誘導体[ただし、R又はRの何れか一方は前記(1)の一般式(II)を表し、R又はRの残りの一方は前記(1)の一般式(III)を表す。]若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を製造する方法。
【0054】
(6)mが2であり、Rがハロゲン原子であり、R2aが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又は、メチルチオ基を表す。)であり、R3aがヨウ素原子である前記(5)に記載の製造方法。
【0055】
(7)一般式(V)で表されるキナゾリン誘導体が、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、又はN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミドである前記(5)に記載の製造方法。
【0056】
(8)キナゾリン誘導体がN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである前記(7)に記載の製造方法。
【0057】
(9)前記(1)から(4)のいずれかに記載の化合物を用いて下記一般式(VII)
【0058】
【化19】

【0059】
[式中、m、Rは前記(1)と同義であり、R16、R17の何れか一方は、−NHCO−CR=CR(式中、R、R、及びRは前記(1)と同義である。)を表し、R16、R17の残りの一方が、前記(1)の一般式(III)で表される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を製造する方法。
【0060】
(10)mが2であり、Rがハロゲンであり、Rが−NHCO−CHCH−Rであり、R16が−NHCO−CH=CHであり、R及びR17が前記(2)記載の一般式(IV)である前記(9)に記載の製造方法。
【0061】
(11)R8’、R9’がそれぞれ独立してメチル基であり、Y’が4−メチルピペラジン−1−イルである前記(10)記載の製造方法。
【0062】
(12)前記(5)から(11)の何れかに記載の製造方法を含む、前記(9)記載の一般式(VII)で表される化合物もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物の製造方法。
【0063】
(13)mが2であり、Rがハロゲンであり、Rが−NHCO−CHCH−Rであり、R16が−NHCO−CH=CHであり、R及びR17が前記(2)記載の一般式(IV)である前記(12)に記載の製造方法。
【0064】
(14)R8’、R9’がそれぞれ独立してメチル基であり、Y’が4−メチルピペラジン−1−イルである前記(12)に記載の製造方法。
【0065】
(15)下記一般式(VIII)
【0066】
【化20】

【0067】
[式中、R18、R19の何れか一方は、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、又は−NHCO−CHCH−R7’(式中、R7’はメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又はメチルチオ基を表す。)を表し、R18、R19の残りの一方はヨウ素原子を表し、R20は水素原子、3,4−ジメトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル基、又はトリフルオロアセチル基を表す。]で表される化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【0068】
(16)以下の化合物からなる群から選ばれる、前記(15)に記載の化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物:7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−6−ニトロ−4−キナゾリノン、6−アミノ−7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−キナゾリノン、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド。
【0069】
(17)化合物が7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−6−ニトロ−4−キナゾリノン、6−アミノ−7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−キナゾリノン、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである前記(16)に記載の化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【0070】
(18)前記(15)から(17)のいずれかに記載の化合物を用いた、前記(1)記載の一般式(I)の化合物の製造方法。
【0071】
(19)mが2であり、Rがハロゲン原子であり、Rが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又はメチルチオ基を表す。)であり、Rがヨウ素原子、又は下記一般式(IV)
【0072】
【化21】

【0073】
(式中、R8’、R9’はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基であり、Y’はモルホリノ基、又は4−メチルピペラジン−1−イルを表す。)である、前記(18)に記載の製造方法。
【0074】
(20)化合物が、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、又はN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミドである前記(18)記載の製造方法。
【0075】
(21)化合物がN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである前記(18)記載の製造方法。
【0076】
(22)下記一般式(IX)
【0077】
【化22】

【0078】
[式中、R18、R19の何れか一方は、前記(1)記載の一般式(II)を表し、R18及びR19の残りの一方がヨウ素原子を表す。]で表される化合物を塩素化して、下記一般式(X)
【0079】
【化23】

【0080】
(式中、R18、R19は前記一般式(IX)と同義である。)で表される化合物を製造する工程、及び下記一般式(XI)
【0081】
【化24】

【0082】
(式中、m、及びRは前記(1)の一般式(I)と同義である。)で表される化合物を添加する工程を含む、前記(5)に記載の一般式(V)で表される化合物を製造する方法。
(23)下記一般式(XII)
【化25】


(式中、m、R1は前記(1)の一般式(I)と同義であり、R21、R22の何れか一方は、はアミノ基又はニトロ基を示し、R21、R22の残りの一方がヨウ素原子を表す。)で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
(24)前記(23)の一般式(XII)においてR21、R22の何れか一方がニトロ基であり、R21、R22の残りの一方がヨウ素原子である化合物のニトロ基をアミノ基とした後に、下記一般式(XIII)
【化26】


(式中、各記号は前記(1)の一般式(II)の R4、R5、R6、及びR7と同義である。)の化合物と反応させ前記(1)の一般式(I)で表される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を製造する方法。
【0083】
以下、本発明を詳細に定義する。
本発明の定義におけるハロゲンとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられ、C〜Cアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、又はネオペンチル基等が挙げられ、C〜Cアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシキ基、n−ペンチルオキシ基、又はネオペンチルオキシ基等が挙げられ、C〜Cアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−メチルプロペン−1−イル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、又は2−ペンテニル基等が挙げられ、C〜Cアルキニル基としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、又は1−ペンチニル基等が挙げられ、C〜Cアルカノイル基としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソバレリル基、又はバレリル基等が挙げられ、C〜C12のアラルキル基としては、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、又はナフチルメチル基等が挙げられ、C〜C10のアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、メシチル基、又はキシリル基等が挙げられる。
【0084】
なお、前記一般式の置換基の定義において『置換基を有していてもよい』とある場合の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、又はn−ヘキシル基等のC〜Cのアルキル基;クロロメチル基、ブロモメチル基、ジクロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ジフルオロメチル基、又はトリフルオロメチル基等のC〜Cのハロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、イソブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、又はn−ヘキシルオキシ基等のC〜Cのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、又は臭素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0085】
塩としては、無機酸塩(塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩、又はリン酸塩等)、有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、メタンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、又はグルコン酸塩等)、アルカリ金属との塩(ナトリウム塩、又はカリウム塩等)、アルカリ土類金属との塩(マグネシウム塩、又はカルシウム塩等)、アンモニウム塩、又は有機アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシエチルアミン)、リジン、又はアルギニン等)との塩等が挙げられる。
【0086】
本発明のキナゾリン誘導体は、各種の立体構造をとることができる。例えば、不斉炭素原子を中心に考えた場合、その絶対配置は(S)体、又は(R)体のいずれでもよく、又はラセミ体でもよい。純粋な形態の光学異性体若しくはジアステレオ異性体、それら異性体の任意の混合物、又はラセミ体等は、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0087】
また、前記一般式(I)で表されるキナゾリン誘導体は、例えば水和物のような溶媒和ならびに非溶媒和の形で存在することが出来るものであり、本発明は、製造上使用できる全てのこの種の溶媒和形を包含する。
前記一般式(I)又は(VII)で表される化合物は、例えば癌の治療及び予防薬の製造中間体として用いることが出来る。
【0088】
次に本発明にかかる製造方法の例についてさらに詳述する。
【0089】
前記一般式(I)で表されるキナゾリン誘導体のうち、R及びRの何れか一方が前記一般式(II)で表され、残りの一方がヨウ素原子であるキナゾリン誘導体は、例えば以下に示すような方法により製造できる(ルートA)。
【0090】
【化27】

【0091】
Step1はキナゾリン化合物XIV’−1(式中、ニトロ基はキナゾリン環の6位又は7位の何れか一方に結合し、クロル基はキナゾリン環の6位又は7位のうちの残った方に結合する。化合物XIV’−1はJ. Org. Chem., 1975, 40, 356.等に記載されている方法により合成することが出来る。)のクロル基をハロゲン交換反応によりXIV’−2に変換する工程である。
【0092】
ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等に代表される無機のヨウ化物、あるいは四級アンモニウム塩(ヨウ化ベンジルトリエチルアンモニウム等)を1〜100当量、より好ましくは5〜30当量使用してハロゲン交換反応を行うことが出来る。
【0093】
本反応はトルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記す。)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記す。)、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、−50〜300℃、好ましくは100〜200℃で行うことが出来る。
【0094】
Step2は化合物XIV’−2のキナゾリン環の3位を反応させ化合物XIV−1に誘導する工程である。
本反応は、3,4−ジメトキシベンジルクロリド、3,4−ジメトキシベンジルブロミド、4−メトキシベンジルクロリド、4−メトキシベンジルブロミド、ベンジル クロロメチル エーテル、又はトリフルオロ酢酸無水物を化合物XIV’−2に対し0.8〜100当量、より好ましくは1〜5当量用いて反応を行うことが出来る。
【0095】
上記の反応は、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(以下、DABCOと記す。)等の有機塩基、炭酸カリウム、水素化ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、燐酸カリウム等の無機塩基の存在下、又は非存在下に行うことも出来る。
【0096】
本反応はトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1‐メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、−50〜300℃、好ましくは0〜100℃で行うことが出来る。
【0097】
Step3は化合物XIV−1のニトロ基を還元して、化合物XIV−2へと誘導する工程である。0.1〜100当量の塩酸、又は硫酸等の鉱酸、トリフルオロ酢酸、又は酢酸等の有機酸の存在下又は非存在下、0.8〜100当量、より好ましくは1〜5当量の還元鉄、亜鉛末、塩化スズ等で反応させることが出きる。また、0.8〜100当量、より好ましくは1〜5当量のヒドラジンの存在下、0.001〜0.05当量のFeClを触媒に用い還元を行うことが出来る。本条件においては活性炭の存在下、又は非存在下反応を行うことが出来る。
【0098】
本反応はトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール(以下、IPAと記す。)、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒中、あるいは無溶媒中、−50〜300℃、好ましくは0〜100℃で行うことが出来る。
【0099】
Step4は、カルボン酸XX(Z=OH)又はその酸ハライドと化合物XIV−2のアミノ基を反応させ、アミド体XIV−3を製造する工程である(R、R、R、及びRは前述した通り。参考文献 Chem. Ber., 1924, 57, 202.やJ. Am. Chem. Soc., 1952, 74, 1323.)。
化合物XIV−2に対しXXを0.8〜100当量、好ましくは1〜5当量用いて反応を行う。化合物XXのZが−OHの場合、典型的なペプチド結合形成試薬(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−プロピルホスホニック アシド サイクリック アンハイドライド、ジエチルクロロホスフェート、イソブチルクロロホルメート、ピバロイルクロリド、又はチオニルクロリド等)を0.8〜100当量、好ましくは1〜10当量用いて反応を行う。
【0100】
化合物XXのZが−OH又は−Clの何れであっても、有機塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、DABCO等)、無機の塩基(炭酸カリウム、水素化ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、燐酸カリウム等)の存在下、又は非存在下に反応を行うことも出来る。
【0101】
本反応はトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、−50〜200 ℃、好ましくは0〜50℃で行うことが出来る。
【0102】
Step5は化合物XIV−3のR22(3,4−ジメトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル基、又はトリフルオロアセチル基)を水素原子に変換する工程である。0.1〜100当量の鉱酸(塩酸、又は硫酸等)、有機酸(トリフルオロ酢酸、又は酢酸等)の存在下、トルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、エタノール、メタノール、IPA、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒中、あるいは無溶媒中、−50〜300℃、好ましくは0〜100℃で行うことが出来る。
【0103】
Step6は化合物XIV−4のキナゾリン環の4位を塩素原子に変換した後、アニリン誘導体XVIIIを0.8〜100当量、好ましくは0.9〜5当量反応させ、化合物I−1を製造する反応である。化合物XIV−4の塩素化はオキシ塩化リン、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リン、N−クロロコハク酸イミド等汎用されている塩素化試薬を0.8〜100当量、好ましくは1〜10当量用いて行う。また、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩を上記のような塩素化試薬と共存させても化合物XIV−4のキナゾリン環の4位を塩素原子に変換できる(Can. J. Chem., 1981, 59, 2601.)。
【0104】
本反応は有機塩基(トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、又はDABCO等)、無機の塩基(炭酸カリウム、水素化ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、燐酸カリウム等)の存在下、又は非存在下に行うことも出来る。
反応溶媒はトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、−50〜200℃、好ましくは0〜100℃で行うことが出来る。
【0105】
同様に、前記一般式(I)で表されるキナゾリン誘導体のうち、R又はRの何れか一方が前記一般式(II)で表され、残りの一方がヨウ素原子であるキナゾリン誘導体は、例えば以下に示すようにして製造することが出来る(ルートB)。
【0106】
【化28】

【0107】
Step7は化合物XIV’-2のキナゾリン環の4位を塩素原子に変換した後、アニリン誘導体XVIIIを反応させ化合物XV−1を製造する工程である。この工程はStep6の工程と同様の方法で合成できる。
Step8は化合物XV-1のニトロ基を還元して、化合物XV−2へと誘導する工程である。この工程はStep3の工程と同様の方法で合成できる。
Step9はカルボン酸XX (Z=OH)又はその酸ハライドと化合物XV-2のアミノ基を反応させ、アミド体I-1を製造する工程である。この工程はStep4と同様の方法で合成できる。
一般式(I)中のR2又はR3の何れか一方が前記一般式(II)で表され、残りの一方がヨウ素原子であるI-1から、一般式(VII)に示されるようなビニルアミド結合を有するキナゾリン誘導体は、例えば以下に示すようにして製造することが出来る(ルートC)。
【0108】
【化29】

【0109】
Step10は化合物I−1のヨウ素原子と化合物VIIを銅塩存在下、Pd触媒を用いて反応させ、化合物VIII−1を製造する工程である。化合物I−1に対し、0.001〜1当量、好ましくは0.001〜0.2当量の塩化銅、臭化銅、又はヨウ化銅等の1価の銅塩存在下、0.001〜1当量、好ましくは0.001〜0.2当量の塩化パラジウム、酢酸パラジウム、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム、ジクロロビス(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム、ジ−μ−クロロビス(トリフェニルフォスフィン)二パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、又はトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム等の0価あるいは2価のPd触媒に、0〜1当量、好ましくは0〜0.4当量のトリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、又はトリ−tert−ブチルホスフィン等の単座型ホスフィン配位子、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、1,3−ビス(ジフェニルフォスフィノ)プロパン、1,2−ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン、1,4−ビス(ジフェニルフォスフィノ)ブタン、(R)−(+)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、又は(S)−(−)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等の2座型ホスフィン配位子より調製したパラジウム錯体の存在下反応を行う。反応に適した塩基としては、0〜100当量、好ましくは1〜10当量のトリエチルアミン、ジエチルアミン、又はピリジン等の含窒素塩基、あるいは炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、又はフッ化セシウム等の無機塩基が挙げられ、溶媒としてはトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、エタノール、メタノール、IPA、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒中、−50〜300℃、好ましくは10〜40℃、さらに好ましくは15〜30℃で処理することにより、化合物VIII−1へと誘導することが出来る。
【0110】
化合物VIII−1からXI−1への変換は、化合物XI−1のビニルアミド部分の重合化を抑制できるような緩和な条件にて行う。例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DABCO等に代表されるような有機塩基、あるいは炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、燐酸カリウム、カリウムt−ブトキシド等に代表されるような無機の塩基、テトラn−ブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリエチルアンモニムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の有機あるいは無機のフッ化物を助剤として用いる。
溶媒としてはトルエン等の炭化水素系溶媒、THF、メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコール等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒、DMF、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−メチル−2−ピロリドン、DMSO、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒中、エタノール、メタノール、IPA、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒中、−50〜300℃、好ましくは10〜60℃で処理することにより、化合物XI−1へ誘導することが出来る。
【実施例】
【0111】
以下に本発明の理解をさらに容易にするために実施例を挙げるが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
また実施例に先立ち、本発明における原料の製造例を記載した。これらにおいて特に記載がない限り、各操作は以下の通りである。
反応操作は室温、すなわち18−25℃で、不活性ガス(たとえば窒素)雰囲気下で行った。
【0112】
溶液の濃縮は、減圧下ロータリーエバポレーターにより濃縮を行った。
【0113】
溶媒の乾燥は、例えば無水硫酸ナトリウム上で行い、乾燥剤を濾過により除去した。
【0114】
カラムクロマトグラフィーは適当な展開液、例えばクロロホルム−メタノール等を用い実施した。
【0115】
目的生成物の構造はプロトン核磁気共鳴(H−NMR)法(400MHz)で確認した。H−NMRは特に指定しない限り、重DMSO(DMSO−d)あるいは重クロロホルム(CDCl)中で測定し、化学シフト値はテトラメチルシラン(TMS)を基準とするデルタ値(ppm)で表し、ピーク多重度は下記にしたがって示した。
s,一重線;d,二重線;t,三重線;m,多重線;br,ブロードピーク、また、シグナルが分裂する大きさを結合定数Jの記号を用い、Hzの単位で表す。
【0116】
[製造例1] 7-ヨード-6-ニトロ-4(3H)-キナゾリノン:化合物(1)
7-クロロ-6-ニトロ-4(3H)-キナゾリノン(50.0g, 222mmol)およびヨウ化ナトリウム(332g, 2216mmol)をN-メチルピロリドン(500mL)に加え170℃で5時間撹拌した。
【0117】
反応液を水(1500mL)に注ぎ1時間撹拌した。
析出した結晶を濾取し、水洗後、減圧下乾燥して7-ヨード-6-ニトロ-4(3H)-キナゾリノン(1)(44.7g, 64%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)ppm:8.3(s,1H),8.3(s,1H),8.5(s,1H),12.7(brs,1H).
【0118】
[実施例1] 7-ヨード-3-(4-メトキシベンジル)-6-ニトロ-4-キナゾリノン:化合物(2)
製造例1の化合物(1)(3.17g, 10mmol)にDMF(30mL)、トリエチルアミン(1.4mL, 10.5mmol)を添加して攪拌した後、4-メトキシベンジルクロリド(1.64g, 10.5mmol)のDMF(5mL)溶液を加え22時間攪拌した後、50℃まで昇温し、更に6時間攪拌した。反応液に水(70mL)を加え、析出した結晶を濾取し、エタノール/水(2/1)にて洗浄後、減圧下乾燥して、標記化合物(2)(3.91g, 89%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)ppm:3.7(s,3H),5.1(s,2H),6.9(d,2H,J=9.0Hz),7.3(d,2H,J=9.0Hz),8.4(s,1H),8.6(s,1H),8.7(s,1H).
【0119】
[実施例2] 6-アミノ-7-ヨード-3-(4-メトキシベンジル)-4-キナゾリノン:化合物(3)
実施例1の化合物(2)(2.02g, 4.62mmol)にエタノール(40mL)、活性炭(グレード:精製白鷺, 0.16g)、無水塩化鉄(7.5mg, 0.046mmol)を添加した後、65℃まで昇温後、抱水ヒドラジン(584mg, 9.33mmol)を加え、3時間攪拌した。反応液を冷却した後、析出した結晶を濾取し、減圧下乾燥して標記化合物(3)(1.89g、活性炭込みの重量)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)ppm:3.7(s,3H),5.1(s,2H),5.7(s,2H),6.9(d,2H,J=9.0Hz),7.3(d,2H,J=9.0Hz),7.4(s,1H),8.0(s,1H),8.2(s,1H).
【0120】
[実施例3] N-[7-ヨード-3-(4-メトキシベンジル)-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-6-キナゾリニル]-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(4)
実施例2の化合物(3)(1.80g,活性炭込みの重量)にDMF(20mL)、3-フェニルスルホニルプロピオン酸(1.04g, 4.83mmol)、n-プロピルホスホン酸無水物、環状三量体(50%酢酸エチル溶液)(5.39g, 8.463mmol)を氷冷下添加した後、トリエチルアミン(1.13mL, 8.06mmol)を滴下し2時間攪拌し、再度3-フェニルスルホニルプロピオン酸(1.04g, 4.83mmol)、n-プロピルホスホン酸無水物、環状三量体(50%酢酸エチル溶液)(5.39g, 8.463mmol)、トリエチルアミン(1.13mL, 8.06mmol)を加え2時間攪拌した後、反応液を35℃まで昇温し、2時間攪拌した。反応液をろ過後、ろ液に10%炭酸水素カリウム水溶液(30mL)を加え攪拌し、析出した結晶をろ過した。結晶をアセトニトリル/水(1/1)(30mL)にて懸濁洗浄し、その後アセトニトリル(30mL)にて加熱還流下懸洗し水(10mL)を加え20℃にて15分間攪拌した後、析出した結晶を濾取し、減圧下乾燥して、標記化合物(4)を得た(1.80g、実施例1の化合物(2)からの収率は68%)。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm:2.9(t,2H,J=7.5Hz),3.6(t,2H,J=7.5
Hz),3.7(s,3H),5.1(s,2H),6.9(d,2H,J=8.0Hz),7.3(d,2H,J=8.0Hz),7.7(m,2H),7.8(m,1H),8.0(d,2H,J=8.0Hz),8.0(s,1H),8.2(s,1H),8.5(s,1H),9.8(s,1H).
【0121】
[実施例4] N-(7-ヨード-4-オキソ-3,4-ジヒドロ-6-キナゾリニル)-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(5)
実施例3の化合物(4)(1.20g, 1.99mmol)をトリフルオロ酢酸(7mL)に溶解し、加熱還流下30時間攪拌した。反応液を濃縮後、アセトニトリル(5mL)、水(5mL)を加え室温下1時間攪拌した。
析出した結晶を濾取し、これを減圧下乾燥して、1.04gの結晶を得た。
【0122】
この結晶1.01gにアセトニトリル/水(1/1)(10mL)を加え、トリエチルアミン(0.4mL)を加え30分攪拌した後、析出した結晶を濾取し、減圧下乾燥して、標記化合物(5)(0.74g, 79%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm:2.8(t,2H,J=7.5Hz), 3.6(t,2H, J=7.5Hz), 7.7(t,2H,J=7.5Hz), 7.8(t,1H,J=7.5Hz), 8.0(d,2H, J=7.5Hz), 8.0(s,1H), 8.1(s,1H), 8.2(s,1H), 9.8(s,1H), 12.3(brs,1H).
【0123】
[実施例5] N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-ヨード-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(6) 塩酸塩
実施例4の化合物(5)(68mg, 0.141mmol)にトルエン(2mL)、オキシ塩化リン(55mg, 0.354mmol)、N,N’-ジイソプロピルエチルアミン(36mg, 0.281mmol)を加え室温で攪拌した後、1,2-ジクロロエタン(2mL)を加え70℃にて4時間攪拌した。反応液を冷却後、不溶物を濾取し、ろ液を濃縮後、塩化メチレン(1mL)、トルエン(1mL)、3-クロロ-4-フルオロアニリン(100mg, 0.687mmol)のIPA(1mL)溶液を加えた。室温にて3時間攪拌後、n-ヘキサン(2mL)を加え1時間攪拌し、析出した結晶を濾取し、減圧下乾燥して、標記化合物(6) 塩酸塩(28mg, 31%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm : 2.8(m,2H),3.7(t,2H,J=8.0Hz), 7.5(t,1H,J=9.0Hz), 7.7(m,2H), 7.8(t,1H,J=7.5Hz), 8.0(d,2H,J=7.5Hz), 8.1(dd,1H,J=3.0,7.0Hz), 8.4(s,1H), 8.6(s,1H), 8.8(s,1H), 10.2(s,1H), 11.1(brs,1H).
【0124】
[実施例6] 4-(3-クロロ-4-フルオロアニリノ)-7-ヨード-6-ニトロキナゾリン:化合物(15-1)
製造例1の化合物(1) (30.0g, 94.6mmol)をトルエン (450mL)に加え、この懸濁液にオキシ塩化リン(13.2mL, 142mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(33.0mL, 189mmol)を加え、75℃にて12時間攪拌した。反応液を2 ℃まで冷却した後に、3-クロロ-4-フルオロアニリン (16.5g, 114mmol)のIPA溶液(175mL)を滴下し、1時間攪拌した。2 ℃にてn-ヘプタン(150mL)を加え、さらに3時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、トルエン(90mL×2)で洗浄した。得られた結晶をアセトニトリル (600mL)を用い、80 ℃にて加熱懸洗した後に、結晶を濾過し、アセトニトリル (90mL×2)で洗浄した。得られた結晶をアセトニトリル(300mL)-水(300mL)に加え、室温にてトリエチルアミン (19.8mL, 142mmol)を滴下した。室温にて1時間攪拌した。結晶を濾過し、水 (90mL×2)で洗浄した。減圧下乾燥すると、標記化合物(15-1) (32.2g, 76%)を茶色結晶として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δppm : 7.46 (t, 1H, J= 8.8Hz), 7.79 (m, 1H), 8.14 (dd, 1H, J= 2.4, 6.8Hz), 8.44 (s, 1H), 8.72 (s, 1H), 9.22 (s, 1H), 10.30 (br s, 1H).
【0125】
[実施例7] N-4-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-ヨード4,6-キナゾリンジアミン:化合物(15-2)
実施例6の化合物(15-1) (80.0g, 180mmol)、無水塩化鉄 (III) (292mg, 1.80mmol)および、活性炭(グレード:精製白鷺、22.5g)をメタノール (1600mL)に混ぜ、64 ℃にて抱水ヒドラジン(80%)(21.9mL, 360mmol)を滴下した。64 ℃にて2時間攪拌し、室温にてTHF(960mL)を加えた後に活性炭を濾過した。減圧下溶媒を約1800mL留去し、メタノール(1200mL)を加え減圧下溶媒を約1200mL留去した。氷冷下2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、メタノール(240mL)で洗浄した。減圧下乾燥すると標記化合物(15-2) (69.4g, 93%)を黄白色結晶として得た。
1H-NMR (DMSO-d6)δppm : 5.60 (br s, 2H), 7.42 (t, 1H, J = 8.8 Hz), 7.52 (s, 1H), 7.80 (ddd, 1H, J = 2.4, 6.8, 8.8 Hz), 8.18 (dd, 1H, J = 2.4, 6.8 Hz), 8.19 (s, 1H), 8.38 (s, 1H), 9.67 (s, 1H).
【0126】
[実施例8] N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-ヨード-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(6)
実施例7の化合物(15-2) (35.0g, 84.4mmol)のTHF(350mL)溶液に3-フェニルスルホニルプロピオン酸(21.7g, 101mmol)およびn-プロパンホスホン酸無水物、環状三量体 (50%酢酸エチル溶液)(100mL, 169mmol)を加え、3 ℃にてトリエチルアミン(22.4mL, 160mmol)を滴下した。反応液を室温まで昇温し、室温にて12時間攪拌した。2-プロパノール(175mL)を加え、続いて水(525mL)およびトリエチルアミン(47.1mL, 338mmol)を加え、3 ℃にて2時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、THF/水=1/1 (105mL×2)で洗浄した。減圧下乾燥すると標記化合物(6)(50.6g, 98%)を乳白色結晶として得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm : 2.81 (t, 2H, J = 7.2 Hz), 3.67 (t, 2H, J = 7.2 Hz), 7.44 (t, 1H, J = 8.8 Hz), 7.77 (m, 4H), 7.99 (m, 2H), 8.13 (dd, 1H, J = 2.4, 6.4 Hz), 8.36 (s, 1H), 8.43 (s, 1H), 8.60 (s, 1H), 10.02 (s, 1H), 10.11 (s, 1H).
【0127】
[実施例9] N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(8)
酢酸パラジウム(II)(110mg, 0.49mmol)およびトリフェニルホスフィン(258mg, 0.98mmol)のDMSO(100mL)溶液を室温にて30分攪拌後、実施例5の化合物(6)(10.0g, 16.4mmol)、1-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)-4-メチルピペラジン(7)(3.27g, 19.6mmol)及びヨウ化銅(I)(93.0mg, 0.49mmol)を加え、続いてトリエチルアミン(5.70mL, 40.9mmol)を滴下した。3時間攪拌後、反応液を水(100mL)に滴下し、さらに1時間攪拌した。析出した結晶を濾過し、水洗後、結晶をIPA/水(1/1)(200mL)にて懸濁洗浄した。
析出した結晶を濾過後、減圧下乾燥して、標記化合物(8)(実施例5の化合物(6)からの収率96%、化合物(7)からの収率80%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm: 1.4(s,6H), 2.2(s,3H), 2.3(brs,4H), 2.6(brs,4H), 2.8(t,2H,J=7.5Hz), 3.7(t,2H,J=7.5Hz), 7.5(t,1H,J=9.0Hz), 7.7(m,5H), 8.0(m,2H), 8.2(dd,1H,J=3.0,7.0Hz), 8.50(s,1H), 8.62(s,1H), 9.87(s,1H), 9.96(s,1H).
【0128】
[実施例10] N-{[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}アクリルアミド:化合物(9)
実施例9の化合物(8)(5.00g, 7.70mmol)のTHF(100mL)溶液に、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(1mol/L THF溶液)(46.2mL, 46.2mmol)を滴下した。12時間攪拌後、反応液に10%炭酸水素カリウム水溶液(50mL)を加え分液した。有機層を10%炭酸水素カリウム水溶液(50mL)で洗浄し、続いて10%塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄した。有機層にIPA(100mL)を加え減圧下溶媒を100mL留去した。続いて水(100mL)を滴下し、氷冷下1時間攪拌後、析出した結晶を濾過し、IPA/水(1/1)(20mL)で2回洗浄し、減圧下乾燥して、標記化合物(9)(3.24g,83%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6)δppm:1.4(s,6H), 2.2(s,3H), 2.4(brs,4H), 2.6(brs,4H), 5.8(d,1H,J=11.0Hz), 6.3(d,1H,J=17.0Hz), 6.6(dd,1H,J=11.0,17.0Hz), 7.5(t,1H,J=9.0Hz), 7.8(m,2H), 8.2(dd,1H,J=2.0,7.0Hz), 8.6(s,1H),8.7(s,1H), 8.9(s,1H), 10.0(s,1H)
【0129】
[実施例11] N-{[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}アクリルアミド:化合物(9)
実施例9の化合物(8)と同様に合成したN-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}-3-(フェニルオキシ)プロパンアミド:化合物(8-2)(50.0mg, 0.08mmol)のDMF(1mL)溶液に室温にてカリウムtert-ブトキシド(28.0mg, 0.25mmol)を加え、室温にて1時間攪拌した。
反応液に酢酸エチル(10mL)および10%塩化ナトリウム水溶液(5mL)を加え分液した。水層より酢酸エチル(5mL)で抽出した。有機層を混合した後に、10%塩化ナトリウム水溶液(5mL×2)で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下溶媒を留去し、残さをシリカゲルカラムクロマト(塩化メチレン→塩化メチレン/メタノール=4/1)で精製し、N-{[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}アクリルアミド:化合物(9)(20.0mg, 47%)を黄色結晶として得た。
【0130】
[参考1] N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-ヨード-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(6)、N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-ブロモ-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(6-1)、又はN-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-クロロ-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(6-2)と1-(1,1-ジメチル-2-プロピニル)-4-メチルピペラジン:化合物(7)との反応によるN-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[3-メチル-3-(4-メチル-1-ピペラジニル)-1-ブチニル]-6-キナゾリニル}-3-(フェニルスルホニル)プロパンアミド:化合物(8)の合成:
実施例9と同条件下、各々反応を行った。反応液をそれぞれ所定の時間にサンプリング後、以下に示すHPLC条件で分析した。
【0131】
【表1】

【0132】
上記の様に、ヨードキナゾリン:化合物(6)は、対応するブロモ体:化合物(6−1)、クロル体:化合物(6−2)と比較して、Pd触媒による炭素−炭素結合生成反応において、高い反応性を示した。
【0133】
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明によれば、例えば、癌の治療薬等の医薬品の製造中間体となり得る新規なキナゾリン誘導体を提供することが出来る。また、このキナゾリン誘導体を用いることにより、医薬品の効率よい製造方法を提供することが出来る。
なお、本出願は、特願2003−398442号を優先権主張して出願されたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】


[式中、mは0〜3の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、−S(O)12(式中、fは0〜2の整数を表し、R12はC〜Cアルキル基を表す。)、−NR1314(式中、R13およびR14はそれぞれ独立して水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルカノイル基又はC〜Cアルキルスルホニル基を表す。)、C〜Cアルケニル基、又は、C〜Cアルキニル基を表し、R、Rの何れか一方は、下記一般式(II)
【化2】


(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12のアラルキル基、又は、置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表し、Rは−SO15、−SOR15、又は、−OR15(式中、R15は置換基を有していてもよいC〜Cアルキル基、置換基を有していてもよいC〜C12アラルキル基、又は、置換基を有していてもよいC〜C10アリール基を表す。)を表し、R、Rの残りの一方がヨウ素原子、又は、下記一般式(III)
【化3】


(式中、R、Rはそれぞれ独立して、水素原子、又は、水酸基若しくはC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基を表わし、pは0〜3の整数を表し、R10、R11はそれぞれ独立して水素原子又はC〜Cアルキル基を表し、Yは水素原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルカノイルオキシ基、4位に置換されていてもよいC〜Cアルキル基を有するピペラジン−1−イル、又は、置換されていてもよいC〜Cアルキルで2置換されたアミノを表す。)を表す。ただし、mが2又は3を表す場合、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。]で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項2】
mが2であり、Rがハロゲン原子であり、Rが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又は、メチルチオ基を表す。)であり、Rがヨウ素原子、又は、下記一般式(IV)
【化4】


(式中、R8’、R9’はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基であり、Y’はモルホリノ基、又は4−メチルピペラジン−1−イルを表す。)である請求項1に記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項3】
以下の化合物からなる群より選ばれる、請求項1又は2の何れかに記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物:N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド。
【請求項4】
化合物がN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである請求項3に記載のキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項5】
下記一般式(V)
【化5】


[式中、m及びRは請求項1と同義であり、R2a、R3aの何れか一方は、請求項1の一般式(II)と同義であり、R2a、R3aの残りの一方がヨウ素原子を表す。]で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物と、下記一般式(VI)
【化6】


(式中、R、R、R10、R11、Y及びpは請求項1と同義である。)で表される化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を反応させ、請求項1記載の一般式(I)で表されるキナゾリン誘導体[ただし、R又はRの何れか一方は請求項1の一般式(II)を表し、R又はRの残りの一方は請求項1の一般式(III)を表す。]若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を製造する方法。
【請求項6】
mが2であり、Rがハロゲン原子であり、R2aが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又はメチルチオ基を表す。)であり、R3aがヨウ素原子である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
一般式(V)で表されるキナゾリン誘導体が、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、又はN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミドである請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
キナゾリン誘導体がN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の化合物を用いて下記一般式(VII)
【化7】


[式中、m、Rは請求項1と同義であり、R16、R17の何れか一方は、−NHCO−CR=CR(式中、R、R、及びRは請求項1と同義である。)を表し、R16、R17の残りの一方が、請求項1の一般式(III)で表される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を製造する方法。
【請求項10】
mが2であり、Rがハロゲンであり、Rが−NHCO−CHCH−Rであり、R16が−NHCO−CH=CHであり、R及びR17が請求項2記載の一般式(IV)である請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
8’、R9’がそれぞれ独立してメチル基であり、Y’が4−メチルピペラジン−1−イルである請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
請求項5から11の何れかに記載の製造方法を含む、請求項9記載の一般式(VII)で表される化合物もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物の製造方法。
【請求項13】
mが2であり、Rがハロゲンであり、Rが−NHCO−CHCH−Rであり、R16が−NHCO−CH=CHであり、R及びR17が請求項2記載の一般式(IV)である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
8’、R9’がそれぞれ独立してメチル基であり、Y’が4−メチルピペラジン−1−イルである請求項12に記載の製造方法。
【請求項15】
下記一般式(VIII)
【化8】


[式中、R18、R19の何れか一方は、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシアミノ基、又は−NHCO−CHCH−R7’(式中、R7’はメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又はメチルチオ基を表す。)を表し、R18、R19の残りの一方はヨウ素原子を表し、R20は水素原子、3,4−ジメトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル基、又はトリフルオロアセチル基を表す。]で表される化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項16】
以下の化合物からなる群から選ばれる、請求項15に記載の化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物:7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−6−ニトロ−4−キナゾリノン、6−アミノ−7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−キナゾリノン、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド。
【請求項17】
化合物が、7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−6−ニトロ−4−キナゾリノン、6−アミノ−7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−キナゾリノン、N−[7−ヨード−3−(4−メトキシベンジル)−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル]−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−(7−ヨード−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−6−キナゾリニル)−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである請求項16に記載の化合物もしくはその塩、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項18】
請求項15から17のいずれかに記載の化合物を用いた、請求項1記載の一般式(I)の化合物の製造方法。
【請求項19】
mが2であり、Rがハロゲン原子であり、Rが−NHCO−CH−CH−R(式中、Rはメチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、フェニルオキシ基、フェニルチオ基、又は、メチルチオ基を表す。)であり、Rがヨウ素原子、又は下記一般式(IV)
【化9】


(式中、R8’、R9’はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、又は、イソプロピル基であり、Y’はモルホリノ基、又は4−メチルピペラジン−1−イルを表す。)である、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
化合物が、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミド、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミド、又はN−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−[3−メチル−3−(4−メチル−1−ピペラジニル)−1−ブチニル]−6−キナゾリニル}−3−(フェニルオキシ)プロパンアミドである請求項18記載の製造方法。
【請求項21】
化合物が、N−{4−[(3−クロロ−4−フルオロフェニル)アミノ]−7−ヨード−6−キナゾリニル}−3−(フェニルスルホニル)プロパンアミドである請求項18記載の製造方法。
【請求項22】
下記一般式(IX)
【化10】


[式中、R18、R19の何れか一方は、請求項1記載の一般式(II)を表し、R18及びR19の残りの一方がヨウ素原子を表す。]で表される化合物を塩素化して、下記一般式(X)
【化11】


(式中、R18、R19は前記と同義である。)で表される化合物を製造する工程、及び下記一般式(XI)
【化12】


(式中、m、及びRは請求項1と同義である。)で表される化合物を添加する工程を含む、請求項5に記載の一般式(V)で表される化合物を製造する方法。
【請求項23】
下記一般式(XII)
【化13】


(式中、m、R1は請求項1と同義であり、R21、R22の何れか一方は、はアミノ基又はニトロ基を示し、R21、R22の残りの一方がヨウ素原子を表す。)で表されるキナゾリン誘導体もしくはその塩、又は、それらの水和物もしくは溶媒和物。
【請求項24】
請求項23の一般式(XII)においてR21、R22の何れか一方がニトロ基であり、R21、R22の残りの一方がヨウ素原子である化合物のニトロ基をアミノ基とした後に、下記一般式(XIII)
【化14】


(式中、R4、R5、R6、及びR7は請求項1と同義である。)の化合物と反応させ請求項1の一般式(I)で表される化合物もしくはその薬学的に許容される塩、それらの水和物もしくは溶媒和物を製造する方法。

【国際公開番号】WO2005/051924
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【発行日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515810(P2005−515810)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017564
【国際出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)