説明

キノコ菌による土壌の製造方法および植物活性酵素の製造方法

【課題】有害物質を出すことなく、低コストで簡単に、木・枝・葉などを効率よく良質の土壌に変えることができる土壌の製造方法、および上記土壌の製造方法に関連して得られる良質の植物活性酵素の製造方法を提供する。
【解決手段】露地11上に原料木類(木、枝、葉、チップ等)12を堆積し、前記原料木類にキノコ菌培養体13を接種し、水分を加え、攪拌し、その後、水分の補給と攪拌を複数回繰り返し、原料木類を土壌14に変換する。また、原料木類(木、枝、葉、チップ等)12にキノコ菌培養体13を接種し、水分を加え、攪拌し、キノコ菌を固体培養し、キノコ菌が増殖した時点で、土壌への変換途中の原料木類からキノコ菌培養体を取り出し、キノコ菌培養体13を温水に浸し、酵素を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木・枝・葉・チップなどの原料木類を、キノコ菌を利用して土壌に変える土壌の製造方法、および上記土壌の製造方法に関連して得られるキノコ菌培養体を用いた植物活性酵素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植栽、或いは間伐等によって排出された木・枝・葉などは、焼却処分されるか、粉砕機を用いて細片(チップ)化された後、長期間かけて土壌とされている。
【0003】
ところで、上記木・枝・葉などを焼却処分する場合、大量に灰が出るが、この灰をどのように処理するかが問題となっている。また、焼却処分する際に、ダイオキシン等の有害物質が出やすく、環境保全の観点からも問題がある。
【0004】
一方で、上記木・枝・葉などを細片(チップ)化して土壌化する処理方法は、有害物質を出さない点は優れているが、大型の粉砕機等を必要とするとともに、上記木・枝・葉などをチップ化して時間をかけて土壌化するために、手間と時間とスペースを要し、処理コストが高くなるという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、有害物質を出すことなく、低コストで簡単に、木・枝・葉・チップなどを効率よく良質の土壌に変えることができる土壌の製造方法、および上記土壌の製造方法に関連して得られる良質の植物活性酵素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の土壌の製造方法は、露地上に原料木類(木、枝、葉、チップ等)を堆積し、前記原料木類にキノコ菌培養体を接種し、水分を加え、攪拌し、その後、水分の補給と攪拌を複数回繰り返し、前記原料木類を土壌に変換することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の植物活性酵素の製造方法は、原料木類(木、枝、葉、チップ等)にキノコ菌培養体を接種し、水分を加え、攪拌し、キノコ菌を固体培養し、キノコ菌が増殖した時点で、土壌への変換途中の原料木類からキノコ菌培養体を取り出し、前記キノコ菌培養体を温水に浸し、酵素を抽出することを特徴とする。また、無菌容器内で、液体培地にキノコ菌培養体を接種し、エアーを前記容器内に送り込み、攪拌しながらキノコ菌を無菌培養し、培養後、液体と培地を分離し、酵素液を取り出すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の土壌の製造方法によれば、キノコ菌の原料木類(木、枝、葉、チップ等)に対する良好な分解作用により、1年程度以下の比較的短い時間で良質な土壌に変換することができる。この土壌は、炭素成分を10%程度有し、通気性が良く、土壌が柔らかくなり、土壌改良剤として有用である。そして、原料木類(木、枝、葉、チップ等)を露地に堆積し、キノコ菌培養体を振り撒き、水分を補給し、攪拌するだけであるので、手間がかからず、設備を要せず、低コストで良質な土壌を製造できる。
【0009】
また、本発明の植物活性酵素によれば、キノコ菌から抽出した酵素を畑に散布することで、植物の根張りが良くなり、糖度が増し、植物の収穫期間が長くなり、収穫量が増量し、強健になり病気に強くなり、人体にはまったく無害であり、作物の連作障害を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本発明のキノコ菌による土壌の製造方法について説明する。
【0011】
図1(a)に示すように、露地11上に、木、枝、葉、チップ等からなる原料木類12を堆積する。ここで、太い木の幹部分は予め除去しておくことが好ましい。また、伐採した木、枝、葉等は、重機のキャタピラ等で踏みつけ、その表面に予め傷を付けておくことが好ましい。そして、原料木類12にキノコ菌培養体13を振り撒き、接種する。キノコ菌培養体13は、キノコ菌を固体培養したもので、後述するように原料木類をキノコ菌により土壌に変える途中のものから、その一部を取り出したものを用いることが好ましい。
【0012】
そして、水を撒くことで、水分を加え、パワーシャベル等により攪拌することで、図1(b)に示すように、原料木類12とキノコ菌培養体13とが均一に混合され、水分と空気とが十分に与えられた状態となる。この状態により、キノコ菌の増殖が始まる。すなわち、キノコ菌が原料木類を分解し、土壌に変えると共に、キノコ菌が増殖していく。キノコ菌の原料木類に対する分解作用は活発であり、温度は70℃程度まで上昇する。
【0013】
原料木類にキノコ菌培養体を接種してから、2−3ヶ月が経過すると、キノコ菌の増殖が最盛期に達し、キノコ菌が原料木類に万遍なくまわりきった状態となる。この状態で原料木類は半分程度土壌に変わった状態となり、キノコ菌の力価が最も高くなり、新規に原料木類に接種するキノコ菌培養体として最適な状態となる。また、後述するように、キノコ菌培養体から抽出した酵素の植物活性能力が高い状態となり、酵素の抽出に最適な状態となる。
【0014】
その後、2−3ヶ月に1回程度の割合で、水分補給と攪拌を繰り返す。これにより、キノコ菌による土壌化が進行し、木、枝、葉等の場合は、接種から1年程度で、図1(c)に示すように、原料木類12は完全に土壌14に変わる。なお、チップは、樹木、剪定枝、間伐材、廃材などを細片(チップ)化したもので、この場合は進行が早く、接種から4ヶ月程度で、完全に土壌14に変わる。得られた土壌は、乾物で炭素成分を10%程度含み、通気性がよく、土壌が柔らかく、土壌改良材として最適な特徴を備えている。なお、上記土壌化の過程で、メタンガスや悪臭などの発生は一切無く、環境問題は一切生ぜず、人体にも安全である。
【0015】
次に、キノコ菌による植物活性酵素の製造方法について説明する。上述したように、キノコ菌培養体を原料木類に接種してから2−3ヶ月が経過すると、キノコ菌の増殖が最盛期に到達し、力価が最も高い状態となる。この時点で、土壌への変換途中の原料木類からその一部(キノコ菌培養体13)を取り出し、キノコ菌培養体13を温水に浸し、酵素を抽出する。具体的には、図2(a)に示すように、プール15に20−50℃程度の温水を入れ、ネット16に収容したキノコ菌培養体13を浸す。これにより、キノコ菌培養体13が有する酵素が温水中に抽出され、キノコ菌酵素液17が生成される。また、図2(b)に示すように、プール15に20−50℃程度の温水を入れ、ポンプ19で温水を汲み上げ、シャワー18からキノコ菌培養体13に温水を流下し、キノコ菌培養体13が有する酵素が温水中に抽出され、プール15に流下して戻り、このサイクルを繰り返すことで、キノコ菌酵素液17をプール15に生成するようにしてもよい。キノコ菌酵素液17は、適宜の容器に移され、キノコ菌による植物活性酵素として植物の栽培に利用可能となる。
【0016】
上述のキノコ菌酵素液および土壌を用いて大和芋の栽培実験を行った結果を、表1に示す。この実験では、いずれも5月に植付けし、11月に掘取している。比較例1,2はキノコ菌による土壌および酵素を用いず、実施例1,2はキノコ菌による土壌および酵素液を用いたものである。
【表1】

【0017】
上述の実験結果から、本発明のキノコ菌酵素液および土壌を用いることで、大和芋の収穫量が2倍程度以上に増えることが確認できた。また、収穫された大和芋の成分を分析したところ、糖度が高く、水分が低く、実の締まったおいしい芋であることが確認できた。以上の実験結果から、キノコ菌酵素液を植物の生育に用いることで、大和芋に限らず植物全般について、植物の根張りが良くなり、糖度が上がり、収穫期間が長くなり、増量し、病気に強くなる、と言える。また、人体にはまったく無害であり、作物の連作障害を無くし、健全な作物が収穫でき、有機栽培に最適である、と言える。
【0018】
なお、キノコ菌酵素液は、上述のキノコ菌の固体培養に限らず、以下に述べる液体培養でも生成することができる。すなわち、図3に示すように、培養槽(無菌容器)21内に液体培地22を充填し、キノコ菌培養体を接種する。ここで、液体培地22は、澱粉、オガコ、米ヌカ、ミネラル等を混合し、煮詰めて液体状にしたものである。また、キノコ菌培養体はフラスコ等でキノコ菌を無菌状態で液体培養したものを用いることが好ましい。
【0019】
そして、滅菌糟23を介してエアコンプレッサ24で培養槽21内に空気を送り込み、攪拌しながらキノコ菌を無菌培養する。これにより、70時間程度でキノコ菌が十分な量に増殖する。そして、液体と培地を濾過機25で分離し、キノコ菌酵素液17を酵素糟26に取り出すことができる。この方法によれば、上述の固体培養が原料木類にキノコ菌培養体を接種してから2−3ヶ月の時間を必要とするのに対し、極めて短時間でキノコ菌酵素液の抽出が可能となる。
【0020】
ここで、これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態のキノコ菌による土壌の製造方法についての説明図である。
【図2】本発明の一実施形態のキノコ菌酵素液の製造方法についての説明図である。
【図3】図2の変形例のキノコ菌酵素液の製造方法についての説明図である。
【符号の説明】
【0022】
11 露地
12 木、枝、葉、チップ等からなる原料木類
13 キノコ菌培養体
14 土壌
15 プール
16 ネット
17 キノコ菌酵素液
18 シャワー
19 ポンプ
21 培養槽(無菌容器)
22 液体培地
23 滅菌槽
24 エアコンプレッサ
25 濾過機
26 酵素槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露地上に原料木類を堆積し、
前記原料木類にキノコ菌培養体を接種し、水分を加え、攪拌し、
その後、水分の補給と攪拌を複数回繰り返し、前記原料木類を土壌に変換することを特徴とするキノコ菌による土壌の製造方法。
【請求項2】
前記キノコ菌培養体は、前記原料木類にキノコ菌培養体を接種してから、2−3ヶ月経過した時点での、土壌への変換途中のものから取り出したものであることを特徴とする請求項1記載のキノコ菌による土壌の製造方法。
【請求項3】
原料木類にキノコ菌培養体を接種し、水分を加え、攪拌し、
キノコ菌が増殖した時点で、土壌への変換途中の原料木類からキノコ菌培養体を取り出し、
前記キノコ菌培養体を温水に浸し、酵素を抽出することを特徴とする植物活性酵素の製造方法。
【請求項4】
無菌容器内で、液体培地にキノコ菌培養体を接種し、
エアーを前記容器内に送り込み、攪拌しながらキノコ菌を無菌培養し、
培養後、液体と培地を分離し、酵素液を取り出すことを特徴とする植物活性酵素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−189937(P2007−189937A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10562(P2006−10562)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(597169177)株式会社ナリヒラ (2)
【Fターム(参考)】