キメラヒト肝臓を有するマラリア動物モデル
本発明は、マラリア、例えばプラスモディウム、特にプラスモディウムファルシパルムの非ヒト動物モデルを特徴とする。そのモデルは、トランスジーンが肝臓におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターの発現を提供する、ヒト-マウスキメラ肝臓を有する非ヒト免疫低下トランスジェニック動物に基づく。本発明は、候補治療剤、例えば、マラリアに対する抗病原活性を有する薬剤を同定する方法も特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の領域
本発明は、一般に、ヒトマラリア感染およびヒト疾患におけるヒトマラリア生活環のモデルとして有用な動物に関する。
【0002】
相互参照
本願は、2004年8月20日出願の米国仮出願第60/603,467号および2005年2月7日出願の米国仮出願第60/650,949号に基づく優先権を主張し、これらの出願は参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府の権利
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された連邦グラント番号RO1 AI 47445の下で部分的な政府の支援を受けて作成された。米国政府は、本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
プラスモディウム(Plasmodium)属に属する原虫は、マラリアの病因であり、毎年2〜5億という新たなマラリア例の原因となっていると推定されている。寄生虫は、細胞外型および細胞内型の両方を含む複雑な生活環を有する。感染は、ハマダラ蚊が吸血中にスポロゾイトを注入した時に、宿主において開始される。次いで、スポロゾイトは、血管系を通って肝臓に移動し、肝細胞に侵入し、それにより、赤外(EE)期が開始する。各一核の寄生虫は、その後、分裂および分化を経て、数千〜数万匹の一核のメロゾイトを含む成熟肝臓期シゾントを形成する。肝臓期シゾントにおける発達の時間は、種によって異なり、例えば、プラスモディウム・ファルシパルム(falciparum)の場合、5〜7日である。
【0005】
最初の肝臓期の終結時には、数千匹のメロゾイトが血流に放出され、赤血球に侵入する。次いで、種に依って48〜72hrの赤内期(または「赤血球」期)の周期が、続いて起こる。いくつかの赤血球期は、雄および雌の生殖母細胞へと分化するであろう。蚊により摂取された後、それらは接合し、接合子を形成することができ、それが、さらに発達してスポロゾイトを生じ得る。これらのスポロゾイトが、後に、蚊によって別の宿主に接種され、このようにして周期が繰り返される。
【0006】
雌アノフェレス(Anopheles)蚊の刺咬により注入されたスポロゾイトは、迅速に肝臓類洞に達する。初期の仮説に反して、現在では、接種されるスポロゾイトの数は少なく、刺咬1回当たり約10〜100であると信じられている。スポロゾイトが直接肝細胞に浸透するのか、または類洞を裏打ちする内皮細胞もしくはクッパー細胞をまず通って移動するのかは、未だ議論されている点である。しかしながら、インビトロの肝細胞の侵入は、クッパー細胞への通過が、EE発達のための絶対要件ではないことを示唆している。さらに、クッパー細胞が枯渇したラットにおいて行われた研究からの証拠は、完全な動物と比べて、クッパー細胞枯渇動物が、EE期寄生虫の数の有意な増加を有していることを証明している。これは、クッパー細胞が、スポロゾイト侵入の助長ではなくスポロゾイトの排除に関与していることを強く示唆している。
【0007】
スポロゾイトは肝細胞においてのみ発達するため、侵入は、スポロゾイトタンパク質と肝細胞受容体との特異的な相互作用により媒介される可能性が高い。スポロゾイトは、発達中の肝臓期または赤外(EE)寄生虫を囲む寄生体胞膜(PVM)を形成する肝細胞細胞膜の陥入により頂端側から浸入するようである。メロゾイトの赤血球への侵入の場合と同様に、材料が、侵入の間にスポロゾイトロプトリー(rhoptries)から分泌されるようである。肝細胞に侵入した直後、細長いスポロゾイト(1.5×10〜20μm)の内膜およびペリクル下微小管が壊れ、この区域が膨れ上がり、PVMにより囲まれた液胞に位置付けられた原形質膜を境界とする単核の3〜5μmのトロフォゾイトが作出される。初期赤外期寄生虫は、肝細胞の体積の大部分を占める球状の成熟肝臓期シゾントへと発達する。
【0008】
シゾゴニーの間、感染した肝細胞への、特に肝細胞核の隣への深い陥入を形成することができるPVMへ、寄生虫抗原が挿入される。少なくとも2,000匹の単核メロゾイトを含有している成熟EEシゾントの発達には、げっ歯動物マラリアP.ヨエリー(yoelii)およびP.ベルゲイ(berghei)の場合、42〜48時間かかる。P.ファルシパルムの肝臓期発達には、5〜7日かかり、80〜100μmのシゾント内に30,000匹ものメロゾイトが形成される。P.ビバックス(vivax)のEE発達においては、いくつかのトロフォゾイトが、さらに発達することなく、数年にわたり肝細胞内に小さなヒプノゾイトとして持続し得る。P.ビバックスの再発は、未知のメカニズムにより発達するよう誘発されるヒプノゾイトから生じることが提唱されている。単核スポロゾイトの完全に成熟した肝臓期シゾントへの発達、ならびにこのシゾントの破裂の原因となるシグナルおよび寄生虫分子は、未知である。
【0009】
プラスモディウムに感染した肝細胞は、マラリア感染のげっ歯動物モデルにおいて、防御免疫応答の重要な標的であることが証明されている。この所見から、感染した肝細胞または赤外(EE)期の寄生虫において発現されるプラスモディウム抗原の同定および特徴決定、ならびにこれらの抗原に対する免疫応答は、前赤内期マラリアワクチンの開発にとって重大である。EE期寄生虫の供給源は、EE期抗原を同定するモノクローナル抗体の選択および特徴決定のため、そして感染した肝細胞において発現されるプラスモディウム遺伝子の発現を特徴決定するため、不可欠である。
【0010】
残念ながら、EE型のP.ファルシパルムを含有している生物学的材料を入手するのは困難である。少量のP.ファルシパルムEE期寄生虫は、初代ヒト肝細胞培養物および単一のヒト肝臓癌細胞系において作製されている。ヒト細胞系は取り扱いが困難であり、入手可能なヒト肝組織の不足、およびインビトロの系において入手される低い感染率のため、これらのアプローチはあまり魅力的でない。マウス型のマラリアは存在するが、P.ファルシパルムシゾントは、ヒトもしくはチンパンジーの肝細胞においてのみ発達するか、またはいくつかの非ヒト霊長類においてはるかに低い程度に発達する。チンパンジーに寄生虫を感染させ、凍結切片化のため、生検により肝組織が入手された。しかしながら、チンパンジーを含む研究は極めて高価であり、限られた組織採集より複雑なことには役に立たない。
【0011】
信頼性のあるP.ファルシパルム感染の小動物モデルが、当領域においては必要とされている。本発明はこの必要性を満たすものである。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、マラリア、例えば、プラスモディウム、特にプラスモディウム・ファルシパルムの非ヒト動物モデルを特徴とする。そのモデルは、トランスジーンが、肝臓におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターの発現を提供する、ヒト-マウスキメラ肝臓を有する非ヒト免疫低下トランスジェニック動物に基づく。本発明は、候補治療剤、例えば、プラスモディウムに対する抗病原活性を有する薬剤を同定する方法も特徴とする。
【0013】
一つの局面において、本発明は、インビトロで赤内期ファルシパルムに感染させ、次いで、感染を確立するために免疫不全マウスへ注入し、ヒトRBC輸液により維持するヒトRBCの使用とは反対に、通常の感染経路、例えば静脈内送達を介して、そして天然の感染性因子(アノフェリン(Anopheline)蚊からのマラリアスポロゾイト)により、感染させられ得る非ヒト動物マラリアモデルを提供する。
【0014】
少なくとも一つの利点は、本発明が、通常の感染経路により感染させられ得、さらに、宿主における寄生虫の通常の発達を提供するマラリアの動物モデルを提供するという点である。
【0015】
本発明のもう一つの利点は、それが、大量のP.ファルシパルムEE期寄生虫の作製のための魅力的な方法を提供するという点である。肝組織を急速凍結させ、その一部を凍結切片化により数千の薄い切片へと切断することができる。寄生虫感染細胞を(例えば、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより)回収し、cDNAの作製のためRNAを単離することができる。cDNAは、その後、マイクロアレイまたは肝臓期cDNAライブラリーの作製のために使用され得る。凍結切片は、候補ワクチンによる動物またはボランティアの免疫感作により作成されたモノクローナル抗体または血清をスクリーニングするためにも使用され得る。
【0016】
さらにもう一つの利点は、本発明が、十分な肝臓期マラリア抗原を回収する手段を提供するという点であり、その抗原は、次いで、例えば、肝臓感染期を標的としたワクチンを開発するために使用され得る。肝臓期感染は、寄生虫の成熟にとって必要であり、RBCの感染が起こる前に起こるため、肝臓期ワクチンの開発は、感染の確立を防止する手段を提供し得る。
【0017】
本発明のもう一つの利点は、それが、肝臓期寄生虫を標的とした薬物の研究において使用され得るという点である。
【0018】
本発明は、肝細胞侵入の過程の検討において使用するためのモデル、およびこの発達段階を防止する方法も提供する。
【0019】
本発明は、さらに、肝細胞における寄生虫の成熟の生物学、およびその後の放出の過程を調査するためのモデルを提供し、治療的または予防的な介入の開発およびスクリーニングも提供する。本発明のさらにもう一つの利点は、寄生虫が、肝臓から放出された後に血流に入ることができ、その後、輸液によりマウス宿主に導入されたヒト赤血球に侵入し、感染させ得るという点である。従って、本発明のモデルは、赤血球侵入の過程および生殖母細胞の発達の調査のため、そして治療的および予防的な介入の付加的な標的としてこれらをスクリーニングする機会を提供する。本発明のモデルは、赤内感染期を阻害する治療剤として作用する薬剤のスクリーニングも可能にする。
【0020】
本発明のこれらおよびその他の利点および特質は、以下により完全に記載されるような動物モデルおよびその使用法の詳細を参照することにより、当業者に明らかになるであろう。
【0021】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含有している。カラーの図面を含むこの特許または出願公開のコピーは、請求および必要料金の支払いにより米国特許商標庁(U.S. Patent and Trademark Office)より提供されるであろう。
【0022】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞系、動物の種または属、構築物、および試薬に制限されず、当然、変動し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、本明細書において使用される用語法は、特定の態様を記載するためのものに過ぎず、制限的なものではないことも理解されたい。
【0023】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各値も、情況がそうでないことを明白に指示しない限り、下限の単位の小数第一位まで、特に開示されることが理解される。明示された範囲の中の明示された値または間にある値と、その明示された範囲の中の他の明示されたまたは間にある値との間のより小さい各範囲も、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立にその範囲に含まれるか、または排除され得、より小さい範囲に一方もしくは両方の限度が含まれるか、または両方含まれない各範囲も、明示された範囲の中の特別に排除される限度を条件として、本発明に包含される。明示された範囲が一方または両方の限度を含む場合には、これらの含まれた限度の一方または両方が排除された範囲も、本発明に含まれる。
【0024】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が本明細書には記載される。本明細書において言及された全ての刊行物は、その刊行物が関連して引用された方法および/または材料を開示し記載するため、参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「and」、および「the」には、情況がそうでないことを明白に指示しない限り、複数の対象が含まれる。従って、例えば、「肝細胞」との指示には、複数のそのような肝細胞が含まれ、「非ヒト動物」との指示には、一つまたは複数の非ヒト動物および当業者に公知のそれらの等価物の指示が含まれ、その他も同様である。
【0026】
本明細書に記述された刊行物は、本願の出願日以前のそれらの開示のためにのみ提供される。本発明が先行発明のためそのような刊行物に先行している権利を有しないことの承認として解釈されるべきものは、本明細書中には存在しない。さらに、提供された刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なるかもしれず、独立に確認される必要があるかもしれない。
【0027】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用されるような「マラリア寄生虫」とは、他に特記しない限り、そして、本明細書において使用されるような「ヒトマラリア寄生虫」とは、一般に、ヒトにおける寄生虫疾患の病因であるプラスモディウム属の寄生虫種をさす。現在、ヒトにおいてマラリアを引き起こすことが公知のプラスモディウムの種は、少なくとも4つ存在する:P.ファルシパルム;P.ビバックス;P.オバレ(ovale);およびP.マラリエ(malariae)。寄生虫は、天然には、感染したアノフェレス属の雌蚊の刺咬によってヒト宿主に伝達され得る。「ヒトマラリア寄生虫」とは、寄生虫を、ヒトについて直ちに回収されるものに制限するためのものではなく;むしろ、ヒト疾患を引き起こすことができるマラリア寄生虫をさすためのものである。そのようなヒトマラリア寄生虫は、通常、非霊長類動物には感染性でない。
【0028】
本明細書において使用されるような「キメラの」(例えば、「キメラ動物」または「キメラ肝臓」)とは、異種の組織または細胞を含む器官または動物を記載するものである。特に対象となるのは、動物の肝臓に生着したヒト肝細胞の存在のためにキメラとなっているキメラ動物である。
【0029】
「免疫低下の」とは、動物が、異種の組織または細胞に対する完全または有意な免疫応答を開始し得ないこと、例えば、宿主動物の免疫応答に、移植された細胞を拒絶する効果がないことを意味する。
【0030】
「トランスジーン」という用語は、哺乳動物細胞、特に、生存している動物の哺乳動物細胞のゲノムに人工的に挿入された、または挿入されようとしている遺伝材料を記載するために本明細書において使用される。
【0031】
「トランスジェニック動物」とは、その細胞の一部に染色体外エレメントとして存在するか、またはその生殖細胞系列DNAに(即ち、その細胞の大部分もしくは全てのゲノム配列に)安定的に組み込まれた非内因性(即ち、異種)の核酸配列を有する非ヒト動物、一般的には、哺乳動物を意味する。異種核酸は、例えば、当技術分野において周知の方法による、宿主動物の胚または胚性幹細胞の遺伝子操作により、そのようなトランスジェニック動物の生殖細胞系列に導入される。「トランスジーン」とは、そのような異種核酸、例えば、(例えば「ノックイン」トランスジェニック動物の作製のための)発現構築物の形態の異種核酸、または(例えば「ノックアウト」トランスジェニック動物の作製のための)標的遺伝子内もしくはその近傍への挿入により標的遺伝子発現の減少をもたらす異種核酸をさすものである。
【0032】
遺伝子の「ノックアウト」とは、好ましくは、標的遺伝子発現が検出不可能または非有意であるような、標的遺伝子の機能の減少をもたらす遺伝子の配列の改変を意味する。トランスジェニックノックアウト動物には、標的遺伝子のヘテロ接合性ノックアウトまたは標的遺伝子のホモ接合性ノックアウトが含まれ得る。本明細書において使用されるような「ノックアウト」には、例えば、標的遺伝子改変を促進する物質への動物の曝露、標的遺伝子部位(例えば、Cre-lox系におけるCre)における組み換えを促進する酵素の導入、または出生後に標的遺伝子改変を指図するためのその他の方法によって、標的遺伝子の改変が起こり得る、条件的ノックアウトも含まれる。
【0033】
標的遺伝子の「ノックイン」とは、例えば、付加的な標的遺伝子のコピーの導入による、または内因性の標的遺伝子のコピーの増強された発現を提供する制御配列を機能的に挿入することによる、標的遺伝子の改変された発現(例えば、増加した(異所性を含む)または減少した発現)をもたらす宿主細胞ゲノムの改変を意味する。「ノックイン」トランスジェニックには、標的遺伝子のヘテロ接合性ノックインまたは標的遺伝子のホモ接合性ノックインが含まれ得る。「ノックイン」には、条件的ノックインも包含される。
【0034】
「機能的に連結された」とは、DNA配列と制御配列とが、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が制御配列に結合した場合に遺伝子発現を許容するよう接続されていることを意味する。
【0035】
「機能的に挿入された」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、導入された関心対象のヌクレオチド配列の転写および翻訳を指図するヌクレオチド配列に隣接して位置付けられていることを意味する。
【0036】
本明細書において使用されるような「治療剤」という用語は、プラスモディウム感染に関連したもののような疾患または状態、例えば、肝臓状態の処置において有用な、任意の分子、例えば、タンパク質または低分子、薬学的化合物、抗体、アンチセンス分子、リボザイム等をさす。例えば、本発明の治療剤には、プラスモディウム感染、特にP.ファルシパルム感染に関連した症状(例えば、例えば組織学または分子的分析により、組織において観察され得る症状)を阻害、改善、または軽減する分子が含まれる。
【0037】
マラリア寄生虫に感染した本明細書に記載された動物モデルに関連して使用されるような「感染」という用語は、動物が、マラリア感染に関連した任意のまたは全ての臨床症状を示してもよいし、または示さなくてもよい、マラリア寄生虫が回収され得る動物の情況をさす。
【0038】
「処置」、「処置すること」等の用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的な効果の入手を意味するために本明細書において使用される。その効果は、疾患もしくはその症状の完全もしくは部分的な防止という点から予防的であるかもしれないし、かつ/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害効果の部分的もしくは完全な治癒という点から治療的であるかもしれない。本明細書において使用されるような「処置」には、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置が内含され、(a)疾患の素因を有しているかもしれないが、未だ疾患を有すると診断されていない対象において疾患が起こるのを防止すること;(b)疾患を阻害すること、即ち、その発症を阻止すること;または(c)疾患を軽減すること、即ち、疾患の後退を引き起こすことが含まれる。
【0039】
本明細書において使用されるような「単位剤形」という用語は、対象(例えば、動物、一般的にはヒト)のための単一の投薬量として適当な物理的に不連続の単位をさし、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、または媒体と共に、所望の効果を生ずるのに十分な量の予定された量の薬剤を含有している。本発明の新規の単位剤形の明細は、利用される特定の薬剤および達成すべき効果、ならびに宿主における各化合物に関連した薬力学を含むが、これらに制限はされない、多様な要因に依るであろう。
【0040】
概説
本発明は、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を有し、ヒトマラリア寄生虫、例えば、ヒトにおけるマラリアの病因であるプラスモディウム(Plasmoidum)の種による感染を支持するネズミ動物モデルの開発に基づく。
【0041】
ネズミ動物モデルは、一般に、宿主の発達の適切な段階における、好ましくは宿主の出生直後の、トランスジェニックマウス宿主の肝臓へのヒト肝細胞の移植を含む。
【0042】
本発明者らの知る限り、本発明は、ヒトにおけるマラリア感染のモデルとして使用するための、確実に達成された安定的なヒト肝細胞生着を有する非霊長類宿主を初めて提供し、その動物モデルは、通常の感染経路を通して(例えば、静脈内接種により、感染することができ、肝臓の感染およびマラリア生活環の全ての期を通した寄生虫の発達を支持することができる。その動物モデルは、前赤内期、肝臓感染期、および赤内期を含む生活環の様々な期において、そして、ある生活期から次の生活期への発達および移行に関与している過程においてマラリアを阻害する薬剤をスクリーニングする能力を提供するため、本発明のこの局面は、抗マラリア剤の開発における使用にとって特に重要である。
【0043】
従って、本発明は、一つまたは複数の期のヒトマラリア寄生虫に感染した上記のようなキメラ動物を特徴とする。さらに、本発明は、ヒトマラリア寄生虫による感染の処置または防止のための薬剤を同定する方法を含む、本明細書に記載されたマラリア感染キメラ動物モデルの使用法を特徴とする。
【0044】
以下に本発明をより詳細に記載する。
【0045】
宿主動物
宿主動物は、一般に、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の肝臓における増加した産生を有し、ヒト肝細胞が生着し維持され得る非ヒト免疫低下哺乳動物である。本発明の動物モデルの基となり得る例示的な非ヒト動物には、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、霊長類等が含まれるが、必ずしもこれらに制限はされない。一つの態様において、宿主動物は、ロデンティア(Rodentia)属のもの、好ましくはマウスである。好ましい態様において、宿主動物は、免疫低下マウス、好ましくはウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)に関してトランスジェニックの免疫低下マウス、より好ましくはuPAの肝臓特異的産生を提供するトランスジーン(例えば、Alb-uPAトランスジーン、例えば、Heckel et al Cell 62:447 (1990)を参照のこと)を含む免疫低下マウスである。本発明において使用するのに適したマウスは、系統C.B-17、C3H、BALB/c、C57131/6、AKR、BA、B10、129等を含むが、必ずしもこれらに制限はされない多様なバックグラウンド系統のうちの任意のものから作製され得る。宿主動物は、雄または雌のいずれかであり得る。
【0046】
免疫低下バックグラウンド
上述のように、宿主動物は、好ましくは免疫低下状態にある。移植に適した、所望の免疫無能を有する免疫低下哺乳動物宿主は、入手可能である。または、それほど好ましくはないが、例えば、一つまたは複数の化合物(例えば、シクロスポリン)の投与、および当技術分野において周知のその他の方法により、免疫適格動物から免疫低下動物を作製することもできる。一般に、免疫低下宿主は、異種の組織または細胞に対する完全な免疫応答を開始することができない。
【0047】
特に対象となるのは、免疫グロブリンおよびT細胞抗原受容体をコードする遺伝子座における生殖細胞系列DNA再編成を受けることを不可能にする遺伝的欠陥のために免疫低下状態にある動物である。機能的なT細胞またはB細胞の数を有意に減少させるか、または検出不可能にする一つまたは複数の遺伝的欠陥を有する免疫低下動物も、対象となる。
【0048】
一つの態様において、動物の自然免疫系は、動物が、少なくとも検出可能〜正常動物と比べて(例えば、正常マウス、特に同一遺伝子型の正常マウスと比べて)ネイティブのナチュラルキラー細胞および/またはマクロファージの活性を有するよう、少なくとも部分的に完全である。特に対象となるのは、scid変異と、少なくとも部分的に完全な(例えば、少なくとも検出可能〜ネイティブのナチュラルキラー細胞および/またはマクロファージの活性を有する)自然免疫系との両方を有するマウスである。
【0049】
もう一つの態様において、動物は、ナチュラルキラー(NK)細胞欠損に関連しているベージュ変異(bg)を有する。一つの態様において、生物に導入された同種異系または異種の細胞または組織に対する効果的な免疫応答を開始しない動物をもたらす、scid変異およびbgベージュ変異の両方を有しているマウスが作製される。
【0050】
特に対象となるのは、scid遺伝子座にホモ接合性の変異(scid/scid)を有するマウスである。scid変異は、DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットの欠損に関連しており、免疫グロブリンおよびT細胞受容体の遺伝子におけるVDJ組換えを妨げる。scid変異に関してホモ接合性の動物は、機能的に組み換えられた免疫グロブリンおよびT細胞受容体の遺伝子を欠き、従って、T細胞系統およびB細胞系統の両方が欠損している。scid/scid変異は、入手可能であるか、または多数の異なる遺伝バックグラウンド(例えば、CB.17、ICR(非近交系)、C3H、BALB/c、C57B1/6、AKR、BA、B10、129等)へと交配され得る。
【0051】
現在入手可能なその他の例示的な免疫低下宿主には、RAG-1および/もしくはRAG-2に関連したリコンビナーゼ機能を欠くか(例えば、市販されているTIM(商標)RAG-2トランスジェニック)、クラスIおよび/もしくはクラスII MHC抗原を欠くか(例えば、市販されているC1DおよびC2Dのトランスジェニック系統)、またはBcl-2癌原遺伝子の発現を欠くよう遺伝子操作されたトランスジェニックマウスが含まれる。レシピエントとして有用であるかもしれないその他のマウスは、NOD scid/scid;SGB scid/scid,bh/bh;CB.17 scid/hr;NIH-3 bg/nu/xid、およびMETA nu/nuである。CD3F遺伝子のホモ接合性の破壊のために機能的なB細胞およびT細胞を欠くトランスジェニックのマウス、ラット、およびブタが、入手可能である。免疫低下ラットには、HsdHan:RNU-rnu;HsdHan:RNU-rnu/+;HsdHan:NZNU-rnu;HsdHan:NZNU-rnu/+;LEW/HanHsd-rnu;LEW/HanHsd-rnu/+;WAG/HanHsd-rnu、およびWAG/HanHsd-rnu/+が含まれる。一つの対象となる態様において、動物は、Ragおよび共通ガンマ鎖両方のノックアウトを有する(従って、T、B、またはNK細胞を実質的に有しない)免疫不全マウスである。
【0052】
ウロキナーゼのトランスジェニック発現
上述のように、本発明のキメラ動物は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の発現に関する「ノックイン」トランスジェニックでもある。一つの態様において、トランスジーンは、ネズミアルブミンエンハンサー/プロモーター、ネズミuPA遺伝子コーディング領域、ならびに成長ホルモン遺伝子の3'非翻訳配列および隣接配列を含むAlb-uPAトランスジーンである(Heckel et al. Cell 62:447-56 (1990);Sandgren et al. Cell 66:245-56 (1991))。好ましくは、動物は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジーンに関して、ヘテロ接合性ではなく、ホモ接合性である。Alb-uPAトランスジーンは、それを保持している肝細胞に致死的な傷害をもたらし、ウロキナーゼの高い局所(肝臓内)濃度ももたらし、それが、次に、肝臓内で肝細胞増殖因子をその活性型へとプロセシングする。理論に拘束されるものではないが、Alb-uPAトランスジェニック動物の発達中の適切な時点で導入された生存可能な同種異系または異種の細胞は、この環境において複製するよう刺激される。従って、ドナー細胞は、増殖して、トランスジーンの致死的な傷害の結果として死滅する内因性肝細胞に「取って代わる」ようになる。
【0053】
移植に適したヒト肝細胞およびその他の細胞の単離
宿主動物への移植のためのヒト肝細胞は、当技術分野において公知の任意の便利な方法によりヒト肝組織から単離される。一般に、ヒト肝細胞は、(例えば、死亡後数時間以内に入手された)新鮮な組織、または新鮮に凍結させられた組織(例えば、凍結させられ約0℃以下で維持された新鮮な組織)であり得る。理想的には、使用される細胞は、新鮮に入手されたヒト肝組織から最近(即ち、2〜4時間以内に)単離されたものである。定義された低温保存培地に置かれたヒト肝細胞は、長期にわたり(例えば、液体窒素中で)保存し、必要に応じて解凍させることができ、従って、保存された肝細胞のバンクの開発が可能である。一般に、単離手法、ならびに取り扱いおよび保存のプロトコルは、肝臓への血流の停止後の温虚血を最小限(例えば、一般に、約30分〜60分未満、好ましくは約20分〜約40分未満)に抑え、かつ保存に起因し得る冷虚血を最小限(例えば、一般に、約12hr未満、一般的には約1hr〜2hr未満)に抑えるようなものであることが、一般的に重要である。一つの態様において、ヒト組織は、正常であり、例えば、検出可能な病原体を有しておらず、形態学および組織学が正常であり、かつ本質的に無疾患である)。一般的に、温虚血曝露の期間は、約20〜50分以内である。
【0054】
単細胞の懸濁物を提供するために肝組織を機械的もしくは酵素的に解離させてもよいし、または完全なヒト肝組織の断片を使用してもよい。好ましい態様において、肝細胞は、ルーチンのコラゲナーゼ潅流(Ryan et al. Meth. Cell Biol 13:29 (1976))に続く低スピード遠心分離により、ドナー組織から単離される。次いで、肝細胞は、ステンレス鋼メッシュ(例えば、100μm)によるろ過に続く密度勾配遠心分離により精製され得る。または、肝細胞を濃縮するためのその他の方法、例えば、蛍光標示式細胞分取、パニング(panning)、磁気ビーズ分離、遠心力場内での溶離等が使用され得る。移植に使用される最終的な懸濁物は、一般に80〜99%のトリパンブルー排除による生存率を有する、少なくとも約50〜75%の肝細胞、一般的には少なくとも約80〜99%の肝細胞を一般に含む。
【0055】
もう一つの態様において、移植される細胞は、宿主動物の肝臓への移植後に、マラリア感染に感受性のヒト肝細胞へと発達または分化する、ヒト幹細胞または肝細胞前駆細胞である。一つの特定の態様において、ヒト幹細胞は、ヒト臍帯血球から入手される。ヒト臍帯血球は、肝細胞の幹細胞再生のための起源であるのみならず、免疫系の再生のための起源でもある(例えば、Verstegen et al. Blood. 91(6):1966-76 (1998)参照)。
【0056】
ヒト肝細胞またはその他の適当な細胞の宿主への移植
トランスジェニック免疫低下宿主へのドナー肝細胞の導入のタイミングは、キメラ肝臓をマラリア寄生虫感染に対して感受性にし、その複製および発達を支持するために十分な数のヒト肝細胞が定植したキメラ肝臓の作製にとって重要であるかもしれない。寄生虫が低い感染性および/または低い複製速度を示すことが予想される場合には、特にこのことが当てはまる。
【0057】
動物がネズミ(例えば、マウス)である場合、宿主は、移植の時点で、理想的には、10日〜2週齢未満であり、最適には約7〜10日齢、または約1週未満(即ち、5〜7日齢未満)である。一般に、移植は、好ましくは、約8〜10日齢と15日齢との間に実施される。移植のためのウィンドウは、良好な結果を維持しながら、柔軟性を獲得するため、約7〜18日齢にまで広げることができる。一般に、5〜12日齢での肝細胞移植が最も興味深く、4日齢での肝細胞移植には、技術的に有能なスタッフが必要とされ、12日齢を超えた肝細胞移植は、全体移植成功率の低下に関連している。理論に拘束されるものではないが、本明細書に示された移植のタイミングは、極初期の移植に関連した(即ち、動物の小さいサイズのための)過剰の技術的死亡率と、最大複製刺激のための時間(例えば、移植片がドナーヒト細胞の生着の成功および程度に影響を及ぼし得る前に起こるレシピエント肝臓における細胞分裂の数)との折衷である。さらに、トランスジーンにより提供される肝細胞再増殖のための刺激は、時間とともに縮小し、一般にレシピエントが約6週齢を超えた後に枯渇するため(Rhim et al. (1994) Science 263:1149-52;ホモ接合体では約10〜12週)、移植のタイミングはやはり重要である。
【0058】
ヒト肝細胞(またはその他の適当な細胞、例えば、肝細胞前駆細胞または幹細胞)は、当技術分野において公知の任意の適当な方法を使用して移植され得る。好ましくは、ヒト肝細胞は、脾臓内に、例えば、脾臓下極に注入される。
【0059】
成功した生着は、従来の方法、例えば、宿主血清中のヒト肝臓特異的タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HA)またはヒトアルファ-1アンチトリプシンのレベルを調査することにより、モニタリングされ得る。キメラ宿主は、適当である場合には、実験のため(例えば、マラリア寄生虫による感染のため、候補薬剤をスクリーニングするため等)使用され得る。比較的低い感染性および/または低い複製能の寄生虫を動物に感染させる場合には、キメラ動物は、移植後約4〜6週以内、一般には移植後約6週目に接種され得、移植後3週という初期であってもよい。
【0060】
一般に、動物宿主は、ヒト肝細胞である肝細胞の体積百分率が、少なくとも約20%〜50%、一般に約40%〜60%以上となり、90%以上に最適化され得るよう、その肝臓内でヒトキメラ化を発達させる。キメラ動物は、少なくとも数週間、一般に少なくとも約5週間、より一般的には少なくとも約12週〜24週間、最長8ヶ月以上、機能的な移植された肝細胞により維持され得、最長で宿主の一生であり得る。
【0061】
ヒト赤血球を有するキメラ動物の作製
一つの対象となる態様において、本発明のキメラ動物は、ヒトマラリア生活環の赤内期を容易にするかまたは支持するため、ヒト赤血球(RBC)を供給される。
【0062】
例えば、本発明のキメラ動物は、P.ファルシパルムスポロゾイトに感染させられ、次いで、洗浄されたヒト赤血球(RBC)1.0mlを2日連続して腹腔内輸液され得る。これは動物の循環血中赤血球集団を75〜95%ヒトにするであろう。または、キメラマウスモデルにおけるヒト赤血球細胞の生成は、ヒト臍帯血またはヒト胎児肝細胞調製物からの起源のヒト幹細胞の移入により確立され得る。
【0063】
それが達成される方法に関わらず、例えば、少なくとも約40%〜約95%以上のヒトRBC、少なくとも約50%〜約90%のヒトRBC、少なくとも約60%〜約85%のヒトRBC、少なくとも約70%〜約85%のヒトRBC、または少なくとも少なくとも45%〜約60%のヒトRBCを有するキメラ動物が作製され得る。例えば、2日連続の洗浄されたヒトRBC 1mlの腹腔内輸液は、80〜95%のヒト循環血中RBCを有するマウスをもたらし得、これは少なくとも3日間維持される。
【0064】
方法使用に関わらず、動物へのヒト赤血球の供給は、マラリアメロゾイトが肝細胞を去り、ヒト赤血球に入ることを可能にする。末梢赤血球が実質的な割合のヒト赤血球を含有しているのであれば、末梢スメア調査またはマラリア寄生虫のPCRが、マラリア生活環の赤内期の再発達を確立するために使用され得る。さらに、そのような感染キメラ動物は、第二の宿主キメラ動物への蚊によるマラリア寄生虫の移入を容易にすることができ、従って、モデルにおける全マラリア生活環を提供する。
【0065】
本発明者らは、P.ファルシパルムによる感染後7日目に採集されたマウス肝臓のホモジネートが、RBC培養物への寄生虫のインビトロ導入後の、RBC調製物のギムザ染色スライドの顕微鏡検により確認されるように、24、48、および72時間、インビトロでヒトRBCを感染させ得ることを示した。
【0066】
マラリア寄生虫および感染
マラリア寄生虫を入手し、哺乳動物に投与する方法は、当技術分野において周知である。例えば、感染したアノフェリン蚊は、Malaria Program at the Naval Medical Research Center, Silver Spring, Marylandから入手される。蚊をマイクロダイセクトし、スポロゾイトを含有している唾液腺をすりガラスホモジナイザー(homgenizer)で摩砕し、計数し、マウスへと静脈内注射(0.1〜3×106寄生虫/マウス)する。注射される寄生虫の数は、特定の研究にも依るし、蚊からのスポロゾイトの回収にも依る。P.ファルシパルムスポロゾイトの回収のための具体的な手順は、当技術分野において周知であり、プラスモディウムの領域における研究者の慣習的な実務である。
【0067】
P.ファルシパルム寄生虫は、およそ7〜9日かかって肝細胞において成熟し、その後、肝細胞から放出され赤血球を感染させるであろう。従って、P.ファルシパルムによる感染の慢性状態は存在しない。しかしながら、P.ビバックスは、長期(数ヶ月〜数年)にわたり発達を阻止された状態で肝臓内に残留するヒプノゾイトを形成することができる。理解されていない理由により、P.ビバックスヒプノゾイトは、発達を再開し、肝細胞において成熟するであろう。この現象は、インビトロの系では研究され得ないが、本発明のキメラ動物モデルでは査定され得るため、この現象を研究する能力は、さらにもう一つの本発明の利点および特質である。
【0068】
感染宿主の寄生虫負荷は、決定され得る。寄生虫負荷は、例えば、組織(例えば、肝細胞、血液スメア)の調査、PCR(例えば、リアルタイムPCRアッセイ)等により、定性的または定量的に決定され得る。例えば、リアルタイム定量的PCR(RTQ-PCR)は、P.ファルシパルム感染キメラ動物の肝臓および血液における寄生虫荷重を決定するために利用され得る。プラスモディウムの小サブユニット(18S)リボゾームRNA遺伝子は、RTQ-PCRの標的として使用され得る、よく保存された遺伝子である。定量的分析のための標準曲線は、既知濃度の血液期寄生虫から抽出されたDNAを使用して構築され得る。肝臓期試料からのDNAが抽出され、既知濃度の寄生虫からのDNAを用いたRTQ-PCRアッセイにおいて使用される。サイクルしきい値(cycle threshold)(Ct)対寄生虫数が標準について作製され、肝臓期試料のCTをプロットすることにより肝臓内の寄生虫数が計算される。
【0069】
感染宿主の経時的な寄生虫負荷は、天然の生活環における寄生虫の発達と相関する、ヒト感染において観察されるものを模倣し得る。従って、本発明には、EE期寄生虫(発達中の肝内メロゾイトを含む肝臓期寄生虫)を有するキメラ宿主も、(トロフォゾイトを含む)赤内期(または「赤血球」期)寄生虫を有するキメラ宿主も包含される。一般に、キメラ動物は、マラリア生活環の全部または一部(例えば、前赤血球)を支持するために提供され得る。即ち、本発明の動物モデルは、ある感染キメラ動物からの血液由来寄生虫の(例えば、人工的移入、または蚊による)もう一つの動物への移入を含み得る、全ての期を通したマラリア寄生虫(例えば、P.ファルシパルム)の全生活環を支持することができる。
【0070】
一般に、P.ファルシパルムにおいて、肝臓期は、一般に、感染の最初の2週(例えば、10日以下)以内にのみ起こる。その後、マラリア寄生虫は、全て血液期となり、そこで赤血球を感染させ、発達し、次いで放出され、再びRBCを感染させて、寄生虫の数を増加させる。マラリア寄生虫発達のこれらの期のいずれかを阻害し得る薬剤を同定するための本発明の動物モデルの使用が、本発明により企図され、これに伴い赤血球期寄生虫に影響を与え得る、大部分のマラリア患者の処置に適した薬剤が、特に対象となる。
【0071】
本発明のキメラ動物の感染は、約10匹、100匹、5×102匹、103匹、5×103匹、104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、または107匹、一般的には、約10匹、100匹、5×102匹、103匹、5×103匹、104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、またはそれ以下の寄生虫の動物への(例えば、動物の血流への)導入により確立され得る。肝臓期(例えば、感染後5〜7日目)における本発明の感染キメラ動物の寄生虫負荷は、約104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、107匹、5×107匹、または108匹、またはそれ以上であり得る。赤内期における本発明の感染キメラ動物の寄生虫負荷は、約104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、107匹、5×107匹、または108匹、またはそれ以上であり得る。
【0072】
いくつかの態様において、本発明のキメラ動物のマラリア感染は、少なくとも3日、5日、6日、7日、8日、またはそれ以上維持され、例えば、上記のようなヒトRBCを有するキメラ動物においては、赤内期の寄生虫を含む感染のより長い期間が維持される。
【0073】
スクリーニングアッセイ
本発明のキメラ動物は、マラリアの感染、発達、複製等を阻害する薬剤の同定に適した多様なスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。この目的のため、本発明の動物モデルは、そのような効果に関して候補薬剤をスクリーニングするために使用される。
【0074】
本明細書に記載されたスクリーニングアッセイは、(肝臓期を含む)EE感染期および赤内(erthrocytic)感染期を含むマラリア生活環の任意の期のマラリア感染を有するキメラ動物を用いて使用され得る。従って、本発明は、スポロゾイトによる肝細胞の感染の阻害、肝細胞内での発達の阻害、肝細胞からのメロゾイトの放出の阻害、メロゾイトによる赤血球の感染の阻害、赤血球内での発達の阻害、メロゾイトの放出の阻害等を含む、任意の期のマラリア寄生虫に影響を与える薬剤のスクリーニングを包含する。
【0075】
「候補薬剤」とは、合成の、天然に存在する、または組換えにより作製された分子(例えば、低分子;薬物;ペプチド;抗体(例えば、受動免疫を提供するための、抗原結合性抗体断片を含む)またはその他の免疫治療剤;真核細胞または原核細胞に存在する内因性因子(例えば、ポリペプチド、植物抽出物等)等)を含むものである。特に対象となるのは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。
【0076】
候補薬剤には、多数の化学物質クラスが包含されるが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは、50超かつ約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも一つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基を含み、好ましくは、官能化学基のうちの少なくとも二つを含む。候補薬剤は、しばしば、上記官能基のうちの一つまたは複数で置換された環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造アナログ、または組み合わせを含むが、これらに制限はされない生体分子の中にも見出される。
【0077】
候補薬剤は、合成または天然の化合物のライブラリーを含む多様な起源から入手される。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多様な有機化合物および生体分子のランダム合成および特異的合成のため、多数の手段が利用可能である。または、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、入手可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的な手段を通して容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリーを作製するために使用され得る。構造的アナログを作製するため、公知の薬理学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)等のような、特異的またはランダムな化学的修飾に供することができる。
【0078】
一つの態様において、本発明の動物モデルは、マラリア感染により引き起こされた症状を改善する薬剤を同定するため(ここで、症状には、組織病理学が含まれる)、かつ/または感染中の寄生虫の病原メカニズムに、より直接的に影響を与えるため、例えば、寄生虫感染を阻害するため、生活環の一つもしくは複数の期の寄生虫の複製を減少させるため、またはマラリア生活環を破壊するため、使用される。一般には、候補薬剤が本発明の動物モデルに投与され、対照と比べた(例えば、未感染動物と比べた、公知の抗マラリア効果を有する薬剤(例えば、クロロキン;マラロン(malarone);アルテミシニン(artemisinin)化合物、特にアルテスネート(artesunate)、アルテメーテル(artemether)、およびジヒドロアルテミシニン等)により処置されたマラリア感染動物と比べた)候補薬剤の効果が査定される。例えば、候補薬剤が本発明のマラリア感染動物に投与され、(例えば、血液または肝臓試料のRT-PCRにより測定されるような)処置された動物の寄生虫力価が、処置前の動物の寄生虫力価、および/または対照の未処置のマラリア感染動物と比較され得る。一般に、候補薬剤による処置後の、感染動物の寄生虫力価の検出可能な有意な減少は、薬剤の抗マラリア活性の指標となる。
【0079】
候補薬剤は、所望の結果を達成するために、薬剤の送達のための望ましいかつ/または適切な任意の様式で投与され得る。例えば、候補薬剤は、注射(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、または所望の効果を達成すべき組織への直接注射)、経口、またはその他の望ましい手段により、投与され得る。通常、インビボスクリーニングは、様々な量および濃度の候補薬剤(薬剤なし〜動物に成功裡に送達され得る量の上限に近い量の薬剤)を受容する多数の動物を含み、異なる製剤および経路での薬剤の送達を含み得る。さらに、薬剤は、上記のような寄生虫の生活環の様々な期において動物に投与され得、宿主が肝臓期寄生虫を含有している時の投与が、特に対象となる。薬剤は、単独で投与されてもよいし、または、特に、薬剤の組み合わせの投与が相乗効果をもたらし得る場合には、二つ以上の組み合わせへと組み合わせられてもよい。
【0080】
候補薬剤の活性は、多様な方式で査定され得る。例えば、薬剤の効果は、寄生虫の存在(例えば、力価)または病原体の存在に関連したマーカー(例えば、病原体特異的タンパク質(P.ファルシパルムヒスチジンリッチタンパク質II)もしくはコーディング核酸等)に関して血液試料を調査することにより査定され得る。マラリア感染の存在および重度を検出し査定するための定性的および定量的な方法は、当技術分野において周知である。
【0081】
プラスモディウム感染の迅速な決定のための最もよく知られている技術は、イムノクロマトグラフィストリップである。このフォーマットにおいては、P.ファルシパルムタンパク質に特異的なモノクローナル抗体が、ニトロセルロースストリップへ固定化され、感染個体の血中に見出される抗原を捕獲するために使用される。普及している試験は、Pfヒスチジンリッチタンパク質の捕獲を使用する。フィールドスタディーにおいて、テストストリップは、1μl当たり500匹未満の寄生虫を検出し得ることが示されている。これは、本発明の感染キメラ動物の血中の寄生虫レベルを査定するために利用され得る例示的な技術である。
【0082】
一つの態様において、マラリア感染に対する薬剤の活性は、(例えば、RT-PCR、抗マラリア抗原抗体を使用した抗体結合等により)マラリア寄生虫の存在に関して血液試料および/または組織切片を調査することにより査定され得る。もう一つの態様において、マラリア感染に対する薬剤の活性は、マラリアの核酸または抗原の存在に関して血清試料を調査することにより査定され得る。あるいは、またはさらに、宿主肝臓を生検し、インサイチューで、組織切片内の寄生虫のレベルの定性的または定量的な改変を直接証明するため、マラリア核酸またはマラリア抗原を検出してもよい。または、またはさらに、宿主を安楽死させ、肝臓を感染の徴候に関して組織学的に調査してもよい。
【0083】
同定された薬剤
所望の薬理学的活性を有する化合物は、処置のため、生理学的に許容される担体で宿主に投与され得る。治療剤は、多様な方式で、経口、局所、非経口、例えば、皮下、腹腔内、血管内、吸入等により投与され得る。導入の様式に依って、化合物は、多様な方式で製剤化され得る。製剤中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1〜100重量%と変動し得る。
【0084】
薬学的組成物は、顆粒、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル、懸濁物、軟膏(salves)、ローション等のような様々な形態で調製され得る。経口的および局所的な使用に適した薬学的グレードの有機または無機の担体および/または希釈剤が、治療的に活性な化合物を含有している組成物を作成するために使用され得る。当技術分野に公知の希釈剤には、水性の媒体、植物性および動物性の油および脂肪が含まれる。安定剤、湿潤剤、および乳化剤、浸透圧を変動させるための塩、または適切なpH値を保証するための緩衝剤、ならびに皮膚浸透増強剤が、補助剤として使用され得る。
【0085】
ワクチン開発
いくつかの修飾により、本発明の動物モデルは、マラリア寄生虫による感染を防止または改善する能力に関して、候補ワクチンをスクリーニングするためにも使用され得る。一般に、「ワクチン」とは、投与後に、標的病原体に対する免疫応答を宿主が開始するのを容易にする薬剤である。誘発された体液性、細胞性、または体液性/細胞性免疫応答は、ワクチンが開発された病原体による感染の阻害を容易にすることができる。本発明において特に対象となるのは、マラリア寄生虫の感染および/または肝内複製を阻害する防御免疫応答を誘発する予防的ワクチンである。受動免疫または迅速にアップレギュレートされた特異活性免疫(例えば、抗マラリア免疫グロブリン等)の提供を通して防御を提供する治療的ワクチンも、対象となる。
【0086】
本発明のこの態様において、免疫低下キメラ動物の免疫系は、例えば、幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血細胞(blood cord cells)、造血(hematopoietc)細胞、または動物にヒト免疫系を提供するためのヒト起源のその他の適当な細胞を使用して再構成される。ヒト免疫細胞の単離、およびヒト免疫系による免疫低下動物、例えばマウスの免疫系の再構成のための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Nature 335:256-59;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(25): 14720-25参照)。一つの態様において、ヒト免疫細胞は、キメラ肝臓の作製において使用されたヒト肝細胞と同一のドナーから入手される。一つの態様において、ヒト免疫細胞は、当技術分野において周知の方法により、例えば、腹腔内注射により、宿主へと導入される。
【0087】
別のアプローチは、ヒト肝細胞、ならびに免疫細胞および/または赤血球血統細胞の両方による再増殖を達成し得る、ヒト胎児肝細胞のキメラマウスへの移植を含む。これは、ヒト免疫系および/またはヒト赤血球血統を有する動物の再構成を提供する。
【0088】
本発明は、ワクチン開発のための推定上の標的としての肝臓期感染からの抗原の起源としての、肝臓期感染を有するキメラ動物の使用も企図する。もう一つの態様において、ヒト免疫系による再構成を容易にするために、例えば、Rag2/共通ガンマ鎖ノックアウトのバックグラウンドを有するキメラマウスが開発され得る。
【0089】
有効なワクチンのスクリーニングは、上記のスクリーニング法に類似している。簡単に説明すると、候補ワクチンが、マラリア寄生虫の接種前に、キメラ動物に投与される。候補ワクチンは、一般に、単回ボーラス(例えば、腹腔内もしくは筋肉内注射、局所投与、または経口投与)に続く1回またはそれ以上の追加免疫感作の提供により投与される。免疫応答の誘導は、当技術分野において周知の方法により、寄生虫抗原に特異的なBおよびT細胞応答を調査することにより査定され得る。次いで、免疫感作された動物に、寄生虫がチャレンジされる(challenged);通常は、数匹の免疫感作された動物に、増加する数の寄生虫がチャレンジされる。次いで、免疫感作された動物および免疫感作されていない対照動物が、感染の発達に関して観察され、(例えば、存在する寄生虫のレベルの査定、ヒト肝細胞機能パラメーターの調査等により)感染の重度が査定される。マラリア寄生虫による感染の有意な減少および/またはチャレンジ後に生じる疾患の重度の有意な減少を提供するワクチン候補が、実行可能なワクチンとして同定される。
【0090】
実施例
以下の実施例は、いかにして本発明を作成し使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を制限するためのものではないし、下記の実験が実施された全ての唯一の実験であることを表すためのものでもない。使用された数(例えば、量、温度等)に関しては、正確さを保証すべく努力がなされたが、いくつかの実験誤差および偏差は斟酌されるべきである。他に示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、かつ圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0091】
以下の方法および材料が、下記の実施例において使用された。
【0092】
寄生虫
全ての実験が、プラスモディウム・ファルシパルムのNF54株のスポロゾイトまたは血液期寄生虫を利用した。スポロゾイトは、アノフェレスステフェンシ(stephensi)蚊で飼育された。スポロゾイトは、手解剖、または5%胎児ウシ血清を含むMedium 199(Gibco, Grand Island, NY)における不連続勾配18により単離された。
【0093】
マウス
ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジーンに関してホモ接合性の5〜14日齢のSCIDマウスが、コラゲナーゼ消化およびPercoll勾配遠心分離により外科的に切除された肝臓標本から(インフォームドコンセントをもって)単離された106個のヒト肝細胞の脾臓内注射による接種を受容した(Ryan et al., Surgery 113:48-54 (1993); Seglen Methods Cell Biol., 13:29-83 (1976))。マウスは、移植後6週目に、ELISAによるヒトアルファ1アンチトリプシンについての血清分析により、成功した生着に関してスクリーニングされた(Seglen (1976))。マウスは、Canadian Council on Animal Careのガイドラインに従い、University of Alberta Faculty of Medicine and Dentistry Health Sciences Laboratory Animal Ethics Committeeにより承認されたプロトコルの下で、University of Alberta Health Sciences Laboratory Animal Servicesにより管理された。
【0094】
スポロゾイトによる感染および組織収集
マウスは、まず1〜1.5×106匹のP.ファルシパルムスポロゾイトの静脈内尾静脈注射を受容した。次いで、マウスを、感染後3〜8日目にCO2過量により安楽死させ、凍結切片化またはRNA抽出のため肝臓を除去した。肝臓をPBSで濯ぎ、葉を別々の少片へと切断した。選択された葉を、Tissue-Tek O.C.T.化合物(Miles Scientific, Naperville, IL.)で包埋し、イソペンタン/液体N2浴中で凍結させ、その他の断片は、RNA抽出のための液体N2中で急速凍結させた。組織切片(7μm)を、Leica CM1900(Leica Microsystems, Deerfield, IL.)で切断し、無水メタノールで固定し、使用まで-80℃で保存した。
【0095】
ヒトα1-アンチトリプシンELISAアッセイ
IMMULON(商標)-296穴プレート(Corning, Inc.)を、各ウェル50μlのコーティング緩衝液(0.1M NaHCO3、pH9.5)により1:1000希釈された一次抗体(ヤギ抗ヒトα-1-アンチトリプシン、Oxoid Inc., Nepean, Ont, Canada)により4℃で一夜コーティングした。次いで、ウェルを、0.025%(v/v)Tween 20を含有しているTris緩衝生理食塩水(50mMトリス、100mM NaCl)(TBS-T)により1回洗浄した後、ブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳を含有しているTBS-T)との4℃で一夜の第二のインキュベーションを行った。ウェルを、TBS-Tにより2回洗浄した後、ブロッキング緩衝液で希釈された血清試料を添加した。移植されていないAlb/uPAマウスおよびヒトからの血清を、それぞれ、陰性および陽性の対照として使用した。ヒト参照血清の段階希釈物、Calibrator 4(Oxoid Inc., Nepean, Ont., Canada)を、標準曲線の構築のために使用した。室温で2時間後、ウェルをTBS-Tにより3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に連結された一次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。一次抗体のHRPとの接合は、製造業者の指示に従い、EZ-Link Plus Activated Peroxidase Kit(Pierce, Rockford, IL)を使用して行った。ウェルをTBS-Tで3回洗浄し、50μlのHRP基質溶液(H2O2(0.02%v/v)が新鮮に添加された、1mgの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン二塩酸塩(Sigma, Oakville, Ont., Canada)を含む0.05Mリン酸クエン酸(phosphatecitrate)緩衝液(pH5))を、正確に5分間添加した。各ウェルへの50μlの2N H2SO4の添加により反応を終結させ、450nmの吸光度における分光測光法によりHRP活性を決定した。hAATの血清レベルを、ヒト参照標準により作成された標準曲線から計算した。
【0096】
抗体
いくつかの異なるモノクローナル抗体およびポリクローナル抗血清を、免疫蛍光アッセイ(IFA)のため使用した。抗CSモノクローナル抗体(mAb)2A10は、CSタンパク質のリピート領域に結合するものであり、P.ファルシパルムに特異的であった(Nardin et al., J. Exp. Med. 156:20-30 (1982))。PfSSP2組換えタンパク質によるマウスの免疫感作により作製された抗SSP2 mAb(PfSSP2.1)(Charoenvit et al., Infect. Immun. 65:3430-3437 (1997))も、P.ファルシパルムに特異的であった。HSP70 mAb(Tsuji et al., Parasitol. Res. 80:16 (1994))は、P.ベルゲイ寄生虫に対して作成されたものであるが、P.ファルシパルムと交差反応する。EXP-1抗血清は、全長遺伝子を含有しているDNAワクチン構築物によるウサギの免疫感作により作製された。LSA-1抗血清は、15マーのLSA-1リピート(LEQERLAKEKLQEQQ(配列番号:01))(Zhu et al., Mol. Biochem. Parasitol. 48:223-226 (1991))を8コピーを含有していた、多重抗原性ペプチド(MAP)(Tam et al., J. Immunol. Methods 124:53-61 (1989))による免疫感作により、ウサギにおいて作製された。EBA-175抗血清は、PfEBA-175分子の領域VIからのペプチド配列によるマウスの免疫感作により作製された。MSP-Iに対するmAbは、P.ファルシパルムメロゾイトによるマウスの免疫感作、およびその後の免疫脾細胞の骨髄腫細胞系との融合により作製された(Lyon et al., J. Immunol. 138:895-901 (1987))。
【0097】
免疫蛍光アッセイ
組織切片を含むスライドは、フォイルおよびプラスティックバッグで包み、-70℃で保存した。組織切片スライドをフリーザーから取り出し、乾燥機(dessicator)内に置き、室温へと平衡化する。次いで、100マイクロリットルの希釈された抗血清を組織切片に適用した(これは、組織を覆うのに十分な容量である)。次いで、スライドを恒湿チャンバー内で37℃で30分間インキュベートした。肝臓切片スライドを恒湿チャンバーから取り出し、染色ディッシュに置き、PBSにより5分間3回洗浄した。フルオレセイン接合IgG(Kirkegaard and Perry, Gaithersburg, Md)を、二次抗体として使用した。二次抗体の特異性は、切片を染色するために使用された一次抗体の種に依って異なった。二次抗体は、0.02%エバンスブルーを含有しているPBSで1:40希釈した。エバンスブルーは、組織内の自己蛍光を抑制するための対比染色としてはたらくよう添加された。希釈された二次抗体を添加し、スライドを、暗い恒湿チャンバー内に置き、37℃で30分間インキュベートした。次いで、組織切片を上記のように洗浄し、スライドを、VECTASHIELD(登録商標)封入剤(Vector Labs, Burlingame, CA.)を使用して封入した。染色されたスライドを、Nikon Eclipse E600エピフルオレセント(epifluorescent)顕微鏡によりスクリーニングし、ディジタル画像をSPOTディジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Inc., Sterling Hgts, MI)により収集した。
【0098】
RT-PCR
RT-PCR分析において使用するためのRNAは、以前に記載されたようにして(Lau et al., J. Parasitol. 87:19-23 (2001))、感染した肝臓から単離された。第1鎖cDNAは、Superscript First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット(Life Technologies, Gaithersburg, Md.)を使用して、全RNAから作成された。cDNAの合成は、異なる寄生虫試料から単離されたRNAを、ランダムヘキサマーまたはオリゴ-dtのいずれかによりプライミングし、次いで逆転写酵素と共にインキュベートすることにより実施された(RT+)。ゲノムDNAの存在に関する対照として、逆転写酵素を省略した反応を行った(RT-)。特定の遺伝子配列の増幅は、HotStarTaq PCRキット(Quiagen, Valencia, CA)からのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを使用して、PCRにより達成された。cDNA反応物からの1マイクロリットルを、以下のものを含むいくつかのオリゴヌクレオチドプライマー対のうちの一つと共に、PCRマスターミックスに添加した:
MacVector配列分析ソフトウェア(Accelrys, San Diego, CA.)を使用することにより、プライマーを設計し、PCR反応に使用される特定の条件を決定した。PCR産物を、1%アガロースゲル上の電気泳動に供し、臭化エチジウムにより染色し、DNAバンドをALPHAIMAGER(商標)(Alpha Innotech Corporation, San Leandro, CA)により可視化した。
【0099】
レーザーキャプチャーマイクロダイセクション
肝臓期寄生虫を、Sacci et al. (2002) Mol. Biochem. Parasitol. 119, 285-28914に記載されたようにして単離した。簡単に説明すると、P.ファルシパルム感染後5日目にキメラ肝臓から凍結切片を切り取り、RnaseZap(Ambion, Austin, TX)により処理されたガラススライドへ収集した。組織切片を、製造により推奨されたプロトコルに従い、HISTOGENE(商標)LCM凍結切片染色キット(Arcturus, Mountain View, CA.)を使用して染色した。RNA分解の可能性を制限するため、全ての水性の染色および洗浄の工程に、RNAse阻害剤(SUPERASE IN(商標), Ambion, Austin, TX.)を含めた。個々のシゾントを、レーザー活性化を介してメンブレンを融解させることにより、CAPSURE(商標)HS LCMキャップの熱可塑性メンブレンへと捕獲した。典型的には、レーザースポットサイズは7.5μm、出力は40mW、パルス時間は3msであった。
【0100】
100個のレーザーマイクロダイセクトされたシゾントを含有しているキャップのコホートからの全RNAを、製造業者の指示に従い、PICOPURE(商標)RNA単離キット(Arcturus, Mountain View, CA)を使用して単離した。次いで、単離されたRNAを、上記のようなRT-PCRのために使用した。
【0101】
赤血球培養
血液期培養は、Trager et al. (1976) Science 193, 673-675に記載されたようにして、少数の小さな修飾により達成された。P.ファルシパルムスポロゾイトに7日前に感染したキメラマウスからの肝組織を、無菌的に収集し、1mlのRPMI1640培養培地中でホモジナイズした。ホモジナイズされた組織の一部(100μl)を、6穴組織培養プレート内の3%ヘマトクリットを含有している赤血球培養物に添加した。培地を24時間で交換し、血液期寄生虫を同定するため、肝臓ホモジネートの導入後24および48時間目に血液スメアを行った。
【0102】
インビボ血液期感染
P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後6、7、および8日目に、50%ヘマトクリットの洗浄されたO+ヒト赤血球(huRBC)1mlをキメラマウスにi.p.注射した。感染後7日目に血液スメアの実施を開始し、11日目まで毎日行った。血液スメアを、ギムザ染色するか、または上記のような寄生虫特異的抗血清を用いた免疫蛍光アッセイにおいて使用した。
【0103】
実施例1:
プラスモディウムマラリア肝臓期感染の小動物(マウス)モデル
プラスモディウムマラリアは、毎年推定3億人が感染し、年間数百万の死亡の原因となっている寄生虫ヒト疾患マラリアの主要な病因である。より新しく、より有効な抗マラリア剤、防止的治療、およびワクチンの開発は、特に、マラリア発達の不可避の肝臓期の、この型のマラリアの研究に利用可能な動物モデルが限定されているために妨げられていた。マウス型のマラリアは存在しているが、P.ファルシパルムマラリアシゾント(肝臓期感染)は、ヒトまたはいくつかの非ヒト霊長類の肝細胞においてのみ発達する。本発明は、実質的な割合のヒト肝細胞から構成された肝臓を生じ、不可避の肝臓期を通したプラスモディウム寄生虫の感染、増殖、および発達を支持することができるマウスモデルを提供する。
【0104】
SCIDマウスを、アルブミンプロモーターに連結されたウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)遺伝子を有するマウスと交雑し、SCID形質およびAlb/uPAトランスジーンの両方に関してホモ接合性のマウスを繁殖させた。生後4〜15日目に、脾臓内注射を介して、マウスにヒト肝細胞を移植した。成功した生着およびヒト肝細胞の増大を確認するため、生後4〜8週目に、血清中のヒトアルファ-1アンチトリプシン酵素に関して動物を試験した。
【0105】
8〜12週齢のマウスに、アノフェリン蚊唾液腺からのP.ファルシパルムスポロゾイトを接種した。感染した蚊の唾液腺をマイクロダイセクトし、次いで、ホモジナイズし、スポロゾイト(1〜3×106匹/マウス)を、100〜900ug/Lという血清中ヒトアルファ(apha)-1アンチトリプシンのレベルを有することが確認されたホモ接合性SCID/uPAマウスへと静脈内注射した。マウスを接種後3〜7日目に屠殺し、肝臓および血液を、免疫蛍光アッセイおよびRT-PCRによる評価のため回収した。
【0106】
図1〜3は、感染後6日目に切片化され染色された肝組織の例示的な結果を提供する。図1および2は、プラスモディウム由来のhsp70のみと反応する寄生虫特異的な熱ショック70モノクローナル抗体を使用した免疫蛍光アッセイからの画像である。緑色蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。これらの画像は、成熟中の肝臓期シゾントに古典的なものである。図3は、H&E型染色により染色された例示的な切片である。シゾントは「S」と標示されている。染色は、成熟中の寄生虫の指標であるシゾント内の発達中のメロゾイトを明らかにしている。
【0107】
実施例2
プラスモディウムファルシパルムマラリアの肝臓期感染-キメラマウスのヒト肝細胞内のシゾントの確認
プラスモディウムファルシパルム肝臓期感染を確認するため、複数の確認的読み出しを入手した。
【0108】
免疫組織化学
マラリア抗原に特異的な抗体を用いた免疫組織化学によって、接種後4、5、6、および7日目にマウスから回収された肝組織からマラリアシゾントの存在が確認された。6日目(hAAT 900)、6日目(hAAT 300)、5日目(hAAT 300)に屠殺された3匹のマウスからの肝臓切片において確認されたマラリア抗原には、以下のものが含まれる:
1)プラスモディウムマラリアによる肝臓期感染に特異的なマラリア熱ショックタンパク質(HSP)
2)LSA-1:肝臓期特異的抗原(クロロキン予防薬を服用中に感染した蚊により繰り返し刺咬された患者からの血清を用いたスクリーニングにより、寄生虫DNA発現ライブラリーから同定された)
3)EXP-1:肝臓期および血液期の抗原
4)AMA-1:スポロゾイト、ならびに肝臓期および血液期の感染に存在する抗原
5)サーカムスポロゾイト(circumsporozoite)タンパク質(CSタンパク質)。
【0109】
CSタンパク質は、感染後4および5日目のキメラマウスに検出されたが、6および7日目には検出されなかった。スポロゾイトに顕著なCSタンパク質は、チンパンジーおよびマウスのモデル(マウスでは2日目)においては後期(d6)感染で失われるが、長期インビトロ感染においては失われないため、これは重要である。
【0110】
7つの異なるマラリア抗原(サーカムスポロゾイトタンパク質-CS、熱ショックタンパク質70-HSP70、エクスポーティッド(exported)タンパク質1:EXP-1、肝臓期抗原1:LSA-1、アピカルメンブレン(apical membrane)1:AMA-1、赤血球結合抗原175:EBA-175)を認識する抗体を用いた免疫組織学的研究は、以下により詳細に記載されるようにして実施された。これらの研究によって、接種後4、5、6、および7日目のキメラマウスの肝臓におけるマラリア抗原の存在が確認された。AMA-1およびEBA-175は、後期肝臓シゾントにおいて発現される。それらは、いずれも、4日目には陰性であったが、5日目に出現し、6および7日目にも持続し、従って、マウスモデルにおける肝臓期感染中のマラリア寄生虫の進行性の正常な発達が支持された。
【0111】
P.ファルシパルムスポロゾイトを静脈内接種したマウスを、異なる時点(3、4、5、6、7、および8日目)で安楽死させ、肝臓の一部を採集し、RNA単離のためLN2中で凍結させ、残りの組織は凍結切片化のためOCT中で凍結させた。さらに、7および8日目に安楽死させたマウスは、6日目に5×108個のヒト赤血球をi-pで受容し、8日目のマウスは、寄生虫接種後7日目に付加的な5×108個の赤血球を受容した。スメアおよびRNAの単離のため、これらのマウスから安楽死時に血液を収集した。これは、メロゾイトが成熟肝臓期シゾントから放出され赤血球に侵入し得るか否かを決定するための試みであった。
【0112】
寄生虫感染の証明は、寄生虫特異的な抗血清を用いたメタノール固定された凍結切片に対する免疫蛍光アッセイ(IFA)により達成された。抗体により認識される抗原、起源、および寄生虫発達中の発現を、表1に提示する。
【0113】
(表1)発現の期
1 サーカムスポロゾイトタンパク質(CSタンパク質)、スポロゾイト表面タンパク質2(SSP2)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、エクスポーティッドタンパク質1(EXP-1)、肝臓期抗原1(LSA-!)、アピカルメンブレン抗原1(AMA-1)、赤血球結合抗原175(EBA-175)。
2 初期肝臓期発達中に発現された。
3 遅期肝臓シゾントにおいて発現された。
【0114】
上記表1に同定された期特異的発現は、文献中の報告、ならびにDr. Sacciの研究所で行われたインビトロおよびインビボの感染からの実験データに基づく。この情報を案内として使用して、異なる抗血清および全ての異なる時点からの組織切片を用いて、複数のIFAを行った。
【0115】
表2は、組織が収集された感染後日数、組織が収集された日付、および感染が確認されたか否かを含む結果の概要である。
【0116】
(表2)アッセイ要約
【0117】
IFAアッセイの結果を表3に提供する。複数の抗血清を用いたIFAを使用して、感染後4、5、6、および7日目のキメラ肝臓における寄生虫の存在が証明された。免疫蛍光により、中〜後期寄生虫において見られた発現パターンは、P.ファルシパルム感染チンパンジー肝臓において以前に同定された発現パターンと一致していた(Guerin-Marchand et al., Nature 329:164-167 (1987);Szarfman et al., J. Exp. Med. 167:231-236 (1988))。
【0118】
(表3)免疫蛍光アッセイ結果
pos=陽性;neg=陰性
+ 同一組織切片に、低レベルの抗体染色を示すシゾントも存在したし、SSP2陰性のシゾントも存在した。
++ 大部分のシゾントが弱い抗体染色を示し、いくつかのシゾントは抗EBA-175抗血清との反応性を有していなかった。
【0119】
IFA結果の代表的な蛍光顕微鏡写真を図4に提示する。パネルA、B、およびCは、感染後5、6、および7日目の、抗P.ファルシパルム熱ショックタンパク質70(PfHSP70)mAbを使用した免疫蛍光アッセイである。パネルD、E、およびFは、肝臓期抗原-1(LSA-1)抗血清により染色された5、6、および7日目からの感染キメラ肝臓の顕微鏡写真であり、パネルG、H、およびIは、抗P.ファルシパルム赤血球結合抗原1(Pf EBA-175)抗血清により染色された5、6、および7日目からのものである。PfHSP70およびLSA-1の両方が、インビボで(Guerin-Marchand et al., Nature 329:164-167 (1987);Szarfman et al., J. Exp. Med. 167:231-236 (1988))、そしてインビトロの肝臓期の発達の間中、発現されることが以前に同定されている。血液期メロゾイトに見出されたリガンドとして最初に同定されたPf EBA-175(Camus et al., Science 230:553-556 (1985))は、その後、肝臓期に同定され(Gruner et al., J. Infect. Dis. 184:892-897 (2001))、中〜後期発達中に出現する。IFAにより証明された寄生虫のディファレンシャルな反応性は、肝細胞において起こったP.ファルシパルムの発達中の発現される抗原の変化を明白に示している。
【0120】
PCRに基づく検出
IFA染色を強化するため、異なる時点における寄生虫特異的なmRNAの存在を同定するために、より高感度のRT-PCR分析を行った。これは、3および8日目の時点でIFAによっては見られなかった寄生虫感染肝臓を同定する機会も提示した。RT-PCR分析は、4、5、6、7、および8日前に感染したキメラマウスについて、サーカムスポロゾイトタンパク質(CS)、肝臓期抗原-1(LSA-1)、およびメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)のための遺伝子特異的プライマーを使用して行った。PCR反応のためのプライマー配列および条件は、上記の方法セクションに記載されている。急速凍結させ-80℃で保存した組織から、RNAを抽出した。抽出されたRNAを、偽陽性を生じ得る夾雑DNAを除去するため、DNAseにより処理した。やはり夾雑DNAの存在を制御するため、第1鎖cDNA反応を、オリゴ-dtプライミングを用いて、そして用いずに行った。
【0121】
結果を図5に提供する。サーカムスポロゾイト(CS)遺伝子のためのプライマーセットを使用したRT-PCRがパネルAに示され、LSA-1がパネルBに示され、MSP-1がパネルCに示される。組織は、P.ファルシパルム感染後4日目(レーン1、2)、5日目(レーン3、4)、6日目(レーン5、6)、7日目(レーン7、8)、および8日目(レーン9、10)に収集された。図5に示されるように、RT-PCR分析によって、CSメッセージが、感染後4および5日目には存在するが、その後の時点では存在しないことが証明された。このメッセージの発現は、感染後4および5日目にIFAにより証明されたようなCS抗原の発現(表3)、およびその後の時点における発現の欠損と一致していた。これは、CS発現が培養期間の間中見られ、肝臓期発達阻害アッセイ(ILSDA)(Charoenvit et al., Infect. Immun. 65:3430-3437 (1997))において感染肝細胞を同定するために典型的に使用される、インビトロのPファルシパルム感染ヒト肝細胞とは異なっていた。
【0122】
肝臓期感染のゲノミクス的およびプロテオミクス的な確認
レーザーキャプチャーマイクロダイセクションが、
1.RT-PCR
2.ウェスタンブロッティング
3.マイクロアレイ
のためのシゾントを回収するために使用される。
【0123】
高品質PCR回収の確認は、肝臓期感染のさらなる支持としての、感染キメラマウス肝臓におけるファルシパルムのオルソログの存在を確認するためのRT-PCRおよびマイクロアレイ研究を容易にするであろう。
【0124】
マイクロアレイ分析にとって十分なタンパク質を提供するためには、およそ1000匹のシゾントの捕獲が必要であると予想される。感染後5日目の動物からの切片は、切片1個当たり最大10匹の寄生虫を与えたため、およそ100個の切片が必要であるかもしれない。
【0125】
上記の研究は、一貫した再現性のあるモデルを提供し、肝臓感染期における寄生虫の数およびモデルにおける可変性の程度をさらに定量化するために繰り返される。マラリア感染と相関したhAAT値を定量化するため、可変性のhAATのレベル、および次第に減少する数のマラリア寄生虫を有するマウス。マラリア寄生虫の数は、感染のしきい値、即ち、キメラマウス肝臓における感染を確立するために必要とされる寄生虫の数を決定するために変動させられるであろう。動物は、ヒト疾患の場合と同様にマウスにおいて反復感染が起こることを確立するため、感染後およそ2週目に、再チャレンジされる。
【0126】
実施例3
マウスモデルにおけるマラリア寄生虫の生活期の変化の検出
マラリア感染動物モデルを、マラリア寄生虫の様々な期を検出するために調査し、それにより、マラリア寄生虫がマウスモデルにおいて天然の生活環を示すことが示された。
【0127】
キメラマウス肝臓におけるスポロゾイトからのシゾントの発達
蚊刺咬による感染の送達(スポロゾイト)およびその後の肝臓期感染(シゾント)に特徴的な生活期に特異的な抗原およびmRNAについての免疫組織化学およびPCRは、プラスモディウムマラリア感染のキメラマウスモデルにおいて、生活期の発達および変化が起こることを確認した。
【0128】
免疫蛍光アッセイを、標準的なプロトコルに従い実施した。簡単に説明すると、OCT中の凍結肝組織を5μm切片へと切断し、ガラススライドに置いた。組織切片を氷冷無水メタノールで5分間固定し、空気乾燥させた。切片を3%正常ヤギ血清によりブロッキングし、加湿雰囲気中で37℃で30分間、適切な一次抗体と共にインキュベートした。次いで、スライドをPBSで3回洗浄し、0.01%エバンスブルーで希釈された適切なフルオレセイン接合抗体と共に再び37℃で30分間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、非消光(non-quench)封入剤(VECTASHIELD(登録商標))で封入し、エピフルオレセンス(epifluorescence)顕微鏡により観察した。
【0129】
下記表4に示されるように、複数の抗血清を、感染後3〜8日目の組織切片を染色するために使用した。3日前に感染したマウスは感染を発症しなかったか、または寄生虫が小さすぎて可視化され得なかった(感染は存在していなかった可能性がより高い)。4〜8日目の感染は、全て、感染した組織との様々な反応性を示した。結果は、これらの抗原の証明された発現と一致している。CSおよびSSP2は、肝細胞における発達の初期に発現されるが、その後消失するスポロゾイト抗原である。HSP70は、スポロゾイトにおいて弱く発現され、肝臓期および血液期の寄生虫において強く発現される。LSA-1は肝臓期にのみ発現される。EXP-1は、肝臓期発達の間中、そして血液期にも発現される。AMA-1およびEBA-175は、主として血液期に発現されるが、肝細胞における発達の後期にも見出される。AMA-1は、スポロゾイトにおいて発現され、初期肝臓期発達中にダウンレギュレートされ、次いで肝臓発達の後期にアップレギュレートされることを示す最近の証拠がいくつか存在する。
【0130】
(表4)免疫蛍光アッセイ結果
【0131】
マウスの感染および肝臓期(およびその後の血液期)感染の発達により、寄生虫の増大が起こることをさらに示すため、肝臓期感染の定量化が実施される。
【0132】
肝臓期感染の血液期感染への推移
キメラ肝臓シゾントが達成した成熟のレベルを評価するため、インビトロの血液期感染を開始させた。肝臓期感染の血液期感染への移行、従って、プラスモディウムマラリア生活環の次の期を、マラリア感染動物モデルにおいて検出した。プラスモディウムマラリアの血液期感染の発達は、不可避の中間肝臓期を有し、P.マラリアは、血液期感染へと発達するためにはシゾント期を経なければならない。モデルにおける血液期感染の検出は、中間肝臓感染期の証拠を示し、同一モデルにおける肝臓期および血液期の証拠も示す。結果は、さらに、抗マラリア剤についての効力実験を大いに容易にする非終末(non-terminal)読み出しを確立しながら、モデルの使用を支持している。
【0133】
マウスに、1×106匹のプラスモディウムファルシパルムスポロゾイトを接種した。次いで、動物を7または8日目に安楽死させ、血液および肝臓をRT-PCR分析のために収集し、肝臓を凍結切片のために収集した。また、これらの日からの肝臓の一部をホモジナイズし、インビトロのヒト赤血球培養物に添加した。培養は、以前に記載されたようにして(Trager et al., Science 193:673-675 (1976))、維持し、肝臓ホモジネートの添加後24時間目にスメアを開始した。感染後7日目に収集された肝組織は、明白に定義されたメロゾイトを含む成熟シゾントを示し(図6)、8日感染からの組織は顕微鏡検により可視の寄生虫を欠いていた。しかしながら、両方の日からの組織のRT-PCR分析は、LSA-1 mRNA陽性であった。7または8日の感染からの肝臓ホモジネートを受容した培養物からの血液スメアは、培養の開始後24時間目に赤血球内の環状体期寄生虫の存在を示した(図7および図8)。これらの結果は、肝臓期メロゾイトが、成熟し、インビトロで赤血球を感染させ得ることを示す。
【0134】
インビボの赤血球の感染を示すため、肝臓期マラリア感染を有する(例えば、P.ファルシパルムスポロゾイトのi.v.接種後6、7、8、および10日目の)キメラマウスに、約5×109個のヒト赤血球(RBC)(1mlの50%ヘマトクリットO+ヒトrbc)を3〜5日連続で腹腔内注射した。その後、7、8、9、10、および11日目のRNA単離およびスメアのため、感染マウスから血液を収集した。屠殺時に採集された末梢血のスメアまたは血液のPCRを、マラリア血液期感染に関して調査した。次いで、キメラマウスモデルの完全なプラスモディウムマラリア生活環を支持する能力を査定した。厚いスメアおよび薄いスメアの両方が、可視の血液期寄生虫を有しており、11日目のスメアは、ギムザ染色および抗P.ファルシパルムエクスポーティッドタンパク質1(PfEXP1)抗体によるIFAにより可視化され得る、多数の発達中のトロフォゾイトおよびシゾントを示した(図9)。
【0135】
肝臓期感染中のキメラマウス肝臓を回収し、(例えば、肝細胞を崩壊させ寄生虫を放出させるために小片へと破砕することにより)肝臓をホモジナイズし、ヒト赤血球を含む培養物へ肝臓試料の一部を置くことにより、マウスモデル由来の肝臓期寄生虫によってインビトロのヒト血液期感染を確立し得るか否かを調査した。蚊唾液腺からのP.ファルシパルムの静脈内接種後7日目のキメラマウス肝臓からのホモジネートの導入後24、48、および72時間目の培養物からのヒト赤血球のギムザ染色スライドから、ヒト赤血球におけるマラリア寄生虫の存在が確認された。
【0136】
最初の実験群が寄生虫感染を確認した後、マウスモデルの再現性を査定するため、マウスおよび寄生虫の異なるコホートを用いた複数の感染を使用した。ほぼ全ての例(16/18)において、マウスは、IFAまたはRT-PCRにより、全ての時点(感染後3〜8日目)からのキメラ肝臓における寄生虫の存在を示した。興味深いことに、HCVモデルと比較した場合、肝細胞における感染を確立する能力は、HCVによる従来の経験ほど、マウスにおけるhAATのレベルに依存性でないようであった。キメラマウスは、hAATが<80ug/mlの場合、接種後のHCV感染を時々しか生じず、<60ug/mlの場合にはほぼ皆無であったが、P.ファルシパルムの成功した感染は、25μg/ml〜900μg/mlのレベルを有するマウスにおいて証明された。ある感染研究は、スポロゾイトを感染させるほぼ6ヶ月前に肝細胞移植を受容したマウスを用いて行われた。これらの結果は、移植片の長期の安定性および寄生虫による感染に対する感受性を確認するものである。
【0137】
この点で、本発明者らは、SCID/Alb-uPAキメラマウスが再現性よく肝臓期感染を支持し得ること、ならびに感染した肝細胞が、形態学、RTPCR、IFA、および血液期感染により査定されるように、寄生虫の発達において進行することを示した。形態学(Meis et al., Exp. Parasitol. 70:1-11 (1990))および遺伝子発現は、チンパンジーのP.ファルシパルム感染において類似した時点で見られるものと極めて類似しているようであり、寄生虫は成熟した感染性メロゾイトになる。さらに、キメラマウスで見られた後期肝臓期寄生虫は、ヒトボランティアにおいてP.ファルシパルムの前赤内期を証明する研究において、Jefferyら(Am. J. Trop. Med. Hyg. 6:917-925 (1952)およびShorttら(Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 44:405-419 (1951))により同定されたものと構造的にも形態学的に区別不能であった。
【0138】
実施例4
P.ファルシパルム肝臓期寄生虫のLCM単離
感染後5日目の肝臓期寄生虫を含有している組織切片を、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)に使用したが、それは、この時点の発達中のシゾントが、寄生虫の生活環のスポロゾイト、肝臓期、および血液期に関連した遺伝子からのメッセージを発現していることが、RT-PCR結果によって同定されたためである。さらに、寄生虫は、より複雑な免疫染色なしに、標準的な染色プロトコルによって容易に可視化され得る。
【0139】
図10は、EE寄生虫の代表的な単離を示す。パネルAは、レーザー活性化前の組織切片であり、パネルBは、レーザー活性化、およびシゾントを含有している熱可塑性メンブレンの除去後の同一区域を示し、パネルCは、捕獲された組織の画像である。およそ100個の捕獲を含有しているキャップから全RNAを単離し、RT-PCR分析のためのcDNAを作成するために使用した。LSA-1のメッセージは捕獲されたシゾントから容易に増幅され、アクチンのメッセージの増幅を表すバンドは、ほとんど可視化されなかった(図11)。その結果は、回収されたシゾントが肝細胞の夾雑を事実上欠いていること、および完全な寄生虫mRNAが下流の分析のために回収され得ることを示している。
【0140】
実施例5
キメラマウスモデルの治療的介入および臨床結果との相似
マラリアを接種されたマウスを、プリマキンのような公知の抗マラリア剤により処置して、マウスモデルにおけるこの薬剤の有効性を確立する。プリマキンは、肝臓期の処置のための証明された有効性を有しており、陽性対照として使用され得る。
【0141】
実施例6
抗体による侵入の阻止
抗体が侵入を阻止し得ることの確認は、受動免疫治療が動物モデルにおける曝露中または曝露後の感染を防止し得ること、およびどの抗原が、免疫原として使用された場合に、プラスモディウムによる感染を防止し得る抗体または抗体プロファイルを与えるかを確立することにより、ワクチン開発研究を容易にするためにモデルが使用され得ることをさらに確立する。
【0142】
ボランティアからの免疫血清を、動物モデルにおける感染を阻止する能力に関して試験するために使用する。(インビトロ研究の場合と同様に)感染を阻止する能力に変動が見られた場合には、異なる血清からの抗体プロファイルを、有効な血清を特徴決定するために調査する。そのようなプロファイルは、免疫血清または免疫グロブリン調製物による阻止のための受動免疫治療についてのパターンを提供する。
【0143】
寄生虫に対するモノクローナル抗体を、感染を阻止する能力に関して査定する。そのような抗体は、インビトロでは感染を阻止するのに極めて有効であったが、臨床現場においては調査されていない。動物モデルにおける有効な阻止は、そのようなアプローチが、実行可能な臨床戦略であり、ワクチン開発のためのより特異的な研究を可能にすることを示す。特に対象となるのは、モノクローナル抗体2A10(ATCCのMR4プログラムより入手可能)の感染を阻止する能力である。
【0144】
抗体が、本発明のP.ファルシパルム感染のインビボモデルにおいてマラリア侵入を阻止することを示す証拠は、受動免疫治療剤の調査のためのアッセイおよび臨床適用のためのワクチン開発を提供する。
【0145】
実施例7
マラリア寄生虫の採集
動物モデルは、抗マラリア抗体の作製をさらに容易にするため、高品質の寄生虫抗原調製物を作製するために使用され得る。そのような抗原は、動物のマラリア感染の任意の期から入手され得、当技術分野において周知の方法に従い適切な組織から入手され得る。
【0146】
特定の態様に関して本発明を記載したが、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、様々な変化がなされ得、等価物が代用され得ることが、当業者により理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、合成物、過程、工程を、本発明の目的、本旨、および範囲に適応させるために、多くの修飾がなされ得る。そのような修飾は、全て、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後の本発明のキメラマウスの肝組織の写真である。緑色の染色は、プラスモディウム由来の熱ショック70(hsp70)を特異的に認識する抗体の結合を示す。緑色の蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。
【図2】P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後の本発明のキメラマウスの肝組織の写真である。緑色の染色は、プラスモディウム由来の熱ショック70(hsp70)を特異的に認識する抗体の結合を示す。緑色の蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。
【図3】H&E型染色により染色された例示的な切片である。シゾントは、「S」と標示されており、シゾント内の個々のメロゾイトの発達を明白に示している。
【図4】寄生虫特異的な抗体により染色された、P.ファルシパルム感染後のキメラSCID/AlbuPA肝臓凍結切片の一連の免疫蛍光顕微鏡写真である。組織は、マウスにP.ファルシパルムスポロゾイトを接種した後、5日目(パネルA、D、G)、6日目(パネルB、E、H)、および7日目(パネルC、F、I)に採集された。パネルA、B、およびCの切片は、抗PfHSP70モノクローナル抗体により染色された。パネルD、E、およびFの切片は、LSA-1のリピート領域に対するポリクローナルウサギ抗血清により染色された。パネルG、H、およびIは、PfEBA-175に対するポリクローナルウサギ抗血清により染色された。拡大率400倍。
【図5】P.ファルシパルムに感染したキメラヒト肝臓のRT-PCR分析である。RT-PCRは、サーカムスポロゾイト(CS)遺伝子(パネルA)、LSA-1(パネルB)、およびMSP-1(パネルC)のためのプライマーセットを使用して行われた。組織は、P.ファルシパルム感染後、4日目(レーン1、2)、5日目(レーン3、4)、6日目(レーン5、6)、7日目(レーン7、8)、および8日目(レーン9、10)に収集された。偶数の番号のレーンは、cDNAを作成するための第1鎖反応が逆転写酵素を含んでいたRT-PCRアッセイからのものである。奇数の番号のレーンは、第1鎖反応から逆転写酵素が省かれた対照アッセイであった。パネルBのレーン11は、ゲノムDNAからの陽性対照LSA-1 PCR産物である。
【図6】プラスモディウムファルシパルム感染後の7日目のSCID/Alb-uPAマウス由来の例示的なキメラ肝組織切片である。7μmの凍結切片が、メタノール固定され、ギムザ染色された。大きい成熟シゾントが、視野の大部分を占めており、明確な細分化された核を含有している。拡大率1000倍。
【図7】インビトロヒト赤血球培養物からのギムザ染色された血液スメアである。P.ファルシパルム感染後7日目に採集されたSCID/Alb-uPAマウス由来のホモジナイズされた肝臓が、ヒト赤血球培養物に添加された。24時間後、試料が採取され、ギムザ染色された。この顕微鏡写真は、感染した赤血球(矢印)を含む染色されたスメアからの代表的な視野を示す。感染した赤血球は、特殊なクロマチンドットを含む発達中のトロフォゾイトを含有している。拡大率1000倍。
【図8】インビトロヒト赤血球培養物からのギムザ染色された血液スメアである。P.ファルシパルム感染後7日目に採集されたSCID/Alb-uPAマウス由来のホモジナイズされた肝臓が、ヒト赤血球培養物に添加された。24時間後、試料が採取され、ギムザ染色された。この顕微鏡写真は、感染した赤血球(矢印)を含む染色されたスメアからの代表的な視野を示す。感染した赤血球は、特殊なクロマチンドットを含む発達中のトロフォゾイトを含有している。拡大率1000倍。
【図9】抗エクスポーティッドタンパク質1(EXP1)抗体により染色された、P.ファルシパルムに感染した赤血球の免疫蛍光顕微鏡写真である。ヒト肝臓キメラSCID/Alb-uPAマウスに、P.ファルシパルムスポロゾイトの接種後、6日目から開始して、ヒト赤血球が注射された(I-P)。パネルAは、(EXP1)に関する極めて強い染色を示しており、パネルBは、同視野の位相差画像である。パネルBの矢印は、発達中の寄生虫と一致する明白な内部構造を含有している感染した赤血球を示している。拡大率1000倍。
【図10】接種後5日目のP.ファルシパルムに感染したSCID Alb-uPAマウス肝臓のレーザーキャプチャーマイクロダイセクション像を示す。パネルAは、(矢印により区別された)シゾントを示すレーザーパルス前の組織切片であり、パネルBは、メンブレン−シゾントが除去された後の、パネルAと同一の区域であり、パネルCは、捕獲されたシゾントを示している。
【図11】P.ファルシパルムに感染したキメラ肝臓からマイクロダイセクトされたRNAのRT-PCR分析。5日目のP.ファルシパルムLCMシゾントから単離された逆転写されたRNA(RT+)またはP.ファルシパルム血液培養物から抽出されたDNA(DNA)を増幅するため、LSA-1およびアクチンのための遺伝子特異的プライマーが利用された。第1鎖反応から逆転写酵素が省かれるか(RT-)、またはDNA鋳型の代わりに水が使用された(-ve)対照アッセイも行われた。
【技術分野】
【0001】
発明の領域
本発明は、一般に、ヒトマラリア感染およびヒト疾患におけるヒトマラリア生活環のモデルとして有用な動物に関する。
【0002】
相互参照
本願は、2004年8月20日出願の米国仮出願第60/603,467号および2005年2月7日出願の米国仮出願第60/650,949号に基づく優先権を主張し、これらの出願は参照により完全に本明細書に組み入れられる。
【0003】
政府の権利
本発明は、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与された連邦グラント番号RO1 AI 47445の下で部分的な政府の支援を受けて作成された。米国政府は、本発明における一定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
プラスモディウム(Plasmodium)属に属する原虫は、マラリアの病因であり、毎年2〜5億という新たなマラリア例の原因となっていると推定されている。寄生虫は、細胞外型および細胞内型の両方を含む複雑な生活環を有する。感染は、ハマダラ蚊が吸血中にスポロゾイトを注入した時に、宿主において開始される。次いで、スポロゾイトは、血管系を通って肝臓に移動し、肝細胞に侵入し、それにより、赤外(EE)期が開始する。各一核の寄生虫は、その後、分裂および分化を経て、数千〜数万匹の一核のメロゾイトを含む成熟肝臓期シゾントを形成する。肝臓期シゾントにおける発達の時間は、種によって異なり、例えば、プラスモディウム・ファルシパルム(falciparum)の場合、5〜7日である。
【0005】
最初の肝臓期の終結時には、数千匹のメロゾイトが血流に放出され、赤血球に侵入する。次いで、種に依って48〜72hrの赤内期(または「赤血球」期)の周期が、続いて起こる。いくつかの赤血球期は、雄および雌の生殖母細胞へと分化するであろう。蚊により摂取された後、それらは接合し、接合子を形成することができ、それが、さらに発達してスポロゾイトを生じ得る。これらのスポロゾイトが、後に、蚊によって別の宿主に接種され、このようにして周期が繰り返される。
【0006】
雌アノフェレス(Anopheles)蚊の刺咬により注入されたスポロゾイトは、迅速に肝臓類洞に達する。初期の仮説に反して、現在では、接種されるスポロゾイトの数は少なく、刺咬1回当たり約10〜100であると信じられている。スポロゾイトが直接肝細胞に浸透するのか、または類洞を裏打ちする内皮細胞もしくはクッパー細胞をまず通って移動するのかは、未だ議論されている点である。しかしながら、インビトロの肝細胞の侵入は、クッパー細胞への通過が、EE発達のための絶対要件ではないことを示唆している。さらに、クッパー細胞が枯渇したラットにおいて行われた研究からの証拠は、完全な動物と比べて、クッパー細胞枯渇動物が、EE期寄生虫の数の有意な増加を有していることを証明している。これは、クッパー細胞が、スポロゾイト侵入の助長ではなくスポロゾイトの排除に関与していることを強く示唆している。
【0007】
スポロゾイトは肝細胞においてのみ発達するため、侵入は、スポロゾイトタンパク質と肝細胞受容体との特異的な相互作用により媒介される可能性が高い。スポロゾイトは、発達中の肝臓期または赤外(EE)寄生虫を囲む寄生体胞膜(PVM)を形成する肝細胞細胞膜の陥入により頂端側から浸入するようである。メロゾイトの赤血球への侵入の場合と同様に、材料が、侵入の間にスポロゾイトロプトリー(rhoptries)から分泌されるようである。肝細胞に侵入した直後、細長いスポロゾイト(1.5×10〜20μm)の内膜およびペリクル下微小管が壊れ、この区域が膨れ上がり、PVMにより囲まれた液胞に位置付けられた原形質膜を境界とする単核の3〜5μmのトロフォゾイトが作出される。初期赤外期寄生虫は、肝細胞の体積の大部分を占める球状の成熟肝臓期シゾントへと発達する。
【0008】
シゾゴニーの間、感染した肝細胞への、特に肝細胞核の隣への深い陥入を形成することができるPVMへ、寄生虫抗原が挿入される。少なくとも2,000匹の単核メロゾイトを含有している成熟EEシゾントの発達には、げっ歯動物マラリアP.ヨエリー(yoelii)およびP.ベルゲイ(berghei)の場合、42〜48時間かかる。P.ファルシパルムの肝臓期発達には、5〜7日かかり、80〜100μmのシゾント内に30,000匹ものメロゾイトが形成される。P.ビバックス(vivax)のEE発達においては、いくつかのトロフォゾイトが、さらに発達することなく、数年にわたり肝細胞内に小さなヒプノゾイトとして持続し得る。P.ビバックスの再発は、未知のメカニズムにより発達するよう誘発されるヒプノゾイトから生じることが提唱されている。単核スポロゾイトの完全に成熟した肝臓期シゾントへの発達、ならびにこのシゾントの破裂の原因となるシグナルおよび寄生虫分子は、未知である。
【0009】
プラスモディウムに感染した肝細胞は、マラリア感染のげっ歯動物モデルにおいて、防御免疫応答の重要な標的であることが証明されている。この所見から、感染した肝細胞または赤外(EE)期の寄生虫において発現されるプラスモディウム抗原の同定および特徴決定、ならびにこれらの抗原に対する免疫応答は、前赤内期マラリアワクチンの開発にとって重大である。EE期寄生虫の供給源は、EE期抗原を同定するモノクローナル抗体の選択および特徴決定のため、そして感染した肝細胞において発現されるプラスモディウム遺伝子の発現を特徴決定するため、不可欠である。
【0010】
残念ながら、EE型のP.ファルシパルムを含有している生物学的材料を入手するのは困難である。少量のP.ファルシパルムEE期寄生虫は、初代ヒト肝細胞培養物および単一のヒト肝臓癌細胞系において作製されている。ヒト細胞系は取り扱いが困難であり、入手可能なヒト肝組織の不足、およびインビトロの系において入手される低い感染率のため、これらのアプローチはあまり魅力的でない。マウス型のマラリアは存在するが、P.ファルシパルムシゾントは、ヒトもしくはチンパンジーの肝細胞においてのみ発達するか、またはいくつかの非ヒト霊長類においてはるかに低い程度に発達する。チンパンジーに寄生虫を感染させ、凍結切片化のため、生検により肝組織が入手された。しかしながら、チンパンジーを含む研究は極めて高価であり、限られた組織採集より複雑なことには役に立たない。
【0011】
信頼性のあるP.ファルシパルム感染の小動物モデルが、当領域においては必要とされている。本発明はこの必要性を満たすものである。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
本発明は、マラリア、例えば、プラスモディウム、特にプラスモディウム・ファルシパルムの非ヒト動物モデルを特徴とする。そのモデルは、トランスジーンが、肝臓におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターの発現を提供する、ヒト-マウスキメラ肝臓を有する非ヒト免疫低下トランスジェニック動物に基づく。本発明は、候補治療剤、例えば、プラスモディウムに対する抗病原活性を有する薬剤を同定する方法も特徴とする。
【0013】
一つの局面において、本発明は、インビトロで赤内期ファルシパルムに感染させ、次いで、感染を確立するために免疫不全マウスへ注入し、ヒトRBC輸液により維持するヒトRBCの使用とは反対に、通常の感染経路、例えば静脈内送達を介して、そして天然の感染性因子(アノフェリン(Anopheline)蚊からのマラリアスポロゾイト)により、感染させられ得る非ヒト動物マラリアモデルを提供する。
【0014】
少なくとも一つの利点は、本発明が、通常の感染経路により感染させられ得、さらに、宿主における寄生虫の通常の発達を提供するマラリアの動物モデルを提供するという点である。
【0015】
本発明のもう一つの利点は、それが、大量のP.ファルシパルムEE期寄生虫の作製のための魅力的な方法を提供するという点である。肝組織を急速凍結させ、その一部を凍結切片化により数千の薄い切片へと切断することができる。寄生虫感染細胞を(例えば、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションにより)回収し、cDNAの作製のためRNAを単離することができる。cDNAは、その後、マイクロアレイまたは肝臓期cDNAライブラリーの作製のために使用され得る。凍結切片は、候補ワクチンによる動物またはボランティアの免疫感作により作成されたモノクローナル抗体または血清をスクリーニングするためにも使用され得る。
【0016】
さらにもう一つの利点は、本発明が、十分な肝臓期マラリア抗原を回収する手段を提供するという点であり、その抗原は、次いで、例えば、肝臓感染期を標的としたワクチンを開発するために使用され得る。肝臓期感染は、寄生虫の成熟にとって必要であり、RBCの感染が起こる前に起こるため、肝臓期ワクチンの開発は、感染の確立を防止する手段を提供し得る。
【0017】
本発明のもう一つの利点は、それが、肝臓期寄生虫を標的とした薬物の研究において使用され得るという点である。
【0018】
本発明は、肝細胞侵入の過程の検討において使用するためのモデル、およびこの発達段階を防止する方法も提供する。
【0019】
本発明は、さらに、肝細胞における寄生虫の成熟の生物学、およびその後の放出の過程を調査するためのモデルを提供し、治療的または予防的な介入の開発およびスクリーニングも提供する。本発明のさらにもう一つの利点は、寄生虫が、肝臓から放出された後に血流に入ることができ、その後、輸液によりマウス宿主に導入されたヒト赤血球に侵入し、感染させ得るという点である。従って、本発明のモデルは、赤血球侵入の過程および生殖母細胞の発達の調査のため、そして治療的および予防的な介入の付加的な標的としてこれらをスクリーニングする機会を提供する。本発明のモデルは、赤内感染期を阻害する治療剤として作用する薬剤のスクリーニングも可能にする。
【0020】
本発明のこれらおよびその他の利点および特質は、以下により完全に記載されるような動物モデルおよびその使用法の詳細を参照することにより、当業者に明らかになるであろう。
【0021】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも一つの図面を含有している。カラーの図面を含むこの特許または出願公開のコピーは、請求および必要料金の支払いにより米国特許商標庁(U.S. Patent and Trademark Office)より提供されるであろう。
【0022】
本発明を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、細胞系、動物の種または属、構築物、および試薬に制限されず、当然、変動し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるため、本明細書において使用される用語法は、特定の態様を記載するためのものに過ぎず、制限的なものではないことも理解されたい。
【0023】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間にある各値も、情況がそうでないことを明白に指示しない限り、下限の単位の小数第一位まで、特に開示されることが理解される。明示された範囲の中の明示された値または間にある値と、その明示された範囲の中の他の明示されたまたは間にある値との間のより小さい各範囲も、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立にその範囲に含まれるか、または排除され得、より小さい範囲に一方もしくは両方の限度が含まれるか、または両方含まれない各範囲も、明示された範囲の中の特別に排除される限度を条件として、本発明に包含される。明示された範囲が一方または両方の限度を含む場合には、これらの含まれた限度の一方または両方が排除された範囲も、本発明に含まれる。
【0024】
他に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者により一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されたものに類似しているかまたは等価である任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が本明細書には記載される。本明細書において言及された全ての刊行物は、その刊行物が関連して引用された方法および/または材料を開示し記載するため、参照により本明細書に組み入れられる。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「and」、および「the」には、情況がそうでないことを明白に指示しない限り、複数の対象が含まれる。従って、例えば、「肝細胞」との指示には、複数のそのような肝細胞が含まれ、「非ヒト動物」との指示には、一つまたは複数の非ヒト動物および当業者に公知のそれらの等価物の指示が含まれ、その他も同様である。
【0026】
本明細書に記述された刊行物は、本願の出願日以前のそれらの開示のためにのみ提供される。本発明が先行発明のためそのような刊行物に先行している権利を有しないことの承認として解釈されるべきものは、本明細書中には存在しない。さらに、提供された刊行物の日付は、実際の刊行日とは異なるかもしれず、独立に確認される必要があるかもしれない。
【0027】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用されるような「マラリア寄生虫」とは、他に特記しない限り、そして、本明細書において使用されるような「ヒトマラリア寄生虫」とは、一般に、ヒトにおける寄生虫疾患の病因であるプラスモディウム属の寄生虫種をさす。現在、ヒトにおいてマラリアを引き起こすことが公知のプラスモディウムの種は、少なくとも4つ存在する:P.ファルシパルム;P.ビバックス;P.オバレ(ovale);およびP.マラリエ(malariae)。寄生虫は、天然には、感染したアノフェレス属の雌蚊の刺咬によってヒト宿主に伝達され得る。「ヒトマラリア寄生虫」とは、寄生虫を、ヒトについて直ちに回収されるものに制限するためのものではなく;むしろ、ヒト疾患を引き起こすことができるマラリア寄生虫をさすためのものである。そのようなヒトマラリア寄生虫は、通常、非霊長類動物には感染性でない。
【0028】
本明細書において使用されるような「キメラの」(例えば、「キメラ動物」または「キメラ肝臓」)とは、異種の組織または細胞を含む器官または動物を記載するものである。特に対象となるのは、動物の肝臓に生着したヒト肝細胞の存在のためにキメラとなっているキメラ動物である。
【0029】
「免疫低下の」とは、動物が、異種の組織または細胞に対する完全または有意な免疫応答を開始し得ないこと、例えば、宿主動物の免疫応答に、移植された細胞を拒絶する効果がないことを意味する。
【0030】
「トランスジーン」という用語は、哺乳動物細胞、特に、生存している動物の哺乳動物細胞のゲノムに人工的に挿入された、または挿入されようとしている遺伝材料を記載するために本明細書において使用される。
【0031】
「トランスジェニック動物」とは、その細胞の一部に染色体外エレメントとして存在するか、またはその生殖細胞系列DNAに(即ち、その細胞の大部分もしくは全てのゲノム配列に)安定的に組み込まれた非内因性(即ち、異種)の核酸配列を有する非ヒト動物、一般的には、哺乳動物を意味する。異種核酸は、例えば、当技術分野において周知の方法による、宿主動物の胚または胚性幹細胞の遺伝子操作により、そのようなトランスジェニック動物の生殖細胞系列に導入される。「トランスジーン」とは、そのような異種核酸、例えば、(例えば「ノックイン」トランスジェニック動物の作製のための)発現構築物の形態の異種核酸、または(例えば「ノックアウト」トランスジェニック動物の作製のための)標的遺伝子内もしくはその近傍への挿入により標的遺伝子発現の減少をもたらす異種核酸をさすものである。
【0032】
遺伝子の「ノックアウト」とは、好ましくは、標的遺伝子発現が検出不可能または非有意であるような、標的遺伝子の機能の減少をもたらす遺伝子の配列の改変を意味する。トランスジェニックノックアウト動物には、標的遺伝子のヘテロ接合性ノックアウトまたは標的遺伝子のホモ接合性ノックアウトが含まれ得る。本明細書において使用されるような「ノックアウト」には、例えば、標的遺伝子改変を促進する物質への動物の曝露、標的遺伝子部位(例えば、Cre-lox系におけるCre)における組み換えを促進する酵素の導入、または出生後に標的遺伝子改変を指図するためのその他の方法によって、標的遺伝子の改変が起こり得る、条件的ノックアウトも含まれる。
【0033】
標的遺伝子の「ノックイン」とは、例えば、付加的な標的遺伝子のコピーの導入による、または内因性の標的遺伝子のコピーの増強された発現を提供する制御配列を機能的に挿入することによる、標的遺伝子の改変された発現(例えば、増加した(異所性を含む)または減少した発現)をもたらす宿主細胞ゲノムの改変を意味する。「ノックイン」トランスジェニックには、標的遺伝子のヘテロ接合性ノックインまたは標的遺伝子のホモ接合性ノックインが含まれ得る。「ノックイン」には、条件的ノックインも包含される。
【0034】
「機能的に連結された」とは、DNA配列と制御配列とが、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が制御配列に結合した場合に遺伝子発現を許容するよう接続されていることを意味する。
【0035】
「機能的に挿入された」とは、関心対象のヌクレオチド配列が、導入された関心対象のヌクレオチド配列の転写および翻訳を指図するヌクレオチド配列に隣接して位置付けられていることを意味する。
【0036】
本明細書において使用されるような「治療剤」という用語は、プラスモディウム感染に関連したもののような疾患または状態、例えば、肝臓状態の処置において有用な、任意の分子、例えば、タンパク質または低分子、薬学的化合物、抗体、アンチセンス分子、リボザイム等をさす。例えば、本発明の治療剤には、プラスモディウム感染、特にP.ファルシパルム感染に関連した症状(例えば、例えば組織学または分子的分析により、組織において観察され得る症状)を阻害、改善、または軽減する分子が含まれる。
【0037】
マラリア寄生虫に感染した本明細書に記載された動物モデルに関連して使用されるような「感染」という用語は、動物が、マラリア感染に関連した任意のまたは全ての臨床症状を示してもよいし、または示さなくてもよい、マラリア寄生虫が回収され得る動物の情況をさす。
【0038】
「処置」、「処置すること」等の用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的な効果の入手を意味するために本明細書において使用される。その効果は、疾患もしくはその症状の完全もしくは部分的な防止という点から予防的であるかもしれないし、かつ/または疾患および/もしくは疾患に起因する有害効果の部分的もしくは完全な治癒という点から治療的であるかもしれない。本明細書において使用されるような「処置」には、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置が内含され、(a)疾患の素因を有しているかもしれないが、未だ疾患を有すると診断されていない対象において疾患が起こるのを防止すること;(b)疾患を阻害すること、即ち、その発症を阻止すること;または(c)疾患を軽減すること、即ち、疾患の後退を引き起こすことが含まれる。
【0039】
本明細書において使用されるような「単位剤形」という用語は、対象(例えば、動物、一般的にはヒト)のための単一の投薬量として適当な物理的に不連続の単位をさし、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体、または媒体と共に、所望の効果を生ずるのに十分な量の予定された量の薬剤を含有している。本発明の新規の単位剤形の明細は、利用される特定の薬剤および達成すべき効果、ならびに宿主における各化合物に関連した薬力学を含むが、これらに制限はされない、多様な要因に依るであろう。
【0040】
概説
本発明は、ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓を有し、ヒトマラリア寄生虫、例えば、ヒトにおけるマラリアの病因であるプラスモディウム(Plasmoidum)の種による感染を支持するネズミ動物モデルの開発に基づく。
【0041】
ネズミ動物モデルは、一般に、宿主の発達の適切な段階における、好ましくは宿主の出生直後の、トランスジェニックマウス宿主の肝臓へのヒト肝細胞の移植を含む。
【0042】
本発明者らの知る限り、本発明は、ヒトにおけるマラリア感染のモデルとして使用するための、確実に達成された安定的なヒト肝細胞生着を有する非霊長類宿主を初めて提供し、その動物モデルは、通常の感染経路を通して(例えば、静脈内接種により、感染することができ、肝臓の感染およびマラリア生活環の全ての期を通した寄生虫の発達を支持することができる。その動物モデルは、前赤内期、肝臓感染期、および赤内期を含む生活環の様々な期において、そして、ある生活期から次の生活期への発達および移行に関与している過程においてマラリアを阻害する薬剤をスクリーニングする能力を提供するため、本発明のこの局面は、抗マラリア剤の開発における使用にとって特に重要である。
【0043】
従って、本発明は、一つまたは複数の期のヒトマラリア寄生虫に感染した上記のようなキメラ動物を特徴とする。さらに、本発明は、ヒトマラリア寄生虫による感染の処置または防止のための薬剤を同定する方法を含む、本明細書に記載されたマラリア感染キメラ動物モデルの使用法を特徴とする。
【0044】
以下に本発明をより詳細に記載する。
【0045】
宿主動物
宿主動物は、一般に、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の肝臓における増加した産生を有し、ヒト肝細胞が生着し維持され得る非ヒト免疫低下哺乳動物である。本発明の動物モデルの基となり得る例示的な非ヒト動物には、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ヒツジ、ブタ、霊長類等が含まれるが、必ずしもこれらに制限はされない。一つの態様において、宿主動物は、ロデンティア(Rodentia)属のもの、好ましくはマウスである。好ましい態様において、宿主動物は、免疫低下マウス、好ましくはウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)に関してトランスジェニックの免疫低下マウス、より好ましくはuPAの肝臓特異的産生を提供するトランスジーン(例えば、Alb-uPAトランスジーン、例えば、Heckel et al Cell 62:447 (1990)を参照のこと)を含む免疫低下マウスである。本発明において使用するのに適したマウスは、系統C.B-17、C3H、BALB/c、C57131/6、AKR、BA、B10、129等を含むが、必ずしもこれらに制限はされない多様なバックグラウンド系統のうちの任意のものから作製され得る。宿主動物は、雄または雌のいずれかであり得る。
【0046】
免疫低下バックグラウンド
上述のように、宿主動物は、好ましくは免疫低下状態にある。移植に適した、所望の免疫無能を有する免疫低下哺乳動物宿主は、入手可能である。または、それほど好ましくはないが、例えば、一つまたは複数の化合物(例えば、シクロスポリン)の投与、および当技術分野において周知のその他の方法により、免疫適格動物から免疫低下動物を作製することもできる。一般に、免疫低下宿主は、異種の組織または細胞に対する完全な免疫応答を開始することができない。
【0047】
特に対象となるのは、免疫グロブリンおよびT細胞抗原受容体をコードする遺伝子座における生殖細胞系列DNA再編成を受けることを不可能にする遺伝的欠陥のために免疫低下状態にある動物である。機能的なT細胞またはB細胞の数を有意に減少させるか、または検出不可能にする一つまたは複数の遺伝的欠陥を有する免疫低下動物も、対象となる。
【0048】
一つの態様において、動物の自然免疫系は、動物が、少なくとも検出可能〜正常動物と比べて(例えば、正常マウス、特に同一遺伝子型の正常マウスと比べて)ネイティブのナチュラルキラー細胞および/またはマクロファージの活性を有するよう、少なくとも部分的に完全である。特に対象となるのは、scid変異と、少なくとも部分的に完全な(例えば、少なくとも検出可能〜ネイティブのナチュラルキラー細胞および/またはマクロファージの活性を有する)自然免疫系との両方を有するマウスである。
【0049】
もう一つの態様において、動物は、ナチュラルキラー(NK)細胞欠損に関連しているベージュ変異(bg)を有する。一つの態様において、生物に導入された同種異系または異種の細胞または組織に対する効果的な免疫応答を開始しない動物をもたらす、scid変異およびbgベージュ変異の両方を有しているマウスが作製される。
【0050】
特に対象となるのは、scid遺伝子座にホモ接合性の変異(scid/scid)を有するマウスである。scid変異は、DNA依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニットの欠損に関連しており、免疫グロブリンおよびT細胞受容体の遺伝子におけるVDJ組換えを妨げる。scid変異に関してホモ接合性の動物は、機能的に組み換えられた免疫グロブリンおよびT細胞受容体の遺伝子を欠き、従って、T細胞系統およびB細胞系統の両方が欠損している。scid/scid変異は、入手可能であるか、または多数の異なる遺伝バックグラウンド(例えば、CB.17、ICR(非近交系)、C3H、BALB/c、C57B1/6、AKR、BA、B10、129等)へと交配され得る。
【0051】
現在入手可能なその他の例示的な免疫低下宿主には、RAG-1および/もしくはRAG-2に関連したリコンビナーゼ機能を欠くか(例えば、市販されているTIM(商標)RAG-2トランスジェニック)、クラスIおよび/もしくはクラスII MHC抗原を欠くか(例えば、市販されているC1DおよびC2Dのトランスジェニック系統)、またはBcl-2癌原遺伝子の発現を欠くよう遺伝子操作されたトランスジェニックマウスが含まれる。レシピエントとして有用であるかもしれないその他のマウスは、NOD scid/scid;SGB scid/scid,bh/bh;CB.17 scid/hr;NIH-3 bg/nu/xid、およびMETA nu/nuである。CD3F遺伝子のホモ接合性の破壊のために機能的なB細胞およびT細胞を欠くトランスジェニックのマウス、ラット、およびブタが、入手可能である。免疫低下ラットには、HsdHan:RNU-rnu;HsdHan:RNU-rnu/+;HsdHan:NZNU-rnu;HsdHan:NZNU-rnu/+;LEW/HanHsd-rnu;LEW/HanHsd-rnu/+;WAG/HanHsd-rnu、およびWAG/HanHsd-rnu/+が含まれる。一つの対象となる態様において、動物は、Ragおよび共通ガンマ鎖両方のノックアウトを有する(従って、T、B、またはNK細胞を実質的に有しない)免疫不全マウスである。
【0052】
ウロキナーゼのトランスジェニック発現
上述のように、本発明のキメラ動物は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)の発現に関する「ノックイン」トランスジェニックでもある。一つの態様において、トランスジーンは、ネズミアルブミンエンハンサー/プロモーター、ネズミuPA遺伝子コーディング領域、ならびに成長ホルモン遺伝子の3'非翻訳配列および隣接配列を含むAlb-uPAトランスジーンである(Heckel et al. Cell 62:447-56 (1990);Sandgren et al. Cell 66:245-56 (1991))。好ましくは、動物は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジーンに関して、ヘテロ接合性ではなく、ホモ接合性である。Alb-uPAトランスジーンは、それを保持している肝細胞に致死的な傷害をもたらし、ウロキナーゼの高い局所(肝臓内)濃度ももたらし、それが、次に、肝臓内で肝細胞増殖因子をその活性型へとプロセシングする。理論に拘束されるものではないが、Alb-uPAトランスジェニック動物の発達中の適切な時点で導入された生存可能な同種異系または異種の細胞は、この環境において複製するよう刺激される。従って、ドナー細胞は、増殖して、トランスジーンの致死的な傷害の結果として死滅する内因性肝細胞に「取って代わる」ようになる。
【0053】
移植に適したヒト肝細胞およびその他の細胞の単離
宿主動物への移植のためのヒト肝細胞は、当技術分野において公知の任意の便利な方法によりヒト肝組織から単離される。一般に、ヒト肝細胞は、(例えば、死亡後数時間以内に入手された)新鮮な組織、または新鮮に凍結させられた組織(例えば、凍結させられ約0℃以下で維持された新鮮な組織)であり得る。理想的には、使用される細胞は、新鮮に入手されたヒト肝組織から最近(即ち、2〜4時間以内に)単離されたものである。定義された低温保存培地に置かれたヒト肝細胞は、長期にわたり(例えば、液体窒素中で)保存し、必要に応じて解凍させることができ、従って、保存された肝細胞のバンクの開発が可能である。一般に、単離手法、ならびに取り扱いおよび保存のプロトコルは、肝臓への血流の停止後の温虚血を最小限(例えば、一般に、約30分〜60分未満、好ましくは約20分〜約40分未満)に抑え、かつ保存に起因し得る冷虚血を最小限(例えば、一般に、約12hr未満、一般的には約1hr〜2hr未満)に抑えるようなものであることが、一般的に重要である。一つの態様において、ヒト組織は、正常であり、例えば、検出可能な病原体を有しておらず、形態学および組織学が正常であり、かつ本質的に無疾患である)。一般的に、温虚血曝露の期間は、約20〜50分以内である。
【0054】
単細胞の懸濁物を提供するために肝組織を機械的もしくは酵素的に解離させてもよいし、または完全なヒト肝組織の断片を使用してもよい。好ましい態様において、肝細胞は、ルーチンのコラゲナーゼ潅流(Ryan et al. Meth. Cell Biol 13:29 (1976))に続く低スピード遠心分離により、ドナー組織から単離される。次いで、肝細胞は、ステンレス鋼メッシュ(例えば、100μm)によるろ過に続く密度勾配遠心分離により精製され得る。または、肝細胞を濃縮するためのその他の方法、例えば、蛍光標示式細胞分取、パニング(panning)、磁気ビーズ分離、遠心力場内での溶離等が使用され得る。移植に使用される最終的な懸濁物は、一般に80〜99%のトリパンブルー排除による生存率を有する、少なくとも約50〜75%の肝細胞、一般的には少なくとも約80〜99%の肝細胞を一般に含む。
【0055】
もう一つの態様において、移植される細胞は、宿主動物の肝臓への移植後に、マラリア感染に感受性のヒト肝細胞へと発達または分化する、ヒト幹細胞または肝細胞前駆細胞である。一つの特定の態様において、ヒト幹細胞は、ヒト臍帯血球から入手される。ヒト臍帯血球は、肝細胞の幹細胞再生のための起源であるのみならず、免疫系の再生のための起源でもある(例えば、Verstegen et al. Blood. 91(6):1966-76 (1998)参照)。
【0056】
ヒト肝細胞またはその他の適当な細胞の宿主への移植
トランスジェニック免疫低下宿主へのドナー肝細胞の導入のタイミングは、キメラ肝臓をマラリア寄生虫感染に対して感受性にし、その複製および発達を支持するために十分な数のヒト肝細胞が定植したキメラ肝臓の作製にとって重要であるかもしれない。寄生虫が低い感染性および/または低い複製速度を示すことが予想される場合には、特にこのことが当てはまる。
【0057】
動物がネズミ(例えば、マウス)である場合、宿主は、移植の時点で、理想的には、10日〜2週齢未満であり、最適には約7〜10日齢、または約1週未満(即ち、5〜7日齢未満)である。一般に、移植は、好ましくは、約8〜10日齢と15日齢との間に実施される。移植のためのウィンドウは、良好な結果を維持しながら、柔軟性を獲得するため、約7〜18日齢にまで広げることができる。一般に、5〜12日齢での肝細胞移植が最も興味深く、4日齢での肝細胞移植には、技術的に有能なスタッフが必要とされ、12日齢を超えた肝細胞移植は、全体移植成功率の低下に関連している。理論に拘束されるものではないが、本明細書に示された移植のタイミングは、極初期の移植に関連した(即ち、動物の小さいサイズのための)過剰の技術的死亡率と、最大複製刺激のための時間(例えば、移植片がドナーヒト細胞の生着の成功および程度に影響を及ぼし得る前に起こるレシピエント肝臓における細胞分裂の数)との折衷である。さらに、トランスジーンにより提供される肝細胞再増殖のための刺激は、時間とともに縮小し、一般にレシピエントが約6週齢を超えた後に枯渇するため(Rhim et al. (1994) Science 263:1149-52;ホモ接合体では約10〜12週)、移植のタイミングはやはり重要である。
【0058】
ヒト肝細胞(またはその他の適当な細胞、例えば、肝細胞前駆細胞または幹細胞)は、当技術分野において公知の任意の適当な方法を使用して移植され得る。好ましくは、ヒト肝細胞は、脾臓内に、例えば、脾臓下極に注入される。
【0059】
成功した生着は、従来の方法、例えば、宿主血清中のヒト肝臓特異的タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HA)またはヒトアルファ-1アンチトリプシンのレベルを調査することにより、モニタリングされ得る。キメラ宿主は、適当である場合には、実験のため(例えば、マラリア寄生虫による感染のため、候補薬剤をスクリーニングするため等)使用され得る。比較的低い感染性および/または低い複製能の寄生虫を動物に感染させる場合には、キメラ動物は、移植後約4〜6週以内、一般には移植後約6週目に接種され得、移植後3週という初期であってもよい。
【0060】
一般に、動物宿主は、ヒト肝細胞である肝細胞の体積百分率が、少なくとも約20%〜50%、一般に約40%〜60%以上となり、90%以上に最適化され得るよう、その肝臓内でヒトキメラ化を発達させる。キメラ動物は、少なくとも数週間、一般に少なくとも約5週間、より一般的には少なくとも約12週〜24週間、最長8ヶ月以上、機能的な移植された肝細胞により維持され得、最長で宿主の一生であり得る。
【0061】
ヒト赤血球を有するキメラ動物の作製
一つの対象となる態様において、本発明のキメラ動物は、ヒトマラリア生活環の赤内期を容易にするかまたは支持するため、ヒト赤血球(RBC)を供給される。
【0062】
例えば、本発明のキメラ動物は、P.ファルシパルムスポロゾイトに感染させられ、次いで、洗浄されたヒト赤血球(RBC)1.0mlを2日連続して腹腔内輸液され得る。これは動物の循環血中赤血球集団を75〜95%ヒトにするであろう。または、キメラマウスモデルにおけるヒト赤血球細胞の生成は、ヒト臍帯血またはヒト胎児肝細胞調製物からの起源のヒト幹細胞の移入により確立され得る。
【0063】
それが達成される方法に関わらず、例えば、少なくとも約40%〜約95%以上のヒトRBC、少なくとも約50%〜約90%のヒトRBC、少なくとも約60%〜約85%のヒトRBC、少なくとも約70%〜約85%のヒトRBC、または少なくとも少なくとも45%〜約60%のヒトRBCを有するキメラ動物が作製され得る。例えば、2日連続の洗浄されたヒトRBC 1mlの腹腔内輸液は、80〜95%のヒト循環血中RBCを有するマウスをもたらし得、これは少なくとも3日間維持される。
【0064】
方法使用に関わらず、動物へのヒト赤血球の供給は、マラリアメロゾイトが肝細胞を去り、ヒト赤血球に入ることを可能にする。末梢赤血球が実質的な割合のヒト赤血球を含有しているのであれば、末梢スメア調査またはマラリア寄生虫のPCRが、マラリア生活環の赤内期の再発達を確立するために使用され得る。さらに、そのような感染キメラ動物は、第二の宿主キメラ動物への蚊によるマラリア寄生虫の移入を容易にすることができ、従って、モデルにおける全マラリア生活環を提供する。
【0065】
本発明者らは、P.ファルシパルムによる感染後7日目に採集されたマウス肝臓のホモジネートが、RBC培養物への寄生虫のインビトロ導入後の、RBC調製物のギムザ染色スライドの顕微鏡検により確認されるように、24、48、および72時間、インビトロでヒトRBCを感染させ得ることを示した。
【0066】
マラリア寄生虫および感染
マラリア寄生虫を入手し、哺乳動物に投与する方法は、当技術分野において周知である。例えば、感染したアノフェリン蚊は、Malaria Program at the Naval Medical Research Center, Silver Spring, Marylandから入手される。蚊をマイクロダイセクトし、スポロゾイトを含有している唾液腺をすりガラスホモジナイザー(homgenizer)で摩砕し、計数し、マウスへと静脈内注射(0.1〜3×106寄生虫/マウス)する。注射される寄生虫の数は、特定の研究にも依るし、蚊からのスポロゾイトの回収にも依る。P.ファルシパルムスポロゾイトの回収のための具体的な手順は、当技術分野において周知であり、プラスモディウムの領域における研究者の慣習的な実務である。
【0067】
P.ファルシパルム寄生虫は、およそ7〜9日かかって肝細胞において成熟し、その後、肝細胞から放出され赤血球を感染させるであろう。従って、P.ファルシパルムによる感染の慢性状態は存在しない。しかしながら、P.ビバックスは、長期(数ヶ月〜数年)にわたり発達を阻止された状態で肝臓内に残留するヒプノゾイトを形成することができる。理解されていない理由により、P.ビバックスヒプノゾイトは、発達を再開し、肝細胞において成熟するであろう。この現象は、インビトロの系では研究され得ないが、本発明のキメラ動物モデルでは査定され得るため、この現象を研究する能力は、さらにもう一つの本発明の利点および特質である。
【0068】
感染宿主の寄生虫負荷は、決定され得る。寄生虫負荷は、例えば、組織(例えば、肝細胞、血液スメア)の調査、PCR(例えば、リアルタイムPCRアッセイ)等により、定性的または定量的に決定され得る。例えば、リアルタイム定量的PCR(RTQ-PCR)は、P.ファルシパルム感染キメラ動物の肝臓および血液における寄生虫荷重を決定するために利用され得る。プラスモディウムの小サブユニット(18S)リボゾームRNA遺伝子は、RTQ-PCRの標的として使用され得る、よく保存された遺伝子である。定量的分析のための標準曲線は、既知濃度の血液期寄生虫から抽出されたDNAを使用して構築され得る。肝臓期試料からのDNAが抽出され、既知濃度の寄生虫からのDNAを用いたRTQ-PCRアッセイにおいて使用される。サイクルしきい値(cycle threshold)(Ct)対寄生虫数が標準について作製され、肝臓期試料のCTをプロットすることにより肝臓内の寄生虫数が計算される。
【0069】
感染宿主の経時的な寄生虫負荷は、天然の生活環における寄生虫の発達と相関する、ヒト感染において観察されるものを模倣し得る。従って、本発明には、EE期寄生虫(発達中の肝内メロゾイトを含む肝臓期寄生虫)を有するキメラ宿主も、(トロフォゾイトを含む)赤内期(または「赤血球」期)寄生虫を有するキメラ宿主も包含される。一般に、キメラ動物は、マラリア生活環の全部または一部(例えば、前赤血球)を支持するために提供され得る。即ち、本発明の動物モデルは、ある感染キメラ動物からの血液由来寄生虫の(例えば、人工的移入、または蚊による)もう一つの動物への移入を含み得る、全ての期を通したマラリア寄生虫(例えば、P.ファルシパルム)の全生活環を支持することができる。
【0070】
一般に、P.ファルシパルムにおいて、肝臓期は、一般に、感染の最初の2週(例えば、10日以下)以内にのみ起こる。その後、マラリア寄生虫は、全て血液期となり、そこで赤血球を感染させ、発達し、次いで放出され、再びRBCを感染させて、寄生虫の数を増加させる。マラリア寄生虫発達のこれらの期のいずれかを阻害し得る薬剤を同定するための本発明の動物モデルの使用が、本発明により企図され、これに伴い赤血球期寄生虫に影響を与え得る、大部分のマラリア患者の処置に適した薬剤が、特に対象となる。
【0071】
本発明のキメラ動物の感染は、約10匹、100匹、5×102匹、103匹、5×103匹、104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、または107匹、一般的には、約10匹、100匹、5×102匹、103匹、5×103匹、104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、またはそれ以下の寄生虫の動物への(例えば、動物の血流への)導入により確立され得る。肝臓期(例えば、感染後5〜7日目)における本発明の感染キメラ動物の寄生虫負荷は、約104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、107匹、5×107匹、または108匹、またはそれ以上であり得る。赤内期における本発明の感染キメラ動物の寄生虫負荷は、約104匹、5×104匹、105匹、5×105匹、106匹、5×106匹、107匹、5×107匹、または108匹、またはそれ以上であり得る。
【0072】
いくつかの態様において、本発明のキメラ動物のマラリア感染は、少なくとも3日、5日、6日、7日、8日、またはそれ以上維持され、例えば、上記のようなヒトRBCを有するキメラ動物においては、赤内期の寄生虫を含む感染のより長い期間が維持される。
【0073】
スクリーニングアッセイ
本発明のキメラ動物は、マラリアの感染、発達、複製等を阻害する薬剤の同定に適した多様なスクリーニングアッセイにおいて使用され得る。この目的のため、本発明の動物モデルは、そのような効果に関して候補薬剤をスクリーニングするために使用される。
【0074】
本明細書に記載されたスクリーニングアッセイは、(肝臓期を含む)EE感染期および赤内(erthrocytic)感染期を含むマラリア生活環の任意の期のマラリア感染を有するキメラ動物を用いて使用され得る。従って、本発明は、スポロゾイトによる肝細胞の感染の阻害、肝細胞内での発達の阻害、肝細胞からのメロゾイトの放出の阻害、メロゾイトによる赤血球の感染の阻害、赤血球内での発達の阻害、メロゾイトの放出の阻害等を含む、任意の期のマラリア寄生虫に影響を与える薬剤のスクリーニングを包含する。
【0075】
「候補薬剤」とは、合成の、天然に存在する、または組換えにより作製された分子(例えば、低分子;薬物;ペプチド;抗体(例えば、受動免疫を提供するための、抗原結合性抗体断片を含む)またはその他の免疫治療剤;真核細胞または原核細胞に存在する内因性因子(例えば、ポリペプチド、植物抽出物等)等)を含むものである。特に対象となるのは、ヒト細胞に対して低い毒性を有する薬剤のスクリーニングアッセイである。
【0076】
候補薬剤には、多数の化学物質クラスが包含されるが、典型的には、それらは、有機分子、好ましくは、50超かつ約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物である。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含み、典型的には、少なくとも一つのアミン、カルボニル、ヒドロキシル、またはカルボキシル基を含み、好ましくは、官能化学基のうちの少なくとも二つを含む。候補薬剤は、しばしば、上記官能基のうちの一つまたは複数で置換された環式炭素もしくは複素環式構造および/または芳香族もしくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造アナログ、または組み合わせを含むが、これらに制限はされない生体分子の中にも見出される。
【0077】
候補薬剤は、合成または天然の化合物のライブラリーを含む多様な起源から入手される。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペプチドの発現を含む、多様な有機化合物および生体分子のランダム合成および特異的合成のため、多数の手段が利用可能である。または、細菌、真菌、植物、および動物の抽出物の形態の天然化合物のライブラリーが、入手可能であるか、または容易に作製される。さらに、天然のまたは合成的に作製されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、および生化学的な手段を通して容易に修飾され、コンビナトリアルライブラリーを作製するために使用され得る。構造的アナログを作製するため、公知の薬理学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化(amidification)等のような、特異的またはランダムな化学的修飾に供することができる。
【0078】
一つの態様において、本発明の動物モデルは、マラリア感染により引き起こされた症状を改善する薬剤を同定するため(ここで、症状には、組織病理学が含まれる)、かつ/または感染中の寄生虫の病原メカニズムに、より直接的に影響を与えるため、例えば、寄生虫感染を阻害するため、生活環の一つもしくは複数の期の寄生虫の複製を減少させるため、またはマラリア生活環を破壊するため、使用される。一般には、候補薬剤が本発明の動物モデルに投与され、対照と比べた(例えば、未感染動物と比べた、公知の抗マラリア効果を有する薬剤(例えば、クロロキン;マラロン(malarone);アルテミシニン(artemisinin)化合物、特にアルテスネート(artesunate)、アルテメーテル(artemether)、およびジヒドロアルテミシニン等)により処置されたマラリア感染動物と比べた)候補薬剤の効果が査定される。例えば、候補薬剤が本発明のマラリア感染動物に投与され、(例えば、血液または肝臓試料のRT-PCRにより測定されるような)処置された動物の寄生虫力価が、処置前の動物の寄生虫力価、および/または対照の未処置のマラリア感染動物と比較され得る。一般に、候補薬剤による処置後の、感染動物の寄生虫力価の検出可能な有意な減少は、薬剤の抗マラリア活性の指標となる。
【0079】
候補薬剤は、所望の結果を達成するために、薬剤の送達のための望ましいかつ/または適切な任意の様式で投与され得る。例えば、候補薬剤は、注射(例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、または所望の効果を達成すべき組織への直接注射)、経口、またはその他の望ましい手段により、投与され得る。通常、インビボスクリーニングは、様々な量および濃度の候補薬剤(薬剤なし〜動物に成功裡に送達され得る量の上限に近い量の薬剤)を受容する多数の動物を含み、異なる製剤および経路での薬剤の送達を含み得る。さらに、薬剤は、上記のような寄生虫の生活環の様々な期において動物に投与され得、宿主が肝臓期寄生虫を含有している時の投与が、特に対象となる。薬剤は、単独で投与されてもよいし、または、特に、薬剤の組み合わせの投与が相乗効果をもたらし得る場合には、二つ以上の組み合わせへと組み合わせられてもよい。
【0080】
候補薬剤の活性は、多様な方式で査定され得る。例えば、薬剤の効果は、寄生虫の存在(例えば、力価)または病原体の存在に関連したマーカー(例えば、病原体特異的タンパク質(P.ファルシパルムヒスチジンリッチタンパク質II)もしくはコーディング核酸等)に関して血液試料を調査することにより査定され得る。マラリア感染の存在および重度を検出し査定するための定性的および定量的な方法は、当技術分野において周知である。
【0081】
プラスモディウム感染の迅速な決定のための最もよく知られている技術は、イムノクロマトグラフィストリップである。このフォーマットにおいては、P.ファルシパルムタンパク質に特異的なモノクローナル抗体が、ニトロセルロースストリップへ固定化され、感染個体の血中に見出される抗原を捕獲するために使用される。普及している試験は、Pfヒスチジンリッチタンパク質の捕獲を使用する。フィールドスタディーにおいて、テストストリップは、1μl当たり500匹未満の寄生虫を検出し得ることが示されている。これは、本発明の感染キメラ動物の血中の寄生虫レベルを査定するために利用され得る例示的な技術である。
【0082】
一つの態様において、マラリア感染に対する薬剤の活性は、(例えば、RT-PCR、抗マラリア抗原抗体を使用した抗体結合等により)マラリア寄生虫の存在に関して血液試料および/または組織切片を調査することにより査定され得る。もう一つの態様において、マラリア感染に対する薬剤の活性は、マラリアの核酸または抗原の存在に関して血清試料を調査することにより査定され得る。あるいは、またはさらに、宿主肝臓を生検し、インサイチューで、組織切片内の寄生虫のレベルの定性的または定量的な改変を直接証明するため、マラリア核酸またはマラリア抗原を検出してもよい。または、またはさらに、宿主を安楽死させ、肝臓を感染の徴候に関して組織学的に調査してもよい。
【0083】
同定された薬剤
所望の薬理学的活性を有する化合物は、処置のため、生理学的に許容される担体で宿主に投与され得る。治療剤は、多様な方式で、経口、局所、非経口、例えば、皮下、腹腔内、血管内、吸入等により投与され得る。導入の様式に依って、化合物は、多様な方式で製剤化され得る。製剤中の治療的に活性な化合物の濃度は、約0.1〜100重量%と変動し得る。
【0084】
薬学的組成物は、顆粒、錠剤、丸剤、坐剤、カプセル、懸濁物、軟膏(salves)、ローション等のような様々な形態で調製され得る。経口的および局所的な使用に適した薬学的グレードの有機または無機の担体および/または希釈剤が、治療的に活性な化合物を含有している組成物を作成するために使用され得る。当技術分野に公知の希釈剤には、水性の媒体、植物性および動物性の油および脂肪が含まれる。安定剤、湿潤剤、および乳化剤、浸透圧を変動させるための塩、または適切なpH値を保証するための緩衝剤、ならびに皮膚浸透増強剤が、補助剤として使用され得る。
【0085】
ワクチン開発
いくつかの修飾により、本発明の動物モデルは、マラリア寄生虫による感染を防止または改善する能力に関して、候補ワクチンをスクリーニングするためにも使用され得る。一般に、「ワクチン」とは、投与後に、標的病原体に対する免疫応答を宿主が開始するのを容易にする薬剤である。誘発された体液性、細胞性、または体液性/細胞性免疫応答は、ワクチンが開発された病原体による感染の阻害を容易にすることができる。本発明において特に対象となるのは、マラリア寄生虫の感染および/または肝内複製を阻害する防御免疫応答を誘発する予防的ワクチンである。受動免疫または迅速にアップレギュレートされた特異活性免疫(例えば、抗マラリア免疫グロブリン等)の提供を通して防御を提供する治療的ワクチンも、対象となる。
【0086】
本発明のこの態様において、免疫低下キメラ動物の免疫系は、例えば、幹細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、臍帯血細胞(blood cord cells)、造血(hematopoietc)細胞、または動物にヒト免疫系を提供するためのヒト起源のその他の適当な細胞を使用して再構成される。ヒト免疫細胞の単離、およびヒト免疫系による免疫低下動物、例えばマウスの免疫系の再構成のための方法は、当技術分野において周知である(例えば、Nature 335:256-59;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93(25): 14720-25参照)。一つの態様において、ヒト免疫細胞は、キメラ肝臓の作製において使用されたヒト肝細胞と同一のドナーから入手される。一つの態様において、ヒト免疫細胞は、当技術分野において周知の方法により、例えば、腹腔内注射により、宿主へと導入される。
【0087】
別のアプローチは、ヒト肝細胞、ならびに免疫細胞および/または赤血球血統細胞の両方による再増殖を達成し得る、ヒト胎児肝細胞のキメラマウスへの移植を含む。これは、ヒト免疫系および/またはヒト赤血球血統を有する動物の再構成を提供する。
【0088】
本発明は、ワクチン開発のための推定上の標的としての肝臓期感染からの抗原の起源としての、肝臓期感染を有するキメラ動物の使用も企図する。もう一つの態様において、ヒト免疫系による再構成を容易にするために、例えば、Rag2/共通ガンマ鎖ノックアウトのバックグラウンドを有するキメラマウスが開発され得る。
【0089】
有効なワクチンのスクリーニングは、上記のスクリーニング法に類似している。簡単に説明すると、候補ワクチンが、マラリア寄生虫の接種前に、キメラ動物に投与される。候補ワクチンは、一般に、単回ボーラス(例えば、腹腔内もしくは筋肉内注射、局所投与、または経口投与)に続く1回またはそれ以上の追加免疫感作の提供により投与される。免疫応答の誘導は、当技術分野において周知の方法により、寄生虫抗原に特異的なBおよびT細胞応答を調査することにより査定され得る。次いで、免疫感作された動物に、寄生虫がチャレンジされる(challenged);通常は、数匹の免疫感作された動物に、増加する数の寄生虫がチャレンジされる。次いで、免疫感作された動物および免疫感作されていない対照動物が、感染の発達に関して観察され、(例えば、存在する寄生虫のレベルの査定、ヒト肝細胞機能パラメーターの調査等により)感染の重度が査定される。マラリア寄生虫による感染の有意な減少および/またはチャレンジ後に生じる疾患の重度の有意な減少を提供するワクチン候補が、実行可能なワクチンとして同定される。
【0090】
実施例
以下の実施例は、いかにして本発明を作成し使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが本発明と見なすものの範囲を制限するためのものではないし、下記の実験が実施された全ての唯一の実験であることを表すためのものでもない。使用された数(例えば、量、温度等)に関しては、正確さを保証すべく努力がなされたが、いくつかの実験誤差および偏差は斟酌されるべきである。他に示されない限り、部分は重量部分であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、かつ圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0091】
以下の方法および材料が、下記の実施例において使用された。
【0092】
寄生虫
全ての実験が、プラスモディウム・ファルシパルムのNF54株のスポロゾイトまたは血液期寄生虫を利用した。スポロゾイトは、アノフェレスステフェンシ(stephensi)蚊で飼育された。スポロゾイトは、手解剖、または5%胎児ウシ血清を含むMedium 199(Gibco, Grand Island, NY)における不連続勾配18により単離された。
【0093】
マウス
ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジーンに関してホモ接合性の5〜14日齢のSCIDマウスが、コラゲナーゼ消化およびPercoll勾配遠心分離により外科的に切除された肝臓標本から(インフォームドコンセントをもって)単離された106個のヒト肝細胞の脾臓内注射による接種を受容した(Ryan et al., Surgery 113:48-54 (1993); Seglen Methods Cell Biol., 13:29-83 (1976))。マウスは、移植後6週目に、ELISAによるヒトアルファ1アンチトリプシンについての血清分析により、成功した生着に関してスクリーニングされた(Seglen (1976))。マウスは、Canadian Council on Animal Careのガイドラインに従い、University of Alberta Faculty of Medicine and Dentistry Health Sciences Laboratory Animal Ethics Committeeにより承認されたプロトコルの下で、University of Alberta Health Sciences Laboratory Animal Servicesにより管理された。
【0094】
スポロゾイトによる感染および組織収集
マウスは、まず1〜1.5×106匹のP.ファルシパルムスポロゾイトの静脈内尾静脈注射を受容した。次いで、マウスを、感染後3〜8日目にCO2過量により安楽死させ、凍結切片化またはRNA抽出のため肝臓を除去した。肝臓をPBSで濯ぎ、葉を別々の少片へと切断した。選択された葉を、Tissue-Tek O.C.T.化合物(Miles Scientific, Naperville, IL.)で包埋し、イソペンタン/液体N2浴中で凍結させ、その他の断片は、RNA抽出のための液体N2中で急速凍結させた。組織切片(7μm)を、Leica CM1900(Leica Microsystems, Deerfield, IL.)で切断し、無水メタノールで固定し、使用まで-80℃で保存した。
【0095】
ヒトα1-アンチトリプシンELISAアッセイ
IMMULON(商標)-296穴プレート(Corning, Inc.)を、各ウェル50μlのコーティング緩衝液(0.1M NaHCO3、pH9.5)により1:1000希釈された一次抗体(ヤギ抗ヒトα-1-アンチトリプシン、Oxoid Inc., Nepean, Ont, Canada)により4℃で一夜コーティングした。次いで、ウェルを、0.025%(v/v)Tween 20を含有しているTris緩衝生理食塩水(50mMトリス、100mM NaCl)(TBS-T)により1回洗浄した後、ブロッキング緩衝液(5%脱脂粉乳を含有しているTBS-T)との4℃で一夜の第二のインキュベーションを行った。ウェルを、TBS-Tにより2回洗浄した後、ブロッキング緩衝液で希釈された血清試料を添加した。移植されていないAlb/uPAマウスおよびヒトからの血清を、それぞれ、陰性および陽性の対照として使用した。ヒト参照血清の段階希釈物、Calibrator 4(Oxoid Inc., Nepean, Ont., Canada)を、標準曲線の構築のために使用した。室温で2時間後、ウェルをTBS-Tにより3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に連結された一次抗体と共に室温で2時間インキュベートした。一次抗体のHRPとの接合は、製造業者の指示に従い、EZ-Link Plus Activated Peroxidase Kit(Pierce, Rockford, IL)を使用して行った。ウェルをTBS-Tで3回洗浄し、50μlのHRP基質溶液(H2O2(0.02%v/v)が新鮮に添加された、1mgの3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン二塩酸塩(Sigma, Oakville, Ont., Canada)を含む0.05Mリン酸クエン酸(phosphatecitrate)緩衝液(pH5))を、正確に5分間添加した。各ウェルへの50μlの2N H2SO4の添加により反応を終結させ、450nmの吸光度における分光測光法によりHRP活性を決定した。hAATの血清レベルを、ヒト参照標準により作成された標準曲線から計算した。
【0096】
抗体
いくつかの異なるモノクローナル抗体およびポリクローナル抗血清を、免疫蛍光アッセイ(IFA)のため使用した。抗CSモノクローナル抗体(mAb)2A10は、CSタンパク質のリピート領域に結合するものであり、P.ファルシパルムに特異的であった(Nardin et al., J. Exp. Med. 156:20-30 (1982))。PfSSP2組換えタンパク質によるマウスの免疫感作により作製された抗SSP2 mAb(PfSSP2.1)(Charoenvit et al., Infect. Immun. 65:3430-3437 (1997))も、P.ファルシパルムに特異的であった。HSP70 mAb(Tsuji et al., Parasitol. Res. 80:16 (1994))は、P.ベルゲイ寄生虫に対して作成されたものであるが、P.ファルシパルムと交差反応する。EXP-1抗血清は、全長遺伝子を含有しているDNAワクチン構築物によるウサギの免疫感作により作製された。LSA-1抗血清は、15マーのLSA-1リピート(LEQERLAKEKLQEQQ(配列番号:01))(Zhu et al., Mol. Biochem. Parasitol. 48:223-226 (1991))を8コピーを含有していた、多重抗原性ペプチド(MAP)(Tam et al., J. Immunol. Methods 124:53-61 (1989))による免疫感作により、ウサギにおいて作製された。EBA-175抗血清は、PfEBA-175分子の領域VIからのペプチド配列によるマウスの免疫感作により作製された。MSP-Iに対するmAbは、P.ファルシパルムメロゾイトによるマウスの免疫感作、およびその後の免疫脾細胞の骨髄腫細胞系との融合により作製された(Lyon et al., J. Immunol. 138:895-901 (1987))。
【0097】
免疫蛍光アッセイ
組織切片を含むスライドは、フォイルおよびプラスティックバッグで包み、-70℃で保存した。組織切片スライドをフリーザーから取り出し、乾燥機(dessicator)内に置き、室温へと平衡化する。次いで、100マイクロリットルの希釈された抗血清を組織切片に適用した(これは、組織を覆うのに十分な容量である)。次いで、スライドを恒湿チャンバー内で37℃で30分間インキュベートした。肝臓切片スライドを恒湿チャンバーから取り出し、染色ディッシュに置き、PBSにより5分間3回洗浄した。フルオレセイン接合IgG(Kirkegaard and Perry, Gaithersburg, Md)を、二次抗体として使用した。二次抗体の特異性は、切片を染色するために使用された一次抗体の種に依って異なった。二次抗体は、0.02%エバンスブルーを含有しているPBSで1:40希釈した。エバンスブルーは、組織内の自己蛍光を抑制するための対比染色としてはたらくよう添加された。希釈された二次抗体を添加し、スライドを、暗い恒湿チャンバー内に置き、37℃で30分間インキュベートした。次いで、組織切片を上記のように洗浄し、スライドを、VECTASHIELD(登録商標)封入剤(Vector Labs, Burlingame, CA.)を使用して封入した。染色されたスライドを、Nikon Eclipse E600エピフルオレセント(epifluorescent)顕微鏡によりスクリーニングし、ディジタル画像をSPOTディジタルカメラ(Diagnostic Instruments, Inc., Sterling Hgts, MI)により収集した。
【0098】
RT-PCR
RT-PCR分析において使用するためのRNAは、以前に記載されたようにして(Lau et al., J. Parasitol. 87:19-23 (2001))、感染した肝臓から単離された。第1鎖cDNAは、Superscript First-Strand Synthesis System for RT-PCRキット(Life Technologies, Gaithersburg, Md.)を使用して、全RNAから作成された。cDNAの合成は、異なる寄生虫試料から単離されたRNAを、ランダムヘキサマーまたはオリゴ-dtのいずれかによりプライミングし、次いで逆転写酵素と共にインキュベートすることにより実施された(RT+)。ゲノムDNAの存在に関する対照として、逆転写酵素を省略した反応を行った(RT-)。特定の遺伝子配列の増幅は、HotStarTaq PCRキット(Quiagen, Valencia, CA)からのホットスタートTaq DNAポリメラーゼを使用して、PCRにより達成された。cDNA反応物からの1マイクロリットルを、以下のものを含むいくつかのオリゴヌクレオチドプライマー対のうちの一つと共に、PCRマスターミックスに添加した:
MacVector配列分析ソフトウェア(Accelrys, San Diego, CA.)を使用することにより、プライマーを設計し、PCR反応に使用される特定の条件を決定した。PCR産物を、1%アガロースゲル上の電気泳動に供し、臭化エチジウムにより染色し、DNAバンドをALPHAIMAGER(商標)(Alpha Innotech Corporation, San Leandro, CA)により可視化した。
【0099】
レーザーキャプチャーマイクロダイセクション
肝臓期寄生虫を、Sacci et al. (2002) Mol. Biochem. Parasitol. 119, 285-28914に記載されたようにして単離した。簡単に説明すると、P.ファルシパルム感染後5日目にキメラ肝臓から凍結切片を切り取り、RnaseZap(Ambion, Austin, TX)により処理されたガラススライドへ収集した。組織切片を、製造により推奨されたプロトコルに従い、HISTOGENE(商標)LCM凍結切片染色キット(Arcturus, Mountain View, CA.)を使用して染色した。RNA分解の可能性を制限するため、全ての水性の染色および洗浄の工程に、RNAse阻害剤(SUPERASE IN(商標), Ambion, Austin, TX.)を含めた。個々のシゾントを、レーザー活性化を介してメンブレンを融解させることにより、CAPSURE(商標)HS LCMキャップの熱可塑性メンブレンへと捕獲した。典型的には、レーザースポットサイズは7.5μm、出力は40mW、パルス時間は3msであった。
【0100】
100個のレーザーマイクロダイセクトされたシゾントを含有しているキャップのコホートからの全RNAを、製造業者の指示に従い、PICOPURE(商標)RNA単離キット(Arcturus, Mountain View, CA)を使用して単離した。次いで、単離されたRNAを、上記のようなRT-PCRのために使用した。
【0101】
赤血球培養
血液期培養は、Trager et al. (1976) Science 193, 673-675に記載されたようにして、少数の小さな修飾により達成された。P.ファルシパルムスポロゾイトに7日前に感染したキメラマウスからの肝組織を、無菌的に収集し、1mlのRPMI1640培養培地中でホモジナイズした。ホモジナイズされた組織の一部(100μl)を、6穴組織培養プレート内の3%ヘマトクリットを含有している赤血球培養物に添加した。培地を24時間で交換し、血液期寄生虫を同定するため、肝臓ホモジネートの導入後24および48時間目に血液スメアを行った。
【0102】
インビボ血液期感染
P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後6、7、および8日目に、50%ヘマトクリットの洗浄されたO+ヒト赤血球(huRBC)1mlをキメラマウスにi.p.注射した。感染後7日目に血液スメアの実施を開始し、11日目まで毎日行った。血液スメアを、ギムザ染色するか、または上記のような寄生虫特異的抗血清を用いた免疫蛍光アッセイにおいて使用した。
【0103】
実施例1:
プラスモディウムマラリア肝臓期感染の小動物(マウス)モデル
プラスモディウムマラリアは、毎年推定3億人が感染し、年間数百万の死亡の原因となっている寄生虫ヒト疾患マラリアの主要な病因である。より新しく、より有効な抗マラリア剤、防止的治療、およびワクチンの開発は、特に、マラリア発達の不可避の肝臓期の、この型のマラリアの研究に利用可能な動物モデルが限定されているために妨げられていた。マウス型のマラリアは存在しているが、P.ファルシパルムマラリアシゾント(肝臓期感染)は、ヒトまたはいくつかの非ヒト霊長類の肝細胞においてのみ発達する。本発明は、実質的な割合のヒト肝細胞から構成された肝臓を生じ、不可避の肝臓期を通したプラスモディウム寄生虫の感染、増殖、および発達を支持することができるマウスモデルを提供する。
【0104】
SCIDマウスを、アルブミンプロモーターに連結されたウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター(uPA)遺伝子を有するマウスと交雑し、SCID形質およびAlb/uPAトランスジーンの両方に関してホモ接合性のマウスを繁殖させた。生後4〜15日目に、脾臓内注射を介して、マウスにヒト肝細胞を移植した。成功した生着およびヒト肝細胞の増大を確認するため、生後4〜8週目に、血清中のヒトアルファ-1アンチトリプシン酵素に関して動物を試験した。
【0105】
8〜12週齢のマウスに、アノフェリン蚊唾液腺からのP.ファルシパルムスポロゾイトを接種した。感染した蚊の唾液腺をマイクロダイセクトし、次いで、ホモジナイズし、スポロゾイト(1〜3×106匹/マウス)を、100〜900ug/Lという血清中ヒトアルファ(apha)-1アンチトリプシンのレベルを有することが確認されたホモ接合性SCID/uPAマウスへと静脈内注射した。マウスを接種後3〜7日目に屠殺し、肝臓および血液を、免疫蛍光アッセイおよびRT-PCRによる評価のため回収した。
【0106】
図1〜3は、感染後6日目に切片化され染色された肝組織の例示的な結果を提供する。図1および2は、プラスモディウム由来のhsp70のみと反応する寄生虫特異的な熱ショック70モノクローナル抗体を使用した免疫蛍光アッセイからの画像である。緑色蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。これらの画像は、成熟中の肝臓期シゾントに古典的なものである。図3は、H&E型染色により染色された例示的な切片である。シゾントは「S」と標示されている。染色は、成熟中の寄生虫の指標であるシゾント内の発達中のメロゾイトを明らかにしている。
【0107】
実施例2
プラスモディウムファルシパルムマラリアの肝臓期感染-キメラマウスのヒト肝細胞内のシゾントの確認
プラスモディウムファルシパルム肝臓期感染を確認するため、複数の確認的読み出しを入手した。
【0108】
免疫組織化学
マラリア抗原に特異的な抗体を用いた免疫組織化学によって、接種後4、5、6、および7日目にマウスから回収された肝組織からマラリアシゾントの存在が確認された。6日目(hAAT 900)、6日目(hAAT 300)、5日目(hAAT 300)に屠殺された3匹のマウスからの肝臓切片において確認されたマラリア抗原には、以下のものが含まれる:
1)プラスモディウムマラリアによる肝臓期感染に特異的なマラリア熱ショックタンパク質(HSP)
2)LSA-1:肝臓期特異的抗原(クロロキン予防薬を服用中に感染した蚊により繰り返し刺咬された患者からの血清を用いたスクリーニングにより、寄生虫DNA発現ライブラリーから同定された)
3)EXP-1:肝臓期および血液期の抗原
4)AMA-1:スポロゾイト、ならびに肝臓期および血液期の感染に存在する抗原
5)サーカムスポロゾイト(circumsporozoite)タンパク質(CSタンパク質)。
【0109】
CSタンパク質は、感染後4および5日目のキメラマウスに検出されたが、6および7日目には検出されなかった。スポロゾイトに顕著なCSタンパク質は、チンパンジーおよびマウスのモデル(マウスでは2日目)においては後期(d6)感染で失われるが、長期インビトロ感染においては失われないため、これは重要である。
【0110】
7つの異なるマラリア抗原(サーカムスポロゾイトタンパク質-CS、熱ショックタンパク質70-HSP70、エクスポーティッド(exported)タンパク質1:EXP-1、肝臓期抗原1:LSA-1、アピカルメンブレン(apical membrane)1:AMA-1、赤血球結合抗原175:EBA-175)を認識する抗体を用いた免疫組織学的研究は、以下により詳細に記載されるようにして実施された。これらの研究によって、接種後4、5、6、および7日目のキメラマウスの肝臓におけるマラリア抗原の存在が確認された。AMA-1およびEBA-175は、後期肝臓シゾントにおいて発現される。それらは、いずれも、4日目には陰性であったが、5日目に出現し、6および7日目にも持続し、従って、マウスモデルにおける肝臓期感染中のマラリア寄生虫の進行性の正常な発達が支持された。
【0111】
P.ファルシパルムスポロゾイトを静脈内接種したマウスを、異なる時点(3、4、5、6、7、および8日目)で安楽死させ、肝臓の一部を採集し、RNA単離のためLN2中で凍結させ、残りの組織は凍結切片化のためOCT中で凍結させた。さらに、7および8日目に安楽死させたマウスは、6日目に5×108個のヒト赤血球をi-pで受容し、8日目のマウスは、寄生虫接種後7日目に付加的な5×108個の赤血球を受容した。スメアおよびRNAの単離のため、これらのマウスから安楽死時に血液を収集した。これは、メロゾイトが成熟肝臓期シゾントから放出され赤血球に侵入し得るか否かを決定するための試みであった。
【0112】
寄生虫感染の証明は、寄生虫特異的な抗血清を用いたメタノール固定された凍結切片に対する免疫蛍光アッセイ(IFA)により達成された。抗体により認識される抗原、起源、および寄生虫発達中の発現を、表1に提示する。
【0113】
(表1)発現の期
1 サーカムスポロゾイトタンパク質(CSタンパク質)、スポロゾイト表面タンパク質2(SSP2)、熱ショックタンパク質70(HSP70)、エクスポーティッドタンパク質1(EXP-1)、肝臓期抗原1(LSA-!)、アピカルメンブレン抗原1(AMA-1)、赤血球結合抗原175(EBA-175)。
2 初期肝臓期発達中に発現された。
3 遅期肝臓シゾントにおいて発現された。
【0114】
上記表1に同定された期特異的発現は、文献中の報告、ならびにDr. Sacciの研究所で行われたインビトロおよびインビボの感染からの実験データに基づく。この情報を案内として使用して、異なる抗血清および全ての異なる時点からの組織切片を用いて、複数のIFAを行った。
【0115】
表2は、組織が収集された感染後日数、組織が収集された日付、および感染が確認されたか否かを含む結果の概要である。
【0116】
(表2)アッセイ要約
【0117】
IFAアッセイの結果を表3に提供する。複数の抗血清を用いたIFAを使用して、感染後4、5、6、および7日目のキメラ肝臓における寄生虫の存在が証明された。免疫蛍光により、中〜後期寄生虫において見られた発現パターンは、P.ファルシパルム感染チンパンジー肝臓において以前に同定された発現パターンと一致していた(Guerin-Marchand et al., Nature 329:164-167 (1987);Szarfman et al., J. Exp. Med. 167:231-236 (1988))。
【0118】
(表3)免疫蛍光アッセイ結果
pos=陽性;neg=陰性
+ 同一組織切片に、低レベルの抗体染色を示すシゾントも存在したし、SSP2陰性のシゾントも存在した。
++ 大部分のシゾントが弱い抗体染色を示し、いくつかのシゾントは抗EBA-175抗血清との反応性を有していなかった。
【0119】
IFA結果の代表的な蛍光顕微鏡写真を図4に提示する。パネルA、B、およびCは、感染後5、6、および7日目の、抗P.ファルシパルム熱ショックタンパク質70(PfHSP70)mAbを使用した免疫蛍光アッセイである。パネルD、E、およびFは、肝臓期抗原-1(LSA-1)抗血清により染色された5、6、および7日目からの感染キメラ肝臓の顕微鏡写真であり、パネルG、H、およびIは、抗P.ファルシパルム赤血球結合抗原1(Pf EBA-175)抗血清により染色された5、6、および7日目からのものである。PfHSP70およびLSA-1の両方が、インビボで(Guerin-Marchand et al., Nature 329:164-167 (1987);Szarfman et al., J. Exp. Med. 167:231-236 (1988))、そしてインビトロの肝臓期の発達の間中、発現されることが以前に同定されている。血液期メロゾイトに見出されたリガンドとして最初に同定されたPf EBA-175(Camus et al., Science 230:553-556 (1985))は、その後、肝臓期に同定され(Gruner et al., J. Infect. Dis. 184:892-897 (2001))、中〜後期発達中に出現する。IFAにより証明された寄生虫のディファレンシャルな反応性は、肝細胞において起こったP.ファルシパルムの発達中の発現される抗原の変化を明白に示している。
【0120】
PCRに基づく検出
IFA染色を強化するため、異なる時点における寄生虫特異的なmRNAの存在を同定するために、より高感度のRT-PCR分析を行った。これは、3および8日目の時点でIFAによっては見られなかった寄生虫感染肝臓を同定する機会も提示した。RT-PCR分析は、4、5、6、7、および8日前に感染したキメラマウスについて、サーカムスポロゾイトタンパク質(CS)、肝臓期抗原-1(LSA-1)、およびメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)のための遺伝子特異的プライマーを使用して行った。PCR反応のためのプライマー配列および条件は、上記の方法セクションに記載されている。急速凍結させ-80℃で保存した組織から、RNAを抽出した。抽出されたRNAを、偽陽性を生じ得る夾雑DNAを除去するため、DNAseにより処理した。やはり夾雑DNAの存在を制御するため、第1鎖cDNA反応を、オリゴ-dtプライミングを用いて、そして用いずに行った。
【0121】
結果を図5に提供する。サーカムスポロゾイト(CS)遺伝子のためのプライマーセットを使用したRT-PCRがパネルAに示され、LSA-1がパネルBに示され、MSP-1がパネルCに示される。組織は、P.ファルシパルム感染後4日目(レーン1、2)、5日目(レーン3、4)、6日目(レーン5、6)、7日目(レーン7、8)、および8日目(レーン9、10)に収集された。図5に示されるように、RT-PCR分析によって、CSメッセージが、感染後4および5日目には存在するが、その後の時点では存在しないことが証明された。このメッセージの発現は、感染後4および5日目にIFAにより証明されたようなCS抗原の発現(表3)、およびその後の時点における発現の欠損と一致していた。これは、CS発現が培養期間の間中見られ、肝臓期発達阻害アッセイ(ILSDA)(Charoenvit et al., Infect. Immun. 65:3430-3437 (1997))において感染肝細胞を同定するために典型的に使用される、インビトロのPファルシパルム感染ヒト肝細胞とは異なっていた。
【0122】
肝臓期感染のゲノミクス的およびプロテオミクス的な確認
レーザーキャプチャーマイクロダイセクションが、
1.RT-PCR
2.ウェスタンブロッティング
3.マイクロアレイ
のためのシゾントを回収するために使用される。
【0123】
高品質PCR回収の確認は、肝臓期感染のさらなる支持としての、感染キメラマウス肝臓におけるファルシパルムのオルソログの存在を確認するためのRT-PCRおよびマイクロアレイ研究を容易にするであろう。
【0124】
マイクロアレイ分析にとって十分なタンパク質を提供するためには、およそ1000匹のシゾントの捕獲が必要であると予想される。感染後5日目の動物からの切片は、切片1個当たり最大10匹の寄生虫を与えたため、およそ100個の切片が必要であるかもしれない。
【0125】
上記の研究は、一貫した再現性のあるモデルを提供し、肝臓感染期における寄生虫の数およびモデルにおける可変性の程度をさらに定量化するために繰り返される。マラリア感染と相関したhAAT値を定量化するため、可変性のhAATのレベル、および次第に減少する数のマラリア寄生虫を有するマウス。マラリア寄生虫の数は、感染のしきい値、即ち、キメラマウス肝臓における感染を確立するために必要とされる寄生虫の数を決定するために変動させられるであろう。動物は、ヒト疾患の場合と同様にマウスにおいて反復感染が起こることを確立するため、感染後およそ2週目に、再チャレンジされる。
【0126】
実施例3
マウスモデルにおけるマラリア寄生虫の生活期の変化の検出
マラリア感染動物モデルを、マラリア寄生虫の様々な期を検出するために調査し、それにより、マラリア寄生虫がマウスモデルにおいて天然の生活環を示すことが示された。
【0127】
キメラマウス肝臓におけるスポロゾイトからのシゾントの発達
蚊刺咬による感染の送達(スポロゾイト)およびその後の肝臓期感染(シゾント)に特徴的な生活期に特異的な抗原およびmRNAについての免疫組織化学およびPCRは、プラスモディウムマラリア感染のキメラマウスモデルにおいて、生活期の発達および変化が起こることを確認した。
【0128】
免疫蛍光アッセイを、標準的なプロトコルに従い実施した。簡単に説明すると、OCT中の凍結肝組織を5μm切片へと切断し、ガラススライドに置いた。組織切片を氷冷無水メタノールで5分間固定し、空気乾燥させた。切片を3%正常ヤギ血清によりブロッキングし、加湿雰囲気中で37℃で30分間、適切な一次抗体と共にインキュベートした。次いで、スライドをPBSで3回洗浄し、0.01%エバンスブルーで希釈された適切なフルオレセイン接合抗体と共に再び37℃で30分間インキュベートした。スライドをPBSで洗浄し、非消光(non-quench)封入剤(VECTASHIELD(登録商標))で封入し、エピフルオレセンス(epifluorescence)顕微鏡により観察した。
【0129】
下記表4に示されるように、複数の抗血清を、感染後3〜8日目の組織切片を染色するために使用した。3日前に感染したマウスは感染を発症しなかったか、または寄生虫が小さすぎて可視化され得なかった(感染は存在していなかった可能性がより高い)。4〜8日目の感染は、全て、感染した組織との様々な反応性を示した。結果は、これらの抗原の証明された発現と一致している。CSおよびSSP2は、肝細胞における発達の初期に発現されるが、その後消失するスポロゾイト抗原である。HSP70は、スポロゾイトにおいて弱く発現され、肝臓期および血液期の寄生虫において強く発現される。LSA-1は肝臓期にのみ発現される。EXP-1は、肝臓期発達の間中、そして血液期にも発現される。AMA-1およびEBA-175は、主として血液期に発現されるが、肝細胞における発達の後期にも見出される。AMA-1は、スポロゾイトにおいて発現され、初期肝臓期発達中にダウンレギュレートされ、次いで肝臓発達の後期にアップレギュレートされることを示す最近の証拠がいくつか存在する。
【0130】
(表4)免疫蛍光アッセイ結果
【0131】
マウスの感染および肝臓期(およびその後の血液期)感染の発達により、寄生虫の増大が起こることをさらに示すため、肝臓期感染の定量化が実施される。
【0132】
肝臓期感染の血液期感染への推移
キメラ肝臓シゾントが達成した成熟のレベルを評価するため、インビトロの血液期感染を開始させた。肝臓期感染の血液期感染への移行、従って、プラスモディウムマラリア生活環の次の期を、マラリア感染動物モデルにおいて検出した。プラスモディウムマラリアの血液期感染の発達は、不可避の中間肝臓期を有し、P.マラリアは、血液期感染へと発達するためにはシゾント期を経なければならない。モデルにおける血液期感染の検出は、中間肝臓感染期の証拠を示し、同一モデルにおける肝臓期および血液期の証拠も示す。結果は、さらに、抗マラリア剤についての効力実験を大いに容易にする非終末(non-terminal)読み出しを確立しながら、モデルの使用を支持している。
【0133】
マウスに、1×106匹のプラスモディウムファルシパルムスポロゾイトを接種した。次いで、動物を7または8日目に安楽死させ、血液および肝臓をRT-PCR分析のために収集し、肝臓を凍結切片のために収集した。また、これらの日からの肝臓の一部をホモジナイズし、インビトロのヒト赤血球培養物に添加した。培養は、以前に記載されたようにして(Trager et al., Science 193:673-675 (1976))、維持し、肝臓ホモジネートの添加後24時間目にスメアを開始した。感染後7日目に収集された肝組織は、明白に定義されたメロゾイトを含む成熟シゾントを示し(図6)、8日感染からの組織は顕微鏡検により可視の寄生虫を欠いていた。しかしながら、両方の日からの組織のRT-PCR分析は、LSA-1 mRNA陽性であった。7または8日の感染からの肝臓ホモジネートを受容した培養物からの血液スメアは、培養の開始後24時間目に赤血球内の環状体期寄生虫の存在を示した(図7および図8)。これらの結果は、肝臓期メロゾイトが、成熟し、インビトロで赤血球を感染させ得ることを示す。
【0134】
インビボの赤血球の感染を示すため、肝臓期マラリア感染を有する(例えば、P.ファルシパルムスポロゾイトのi.v.接種後6、7、8、および10日目の)キメラマウスに、約5×109個のヒト赤血球(RBC)(1mlの50%ヘマトクリットO+ヒトrbc)を3〜5日連続で腹腔内注射した。その後、7、8、9、10、および11日目のRNA単離およびスメアのため、感染マウスから血液を収集した。屠殺時に採集された末梢血のスメアまたは血液のPCRを、マラリア血液期感染に関して調査した。次いで、キメラマウスモデルの完全なプラスモディウムマラリア生活環を支持する能力を査定した。厚いスメアおよび薄いスメアの両方が、可視の血液期寄生虫を有しており、11日目のスメアは、ギムザ染色および抗P.ファルシパルムエクスポーティッドタンパク質1(PfEXP1)抗体によるIFAにより可視化され得る、多数の発達中のトロフォゾイトおよびシゾントを示した(図9)。
【0135】
肝臓期感染中のキメラマウス肝臓を回収し、(例えば、肝細胞を崩壊させ寄生虫を放出させるために小片へと破砕することにより)肝臓をホモジナイズし、ヒト赤血球を含む培養物へ肝臓試料の一部を置くことにより、マウスモデル由来の肝臓期寄生虫によってインビトロのヒト血液期感染を確立し得るか否かを調査した。蚊唾液腺からのP.ファルシパルムの静脈内接種後7日目のキメラマウス肝臓からのホモジネートの導入後24、48、および72時間目の培養物からのヒト赤血球のギムザ染色スライドから、ヒト赤血球におけるマラリア寄生虫の存在が確認された。
【0136】
最初の実験群が寄生虫感染を確認した後、マウスモデルの再現性を査定するため、マウスおよび寄生虫の異なるコホートを用いた複数の感染を使用した。ほぼ全ての例(16/18)において、マウスは、IFAまたはRT-PCRにより、全ての時点(感染後3〜8日目)からのキメラ肝臓における寄生虫の存在を示した。興味深いことに、HCVモデルと比較した場合、肝細胞における感染を確立する能力は、HCVによる従来の経験ほど、マウスにおけるhAATのレベルに依存性でないようであった。キメラマウスは、hAATが<80ug/mlの場合、接種後のHCV感染を時々しか生じず、<60ug/mlの場合にはほぼ皆無であったが、P.ファルシパルムの成功した感染は、25μg/ml〜900μg/mlのレベルを有するマウスにおいて証明された。ある感染研究は、スポロゾイトを感染させるほぼ6ヶ月前に肝細胞移植を受容したマウスを用いて行われた。これらの結果は、移植片の長期の安定性および寄生虫による感染に対する感受性を確認するものである。
【0137】
この点で、本発明者らは、SCID/Alb-uPAキメラマウスが再現性よく肝臓期感染を支持し得ること、ならびに感染した肝細胞が、形態学、RTPCR、IFA、および血液期感染により査定されるように、寄生虫の発達において進行することを示した。形態学(Meis et al., Exp. Parasitol. 70:1-11 (1990))および遺伝子発現は、チンパンジーのP.ファルシパルム感染において類似した時点で見られるものと極めて類似しているようであり、寄生虫は成熟した感染性メロゾイトになる。さらに、キメラマウスで見られた後期肝臓期寄生虫は、ヒトボランティアにおいてP.ファルシパルムの前赤内期を証明する研究において、Jefferyら(Am. J. Trop. Med. Hyg. 6:917-925 (1952)およびShorttら(Trans. Roy. Soc. Trop. Med. Hyg. 44:405-419 (1951))により同定されたものと構造的にも形態学的に区別不能であった。
【0138】
実施例4
P.ファルシパルム肝臓期寄生虫のLCM単離
感染後5日目の肝臓期寄生虫を含有している組織切片を、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)に使用したが、それは、この時点の発達中のシゾントが、寄生虫の生活環のスポロゾイト、肝臓期、および血液期に関連した遺伝子からのメッセージを発現していることが、RT-PCR結果によって同定されたためである。さらに、寄生虫は、より複雑な免疫染色なしに、標準的な染色プロトコルによって容易に可視化され得る。
【0139】
図10は、EE寄生虫の代表的な単離を示す。パネルAは、レーザー活性化前の組織切片であり、パネルBは、レーザー活性化、およびシゾントを含有している熱可塑性メンブレンの除去後の同一区域を示し、パネルCは、捕獲された組織の画像である。およそ100個の捕獲を含有しているキャップから全RNAを単離し、RT-PCR分析のためのcDNAを作成するために使用した。LSA-1のメッセージは捕獲されたシゾントから容易に増幅され、アクチンのメッセージの増幅を表すバンドは、ほとんど可視化されなかった(図11)。その結果は、回収されたシゾントが肝細胞の夾雑を事実上欠いていること、および完全な寄生虫mRNAが下流の分析のために回収され得ることを示している。
【0140】
実施例5
キメラマウスモデルの治療的介入および臨床結果との相似
マラリアを接種されたマウスを、プリマキンのような公知の抗マラリア剤により処置して、マウスモデルにおけるこの薬剤の有効性を確立する。プリマキンは、肝臓期の処置のための証明された有効性を有しており、陽性対照として使用され得る。
【0141】
実施例6
抗体による侵入の阻止
抗体が侵入を阻止し得ることの確認は、受動免疫治療が動物モデルにおける曝露中または曝露後の感染を防止し得ること、およびどの抗原が、免疫原として使用された場合に、プラスモディウムによる感染を防止し得る抗体または抗体プロファイルを与えるかを確立することにより、ワクチン開発研究を容易にするためにモデルが使用され得ることをさらに確立する。
【0142】
ボランティアからの免疫血清を、動物モデルにおける感染を阻止する能力に関して試験するために使用する。(インビトロ研究の場合と同様に)感染を阻止する能力に変動が見られた場合には、異なる血清からの抗体プロファイルを、有効な血清を特徴決定するために調査する。そのようなプロファイルは、免疫血清または免疫グロブリン調製物による阻止のための受動免疫治療についてのパターンを提供する。
【0143】
寄生虫に対するモノクローナル抗体を、感染を阻止する能力に関して査定する。そのような抗体は、インビトロでは感染を阻止するのに極めて有効であったが、臨床現場においては調査されていない。動物モデルにおける有効な阻止は、そのようなアプローチが、実行可能な臨床戦略であり、ワクチン開発のためのより特異的な研究を可能にすることを示す。特に対象となるのは、モノクローナル抗体2A10(ATCCのMR4プログラムより入手可能)の感染を阻止する能力である。
【0144】
抗体が、本発明のP.ファルシパルム感染のインビボモデルにおいてマラリア侵入を阻止することを示す証拠は、受動免疫治療剤の調査のためのアッセイおよび臨床適用のためのワクチン開発を提供する。
【0145】
実施例7
マラリア寄生虫の採集
動物モデルは、抗マラリア抗体の作製をさらに容易にするため、高品質の寄生虫抗原調製物を作製するために使用され得る。そのような抗原は、動物のマラリア感染の任意の期から入手され得、当技術分野において周知の方法に従い適切な組織から入手され得る。
【0146】
特定の態様に関して本発明を記載したが、本発明の本旨および範囲から逸脱することなく、様々な変化がなされ得、等価物が代用され得ることが、当業者により理解されるべきである。さらに、特定の状況、材料、合成物、過程、工程を、本発明の目的、本旨、および範囲に適応させるために、多くの修飾がなされ得る。そのような修飾は、全て、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後の本発明のキメラマウスの肝組織の写真である。緑色の染色は、プラスモディウム由来の熱ショック70(hsp70)を特異的に認識する抗体の結合を示す。緑色の蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。
【図2】P.ファルシパルムスポロゾイトによる感染後の本発明のキメラマウスの肝組織の写真である。緑色の染色は、プラスモディウム由来の熱ショック70(hsp70)を特異的に認識する抗体の結合を示す。緑色の蛍光は特異的な抗体染色であり、赤色はエバンスブルー対比染色である。
【図3】H&E型染色により染色された例示的な切片である。シゾントは、「S」と標示されており、シゾント内の個々のメロゾイトの発達を明白に示している。
【図4】寄生虫特異的な抗体により染色された、P.ファルシパルム感染後のキメラSCID/AlbuPA肝臓凍結切片の一連の免疫蛍光顕微鏡写真である。組織は、マウスにP.ファルシパルムスポロゾイトを接種した後、5日目(パネルA、D、G)、6日目(パネルB、E、H)、および7日目(パネルC、F、I)に採集された。パネルA、B、およびCの切片は、抗PfHSP70モノクローナル抗体により染色された。パネルD、E、およびFの切片は、LSA-1のリピート領域に対するポリクローナルウサギ抗血清により染色された。パネルG、H、およびIは、PfEBA-175に対するポリクローナルウサギ抗血清により染色された。拡大率400倍。
【図5】P.ファルシパルムに感染したキメラヒト肝臓のRT-PCR分析である。RT-PCRは、サーカムスポロゾイト(CS)遺伝子(パネルA)、LSA-1(パネルB)、およびMSP-1(パネルC)のためのプライマーセットを使用して行われた。組織は、P.ファルシパルム感染後、4日目(レーン1、2)、5日目(レーン3、4)、6日目(レーン5、6)、7日目(レーン7、8)、および8日目(レーン9、10)に収集された。偶数の番号のレーンは、cDNAを作成するための第1鎖反応が逆転写酵素を含んでいたRT-PCRアッセイからのものである。奇数の番号のレーンは、第1鎖反応から逆転写酵素が省かれた対照アッセイであった。パネルBのレーン11は、ゲノムDNAからの陽性対照LSA-1 PCR産物である。
【図6】プラスモディウムファルシパルム感染後の7日目のSCID/Alb-uPAマウス由来の例示的なキメラ肝組織切片である。7μmの凍結切片が、メタノール固定され、ギムザ染色された。大きい成熟シゾントが、視野の大部分を占めており、明確な細分化された核を含有している。拡大率1000倍。
【図7】インビトロヒト赤血球培養物からのギムザ染色された血液スメアである。P.ファルシパルム感染後7日目に採集されたSCID/Alb-uPAマウス由来のホモジナイズされた肝臓が、ヒト赤血球培養物に添加された。24時間後、試料が採取され、ギムザ染色された。この顕微鏡写真は、感染した赤血球(矢印)を含む染色されたスメアからの代表的な視野を示す。感染した赤血球は、特殊なクロマチンドットを含む発達中のトロフォゾイトを含有している。拡大率1000倍。
【図8】インビトロヒト赤血球培養物からのギムザ染色された血液スメアである。P.ファルシパルム感染後7日目に採集されたSCID/Alb-uPAマウス由来のホモジナイズされた肝臓が、ヒト赤血球培養物に添加された。24時間後、試料が採取され、ギムザ染色された。この顕微鏡写真は、感染した赤血球(矢印)を含む染色されたスメアからの代表的な視野を示す。感染した赤血球は、特殊なクロマチンドットを含む発達中のトロフォゾイトを含有している。拡大率1000倍。
【図9】抗エクスポーティッドタンパク質1(EXP1)抗体により染色された、P.ファルシパルムに感染した赤血球の免疫蛍光顕微鏡写真である。ヒト肝臓キメラSCID/Alb-uPAマウスに、P.ファルシパルムスポロゾイトの接種後、6日目から開始して、ヒト赤血球が注射された(I-P)。パネルAは、(EXP1)に関する極めて強い染色を示しており、パネルBは、同視野の位相差画像である。パネルBの矢印は、発達中の寄生虫と一致する明白な内部構造を含有している感染した赤血球を示している。拡大率1000倍。
【図10】接種後5日目のP.ファルシパルムに感染したSCID Alb-uPAマウス肝臓のレーザーキャプチャーマイクロダイセクション像を示す。パネルAは、(矢印により区別された)シゾントを示すレーザーパルス前の組織切片であり、パネルBは、メンブレン−シゾントが除去された後の、パネルAと同一の区域であり、パネルCは、捕獲されたシゾントを示している。
【図11】P.ファルシパルムに感染したキメラ肝臓からマイクロダイセクトされたRNAのRT-PCR分析。5日目のP.ファルシパルムLCMシゾントから単離された逆転写されたRNA(RT+)またはP.ファルシパルム血液培養物から抽出されたDNA(DNA)を増幅するため、LSA-1およびアクチンのための遺伝子特異的プライマーが利用された。第1鎖反応から逆転写酵素が省かれるか(RT-)、またはDNA鋳型の代わりに水が使用された(-ve)対照アッセイも行われた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジーンに関してホモ接合性であるマウスの肝細胞におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターポリペプチドの発現を提供するポリヌクレオチドを含む、ゲノムに組み込まれたトランスジーン;
ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓;および
肝臓の細胞においてヒトに感染性のマラリア寄生虫
を含む、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラトランスジェニック免疫不全マウスであって、マラリア寄生虫がキメラ肝臓のヒト肝細胞内に存在する、キメラトランスジェニック免疫不全マウス。
【請求項2】
ヒトに感染性のマラリアスポロゾイトによる感染の後、肝臓期寄生虫の生成を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項3】
複数のメロゾイト期寄生虫を含むシゾント期寄生虫の発達を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項4】
赤内期マラリア寄生虫の発達を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項5】
感染したマウスが、少なくとも6日間、検出可能なマラリア寄生虫を維持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項6】
感染したマウスが、少なくとも7日間、検出可能なマラリア寄生虫を維持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項7】
プロモーターがアルブミンプロモーターである、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項8】
scid変異のために免疫不全である、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項9】
少なくとも部分的に完全な自然免疫系を有する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項10】
ポリペプチドがマウス肝細胞において発現されるようプロモーターに機能的に連結された、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有し、かつそのポリヌクレオチドに関してホモ接合性である免疫不全トランスジェニックマウスにヒト肝細胞を移植する工程;および
ヒトマラリア寄生虫をマウスに接種する工程
を含む、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラトランスジェニックマウスを作製する方法であって、ヒト-マウスキメラ肝臓を含み、かつキメラ肝臓のヒト肝細胞内にヒトマラリア寄生虫を有するキメラトランスジェニックマウスを作製する方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法により作製された、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラマウス宿主。
【請求項12】
請求項1記載のキメラマウスに候補薬剤を投与する工程;および
マラリア感染に対する候補薬剤の効果を分析する工程
を含む、ヒトマラリア寄生虫に対する活性に関して候補薬剤をスクリーニングする方法であって、未処理のキメラマウス宿主と比べた、または候補薬剤投与前のキメラマウスにおける感染負荷と比べた、ヒトマラリア寄生虫の感染負荷の減少が、薬剤の抗マラリア活性の指標となる、方法。
【請求項13】
候補薬剤が、ヒトマラリア寄生虫による感染の前に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載のキメラトランスジェニックマウスにヒトマラリア寄生虫を投与する工程;および
マウスにおけるヒトマラリア寄生虫の増大の後、感染した宿主からヒトマラリア寄生虫を単離する工程を含む、ヒトマラリア寄生虫を培養する方法。
【請求項15】
請求項1記載のキメラマウスにヒトマラリア寄生虫を投与する工程;
感染した宿主からヒトマラリア寄生虫を単離する工程;および
マラリア寄生虫から抗原を入手する工程を含む、ヒトマラリア肝臓期抗原を単離する方法。
【請求項1】
トランスジーンに関してホモ接合性であるマウスの肝細胞におけるウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターポリペプチドの発現を提供するポリヌクレオチドを含む、ゲノムに組み込まれたトランスジーン;
ヒト肝細胞を含むキメラ肝臓;および
肝臓の細胞においてヒトに感染性のマラリア寄生虫
を含む、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラトランスジェニック免疫不全マウスであって、マラリア寄生虫がキメラ肝臓のヒト肝細胞内に存在する、キメラトランスジェニック免疫不全マウス。
【請求項2】
ヒトに感染性のマラリアスポロゾイトによる感染の後、肝臓期寄生虫の生成を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項3】
複数のメロゾイト期寄生虫を含むシゾント期寄生虫の発達を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項4】
赤内期マラリア寄生虫の発達を支持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項5】
感染したマウスが、少なくとも6日間、検出可能なマラリア寄生虫を維持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項6】
感染したマウスが、少なくとも7日間、検出可能なマラリア寄生虫を維持する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項7】
プロモーターがアルブミンプロモーターである、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項8】
scid変異のために免疫不全である、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項9】
少なくとも部分的に完全な自然免疫系を有する、請求項1記載のキメラマウス。
【請求項10】
ポリペプチドがマウス肝細胞において発現されるようプロモーターに機能的に連結された、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーターポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むゲノムを有し、かつそのポリヌクレオチドに関してホモ接合性である免疫不全トランスジェニックマウスにヒト肝細胞を移植する工程;および
ヒトマラリア寄生虫をマウスに接種する工程
を含む、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラトランスジェニックマウスを作製する方法であって、ヒト-マウスキメラ肝臓を含み、かつキメラ肝臓のヒト肝細胞内にヒトマラリア寄生虫を有するキメラトランスジェニックマウスを作製する方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法により作製された、ヒトマラリア寄生虫に感染したキメラマウス宿主。
【請求項12】
請求項1記載のキメラマウスに候補薬剤を投与する工程;および
マラリア感染に対する候補薬剤の効果を分析する工程
を含む、ヒトマラリア寄生虫に対する活性に関して候補薬剤をスクリーニングする方法であって、未処理のキメラマウス宿主と比べた、または候補薬剤投与前のキメラマウスにおける感染負荷と比べた、ヒトマラリア寄生虫の感染負荷の減少が、薬剤の抗マラリア活性の指標となる、方法。
【請求項13】
候補薬剤が、ヒトマラリア寄生虫による感染の前に投与される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
請求項1記載のキメラトランスジェニックマウスにヒトマラリア寄生虫を投与する工程;および
マウスにおけるヒトマラリア寄生虫の増大の後、感染した宿主からヒトマラリア寄生虫を単離する工程を含む、ヒトマラリア寄生虫を培養する方法。
【請求項15】
請求項1記載のキメラマウスにヒトマラリア寄生虫を投与する工程;
感染した宿主からヒトマラリア寄生虫を単離する工程;および
マラリア寄生虫から抗原を入手する工程を含む、ヒトマラリア肝臓期抗原を単離する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−510465(P2008−510465A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527989(P2007−527989)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/029312
【国際公開番号】WO2006/023593
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503342432)ケイエムティー ヒパテック インコーポレイテッド (3)
【出願人】(301033248)ユニバーシティ オブ メリーランド, ボルチモア (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/029312
【国際公開番号】WO2006/023593
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(503342432)ケイエムティー ヒパテック インコーポレイテッド (3)
【出願人】(301033248)ユニバーシティ オブ メリーランド, ボルチモア (7)
【Fターム(参考)】
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