説明

キャスタ構造

【目的】 運搬時の装置転倒角度を増大できるキャスタ構造で、運搬時の操作性を簡便化する。
【構成】 底板2の一面の四隅に固定された主キャスタ10のほかに、補助キャスタ9が備えられ、補助キャスタ9は底板2に回動可能に取付けられたアーム3の回動する先端部に取付けられている。アーム3の回動可能端部は、回転軸4と水平方向に回動可能に嵌合する軸支持部11を有している。アーム3は回転軸4の近傍に設けられた固定ピン穴8を有し、この固定ピン穴8を底板2に設けられた収納ピン穴7及び運搬ピン穴6と一致させ、一致した状態で固定ピン5を貫通させることにより、アーム3を底板2に対して、固定することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンピュータ等の機器を搭載すると共に、これらの機器を搭載した状態で移動させることが出来るキャスタ構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のキャスタ構造には、例えば、実開昭63−197702号公報に示されたものがある。この構造では、移動運搬の際、キャスタ構造底部に設けられたキャスタ付きアームを4方向に伸長することにより、移動の際におけるキャスタ構造底部の面積を実質上拡大し移動運搬の際の転倒を防止出来るように構成されている。
【0003】次に、図4及び図5を参照して、上記した従来のキャスタ構造を、より詳細に説明する。図示されたキャスタ構造は、角型の中空パイプ19を矩形形状に連結することによって構成された底部を備え、中空パイプ19の下面には底板17が取付けられている。底板17の下面には四隅にキャスタ付きアーム21を有するキャスタブロック20が取付けられている。
【0004】アーム21は、角パイプ15に対して回動可能に取付けられた基端部(以下、一端部)と、この一端部を中心として移動できる先端部(以下、他端部)とを有し、下面の一端部及び他端部それぞれにキャスタ12を備える。そして、このキャスタ12により装置本体14を移動運搬することが出来る。また、キャスタブロック20は、アーム21の一端部上面に鉛直方向に延びる回転軸13を備えている。図示されたキャスタブロック20は、回転軸13を中心軸としてアーム21を回動し、アーム21の他端部を装置本体14の底板17から外方向に伸長させることが出来る。
【0005】上記した動作を行うために、角パイプ15内部に回転軸13が位置付けられており、この回転軸13がボルト16により角パイプ15に締付けられることにより、キャスタブロック20が取付けられ固定される。
【0006】また、底板17の四隅の下面には台足18が角パイプ15の近傍に備えられ、台足18の高さは調整可能である。台足18の高さをキャスタ12と実質上同じ高さにすることにより、装置本体14を固定することが出来る。
【0007】台足18によって装置本体14が設置固定されている状態では、キャスタブロック20は角パイプ15の中心位置を回転軸13としてアーム21を中空パイプ19の方向に回動することにより、底板17の下部に収納出来る。この設置固定状態では、キャスタブロック20はボルト16で締付けられて角パイプ15に固定され、キャスタ12は台足18と共に、床面に当接している。
【0008】装置本体14の運搬を準備するとき、まず、台足18を操作調整して床から底板17の下面までの高さを高くし、キャスタ12を床から浮上がらせる。次に、ボルト16の締付けを緩め、キャスタブロック20を回転軸13を中心として回動可能な状態にする。キャスタブロック20のアーム21を回転軸13を中心として、装置本体14が安定して運搬出来る所定の位置まで回動させる。所定の位置までアーム21を回動させたのち、ボルト16が締付けられる。これによって、回転軸13が角パイプ15に固定されると共に、アーム21も固定された状態となる。この後、台足18の高さをキャスタ12の高さより低くすると、台足が床面から浮上がり、キャスタ12が床面と接触した状態となる。この状態で、装置本体14はキャスタ12の回転により所定の場所まで運搬できる。
【0009】一方、運搬後、装置本体14が据付設置されるとき、まず、台足18の高さをキャスタ12の高さより高くし、キャスタ12を浮上がらせた状態で装置本体14を固定する。次いで、ボルト16を緩め、キャスタブロック20のアーム21を回転軸13の周りに回動させて、キャスタブロック20を底板17の下部の所定位置に収納する。次いで、ボルト16を締付け、キャスタブロック20を固定した後、台足18の長さを調整することにより、キャスタ12と台足18とを、共に床面に当接させる。この構造では、安定した支持が得られる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来のキャスタ構造は、キャスタブロックが装置本体とボルトの締付けで固定されているので、運搬準備ではボルトを緩め、次いで、キャスタブロックのアームを回動して位置決めした後、再度、ボルトを締付ける作業を必要とする。
【0011】一方、装置本体を運搬したのちは、台足を床面に押圧させてボルトを緩め、次いで、キャスタブロックのアームを内側に回動させ装置本体の下方に収納した後、再度、ボルトを締付け、台足とキャスタとの両方を床面に当接させて、装置本体を支持するという作業が必要になる。
【0012】また、台足の高さを操作調整することにより、キャスタブロックのアームを回動させるときキャスタを床面から浮上がらせた状態が形成され、更に、位置を固定したときキャスタを床面に押接する状態が形成される。このため、装置本体の運搬時には、ボルトの操作のため工具が必要になると共に、このボルトの締付け作業及び台足の高さ調節作業が必要となり、操作性が複雑化するという問題点がある。
【0013】本発明の課題は、従来のキャスタ構造に比較して装置本体の運搬時の操作性を簡便化したキャスタ構造を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によるキャスタ構造は、複数の隅部を備えた一平面を有する底板と、当該底板の一平面に固定された複数の主キャスタとを具備したキャスタ構造において、一端部と他端部とを備えたアームを有し、当該アームの一端部には、当該アームを前記一平面の外側へ回動可能に取付けられた軸支持部が設けられており、他方、当該アームの他端部には、前記主キャスタと同一方向に向けられた補助キャスタが設けられている。ここで、軸支持部は底板の異なる位置に設けられた2つの穴にピンを差込むことによって2つの異なる位置で固定されることができ、これによって、アームを2つの位置で簡単に固定状態にすることが出来る。
【0015】また、前記補助キャスタの高さは前記主キャスタの高さよりも低く、前記主キャスタは4つの前記隅部に取付けられており、他方、前記アームは前記各主キャスタに隣接して、回動可能に4つ設けられている。
【0016】
【作用】上記手段によるキャスタ構造は、主キャスタが補助キャスタの高さより高く、且つ、底板に固定されているので、補助キャスタの収納が簡単、容易であると共に、主キャスタによりそのまま移動運搬が出来る。
【0017】
【実施例】次に、本発明について図面を参照して説明する。
【0018】図1は本発明の一実施例を示す装置裏面図(a)、及び下部側面図(b)である。図1及び図2を併せ参照して本発明のキャスタ構造を説明する。
【0019】図示されたキャスタ構造は、図1(a)に示されているように、一対の長辺、一対の短辺、及びこれらの辺によって形成される四隅を有する矩形形状の底板2を備え、図1(b)に示すように、底板2の一方の平面(以下下面と呼ぶ)は下方向に向けられている。底板2の下面四隅には、主キャスタ10が固定されている。アーム3は一端部に軸支持部11を有し、他端部となる先端部の下面に主キャスタ10と同一方向に、即ち、図1(b)の下方向に向けられた補助キャスタ9を固設している。主キャスタ10は、アーム3の先端部の補助キャスタ9より大型で、且つ、平面上にあって補助キャスタ9を浮上がらせる大きさ、即ち、高さを有している。
【0020】この例では、図1に示されているように、底板2に備えられた主キャスタ10が装置本体1の移動運搬で使用され、アーム3に取付けられた補助キャスタ9は移動運搬の際の転倒等を防止する。
【0021】図1(a)では、回転軸4の周辺を明らかにするため、アーム3の一つを外した状態が示されている。図1(a)及び図1(b)に示すように、底板2は四隅の近傍で長辺方向の側面に固定ピン5を貫通する運搬ピン穴6を有する。一方、アーム3は軸支持部11を備えると共に、軸支持部11の近傍に固定ピン5を貫通する固定ピン穴8を有している。アーム3の回転軸は軸支持部11によって支持されており、軸支持部11は、直方体の装置本体1の底板2の四隅部近傍で鉛直下方に延びる回転軸4と水平方向に回動自在に嵌合している。底板2上の運搬ピン穴6とアーム3上の固定ピン穴8とは回転軸4に対して等距離に配置されている。
【0022】アーム3が回転軸4を軸に装置本体1の長辺方向に垂直な運搬位置まで回動配置されたとき、固定ピン5を上方から運搬ピン穴6と共に固定ピン穴8まで貫通させることにより、アーム3は底板2に固定される。この配置によれば、補助キャスタ9及び主キャスタ10が外周を形成する面積を広くするので、装置運搬時の安定性が向上する。
【0023】この例では、図4に示されているボルトで回転軸が締付けられる代わりに、運搬ピン穴6と固定ピン穴8との両者を通して、固定ピン5を貫通させることにより、アーム3は装置本体1に固定される。
【0024】更に、底板2は図1及び図3に示される収納ピン穴7を備える。収納ピン穴7も、回転軸4に対して、底板2上の運搬ピン穴6と等距離にある。図3に示されるように、アーム3が、回転軸4を中心として装置本体1の長手方向側面に沿った底板2下面の収納位置まで、回動させられたとき、固定ピン5を収納ピン穴7と固定ピン穴8とに貫通させることにより、アーム3が底板2に固定される。このとき、底板2の長辺方向側面に沿ったそれぞれ二つのアーム3は一直線上にある。
【0025】この様に、図面を参照して説明したキャスタ構造は、主キャスタ10が装置本体1の重量を支えているので、主キャスタ10の通常の制動機構を解除するだけで、簡単に移動運搬出来る。更に、補助キャスタ9が床面から浮上がっているので、アーム3に加わる重量に対する特別な配慮が無用となり、且つ、アーム3の回動が円滑である。
【0026】また、固定ピン5を運搬ピン穴6または収納ピン穴7の上方から挿入した状態でアーム3を回動させれば、固定ピン5が底板2の運搬ピン穴6または収納ピン穴7の位置まで落下して簡単に所望のピン穴を貫通するので、装置本体1の運搬及び据付時でのアーム3の固定が簡単に出来る。更に、図示されるように、アーム3を収容する際、アーム3の先端部が長辺方向の外側から中心部方向に回動するので、四隅に備えられる主キャスタ10はこのアーム3の回動を妨げない。
【0027】この様に、主キャスタ10が、四隅に固定して設けられ、装置本体1の重量を支えているので、アーム3は装置本体1の長さ方向に対する一方の側面にある2つだけでもよいし、両側辺に一つづつ配置してもよい。。アームの位置、数、形状及び大きさは、片側面であっても、両側面であっても、装置本体1の重量を配慮すると共に、下部収納の条件から、装置本体の底板の形状及び面積をも配慮して設計される。
【0028】上述の説明では装置本体を直方体として説明したが、装置本体はどのような形状でもよい。アームは装置本体の底板の周辺隅部近傍で回転軸に回動自在に嵌合すればよい。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、主キャスタが、アームに設けられた補助キャスタより大型で、平面にあって補助キャスタを浮上がらせる大きさを有するので、装置本体の重量がこの主キャスタの負荷となり、簡単に移動運搬が開始出来る。この構造では、アームは運搬中の装置本体の傾斜に対して転倒角度を増大させて転倒を防止させるときだけ働くので、アームの構造が簡単で済む。また、主キャスタが、アームの所定の回動を妨げない位置にあり、更に、補助キャスタが浮上がっているので、アームの回動が自由自在に出来る。
【0030】また、アームが固定ピン穴を有し、更に、底板が収納ピン穴及び運搬ピン穴を有するので、固定ピンを上方から収納ピン穴または運搬ピン穴に挿入して固定ピン穴まで貫通させるという単純作業により、アームを簡単に所定位置に固定することが出来る。
【0031】このように本発明によれば、装置本体の運搬時の操作性を簡便化したキャスタ構造を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す装置裏面図(a)、及び下部側面図(b)である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1においてアームを収納したときの装置裏面図である。
【図4】従来の一例を示す斜視図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【符号の説明】
1 装置本体
2 底板
3 アーム
4 回転軸
5 固定ピン
6 運搬ピン穴
7 収納ピン穴
8 固定ピン穴
9 補助キャスタ
10 主キャスタ
11 軸支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の隅部を備えた一平面を有する底板と、当該底板の一平面に固定された複数の主キャスタとを具備したキャスタ構造において、一端部と他端部とを備えたアームを有し、当該アームの一端部には、当該アームを前記一平面の外側へ回動可能に取付けられた軸支持部が設けられており、他方、当該アームの他端部には、前記主キャスタと同一方向に向けられた補助キャスタが設けられていることを特徴とするキャスタ構造。
【請求項2】 請求項1において、前記補助キャスタの高さは前記主キャスタの高さよりも低いことを特徴とするキャスタ構造。
【請求項3】 請求項2において、前記主キャスタは4つの前記隅部に取付けられており、他方、前記アームは前記各主キャスタに隣接して、回動可能に4つ設けられていることを特徴とするキャスタ構造。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図5】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate