説明

キャッピング装置、および液体噴射装置

【課題】底部にリブが形成されたキャップを有するキャッピング装置において、廃液口の増加を抑制したキャッピング装置を実現する。さらに、このキャッピング装置を備えた液体噴射装置を提供する。
【解決手段】環状に形成された短側壁33および長側壁34の一端に開口部を有するとともに他端に底部を有する有底箱形状のキャップ31側壁の一端に開口部を有するとともに他端に底部を有する有底箱形状のキャップ31を有するキャッピング装置であって、底部42Bには、開口部から流入した液体を排出する廃液口36aと、廃液口36aと少なくとも一部が開口部側から見たとき平面的に重なる位置に、長側壁34における対向する2つの壁面間を繋ぐように延設されたリブ40と、が形成され、リブ40には、当該リブ40の延設方向と交差する幅方向に貫通するとともに前記廃液口と連通する連通孔が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッピング装置、およびこのキャッピング装置を備えた液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種として、液体噴射ヘッドのノズル形成面に開口したノズルからインクを用紙などの媒体に噴射して印刷を行うインクジェット式プリンターが広く知られている。
【0003】
こうしたインクジェット式プリンターでは、ノズル内に滞留したインクの水分や揮発成分が蒸発してインクの粘度が上昇することによってノズルの目詰まりが生じたり、ノズル内に気泡や金属粒子等の異物が混入したりすることがある。そして、そうした目詰まりや異物等の混入がノズルに生じると、インクの噴射方向がずれたり、適量のインクをノズルから噴射することができなくなったりする等の印刷不良を招くことになる。
【0004】
そこで、インクジェット式プリンターにおいて、ノズルをクリーニングするためのクリーニング処理が行われている。例えば、キャップの開口部をノズル形成面に当接させ、形成したキャップの内部とノズル形成面との間の密閉空間を、吸引ポンプを駆動することによって減圧して、目詰まりの原因となるノズル内のインクをキャップ内に吸引する。そして、吸引したインクをキャップに設けられた廃液口から吸引ポンプを経由して外部に排出することが行われている。あるいは、ノズルからインクを強制的に噴射することによって目詰まりの原因となるノズル内のインクをキャップ内に排出する。そして、排出されたインクをキャップに設けられた廃液口から吸引ポンプを経由して外部に排出することが行われている。
【0005】
このとき、インクが飛散することなくキャップ内にインクが安定して受容されるように、キャップの内部にインク吸収体が設けられる場合がある。このような場合、ノズルのクリーニング処理の実行後、インク吸収体にインクが残存することがある。すると、クリーニング処理において密閉空間が形成されたとき、残存しているインクが増粘した状態になっていると、この増粘したインクがノズル内のインクから水分を吸収してノズル内のインクを増粘させてしまう虞がある。そこで、疎密の吸収体を廃液口側に用いたインク吸収体によってキャップ内に残るインク量を低減する技術が特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−175306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の提案技術は、疎密のインク吸収体を用いるためインク吸収体に受容可能なインク吸収量が減少する虞がある。従って、疎密のインク吸収体を用いることなくインク吸収体のインク吸収量を大きくすること、すなわちキャップ内のインク受容量を増加させることが効果的である。その一つの方法として、キャップの底部を開口部からさらに離れるように深くすることが有効である。なぜなら、キャップの開口部は当接するノズル形成面に応じてその開口領域が制約されているからである。
【0008】
さて、このようにキャップの底部を深くした場合は、開口部と底部との間に形成される環状の側壁の高さ、すなわち底部側の基端部と開口部でもある先端部までの寸法が長くなる。このため、キャップが成型加工によって製造される場合は、製造上の理由によって側壁の先端部(開口部)が互いに接近するように倒れる内倒れ現象が発生してしまうことがある。このため、開口部の形状が歪んでしまったり、開口部の面積が小さくなったりするなど好ましくない変形が生じてしまう。この対策として、先端部の倒れが発生し易い側壁間を繋ぐように、底部に所定の高さで立設するリブを形成する方法がある。こうすれば、底部側にリブを形成するので開口部の面積を減少させることなく先端部の内倒れを抑制することができる。
【0009】
しかしながら、キャップの底部において側壁間を繋ぐリブを形成した場合、キャップは底部側において2つの領域に分断されることになる。このため、この2つの領域毎に廃液口を設ける必要が生じることになり、キャップの構造が複雑になってしまうという課題がある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、底部にリブが形成されたキャップを有するキャッピング装置において、廃液口の増加を抑制したキャッピング装置を実現することを主な目的とする。さらに、このキャッピング装置を備えた液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明のキャッピング装置は、環状に形成された側壁の一端に開口部を有するとともに他端に底部を有する有底箱形状のキャップを有するキャッピング装置であって、前記底部には、前記開口部から流入した液体を排出する廃液口と、
前記廃液口と少なくとも一部が前記開口部側から見たとき平面的に重なる位置に、前記側壁における対向する2つの壁面間を繋ぐように延設されたリブと、が形成され、前記リブには、当該リブの延設方向と交差する幅方向に貫通するとともに前記廃液口と連通する連通孔が設けられている。
【0012】
この構成によれば、流入した液体をリブの両側から連通孔を介して廃液口に排出することができるので、キャップ内において1つのリブによって区分けされた2つの空間に流入した液体を、1つの廃液口で排出することができる。従って液体の廃液に関する構成が簡素化される。また、側壁間をリブで繋ぐので、成型加工時における側壁の内倒れ現象を抑制することができる。
【0013】
本発明のキャッピング装置において、前記廃液口は、少なくとも前記リブの幅方向寸法より大きい、または、同じ口径寸法を有する。
この構成によれば、リブと平面的に重なる位置であって、リブの底部側に、成型加工によって廃液口とともに連通孔を容易に形成することができる。
【0014】
本発明のキャッピング装置において、前記キャップ内に収容されるとともに、前記リブに対応する位置において、スリットが切り込み形成されている液体吸収体を備える。
この構成によれば、スリットにリブが挿入されることによって、キャップにおける液体吸収体の長手方向における収容位置が定まることになる。したがって、スリットによって液体吸収体をキャップにおいて適切な位置に挿入して配置することができるので、廃液口に液体を排出できる確率が高くなる。
【0015】
本発明のキャッピング装置において、前記スリットは、当該スリットの幅寸法が前記リブの幅寸法以下で設けられている。
この構成によれば、液体吸収体をキャップに挿入する場合、スリットとリブとの間に位置ずれが生じていても、リブがスリットの幅内に位置している確率が高くなるので、液体吸収体をキャップに正しく挿入することができる。また、リブがスリットに挿入されることによって、液体吸収体は挿入後もスリット部分がリブと幅方向の両側で圧縮された状態で当接するので、挿入後の位置も安定して保持される。
【0016】
本発明のキャッピング装置において、前記液体吸収体は、前記スリットにおける切り込み開始側の端部に、三角形状にカットされたカット形状部が設けられている。
この構成によれば、液体吸収体をキャップに挿入する場合、スリットとリブとの間に位置ずれが生じていても、リブがスリットのカット形状部の幅内に位置する確率が高くなるので、液体吸収体をキャップに正しく挿入することができる。
【0017】
本発明のキャッピング装置において、前記液体吸収体は、前記スリットにおける切り込み終了側の端部に、前記リブの幅寸法以上の幅寸法を有する矩形のカット形状部が設けられている。
【0018】
例えば液体吸収体をキャップに挿入する場合、スリットとリブとの間に位置ずれが生じていると、一旦リブが開口部側に押し込まれて液体吸収体を変形させることになる。そこで、この構成によれば、押し込まれたリブがその後スリットのカット形状部の幅内に位置することによって液体吸収体の変形を解除する確率が高くなるので、液体吸収体をキャップに正しく挿入することができる。
【0019】
本発明のキャッピング装置において、前記底部は、前記開口部から最も遠い部位を有する第2底部と、該第2底部よりは前記開口部に近い部位で形成された第1底部とによって構成され、前記リブは、前記第2底部における前記開口部から最も遠い部位に形成されている。
【0020】
この構成によれば、第1底部よりも深い第2底部を設けることによって、キャップ内に流入する液体の受容量を多くすることができるとともに、開口部から最も遠い部位においてリブを延設することによって、側壁の内倒れを基端側から抑制することができる。また、第2底部に流入した液体を、リブが延設された位置に形成された廃液口に確実に導いて排出することができる。
【0021】
本発明のキャッピング装置において、前記第2底部は互いに離間して形成された2つの前記第1底部の間に形成され、前記第2底部と2つの前記第1底部との間には、前記第2底部側に向かって互いに間隔が狭くなるように、それぞれ斜面が形成されている。
【0022】
この構成によれば、例えば第2底部に液体吸収体を挿入する場合、夫々の斜面によって液体吸収体は第2底部の中心方向に寄せられることになる。従って、液体吸収体をリブが延設された位置に形成された廃液口に寄せるようにすることができるので、液体を排出できる確率が高くなる。
【0023】
本発明の液体噴射装置は、媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、上記構成を有するキャッピング装置と、を備えた。
この構成によれば、キャップ内において1つのリブによって2つの空間に区分けされた底部側に流入した液体を、1つの廃液口で排出することができるので、液体の廃液に関する構成が簡素化された液体噴射装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施形態のキャッピング装置を有するプリンターの概略構成を示す斜視図。
【図2】実施形態のキャッピング装置を有するメンテナンス機構の機能構成図。
【図3】実施形態のキャップを示す図で、(a)は斜視図、(b)は平面図。
【図4】(a)は図3(a)における4a−4a線矢視断面図、(b)は図3(b)における4b−4b線矢視断面図、(c)は図3(b)における4c−4c線矢視断面図。
【図5】(a)は実施形態の液体吸収体の平面図、(b)は同液体吸収体の側面図、(c)は同液体吸収体がキャップへ挿入途中である状態を示す切断端面図、(d)は同液体吸収体がキャップに挿入された状態を示す切断端面図。
【図6】(a)は変形例のキャップの形状を示す断面図、(b)は実施形態の液体吸収体が変形例のキャップへ挿入途中である状態を示す切断端面図、(c)は同液体吸収体が同キャップに挿入された状態を示す端面図。
【図7】(a)は第1変形例の液体吸収体の形状を示す側面図、(b)は第1変形例の液体吸収体が変形例のキャップへ挿入された状態を示す切断端面図。
【図8】(a)は第2変形例の液体吸収体の形状を示す側面図、(b)は第2変形例の液体吸収体が実施形態のキャップへ挿入途中である状態を示す切断端面図、(c)は第2変形例の液体吸収体が実施形態のキャップに挿入された状態を示す切断端面図。
【図9】(a)は第3変形例の液体吸収体の形状を示す側面図、(b)は第4変形例の液体吸収体の形状を示す側面図、(c)は第4変形例の液体吸収体を下方から見た底面図、(d)は第5変形例の液体吸収体を下方から見た底面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を、ヘッドメンテナンス機構を備えた液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンターにおいて具体化した実施形態について、以下、図を参照して説明する。なお、以降の説明を容易にするため、図1に示したように、鉛直方向における重力方向を下方向、反重力方向を上方向とする。また、これと交差する方向であって、プリンターに給送された用紙Pが画像の形成時において搬送される搬送方向を前方向、搬送方向と反対方向を後方向とする。さらに重力方向および搬送方向の双方と交差する方向であってキャリッジ16が往復移動する方向すなわち走査方向を、前方から見て、それぞれ右方向、左方向と呼ぶことにする。
【0026】
さて、図1に示すように、インクジェット式プリンター11(以下、単に「プリンター11」ともいう。)は、略矩形箱状をなすフレーム12を備え、このフレーム12内の下部に、その長手方向である左右方向に沿って支持台13が延設されている。また、フレーム12の後方面の下部には紙送りモーター14が設けられている。この紙送りモーター14の駆動を通じて図示しない紙送り機構により、支持台13上にその後方側から用紙Pが給送されるようになっている。
【0027】
フレーム12内における支持台13の上方には、該支持台13の長手方向である左右方向に沿ってガイド軸15が架設されている。このガイド軸15にはその軸線方向において往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。詳しくは、キャリッジ16に左右方向において貫通する支持孔16aが形成されるとともに、この支持孔16aにガイド軸15が挿通されている。
【0028】
フレーム12の後壁内面において上記ガイド軸15の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジモーター18の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとの間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が巻き掛けられている。上記プリンター11は、キャリッジモーター18を駆動することにより、タイミングベルト17を介してキャリッジ16をガイド軸15によってガイドしつつ左右方向において往復移動させることの可能な構造になっている。
【0029】
上記キャリッジ16の下面には液体噴射ヘッド19が設けられている。この液体噴射ヘッド19にはインク噴射用のノズル20(図2参照)が複数設けられている。また、液体噴射ヘッド19の下方端にはノズルプレート19aが取り付けられている。このノズルプレート19aには、各ノズル20の開口孔が形成されている。一方、キャリッジ16には液体噴射ヘッド19に対してインクを供給するためのインクカートリッジ22が着脱可能に装着されている。
【0030】
そして、プリンター11では、液体噴射ヘッド19において例えば圧電素子を有する圧力発生機構21(図2参照)が設けられている。この圧力発生機構21を駆動することにより、インクカートリッジ22内のインクが液体噴射ヘッド19内に供給されるとともに同液体噴射ヘッド19の各ノズル20(図2参照)から支持台13上に給送された用紙Pに噴射されるといったように印刷が行われる。
【0031】
また、フレーム12の内部における上記支持台13よりも右側の領域、すなわち印刷時において使用されない領域(ホームポジション領域)には、液体噴射ヘッド19のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構23が設けられている。プリンター11では、定期的に、液体噴射ヘッド19をホームポジション領域に移動させるとともに上記メンテナンス機構23を作動させることによって液体噴射ヘッド19(ノズル20)をクリーニングする処理(クリーニング処理)が実行される。
【0032】
次に、上記メンテナンス機構23の概要について、図2を参照して説明する。図2に示すように、メンテナンス機構23は、キャップ31と液体吸収体としてのインク吸収体50とを備えたキャッピング装置30を有している。
【0033】
キャップ31は、有底箱形状を有する樹脂製のキャップ本体32と、このキャップ本体32において液体噴射ヘッド19と当接する上方側となる開口部に、キャップ本体32より軟質な材料(ゴム材料やエラストマーなど)で四角環状に形成されたキャップシール部35と、を有している。また、インク吸収体50は、インクを吸収する多孔質材料で形成され、キャップ31の内部空間に挿入されている。
【0034】
キャップ本体32は、左右方向から見て互いに対称的な階段状をなすように形成された前後一対の短手方向に延びる短側壁33と、左右方向において平行な垂直平板状をなすように形成された左右一対の長手方向に延びる長側壁34と、これらの短側壁33と長側壁34の下端縁間を繋ぐ底壁32aによって構成されている。そしてキャップ31は、開口部を取り囲むように環状に形成されたこれらの短側壁33、長側壁34及び底壁32aによって、キャップ31の内部において、開口部から下側に第1空間41が、さらにその下側には第2空間42が積層された状態で形成されている。なお、本実施形態では、第2空間42は、第1空間41よりも前後方向に均等に狭くなった形状を有しており、第1空間41に対して前後方向のほぼ中央に位置するように形成されている。
【0035】
また、キャップ本体32の底壁32aには、第2空間42の下方側に最も下がった部位において、下方に向かって突出する円柱形状の排液部36が形成されている。この排液部36にはその内部を上下方向に貫通することによって第2空間42の内部と外部とを連通する廃液口36aが形成されている。また排液部36は排出チューブ24を介して廃インクタンク25に接続されている。この排出チューブ24の途中にはキャップ31内のインク(あるいは空気)を吸引して廃インクタンク25内に排出するための吸引ポンプ26が設けられている。なお、廃インクタンク25の内部にはインクを吸収して保持する廃インク吸収材27が収容されている。
【0036】
また、キャップ本体32には、第2空間42よりも前後方向の一方側(図2では、後端側)に位置する第1空間41の下側の一部位(具体的には後端側の長側壁34の水平部位)において、下方に向かって突出する円柱形状の吸気部37が形成されている。この吸気部37にはその内部を上下方向に貫通することによって第1空間41と連通する吸気口37aが形成されている。また吸気部37は、途中に大気開放弁39が設けられた吸気チューブ38が接続されるとともに、大気開放弁39の開放動作によって、第1空間41(ひいては第2空間42)が吸気チューブ38を介して大気と連通することによって、キャップ31内が大気開放されるようになっている。
【0037】
メンテナンス機構23では、キャップ31は、液体噴射ヘッド19がホームポジション領域に移動したときにおいてキャップ31の開口部が液体噴射ヘッド19のノズルプレート19aの下面と若干の距離を置いて対向する位置になるように配設されている。そして、キャップ31は、メンテナンス機構23に設けられた昇降機構(図示略)によって、上方向に上昇され、開口部に形成されたキャップシール部35が各ノズル20の開口孔を囲うように液体噴射ヘッド19に当接してキャッピングするようになっている。
【0038】
この当接状態で吸引ポンプ26が駆動されると、キャップ31内の流体(空気)が吸引されてノズルプレート19aの下面とキャップ31とにより区画された空間内の圧力が低下(減圧)するようになる。このために、これに伴い発生する負圧(大気圧より低い圧力)によって各ノズル20内のインクが吸引されてキャップ31内に排出される。さらには、キャップ31内のインクが廃液口36aおよび排出チューブ24を介して廃インクタンク25内に排出される。このようにしてノズル20内のインクを強制的に排出させることにより、同ノズル20のクリーニング処理が行われるようになっている。
【0039】
もとより、このクリーニング処理中は、大気開放弁39は閉じており、クリーニング処理が終了したのち、大気開放弁39が開かれてキャップ31内の空間が大気圧と同等となる。これによって、キャップ31は、液体噴射ヘッド19から容易に降下して離間することができるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では説明を省略するが、メンテナンス機構23には、例えばノズルプレート19aに付着した不要なインクを払拭する機構や、ノズルから強制的に噴射されたインクを受容する液体受容容器などが必要に応じて備えられている。
【0041】
さて、メンテナンス機構23において備えられるキャッピング装置30は、このように第1空間41の下側に第2空間42を備えるとともに、第2空間42において1つの廃液口36aのみを有している。すなわち、本実施形態では、第1空間41の下側に第2空間42を設けることによってインクの吸収量を多くする一方、廃液口を1つとすることで、上述した従来の課題を解消するようにキャッピング装置30が構成されている。以下、本実施形態のキャッピング装置30を構成するキャップ31とインク吸収体50とについて、図3〜図5を参照して具体的に説明する。
【0042】
本実施形態のキャップ31は、キャップ31を斜め方向から見た図3(a)と、キャップ31を上方から見た図3(b)と、に示すように、長手方向(前後方向)の長さが異なる大小2つの略直方体形状が上下方向に重なった形状をなしている。
【0043】
さて、キャップ本体32において、前後一対の短側壁33は、それぞれにおけるキャップ31の内面側が、2つの前後方向に離間した垂直壁面と、これら2つの垂直壁面のうち一方の垂直壁面の下端と他方の垂直壁面の上端との間を繋ぐ水平床面とで階段形状をなすように形成されている。また、左右一対の長側壁34は、それぞれにおけるキャップ31の内面側が、左右方向から見て略T字状をなす垂直壁面となるように形成されている。そして、排液部36が突出形成された底壁32aは平面視矩形状をなすように形成されている。
【0044】
さらに、本実施形態では、既述したようにキャップ本体32の上端部において四角環状のキャップシール部35が設けられている。そして、キャップシール部35は、キャップ本体32の長手方向に沿いつつキャップ本体32内に垂れる長垂壁部35b(図4(b)参照)と、キャップ本体32の短手方向に沿いつつキャップ本体32内に垂れる短垂壁部35c(図4(a)参照)とを有している。そして、その長垂壁部35bが長側壁34の内面に、その短垂壁部35cが短側壁33の内面に、それぞれ密着するように形成されている。ちなみに本実施形態では、キャップシール部35は、キャップ本体32を一次側として成形したのち二次側として成形する所謂二色成形で形成されている。
【0045】
この結果、キャップ31には、キャップシール部35における左右一対の長垂壁部35b及び前後一対の短垂壁部35cによって、長手方向の長さ寸法L1、短手方向の幅寸法W1の矩形の開口部が形成される。また、左右一対の長垂壁部35bと前後一対の短垂壁部35c、および前後一対の短側壁33における各水平床面とによって、キャップ31の内部において、開口部側に長さ寸法L1、幅寸法W1の第1空間41が形成される。なお、短側壁33の水平床面は第1空間41の底部になることから、これを第1底部41B(図3参照)と呼称する。
【0046】
さらに、第1空間41の下側には、短側壁33の下側の垂直壁面42cと、長側壁34の内壁面34b、および底壁32aの内面とによって、第1空間41よりも前後方向に均等に空間が狭くなった第2空間42が形成される。従って、キャップ本体32の底壁32aの内面は第2空間の底部になることから、これを第2底部42B(図3参照)と呼称する。なお、本実施形態では、第2空間42は、前後方向において第1空間41の長さ寸法L1の約半分の長さ寸法L2で、また左右方向において第1空間41と同じ幅寸法W1で形成されている。
【0047】
さて、本実施形態のキャップ31には、リブ40が、第2底部42Bの前後方向のほぼ中央部分において上下方向に立設されるとともに、長手方向と交差する短手方向つまり左右方向において延設されている。すなわち、リブ40は、一対の長側壁34の内面における2つの部位間すなわち左右方向において対向する2つの内壁面34b間を連結するように形成されている。従って、第2空間42は、このリブ40によって前後方向において2つの空間領域に区分された状態になる。そして、キャップ本体32の底壁32aには、このリブ40と上方視で平面的に重なるように、廃液口36aが形成されている。言い換えれば、リブ40は廃液口36aと開口部側から見て平面的に重なるように配設されている。そして、リブ40には、リブ40の延設方向と交差する幅方向(前後方向)の両側面において開口し貫通するとともに、リブ40によって2つの領域に区分された第2空間42のそれぞれと廃液口36aとを連通する連通孔46が設けられている。なお、吸気口37aは一方(本実施形態では後側)の第1底部41Bにおいて開口するように設けられている。
【0048】
次に、リブ40の具体的な形状について、図4(a)(b)(c)を参照して説明する。
図4(a)(b)(c)に示すように、本実施形態では、キャップ31は、第2底部42Bのおおよそ中央部分においてキャップシール部35の上端となる開口部の開口端35aから下方向に最大寸法D2離れた部位、つまり最も遠い最遠部位42bを有している。そして、インクがこの最遠部位42b側に流れ易くするために、これに連続して前後方向に先上がりの傾斜面で形成された斜面部位42aが、第2底部42Bに形成されている。この最遠部位42bと斜面部位42aが形成された第2底部42Bに対して、前後一対の短側壁33の下側の垂直壁面42cが、また左右一対の長側壁34の内壁面34bが、それぞれ連続して環状に形成されることによって第2空間42が形成されている。
【0049】
この結果、第2空間42の前後方向の中央部分において、長側壁34には、上下方向にほぼ最大寸法D2の長さの板状の部位が形成されることになる。このため、キャップ本体32を例えば成型加工で製造する場合、図4(b)において破線の矢印Tで示したように、前後方向において最遠部位42bの位置に存在する長側壁34の上端側が成形後に内側に倒れる内倒れ現象が生じやすくなる。
【0050】
そこで、本実施形態では、前後方向に所定幅を有するリブ40が、第2底部42Bの最遠部位42bから上方向に高さ寸法H2の寸法で形成されている。このリブ40の高さ寸法H2は、キャップ31内に挿入するインク吸収体50が2体に分断されない範囲であって、長側壁34の内倒れ現象を抑制できる最適な寸法が設定されている。本実施形態では、この高さ寸法H2は開口端35aから下方向に距離D1離れた第1底部41Bの形成高さと同一寸法になっている。
【0051】
また、図4(b)(c)に示すように、リブ40には、第2底部42B側であって、その左右方向のほぼ中央部分において、リブ40の前後方向の両側面に開口し貫通する連通孔46が形成されている。連通孔46の下側には廃液口36aがあり、連通孔46と廃液口36aはそれぞれの貫通した空間部が連続して隣接しているので連通する状態となっている。連通孔46は言い換えると、リブ40と廃液口36aの間に配置された空間部である。連通孔46は、最遠部位42bから上方向に高さ寸法H1の寸法で形成されている。本実施形態では、連通孔46の高さ寸法H1は、リブ40の高さ寸法H2のおおよそ半分の高さで形成されている。この高さ寸法H1は、キャップ31内に挿入されたインク吸収体50が、第2空間42に挿入される部分においてキャップ31内に確実に挿入されるように最適な高さ寸法が設定されている。従って、連通孔46の高さ寸法H1は、必ずしもリブ40の高さ寸法H2のおおよそ半分の高さとは限らず、それよりも上方の高さであったり、下方の高さであったりしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、リブ40の前後方向の幅寸法Wrと、連通孔46の上端側となる高さ寸法H1における当該連通孔46の左右方向の幅寸法Wfとは、同じ寸法で形成されている。また、リブ40の左右方向の幅寸法は、長側壁34の内壁面34b間の隙間と同じ寸法であり、本実施形態においてはキャップシール部35の長垂壁部35b間の隙間と同じ幅寸法W1で形成されている。
【0053】
一方、廃液口36aは、連通孔46と連通する最遠部位42bにおいて、前後方向および左右方向とも同じ口径となる幅寸法Weで形成されている。そして、ここでは詳しい説明は省略するが、リブ40および廃液口36aを形成するための金型構造に基づいて、少なくとも金型同士が当接して擦り合わせ状態となる前後方向において、幅寸法Weは、リブ40の前後方向の幅寸法Wrと少なくとも同じ寸法(好ましくは幅寸法Wrより大きい寸法)に設定されている。
【0054】
次に、キャップ31内に挿入するインク吸収体50について、図5を参照して説明する。図5(a)に示すように、インク吸収体50は第1空間41に挿入される第1吸収部51と、この第1吸収部51の下方に一体で連続形成されるとともに第2空間42に挿入される第2吸収部52とを備えている。
【0055】
第1吸収部51は長さ寸法L1、幅寸法W1、もしくはこれよりも小さい寸法を有し、第1空間41に挿入できるようになっている。また、第1空間41に挿入された状態で、上面が開口端35aから少し下がった位置になるように上下方向の寸法が設定されており、全体が直方体形状になっている。
【0056】
一方、第2吸収部52は、前後方向において第2空間42の前後方向の長さ寸法L1、もしくはこれより小さい寸法を有するとともに、左右方向(紙面表裏方向)において第1吸収部51と同じ幅寸法を有し、第2空間42に挿入できるようになっている。そして、第2吸収部52には、第2空間42に挿入されたときにリブ40と係合する位置(ここでは中央部分)にスリット53が切り込み形成されている。さらにスリット53の下端側、すなわち、スリット53における切り込み開始側の端部には、前後方向の両側において斜めにカットされたカット面54とカット面55とが形成されている。これらのカット面54,55は、スリット53の下端側において吸収体の部材が三角形状にカットされたカット形状部を形成している。
【0057】
なお、本実施形態では、スリット53は、インク吸収体50をキャップ31に挿入する際、高さ寸法H2のリブ40が挿入途中で停止することなく挿入完了できるように、インク吸収体50の下端面から上方に高さ寸法H3の寸法で切り込み形成されている。もとより、高さ寸法H3は、インク吸収体50(第1吸収部51)を分断しない範囲の寸法になっている。また、インク吸収体50のキャップ31内への挿入時において、カット面54もしくはカット面55にリブ40に当接して、スリット53にリブ40が確実に挿入されるように、カット形状部の三角形状の底辺に相当する幅部分がリブ40の幅寸法Wrよりも広い幅寸法Wkの寸法で形成されている。
【0058】
次に、このように形成されたインク吸収体50をキャップ31に挿入する場合の作用について、図5(b)(c)を参照して説明する。
図5(b)に示すように、インク吸収体50をキャップ31に対して上方から挿入する場合、第2吸収部52が第2空間42への挿入を開始した時点では、第1吸収部51が第1空間41において完全に挿入されていない状態になっている。従って、第2吸収部52は前後方向において第2空間42との位置ずれが生じやすい。なお、第1吸収部51が第1空間41に挿入された状態になっている場合でも、第1吸収部51の変形や第1吸収部51とキャップ31との隙間などによって第2吸収部52は前後方向において第2空間42との位置ずれが生じることになる。
【0059】
そこで、このような位置ずれが生じた場合において、インク吸収体50をキャップ31に挿入すると、図5(b)に示すように、第2吸収部52の下端に形成されたカット面54とカット面55のいずれかがリブ40と当接するようになっている。そして、インク吸収体50の挿入に伴ってリブ40がカット面54,55を摺動することによって、インク吸収体50は前後方向に移動しながらスリット53をリブ40に係合させることになる。
【0060】
その後、図5(c)に示したように、スリット53がリブ40と正しく係合して、インク吸収体50がキャップ31に押し込まれて挿入が完了した状態では、インク吸収体50には、リブ40が挿入された部分において、前後方向への圧縮に伴う付勢力F1が発生する。この付勢力F1によって、インク吸収体50はキャップ31内に安定して保持されるようになる。
【0061】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)キャップ31内に流入したインクをリブ40の両側から連通孔46を介して廃液口36aに排出することができるので、キャップ31内において1つのリブ40によって2つの空間に区分けされた第2空間42に流入したインクを、1つの廃液口36aで排出することができる。従ってインクの廃液に関する構成が簡素化される。
【0062】
(2)廃液口36aをリブ40と平面的に重なる位置であって、リブ40の第2底部42B側に、成型加工によって容易に形成することができる。
(3)短手方向にリブ40を延設することによって長手方向の長側壁34の内壁面34b間をリブ40で繋ぐので、成型加工時における長側壁34の内倒れを抑制することができる。
【0063】
(4)第1底部41Bよりも深い第2底部42Bを設けることによって、キャップ31内に流入するインクの受容量を多くすることができるとともに、開口端35aから最も遠い最遠部位42bにおいてリブ40を延設することによって、長側壁34の内倒れを抑制することができる。また、第2底部42Bに流入したインクを、リブ40が延設された位置に形成された廃液口36aに確実に導いて排出することができる。
【0064】
(5)スリット53にリブ40が挿入されることによって、キャップ31におけるインク吸収体50の長手方向(前後方向)における位置が定まることになる。したがって、スリット53によってインク吸収体50をキャップ31において適切な位置に挿入することができるので、廃液口36aにインクを排出できる確率が高くなる。また、インク吸収体50は挿入後もスリット53部分がリブ40の幅方向の両側で付勢力F1を受けながら当接するので、挿入後の位置も安定する。
【0065】
(6)インク吸収体50をキャップ31に挿入する場合、スリット53とリブ40との間に位置ずれが生じていても、カット面54,55によってリブ40が三角形状のカット形状部の幅寸法Wk内に位置する確率が高くなるので、インク吸収体50をキャップ31に正しく挿入することができる。
【0066】
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記各実施形態において、図5(c)に示したように、キャップ31にインク吸収体50を挿入した状態では、スリット53が前後方向に広げられるために、付勢力F1と反対方向、すなわち三角形状のカット形状部を広げようとする方向に付勢力F2が発生する。このため、第2吸収部52が廃液口36aから離れる方向に変位する場合がある。このような場合、第1吸収部51に吸収されたのち第2吸収部52に移動したインクを、廃液口36aに容易に導入できないことが生ずる。
【0067】
そこで、キャップ31において、第2底部42Bと第1底部41Bとの間に形成される垂直壁面42c(図4(a)参照)を、第2底部42B側に向かって互いに間隔が狭くなるように、それぞれ斜面を形成するようにしてもよい。本変形例について、図6(a)(b)(c)を参照して説明する。
【0068】
図6(a)に示すように、本変形例のキャップ31Aは、第2空間42を形成する前後一対の壁面42dが、第1底部41Bから第2底部42Bに向かって下がり勾配をなすとともに下端側ほど互いの間隔が狭くなるように、上下方向に対して角度α傾いた斜面で形成されている。
【0069】
このように形成されたキャップ31Aにインク吸収体50を挿入した場合、インク吸収体50において生ずる作用について説明する。すなわち、図6(b)に示すように、インク吸収体50がキャップ31Aに対して上方から挿入されると、第2吸収部52が第2底部42Bに向かって第2空間42への挿入を開始する。このとき、前述するように、第2吸収部52の下端に形成されたカット面54とカット面55のカット形状部によってスリット53がリブ40と前後方向において位置合わせされる。同時に、第2吸収部52の前後方向の両端部は、斜面になっている各壁面42dと当接する。この当接によって、第2吸収部52は、スリット53が形成された方向に付勢力F3を受けることになる。
【0070】
その後、図6(c)に示したように、スリット53にリブ40が挿入されて、インク吸収体50がキャップ31Aへの挿入が完了した状態では、インク吸収体50のカット面54,55を廃液口36aに近づけようとする付勢力F4が発生する。すなわち、リブ40が挿入された状態において、壁面42dによって生ずる付勢力F3によって第2吸収部52がスリット53側(廃液口36a側)に押されることによって、カット面54,55において付勢力F4が発生するのである。
【0071】
本変形例によれば、上記実施形態による効果(1)〜(6)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(7)インク吸収体50の第2吸収部52をキャップ31Aの第2底部42Bに向かって挿入する場合、第2底部42Bの前後方向に形成された夫々の壁面42dによってインク吸収体50は第2底部42Bの中心方向すなわち廃液口36a側に寄せられることになる。従って、インク吸収体50をリブ40が延設された位置に形成された廃液口36aに寄せるようにすることができるので、インクを排出できる確率が高くなる。
【0072】
・上記実施形態において、インク吸収体50のスリット53は、スリットの幅寸法が前記リブ40の幅寸法Wr以下の隙間を設けて設けられてもよい。本変形例について、図7(a)(b)を参照して説明する。
【0073】
図7(a)に示すように、本変形例のインク吸収体50aには、前後方向の幅寸法Wsで下面からの高さ寸法H4のスリット53aが、第2吸収部52に形成されている。スリット53aの幅寸法Wsは、第2吸収部52が第2空間42に挿入されるときにリブ40に対してスリット53aが係合しやすいように、リブ40の幅寸法Wr以下の範囲で出来るだけ大きい寸法で形成されている。また、スリット53aの高さ寸法H4は、インク吸収体50aがキャップ31(31A)に挿入される際、高さ寸法H2のリブ40が挿入途中で停止することなく挿入完了できる高さ寸法で形成されている。ちなみに本変形例では、スリット53aの幅寸法Wsはリブ40の幅寸法Wrと同じ寸法で、また高さ寸法H4は上記実施形態のスリット53の高さ寸法H3と同じ寸法で形成されている。
【0074】
このような幅寸法Ws(Wr)を有したスリット53aが形成されたインク吸収体50aは、上記変形例のキャップ31Aに挿入された場合、第2吸収部52が廃液口36aに接近するとともに、挿入された状態が安定して維持されるようになっている。この作用について図7(b)を参照して説明する。
【0075】
図7(b)に示すように、スリット53aにリブ40が挿入されて、インク吸収体50aがキャップ31Aへの挿入を完了した状態では、インク吸収体50のスリット53aの隙間狭くして第2吸収部52を廃液口36aに近づけようとする付勢力F6が発生する。すなわち、リブ40が挿入された状態において、壁面42dによって生ずる付勢力F5によって第2吸収部52がスリット53a側に押されることによって付勢力F6が発生するのである。この結果、挿入されたリブ40に対して前後方向の両側から付勢力F6が作用することによって、リブ40の下側に形成された連通孔46に対峙する第2吸収部52の部分においてスリット53aの間隔が狭められることになる。
【0076】
本変形例によれば、上記実施形態による効果(1)〜(6)、および上記変形例による効果(7)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(8)インク吸収体50aをキャップ31に挿入する場合、スリット53aとリブ40との間に位置ずれが生じていても、リブ40がスリット53aの幅内に位置している確率が高くなるので、インク吸収体50aをキャップ31に正しく挿入することができる。また、インク吸収体50aをキャップ31Aに挿入する場合、インク吸収体50aは挿入後においてスリット53a部分がリブ40の幅方向の両側で付勢されて当接するとともに、リブ40の下側において間隔が狭くなるので、挿入状態が安定して維持される。
【0077】
・上記変形例において、例えばスリット53aの幅寸法Wsがリブ40の幅寸法Wrよりも小さい寸法である場合は、スリット53aが正しくリブ40に挿入されない場合が生じやすくなる。そこで、上記変形例の更なる変形例として、インク吸収体50aにおいて、スリット53aの上側の端部において、前後方向の幅寸法が少なくともリブ40の幅寸法Wrの寸法を有する矩形のカット形状部が設けられた液体吸収体としてもよい。本変形例について、図8(a)(b)(c)を参照して説明する。
【0078】
図8(a)に示すように、本変形例のインク吸収体50bは、前後方向の幅寸法Wsで下面からの高さ寸法H5のスリット部分と、前後方向の幅寸法Whで下面からの高さ寸法H6のスリット部分とからなる奥側が広い形状のスリット53bが、第2吸収部52に形成されている。すなわち、第2吸収部52には、隙間が幅寸法Wsで高さ寸法H5のL字型の形状部位56,57が下端側に形成され、隙間が幅寸法Whで高さ寸法H6と高さ寸法H5との差分の高さの各寸法を有する矩形のカット形状部がその上側に形成されることになる。
【0079】
矩形のカット形状部となるスリット53bの幅寸法Whは、本変形例では第2吸収部52が第2空間42に挿入されるときにリブ40がスリット53bと上下方向において係合しないように、少なくともリブ40の幅寸法Wrの寸法で形成されている。また、スリット53bの上端の高さ寸法H6は、インク吸収体50bがキャップ31(31A)に挿入される際、高さ寸法H2のリブ40が上下方向において当接することなく挿入できる高さ寸法で形成されている。
【0080】
なお、本実施形態では、形状部位56,57の高さ寸法H5は、リブ40に形成された連通孔46の高さ寸法H1図4(a)参照以下の寸法で形成されている。また、スリット53bの幅寸法Whは、リブ40の幅寸法Wrよりも、リブ40およびスリット53bを形成する際に伴う寸法ばらつきに相当する寸法分大きな寸法が設定されている。もとより、幅寸法Whは大きくするほど、また形状部位56,57の高さ寸法H5は小さくするほど、リブ40が挿入され易くなるが、インク吸収体50の容積が少なくなってしまうことから、幅寸法Whは出来るだけ小さい寸法、高さ寸法H5は出来るだけ大きい寸法であるこが好ましい。
【0081】
このようにスリット53bが形成されたインク吸収体50bは、上記実施形態のキャップ31への挿入に際してスリット53bとリブ40との間に位置ずれが生じていても、第2吸収部52が第2空間42に適切に挿入されるようになっている。この作用について図8(b)(c)を参照して説明する。
【0082】
本変形例では、インク吸収体50bが後方向にずれてキャップ31に挿入されるものとする。すると、図8(b)に示すように、第2吸収部52の下端側において前側に形成された形状部位57が、リブ40と上下方向で当接することになる。このため、形状部位57は、リブ40によって上方向に押しつぶされて変形しながら、形状部位56と協働して、スリット53bをリブ40に対して正しく挿入できるように、インク吸収体50bを移動させる。
【0083】
その後、図8(c)に示したように、インク吸収体50bがキャップ31に押し込まれて挿入が完了した状態では、インク吸収体50bの矩形のカット形状部内にリブ40が位置する状態になる。この状態になると、リブ40の上側は矩形のカット形状部内に位置することになるため、リブ40の上側部分においては、形状部位57の変形が解除された状態になる。従って、形状部位57は少なくとも連通孔46が形成された部分と対峙する部分において、矢印F7で示したように形状が変形前の形状に戻ることになる。なお、このとき、形状部位57(56)は、左右方向(紙面表裏方向)において廃液口36aと連通する連通孔46と対峙する部分が、連通孔46内に進入することになる。
【0084】
本変形例によれば、上記実施形態による効果(1)〜(5)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(9)インク吸収体50bがキャップ31に押し込まれ、リブ40がスリット53bの上端側に形成された矩形のカット形状部の幅寸法Wh内に位置することによってインク吸収体50bの変形を解除する確率が高くなるので、インク吸収体50bをキャップ31に正しく挿入することができる。また、インク吸収体50bは連通孔46内に進入する形状部位56,57によって上方向に抜けにくくなるので、挿入後の位置も安定する。
【0085】
・上記変形例のインク吸収体50bにおいて、形状部位56と形状部位57との間において隙間を空けないようにしてもよい。この変形例について、図9(a)(b)(c)(d)を参照して説明する。
【0086】
図9(a)に示すように、本変形例のインク吸収体50cは、上記変形例のインク吸収体50bに対して、形状部位56,57が前後方向において当接するようにそれぞれ延設された形状部位56a,57aを有する形状であってもよい。
【0087】
更に確実にインクを廃液口36aに導いて排出するために、図9(b)に示したように、形状部位56,57が当接する部分において、その下側に、廃液口36a内に所定量侵入する凸形状部位58,59をそれぞれ形成したインク吸収体50dとしてもよい。
【0088】
そして、このとき形成する凸形状部位58,59を、図9(c)に示すように、廃液口36a内に挿入できるように、それぞれ半円柱の形状で形成することとしてもよい。なお、半円柱の形状で形成された凸形状部位58,59が当接した状態では、最大径が幅寸法We以下に(好ましくは幅寸法Weよりも小さく)なるように、凸形状部位58,59が形成されていることが好ましい。
【0089】
あるいは、このとき形成する凸形状部位58,59を、図9(d)に示すように、廃液口36a内に挿入できるように、それぞれ四角柱の形状を有する凸形状部位58a,59aで形成されたインク吸収体50eとしてもよい。なお、四角柱の形状で形成された凸形状部位58a,59aが当接した状態では、下面において形成される四角形の一辺の寸法が、幅寸法We以下の(好ましくは幅寸法Weよりも小さい)四角柱になるように形成されていることが好ましい。
【0090】
本変形例によれば、上記実施形態による効果(1)〜(5)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(10)インク吸収体50cがキャップ31に押し込まれて挿入が完了した状態では、形状部位56a,57aは連通孔46内に侵入する部分が多くなるので、インクを廃液口36aに確実に導くことができる。更に、インク吸収体50d,50eがキャップ31に押し込まれて挿入が完了した状態では、凸形状部位58,59(58a,59a)は廃液口36a内に進入する部分が存在するので、インクを廃液口36aにより確実に導くことができる。
【0091】
・上記変形例のインク吸収体50b,50cにおいて、形状部位56,57(形状部位56a,57a)は、左右方向(紙面表裏方向)の厚さ寸法を、連通孔46の左右方向の幅寸法Wf(もしくは幅寸法Wr)以下の寸法で形成するようにしてもよい。こうすれば、インク吸収体50b,50cをキャップ31(キャップ31A)に挿入した場合、形状部位56,57(形状部位56a,57a)を、連通孔46内に確実に進入させることができる。
【0092】
・上記実施形態において、廃液口36aの形状は必ずしも矩形形状でなくてもよい。例えば長円形状や円形状、楕円形状であってもよい。
・上記実施形態において、形成されたリブ40の高さ寸法は、必ずしも第1底部41Bの高さ寸法H2と同一寸法とは限らず、第1底部41Bの高さよりも上方になる寸法であったり、下方になる寸法であったりしてもよい。
【0093】
・上記実施形態において、連通孔46の高さ寸法H1は、必ずしもリブ40の高さ寸法H2のおおよそ半分の高さとは限らず、それよりも上方の高さであったり、下方の高さであったりしてもよい。
【0094】
・上記実施形態において、第2空間42は必ずしも第1空間41の中央において重なるように配設されていなくてもよい。例えば前後方向のどちらか一方側にずれていても差し支えない。もとより、この場合は、インク吸収体50は前後方向において非対称形状となるので、キャップ31に挿入する場合に方向性が発生することになる。
【0095】
・上記実施形態において、リブ40は、必ずしも長手方向における中央位置において短手方向(左右方向)に延設されているとは限らない。例えば、第2底部42Bの最遠部位42bが第2底部42Bにおいて中央からずれた位置に形成されている場合は、長側壁34において内倒れが生じる部位は、最遠部位42bの形成位置に応じて中央から前後方向にずれることになる。従って、リブ40は、このずれた内倒れの発生場所に応じて形成することが好ましい。
【0096】
・上記実施形態において、第2空間42の前後方向における長さ寸法L2は、第1空間41の長さ寸法L1と同じ寸法であってもよい。すなわち、キャップ31は、第1空間41において第1底部41Bが形成されることなく、前後方向における側壁が上下方向に段差なく連続して形成された有底箱形の形状であってもよい。こうすれば、上記実施形態の場合よりもインク吸収体50のインク吸収容量が増えるとともに、上記実施形態および上記変形例と同様な効果を得ることができる。
【0097】
・上記実施形態において、スリット53の下端側において三角形のカット形状部を設けないこととしてもよい。インク吸収体50をキャップ31に挿入する際、スリット53とリブ40との位置ずれが生じにくい場合は、このようにカット形状部を設けなくてもよい。
【0098】
・上記実施形態において、廃液口36aの前後方向の幅寸法Weはリブ40の前後方向の幅寸法Wrよりも小さい寸法であってもよい。リブ40がこのような形成状態であっても、例えば(部分)スライド方式の金型を用いることによって廃液口36aと貫通するように連通孔46を形成することが可能である。また、連通孔46の左右方向の幅寸法Wfは廃液口36aの左右方向の幅寸法Weより大きい寸法であってもよい。なお、本実施形態では、連通孔46の左右方向の幅寸法Wfがリブ40の左右方向の幅寸法W1と同じでも連通孔とみなす。従って、リブ40の少なくとも一部が、上方から見て廃液口36aと平面的に重なる位置に延設されていれば、金型構造を工夫することによって、廃液口36aと連通する連通孔46を形成することが可能である。
【0099】
・上記実施形態において、キャッピング装置30は、必ずしもインク吸収体50を備えなくてもよい。例えば、キャップ31に噴射されたインクが飛散することなくキャップ31に受容される場合は、必ずしもインク吸収体50を備える必要がない。
【0100】
・上記実施形態では、液体噴射装置をインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
11…液体噴射装置としてのプリンター、19…液体噴射ヘッド、30…キャッピング装置、31,31A…キャップ、33…短側壁、34…長側壁、35a…開口端、36a…廃液口、40…リブ、41B…第1底部、42B…第2底部、46…連通孔、50,50a,50b,50c,50d,50e…液体吸収体としてのインク吸収体、53,53a,53b…スリット、W1,We,Wf,Wh,Wk,Wr,Ws…幅寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に形成された側壁の一端に開口部を有するとともに他端に底部を有する有底箱形状のキャップを有するキャッピング装置であって、
前記底部には、
前記開口部から流入した液体を排出する廃液口と、
前記廃液口と少なくとも一部が前記開口部側から見たとき平面的に重なる位置に、前記側壁における対向する2つの壁面間を繋ぐように延設されたリブと、
が形成され、
前記リブには、当該リブの延設方向と交差する幅方向に貫通するとともに前記廃液口と連通する連通孔が設けられていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキャッピング装置において、
前記廃液口は、少なくとも前記リブの幅方向寸法より大きい、または、同じ口径寸法を有することを特徴とするキャッピング装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のキャッピング装置において、
前記キャップ内に収容されるとともに、前記リブに対応する位置において、スリットが切り込み形成されている液体吸収体を備えることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項4】
請求項3に記載のキャッピング装置において、
前記スリットは、当該スリットの幅寸法が前記リブの幅寸法以下で設けられていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のキャッピング装置において、
前記液体吸収体は、
前記スリットにおける切り込み開始側の端部に、三角形状にカットされたカット形状部が設けられていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか一項に記載のキャッピング装置において、
前記液体吸収体は、
前記スリットにおける切り込み終了側の端部に、前記リブの幅寸法以上の幅寸法を有する矩形のカット形状部が設けられていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載のキャッピング装置において、
前記底部は、前記開口部から最も遠い部位を有する第2底部と、該第2底部よりは前記開口部に近い部位で形成された第1底部とによって構成され、
前記リブは、前記第2底部における前記開口部から最も遠い部位に形成されていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項8】
請求項7に記載のキャッピング装置において、
前記第2底部は互いに離間して形成された2つの前記第1底部の間に形成され、
前記第2底部と2つの前記第1底部との間には、前記第2底部側に向かって互いに間隔が狭くなるように、それぞれ斜面が形成されていることを特徴とするキャッピング装置。
【請求項9】
媒体に液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載のキャッピング装置と、
を備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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