説明

キャップ付き容器

【課題】容器本体内部の気密性を適切に保持することが可能なキャップ付き容器を提供する。
【解決手段】内容物を収容する容器本体2と、容器本体に装着されるキャップ3と、キャップに設けられ、径方向に弾性変形自在な弾性リング体4と、弾性リング体と容器本体との間に設けられ、弾性リング体を錐体面6に沿って迫り上げてキャップを上昇させる迫り上げ手段と、押圧操作されて弾性リング体を弾性変形させるプッシュボタン11と、係合状態でキャップを容器本体に保持すると共に、キャップの上昇でキャップを容器本体から離脱させる係合突起13及び係合片14と、嵌合状態で弾性リング体を容器本体に嵌着させると共に、弾性リング体をその弾性変形で容器本体から離脱させる嵌合突起15及び嵌合片16と、弾性リング体の上下方向の変形を防止しキャップを開口部に気密に密着保持するために、弾性リング体をキャップに係止支持させる鍔片17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内部の気密性を適切に保持することが可能なキャップ付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
キャップ付き容器としては、特許文献1が知られている。特許文献1では、容器に対してキャップ本体を弾性嵌合により上下方向に着脱自在に装着し、該キャップ本体内に径方向に弾性変形するリング体を設け、該リング体外面に凸部を相対向して形成し、該凸部を該キャップ本体より露出させ、該リング体下端と該容器との当接面の少なくとも一方を傾斜面に形成し、該凸部を押圧して該リング体を径方向に撓めると該傾斜面によって該リング体に該キャップ本体を上昇させる力が作用するように構成したキャップ付き容器において、上記リング体と上記容器とが当接する上記傾斜面を挟んで、その内側に、内容物を抽出するための上記容器の開口筒部と、上記キャップ本体の天井部に設けられて上記開口筒部を封止する封止部材とを配設するとともに、その外側に、上記キャップ本体と上記容器との弾性嵌合部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−6101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願出願人は先に、特願2009−265588を出願している(以下、「先願」という)。先願のキャップ付き容器は、キャップ本体の天井部と容器の開口筒部の外周の間に設けられ、キャップの上昇で離脱可能な係合部と、キャップ本体に組みつけられた弾性リング体と容器開口筒部の外周の間に設けられ、該弾性リング体の径方向への弾性変形によって離脱可能な嵌合部とを備え、すなわち該嵌合部が、キャップを上昇させて係合部を離脱する上下方向の力に対して、垂直方向の力を加えなくては離脱しない仕組みになっているため、弾性リング体を弾性変形させることなくキャップだけを上昇させるような力を加えても、容器内部の気密性はある程度保持されるという特長をもっている。
【0005】
しかしながら、先願のキャップ付き容器において、キャップ本体と弾性リング体は、弾性リング体をキャップ本体胴部の内周に沿うように配し、弾性リング体外周の対向位置に設けられた2つの凸状プッシュボタンを、キャップ本体胴部に設けられた対向する2つの通孔から露出させることで組み付けられ、このとき上記嵌合部を構成する嵌合突起が、弾性リング体の該凸状プッシュボタンと直交する位置に形成される。これはプッシュボタンを径方向に押圧することで弾性リング体を変形させ、上記嵌合突起を径方向で外側に水平移動させるために必要な位置関係であるが、例えばキャップ本体だけを上方に強く引っ張ったり、容器の内圧が高まり内部からキャップを押し上げようとする力が強く働くと、キャップ本体に2つの通孔を介して組み付けられた上記プッシュボタンを支点に、弾性リング体が2つの対向する嵌合部にかけて下方に撓るように変形することがある。弾性リング体が上下方向に撓ると、係合部の解除強度は弱めに設定されているため、上記嵌合部を離脱しなくてもキャップ本体が上下移動可能となり、その結果、キャップ本体内部の天井部に設けられた封止部材と容器開口筒部との密着が弱まって、容器内部の気密性が失われるという現象が、例えば気圧変化の大きい空輸中に生じることが、種々の検討より明らかになった。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、容器本体内部の気密性を強固に保持することが可能なキャップ付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるキャップ付き容器は、開口部が上端に形成され、内容物を内部に収容する容器本体と、通孔が互いに向かい合わせて形成され、上記開口部を封止するために上記容器本体に上方から装着されるキャップと、該キャップ内部に、当該キャップと上記容器本体との間に位置させて組み付けられ、径方向に弾性変形自在な弾性リング体と、これら弾性リング体と容器本体との間に設けられ、これら弾性リング体及び容器本体の少なくともいずれか一方に下方へ向かって拡張形成された錐体面を有して、該弾性リング体がその弾性変形に伴って当該錐体面に沿って迫り上がることにより、上記キャップを上昇させる迫り上げ手段と、上記弾性リング体に形成され、上記通孔を介して上記キャップ外方へ露出されて、押圧操作されることにより該弾性リング体を弾性変形させるプッシュボタンと、上記キャップと上記容器本体との間に設けられ、係合状態で該キャップを該容器本体に保持すると共に、当該キャップの上昇で該キャップを該容器本体から離脱させる係合部と、上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、嵌合状態で該弾性リング体を該容器本体に嵌着させると共に、該弾性リング体をその弾性変形で該容器本体から離脱させる嵌合部と、上記キャップと上記弾性リング体との間に設けられ、該弾性リング体の上下方向の変形を防止し当該キャップを上記開口部に気密に密着保持するために、該弾性リング体を該キャップに係止させる係止支持部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
前記係止支持部は、前記キャップに形成され、前記弾性リング体に係止される鍔片であることを特徴とする。
【0009】
前記係止支持部は、前記弾性リング体に形成され、前記キャップを係止する鍔片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかるキャップ付き容器にあっては、容器本体内部の気密性を適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明にかかるキャップ付き容器の第1実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示したキャップ付き容器を下方から見た分解斜視図である。
【図3】図1に示したキャップ付き容器を構成するキャップ、弾性リング体、並びに容器本体を説明するための説明図である。
【図4】図1中、A−A線矢視断面図である。
【図5】図1中、B−B線矢視断面図である。
【図6】本発明にかかるキャップ付き容器の第2実施形態を示す、キャップ付き容器を下方から見た分解斜視図である。
【図7】図6に示したキャップ付き容器を構成するキャップおよび弾性リング体を説明するための説明図である。
【図8】図6に示したキャップ付き容器のキャップの一部破断部分底面図である。
【図9】図6に示したキャップ付き容器の正面断面図である。
【図10】図6に示したキャップ付き容器の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるキャップ付き容器の好適な実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1から図5には、第1実施形態にかかるキャップ付き容器が示されている。図1はキャップ付き容器の全体斜視図、図2はキャップ付き容器を下方から見た分解斜視図、図3(a)はキャップの側面図、(b)はキャップの側断面図、(c)は弾性リング体の側面図、(d)は弾性リング体の側断面図、(e)は容器本体の側面図、図4は図1中、A−A線矢視断面図、図5は図1中、B−B線矢視断面図である。
【0013】
キャップ付き容器1は主に、内容物を内部に収容する容器本体2と、容器本体2に上方から装着されるキャップ3と、キャップ3内部に設けられる弾性リング体4とから構成される。
【0014】
容器本体2は、合成樹脂、金属もしくはガラスを素材として、ジャー形態もしくは中空筒形態で形成される。容器本体2は、上から下へ順に、小径の首部5と、下方へ向かって拡張形成された錐体面6と、大径の胴体部7とを備える。図示例にあっては、平面外形輪郭が円形状の容器本体2が示されているが、多角形状や楕円形状であってもよい。
【0015】
首部5の上端には、内容物を取り出すための開口部8が形成される。錐体面6は、開口部8下に位置するように、首部5の下方に形成される。錐体面6は、上方の外径が小さく、下方の外径が大きく形成されて、下方へ向かって外向きに傾斜するリング状のスロープを形成する。図示例では、錐体面6は、容器本体2の周方向全周に亘って形成されている。
【0016】
キャップ3は、合成樹脂製もしくは金属製で形成される。キャップ3は、筒状胴部3aと、筒状胴部3aの天端を覆う天板部3bとを備えて、中空筒体状に形成される。図示例にあっては、平面外形輪郭が円形状のキャップ3が示されているが、容器本体2に合わせて、多角形状や楕円形状に形成してもよい。
【0017】
天板部3bの中央には、開口部8に密着されるプレート状または開口部8の径に合わせた凹凸形状のパッキン9が設けられる。キャップ3は、開口部8を封止するために、容器本体2に装着される。キャップ3を容器本体2に装着した状態では、筒状胴部3aが錐体面6を取り囲み、筒状胴部3aの下端と容器本体2の胴体部7上端との間には、僅かな隙間が形成される。筒状胴部3aの下端と胴体部7の上端とは当接させるようにしてもよい。
【0018】
キャップ3の筒状胴部3aには、当該キャップ3の直径方向に互いに向かい合わせて、一対の通孔10が貫通形成される。
【0019】
弾性リング体4は、合成樹脂製もしくは金属製で、弾性変形自在に形成される。弾性リング体4は、平面外形輪郭が円形状に形成される。この弾性リング体4も、円形状に限らず、多角形状や楕円形状に形成してもよい。弾性リング体4は、復原自在に多様に変形可能で、いずれかの直径方向から押圧されると、当該押圧方向とほぼ直交する直径方向へ弾性変形する。
【0020】
弾性リング体4は、キャップ3の筒状胴部3a内周に沿って、当該キャップ3と容器本体2の首部5や錐体面6との間に位置させて組み付けられ、下方内周縁が錐体面6上に当接される。そして、弾性リング体4と容器本体2との間に位置させて、これら弾性リング体4と錐体面6とにより、キャップ3を上昇させる迫り上げ手段が設けられる。
【0021】
すなわち、弾性リング体4が錐体面6上で弾性変形されると、この弾性変形に伴って、弾性リング体4は錐体面6に沿って下方から上方へ向かって迫り上がるようにスライド移動され、これに伴って、当該弾性リング体4を内部に収容しているキャップ3が上方に迫り上がるようになっている。
【0022】
本実施形態にあっては、錐体面6は、容器本体2にのみ形成されているが、弾性リング体4の内周面にも互いに向かい合うようにして、錐体面を形成してもよい。また、弾性リング体4の内周面にのみ錐体面を形成し、容器本体2にはこの錐体面に当接する角付けなどを施して迫り上げ手段を構成するようにしてもよい。
【0023】
弾性リング体4の外周面には、プッシュボタン11が一体的に形成される。プッシュボタン11は、キャップ3の一対の通孔10位置に合致させて一対設けられる。プッシュボタン11は、通孔10を介して、キャップ3外方へ露出される。プッシュボタン11は、キャップ3外側からキャップ3内方へ向かって押圧操作され、これにより弾性リング体4を弾性変形させる。弾性リング体4の内周面には、プッシュボタン11位置に対応させて、錐体面6上のスライド性を向上させるガイド突起12が形成される。
【0024】
キャップ3と容器本体2との間には、係合部が設けられる。係合部は、容器本体2の首部5に形成された係合突起13と、キャップ3の天板部3bから垂下形成され、係合突起13に係脱自在に係合する弾性変形可能な係合片14とから構成される。係合突起13は、首部5の外周面にその周方向全周に亘って形成される。係合片14は、首部5の周方向に沿って適宜間隔で複数形成される。係合突起13と係合片14とは少なくとも、通孔10位置周辺に設ければよい。
【0025】
係合部は、キャップ3を容器本体2に装着すると、係合片14が係合突起13に係合し、この係合状態でキャップ3を容器本体2の首部5に保持する。係合部は、キャップ3の上昇作用で係合片14が係合突起13から離脱し、これによりキャップ3を容器本体2から離脱させる。
【0026】
弾性リング体4と容器本体2との間には、嵌合部が設けられる。嵌合部は、容器本体2の首部5に、係合突起13よりも下方に位置させて形成された嵌合突起15と、弾性リング体4の内周面にその径方向内方へ向けて形成され、嵌合突起15に嵌脱自在に嵌合する嵌合片16とから構成される。嵌合突起15は、首部5の外周面にその周方向全周に亘って形成される。嵌合片16は、弾性リング体4の周方向に、プッシュボタン11と位置をずらして設けられる。特にプッシュボタン11と直交する2箇所に設けることが、弾性リング体4が弾性変形した際に嵌合片16の移動距離を最大にできることから好ましい。嵌合突起15は少なくとも、嵌合片16の位置に合わせて設ければよい。係合突起13と嵌合突起15を共通化して1つにまとめても構わない。この場合は係合片14を間欠に配置し、その隙間に嵌合片16を係合片14の高さと合わせて配置すればよい。
【0027】
嵌合部は、キャップ3を容器本体2に装着すると、係合部の係合とともに、嵌合片16が嵌合突起15に嵌合し、この嵌合状態で弾性リング体4を容器本体2に嵌着させる。嵌合部は、弾性リング体4が弾性変形されると、嵌合片16が首部5の径方向外方へ移動して嵌合突起15から離脱し、これにより弾性リング体4は容器本体2から離脱する。従って、プッシュボタン11で弾性リング体4を弾性変形させて嵌合部を離脱させることにより、キャップ3が上昇されるようになっている。
【0028】
嵌合部の嵌合強度と係合部の係合強度について説明すると、嵌合部は、嵌合片16の弾性作用ではなく、弾性リング体4の弾性変形作用で離脱し、他方、係合部は、弾性変形可能な係合片14の弾性変形作用で離脱するようになっていて、キャップ3の浮き上がりに対して、嵌合部の解除強度は、係合部の解除強度よりも大きくなっている。係合部の解除強度は弾性リング体4に押圧を加えたときにキャップ3が容易に浮き上がりスムーズに離脱する強度がよい。ただし解除強度が弱すぎると、キャップ3と容器本体2の嵌合は、プッシュボタン11に形成した嵌合片16だけに依存することになる。嵌合片16は、最適にはプッシュボタン11に直交する2箇所が好ましいが、それだけではキャップ3が容器本体2に対して傾き易く、容易に離脱しなくても安定的に気密性を保持することはできないため、それを踏まえて解除強度を調整する必要がある。
【0029】
嵌合部の解除強度はプッシュボタン11に押圧を掛けずにキャップ3のみを上方に引っ張っても、嵌合部の不意の離脱を防止するためにできる限り離脱せず、しかしプッシュボタン11に押圧を掛けて弾性リング体4を変形させると、容易に離脱する強度であることが好ましい。これらの強度調整は、係合突起13と係合片14、あるいは嵌合突起15と嵌合片16の掛かり量や接触傾斜角の調整によってなされる。
【0030】
より具体的には、係合部の解除強度は1N〜15N、嵌合部の解除強度は弾性リング体4を径方向に故意に弾性変形させない状態で10N以上であることが好ましい。
【0031】
キャップ3と弾性リング体4との間には、嵌合片16と容器本体2の嵌合突起15が嵌合した状態で、弾性リング体4を径方向に弾性変形させないで無理に嵌合を離脱するような力が加わった場合に、弾性リング体4の嵌合片16が、キャップ3外方へ露出したプッシュボタン11を支点にして下方へ引っ張られて弾性リング体4が上下方向に撓るように変形されるのを防ぐ目的で、弾性リング体4をキャップ3に係止させる係止支持部が設けられる。係止支持部は、キャップ3の筒状胴部3aから径方向内方へ突出形成された鍔片17と、鍔片17がその下方から支持される弾性リング体4の下端とから構成される。弾性リング体4に係止支持される鍔片17は、弾性リング体4とキャップ3を緊密に一体化し、容器本体2に対し嵌合状態にある弾性リング体4を介して、キャップ3のパッキン9を開口部8に気密に密着保持するようになっている。
【0032】
鍔片17は、嵌合片16位置を中心としてその周辺に形成することが好ましい。これにより、弾性変形自在な弾性リング体4の変形の影響を受けることなく、直接嵌合部に反力をとって、キャップ3を開口部8に常に密着させることができる。仮に係止支持部をもたない場合、キャップ3を容器本体2に装着した状態で、プッシュボタン11に押圧を加えることなくこれを離脱するような力が加わると、その力はキャップ3の通孔10に接触するプッシュボタン11を介して弾性リング体4へ伝えられる。弾性リング体4上では、容器本体2との嵌合を保持する2つの嵌合片16が、プッシュボタン11と直交する位置に形成されているため、もともと弾性変形可能に形成された弾性リング体4は、これに作用する上記力によって上下方向に撓りを生じる。すると嵌合は保持されたまま、解除強度の弱い係合部のみが僅かに離れ、容器本体2内部の気密が低下することになる。係止支持部が備わっていれば、弾性リング体4のこの撓りが防止され、容器本体2内部の気密性を高度に保持することができる。
【0033】
次に、第1実施形態にかかるキャップ付き容器1の作用について説明する。まず、キャップ3を組み立てる際には、プッシュボタン11を押圧して弾性変形させた弾性リング体4を、キャップ3の筒状胴部3a内方へ、係止部の鍔片17を乗り越えさせて、押し込み、プッシュボタン11を通孔10位置に合わせる。通孔10からプッシュボタン11が露出して弾性リング体4が弾性復原することで、弾性リング体4がキャップ3に組み付けられる。この組み付けにより、弾性リング体4とキャップ3とが、係止部を介して互いに係止され、緊密に一体化される。
【0034】
キャップ3を容器本体2に装着するときには、容器本体2上方からキャップ3を被せて押し下げる。キャップ3を押し下げると、係合部の係合片14が弾性変形して係合突起13の下側に係合するとともに、弾性リング体4が弾性変形して嵌合片16が嵌合突起15の下側に嵌合する。係合部の係合により、キャップ3は容器本体2に保持され、嵌合部の嵌合により、弾性リング体4が容器本体2に嵌着される。
【0035】
そして特に、係止支持部によって弾性リング体4に対しキャップ3を係止支持してこれらを緊密に一体化することにより、キャップ3と弾性リング体4とのガタツキ及び弾性リング体4の上下方向への撓りが防止され、例えば空輸中の気圧の急激な変化により、キャップ3を押し上げるような強い力が働いても、キャップ3のパッキン9が容器本体2の開口部8に気密に密着保持されて、容器本体2内の気密性が保持される。
【0036】
容器本体2に装着したキャップ3を取り外す際には、片方の手指で一対のプッシュボタン11を両側から挟んで、キャップ3外側からキャップ3内方へ向けて押圧する。プッシュボタン11を押圧すると、弾性リング体4は、キャップ3の鍔片17に妨げられずに、その上で楕円形状に弾性変形する。弾性変形された弾性リング体4は、その嵌合片16が容器本体2の嵌合突起15から後退して嵌合部が離脱し、この離脱と同時に錐体面6に沿って迫り上がり始める。
【0037】
弾性リング体4が迫り上がり始めると、キャップ3が上昇し始めて、キャップ3の係合片14が弾性変形しつつ容器本体2の係合突起13を乗り越えて係合部が離脱する。係合部が離脱するとその後も、弾性リング体4の迫り上がりに伴ってキャップ3が上昇し、これによりキャップ3が容器本体2から取り外される。キャップ3を取り外した後、プッシュボタン11から手指を離せば、弾性リング体4が弾性復原して、プッシュボタン11は押圧操作前の位置に復原する。
【0038】
以上説明した第1実施形態にかかるキャップ付き容器1にあっては、係止支持部、具体的には、弾性リング体4と、その下端に下方から係止されるキャップ3の鍔片17とにより、キャップ3と弾性リング体4とをガタツキなく緊密に一体化することができ、弾性リング体4の嵌合片16がプッシュボタン11を支点にして下方へ引っ張られても弾性リング体4は変形することがなく、キャップ3で開口部8を気密に封止することができて、容器本体2の気密性を向上することができる。
【0039】
従って、第1実施形態にかかるキャップ付き容器1は、容器本体2に収容した揮発性内容物による内圧上昇や、キャップ3だけを持ってキャップ付き容器1を持ち上げる動作などによって、キャップ3が容器本体2に対し浮き上がることを阻止することができ、これによりシール切れを防いで、容器本体2内部の気密性を常時適切に保つことができる。
【0040】
第1実施形態のキャップ付き容器1(実施例容器)と、比較例として実施例容器から係止支持部だけを除去した比較容器1と、比較容器1からさらに弾性リング体4の嵌合片16を除去した比較容器2を用意し、それぞれの容器内部に30mLの水を入れ、キャップをして横に倒した状態で減圧チャンバーに静置し、減圧下での気密性を比較した。
【0041】
結果は表1に示す通り、比較容器2は−45mmHg以上ですべて水漏れし、比較容器1は−250mmHg以上でいずれも水漏れしたのに対し、実施例容器は−500mmHgを超えても水漏れしなかった。このように弾性リング体4に嵌合片16をもつ比較容器1は、係止部のみでキャッピングされる比較容器2に比べ明らかに気密性が優れているが、そこに係止支持部を加えた実施例容器は、比較容器1よりも気密性がさらに向上した容器であることが実証できた。
【0042】
【表1】

【0043】
図6から図10には、第2実施形態にかかるキャップ付き容器が示されている。図6はキャップ付き容器を下方から見た分解斜視図、図7(a)はキャップの側断面図、(b)は弾性リング体の側断面図、図8はキャップの一部破断部分底面図、図9はキャップ付き容器の正面断面図、図10はキャップ付き容器の側断面図である。
【0044】
第2実施形態は、係止支持部を構成する鍔片18を、弾性リング体4に設けるようにした場合である。図示するように、弾性リング体4の内周面には、嵌合片16の上方に位置させて、鍔片18が形成される。他方、キャップ3には、天板部3bから垂下形成された係合片14に、鍔片18が挿通される係止孔19が形成される。係止孔19に鍔片18が挿通されることで、弾性リング体4にキャップ3が係止される係止支持部が構成される。
【0045】
鍔片18は第1実施形態と同様に、嵌合片16位置を中心としてその周辺に形成することが好ましい。これにより、弾性変形自在な弾性リング体4の変形の影響を受けることなく、直接嵌合部に反力をとって、キャップ3を容器本体2の開口部8に常に密着させることができる。
【0046】
第2実施形態では、キャップ3を組み立てるときには、弾性リング体4の鍔片18をキャップ3の係合片14の係止孔19位置に合わせ、弾性リング体4を弾性変形させて、キャップ3の筒状胴部3a内方へ押し込むようにする。プッシュボタン11が通孔10を貫通して弾性リング体4が弾性復原すると、鍔片18が係止孔19に入り込み、係止部が完成される。
【0047】
キャップ3を容器本体4に装着する操作は第1実施形態と同様であって、係止支持部が弾性リング体4とキャップ3とを緊密に一体化するので、これら弾性リング体4とキャップ3とのガタツキを防止でき、キャップ3のパッキン9が開口部8に気密に密着保持され、容器本体2内の気密性が保持される。
【0048】
容器本体2からキャップ3を取り外す操作も第1実施形態と同様であって、弾性リング体4は、係止孔19内で鍔片18が移動することで、スムーズに弾性変形する。このような第2実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。
【0049】
上記実施形態では、迫り上げ手段を構成する錐体面6を首部5下に形成する場合を例示して説明したが、錐体面6を開口部8回りに形成し、係合突起13や嵌合突起15が形成される首部5相当の筒体面を錐体面6下に形成するようにしてもよい。
【0050】
嵌合部と係合部は、上下逆に形成してもよい。さらに、嵌合部を形成する嵌合突起15および係合部を形成する係合突起13を一体の突起として形成し、この一つの突起に対して弾性リング体4の嵌合片16を嵌合したり、キャップ3の係合片14を係合したりするように構成してもよい。さらに、鍔片17,18は、上記第1および第2実施形態を組み合わせて、キャップ3と弾性リング体4の双方に形成するようにしてもよい。
【0051】
また、鍔片18及び係止孔19の形成位置は、プッシュボタン11をキャップ3の通孔10に組み付ける際の弾性リング体4の弾性変形が鍔片18の係止孔19への係止に支障とならない限り、所望の位置に設定すれば良い。
【0052】
また、弾性リング体4に鍔片18を形成し、キャップ3の係合片14に係止孔19を形成したが、逆の構成として、弾性リング体4に係止孔19を形成し、係合片14に鍔片18を形成するようにしても良い。
【0053】
また、キャップ3の組み立て方としては、プッシュボタン11を先に通孔10に差し込んで、その後に係止孔19に鍔片18を係止しても、その逆でも良い。
【0054】
第1及び第2実施形態にかかるキャップ付き容器1はいずれも、上下方向にキャップ3の脱着が可能であって、容器本体2の開閉操作をきわめて簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1 キャップ付き容器
2 容器本体
3 キャップ
4 弾性リング体
6 錐体面
8 開口部
10 通孔
11 プッシュボタン
13 係合突起
14 係合片
15 嵌合突起
16 嵌合片
17,18 鍔片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が上端に形成され、内容物を内部に収容する容器本体と、
通孔が互いに向かい合わせて形成され、上記開口部を封止するために上記容器本体に上方から装着されるキャップと、
該キャップ内部に、当該キャップと上記容器本体との間に位置させて組み付けられ、径方向に弾性変形自在な弾性リング体と、
これら弾性リング体と容器本体との間に設けられ、これら弾性リング体及び容器本体の少なくともいずれか一方に下方へ向かって拡張形成された錐体面を有して、該弾性リング体がその弾性変形に伴って当該錐体面に沿って迫り上がることにより、上記キャップを上昇させる迫り上げ手段と、
上記弾性リング体に形成され、上記通孔を介して上記キャップ外方へ露出されて、押圧操作されることにより該弾性リング体を弾性変形させるプッシュボタンと、
上記キャップと上記容器本体との間に設けられ、係合状態で該キャップを該容器本体に保持すると共に、当該キャップの上昇で該キャップを該容器本体から離脱させる係合部と、
上記弾性リング体と上記容器本体との間に設けられ、嵌合状態で該弾性リング体を該容器本体に嵌着させると共に、該弾性リング体をその弾性変形で該容器本体から離脱させる嵌合部と、
上記キャップと上記弾性リング体との間に設けられ、該弾性リング体の上下方向の変形を防止し当該キャップを上記開口部に気密に密着保持するために、該弾性リング体を該キャップに係止させる係止支持部とを備えたことを特徴とするキャップ付き容器。
【請求項2】
前記係止支持部は、前記キャップに形成され、前記弾性リング体に係止される鍔片であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ付き容器。
【請求項3】
前記係止支持部は、前記弾性リング体に形成され、前記キャップを係止する鍔片であることを特徴とする請求項1に記載のキャップ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−86861(P2012−86861A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234260(P2010−234260)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000160223)吉田プラ工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】