説明

キャップ

【課題】 厚肉のキャップは、通常のキャップに比べて重量感に優れるため、高級感を持たせることが出来るが、容器体等への嵌合時に隙間を生じてシール性が劣ったり、又容器体口頸部外面に対する係合が不完全となり易かったので、それ等欠点を除去した。
【解決手段】 キャップの周壁12を、内周壁12a 外面へ外周壁12b を嵌合させて内外二重壁で形成し、その周壁内へ弾性リング21を緊密に嵌合させ、その弾性リング一部内面を周壁12内面へ露出させて、該露出部分内面へ、周壁12内方へ突出させて第2係合突条27を横設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器体の口頸部等外面へ打込み嵌合させるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
容器本体と該容器本体口頸部に嵌合されるキャップとからなる容器として、容器本体口頸部上方からの押し圧によりキャップを嵌合させる打ち込み式の容器が知られている。
【0003】
例えば、容器体口頸部の外周面に係合突条を周設しておき、キャップ内周の内面から突出させた複数の弾性突部が、上記口頸部外周への嵌合の際、上記係合突条を乗り越えて係合突条下面へ係合し、また取り外しの際もその係合突条を乗り越えするように設けたキャップを有しているものが挙げられる(特許文献1)。
【0004】
また、蓋体内に可撓性を有する弾性リングを弾性変形可能なクリアランスを介在させて収納し、この弾性リングの内周に互いに対向する位置に容器本体の口部外周に設けた突条に係合させる突片を設けたもの(特許文献2)や、内キャップの円筒状周壁へ係合リングを嵌合させ、該係合リング内面から透孔を通って円筒状周壁内方へ突出する弾性小リング状部の内方リング状部分を容器体口頸部の係合突条下面へ係合させたもの(特許文献3)が存在する。
【特許文献1】実公昭49−8642号公報
【特許文献2】実公平3−22139号公報
【特許文献3】実公平5−2452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高級な化粧品を収納する容器体のキャップとして、高級感、重壮感を感じさせるよう肉厚のキャップや、異なる複数の材質を組み合わせた意匠性の高いキャップなどが好まれて使用されている。
【0006】
特許文献1に記載されるように、比較的肉薄のキャップが用いられている場合には、キャップ自体が弾性を有することから、キャップと容器本体との嵌合はスムーズに行うことができる。
【0007】
しかしながら、肉厚のキャップや複数材料を組み合わせられたキャップでは、キャップ自体の厚みのため十分な弾性が得られず、嵌合しにくくなる。また、寸法精度を高めたとしても、容器体口頸部外周面等へのキャップ嵌合状態においては多少のズレが生じやすく、嵌合状態が緩い場合にはガタつき易く、落下した場合には破損の恐れがある。また硬い場合はそのキャップ着脱が困難となる欠点が生じていた。
【0008】
そこで、特許文献2に記載されるように、蓋体内に可撓性を有する弾性リングを弾性変形可能なクリアランスを介在させて収納し、この弾性リングの内周に互いに対向する位置に容器本体の口部外周に設けた突条に契合させる突片を設けたものや、特許文献3に記載されるように内キャップの円筒状周壁へ係合リングを嵌合させ、該係合リング内面から透孔を通って円筒状周壁内方へ突出する弾性小リング状部の内方リング状部分を容器体口頸部の係合突条下面へ係合させたものが存在し、弾性リングの弾性により、キャップと本体容器との嵌合をスムーズのものとしているものがある。
【0009】
しかしながら、特許文献2で記載される弾性リングを用いた場合、キャップの円形内周壁と四角形状外周壁との間に口径差が必要であり、デザイン上の制限が大きいものであった。また、特許文献3で記載される弾性リングを用いた場合には、内周壁が肉厚の場合には、弾性小リング状部が径方向に伸びた状態となるため、構造的に弾性の調整が困難で、嵌合が不安定になり易く、キャップの係合が弱くなり、キャップが外れやすい構造となってしまう。
【0010】
また、円形内周壁に透孔を開ける必要があることから、密封性が悪く、容器体内へ収納する内容物への配合成分や剤形が制限されてしまう場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような肉厚キャップにおける欠点を除去して、上記容器体口頸部等被嵌合部へのキャップの着脱を適正に行えるとともに、デザイン上の自由度、さらに収納内容物の選択の自由度が高いキャップを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の手段として内周壁12a 外面へ外周壁12b を嵌合させた二重筒で周壁12を形成したキャップ本体11と、該周壁12内へ緊密に嵌合された弾性リング21とからなり、
上記弾性リング21の一部内面を周壁12内面へ露出させて、該露出部分へ周壁12内方へ突出する第2係合突条27を横設した。
【0013】
第2の手段として、上記第1の手段を有すると共に上記弾性リングを嵌合させた凹溝15を、内周壁12a の下部へ穿設した内面および下面開放の凹部と、該凹部上面の内端部から垂設した第1係合筒部17と、内周壁12a 下方へ垂設した外周壁12b 部分から内周壁下端を支持して内方突出する内向きフランジ14と、該フランジ内端から上記第1係合筒部17下端との間に間隙をおいて起立する第2係合筒部19とで、縦断面横向き凸字形状に形成し、弾性リングも上記空間内へ嵌合させた縦断面横向き凸字形状として凸字の上面部分を周壁内面へ露出させて形成した。
【0014】
第3の手段として上記第1の手段を有すると共に上記弾性リング21を嵌合させた空間を、内周壁12a の下部内外両面間に穿設した下端面開口縦溝31で形成すると共に、弾性リング21内方の周壁部分を間欠的に切欠いて弾性リングの周壁内面露出部分となし、
かつ内周壁12a 下方へ垂設した外周壁部分から内方突出させた内向きフランジ14で、内周壁12a の下面および弾性リング21の下面を支持させた。
【0015】
第4の手段として、上記第1、第2、又は第3の手段を有すると共に上記弾性リング21の縦断面形状を、少なくとも第2係合突条27を有する弾性リング部分外面側に外面解放の凹部33を設けた。
【発明の効果】
【0016】
本願発明によれば、キャップの周壁の厚みを大とした場合においても、その周壁に対して弾性リングを確実に保持させ、弾性リングと容器本体の中心がずれることがなく、弾性リングのガタつきがない。そして、容器体口頸部等の被嵌合体に対するキャップの嵌合をスムーズに行うことが可能となる。また、キャップの内周壁と外周壁との間に必要とされる径差が小さいため、デザイン上の自由度が高い。
【0017】
さらに、弾性リング21に起立筒22弾性変形用の逃げ空間33を設けることにより、外方への弾性変形が容易となって、被嵌合体が有する第1係合突条を、上記弾性リングの第2係合突条が強制乗り越えをする際に、その乗り越えが容易となり、被嵌合体の第1係合突条下面に対する弾性リング第2係合突条上面の係合もさらに確実とすることができる。
【0018】
しかも、起立筒部の全周へ第2係合突条27を周設させれば、その全周を装着筒3等の外面全周へ圧設させて気密にシールすることが可能となり、選択可能な内容物の自由度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下図面について説明すると、図1から図4は第1実施形態を示す。1はキャップ被嵌合体の一例として示す縦形ポンプ付き容器で、2はその容器体、3はその容器体の口頸部外面へ嵌合させた装着筒、4は容器体内へ垂設されたシリンダ内から上方付勢されて起立する作動部材上端のノズル5付き押下げヘッドである。
【0020】
11は上記装着筒3外面へ周壁12を嵌合させた、合成樹脂製のキャップ本体で、図示例において、該キャップ本体は頂壁13外周から内周壁12a を垂下し、又その内周壁外面へは上下両面開口の筒状をなす外周壁12b を嵌合させて形成している。外周壁12b は、該外周壁上方へ内周壁12a 上部を露出させており、又内周壁下端よりも下方まで垂下させて、該下方垂下部分から内向きフランジ14を突出させて内周壁下端面を覆合させている。
【0021】
周壁12の下部内面には凹溝15を周設する。該凹溝は、内周壁12a の下部に穿設した、内面および下面開放の凹部と、該凹部上面の内端部から垂設した第1係合筒部17と、内壁部12a 下方へ垂設した外周壁12b 部分から内周壁下端を支持して内方突出する内向きフランジ14と、該フランジ内端から第1係合筒部17下端との間に間隙をおいて起立する第2係合筒部19とで、縦断面横向き凸字形状に形成する。
【0022】
凹溝奥壁20上部と第1係合筒部17間には第1間隙16が、又凹溝奥壁20下部と第2係合筒部19との間には第2間隙18がそれぞれ形成される。
【0023】
弾性リング21は、上記凹溝開口へ露出させる起立筒部22の上下両端から外方突出させた上下両壁23,24 を介して第1、第2外向きフランジ25,26 を上下各方向へ突出させ、これ等第1、第2外向きフランジを、上記第1、第2間隙16,18 内へ嵌合させている。起立筒部22の上下方向中間部内面には第2係合突条27を付設し、弾性リング21の外面側において、少なくとも第2係合突条27の付設された位置に対応する部分には、凹部33を形成し、該凹部と凹部溝奥壁20とにより起立筒部22の弾性変形用逃げ空間を形成する。
【0024】
図示例において該第2係合突条は図4が示すように周方向三ヶ所へほぼ等間隔に等長として付設しているが、起立筒部22内面の全周へ設けてもよい。このように起立筒部の全周へ第2係合突条27を周設させれば、その前周を装着筒3等の外面全周へ圧設させて気密にシールすることが可能となる。また、上記のように数カ所に該第2係合突条27を設けた場合は、ほぼ等間隔に設ける事によりキャップと容器体との嵌合時のガタつきが低減されるため好ましい。そして、第2係合突条27の大きさ、数を調整することで、既述の装着筒第1係合突条6との強制乗り越えの際、その乗り越えのし易さを調整することが出来、スムーズな開閉が可能となる。
【0025】
図5、図6は第2実施形態を示す。既述第1実施形態と同一部分については同一符号を付することで説明を省略し、相違部分についてだけ説明すると、内周壁12a の下部内外両面間には下端面開口の縦溝31を周設しており、その縦溝内方の内周壁部分へはほぼ等間隔に複数の切欠き32を穿設している。該切欠きは内周壁12a 下部の内方部分の下端から上端までの全体を切除するのではなく、その切欠き上方へ、後述弾性リングの上部内面覆合壁部を多少残して形成するとよい。
【0026】
上記縦溝内へは短筒状の弾性リング21を緊密に嵌合させる。既述切欠き32内に露出する弾性リング部分の上下方向中間部内面には、周壁12内方へ突出させて係合突条27を横設させる。
【0027】
上記内周壁12a 外面へ嵌合させた外周壁12b は内周壁12a よりも下方まで垂下させて、該垂下部分内面へ付設した内向きフランジ14で内周壁12a の下面および弾性リング21の下面を支持させる。尚キャップの全体形状は図1とほぼ同じでよい。
【0028】
既述実施形態において、キャップ周壁を縦形ポンプ式容器の装着筒3外面へ嵌合させたが、通常の容器体の口頸部外面へ嵌合させてもよい。又キャップの内周壁12a および外周壁12b は、AS、ABS、PET、PBT、PEN、PCT、PCTA、PC、PS、PP、PE、アイオノマー、アクリル、金属等で形成でき、又弾性リング21は、PP、PE、PET、ABS、PVC、ゴム(天然、NBR、イソプレン、シリコーン、ブチル、ニトリル、ウレタン等)等で形成することが出来る。又外周壁だけを金属とすることも出来る。
キャップの肉厚は、約4mm〜25mm程度とする。
【0029】
頂壁付きの内周壁12a と、上下両面開口の外周壁12b とは色違いとしてもよく、このようにすればキャップの装飾効果を更に高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】容器嵌合状態で示す、第1実施形態本発明キャップの断面図である。
【図2】図1キャップ下部の分解断面図である。
【図3】図1キャップ主要部材の要部拡大断面図である。
【図4】図3主要部材の平面図である。
【図5】第2実施形態で示す、キャップ要部の断面図である。
【図6】容器嵌合状態で示す、図5キャップの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
2 容器体 6 第1係合突条
11 キャップ本体 12 周壁
12a 内周壁 12b 外周壁
14 内向きフランジ 15 凹溝
16 第1間隙 18 第2間隙
19 第2係合筒部 21 弾性リング
22 起立筒部 25 第1外向きフランジ
26 第2外向きフランジ 27 第2係合突条
31 縦溝 32 切欠き
33 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周壁12a 外面へ外周壁12b を嵌合させた二重筒で周壁12を形成したキャップ本体11と、該周壁12内へ緊密に嵌合された弾性リング21とからなり、
上記弾性リング21の一部内面を周壁12内面へ露出させて、該露出部分へ周壁12内方へ突出する第2係合突条27を横設した
ことを特徴とするキャップ。
【請求項2】
上記弾性リングを嵌合させた凹溝15を、内周壁12a の下部へ穿設した内面および下面開放の凹部と、該凹部上面の内端部から垂設した第1係合筒部17と、内周壁12a 下方へ垂設した外周壁12b 部分から内周壁下端を支持して内方突出する内向きフランジ14と、該フランジ内端から上記第1係合筒部17下端との間に間隙をおいて起立する第2係合筒部19とで、縦断面横向き凸字形状に形成し、弾性リングも上記空間内へ嵌合させた縦断面横向き凸字形状として凸字の上面部分を周壁内面へ露出させて形成した
ことを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
上記弾性リング21を嵌合させた空間を、内周壁12a の下部内外両面間に穿設した下端面開口縦溝31で形成すると共に、弾性リング21内方の周壁部分を間欠的に切欠いて弾性リングの周壁内面露出部分となし、
かつ内周壁12a 下方へ垂設した外周壁部分から内方突出させた内向きフランジ14で、内周壁12a の下面および弾性リング21の下面を支持させた
ことを特徴とする、請求項1記載のキャップ。
【請求項4】
上記弾性リング21の縦断面形状を、少なくとも第2係合突条27を有する弾性リング部分外面側に外面開放の凹部33を設けた形状とする請求項1、2又は3記載のキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82832(P2006−82832A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268314(P2004−268314)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(504180206)株式会社カネボウ化粧品 (125)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】