説明

キャパシタ及びその製造方法

【課題】高温度処理プロセスを経てもキャパシタとしての特性変化が少ないような耐熱性を向上させたキャパシタとその製造方法を提供する。
【解決手段】弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタにおいて、固体電解質層は、カチオン化された導電性高分子(a)と、ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、結合剤(d)と、糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)と、を含み、固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ電解キャパシタ、タンタル電解キャパシタ、ニオブ電解キャパシタなどキャパシタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のデジタル化に伴い、電子機器に用いられるキャパシタは高周波領域におけるインピーダンス(等価直列抵抗)を低下させることが要求されている。従来から、この要求に対応すべく、アルミニウム、タンタル、ニオブなどの弁金属の酸化皮膜を誘電体とした、所謂、機能性キャパシタ(以下、キャパシタと略す。)が使用されている。
【0003】
このキャパシタの構造は、特許文献1に示されるように、弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極の表面を酸化して形成した誘電体層と、導電性の固体電解質層と、カーボン層、銀層などが積層された陰極とを有するものが一般的である。固体電解質層としては、π共役系導電性高分子を含有する導電性膜を用いることがある。
【0004】
このようなπ共役系導電性高分子を含有する導電性膜を用いた技術としては、前記構成の固体電解質を含むキャパシタにおいて、該固体電解質が窒素含有芳香族環式化合物を添加したπ共役系導電性高分子を必須成分とする組成物から成るものが提案されている(特許文献2)。この固体電解質を構成する組成物は、キャパシタの等価直列抵抗(以下、ESRという。)低下に寄与し、キャパシタを簡便に製造できるという特徴を有する。また、該固体電解質が中和されpH3〜13に調整されたπ共役系導電性高分子を必須成分とする組成物であるキャパシタも提案され、漏れ電流が小さく、静電容量が大きいという特徴を有する(特許文献3)。
【0005】
さらに、中和されpH3〜9に調整されたπ共役系導電性高分子、ポリエーテル、低抵抗化剤を必須成分とする組成物を誘電体外層に直接接させるキャパシタ用の固体電解質も提案されている(特許文献4)。この組成物は、キャパシタの低ESR化、高容量化と共に、従来の電解若しくは化学重合における固体電解質の作成方法では達し得なかった高耐圧素子が実現できるという特徴を有する。
【0006】
なお、特許文献5及び特許文献6にも、固体電解質としてπ共役系導電性高分子を用いる技術が開示されているが、具体的な実施例としては従来のエチレンジオキシチオフェン(EDOT)の化学重合によって得られる性能に比して大幅な向上は得られていない。
【0007】
一方、固体電解質の導電性を向上させる高導電化剤として、ソルビトール及びマンニトールを使用する技術が提案されている(引用文献7、引用文献8)。しかし、これらの技術は、ハンダリフローなどの実装工程の高温プロセスでのキャパシタの特性変化について課題があった。
【0008】
また、インシツ(in−situ)重合法で固体電解質を形成させる固体電解キャパシタにおいて、高温での面実装における水分による圧力上昇を低減するための技術が提案されている(特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−37024号公報
【特許文献2】特開2006−100774号公報
【特許文献3】特開2006−287182公報
【特許文献4】特開2008−109065号公報
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0064376号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2008/0005878号公報
【特許文献7】特表2009−508341号公報
【特許文献8】特表2009−508342号公報
【特許文献9】特開2001−148331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本願発明はこれらの発明を踏まえなされたものであり、列記した静電容量が大きくかつESRが低くまた、漏れ電流が小さい、耐電圧が高いという特徴を維持させ、更にリフロー工程における高温度処理プロセスを経てもキャパシタとしての特性変化が少ない、耐熱性をも向上させたキャパシタとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様によれば、弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタにおいて、固体電解質層は、カチオン化された導電性高分子(a)と、ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤(d)と、糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)と、を含み、固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含むキャパシタを提供する。
【0012】
本発明の他の態様によれば、弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタの製造方法において、固体電解質層は、カチオン化された導電性高分子(a)と、ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤(d)と、糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)と、溶媒とを含み、固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含み、pH3〜12に調整された導電性高分子溶液を、浸漬または塗布し、乾燥することによって、7質量%以下の水分(f)を含むように形成されたキャパシタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、キャパシタの高い静電容量、低いESR、高い耐電圧等の優れた特徴を維持させ、更に耐熱性をも向上させることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のキャパシタにおける一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明のキャパシタにおける他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、図面における寸法、比率等は現実のものとは異なり、以下の説明を参酌して判断すべきことに留意すべきである。
【0016】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための構成や方法を例示するものであって、この発明の実施の形態は、発明の内容を下記のものに特定するものでない。この発明の実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
<キャパシタ>
本発明のキャパシタの一実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のキャパシタの構成を示す図である。本実施形態のキャパシタ10は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と、陽極11の表面が酸化されて形成された誘電体層12と、誘電体層12の表面に形成された固体電解質層13と、陰極14とを有して概略構成されている。
【0019】
(陽極)
陽極11をなす弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。これらのうち、アルミニウム、タンタル、ニオブが好適である。
【0020】
陽極11の具体例としては、アルミニウム箔をエッチングして表面積を増加させた後、その表面を酸化処理したものや、タンタル粒子やニオブ粒子の焼結体表面を酸化処理してペレットにしたものが挙げられる。このように酸化処理された陽極11は表面に凹凸が形成されている。
【0021】
(誘電体層)
誘電体層12は、例えば、アジピン酸ジアンモニウム水溶液などの電解液中にて、陽極11の表面を陽極酸化することで形成することにより得られる。そのため、図1に示すように、誘電体層12は、陽極11の凹凸の表面に沿っている。
【0022】
(固体電解質層)
固体電解質層13は、カチオン化された導電性高分子(a)と、ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤(d)と、糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)とを含み、固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含むものである。固体電解質層13の厚さとしては、1〜100μmが好ましい。
【0023】
[導電性高分子]
導電性高分子には、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば使用できる。例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。重合の容易さ、空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。
【0024】
導電性高分子は無置換のままでも、充分な導電性を得ることができるが、導電性をより高めるためには、アルキル基、カルボキシ基、スルホ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の官能基を導電性高分子に導入することが好ましい。
【0025】
このような導電性高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリ(3−メチルピロール)、ポリ(3−エチルピロール)、ポリ(3−n−プロピルピロール)、ポリ(3−ブチルピロール)、ポリ(3−オクチルピロール)、ポリ(3−デシルピロール)、ポリ(3−ドデシルピロール)、ポリ(3,4−ジメチルピロール)、ポリ(3,4−ジブチルピロール)、ポリ(3−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルピロール)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルピロール)、ポリ(3−ヒドロキシピロール)、ポリ(3−メトキシピロール)、ポリ(3−エトキシピロール)、ポリ(3−ブトキシピロール)、ポリ(3−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール)、ポリ(チオフェン)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−エチルチオフェン)、ポリ(3−プロピルチオフェン)、ポリ(3−ブチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルチオフェン)、ポリ(3−オクチルチオフェン)、ポリ(3−デシルチオフェン)、ポリ(3−ドデシルチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルチオフェン)、ポリ(3−ブロモチオフェン)、ポリ(3−クロロチオフェン)、ポリ(3−ヨードチオフェン)、ポリ(3−シアノチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジブチルチオフェン)、ポリ(3−ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−エトキシチオフェン)、ポリ(3−ブトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3−デシルオキシチオフェン)、ポリ(3−ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3−オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−ブテンジオキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−メトキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−エトキシチオフェン)、ポリ(3−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン)、ポリアニリン、ポリ(2−メチルアニリン)、ポリ(3−イソブチルアニリン)、ポリ(2−アニリンスルホン酸)、ポリ(3−アニリンスルホン酸)等が挙げられる。
【0026】
中でも、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(N−メチルピロール)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)から選ばれる1種又は2種からなる(共)重合体が抵抗値、反応性の点から好適に用いられる。さらには、ポリピロール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性がより高い上に、耐熱性が向上する点から、より好ましい。
【0027】
上記導電性高分子は、溶媒中、導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリマーアニオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0028】
[前駆体モノマー]
前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0030】
[溶媒]
導電性高分子の製造で使用する溶媒としては特に制限されず、前記前駆体モノマーを溶解又は分散しうる溶媒であり、酸化剤及び酸化触媒の酸化力を維持させることができるものであればよい。例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよいし、他の有機溶媒との混合物としてもよい。
【0031】
[水分]
本実施形態の固体電解質には、水分が含まれる。適量の水分の存在によって、静電容量が向上すると共に、ESRを低くすることができる。これは、本実施形態の固体電解質が、ポリスチレンスルホン酸などのポリマーアニオンを多量に含んでいることに関係するものと推察される。水分の含有量は7質量%以下であれば、好適に使用することができる。好ましくは5質量%以下である。4質量%以下がより好ましい。水分の含有量が7質量%より多くなると固体電解質の膜質が弱くなる傾向があり、固体電解キャパシタの高温耐熱が悪くなり、長期耐久で静電容量とESRが劣化しやすくなる。また、水分が0.1質量%以下になると静電容量の低下が見られる。本発明では水分量が0.1〜7質量%の範囲であれば、静電容量とESRが両立することが可能である。さらに、水分量が4質量%以下に調整することで、優れた長期耐久性が発現できる。
【0032】
固体電解質中の水分量の調整は、乾燥条件や乾燥雰囲気等によって制御することが可能である。例えば、乾燥温度を100〜300℃の温度範囲において行うことが可能である。また、減圧雰囲気においても好適に水分の含有量調整が可能である。
【0033】
[酸化剤及び酸化触媒]
酸化剤、酸化触媒としては、前記前駆体モノマーを酸化させて導電性高分子を得ることができるものであればよく、例えば、ぺルオキソ二硫酸アンモニウム、ぺルオキソ二硫酸ナトリウム、ぺルオキソ二硫酸カリウム等のぺルオキソ二硫酸塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化合物、酸化銀、酸化セシウム等の金属酸化物、過酸化水素、オゾン等の過酸化物、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、酸素等が挙げられる。
【0034】
[ポリマーアニオン]
ポリマーアニオンは、高分子の側鎖にアニオン基を有する高分子を指す。
【0035】
アニオン基としては、導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
【0036】
高分子としては、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位からなるもの、またはアニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
【0037】
このポリマーアニオンのアニオン基は、導電性高分子に対するドーパントとして機能して、導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
【0038】
ポリマーアニオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
【0039】
これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸が好ましい。ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸は、熱エネルギーを吸収して自ら分解することにより、π共役系導電性高分子成分の熱分解が緩和されるため、耐熱性、耐環境性に優れる。
【0040】
ポリマーアニオンの重合度は、モノマー単位が10〜100,000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10,000個の範囲がより好ましい。
【0041】
ポリマーアニオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有さないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
【0042】
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
【0043】
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。得られたポリマーがポリマーアニオン塩である場合には、ポリマーアニオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0044】
アニオン基含有重合性モノマーは、モノマーの一部が一置換硫酸エステル基、カルボキシ基、スルホ基等で置換されたものであり、例えば、置換若しくは未置換のエチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のスチレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のメタクリレートスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のアクリルアミドスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のシクロビニレンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のブタジエンスルホン酸化合物、置換若しくは未置換のビニル芳香族スルホン酸化合物が挙げられる。
【0045】
具体的には、ビニルスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタリルスルホン酸及びその塩類、スチレンスルホン酸及びその塩類、メタリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、アリルオキシベンゼンスルホン酸及びその塩類、α−メチルスチレンスルホン酸及びその塩類、アクリルアミド−t−ブチルスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、シクロブテン−3−スルホン酸及びその塩類、イソプレンスルホン酸及びその塩類、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−2−スルホン酸及びその塩類、1−メチル−1,3−ブタジエン−4−スルホン酸及びその塩類、アクリル酸エチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリル酸プロピルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、アクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アリル酸エチルスルホン酸(CHCHCH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、アリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHCHCH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸エチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸プロピルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸−n−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−(CH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸−t−ブチルスルホン酸(CHCH(CH−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸フェニレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C−SOH)及びその塩類、4−ペンテン酸ナフタレンスルホン酸(CHCH(CH−COO−C10−SOH)及びその塩類、メタクリル酸エチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸プロピルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸−t−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−C(CHCH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸−n−ブチルスルホン酸(CHC(CH)−COO−(CH−SOH)及びその塩類、メタクリル酸フェニレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C−SOH)及びその塩類、メタクリル酸ナフタレンスルホン酸(CHC(CH)−COO−C10−SOH)及びその塩類、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらを2種以上含む共重合体であってもよい。
【0046】
アニオン基を有さない重合性モノマーとしては、エチレン、プロぺン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、p−メトキシスチレン、α−メチルスチレン、2−ビニルナフタレン、6−メチル−2−ビニルナフタレン、1−ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、ビニルアセテート、アクリルアルデヒド、アクリルニトリル、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾ−ル、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニルブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸エチルカルビトール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリロイルモルホリン、ビニルアミン、N,N−ジメチルビニルアミン、N,N−ジエチルビニルアミン、N,N−ジブチルビニルアミン、N,N−ジ−t−ブチルビニルアミン、N,N−ジフェニルビニルアミン、N−ビニルカルバゾール、ビニルアルコール、塩化ビニル、フッ化ビニル、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、2−メチルシクロヘキセン、ビニルフェノール、1,3−ブタジエン、1−メチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,4−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−オクチル−1,3−ブタジエン、2−オクチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン、2−ヒドロキシ−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
【0047】
これらアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合することで溶媒溶解性をコントロールすることができる。
【0048】
導電性複合粒子中のポリマーアニオン量は、導電性高分子を溶媒に安定して溶解又は分散させることが可能であれば、好適に使用でき、特に限定しない。好ましくは、ポリマーアニオン中のアニオン基のモル量が導電性高分子のモル量に対し、1〜5倍の範囲である。この範囲であれば、導電性複合粒子が高い導電性と安定した分散性が両立可能となる。1倍より少なくなると分散性が悪くなる傾向があり、5倍より多くなると導電性が低下する傾向がある。
【0049】
[モノマーアニオン]
モノマーアニオンは、アニオン基を有し、導電性高分子のドーパントとして機能する。
【0050】
有機カルボン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にカルボキシ基を一つ又は二つ以上を含むものを使用できる。例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ニトロ酢酸、トリフェニル酢酸等が挙げられる。
【0051】
有機スルホン酸としては、脂肪族、芳香族、環状脂肪族等にスルホ基を一つ又は二つ以上含むもの、又は、スルホ基を含む高分子を使用できる。
【0052】
スルホ基を一つ含むものとして、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、1−テトラデカンスルホン酸、1−ペンタデカンスルホン酸、2−ブロモエタンスルホン酸、3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロエタンスルホン酸、コリスチンメタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、3−アミノプロパンスルホン酸、N−シクロヘキシル−3−アミノプロパンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキチルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、o−アミノベンゼンスルホン酸、m−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノ−2−クロロトルエン−5−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−5−メトキシ−2−メチルベンゼンスルホン酸、2−アミノ−5−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、5−アミノ−2−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アミノ−3−メチルベンゼン−1−スルホン酸、4−アセトアミド−3−クロロベンゼンスルホン酸、4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、4−アミノ−1−ナフタレンスルホン酸、8−クロロナフタレン−1−スルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン重縮合物、アントラキノンスルホン酸、ピレンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0053】
スルホ基を二つ以上含むものとしては、例えば、エタンジスルホン酸、ブタンジスルホン酸、ペンタンジスルホン酸、デカンジスルホン酸、o−ベンゼンジスルホン酸、m−ベンゼンジスルホン酸、p−ベンゼンジスルホン酸、トルエンジスルホン酸、キシレンジスルホン酸、クロロベンゼンジスルホン酸、フルオロベンゼンジスルホン酸、ジメチルベンゼンジスルホン酸、ジエチルベンゼンジスルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸、アニリン−2,5−ジスルホン酸、3,4−ジヒドロキシ−1,3−ベンゼンジスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、メチルナフタレンジスルホン酸、エチルナフタレンジスルホン酸、ペンタデシルナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−5−ヒドロキシ−2,7−ナフタレンジスルホン酸、1−アセトアミド−8−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、2−アミノ−1,4−ベンゼンジスルホン酸、1−アミノ−3,8−ナフタレンジスルホン酸、3−アミノ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、8−アミノ−1−ナフトール−3,6−ジスルホン酸、4−アミノ−5−ナフトール−2,7−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオ−シアノトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、4−アセトアミド−4’−マレイミジルスチルベン−2,2’−ジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ジナフチルメタンジスルホン酸、アントラキノンジスルホン酸、アントラセンスルホン酸等が挙げられる。また、これらの金属塩も使用できる。
【0054】
[pH調整剤]
前記ポリマーアニオン塩、モノマーアニオン塩は、pH調整剤を用いて構成することができ、pHを3〜9に調整されている。pH調整は、pH調整剤により適宜行えばよく、pH調整剤としては、例えばアルカリ類、アミン類、イミダソール類、ピリジン類等が使用できる。
【0055】
アルカリ類としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。また、アミン類としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、トリエチルアミンのような脂肪族アミン、アニリン、ベンジルアミン、ピロール、イミダゾール、ピリジンのような芳香族アミンもしくはこれらの誘導体、ピロール、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシド等の金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0056】
これらの中でも、弱塩基の脂肪族アミン類、イミダゾール類、ピリジン類、金属アルコキシド類が好ましい。
【0057】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0058】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0059】
[導電性向上剤]
固体電解質層は、導電性がより高くなることから、導電性向上剤をさらに含有することが好ましい。ここで、導電性向上剤は、導電性高分子又は導電性高分子のドーパントと相互作用して、導電性高分子の電気伝導度を向上させるものである。
【0060】
導電性向上剤としては、固体電解質層13の導電性がより向上するため、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、2個以上のカルボキシ基を有する化合物、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物からなる群より選ばれる1種類以上の化合物であることが好ましい。また、該導電性向上剤が、導電性高分子、ポリマーアニオン塩及び/又はアニオン塩の総量より多く含まれることが好ましい。
【0061】
・窒素含有芳香族性環式化合物
窒素含有芳香族性環式化合物とは、少なくとも1個以上の窒素原子を含む芳香族性環を有し、芳香族性環中の窒素原子が芳香性環中の他の原子と共役関係を持つものである。
【0062】
このような窒素含有芳香族性環式化合物としては、例えば、一つの窒素原子を含有するピリジン類及びその誘導体、二つの窒素原子を含有するイミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体、ピラジン類及びその誘導体、三つの窒素原子を含有するトリアジン類及びその誘導体等が挙げられる。溶媒溶解性等の観点からは、ピリジン類及びその誘導体、イミダゾール類及びその誘導体、ピリミジン類及びその誘導体が好ましい。
【0063】
また、窒素含有芳香族性環式化合物は、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等の置換基が環に導入されたものでもよいし、導入されていないものでもよい。また、環は多環であってもよい。
【0064】
ピリジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、4−エチルピリジン、N−ビニルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3−シアノ−5−メチルピリジン、2−ピリジンカルボン酸、6−メチル−2−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボキシアルデヒド、4−アミノピリジン、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4−ヒドロキシピリジン、4−ピリジンメタノール、2,6−ジヒドロキシピリジン、2,6−ピリジンジメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸メチル、2−ヒドロキシ−5−ピリジンメタノール、6−ヒドロキシニコチン酸エチル、4−ピリジンメタノール、4−ピリジンエタノール、2−フェニルピリジン、3−メチルキノリン、3−エチルキノリン、キノリノール、2,3−シクロペンテノピリジン、2,3−シクロヘキサノピリジン、1,2−ジ(4−ピリジル)エタン、1,2−ジ(4−ピリジル)プロパン、2−ピリジンカルボキシアルデヒド、2−ピリジンカルボン酸、2−ピリジンカルボニトリル、2,3−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,6−ピリジンジカルボン酸、3−ピリジンスルホン酸等が挙げられる。
【0065】
イミダゾール類及びその誘導体の具体的な例としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ウンデジルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、N−メチルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、N−アリルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、4,5−イミダゾールジカルボン酸、4,5−イミダゾールジカルボン酸ジメチル、ベンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール、2−アミノべンズイミダゾール−2−スルホン酸、2−アミノ−1−メチルべンズイミダゾール、2−ヒドロキシべンズイミダゾール、2−(2−ピリジル)べンズイミダゾール等が挙げられる。
【0066】
ピリミジン類及びその誘導体の具体的な例としては、2−アミノ−4−クロロ−6−メチルピリミジン、2−アミノ−6−クロロ−4−メトキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジクロロピリミジン、2−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメチルピリミジン、2−アミノ−4,6−ジメトキシピリミジン、2−アミノピリミジン、2−アミノ−4−メチルピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジヒドロキシピリミジン−5−カルボン酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、2,4−ジメトキシピリミジン、2,4,5−トリヒドロキシピリミジン、2,4−ピリミジンジオール等が挙げられる。
【0067】
ピラジン類及びその誘導体の具体的な例としては、ピラジン、2−メチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、ピラジンカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸、5−メチルピラジンカルボン酸、ピラジンアミド、5−メチルピラジンアミド、2−シアノピラジン、アミノピラジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン等が挙げられる。
【0068】
トリアジン類及びその誘導体の具体的な例としては、1,3,5−トリアジン、2−アミノ−1,3,5−トリアジン、3−アミノ−1,2,4−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリフルオロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリ−2−ピリジン−1,3,5−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ビス(4−フェニルスルホン酸)−1,2,4―トリアジン二ナトリウム、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4−トリアジン、3−(2−ピリジン)−5,6−ジフェニル−1,2,4―トリアジン−ρ,ρ’−ジスルホン酸二ナトリウム、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0069】
このようなことから、窒素含有芳香族性環式化合物は、窒素原子に置換基が導入されて窒素含有芳香族性環式化合物カチオンを形成していてもよい。さらに、そのカチオンとアニオンとが組み合わされて塩が形成されていてもよい。塩であっても、カチオンでない窒素含有芳香族性環式化合物と同様の効果を発揮する。
【0070】
窒素含有芳香族性環式化合物の窒素原子に導入される置換基としては、水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、フェニル基、フェノール基、エステル基、アルコキシル基、カルボニル基等が挙げられる。置換基の種類は前記に示される置換基を導入することができる。
【0071】
窒素含有芳香族性環式化合物の含有量は、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜100モルの範囲であることが好ましく、0.5〜30モルの範囲であることがより好ましく、固体電解質層13の物性及び導電性の観点からは、1〜10モルの範囲が特に好ましい。窒素含有芳香族性環式化合物の含有率が0.1モルより少なくなると、窒素含有芳香族性環式化合物とポリマーアニオン及び/又はアニオン及び導電性高分子との相互作用が弱くなる傾向にあり、導電性が不足することがある。また、窒素含有芳香族性環式化合物が100モルを超えて含まれると導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層13の物性が変化することがある。
【0072】
・2個以上のヒドロキシ基を有する化合物
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物としては、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、ジメチロールプロピオン酸、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、チオジエタノール、酒石酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等の多価脂肪族アルコール類; ポリビニルアルコール、セルロース、等の高分子アルコール; 1,4−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、2,3−ジヒドロキシ−1−ペンタデシルベンゼン、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2,5−ジヒドロキシアセトフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,6−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,5−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、ヒドロキシキノンカルボン酸及びその塩類、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、1,4−ヒドロキノンスルホン酸及びその塩類、4,5−ヒドロキシベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びその塩類、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン−2,6−ジカルボン酸、1,6−ジヒドロキシナフタレン−2,5−ジカルボン酸、1,5−ジヒドロキシナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、4,5−ジヒドロキシナフタレン−2,7−ジスルホン酸及びその塩類、1,8−ジヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸及びその塩類、6,7−ジヒドロキシ−2−ナフタレンスルホン酸及びその塩類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、5−メチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−エチル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、5−プロピル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾアルデヒド、トリヒドロキシアントラキノン、2,4,6−トリヒドロキシベンゼン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、テトラヒドロキシアントラキノン、ガーリック酸メチル(没食子酸メチル)、ガーリック酸エチル(没食子酸エチル)、ヒドロキノンスルホン酸カリウム等の芳香族化合物等が挙げられる。
【0073】
2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量は、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05〜50モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.05モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物の含有量が、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して50モルより多くなると、固体電解質層13中の導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層13の物性が変化することがある。
【0074】
・2個以上のカルボキシ基を有する化合物
2個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、1,4−ブタンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸、クエン酸等の脂肪族カルボン酸類化合物; フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5−スルホイソフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4,4’−オキシジフタル酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の、芳香族性環に少なくとも一つ以上のカルボキシ基が結合している芳香族カルボン酸類化合物;ジグリコール酸、オキシ二酪酸、チオ二酢酸、チオ二酪酸、イミノ二酢酸、イミノ酪酸等が挙げられる。
【0075】
2個以上のカルボキシ基を有する化合物は、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1〜30モルの範囲であることが好ましく、0.3〜10モルの範囲であることがより好ましい。2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して0.1モルより少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また2個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が、ポリマーアニオン及び/又はアニオンのアニオン基単位1モルに対して30モルより多くなると、固体電解質層13中の導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得られにくく、固体電解質層13の物性が変化することがある。
【0076】
・1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物としては、酒石酸、グリセリン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロパン酸、D−グルカル酸、グルタコン酸等が挙げられる。
【0077】
1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量は、ポリマーアニオン塩及び/又はアニオン塩と導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、1個以上のヒドロキシ基及び1個以上のカルボキシ基を有する化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、固体電解質層13中の導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0078】
・アミド化合物
アミド基を有する化合物は、−CO−NH−(COの部分は二重結合)で表されるアミド結合を分子中に有する単分子化合物である。すなわち、アミド化合物としては、例えば、上記結合の両末端に官能基を有する化合物、上記結合の一方の末端に環状化合物が結合された化合物、上記両末端の官能基が水素である尿素及び尿素誘導体などが挙げられる。
【0079】
アミド化合物の具体例としては、アセトアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、ナフトアミド、フタルアミド、イソフタルアミド、テレフタルアミド、ニコチンアミド、イソニコチンアミド、2−フルアミド、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、プロピオンアミド、プロピオルアミド、ブチルアミド、イソブチルアミド、メタクリルアミド、パルミトアミド、ステアリルアミド、オレアミド、オキサミド、グルタルアミド、アジプアミド、シンナムアミド、グルコールアミド、ラクトアミド、グリセルアミド、タルタルアミド、シトルアミド、グリオキシルアミド、プルブアミド、アセトアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ベンジルアミド、アントラニルアミド、エチレンジアミンテトラアセトアミド、ジアセトアミド、トリアセトアミド、ジベンズアミド、トリベンズアミド、ローダニン、尿素、1−アセチル−2−チオ尿素、ビウレット、ブチル尿素、ジブチル尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0080】
アミド化合物の分子量は46〜10,000であることが好ましく、46〜5,000であることがより好ましく、46〜1,000であることが特に好ましい。
【0081】
アミド化合物の含有量は、ポリマーアニオン塩及び/又はアニオン塩と導電性高分子の合計100質量部に対して1〜5,000質量部であることが好ましく、50〜500質量部であることがより好ましい。アミド化合物の含有量が1質量部より少なくなると、導電性及び耐熱性が不足することがある。また、アミド化合物の含有量が5,000質量部より多くなると、固体電解質層13中の導電性高分子の含有量が少なくなり、やはり充分な導電性が得ることが難しい。
【0082】
・イミド化合物
イミド化合物としては、導電性がより高くなることから、イミド結合を有する単分子化合物(以下、イミド化合物という。)が好ましい。イミド化合物としては、その骨格より、フタルイミド及びフタルイミド誘導体、スクシンイミド及びスクシンイミド誘導体、ベンズイミド及びベンズイミド誘導体、マレイミド及びマレイミド誘導体、ナフタルイミド及びナフタルイミド誘導体などが挙げられる。
【0083】
また、イミド化合物は両末端の官能基の種類によって、脂肪族イミド、芳香族イミド等に分類されるが、溶解性の観点からは、脂肪族イミドが好ましい。
【0084】
さらに、脂肪族イミド化合物は、分子内の炭素間に不飽和結合を有する飽和脂肪族イミド化合物と、分子内の炭素間に不飽和結合を有する不飽和脂肪族イミド化合物とに分類される。
【0085】
飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの両方が飽和炭化水素である化合物である。具体的には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボキシイミド、アラントイン、ヒダントイン、バルビツル酸、アロキサン、グルタルイミド、スクシンイミド、5−ブチルヒダントイン酸、5,5−ジメチルヒダントイン、1−メチルヒダントイン、1,5,5−トリメチルヒダントイン、5−ヒダントイン酢酸、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、グルタルイミド、セミカルバジド、α,α−ジメチル−6−メチルスクシンイミド、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、シクロヘキシルイミドなどが挙げられる。
【0086】
不飽和脂肪族イミド化合物は、R−CO−NH−CO−Rで表される化合物であり、R,Rの一方又は両方が1つ以上の不飽和結合である化合物である。具体例は、1,3−ジプロピレン尿素、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ヒドロキシマレイミド、1,4−ビスマレイミドブタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、1,8−ビスマレイミドオクタン、N−カルボキシヘプチルマレイミドなどが挙げられる。
【0087】
イミド化合物の分子量は60〜5,000であることが好ましく、70〜1,000であることがより好ましく、80〜500であることが特に好ましい。
【0088】
イミド化合物の含有量は、導電性高分子とポリマーアニオン及び/又はアニオンの合計100質量部に対して10〜10,000質量部であることが好ましく、50〜5,000質量部であることがより好ましい。イミド化合物の添加量が前記下限値未満であると、イミド化合物添加による効果が低くなるため好ましくない。また、前記上限値を超えると、導電性高分子濃度の低下に起因する導電性の低下が起こるため好ましくない。
【0089】
・ラクタム化合物
ラクタム化合物とは、アミノカルボン酸の分子内環状アミドであり、環の一部が−CO−NR−(Rは水素又は任意の置換基)である化合物である。ただし、環の一個以上の炭素原子が不飽和やヘテロ原子に置き換わっていてもよい。
【0090】
ラクタム化合物としては、例えば、ペンタノ−4−ラクタム、4−ペンタンラクタム−5−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリジノン、ヘキサノ−6−ラクタム、6−ヘキサンラクタム等が挙げられる。
【0091】
・グリシジル基を有する化合物
グリシジル基を有する化合物としては、例えば、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、ビスフェノールA、ジグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル等のグリシジル化合物などが挙げられる。
【0092】
・有機溶媒
また、一部の有機溶媒も固体電解質層13中に残存した場合に導電性向上剤として機能する。導電性向上剤になりうる有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホルトリアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等の極性溶媒、クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価脂肪族アルコール類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、ジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物としてもよい。
【0093】
・エーテル化合物
導電性向上材の中でも、キャパシタ10の耐電圧がより高くなることから、下記化学式(I)で表されるエーテル化合物であることが好ましい。
【0094】
(I) X−(R−O)−Y
式(I)中、Rは、置換又は未置換のアルキレン、置換又は未置換のアルケニレン、置換又は未置換のフェニレンからなる群より選ばれる1種以上を表す。
【0095】
Xは、水素原子、ヒドロキシ基、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルコキシル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる1種以上を表す。
【0096】
Yは、水素原子、置換又は未置換のアルキル基、置換又は未置換のアルケニル基、置換又は未置換のアリール基からなる群より選ばれる1種以上を表す。
【0097】
X,Yが置換基で置換されたものである場合の置換基としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、ビニル基、アルキルアリール基、アクリロイル基、アミノ基、アミド基などが挙げられる。
【0098】
ここで、Rにおける置換又は未置換のアルキレンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。
【0099】
置換又は未置換のアルケニレンとしては、プロペニレン、1−メチル−プロペニレン、1−ブチル−プロペニレン、1−デシル−プロペニレン、1−シアノ−プロペニレン、1−フェニル−プロペニレン、1−ヒドロキシ−プロペニレン、1−ブテニレンなどが挙げられる。
【0100】
Xにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。
【0101】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。
【0102】
アルケニル基としては、例えば、プロペニル基、ブテニル基などが挙げられる。
【0103】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0104】
nは、2〜2,000の整数であり、好ましくは3〜1,000の整数である。nが2,000より大きくなると、エーテル化合物の導電性高分子に対する相溶性が低くなる傾向にあり、均一なマトリクスを形成しにくくなる。
【0105】
化学式(I)で表される高分子の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、オリゴポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノクロルヒドリン、ジエチレングリコールモノクロルヒドリン、オリゴエチレングリコールモノクロルヒドリン、トリエチレングリコールモノブロムヒドリン、ジエチレングリコールモノブロムヒドリン、オリゴエチレングリコールモノブロムヒドリン、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、グリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリエチレンオキシド、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等、トリエチレングリコール・ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジエチルエーテル・ジエチレングリコール・ジブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンジオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0106】
エーテル化合物の含有量としては、導電性高分子とポリマーアニオン塩及び/又はアニオン塩との合計100質量部に対して1〜10,000質量部であることが好ましく、50〜1,500質量部であることがより好ましい。エーテル化合物の含有量が1質量部未満であると、キャパシタ10の耐電圧が高くならないことがあり、10,000質量部を超えると、固体電解質層13の導電性が低くなり、キャパシタ10のESRが高くなる傾向にある。
【0107】
[結合剤]
本実施形態に用いられる結合剤は、ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類、シランカップリング剤類より1種以上添加することができる。
【0108】
結合剤としては、導電性高分子又はポリマーアニオン及び/又はアニオンと相溶又は混合分散可能であれば特に制限はなく、熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、アラミド樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、メラミン樹脂、フェノール系樹脂、ポリエーテル、アクリル系樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0109】
また、シランカップリング剤とは、下記化学式(I)で表される化合物である。
【0110】
化学式(I) X−Si−Y
式(I)中、Xは、アルコキシル基またはハロゲン原子を表す。アルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0111】
Yは、置換又は未置換のビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の基を表す。
【0112】
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメエチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
【0113】
添加量としては、導電性高分子とポリマーアニオン塩及び/またはアニオン塩の複合導電体100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部が好ましい。
【0114】
[酸化阻害成分]
本実施形態に用いられる酸化阻害成分には、糖類、糖アルコール類、ポリヒドロキシ類等が挙げられる。
【0115】
具体的には、例えば、ショ糖、グルコース、ラクトース、マルトース、キシロース等の糖類及び糖誘導体;ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール等の糖アルコール等が挙げられる。
【0116】
中でも、マンニトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、キシロース、グルコースはその融点より、耐熱性に優れている。
【0117】
添加量としては、導電性高分子とポリマーアニオン塩及び/またはアニオン塩の複合導電体100質量部に対し、好ましくは10〜10,000質量部であり、50〜1,000質量部がより好ましい。固体電解質組成物の導電性と製膜性の観点から、100〜400質量部が最も好ましい。
【0118】
添加量が10質量部より少なくなると所望の耐熱性能得られにくい。また、添加量が10,000質量部を超えると固体電解質組成物の導電性が悪くなる傾向があり、また、溶媒に溶解しなくなるため、好ましくない。
【0119】
[電解液]
必要に応じて、電解液を兼用してもよい。電解液としては導電性が高ければ特に限定されず、周知の溶媒中に周知の電解質を溶解させたものである。
【0120】
電解液における溶媒としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等のアルコール系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン等のアミド系溶媒、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等のニトリル系溶媒、水等が挙げられる。
【0121】
電解質としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、安息香酸、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、蟻酸、1,6−デカンジカルボン酸、5,6−デカンジカルボン酸等のデカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸等のオクタンジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の有機酸、あるいは、硼酸、硼酸と多価アルコールより得られる硼酸の多価アルコール錯化合物、りん酸、炭酸、けい酸等の無機酸などをアニオン成分とし、一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、アミノエタノール、アミノプロパンジオール、3−アミノ−1−プロパノール等)、二級アミン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミン、イミノジエタノール、エチルアミノプロパノール等)、三級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリフェニルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン−7、ニトリロエタノール等)、テトラアルキルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム等)などをカチオン成分とした電解質が挙げられる。添加量は特に限定しない。
【0122】
(セパレータ)
本実施形態の固体電解キャパシタに使用するセパレータ15としては、周知の天然繊維、人工系繊維が好適に使用することができる。ここでは特に限定しない。
【0123】
(陰極)
陰極14は、例えば、カーボン、銀、アルミニウム等の層から構成されたものである。
【0124】
陰極14が、カーボン、銀等で構成される場合には、カーボン、銀等の導電体を含む導電性ペーストから形成することができる。また、陰極14がアルミニウムで構成される場合には、アルミニウム箔からなる。
【0125】
以上説明したキャパシタ10の固体電解質層13は、ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤と糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分とを用いる。このような固体電解質層13の組成物により、本実施形態のキャパシタは、静電容量が大きくかつESRが低くまた、漏れ電流が小さい、耐電圧が高いという優れた特徴を有するとともに、更にリフロー工程における高温度処理プロセスを経てもキャパシタとしての特性変化が少ない、耐熱性をも向上させたものである。
【0126】
<キャパシタの製造方法>
次に、上記キャパシタ10の製造方法について説明する。
【0127】
本実施形態のキャパシタの製造方法は、弁金属の多孔質体からなる陽極11と陽極11の表面が酸化されて形成された酸化被膜の誘電体層12とを有するキャパシタ中間体の誘電体層12側表面に、導電性高分子溶液を塗布または浸漬、固体電解質層13を直接接するように形成する方法である。
【0128】
この製造方法における導電性高分子溶液は、pH3〜9に調整されたポリマーアニオン及び/またはモノマーアニオンと導電性高分子と融点80℃以上、280℃未満であり、分子内に水酸基を4以上有する脂肪族化合物と溶媒とを含むものである。また、この範囲に限られず、pH3〜12とすることも好ましい。
【0129】
導電性高分子溶液を調製するには、まず、ポリマーアニオンを溶媒に溶解して得られた溶液に、導電性高分子を形成する無置換のアニリンやピロール、チオフェンなどの前駆体モノマーを添加する。次いで、酸化剤を添加してモノマーを重合させ、その後、余剰の酸化剤やモノマーを分離、精製して導電性高分子溶液を得る。
【0130】
導電性高分子溶液に含まれる溶媒としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)などのアルコール系溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド系溶媒、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル系溶媒、トルエン、キシレン、水などが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、混合して使用してもよい。中でも、近年の環境保護の観点から、環境負荷の小さい水やアルコール系溶媒が好ましい。
【0131】
導電性高分子溶液の塗布方法としては、例えば、コーティング、浸漬、スプレーなどの公知の手法が挙げられる。乾燥方法としては、熱風乾燥など公知の手法が挙げられる。
【0132】
固体電解質層13を形成した後には、カーボンペースト、銀ペーストによって陰極金属層14を形成したり、セパレータを介して陰極電極を対向したりする公知の手法により陰極金属層14を形成することができる。
【0133】
上述した製造方法は、導電性高分子溶液を塗布、乾燥することにより固体電解質層13を形成するから、工程が簡便であり、大量生産に向いており、低コストである。
【0134】
なお、工程の簡便さ、コストを考慮しなければ、固体電解質層13を化学酸化重合又は電解重合により形成してもよい。
【0135】
化学酸化重合では、導電性高分子を形成する置換若しくは無置換のアニリンやピロール、チオフェンなどの前駆体モノマー溶液と、酸化剤溶液を用意し、これらにキャパシタ中間体を交互に浸漬して、キャパシタ中間体の誘電体層側表面にて導電性高分子を形成させる。酸化剤としては上記製造方法と同様のものを使用できる。
【0136】
ドーパントはモノマー溶液又は酸化剤溶液に同時に溶解させておいてもよいし、導電性高分子を形成した後にドーパントを溶媒に溶解した溶液を導電性高分子に浸透させて添加してもよい。
【0137】
電解重合では、まず、アセトニトリルなどの溶媒に導電性高分子を形成する無置換のアニリンやピロール、チオフェンなどの前駆体モノマーを添加し、ドーパントを電解質として添加した電解槽に、表面に導電層を形成したキャパシタ中間体を電極として仕込む。そして、前駆体モノマーの酸化電位よりも高い電圧を加えることにより重合して、キャパシタ中間体の誘電体層上にて導電性高分子を形成させる。
【0138】
固体電解質層13においては、導電性高分子が粒子径1〜500nmの粒子として形成することが多い。そのため、キャパシタ中間体の誘電体層表面における微細な空隙の最深部にまで導電性高分子が行き届かず、容量を引き出すことが難しくなることがある。このことから、固体電解質層13を形成した後に、必要に応じて電解液を浸透させることで、容量を補充することが好ましい。
【0139】
乾燥条件としては、ここで特に限定せず、好ましくは主溶媒の沸点以上である。より好ましくは120℃以上である。乾燥温度が低すぎると溶媒の残留が多くなることがあり好ましくない。
【0140】
上述したキャパシタの製造方法では、キャパシタ10の固体電解質層13は、融点40℃以上280℃以下であり、分子内に水酸基を4以上有する脂肪族化合物を用いる。このような方法で製造したキャパシタは、静電容量が大きくかつESRが低くまた、漏れ電流が小さい、耐電圧が高いという優れた特徴を有するとともに、更にリフロー工程における高温度処理プロセスを経てもキャパシタとしての特性変化が少ない、耐熱性をも向上させたものである。また、本実施形態の方法は、工程が簡便で生産性が高いという特徴を有する。
【0141】
なお、本発明のキャパシタ及びその製造方法は上述した実施形態に限定されない。例えば、本発明のキャパシタは、図2に示すように、誘電体層12と陰極14との間に、必要に応じて、セパレータ15を設けることができる。誘電体層12と陰極14との間にセパレータ15が設けられたキャパシタとしては、巻回型キャパシタが挙げられる。
【0142】
セパレータ15としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンなどからなるシート(不織布を含む)、ガラス繊維の不織布などが挙げられる。
【0143】
セパレータ15の密度は、0.1〜1g/cmの範囲であることが好ましく、0.2〜0.8g/cmの範囲であることがより好ましい。
【0144】
セパレータ15を設ける場合には、セパレータ15にカーボンペーストあるいは銀ペーストを含浸させて陰極14を形成する方法を適用することもできる。
【0145】
また、上述した実施形態は、陰極が設けられているが、固体電解質層を陰極として利用した場合には、必ずしも陰極を別途設けなくてもよい。その場合、本発明により陽極の損傷を防ぐことができ、耐電圧を高めることができる。
【実施例】
【0146】
以下、第1及び第2の実施の形態について説明する。
【0147】
[第1の実施の形態]
(1)導電性高分子溶液の調製
(調製例1)導電性高分子溶液(I)の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、2,000mlのイオン交換水に42.6gのポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量;約300,000)を溶かした溶液とを20℃で混合した。
【0148】
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、15時間攪拌して反応させた。
【0149】
得られた反応液を透析して不純イオンを除去した後、イオン交換し、約1.6質量%のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)を含む溶液(以下、PEDOT−PSS溶液という。)を得た。
【0150】
そして、このPEDOT−PSS溶液100gに、イミダゾールを添加して、pH7の導電性高分子原料溶液(A)を得た。この導電性高分子原料溶液100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコール、3.2gのペンタエリスリトール、1.6gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(I)を得た。
【0151】
(調製例2)導電性高分子溶液(II)の調製
調製例1におけるPEDOT−PSS溶液100gにイミダゾールを添加してpH5の導電性高分子原料溶液(B)を得た。この導電性高分子原料溶液100gに4.8gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、3.2gのキシリトール、4.8gのペンタエリスリトール、0.8gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(II)を得た。
【0152】
(調製例3)導電性高分子溶液(III)の調製
調製例1におけるPEDOT−PSS溶液100gにイミダゾールを添加してpH10の導電性高分子原料溶液(C)を得た。この導電性高分子原料溶液100gに0.8gのヒドロキシエチルアクリレート、0.8gのペンタエリスリトール、0.8gのマルトース、0.48gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(III)を得た。
【0153】
(調製例4)導電性高分子溶液(IV)の調製
調製例1における導電性高分子原料溶液(A)100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコース、1.6gのペンタエリスリトール、0.8gのシランカップリング剤を混合し、分散して、導電性高分子溶液(IV)を得た。
【0154】
(調製例5)導電性高分子溶液(V)の調製
調製例2における導電性高分子原料溶液(B)100gに、4.8gのgのペンタエリスリトール、0.16gのシランカップリング剤を混合し、分散して、導電性高分子溶液(V)を得た。
【0155】
(調製例6)導電性高分子溶液(VI)の調製
調製例3における導電性高分子原料溶液(C)100gに、0.8gのヒドロキシエチルアクリレート、3.2gのエリスリトール、1.44gのポリエステル、0.16gのシランカップリング剤を混合し、分散して、導電性高分子溶液(VI)を得た。
【0156】
(調製例7)導電性高分子溶液(VII)の調製
調製例1における導電性高分子原料溶液(A)100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコール、3.2gのマンニトール、1.6gのポリエステル、1.6gのシランカップリング剤を混合し、分散して、導電性高分子溶液(VII)を得た。
【0157】
(調製例8)導電性高分子溶液(VIII)の調製
調製例2における導電性高分子原料溶液(B)100gに、4.8gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、0.96gのマンニトール、0.48gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(VIII)を得た。
【0158】
(調製例9)導電性高分子溶液(IX)の調製
調製例3における導電性高分子原料溶液(C)100gに、0.8gのヒドロキシエチルアクリレート、0.96gのキシリトール、0.48gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(IX)を得た。
【0159】
(調製例10)導電性高分子溶液(X)の調製
調製例1における導電性高分子原料溶液(A)100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコール、0.48gのソルビトール、1.6gのキシロース、0.48gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(X)を得た。
【0160】
(調製例11)導電性高分子溶液(XI)の調製
調製例2における導電性高分子原料溶液(B)100gに、4.8gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、4.8gのグルコース、0.48gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(XI)を得た。
【0161】
(調製例12)導電性高分子溶液(XII)の調製
調製例1における導電性高分子原料溶液(A)100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコール、3.2gのキシリトール、4.0gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(XII)を得た。
【0162】
(調製例13)導電性高分子溶液(XIII)の調製
調製例2における導電性高分子原料溶液(B)100gに、4.8gのトリエチレングリコールモノブチルエーテル、0.16gのペンタエリスリトール、0.08gのシランカップリング剤を混合し、分散して、導電性高分子溶液(XIII)を得た。
【0163】
(調製例14)導電性高分子溶液(XIV)の調製
調製例3における導電性高分子原料溶液(C)100gに、0.8gのヒドロキシアクリレート、0.16gのキシリトール、0.096gのポリエステルを混合し、分散して、導電性高分子溶液(XIV)を得た。
【0164】
(調製例15)導電性高分子溶液(XV)の調製
調製例1における導電性高分子原料溶液(A)100gに、3.2gの分子量1000のポリエチレングリコールを混合し、分散して、導電性高分子溶液(XV)を得た。
【0165】
(2)キャパシタの製造
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸ジアンモニウム10質量%水溶液中で102Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)したエッチドアルミニウム箔(陽極箔)とアルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して円筒状に巻き取ってキャパシタ素子を得た。
【0166】
(3)含水量の評価
約10cmの直径を有するシャーレに、下記実施例12〜24及び比較例6〜7に使用される導電性高分子溶液を3g其々量り、其々、実施例12〜24及び比較例6〜7の乾燥条件において、導電性高分子溶液を乾燥させて得られた其々の固体電解質(組成物)の水分測定用資料を作製した。
【0167】
作製した固体電解質を三菱化学社製の電量滴定式水分測定装置(CA−100型)を用いて追い出し温度を150℃に設定して行った。
【0168】
(実施例1)
調製例1で調製した導電性高分子溶液(I)に、前記キャパシタの製造で得たキャパシタ素子を、減圧下で浸漬した後、150℃の熱風乾燥機により30分間乾燥した。さらに、この導電性高分子溶液(I)への浸漬を2回繰り返して、誘電体層と陰極との間に、固体電解質層を形成させた。
【0169】
次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたキャパシタ素子を装填し、封口ゴムで封止した。
【0170】
次いで、印加工程にて、105℃の雰囲気中にて、陽極と陰極との間に60Vの直流電圧を60分間印加して、キャパシタを得た。
【0171】
作製したキャパシタについて、LCZメータ2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでのESRの初期値を測定した。
【0172】
また、初期値測定後、プレッシャークッカー(温度121℃、圧力2atm、湿度100%、投入時間100h)内で促進試験後、破壊された素子の割合を求めた。それらの結果は表1に示す。なお、ESRはインピーダンスの指標となる。
【表1】

【0173】
なお、表1における添加量は、PEDOT−PSSの固形分を100とする時の比率である。
【0174】
(実施例2〜11)
導電性高分子溶液(I)の代わりに、導電性高分子溶液(II)、導電性高分子溶液(III)、導電性高分子溶液(IV)、導電性高分子溶液(V)、導電性高分子溶液(VI)、導電性高分子溶液(VII)、導電性高分子溶液(VIII)、導電性高分子溶液(IX))、導電性高分子溶液(X)、導電性高分子溶液(XI)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、其々実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、実施例10、実施例11のキャパシタを作製した。また、実施例1と同様にして、静電容量、ESR、プレッシャークッカー破壊率を測定した。結果を表1に示す。
【0175】
(比較例1〜4)
導電性高分子溶液(I)の代わりに、導電性高分子溶液(XII)、導電性高分子溶液(XIII)、導電性高分子溶液(XIV)、導電性高分子溶液(XV)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、其々比較例1、比較例2、比較例3、比較例4のキャパシタを作製した。また、実施例1と同様にして、静電容量、ESR、プレッシャークッカー破壊率を測定した。結果を表1に示す。
【0176】
[第2の実施の形態]
(1)導電性高分子溶液の調製
(調製例16)導電性高分子溶液(XVI)の調製
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、2,000mlのイオン交換水に42.6gのポリスチレンスルホン酸(質量平均分子量;約300,000)を溶かした溶液とを20℃で混合した。
【0177】
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とを添加し、15時間攪拌して反応させた。
【0178】
得られた反応液を透析して不純イオンを除去した後、イオン交換し、約1.6質量%のポリスチレンスルホン酸とポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)との導電性複合体を含む溶液(以下、PEDOT−PSS溶液という。)を得た。
【0179】
そして、このPEDOT−PSS溶液100gに、イミダゾールを添加して、pH7の導電性高分子原料溶液(MB)を得た。この導電性高分子原料溶液100gに、4.8gのヒドロキシエチルアクリレート、4.8gのペンタエリスリトールを混合し分散して、導電性高分子溶液(XVI)を得た。
【0180】
(調製例17)導電性高分子溶液(XVII)の調整
調製例16における導電性高分子原料溶液(MB)に、4.8gのヒドロキシエチルアクリレートを混合し分散して、導電性高分子溶液(XVII)を得た。
【0181】
(調製例18)導電性高分子溶液(XVIII)の調製
調製例16における導電性高分子原料溶液(MB)100gに、4.8gのペンタエリスリトールを混合し分散して、導電性高分子溶液(XVIII)を得た。
【0182】
(2)キャパシタの製造
エッチドアルミニウム箔(陽極箔)に陽極リード端子を接続した後、アジピン酸ジアンモニウム10質量%水溶液中で102Vの電圧を印加し、化成(酸化処理)したエッチドアルミニウム箔(陽極箔)とアルミニウム陰極箔を、セルロース製のセパレータを介して円筒状に巻き取ってキャパシタを得た。
【0183】
(3)含水量の評価
約10cmの直径を有するシャーレに、下記実施例12〜14及び比較例5、6に使用される導電性高分子溶液を3g其々量り、其々、実施例12〜14及び比較例5、6の乾燥条件において、導電性高分子溶液を乾燥させて得られた其々の固体電解質(組成物)の水分測定用資料を作製した。
【0184】
作製した固体電解質を三菱化学社製の電量滴定式水分測定装置(CA−100型)を用いて追い出し温度を150℃に設定して行った。
【0185】
(耐電圧評価)
作製した固体電解キャパシタを室温において、安定化直流電源を用いて50Vから0.5V/秒の速度で昇圧し、電流値が100mAに達した時の電圧値を耐電圧とした。
【0186】
(実施例12)
調製例17で調製した導電性高分子溶液(XVI)に、前記キャパシタの製造で得たキャパシタを、減圧下で浸漬した後、125℃の熱風乾燥機により30分間乾燥した。さらに、この導電性高分子溶液(XVI)への浸漬を2回繰り返して、誘電体層と陰極との間に、固体電解質層を形成させた。
【0187】
次いで、アルミニウム製のケースに、固体電解質層が形成されたキャパシタを装填し、封口ゴムで封止した。
【0188】
次いで、印加工程にて、150℃の雰囲気中にて、陽極と陰極との間に60Vの直流電圧を60分間印加して、固体電解キャパシタを得た。
【0189】
作製したキャパシタについて、LCRメーター2345(エヌエフ回路設計ブロック社製)を用いて、120Hzでの静電容量、100kHzでのESRの初期値を測定した。それらの結果は表2に示す。なお、ESRはインピーダンスの指標となる。
【0190】
150℃の雰囲気中にて、陽極と陰極との間に50Vの直流電圧を500時間印加して、固体電解キャパシタの耐熱性評価を行った。静電容量の初期値からの変化率を表2に示す。260℃の雰囲気下において3分間放置し高温評価を行った。
【表2】

【0191】
なお、表2における添加量は、PEDOT−PSSの固形分を100とする時の比率である。また、静電容量は40未満を不合格、ESRは25以上を不合格、静電容量変化率は10%以上を不合格とすることができる。
【0192】
(実施例13、14)
実施例12において125℃の熱風乾燥機により30分間乾燥したことを150℃、30分間、180℃、30分間で乾燥した以外実施例12と同様の方法で実施例13、実施例14の固体電解キャパシタを作製した。
【0193】
実施例12と同様にして、静電容量、ESR、耐熱性を測定した。結果を表2に示す。
【0194】
(比較例5、6)
其々、導電性高分子溶液(XVII)(比較例5)、導電性高分子溶液(XVIII)(比較例6)を用いて、実施例12と同様の方法で、100℃30分で乾燥し、比較例5、比較例6の固体電解キャパシタを作製した。
【0195】
また、実施例12と同様にして、静電容量、ESR、耐熱性を測定した。結果を表2に示す。
【0196】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は実施の形態及び実施例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0197】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本願に係るキャパシタ及びその製造方法の発明は、デジタル機器を含むさまざまな電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0199】
10 キャパシタ
11 陽極
12 誘電体層
13 固体電解質層
14 陰極
15 セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタにおいて、
固体電解質層は、
カチオン化された導電性高分子(a)と、
ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、
ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤(d)と、
糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)と、
を含み、固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含むことを特徴とするキャパシタ。
【請求項2】
前記酸化阻害成分(e)は、キシロース、グルコース及びマルトースの少なくとも1つを含む糖類であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項3】
前記酸化阻害成分(e)は、キシリトール、エリスリトール、マンニトール及びペンタエリスリトールの少なくとも1つを含む糖アルコール類であることを特徴とする請求項1に記載のキャパシタ。
【請求項4】
さらに、アミド基を有する化合物、イミド基を有する化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物、アクリル化合物から選ばれる1種以上の導電性向上剤を含み、該導電性向上剤が、前記導電性高分子(a)及び前記ポリマーアニオン塩(b)、又は前記導電性高分子(a)、前記ポリマーアニオン塩(b)及び前記アニオン塩(c)の総量より多く含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項5】
前記固体電解質層は、前記誘電体層と接することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項6】
前記陽極と前記陰極との間に、セパレータを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項7】
さらに、電解液を有することを特徴とする請求項6に記載のキャパシタ。
【請求項8】
さらに、7質量%以下の水分(f)を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項9】
前記水分(f)は、前記固体電解質の4質量%以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のキャパシタ。
【請求項10】
弁金属の多孔質体からなる陽極と、陽極表面が酸化されて形成された誘電体層と、誘電体層表面に形成された固体電解質層とを具備するキャパシタの製造方法において、
固体電解質層は、
カチオン化された導電性高分子(a)と、
ポリマーアニオン塩(b)、又はポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)と、
ポリエステル類、ポリウレタン類、アクリル類、エポキシ類、ポリアミド類、ポリアクリルアミド類及びシランカップリング剤類から選ばれる1種類以上の結合剤(d)と、
糖類及び/または糖アルコール類からなる酸化阻害成分(e)と、
溶媒とを含み、
固体電解質層は、導電性高分子(a)とポリマーアニオン塩(b)、又は導電性高分子(a)、ポリマーアニオン塩(b)及びアニオン塩(c)の総量100質量部に対して、10〜200質量部の結合剤(d)、50質量部以上の酸化阻害成分(e)を含み、pH3〜12に調整された導電性高分子溶液を、浸漬または塗布し、乾燥することによって、7質量%以下の水分(f)を含むように形成されたことを特徴とするキャパシタの製造方法。
【請求項11】
前記乾燥は、150℃以上の雰囲気下で行うことを特徴とする請求項10に記載のキャパシタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−171675(P2011−171675A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36576(P2010−36576)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)