説明

キャビネット

【課題】異形の引き出しを採用することなく、収納空間の有効利用を図ることができるキャビネットを提供する。
【解決手段】上面開口部及び前面開口部を有するキャビネット本体10と、このキャビネット本体10の前面開口部における上半部領域に差し込まれる引き出し20と、キャビネット本体10の前面開口部における下半部領域に差し込まれる蹴込み付き引き出し30と、蹴込み付き引き出し30に取り付けられたトレー40とから構成されており、キャビネット本体10の上面開口部にシンク52を有するカウンター51が固定設置されるようになっている。トレー40は、その後部側が蹴込み付き引き出し30の引き出し本体31から後方に張り出すように、前後方向の中央部を引き出し本体31の背板31aの上端面に載置した状態で、引き出し本体31の幅方向に移動可能に、その前部側が蹴込み付き引き出し30に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、システムキッチンのベースキャビネット等の引き出しを備えたキャビネット、特に、収納空間の有効利用を図ることができるキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、システムキッチンを構成しているベースキャビネットでは、一般的に、キャビネット本体の前面開口部を開閉する観音開きまたは片開きの収納扉が取り付けられていたが、収納空間の奥側に収納した物品等を取り出しにくいので、近年では、こういった扉タイプのベースキャビネットに代わって、図9に示すように、キャビネット本体61に引き出し62、63が取り付けられた引き出しタイプのベースキャビネット60が市場に出回るようになってきている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−146336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、同図に示すように、キャビネット本体61の上面開口部にシンク72を有するカウンター71が固定設置されるベースキャビネット60では、収納空間の奥側に排水管73、給水用(給湯用)の止水栓74及び排水管カバー75等が配設されるので、引き出しの奥行きを十分に確保することができず、収納空間の有効利用を図ることができないといった問題がある。
【0005】
こういった問題を解決するためには、障害物となる排水管73、止水栓74及び排水管カバー75等を避けるように、その平面形状を変形させた異形の引き出しを採用することが考えられるが、異形の引き出しは製作するのに手間がかかると共に、引き出しの形状は、排水管73、止水栓74及び排水管カバー75等の障害物の形状と位置とによって決定されるので、排水構造が異なる場合には、同じ引き出しを使用することができない場合もあるので、ベースキャビネットの製品価格が上昇するといった問題がある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、異形の引き出しを採用することなく、収納空間の有効利用を図ることができるキャビネットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、引き出し本体に前板が固定された引き出しを有するキャビネットにおいて、前記引き出しには、前記引き出し本体の上部に、前記引き出し本体の幅の1/2以下の幅を有するトレーが、前記前板の上端面よりも上方側に張り出さないような状態で、前記引き出し本体の幅方向に移動可能に設置されており、前記トレーは、その後部側が前記引き出し本体を構成している背板より後方側に張り出した状態で、前記引き出しに支持することができるようになっていることを特徴とするキャビネットを提供するものである。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、請求項1にかかる発明のキャビネットにおいて、前記トレーを、前記引き出し本体の前後方向に移動可能に設置したのである。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2にかかる発明のキャビネットにおいて、前記トレーを、その後部側が、前記引き出し本体の前記背板より後方側に張り出さないような状態で、前記引き出しに支持することができるようにしたのである。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、請求項1、2または3にかかる発明のキャビネットにおいて、前記トレーを、その後部側が前記引き出し本体の前記背板より後方側に張り出すように、前記引き出しに設置する場合は、前記トレーの後部側を前記引き出し本体の前記背板の上端面に載置するようにし、前記トレーの後部側を前記引き出し本体の前記背板の上端面に載置した状態で、前記トレーが略水平になるように、前記トレーの前部側を前記引き出しに支持するようにしたのである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、請求項1にかかる発明のキャビネットは、引き出し本体の上部に、前板の上端面よりも上方側に張り出さないような状態で、引き出し本体の幅方向に移動可能にトレーが設置されており、しかも、トレーは、その後部側が引き出し本体を構成している背板より後方側に張り出した状態で、引き出しに支持することができるようになっているので、引き出しを閉めたときに、収納空間内に設置されている障害物を避ける位置で、トレーを引き出しの後方側に張り出させるように、引き出しに設置しておくと、障害物の側方の空間を収納空間として有効に利用することができる。従って、収納空間の有効利用を図るために、製作に手間がかかる、汎用性に乏しい異形の引き出しを採用する必要がなく、キャビネットの製品価格の上昇を最小限に抑えつつ、収納空間の有効利用を図ることが可能になる。
【0012】
また、トレーは、引き出し本体の幅方向に移動可能に設置されているので、障害物の形状や位置が引き出し本体の幅方向に変化した場合でも、引き出し本体に対するトレーの位置を適宜変更することによって、対応することができる。
【0013】
さらに、トレーの幅が引き出し本体の幅の1/2以下に設定されているので、トレーを引き出し本体の幅方向に適宜移動させることによって、トレーが、引き出し本体内に収容された物品の出し入れの障害となりにくく、引き出しに対する物品の出し入れを円滑に行うことができる。
【0014】
また、請求項2にかかる発明のキャビネットは、トレーが、引き出し本体の前後方向に移動可能に設置されているので、キャビネットの奥行き方向に障害物がある場合や、引き出し本体内に収納される物品等との関係で、トレーが邪魔になるような場合等、必要に応じて、引き出し本体に対するトレーの張出量を調整することができ、使い勝手がよい。
【0015】
また、請求項3にかかる発明のキャビネットは、トレーの後部側が、引き出し本体の背板より後方側に張り出さないような状態で、トレーを引き出しに支持することができるので、引き出し本体の領域内において、引き出し本体及びその上部に設置されているトレーの上下2段で物品を収納することも可能となる。これにより、収納パターンの自由度が大きくなり、使い勝手がよい。
【0016】
また、請求項4にかかる発明のキャビネットでは、トレーを、その後部側が引き出し本体の背板より後方側に張り出すように、引き出しに設置する場合は、トレーの後部側を引き出し本体の背板の上端面に載置するようにし、トレーの後部側を引き出し本体の背板の上端面に載置した状態で、トレーが略水平になるように、トレーの前部側を引き出しに支持するようにしたので、トレーの後部側を支持するための専用の支持部材を引き出しに設ける必要がなく、部品点数が少なくなるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図3は、システムキッチンのベースキャビネット1を示している。このベースキャビネット1は、同図に示すように、上面開口部及び前面開口部を有するキャビネット本体10と、このキャビネット本体10の前面開口部における上半部領域に差し込まれる引き出し20と、キャビネット本体10の前面開口部における下半部領域に差し込まれる蹴込み付き引き出し30と、蹴込み付き引き出し30に取り付けられたトレー40とから構成されており、キャビネット本体10の上面開口部にシンク52を有するカウンター51が固定設置されるようになっている。なお、キャビネット本体10内の後部側には、シンク52の排水口に接続される排水管53、排水トラップ54、給水用の止水栓55及び給湯用の止水栓56と、排水管カバー57とが設置されている。
【0018】
前記キャビネット本体10は、左右一対の側板11、11と、側板11、11を背面側で連結する背板12と、側板11、11の上部を前面側で連結する戸当り板13と、側板11、11を下端部で連結する底板14とを備えており、蹴込み部を形成するために、側板11、11は、その前端側の下端部が切り欠かれている。
【0019】
前記引き出し20は、図2に示すように、引き出し本体21と、この引き出し本体21の前端部にそれぞれ固着された前板22と、この前板22の前面上部に固定された取手23を備えており、この引き出し20を閉めた状態では、前板22が戸当り板13に当接すると共に、引き出し本体21が、シンク52の直下に入り込むようになっている。
【0020】
前記蹴込み付き引き出し30は、図2及び図3に示すように、蹴込み深型の引き出し本体31と、この引き出し本体31の前端部に固着された、蹴込み部を形成する下部前板32と、この下部前板32よりも前方側に配設され、連結金具34を介して、下部前板32に固定された上部前板33と、この上部前板33の前面上部に固定された取手35と、引き出し本体31を構成している背板31aと上部前板33とを、左右両側部においてそれぞれ連結する上下一対の補強ステー36、37と、左右一対の上側の補強ステー36、36に、ジョイント部材39、39を介して、前後方向に移動可能に支持されたステンレスパイプ製のガイドレール38とを備えており、蹴込み付き引き出し30には、引き出し本体31の上部にトレー40が取り付けられている。
【0021】
前記トレー40は、図4〜図7に示すように、前端側及び後端側が上方に突出した突出部42a、42aを有する、側面U字状の合成樹脂製のサイドカバー42及びこのサイドカバー42の突出部42a、42a同士を、その上端部で相互に連結するステンレスパイプ43を有する左右一対の側部材41、41と、この左右の側部材41、41のサイドカバー42、42を下部側で連結する、ステンレス板を折り曲げることによって、前側立ち上がり部44a及び後側立ち上がり部44bが一体的に形成された底部材44と、左右の側部材41、41におけるサイドカバー42、42の突出部42a、42a同士を、その前端部及び後端部でそれぞれ連結するステンレスパイプ45、45とを備えており、サイドカバー42の前端部及び後端部には、下端部に円弧状の切欠部42b、42bが形成されていると共に、サイドカバー42には、その切欠部42b、42bに周面が僅かに張り出すように、ローラ42cが回転可能に支持されている。
【0022】
このトレー40は、図2〜図7に示すように、底部材44における前後方向の中央部を、蹴込み付き引き出し30の引き出し本体31を構成している背板31aの上端面に載置すると共に、側部材41、41のサイドカバー42、42の前端側の切欠部42b、42bを、蹴込み付き引き出し30のガイドレール38に嵌め込んで、ローラ42cの周面をガイドレール38に当接させることによって、引き出し本体31の上部に略水平に支持されており、後部側が蹴込み付き引き出し30の引き出し本体31から後方に張り出した状態で、引き出し本体31の幅方向に移動させることができるようになっている。
【0023】
また、このトレー40は、図2及び図3に示すように、その幅(一方の側部材41の外面から他方の側部材41の外面までの寸法)が、蹴込み付き引き出し30の引き出し本体31の幅の1/2以下であって、キャビネット本体10内の収納空間における排水トラップ54の右側の空間に入り込むことができる寸法に設定されており、蹴込み付き引き出し30に取り付けた状態で、蹴込み付き引き出し30の上部前板33の上側に張り出さないような高さに設定されている。
【0024】
以上のように、このベースキャビネット1では、トレー40が、蹴込み付き引き出し30の引き出し本体31から後方に張り出した状態で、引き出し本体31の幅方向に移動可能に、引き出し本体31の上部に設置されているので、排水トラップ54を避けるように、その排水トラップ54の右側位置にトレー40を移動させた状態で、蹴込み付き引き出し30を閉めると、トレー40における引き出し本体31から後方に張り出した部分が、おける排水トラップ54の右側の空間に入り込むことになり、排水トラップ54の右側の空間を収納空間として利用することができる。
【0025】
また、トレー40は、引き出し本体31の幅方向に移動可能に設置されているので、キャビネット本体10内に設けられる障害物の形状や位置が引き出し本体31の幅方向に変化した場合でも、引き出し本体31に対するトレー40の設置位置を適宜変更することによって、対応することができる。
【0026】
また、トレー40の前端部を支持しているガイドレール38は、補強ステー36、36に沿って、前後方向に移動させることができるので、キャビネット本体10の奥行き方向に障害物がある場合や、引き出し本体31内に収納される物品等との関係で、トレー40が邪魔になるような場合等、必要に応じて、引き出し本体31に対するトレーの張出量を調整することができるので、使い勝手がよい。
【0027】
さらに、トレー40の幅が引き出し本体31の幅の1/2以下に設定されているので、トレー30を引き出し本体31の幅方向に適宜移動させることによって、トレー40が、引き出し本体31内に収容された物品の出し入れの障害となりにくく、蹴込み付き引き出し30に対する物品の出し入れを円滑に行うことができる。
【0028】
従って、収納空間の有効利用を図るために、製作に手間がかかる、汎用性に乏しい異形の引き出しを採用する必要がなく、ベースキャビネット1の製品価格の上昇を最小限に抑えつつ、収納空間の有効利用を図ることができる。
【0029】
また、このベースキャビネット1では、トレー40の後部側を引き出し本体31の背板31aの上端面に載置した状態で、トレー40が略水平になるように、トレー40の前部側が蹴込み付き引き出し30に支持されているので、トレー40の後部側を支持するための専用の支持部材を蹴込み付き引き出し30に設ける必要がなく、部品点数を最小限に抑えることができる。
【0030】
また、図8に示すように、左右一対の上側の補強ステー36、36に、ジョイント部材39、39を介して、新たなガイドレール38を前後方向に移動可能に支持すると、トレー40を、その後部側が、引き出し本体31の後方側に張り出さないような状態で支持することができるので、引き出し本体31の領域内において、引き出し本体31及びその上部に設置されているトレー40の上下2段で物品を収納することも可能となる。
【0031】
なお、上述した実施形態では、蹴込み付き引き出し30を備えたベースキャビネット1について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明は、通常の引き出しだけを備えているベースキャビネットや、引き出しを有する、蹴込み部のない種々のキャビネットに適用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明にかかるキャビネットの一実施形態であるシステムキッチンのベースキャビネットを示す正面図である。
【図2】同上のベースキャビネットにおける右側の側板を取り外した状態を示す側面図である。
【図3】同上のベースキャビネットにおける蹴込み付き引き出しの上部前板を取り外した状態を示す正面図である。
【図4】同上の蹴込み付き引き出しに取り付けられているトレーを示す平面図である。
【図5】同上のトレーを示す側面図である。
【図6】同上のトレーを示す正面図である。
【図7】同上のトレーを示す部分斜視図である。
【図8】同上のベースキャビネットの異なる使用態様を示す側面図(右側の側板を取り外した状態を示す図)である。
【図9】従来のベースキャビネットにおける右側の側板を取り外した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ベースキャビネット
10 キャビネット本体
11 側板
12 背板
13 戸当り板
14 底板
20 引き出し
21 引き出し本体
22 前板
23 取手
30 蹴込み付き引き出し
31 引き出し本体
31a 背板
32 下部前板
33 上部前板
34 連結金具
35 取手
36、37 補強ステー
38 ガイドレール
39 ジョイント部材
40 トレー
41 側部材
42 サイドカバー
42a 突出部
42b 切欠部
42c ローラ
43 ステンレスパイプ
44 底部材
44a 前側立ち上がり部
44b 後側立ち上がり部
45 ステンレスパイプ
51 カウンター
52 シンク
53 排水管53
54 排水トラップ
55、56 止水栓
57 排水管カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引き出し本体に前板が固定された引き出しを有するキャビネットにおいて、
前記引き出しには、前記引き出し本体の上部に、前記引き出し本体の幅の1/2以下の幅を有するトレーが、前記前板の上端面よりも上方側に張り出さないような状態で、前記引き出し本体の幅方向に移動可能に設置されており、
前記トレーは、その後部側が前記引き出し本体を構成している背板より後方側に張り出した状態で、前記引き出しに支持することができるようになっていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記トレーは、前記引き出し本体の前後方向に移動可能に設置されている請求項1に記載のキャビネット。
【請求項3】
前記トレーは、その後部側が、前記引き出し本体の前記背板より後方側に張り出さないような状態で、前記引き出しに支持することができるようになっている請求項1または2に記載のキャビネット。
【請求項4】
前記トレーを、その後部側が前記引き出し本体の前記背板より後方側に張り出すように、前記引き出しに設置する場合は、前記トレーの後部側を前記引き出し本体の前記背板の上端面に載置するようになっており、前記トレーの後部側を前記引き出し本体の前記背板の上端面に載置した状態で、前記トレーが略水平になるように、前記トレーの前部側が前記引き出しに支持されている請求項1、2または3に記載のキャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−73270(P2008−73270A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256615(P2006−256615)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)
【Fターム(参考)】