説明

キャビネット

【課題】キャビネットと引出しとに回転防止専用の部品を取り付けることなく、引出しの回転を防止できるキャビネットを提供する。
【解決手段】レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットであって、レール部材が、引出しの左右側面に設けられるインナレール330L,Rと、インナレール330L,Rをガイドすると共にキャビネットの左右側板の内面に設けられるアウタレール320L,Rとから成り、アウタレール320L,Rには、アウタ側ローラ325L、Rを前部に設けるとともに、インナレール330L,Rは後部にインナ側ローラ315L、Rを有すると共に、一つの凸部411を持つ第1ストッパ部410と、二つの凸部421,422を持つ第2ストッパ部420を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンや洗面化粧台を構成するキャビネットとして、引出しを設けたキャビネットが広く用いられている。
図6(A)及び(B)は従来のキャビネット100の一例を示す概略断面図で、(A)は引出し200を閉じた状態を、(B)は引出し200を開けた状態をそれぞれ示している。
【0003】
引出し200はレール部材300を介してキャビネット100に取り付けられている。レール部材300は、引出し200の左右側面に設けられたインナレール310L,310Rと、キャビネット100の左右側板110L,110Rの内面に設けられていて、上記左右のインナレール310L,310Rをガイドするアウタレール320L,320Rと、から構成される。
【0004】
ここで、図7(A)はキャビネットの右側板の内面に取り付けられるアウタレール320Rを示し、図7(B)はアウタローラ320Rにガイドされるインナレール310Rを示している。
【0005】
図8は図7(A)のA−A線断面図である。図7及び図8に示すように、アウタレール320Rは、キャビネット100の右側板110Rの内面に固定されると共に長方形型プレートに形成された取付部321Rと、この取付部321Rの上縁から左横方向(図8の−Y方向)へ突出した上片322Rと、この突片322Rの先端から下方へ延出したローラ脱輪防止片323Rと、取付部321Rの下縁から左横方向へ突出した下片324Rと、取付部321Rの前部に設けたアウタ側ローラ325Rと、から構成されている。
【0006】
インナレール310Rは、引出し200の側板として機能するプレート状の本体部311Rと、本体部311Rの上縁から右横方向(図7(A)のY方向)へ突出しており前述のアウタ側ローラ325Rに載る突片312Rと、本体部311Rの後側上部に設けられると共に、アウタレール320Rの下片324Rに載るインナ側ローラ315Rと、から構成されている。
【0007】
ここで、図9(A)はキャビネット100の左側の側板110Lの内面に取り付けられるアウタレール320Lであり、図9(B)はアウタローラ320Lにガイドされるインナレール310Lである。
【0008】
図10は図9(A)のB−B線に沿った断面図である。図9及び図10に示すように、アウタレール320Lは、左側板110Lの内面に固定されると共に長方形型プレートに形成された取付部321Lと、この取付部321Lの上縁から右横方向(図10のY方向)へ突出した上片322Lと、取付部321Lの下縁から右横方向へ突出した下片324Lと、取付部321Lの前部に設けたアウタ側ローラ325Lと、から構成されている。
【0009】
インナレール310Lは、引出し200の左側板として機能するプレート状の本体部311Lと、本体部311Lの上縁から左横方向(図9の−Y方向)へ突出しており前述のアウタ側ローラ325Lに載る突片312Lと、本体部311Lの後側上部に設けられると共に、アウタレール320Lの下片324Lに載るインナ側ローラ315Lと、から構成されている。
【0010】
左側のアウタレール320L及びインナレール310Lは右側のものと略対称形状に形成されている。ただし、図示した従来例では、左側のアウタレール320Lは、図10に示すように右側のアウタレール320Rのローラ脱落防止片323Rに対応する部材を備えてない。
【0011】
これら左右のインナレール310L,310Rの各突片312L,312Rと各インナ側ローラ315L,315Rとがアウタレール320L、320Rの内部領域S1,S2(図8及び図10参照)に入った状態で、インナ側ローラ315L,315Rがアウタレール320L,320Rの下片324L,324Rに載り、インナレール310L,310Rの突片312L,312Rがアウタ側ローラ325L,325Rに載ることでインナレール310L,310Rはアウタレール320L,320Rに支持される。引出し200の開閉時には、インナレール310L,310Rがアウタレール320L,320Rに対して前後方向に移動する。このとき、アウタ側ローラ325L,325R及びインナ側ローラ315L,315Rが回転することでインナレール310L,310Rがアウタレール320L,320Rに対して円滑に移動する。
【0012】
引出し200の開操作による引出しの脱出を防止するためにインナレール310L,310Rの突片312L,312Rのインナ側ローラ315L,315R寄りの位置にストッパ部350L,350Rが設けられている。ストッパ部350L,350Rは、引出し200の開操作により、インナレール後部のインナ側ローラ315L,315Rがアウタ側ローラ325L,325Rに近接することも防止している。
【0013】
ストッパ部350L,350Rは、図7(B)及び図9(B)に示すように、各インナレール310L,310Rの突片312L,312Rの後部領域から下方に突出した二つの凸部で構成されている。引出し200の開操作時にアウタ側ローラ325L,325Rが凸部に当接すると、引出し200の開操作が規制される。この状態で、さらに引出しの開操作を続けると、アウタ側ローラ325L,325Rが一つ目の凸部を乗り越えるが、二つ目の凸部で再度、開操作が規制される。
【0014】
このようなレール部材300を備えたキャビネット100において、引出し200を最も開いた状態から引出し200を閉じるとき前板210の左端部を押すと、図11に示すようにキャビネット100に対して引出し200が回転する。このとき、左側のインナ側ローラ315Lがアウタレール320Lから脱落すると、引出し200を動かせなくなる。この引出し200の回転を観察すると、引出し200の前板210の左端部を押したときには、右側のアウタ側ローラ325Rとインナ側ローラ315Rとの間隔は殆ど変わらないが、左側のアウタ側ローラ325Rとインナ側ローラ315Rとの間隔が広がっている。すなわち、引き出しは右側のインナ側ローラ周辺を中心として回転している、といえる。この引出しの回転は、引出しの前板の左端を押す、すなわち、アウタレールにローラ脱落防止片が設けられていない側から力を加えた場合に発生し、右側のアウタ側ローラとインナ側ローラとの間隔が狭いほど発生しやすい。
【0015】
このような、引出しの回転によって引出しの移動ができなくなることの問題を考慮した特許文献1が存在する。
【0016】
特許文献1には収納キャビネット用引出しが開示されており、左右のキャビネット側レールの内、一方側のみにローラ脱落防止片が前後に亘って備えられ、ローラ脱落防止片を備えていないレール側のキャビネット及び引出しに、引出しを開けた位置において引出し側レールをキャビネット側レールの方へ案内するガイド手段を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2008−178617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、特許文献1では、キャビネットと引出しとにそれぞれ、引出しの回転防止専用の金具、つまりガイド手段を取り付ける作業が必要である。このため、この技術では、部品点数が増加し、組立て工数が増加するという課題があった。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑み、キャビネットと引出しとに回転防止専用の部品を取り付けることなく、引出しの回転を防止できるキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明は、レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットであって、レール部材が、引出しの左右側面に設けられるインナレールと、インナレールをガイドすると共にキャビネットの左右側板の内面に設けられるアウタレールと、から成り、インナレールは、上縁から横方向に突出したインナ側突片と、後部にインナ側ローラと、を有し、アウタレールは、インナ側突片を載せるアウタ側ローラを前部に設けるとともに、下縁から横方向に突出してインナ側ローラを載せるアウタ側突片を設け、一方のインナレールのインナ側突片は、アウタ側ローラに当接しインナレールとアウタレールとの相対移動を規制する第1ストッパ部と第2ストッパ部とを有し、第1ストッパ部はインナレールの前後方向の中間部から後部の間に設けられ、第2ストッパ部は第1ストッパ部よりもインナ側ローラ寄りの位置に設けられ、第1ストッパ部は一つの凸部で構成され、第2ストッパ部は二つの凸部で構成され、第1ストッパ部と第2ストッパ部との間隔は第2ストッパ部の二つの凸部の間隔よりも広く設定されている。
【0021】
さらに上記目的を達成するために、本発明は、レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットであって、レール部材が、引出しの左右側面に設けられるインナレールと、インナレールをガイドすると共にキャビネットの左右側板の内面に設けられるアウタレールと、から成り、インナレールは、上縁から横方向に突出したインナ側突片と、後部にインナ側ローラと、を有し、アウタレールは、インナ側突片を載せるアウタ側ローラを前部に設けるとともに、下縁から横方向に突出してインナ側ローラを載せるアウタ側突片を設け、一方のインナレールのインナ側突片は、アウタ側ローラに当接しインナレールとアウタレールとの相対移動を規制する第1ストッパ部と第2ストッパ部とを有し、第1ストッパ部はインナレールの前後方向の中間部から後部の間に設けられ、第2ストッパ部は第1ストッパ部よりもインナ側ローラ寄りの位置に設けられ、第1ストッパ部がアウタ側ローラに衝接することで引出しの開動作が規制される引出規制状態で引出しの前板の左右の何れか一方の端部を押して引出しが回転しないように第1ストッパ部の位置が選定されていることを特徴としている。例えば、インナレールの引残長さは、引出規制状態の当該引出しの第1ストッパ部を備えない側の前板端部を押して引出しを閉じるときに引出しが回転しないように、第1ストッパ部を備えた側のインナ側ローラとアウタ側ローラとの距離が広く、例えば従来の間隔よりも50mm〜100mm程度長く設定されている。
【0022】
本発明のキャビネットにおいて、好ましくは、他方のインナレールが、前記第1ストッパ部と前記第2ストッパ部とを有する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、例えば前板の左側端部を押しても、引出しを開けた状態で各側のアウタ側ローラとインナ側ローラとの間隔が広く確保されているため、引出しの回転を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係るキャビネットの引出しの部分斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るキャビネットの部分斜視図である。
【図3】(A)は本発明の第1実施形態に係る右側のアウタレール、(B)は右側のインナレール、(C)は左側のアウタレール、(D)は右側のインナレールを示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るレール部材における第1ストッパ部と第2ストッパ部との位置を説明するための図である。
【図5】(A)〜(F)は本発明の第1実施形態に係るキャビネットの開操作を説明するための図である。
【図6】(A)は引出しを閉じた状態の従来のキャビネットの断面図、(B)は引出しを開けた状態の従来のキャビネットの断面図である。
【図7】(A)は従来の右側のアウタレール、(B)は従来の右側のインナレールを示す図である。
【図8】図7(A)のA−A線に沿った右側のアウタレールの断面図である。
【図9】(A)は従来の左側のアウタレール、(B)は従来の左側のインナレールを示す図である。
【図10】図9(A)のB−B線に沿った左側のアウタレールの断面図である。
【図11】従来のキャビネットの課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、従来技術の部材と同一又は同等の部材には同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1は本発明の第1実施形態に係るキャビネット10の引出し20の部分斜視図であり、図2は本発明の実施形態に係るキャビネット10の部分斜視図である。なお、図2では引出し20の表示を省略している。
【0027】
引出し20は、底板21と、前板22と、背板23と、左右の側板24L,24Rと、正面板22と背板23とを連結する棒材25と、前板22と底板21とを連結する金具26と、を備えている。なお、図1では右側板24Rの表示を省略している。
【0028】
本実施形態に係る引出し20では、左右の側板24L,24Rがそれぞれインナレール330L,330Rで構成されている。
【0029】
これらのインナレール330L,330Rをガイドするアウタレール320L,320Rが、図2に示すように、キャビネット10の左右の側板11L,11Rの内面に取り付けられている。なお、図面では天板や右側板11Rやその内面に取り付けられる右側のアウタレール320Rの表示を省略している。図2中の15は給水管,給湯管,排水管などの配管を収容する配管ボックスであり、この配管ボックス15の上面に配管を通す穴が形成され、配管はこの穴を通って例えば天板に設けた水栓などと接続されている。
【0030】
図3は本発明の第1実施形態に係るレール部材を示す図であり、図中の(A)が右側のアウタレール320R、(B)が右側のインナレール330R、(C)が左側のアウタレール320L、(D)が左側のインナレール330Lを示している。
【0031】
本実施形態において、左右のアウタレール320L,320Rは図7(A)及び図9(A)に示すものと同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、左側のアウタレール320Lは、図10に示す従来技術のアウタレールと同様に、右側のアウタレール320Rのローラ脱落防止片323Rに対応する部材を備えてない。
【0032】
一方、左右のインナレール330L,330Rは、図7(B)及び図9(B)に示す従来のインナレール310L,310Rと以下のように構成が相違する。
【0033】
具体的には、図3(B)に示す右側のインナレール330Rは、引出し20の側板として機能するプレート状の本体部311Rと、本体部311Rの上縁から右横方向(図3(B)のY方向)へ突出しておりアウタ側ローラ325R(図3(A)参照)に載る突片312Rと、本体部311Rの後側上部に設けられると共に、アウタレール320Rの下片324R(図3(A)参照)に載るインナ側ローラ315Rと、を備える点で図7(B)に示す従来のインナレール310Rと同様の構成であるが、従来のインナレール310Rがストッパ部350Rを一つ備えているのに対して、本実施形態のインナレール330Rはストッパ部を二つ備えている。
【0034】
図3(B)に示す右側のインナレール330Rは、アウタ側ローラ325R(図3(A)参照)に当接しインナレール330Rとアウタレール320Rとの相対移動を規制する第1ストッパ部410と第2ストッパ部420とを備えている。図3(B)に示すように、第1ストッパ部410は一つの凸部411で構成され、第2ストッパ部420は二つの凸部421,422で構成されている。
【0035】
図4は第1ストッパ部410と第2ストッパ部420周辺の拡大模式図であり、凸部411,421,422は、インナレール330Rの突片312Rを部分的に下方へ突出、例えば下方へ山型に突出させて形成されている。第1ストッパ部410の凸部411と第2ストッパ部420の前側の凸部421との間隔W1は、第2ストッパ部420の二つの凸部421,422の間隔W2よりも広く設定されている。
【0036】
本実施形態に係る第1ストッパ部410は図3(B)に示すように、インナレール330Rの前後方向の中間部から後部の間に設けられ、第2ストッパ部420は第1ストッパ部410よりもインナ側ローラ315R寄りの位置に設けられる。なお、インナ側ローラ315R寄りに設けられている点で、本実施形態に係る第2ストッパ部420が従来のストッパ部に該当するが、このレール後端側の第2ストッパ部420よりも前側でインナレール330Rとアウタレール320Rとの相対移動を規制する第1ストッパ部410を備える点で、従来のインナレール310Rと構成が相違している。
【0037】
左側のインナレール330Lは右側のものと略対称形状に形成されており、右側と同様に、二つのストッパ部410,420を備えている。
【0038】
図5(A)は本実施形態に係る引出し20が閉じた状態のキャビネット10の断面図である。この状態では、図5(B)に示すように、アウタ側ローラ315L,315Rと第1ストッパ部410とは互いに離間している。
【0039】
図5(A)の閉状態から引き出し操作を行って、引出し20を開けると、引出し20の移動で第1ストッパ部410も移動する。そして開動作を続けると第1ストッパ部410の凸部411がアウタ側ローラ315L,315Rに衝接する。これにより、インナレール330L,330Rのアウタレール320L,320Rに対する移動、つまり引出し20の開動作が規制される。以下、開動作が規制されたこの状態を『第1規制状態』と呼ぶ。このとき、引出し20は、キャビネット10内に引出し奥部を長さR1残した状態で、引き出されている。
本実施形態では、この引残し量R1を、下記のように設定していることを特徴とする。
【0040】
引残し量R1は、第1規制状態で引出し20の前板22の左右の何れか一方の端部を押しても、引出し20が回転しないように設定されている。例えば、第1規制状態の当該引出しを押して引出しを閉じるときに引出しが回転しないように、インナ側ローラとアウタ側ローラとの間隔が広く、例えば従来の間隔よりも50mm〜100mm程度広くなるように引残し量R1が設定されている。ここで、引残し量を大きくすると、インナ側ローラとアウタ側ローラとの間隔が大きくなるのである。言い換えると、インナ側ローラとアウタ側ローラとの間隔を広くする手法として、引残し量を大きくする方法がある。このように、本実施形態では、第1ストッパ部410の位置が選定されている。
【0041】
図5(C)及び(D)の第1規制状態からさらに引出し20を引き出すように力を加えると、アウタ側ローラ315L,315Rが第1ストッパ部410の凸部411を乗り越える。そして、さらに引出し20を引き出すと、第2ストッパ部420の前側の凸部421がアウタ側ローラ315L,315Rに衝接する。これにより、インナレール330L,330Rのアウタレール320L,320Rに対する移動、つまり引出し20の開動作が規制される。以下、この開動作を規制する状態を『第2規制状態』と呼ぶ。このとき、引出し20は、キャビネット10内に引出し奥部を長さR2残した状態で、引き出されている。
【0042】
この引残し量R2は、第2規制状態でローラ脱落防止片が設けられていない側の前板22の端部を押したときに、引出し20が回転することを防止できない寸法に設定されている。
【0043】
なお、第2規制状態で、さらに引出しの開操作を続けると、アウタ側ローラ325L,325Rが第2ストッパ部420の前側の凸部421を乗り越えるが、後側の凸部422で再度、開操作が規制される。このように、後側の第2ストッパ部420は、キャビネット10から引出し20が外れ難くする事を主な機能としている。
【0044】
以上のように構成された本実施形態に係るキャビネット10によれば、図5(C)及び図5(D)に示す第1規制状態から、引出し20を閉じるときに、アウタレールにローラ脱落防止片が設けられていない側、すなわち前板22の左側端部を押しても、引出し20を開けた状態(第1規制状態)で各側のアウタ側ローラ325L,325Rとインナ側ローラ315L,315Rとの間隔が広く確保されているため、つまり、前側のアウタ側ローラ325L,325Rと後側のインナ側ローラ315L,315Rとの距離が従来の構造に比べて、例えば50mm〜100程度広いため、引出し20を回転させずにそのまま閉じることができる。これは、引出し20の前板22の左端部を押しても、その力が引出し20を回転させる力として働かず、左右各側のインナレール330L,330Rの移動用の力として働くことになるからと考えられる。
【0045】
第1ストッパ部410を備えることで、アウタ側ローラ325L,325Rとインナ側ローラ315L,315Rとの広い間隔を確実に確保できる。これにより、第2ストッパ部420によるローラ間の間隔よりも広くできるので、引出しに重い物品を入れた状態で引出し20を開けても、引出し20が前下がりに傾斜することなく安定した状態で引出しを開けることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係るキャビネットは、第1実施形態と異なり、左右のインナレールの何れか一方にだけ、第1ストッパ部410を備えている。つまり、一方のインナレールは第1ストッパ部410と第2ストッパ部420との両方を備えるが、他方のインナレールは第2ストッパ部420だけを備えている。
本第2実施形態でも、第1実施形態と同様に、引出し20を円滑に閉じることができる。
【0047】
〔第3実施形態〕
第1実施形態及び第2実施形態が第2ストッパ部420として二つの凸部421,422を備えているのに対して、本発明の第3実施形態に係るキャビネットは、第2ストッパ部420の二つの凸部421,422の何れか一方を省略して構成されていることを特徴としている。
本第3実施形態でも、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、引出し20を円滑に閉じることができる。
【0048】
〔実施例〕
インナレール330Rの全長が450mm程度である場合、第1ストッパ部410の凸部411をレール後端から110mm程度の位置に設け、第2ストッパ部420の後側の凸部422をレール後端から57mm程度の位置に設けた。そして、第2ストッパ部420の二つの凸部421,422の間隔W2を17mm程度に設定した。この構成において、図5(C)及び図5(D)に示す第1規制状態から、引出し20を閉じるときに、アウタレールにローラ脱落防止片が設けられていない側、すなわち前板22の左側端部を押しても、引出し20を回転させずにそのまま閉じることができた。
【0049】
以上説明したが、本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
【0050】
本発明は、システムキッチンや洗面化粧台を構成するキャビネットに適用できる。
第1ストッパ部410の凸部及び第2ストッパ部420の二つの凸部の形状は、図示の例に限らず、三角型、四角型、片状など様々な形態のものを利用してもよい。また、第1ストッパ部410の凸部及び第2ストッパ部420の二つの凸部は、インナレールの突片に円柱状のピン等の別部材を取り付ける構成としてもよい。
前述の説明では、左側のアウタレール320Lは、図10に示す従来技術のアウタレールと同様に、右側のアウタレール320Rのローラ脱落防止片323Rに対応する部材を備えてない場合のキャビネット構成例を説明したが、左右の何れのアウタレールもローラ脱落防止片323Rを有する場合であっても或いは両側とも有しない場合であっても本発明を適用し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0051】
10 キャビネット
11L,11R 側板
15 配管ボックス
20,20A 引出し
21 底板
22 前板
23 背板
24L,24R 側板
25 棒材
26 金具
320L,320R アウタレール
330L,330R インナレール
410 第1ストッパ部
411 第1ストッパ部の凸部
420 第2ストッパ部
421,422 第2ストッパ部の凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットであって、
上記レール部材が、上記引出しの左右側面に設けられるインナレールと、上記インナレールをガイドすると共に上記キャビネットの左右側板の内面に設けられるアウタレールと、から成り、
上記インナレールは、上縁から横方向に突出したインナ側突片と、後部にインナ側ローラと、を有し、
上記アウタレールは、上記インナ側突片を載せるアウタ側ローラを前部に設けるとともに、下縁から横方向に突出して上記インナ側ローラを載せるアウタ側突片を設け、
一方のインナレールのインナ側突片は、アウタ側ローラに当接しインナレールとアウタレールとの相対移動を規制する第1ストッパ部と第2ストッパ部とを有し、
上記第1ストッパ部は、上記インナレールの前後方向の中間部から後部の間に設けられ、
上記第2ストッパ部は、上記第1ストッパ部よりも上記インナ側ローラ寄りの位置に設けられ、
上記第1ストッパ部は一つの凸部で構成され、
上記第2ストッパ部は二つの凸部で構成され、
上記第1ストッパ部と上記第2ストッパ部との間隔は、上記第2ストッパ部の二つの凸部の間隔よりも広く設定されていることを特徴とする、キャビネット。
【請求項2】
レール部材によって引き出し自在に設けられた引出しを備えたキャビネットであって、
上記レール部材が、上記引出しの左右側面に設けられるインナレールと、上記インナレールをガイドすると共に上記キャビネットの左右側板の内面に設けられるアウタレールと、から成り、
上記インナレールは、上縁から横方向に突出したインナ側突片と、後部にインナ側ローラと、を有し、
上記アウタレールは、上記インナ側突片を載せるアウタ側ローラを前部に設けるとともに、下縁から横方向に突出して上記インナ側ローラを載せるアウタ側突片を設け、
一方のインナレールのインナ側突片は、アウタ側ローラに当接しインナレールとアウタレールとの相対移動を規制する第1ストッパ部と第2ストッパ部とを有し、
上記第1ストッパ部は、上記インナレールの前後方向の中間部から後部の間に設けられ、
上記第2ストッパ部は、上記第1ストッパ部よりも上記インナ側ローラ寄りの位置に設けられ、
上記第1ストッパ部が上記アウタ側ローラに衝接することで引出しの開動作が規制される引出規制状態で、引出しの前板の左右の何れか一方の端部を押して引出しが回転しないように第1ストッパ部の位置が選定されていることを特徴とする、キャビネット。
【請求項3】
さらに、他方のインナレールが、前記第1ストッパ部と前記第2ストッパ部とを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のキャビネット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−234943(P2011−234943A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109719(P2010−109719)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(510129521)株式会社ハーフェレ・ジャパン (1)
【出願人】(392008529)ヤマハリビングテック株式会社 (349)
【Fターム(参考)】