説明

キャブチルト装置

【課題】トーションバーの捩じり調整を容易にする。
【解決手段】一対のトーションバー18a、18bの自由端に、夫々、その軸心を中心として回動可能に取り付けられた基端から車両後方へと延び、先端がキャブ底面と当接するアーム20と、一体的に固定された基端からアーム20に沿いつつ車両後方へと延び、アーム20の下面に対向するレバーと、を取り付ける。また、アーム20とレバーとの対向部分に、トーションバー18aの捩じりを、レバーを介してアーム20に伝達すると共に、レバーとアーム20とがなす角度を調整するボルト24を介在させる。そして、ボルト24の締め代を調整することで、レバーは第1及び第2のトーションバー18a、18bの軸心を中心として回動し、第1及び第2のトーションバー18a、18bの捩じり角度を増減させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブのチルトをアシストするキャブチルト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブ下方にエンジンルームが位置するキャブオーバ型車両には、特許文献1に記載されるように、エンジン整備性向上のため、キャブをチルトアップさせるキャブチルト装置が備えられているものがある。キャブチルト装置は、フレームの左右方向に2本配設されたトーションバーの捩じりを利用し、キャブを小さな力でチルトアップできるように構成されている。
【0003】
ここで、トーションバーの捩じりは、チルトダウン時に、トーションバーの一端に固定されたアームが、キャブ底面により押し下げられて生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−8858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャブの重量は、例えば、オプション部品の追加などによって増加し、チルトアップに要するアシスト力が変化するため、キャブ重量に応じてトーションバーの捩じりを調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、トーションバーの捩じりは、例えば、キャブ底面とアームとの間にスペーサを介装して調整されることから、所望厚さのスペーサの手配や、スペーサの取付作業に多大な手間を要する。
【0007】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、トーションバーの捩じりを容易に調整可能なキャブチルト装置を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明に係るキャブチルト装置は、フレームの左右に夫々固定された一対のキャブヒンジブラケットと、キャブの前方下面に車幅方向に離隔して固定され、夫々、異なるキャブヒンジブラケットに回動可能に取り付けられた一対のキャブマウントブラケットと、一端が一方のキャブヒンジブラケットに相対回転不能に固定され、他端が他方のキャブヒンジブラケットに回動可能に軸支された第1のトーションバーと、一端が他方のキャブヒンジブラケットに相対回転不能に固定され、他端が一方のキャブヒンジブラケットに回動可能に軸支された第2のトーションバーと、第1及び第2のトーションバーの他端において、夫々、その軸心を中心として回動可能に取り付けられた基端から車両後方へと延び、先端がキャブ底面と当接するアームと、第1及び第2のトーションバーの他端に夫々一体的に固定された基端からアームに沿いつつ車両後方へと延び、少なくとも一部がアームの下面又は上面に対向するレバーと、レバーとアームとの対向部分に夫々介在し、第1及び第2のトーションバーの捩じりをレバーを介してアームに伝達すると共に、レバーとアームとがなす角度を調整する調整手段と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のキャブチルト装置によれば、トーションバーの捩じりを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】キャブチルト装置の第1実施形態の一例を示す斜視図
【図2】図1のキャブチルト装置を車両前方より見た断面図
【図3】図1のキャブチルト装置を車両側方より見た側面図
【図4】レバーにアームを組み付けた状態の斜視図
【図5】調整ボルトを増し締め方向に回転した場合のレバーを示す説明図
【図6】調整ボルトを緩み方向に回転した場合のレバーを示す説明図
【図7】キャブチルト装置の第2実施形態の一例を示す斜視図
【図8】レバーの一部がアームの上面と対向する場合の要部説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1〜図4は、キャブチルト装置の第1実施形態の一例を示す。
【0012】
梯子型フレームを構成する左右のサイドレール10には、車両前方に左右一対のキャブヒンジブラケット12が対向して固定される。キャブ14の前方下面には、車幅方向に所定距離を隔てて一対のキャブマウントブラケット16が配設される。キャブマウントブラケット16は、夫々、異なるキャブヒンジブラケット12に回動可能に取り付けられる。左右のサイドレール10の間には、第1のトーションバー18aと第2のトーションバー18bが配設される。第1のトーションバー18aは、一端が右側のキャブヒンジブラケット12aに相対回転不能に固定され、他端が左側のキャブヒンジブラケット12bから外方に突出するように、キャブヒンジブラケット12bに回動可能に軸支される。第2のトーションバー18bは、一端が左側のキャブヒンジブラケット12bに相対回転不能に固定され、他端が右側のキャブヒンジブラケット12aから外方に突出するように、キャブヒンジブラケット12に回動可能に軸支される。
【0013】
第1及び第2のトーションバー18a、18bの他端には、夫々、キャブ14を押し上げるために、その軸心を中心として回動しつつ車両後方へと延びるアーム20が取り付けられる。また、第1及び第2のトーションバー18a、18bの他端には、夫々、その捩じりをチルトアップのアシスト力に変換するために、アーム20に沿いつつ車両後方へと延びるレバー22が一体的に固定される。
【0014】
具体的には、レバー22は、第1及び第2のトーションバー18a、18bに同軸に固定される円筒部22aと、円筒部22aの外周面のうち、軸方向の中間から車両後方へと延出する延出部22bと、を含んで構成される。なお、円筒部22aは、第1及び第2のトーションバー18a、18bと一体成形されてもよい。
【0015】
また、アーム20は、一対の側板部20aと、連結部20bと、を含んで構成される。
一対の側板部20aは、第1及び第2のトーションバー18a、18bの軸心に対して、夫々、略垂直な面上に板面が延び、レバー22の延出部22bを左右から挟みこむように、円筒部22aの外周面に倣った円弧20cを有しつつここから車両後方へと延びる。そして、円弧20cは、夫々、円筒部22aの外周面のうち、延出部22bの両側に下方から係合する。
【0016】
連結部20bは、一対の側板部20aの上端のうち、少なくとも円弧20cを除く部分を相互に連結する。そして、連結部20bは、その車両後方側でキャブ14の底面(例えば、ラバー製のコンタクトシート)14aと当接する。また、レバー22の延出部22bの先端が、連結部20bの下面と対向する。
【0017】
レバー22のアシスト力をアーム20に伝達するボルト24は、その軸部24aがレバー22の先端に螺合されて、先端部24bがアーム20の連結部20bの下面に当接する。
【0018】
また、ボルト24は、螺合の程度により、レバー22とアーム20とがなす角度を調整する。例えば、第1及び第2のトーションバー18a、18bの軸心とレバー22の特定の1点(例えば、レバー22のうち軸心より最も離隔した点)とを結ぶ直線と、第1及び第2のトーションバー18a、18bの軸心とアーム20の特定の1点(例えば、アーム20のうち軸心より最も離隔した点)とを結ぶ直線と、がなす角度αを調整する。なお、ボルト24は、調整した角度αを維持すべく、緩み止めの手段(例えば、ロックナット)を設けていることが望ましい。
【0019】
図5に示すように、ボルト24を増し締め方向に回転していくと、その回転量に応じて、レバー22はアーム20に対して離れる方向(図中の矢印方向)に回動する。そして、回動した角度Δαだけ第1及び第2のトーションバー18a、18bの捩じり角度が増加する。
【0020】
一方、図6に示すように、ボルト24を緩み方向に回転していくと、その回転量に応じて、レバー22はアーム20に対して接近する方向(図中の矢印方向)に回動する。そして、回動した角度Δαだけ第1及び第2のトーションバー18a、18bの捩じり角度が減少する。
【0021】
なお、ボルト24の先端部24bは、連結部20bとキャブ14の底面14aとの当接部よりも基端寄りで、連結部20bの下面と当接する。これにより、連結部20bとキャブ14との当接部に下向きに加わるキャブ14の荷重の一部が、ボルト24の先端部24bを支点としつつ、支点に対して当接部と反対側の円弧20cに上向きの力を伝える。したがって、円弧20cは、レバー22の円筒部22aに押し付けられるので、円弧20cの中心角を180°以下としても、アーム20が、レバー22から外れることがない。
【0022】
このようなキャブチルト装置によれば、ボルト24の締め代を調整することで、レバー22は第1及び第2のトーションバー18a、18bの軸心を中心として回動し、回動した角度Δαだけ第1及び第2のトーションバー18a、18bの捩じり角度を増減させることができる。したがって、スペーサを必須とせずに、わずかな部品点数の増加で第1及び第2のトーションバー18a、18bの捩じりを容易に調整することができ、所望厚さのスペーサの手配や、スペーサの取付作業に多大な手間を要することがない。また、レバー22をアーム20内に収めることができるので、レバー22とアーム20との組み合わせを用いない従来のキャブチルト装置と比較しても、キャブ14の底面14a下におけるスペースを余分に必要としない。
【0023】
なお、第1及び第2のトーションバー18a、18bと同軸に固定される円筒部22aに代えて角筒部とすることもできる。この場合、レバー22の角筒部には、円弧20cに倣って溝を形成すればよい。これにより、円弧20cを有する側板部20aが溝に嵌合しつつ、レバー22とアーム20が安定的な相対回動を行うことができる。
【0024】
次に、図7は、キャブチルト装置の第2実施形態の一例を示す。なお、第1実施形態で説明した内容と重複する部分については、説明を省略する。
【0025】
本実施例において、トーションバー18a、18bの他端がキャブヒンジブラケット12の外方に突出した突出部に、内方から、アーム20、レバー22がこの順で取り付けられる。アーム20は、第1及び第2のトーションバー18a、18bの他端に回動可能に取り付けられる。レバー22は、第1及び第2のトーションバー18a、18bの他端に一体的に固定された基端からアーム20に沿いつつ車両後方へと延びる。レバー22の先端には、車幅内方に突出した突出部22cが形成され、突出部22cの上面がアーム20の下面と対向する。突出部22cには、ボルト24の軸部24aが螺合されて、先端部24bがアーム20の下面に当接する。
【0026】
また、図8に示すように、レバー22とアーム20の位置関係について、レバー22の少なくとも一部が、アーム20の上面と対向するようにしてもよい。この場合、レバー22のアシスト力をアーム20へ伝達できるように、例えば、ボルト24の軸部24aが、レバー22の長手方向に穿設した貫通長孔26(ボルト24頭部の最小径未満の幅)に挿通されて、アーム20に螺合していればよい。
【符号の説明】
【0027】
10 サイドレール
12 キャブヒンジブラケット
14 キャブ
14a キャブ底面
16 キャブマウントブラケット
18a、18b トーションバー
20 アーム
20a 側板部
20b 連結部
20c 円弧
22 レバー
22a 円筒部
22b 延出部
24 ボルト
24a 軸部
24b 先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの左右に夫々固定された一対のキャブヒンジブラケットと、
キャブの前方下面に車幅方向に離隔して固定され、夫々、異なる前記キャブヒンジブラケットに回動可能に取り付けられた一対のキャブマウントブラケットと、
一端が一方の前記キャブヒンジブラケットに相対回転不能に固定され、他端が他方の前記キャブヒンジブラケットに回動可能に軸支された第1のトーションバーと、
一端が他方の前記キャブヒンジブラケットに相対回転不能に固定され、他端が一方の前記キャブヒンジブラケットに回動可能に軸支された第2のトーションバーと、
前記第1及び第2のトーションバーの他端において、夫々、その軸心を中心として回動可能に取り付けられた基端から車両後方へと延び、先端が前記キャブ底面と当接するアームと、
前記第1及び第2のトーションバーの他端に夫々一体的に固定された基端から前記アームに沿いつつ車両後方へと延び、少なくとも一部が前記アームの下面又は上面に対向するレバーと、
前記レバーと前記アームとの対向部分に夫々介在し、前記第1及び第2のトーションバーの捩じりを前記レバーを介して前記アームに伝達すると共に、前記レバーと前記アームとがなす角度を調整する調整手段と、
を含んで構成されたことを特徴とするキャブチルト装置。
【請求項2】
前記レバーは、
前記第1及び第2のトーションバーの他端と同軸に固定される円筒部と、
前記円筒部の外周面のうち軸方向の中間から車両後方へ延びる延出部と、
を含んで構成され、
前記アームは、
前記第1及び第2のトーションバーの軸心に対して、夫々、略垂直な面上に板面が延び、前記レバーの前記延出部を左右から挟みこむように、前記円筒部の外周面に倣った円弧を有しつつここから車両後方へと延びる一対の側板部と、
前記一対の側板部の上端のうち、少なくとも前記円弧を除く部分を相互に連結する連結部と、
を含んで構成されたことを特徴とする請求項1に記載のキャブチルト装置。
【請求項3】
前記レバーは、その少なくとも一部が前記アームの下面に対向し、
前記調整手段は、前記レバーの先端に軸部が螺合して、先端部が前記アームに当接するボルトを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャブチルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−11966(P2012−11966A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152652(P2010−152652)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(504334865)日産ライトトラック株式会社 (60)