説明

キャリアおよび二成分現像剤

【課題】 耐久性および環境安定性が優れたキャリアおよび二成分現像剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 コア材にコート樹脂を被覆したキャリアであって、コート樹脂は、コア材の重量に対して5重量%以上20重量%以下となるようにコア材に被覆することによって、耐久性を向上させ、さらにコート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有することによって、環境安定性を向上させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤およびそのキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
現像剤を用いた画像形成方法には、カールソンプロセスを応用した電子写真方式が広く用いられている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程および定着工程などによって画像が形成される。帯電工程では、感光体の表面を暗所で均一に帯電する。露光工程では、帯電した感光体に原稿像を投射することにより、光の当たった部分の帯電が除去されて感光体の表面に静電潜像を形成する。現像工程では、感光体表面に形成された静電潜像に現像剤のトナーを付着させることにより可視像を形成する。転写工程では、感光体表面に形成された可視像に紙およびシートなどの記録媒体を接触させ、可視像と接触している記録媒体の面とは反対側からコロナ放電を行い、トナーとは逆の極性の電荷を記録媒体に与えることにより、可視像を記録媒体に転写する。定着工程では、加熱および加圧などの手段により記録媒体に転写された可視像を定着する。クリーニング工程では、記録媒体に転写されずに感光体の表面に残ったトナーを回収する。以上の工程を繰り返すことによって、電子写真プロセスを利用した画像形成装置は、記録媒体上に所望の画像を形成する。
【0003】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置に用いられる現像剤としては、粉砕法および重合法などによって製造されるトナーを含むことが知られている。粉砕法とは、熱可塑性樹脂、着色剤、帯電制御剤およびオフセット防止剤としてのワックスなどを溶融混練した後、冷却して固化させて溶融混練物を調製し、その溶融混練物を粉砕および分級することによってトナーを調製する方法である。また、重合法とは、懸濁重合法および乳化重合法などによってトナーを調製する方法である。
【0004】
現在、複写機およびプリンタなどの画像形成装置は、高速化および小型化が図られており、長期間高画質な画像が得るために、耐久性および環境安定性の優れた現像剤の開発が求められている。
【0005】
現像剤がトナーとキャリアとからなる二成分現像剤の場合、耐久性および環境安定性の優れた現像剤を開発するためには、画像形成装置内で、現像剤を安定して帯電させるために、コア材の種類、コート樹脂の種類およびコート樹脂の量の最適化などのキャリアの開発が、トナーの開発とともに重要である。
【0006】
キャリアの開発の典型的な従来の技術は、特許文献1に記載されている。特許文献1のカラー現像剤は、トナーとキャリアからなる現像剤で、キャリアが、キャリア芯材(コア材)重量に対して、所定の樹脂(コート樹脂)を0.1〜5.0重量%被覆しているカラー現像剤である。
【0007】
また他の従来の技術は、特許文献2に記載されている。特許文献2の電子写真用二成分現像剤は、コート量がコア材に対して5.0重量%以上であるキャリアと、外添剤を添加したトナーとからなり、現像剤中のトナー濃度を規定した電子写真用二成分現像剤である。
【0008】
【特許文献1】特開平4−177369号公報
【特許文献2】特開2004−144777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現像剤は、感光体の表面に形成された静電潜像に現像剤のトナーが円滑に付着できるような適度な流動性および帯電性を有する必要がある。現像剤の流動性および帯電性は、キャリアの組成によって変化する。
【0010】
特許文献1に開示されているカラー現像剤によると、キャリア芯材に、所定の樹脂をキャリア芯材の重量に対して0.1〜5.0重量%となるように被覆しているキャリアを用いることによって、キャリア表面にトナーが薄膜を形成するなどの汚染を防ぐことができ、耐久性および環境安定性に優れた現像剤となる。しかし、近年、画像形成装置は、高速化および小型化されており、そのような画像形成装置を用いて画像形成を行うと、現像剤に与えられるストレスが、以前の画像形成装置より大きいので、上記トナーをそのまま長期間使用すると、樹脂がキャリア芯材からはがれ落ち、キャリア芯材が表面に露出してしまう。つまり、高速化および小型化された画像形成装置を用いて画像形成する場合においては、初期状態のキャリア特性を維持できない耐久性が不充分な現像剤であり、得られた画像は、画像濃度の低下などを引き起こす可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に開示したように、本願発明者らは、今後さらに高速化および小型化された画像形成装置に使用した場合であっても、キャリアが表面に露出しにくい、キャリア特性を充分に維持できる耐久性のより優れた現像剤を得るために、キャリアのコート量がコア材に対して5.0重量%以上となるように、コート樹脂を被覆したキャリアを使用することを提案した。その際、キャリアに多量のコート樹脂を被覆すると、コート樹脂の種類によっては、環境特性などのキャリア特性を確保できず、また、画像形成時において、高温高湿下では、現像剤中のトナー濃度が安定せず、トナー飛散および白地カブリなどを起こす環境安定性の劣った現像剤となる可能性があるという問題を、外添剤を添加したトナーを用い、さらに、そのトナー濃度を規定することによって解決し、耐久性および環境安定性の優れた現像剤が得られることを見出した。
【0012】
さらに、本願発明者らは、キャリアを被覆するコート樹脂に酸化チタン微粉末を含有させることが、耐久性および環境安定性の優れた現像剤を得るために、非常に有効であることを見出した。
【0013】
本発明の目的は、耐久性および環境安定性のより優れたキャリアおよび二成分現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、二成分現像剤を構成するキャリアであって、
コア材にコート樹脂が被覆されており、
コート樹脂は、コア材の重量に対して5重量%以上20重量%以下であり、
コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有することを特徴とするキャリアである。
【0015】
また本発明は、コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末の含有量が3重量%以上50重量%以下であることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤であって、
キャリアが前記のキャリアであることを特徴とする二成分現像剤である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コア材にコート樹脂を被覆したキャリアである。コート樹脂は、コア材の重量に対して5重量%以上20重量%以下であり、コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有する。
【0018】
環境安定性を図るためには、トナー帯電量をできるだけ高く設定する必要がある。しかし、トナー帯電量を高くした場合、求めている画像濃度が得られず、従来のキャリア設計では両立が難しい。
【0019】
そこで、強誘電体であるチタン酸バリウム微粉末をコート樹脂中に添加することで、現像剤の誘電率を大きくし、現像スリーブ−感光体間の電界強度を上げ、高帯電量でも高現像性が確保できる。
【0020】
コート樹脂が、コア材の重量に対して5重量%以上となるように被覆することによって、耐久性が優れたキャリアとなり、さらに、コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有することによって、環境安定性の優れたキャリアとなる。
【0021】
また本発明によれば、コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末が3重量%以上50重量%以下となるように含有することによって、環境安定性のより優れたキャリアとなる。
【0022】
また本発明によれば、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤であり、キャリアとしては、前記キャリアを用いる二成分現像剤である。キャリアが耐久性および環境安定性の優れたものであるので、耐久性および環境安定性の優れた二成分現像剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、チタン酸バリウム微粉末を含んだコート樹脂をコア材に被覆したキャリアおよびこのキャリアを含んだ二成分現像剤である。
【0024】
[キャリア]
本発明であるキャリアは、コート樹脂をコア材に被覆して構成される。キャリアは、粉体特性、電気特性および磁気特性といった要素があり、現像システムに合わせた性能が要求される。近年では、摩擦帯電性、環境安定性および耐久性向上のためにコア材をコート樹脂で被覆したキャリアが広く使用されるようになっている。
【0025】
(コート樹脂)
キャリアは、チタン酸バリウム微粉末が含有されたコート樹脂を含んで構成される。コート樹脂は、公知の樹脂を用いることができ、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂およびシリコーン系樹脂などを挙げることができる。コート樹脂は、噴霧法および浸漬法といった方法によりコア材に被覆する。コート樹脂は、コア材の重量に対して5重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上10重量%以下であることがより好ましい。5重量%より少ないと、コート樹脂がはがれやすくなり、耐久性の劣るキャリアとなり、20重量%より多いと、環境安定性の劣るキャリアとなってしまう。また、コート樹脂にカーボンブラックを添加してもよい。そうすることによって、帯電量上昇を抑制し、安定した画像濃度を維持することができる。
【0026】
(チタン酸バリウム微粉末)
コート樹脂は、チタン酸バリウム微粉末を含有して構成される。コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有させることによって、環境安定性の優れたキャリアとなる。チタン酸バリウム微粉末は、室温では正方晶系となる。また、外部電場により反転可能な双極子モーメントを持つため強誘電性を示す。したがって、チタン酸バリウムは、チタン酸バリウムセラミックスとしてチタン酸バリウム単体で、その誘電性を利用して、コンデンサ材料、焦電体、圧電体として用いられることが知られている。
【0027】
チタン酸バリウム微粉末は、微粉末の表面を疎水化処理したものが好ましい。疎水化処理には、ジメチルジクロルシランおよびアミロシランなどのシランカップリング剤による処理、シリコーンオイルによる処理およびフッ素含有の成分などによる処理などを挙げることができる。
【0028】
コート樹脂中に酸化チタン微粉末を含有させることも、環境安定性の優れたキャリアを得るために有効な手段ではあるが、チタン酸バリウム微粉末を添加した場合の方が、環境安定性に対してより効果が大きく、少量の添加で同様の効果を発揮できるというものである。具体的にはコート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末を3重量%添加しただけで、環境安定性に対して充分な効果が発現する。しかし、コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末を50重量%以上添加した場合、画像濃度が低くなり、環境安定性以外の面で弊害が生じた。その結果、キャリアコート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末含有量は、3重量%以上50重量%以下が好ましく、3重量%以上40重量%以下がより好ましい。チタン酸バリウム微粉末の平均粒径は、10nm以上1.0μm以下であることが好ましい。
【0029】
(コア材)
キャリアは、コア材を含んで構成される。コア材は、公知のものを用いることができ、鉄粉およびフェライトなどを挙げることができる。その形状は、不定形から球形まで用いることができる。さらに、平均粒径は、10μm以上1000μm以下のものを用いることができ、さらに好ましくは、40μm以上100μm以下である。40μmより小さいと、キャリアが感光体に付着して流出してしまう現象、いわゆるキャリア上がりを引き起こし、現像剤量が、徐々に減少することによって、現像剤中のトナー濃度がうまく制御できなくなってしまう可能性が高くなる。さらに、キャリア上がりが顕著になると、現像剤が、記録材上に現れてしまう。また、100μmより大きいと、現像剤のトナーを現像ローラから感光体へ移動させる際、二成分現像剤の穂立ち(磁気ブラシ)が粗く、安定した画質を供給することが困難となったり、二成分現像剤が現像槽からこぼれてしまうような現象を引き起こしたりする可能性が生じる。
【0030】
また、鉄粉は、公知のものを用いることができ、還元鉄粉、アトマイズ鉄粉およびチッ化鉄粉などを挙げることができる。還元鉄粉およびチッ化鉄粉は、不定形であるので、球形化処理を行ってもよい。フェライトキャリアは、公知のものを用いることができ、銅、ニッケル、亜鉛、コバルト、マンガンおよびカルシウムなどのフェライト粉末を挙げることができる。フェライトキャリアは、球形で、流動性がよく、化学的にも安定であるので、高画質化、長寿命化に好ましく用いられる。
【0031】
[トナー]
本発明である二成分現像剤を構成するトナーは、結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤などを含むトナー母体粒子に外添剤を添加して構成される。
【0032】
(結着樹脂)
トナー母体粒子は、結着樹脂を含んで構成される。結着樹脂としては、公知の樹脂を用いることができ、たとえば、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル−無水マレイン酸共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂およびアクリル樹脂などを挙げることができる。上記の樹脂を単独で用いてもよいし、複数の混合物で用いてもよい。また、共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、グラフト共重合体でもよい。分子量分布が、1つのピークのものでもよいし、2つのピークのものでもよい。
【0033】
また、熱的性質として、ガラス転移点(Tg)が40℃以上70℃以下であることが好ましい。40℃より低いと、画像形成装置内の温度が上昇した場合に、トナーが溶融してしまい、トナー同士の凝集が発生してしまう。また、70℃より高いと、定着性が劣ってしまい、実用性に乏しい。
【0034】
(着色剤)
トナー母体粒子は、着色剤を含んで構成される。着色剤としては、公知のものを用いることができ、たとえば、カーボンブラック、鉄黒、合金アゾ染料、油溶性染料および顔料などを挙げることができる。着色剤は、結着樹脂100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下が好ましく、3重量部以上8重量部以下がより好ましい。1重量部より少ないと、充分な画像濃度を確保できなくなり、10重量部より多いと、着色剤が樹脂中に均一に分散できなくなるので、高品質な画像を得られなくなる。
【0035】
(離型剤)
トナー母体粒子は、離型剤としてワックスを含んで構成される。ワックスとしては、公知のものを用いることができ、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体およびポリオレフィンなどから選ばれる少なくとも一種からなるワックスを挙げることができる。ワックスは、結着樹脂100重量部に対して、1重量部以上10重量部以下が好ましく、2重量部以上5重量部以下がより好ましい。1重量部より少ないと、オフセットが発生しやすくなる。10重量部より多いと、フィルミングが発生しやすくなる。
【0036】
(帯電制御剤)
トナー母体粒子は、帯電制御剤を含んで構成される。帯電制御剤は、正帯電制御用帯電制御剤と負帯電制御用帯電制御剤との二種類があり、アゾ系染料、カルボン酸金属錯体、四級アンモニウム化合物およびニグロシン系染料などを挙げることができる。帯電制御剤は、樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上5重量部以下が好ましく、0.5重量部以上2重量部以下がより好ましい。0.1重量部より少ないと、充分な帯電性を付与することができない。5重量部より多いと、帯電制御剤が、樹脂中に均一に混合できない。
【0037】
(外添剤)
トナーは、トナー母体粒子に外添剤を添加して構成される。外添剤は、公知のものを用いることでき、シリカ、チタン、アルミナ、マグネタイトおよびフェライトなどの金属酸化物微粒子ならびにチッ化ケイ素およびチッ化ホウ素などの金属チッ化物微粒子などの微粉末を挙げることができる。さらに、微粉末の表面を疎水化処理したものが好ましい。疎水化処理には、ジメチルジクロルシランおよびアミロシランなどのシランカップリング剤による処理、シリコーンオイルによる処理およびフッ素含有の成分などによる処理などを挙げることができる。上記の外添剤のうち一種類で用いてもよいし二種類以上で用いてもよい。また、外添剤としては、シリカがより好ましい。シリカ以外の微粒子のみを外添しても、トナーとキャリアとの接触において、帯電付与が充分でないことがあり、さらに、シリカは、トナーの流動化剤としても働くので、トナーの供給量を安定化させることができる。
【0038】
(製造方法)
結着樹脂、着色剤、離型剤および帯電制御剤などをヘンシェルミキサ、スーパーミキサなどの混合機により充分混合し、得られた混合物を二軸混練機によって溶融混練する。この混練物をジェット式粉砕機にて粉砕後、分級し、体積平均粒径で5μm〜15μm程度のトナー母体粒子を得ることができる。さらに、トナー母体粒子に無機微粒子を添加し、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサなどの混合機により付着、均一分散させることによってトナーを製造する。
【0039】
[二成分現像剤]
本発明である二成分現像剤は、上記のようなトナーとキャリアとを規定のトナー濃度となるように混合機で混合させることによって、二成分現像剤を製造できる。混合機としては、公知のものを用いることができ、ナウターミキサ(ホソカワミクロン社製:VL−0)を挙げることができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明するが、本実施例に限定されるものではない。
【0041】
[実施例A]
実施例Aでは、二成分現像剤を構成しているキャリアのキャリアコート量(コア材の重量に対するコート樹脂の重量%)の影響について検討した。
【0042】
(トナーの製造例)
ポリエステル樹脂100重量部に対し、ワックスとしてポリエチレン(クラリアントジャパン社製:PE130)1.0部およびポリプロピレン(三井化学社製:NP−505)1.5部、着色剤としてカーボンブラック(キャボット社製:330R)5部、帯電制御剤(保土ケ谷化学工業社製:S−34)1部、マグネタイト(関東電化社製:KBC−100)1.5部を加え、スーパーミキサ(川田社製:V−20)で充分混合し、得られた混合物を二軸混練機(池貝鉄工社製:PCM−30)によって溶融混練した。この混練物をジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2)にて粉砕後、分級し、体積平均粒径が7.5μmのトナー母体粒子を得た。トナー母体粒子にシリカ微粒子(日本アエロジル社製:R972)を0.3部外添することによってトナーを得た。
【0043】
(キャリアの製造例)
コート樹脂としてシリコーン樹脂(信越化学工業社製:KR−255)を用い、粒径100nmのチタン酸バリウム微粉末(富士チタン工業社製)を20重量%、カーボンブラック(ライオン社製:ケッチェンブラックEC)を5.0重量%となるように加え、それらをトルエンに分散させた。粒径が90μmであるフェライトのコア材に流動床型コーティング装置を用いて得られた分散液を塗布し、250℃で2時間加熱して、塗布したコート樹脂を硬化させることによってキャリアを得た。
【0044】
(実施例1)
上記の製造方法によって得られたトナーと、表1に記載のようにキャリアコート量が8.0%となるようにコート樹脂をコートしたフェライトキャリアとを、トナー濃度が5%になるようにナウターミキサ(ホソカワミクロン社製:VL−0)にて20分間攪拌することによって二成分現像剤を製造した。
【0045】
(実施例2)
キャリアのキャリアコート量を5.0%とする以外、実施例1と同様にして、二成分現像剤を製造した。
【0046】
(比較例1)
キャリアのキャリアコート量を4.1%とする以外、実施例1と同様にして二成分現像剤を製造した。
【0047】
(比較例2)
キャリアのキャリアコート量を2.2%とする以外、実施例1と同様にして二成分現像剤を製造した。
【0048】
[評価方法]
上記の製造方法によって得られた二成分現像剤を使用し、モノクロ複写機(シャープ社製:AR−450)によって、印字率5%原稿を印刷した。
【0049】
実施例1,2および比較例1,2について、次のようにして画像濃度変化評価を行った。上記の方法により製造した二成分現像剤の物性評価を下記に示す評価方法により行い、その結果を表1に示す。なお、評価項目の説明に記載されている「○」、および「×」などの記号は、表1で用いる評価結果を示す記号である。「○」は、優れていることを示し、「×」は、実用が困難であることを示す。
【0050】
(画像濃度)
初期状態の現像剤を用いて印刷した画像の画像濃度(初期の画像濃度)と印字率5%の原稿を5枚間欠で100000枚印刷後に印刷した画像の画像濃度(100000枚印刷後の画像濃度)をマクベス反射濃度計(Macbeth社製:RD−914)によって測定した。100000枚印刷後の画像濃度によって下記の基準に基づいて評価した。
○:画像濃度が1.30以上1.32未満である。
×:画像濃度が1.30未満である。
【0051】
表1は、コア材に対するキャリアコート量と画像濃度との関係を表したものである。
上記製造方法によって得られたトナーおよびキャリアコート量の異なるキャリアからなる現像剤と使用し、市販のモノクロ複写機(シャープ社製:AR−450)を用いて印刷し、初期の画像濃度と印字率5%原稿を5枚間欠で100000枚印刷後の画像濃度を比較した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1からわかるように、コート樹脂が、コア材の重量に対して5重量%以上のキャリアを用いた現像剤(実施例1,2)は、100000枚印刷後であっても、画像濃度が維持できる耐久性の優れた現像剤であった。しかしながら、コート材が、コア材の重量に対して5重量%より少ないキャリアを用いた現像剤(比較例1,2)は、100000枚印刷後では、画像濃度が大きく低下した。
【0054】
[実施例B]
実施例Bでは、キャリアに被覆されているコート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末の添加量の影響について検討した。
【0055】
(実施例3)
ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業社製:IDS−2)によって混練物を粉砕する際のエアーの圧力などの粉砕条件を変化させる以外、上記の実施例1,2および比較例1,2で用いたトナーの製造方法と同様に製造した。体積平均粒径が8.5μmのトナー母体粒子が得られ、シリカ微粒子(日本アエロジル社製:R972)を0.3部外添することによってトナーを得た。
【0056】
コート樹脂としてシリコーン樹脂(信越化学工業社製:KR−255)を用い、粒径100nmのチタン酸バリウム微粉末(富士チタン工業社製)を30重量%およびカーボンブラック(ライオン社製:ケッチェンブラックEC)を5.0重量%となるように加え、それらをトルエンに分散させた。粒径が90μmであるフェライトのコア材にキャリアコート量が6.0%となるように流動床型コーティング装置を用いて得られた分散液を塗布し、250℃で2時間加熱して、塗布したコート樹脂を硬化させることによってキャリアを得た。
【0057】
得られたトナーおよびキャリアをトナー濃度が5%になるようにナウターミキサ(ホソカワミクロン社製:VL−0)にて20分間攪拌することによって二成分現像剤を製造した。
【0058】
(実施例4)
コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末が30重量%となるように加えるのを2重量%となるように加えること以外、実施例3と同様に二成分現像剤を製造した。
【0059】
(実施例5)
コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末が30重量%となるように加えるのを3重量%となるように加えること以外、実施例3と同様に二成分現像剤を製造した。
【0060】
(実施例6)
コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末が30重量%となるように加えるのを50重量%となるように加えること以外、実施例3と同様に二成分現像剤を製造した。
【0061】
(実施例7)
コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末が30重量%となるように加えるのを55重量%となるように加えること以外、実施例3と同様に二成分現像剤を製造した。
【0062】
(比較例3)
コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を加えないこと以外、実施例3と同様に二成分現像剤を製造した。
【0063】
[評価方法]
表2の実施例3〜7および比較例3について、下記の環境安定性評価および画像濃度評価を行った。上記の方法により製造した二成分現像剤の物性評価を下記に示す評価方法により行い、結果を表2に示す。なお、評価項目の説明に記載されている「◎」、「○」、「△」および「×」などの記号は、表2で用いる評価結果を示す記号である。「◎」は、非常に優れていることを示し、「○」は、優れていることを示し、「△」は、実用可能であることを示し、「×」は、実用が困難であることを示す。ただし、総合評価においては、「○」は、実用が可能であることを示し、「×」は、実用が困難であることを示す。
【0064】
(環境安定性)
二成分現像剤を設定した後、高温高湿(35℃、85%)下において17時間放置した後のトナー補給時間を計測し、17時間放置後に印刷した画像の白地カブリをハンター白度計(日本電色工業社製)を用いて測定し、その測定結果を下記の基準に基づいて評価した。
◎:白地カブリの値が0.5未満である。
○:白地カブリの値が0.5以上1.0未満である。
×:白地カブリの値が1.0以上である。
【0065】
トナー補給時間とは、二成分現像剤が攪拌されはじめる時刻から二成分現像剤のトナーが感光体に付着される時刻までの時間、いわゆるトナーの供給時間を示し、この時間の違いは、二成分現像剤を長期間、高温高湿下で放置することによって流動性および帯電性が変化してしまうことによる。
【0066】
(画像濃度)
上記の画像濃度変化評価と同様な方法で初期の画像濃度を測定し、その測定された画像濃度を下記の基準に基づいて評価した。
◎:画像濃度が1.35以上である。
○:画像濃度が1.30以上1.35未満である。
×:画像濃度が1.30未満である。
【0067】
【表2】

【0068】
表2からわかるように、コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末が含有されている(実施例3〜7)と、環境安定性および画像濃度の優れた二成分現像剤であった。さらに、チタン酸バリウム微粉末の含有量が、好適な範囲である3重量%以上50重量%以下である(実施例3,5および6)と、環境安定性のより優れた二成分現像剤であった。
【0069】
また、コート樹脂中に、チタン酸バリウム微粉末が含有されていない(比較例3)と、キャリアコート量が5重量%以上であるので、画像濃度の優れた二成分現像剤ではあるが、コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末が含まれていないので、環境安定性の劣った二成分現像剤であった。
【0070】
その結果、チタン酸バリウム微粉末を添加したとき環境特性の大きな向上が見られた。しかしながら、チタン酸バリウム微粉末の添加量が3重量%未満の場合、その効果は小さく、また、逆に50重量%を超過した添加量の場合は画像濃度が低下し、他の弊害が生じた。
【0071】
[実施例C]
実施例Cでは、コート樹脂に含有した微粉末の種類の影響について検討した。コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末を2重量%含有した場合と、コート樹脂中に酸化チタン微粉末を3重量%含有した場合とについて検討した。
【0072】
(比較例4)
コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末が2重量%となるように加える代わりに、酸化チタン微粉末(石原産業社製:TTO−D1)が3重量%となるように加えること以外、実施例4と同様である。
【0073】
[評価方法]
表3の実施例4および比較例4について、環境安定性評価および画像濃度評価を行った。上記の方法により製造した二成分現像剤の物性評価の評価結果を表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
表3からわかるように、コート樹脂中にチタン酸バリウム微粉末が2重量%含有されている場合(実施例4)と、コート樹脂中に酸化チタン微粉末が3重量%含有されている場合(比較例4)とを比較すると、画像濃度は、両方とも1.38であった。また、トナー補給時間は、実施例4が14秒であり、比較例4が18秒であり、白地カブリは、実施例4が0.62であり、比較例4が0.67であった。このように、チタン酸バリウム微粉末は酸化チタン微粉末に比べ、環境特性に対し少量で同等以上の効果が得られることもわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分現像剤を構成するキャリアであって、
コア材にコート樹脂が被覆されており、
コート樹脂は、コア材の重量に対して5重量%以上20重量%以下であり、
コート樹脂にチタン酸バリウム微粉末を含有することを特徴とするキャリア。
【請求項2】
コート樹脂中のチタン酸バリウム微粉末の含有量が3重量%以上50重量%以下であることを特徴とする請求項1記載のキャリア。
【請求項3】
トナーとキャリアとからなる二成分現像剤であって、
キャリアが請求項1または2記載のキャリアであることを特徴とする二成分現像剤。