説明

キャリアテープ用リール

【課題】巻き崩れを防止しつつ、複数個を並行駆動して使用する場合でも簡易な構成として、かつ、各リールを独立して駆動させることができるキャリアテープ用リールを提供する。
【解決手段】巻き芯の左右何れか一端にフランジ状の側板を設けてなり、前記巻き芯の他端には前記側板との間でキャリアテープの巻き始めを保持可能に拡径する抜止部を設けた。抜止部は複数の突起を周設してなる。また、巻き芯や側板にキャリアテープの端部を係止可能に挿入するスリットを設ける。さらに、巻き芯の他端を軸方向に延長して抜止部から突出する先端凸部を形成すると共に、巻き芯の側板側の一端中央に前記先端凸部の外径と内径が一致する凹部を形成する。そして、本リールはシート成形または射出成形により巻き芯に側板と抜止部とを一体成形することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子部品を収容するキャリアテープを巻き取るのに用いるリールであって、より詳しくは巻き芯両端に設けられる側板の一方を省略した構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のキャリアテープ用リールは、巻き芯の両端に側板を具備するものであり、例えば側板の中央にテープ幅の約1/2の高さで半芯部を突成した半割体を二個用い、半芯部同士を向かい合わせに接合して構成していた(特許文献1)。
【0003】
また、3以上の側板を巻き芯に連接することで複数の巻取り部を構成して、一製品でキャリアテープの巻取り長を長くした連段式のリールも存在した(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭60−85557号公報
【特許文献2】実開平5−72869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種のキャリアテープ用リールを用いてキャリアテープを巻き取る、または部品実装のために繰り出す場合、複数のリールを同軸上で並行駆動して作業工程の効率化を図ることがある。ここで、リールの側板はキャリアテープの巻き崩れを防止するガイドとして機能する。ところが、特許文献1のように巻き芯の両端に側板を一対備えるリールであると、これを複数連接した場合、隣接するリール同士で側板が重なり合う。この点、側板はキャリアテープの左右に一枚ずつ存在すれば上記ガイド機能が十分発揮されることから、特許文献1のものでは過剰構成となる。
【0006】
一方、特許文献2のリールは、こうした側板の重なりが生じないが、側板で区画された各巻取り部が独立したものではないため、各巻取り部からキャリアテープを非同期で繰り出すような使い方はできない。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みなされたもので、その目的とするところは、巻き崩れを防止しつつ、複数個を並行駆動して使用する場合でも簡易な構成として、かつ、各リールを独立して駆動させることができるキャリアテープ用リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、巻き芯の左右何れか一端にフランジ状の側板を設けてなり、前記巻き芯の側板とは反対側他端にはキャリアテープの巻き始めを前記側板との間で保持可能に拡径する抜止部を設けるという手段を用いた。巻き芯および片側の側板は従来公知の構成を採用することができ、また、成形方法もシート成形や射出成形を採用することができる。よって、基本的な構成は従来リールから一方の側板を省略した片フランジ型のリールとなり、本発明リールを複数個並列して使用する場合、従来の両フランジ型リールのように側板の重なりがなく、隣接するリールの側板が巻き崩れ防止のガイドとして共用される。
【0009】
一方、巻き芯の他端に巻き芯周面からせり出した抜止部は一端側のフランジ状側板と対峙することになり、この抜止部と側板と間はキャリアテープの巻き始めが崩れないように保持する巻き溝として機能する。ここで一般的に、キャリアテープを巻き取る際は、キャリアテープに所定のテンションをかけて巻き層を密着させた状態で巻き取るが、キャリアテープの始端が固定され、もっとも曲率の大きい巻き始めさえ緊密な巻き層とすることができれば、これをみかけ上の巻き芯として、あとは容易に緊密な巻き層を形成でき、巻き崩れが生じにくい巻き上がりとすることができる。従って、本発明リールによれば、抜止部(巻き溝)によってキャリアテープの巻き始めを緊密とすることができるため、それ単独でも巻き崩れが生じにくい巻き上がりとすることができる。
【0010】
なお、巻き溝の深さは抜止部の巻き芯周面からの突出量によって決定されるが、キャリアテープの巻き始めを保持できるものであれば、抜止部の外径を限定するものではない。また、巻き始めの巻き数も限定するものでもない。つまり、抜止部(巻き溝)は、キャリアテープを数巻きできれば十分であり、最小値としてキャリアテープのひと巻き目を保持できる高さに設定することも可能である。言い換えれば、本発明の基本的な構成は従来あった2つの側板の一つを省略することであるから、抜止部は側板に比べて十分小さいことが好ましい。
【0011】
そして、抜止部は、環状に形成することも可能であるが、複数の突起を間隔おいて周設することが好ましい。射出成形やシート成形時の離型が環状とするよりも容易に行えるからである。
【0012】
また、キャリアテープの始端はテープ止めなど従来公知の構成により固定することができるが、巻き芯の軸部にスリットを設け、このスリットにキャリアテープの始端を挿通して係止することが好ましい。
【0013】
さらに、キャリアテープの終端もテープ止めなどすることができるが、側板に板面を貫通するスリットを設け、このスリットにキャリアテープの終端を挿通することで簡単にキャリアテープの終端を係止することができる。
【0014】
他方、上述のように本発明リールを複数個並列して使用する場合、リールを一つずつ回転シャフトに取付けるよりも、それらを予め重ねておき、束の状態で回転シャフトに挿通できれば簡便である。そこで本発明では、巻き芯の側板側の一端中央に凹部を形成すると共に、巻き芯の他端に抜止部から軸方向に突出して前記凹部に挿入する先端凸部を延成するという手段を用いる。この手段によれば、リールの先端凸部を隣接するリールの凹部に挿入することで、複数のリールが正確に中心軸を合わせて重ね合わせられ、この状態で複数個を同時に回転シャフトに挿入することができる。
【0015】
さらに、本発明リールの成形方法は従来公知の方法を採用することができるが、シート成形または射出成形により巻き芯に側板と抜止部とを一体成形することで、各部を別々に生産し、これを組み立てるよりも生産効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、側板の片方が省略されるので、一製品あたりのプラスチック使用量が削減され、低コストで生産できると共に、石油資源の節約にも貢献する。また、巻き芯から片側の側板を省略する代わりに、微小にせり出す抜止部を設けることにより、巻き芯からキャリアテープの抜けを防止して緊密に巻き始められるようになったので、それ単独で両フランジ型の従来リールと同様に巻き崩れが生じにくい巻き上がりを実現することができる。さらに複数個を並列して使用する場合には、隣接するリールの側板を巻き崩れ防止のガイドとして共有できるなど、合理的な構成とすることができた。さらに、抜止部を複数の突起から構成したものにあっては、環状の抜止部を形成するよりも容易に成形することができる。
【0017】
さらに、巻き芯にテープ始端の係止用スリットを設けたので、接着テープによらず簡単にテープ始端を固定することができる。同様に、側板に設けたスリットによってテープ終端の固定も容易となる。さらにまた、巻き芯の凹部に他リールの先端凸部を挿入するようにしたので、複数個を重ねる場合に簡単かつ確実に芯出しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャリアテープ用リールの側面図
【図2】同、正面図
【図3】同リールの使用態様を示す説明図(巻き始め)
【図4】同リールを複数並列駆動するときの使用説明図
【図5】同リールの要部(巻き芯)の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は本発明リールの側面図、図2は正面図を示したものである。これらの図において、1は円筒状の巻き芯、2は巻き芯の一端にシート成形又は射出成形により一体成形した側板であり、図から明らかなように、このリールは、側板2を巻き芯1の片側だけに設けた片フランジ型のリールを基本的な構成とするものである。3は、巻き芯1の他端、すなわち側板2とは反対側の端部に設けた抜止部である。この抜止部3は、巻き芯1の他端周縁を拡径成形することで形成される。なお、この実施形態では、抜止部3を巻き芯1の他端周縁に間隔あけて周設した複数の突起3a…3aによって構成している。そして、この抜止部3は、その先端が巻き芯1の周面からせり出す高さを有して側板1と対峙することから、巻き芯1上において、抜止部3と側板1との間に巻き溝4を形成するものである。また、巻き芯1には、その周面の対向する2カ所に凹陥部1aが形成され、この凹陥部1aに巻き芯1を表裏貫通するスリット5・5を形成している。さらに、側板2にも複数箇所にスリット6を放射状に設けている。なお、説明の便宜上、図示を省略するが、側板2には補強のためのリブを形成することもある。
【0020】
上記構成のリールにキャリアテープを巻き取るには、図3に示したように、まずキャリアテープTの始端を巻き芯1の何れか一のスリット5に挿入した後、キャリアテープTを抜止部3の各突起3aの内側となるように所定のテンションをかけながら巻き溝4に沿って巻き芯1に巻き始める。キャリアテープTの始端は、スリット5の開口と凹陥部1aの角で屈折して巻き始められ、その後、キャリアテープTを緊密な状態でひと巻きすれば当該始端は固定される。ここで、抜止部3は巻き芯1からの突出量が非常に小さいが(キャリアテープの厚みと同じか、その半分程度)、最初のひと巻き目はこの抜止部3によって巻き芯1からの抜けが防止され、ひと巻き目を巻き芯1に緊密に巻き取ることができる。このように、本発明によれば最初のひと巻き目を緊密に巻き取ることができるため、それ以降も通常通り、緊密に巻き取っていくことが可能となる。これを言い換えれば、巻き始めが緩いと、以後、キャリアテープTのテンションを高めてきつく巻き取ろうとしても最初の緩みを解消できず、容易に巻き崩れが生じるが、本発明によれば、巻き始めが緊密であるため、それ以降も緊密にキャリアテープを巻き取ることができ、結果として、巻き崩れが生じにくい巻き上がりとすることができる。
【0021】
巻き上がりが完了すれば、キャリアテープTの終端を側板2のスリット6に挿入するだけで、巻き上がったテープがほどけることを回避することができる。ただし、テープ始端は巻き層によって拘束されているのに対して、このテープ終端は自由端となるため、スリット6に挿入後、さらにテープ止めを行うことが好ましい。
【0022】
ここまで、本発明リール単独での構成ならびに作用効果を詳述したが、図4に示したように、本発明リールを複数個、同じ回転シャフトS上に連接した状態で並列させて使用することもできる。この場合、隣接するリール同士で一方のリールの側板2が共有され、より確実にキャリアテープの巻き崩れを防止することができる。また、リール同士は巻き芯1の縁が切れているため、各リールを別個独立に回転可能であり、各リールから異なる電子部品を収容したキャリアテープT1〜T4を異なる速度で巻き取る、または繰り出すといった使い方もできる。なお、7・8は複数のリールを密接に挟持する一対のガイド板である。
【0023】
このように複数個のリールを並列駆動する場合、予め複数のリールを重ね合わせておき、その状態のまま回転シャフトに一気に挿入することが簡便である。そこで、図5に示したように、抜止部3側において巻き芯1の他端を軸方向に延長して、抜止部3から突出する先端凸部9を形成すると共に、巻き芯1の側板側一端に前記先端凸部9の外径と内径が一致する凹部10を形成することが好ましい。この構成によれば、巻き芯の先端凸部9を隣接するリールの凹部10に挿入することで、両リールの中心線を一致させた複数個のリールを重ね合わせることができる。したがって、重ね合わせた複数のリールを一気に回転シャフトに取付けることができる。なお、先端凸部9および凹部10の目的は芯出しであり、複数のリールを完全に結合するものではない。従って、その挿入量は、芯出し可能な最小値でよい。また、凹部10は、その開口角隅をアール形状としたり、面取りすることで先端凸部9が挿入しやすくなるが、芯出しのためには、当該開口角隅はできるだけ直角に近いことが好ましい。
【0024】
他方、リールの寸法例を一つあげると、巻き芯1は軸部の直径が約60mm、側板2の直径が約175mmとして、幅約8mm、厚み約1mmのキャリアテープを巻き取るのに、巻き芯1の他端に巻き芯1からの突出量が約0.5mmの抜止部を設ける。ただし、各種の寸法はこれに限定されない。また、上記実施形態では、抜止部3を複数の突起3a…3aから構成したが、ひと繋がりに環状に構成することもできる。また、シート成形によれば側板等の厚みを薄くしてプラスチックの使用量をより抑制することができるが、射出成形によれば厚みのある強度に優れたリールとすることができ、いずれの成形方法を採用するかは自由である。
【符号の説明】
【0025】
1 巻き芯
2 側板
3 抜止部
4 巻き溝
5 スリット(巻き芯側のテープ始端用)
6 スリット(側板側のテープ終端用)
9 先端凸部
10 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き芯の左右何れか一端にフランジ状の側板を設けてなり、前記巻き芯の他端には前記側板との間でキャリアテープの巻き始めを保持可能に拡径する抜止部を設けたことを特徴としたキャリアテープ用リール。
【請求項2】
抜止部は、複数の突起を周設してなる請求項1記載のキャリアテープ用リール。
【請求項3】
巻き芯にキャリアテープの始端を係止可能に挿入するスリットを設けた請求項1または2記載のキャリアテープ用リール。
【請求項4】
側板にキャリアテープの終端を係止可能に挿入するスリットを設けた請求項1、2または3記載のキャリアテープ用リール。
【請求項5】
巻き芯の側板側の一端中央に凹部を形成すると共に、巻き芯の他端に抜止部から軸方向に突出して前記凹部に挿入する先端凸部を延成した請求項1から4のうち何れか一行記載のキャリアテープ用リール。
【請求項6】
シート成形または射出成形により巻き芯に側板と抜止部とを一体成形してなる請求項1から5のうち何れか一行記載のキャリアテープ用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−168390(P2011−168390A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36380(P2010−36380)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000111133)ニッポー株式会社 (24)
【Fターム(参考)】