説明

キャリア及びそれを用いた現像剤

【課題】現像器内部でキャリア表面が、磨耗したり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく、長期間安定して帯電安定性を維持することができ、鮮明な画像を得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる長寿命性、省資源性に優れたキャリア及びそれを用いた現像剤の提供を目的とする。
【解決手段】芯材となるコアと、コア表面に形成された被覆層と、被覆層の表面に形成された複数の凸部と、を有するキャリアと、トナーと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いる2成分系現像剤のキャリア及びそれを用いた現像剤に関し、より詳しくは、表面に被覆層が形成され、表面にトナーが付着し難く耐摩耗性に優れるキャリア及びそれを用いた現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において、静電潜像を形成された感光体上にトナー粒子を静電気力により付着させる方法として、トナーとキャリアからなる2成分系現像剤を用いた磁気ブラシ現像方法が知られている。
【0003】
2成分系現像剤を用いた現像方式では、現像器内部で攪拌装置によりトナー粒子とキャリア粒子が攪拌され、それぞれの粒子表面が摩擦によりそれぞれ逆の極性に帯電し、発生した電荷が保持された状態にある。現像時には、トナーとキャリアの混合物である現像剤が、静電潜像を保持した感光体近傍に搬送され、静電潜像の静電気力により、帯電したトナーが感光体表面に引き寄せられる。一方、現像に使用されたキャリアは、再び、現像器内部へ回収され、再攪拌されトナーの対電に寄与する。
【0004】
従来の画像形成装置の一例について、図面を用いて説明する。図3は従来の画像形成装置を示す要部断面図である。図3中、101は静電式複写機やレーザービームプリンタ等の従来の画像形成装置、102は予め摩擦帯電されたトナーとキャリアの混合体である現像剤(図示せず)が収容された画像形成装置101の現像器、103は現像時に現像剤を撹拌する現像剤攪拌ローラ、104はマグネットローラ105と所定間隔をあけて配設され隙間を通過する現像剤の供給量を調整する現像剤層形成ブレード、106は表面に予め静電潜像が形成されマグネットローラ105に対向配置された感光体ベルトである。
【0005】
以上のように構成された従来の画像形成装置について、以下その現像方法を説明する。現像器102内部に収容された現像剤は、現像時に現像剤攪拌ローラ103により撹拌され、マグネットローラ105へ搬送される。マグネットローラ105が矢印の方向へ回転することにより、現像剤は現像剤層形成ブレード104とマグネットローラ105との隙間を通過し、マグネットローラ105の回転とともに、感光体ベルト106へ接近する。マグネットローラ105の表面の現像剤が感光体ベルト106に接近したときに、感光体ベルト106が矢印の方向へ回転することにより、現像剤に含まれるトナーは、感光体ベルト106の表面に形成された静電潜像の持つ静電気により引きつけられ、キャリアとの静電気による吸引力を断ち切って、感光体ベルト106の表面の静電潜像上に付着する。
【0006】
次に、従来の現像剤について、図面を用いて説明する。図4(a)は従来の現像剤を示す拡大模式断面図であり、図4(b)は(a)におけるC部拡大模式断面図である。図4中、110は従来の2成分系の現像剤、111は現像剤110のキャリア、112はキャリア111の芯材となるコア、113はコア112の表面に形成されたキャリア111の表層材、113aは表層材113の表面、114はキャリア111の周りに静電気により引きつけられた現像剤110のトナーである。
【0007】
一般的に、2成分系の現像剤110のキャリア111は、マグネタイト、フェライト等の金属酸化物を材料とするコア112の表面に、摩擦帯電安定性、耐久性の付与を目的に表層材113が被覆されている。しかしながら、長期にわたり現像器102の内部でトナー114とキャリア111が攪拌され衝突を繰り返していくうちに、キャリア111の表層材113の表面113aの状態に変化が生じ、画像の劣化などが発生する。具体的には
、キャリア111の表層材113が表面113aから磨耗していき、コア112の表面が露出することにより、トナー114への帯電性が悪くなり、鮮明な画像が得られなくなる現象や、キャリア111の表面にトナー114を構成する成分である樹脂、充填材、添加剤等が付着した、所謂、トナースペントによりトナー114への帯電性が悪くなり、鮮明な画像が得られなくなる現象、また、キャリア111表面の表層材113の磨耗と、トナースペントが同時に発生することにより、現像剤110としての寿命にいたる現象が発生していた。そこで、これらの課題を解決するため、キャリア111としての帯電安定性や、耐久性の向上を図るために、表層材113として用いられるコート材は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂をベースとし、各種充填材や添加剤が加えられている。例えば、(特許文献1)には、変性樹脂をベースとした電子写真キャリア用コーティング剤及びそれを用いたキャリアが開示されている。また(特許文献2)には、硬化時の樹脂の構造により樹脂コート層の摩擦帯電性安定性や耐久性を改善した電子写真用キャリア及びそれを用いた現像剤が開示されている。
【特許文献1】特開平5−224466号公報
【特許文献2】特開平6−118724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来の技術では、以下のような課題を有していた。
【0009】
(1)(特許文献1)、(特許文献2)では、キャリアとしての帯電安定性や、耐久性の向上が図られているが、近年の更なる画像品質の長期安定化、現像器のコストダウンに対する要求を満足することはできず、キャリアの長寿命性に欠けるという課題を有していた。
【0010】
特に、長期間継続して使用した場合、キャリア表面での経時劣化が生じ、トナーとの帯電性を安定に保つことができず、画像品質の劣化が発生するという課題を有していた。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、現像器内部でキャリア表面が、磨耗したり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく、長期間安定して帯電安定性を維持することができる信頼性に優れたキャリアの提供、及びそれを用いた鮮明な画像を得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる長寿命性、省資源性に優れた現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明のキャリアは、芯材となるコアと、前記コア表面に形成された被覆層と、前記被覆層の表面に形成された複数の凸部と、を備えた構成を有している。
【0013】
これにより、現像器内部でトナーとキャリアを混合攪拌する際に、トナーがキャリア表面の凸部で接触するので、トナーとキャリアとの接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができ、長期安定性、信頼性に優れたキャリアを提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するために本発明の現像剤は、芯材となるコアと、前記コア表面に形成された被覆層と、前記被覆層の表面に形成された複数の凸部と、を有するキャリアと、トナーと、を備えた構成を有している。
【0015】
これにより、現像器内部でトナーとキャリアを混合攪拌する際に、トナーがキャリア表面の凸部で接触するので、トナーとキャリアとの接触面積を小さくすることができ、キャ
リアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができ、長期にわたる現像を行った際にも、安定した画像を得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる長寿命性、省資源性に優れた現像剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明のキャリア及びそれを用いた現像剤によれば、以下のような有利な効果が得られる。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、
(1)キャリアの被覆層の表面に凸部を複数個設けたことにより、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触する接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができる耐久性に優れたキャリアを提供することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)シリコーン樹脂を含む被覆層をキャリアのコア表面に被覆することで、キャリア表面の離型性が向上し、トナーの付着力を低下させることができ、キャリア表面へのトナースペントの発生を防止することができる信頼性に優れたキャリアを提供することができる。
【0019】
(2)被覆層が導電材を含むことにより、キャリアの被覆層の導電性を調整することができ、トナーとの摩擦帯電においてトナーを所定の帯電量に帯電させることができる実用性に優れたキャリアを提供することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加え、
(1)導電材がカーボンブラックであることにより、キャリアの被覆層に適度な導電性を付与することができると共に、0.05μm〜5μmの平均粒径を有することにより、被覆層の表面を滑らかに形成することができ、被覆層表面に凸部形成材を保持して凸部を形成することができ、キャリア粒子の被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができる信頼性、耐久性に優れたキャリアを提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3の効果に加え、
(1)シリコーン樹脂100重量部に対し、5重量部〜15重量部の導電材が含まれていることにより、均一な厚みの被覆層を形成することができ、トナーに対し好適な帯電性を与えることができる生産性、信頼性に優れたキャリアを提供することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4の内いずれか1項の効果に加え、
(1)シリコーン樹脂100重量部に対し、凸部形成材が5重量部〜20重量部含まれていることにより、均一な厚みの被覆層を形成することができると共に、被覆層の表面に十分な数の凸部を形成することができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを効果的に改善することができる耐久性、信頼性に優れたキャリアを提供することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至5の内いずれか1項の効果に加え、
(1)凸部が、略球面状に形成された表面形状を有するにより、凸部の形状が安定し、キャリアの被覆層の表面とトナーとの接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができる耐久性、信頼性に優れたキャリアを提供することができる。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、請求項2乃至6の内いずれか1項の効果に加え、
(1)凸部形成材が、真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成された球状粒子であることにより、キャリアの表面に形成する被覆層に凸部形成材を混ぜる
だけで球面状の凸部を複数個形成することができ生産性に優れ、トナーと混合攪拌する際に、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触するのをより確実に防ぐことができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができる耐久性、低コスト性に優れたキャリアを提供することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、請求項1乃至7の内いずれか1項の効果に加え、
(1)被覆層が、2μm〜10μmの表面粗さRzを有することにより、被覆層表面に凸部形成材を突出させて保持することができ、被覆層に滑らかな凸部を複数個設けることができ、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触するのを確実に防止でき、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができ、耐久性に優れたキャリアを提供することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、
(1)キャリアの被覆層に滑らかな凸部を複数個設け、また、適度な表面粗さを与えたことにより、トナーとキャリアの被覆層との接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗やトナースペントによる帯電性の変化を引き起こすことがなく、長期間安定した帯電性を保持することができ、長期にわたる現像を行った際にも、鮮明な画像を安定して得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる高品質で長寿命性、省資源性に優れた現像剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、現像器内部でキャリア表面が、磨耗したり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく、長期間安定して帯電安定性を維持することができる信頼性に優れたキャリアを提供するという目的を、キャリアのコア表面に形成した被覆層の表面に複数の凸部を形成することにより実現した。
【0028】
本発明は、キャリアの被覆層の磨耗やトナースペントによる帯電性の変化を引き起こすことがなく、長期間安定した帯電性を保持することができ、長期にわたる現像を行った際にも、高品質で鮮明な画像を安定して得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる長寿命性、省資源性に優れた現像剤を提供するという目的を、キャリアのコア表面に形成した被覆層の表面に複数の凸部を形成し、トナーとキャリアの被覆層との接触面積を小さくすることにより実現した。
【0029】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、キャリアであって、芯材となるコアと、前記コア表面に形成された被覆層と、前記被覆層の表面に形成された複数の凸部と、を備えている構成を有している。
【0030】
この構成により、以下の作用を有する。
【0031】
(1)キャリアの芯材となるコア表面に被覆層を形成し、さらに被覆層の表面に凸部を複数個形成したので、現像器内部でトナーとキャリアを混合攪拌する際に、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触する接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができ、長期間、安定した画像を得ることができる。
【0032】
ここで、キャリアの芯材となるコアとしては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属や、マグネタイト、フェライト等の金属酸化物等が好適に用いられる。これらのコアの粒径は通常の30μm〜300μmに形成される。
【0033】
被覆層を形成する主成分としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の合成
樹脂が好適に用いられるが、特に被覆層を形成したときの被覆層表面の離型性が良いこと、材料費が低価格であることから、シリコーン樹脂を用いることが望ましい。
【0034】
被覆層の表面に形成する凸部は、予めキャリアの芯材となるコアに凸部を形成しておき、被覆層で被覆するようにしてもよいし、被覆層を形成する組成物中に略球状等の粒子状の充填材を充填して形成してもよい。凸部の表面を滑らかに形成することにより、トナーとの接触によるダメージを低減することができ、耐久性に優れる。
【0035】
上記課題を解決するためになされた第2の発明は、第1の発明に記載のキャリアであって、前記被覆層組成物が、シリコーン樹脂と、導電材と、凸部形成材と、を含有する構成を有している。
【0036】
この構成により、第1の発明の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0037】
(1)シリコーン樹脂を含む被覆層をキャリアのコア表面に被覆することにより、キャリア表面の離型性を向上させることができ、トナーの付着力を低下させることができ、キャリア表面へのトナースペントの発生を防止することができる。
【0038】
(2)被覆層が導電材を含むことにより、キャリアの被覆層の導電性を調整することができ、トナーとの摩擦帯電においてトナーを所定の帯電量に帯電させることができ、画像品質を向上させることができる。
【0039】
ここで、シリコーン樹脂としては、例えば、信越シリコーン社製KR155、KR155、KR201、KR261、KR271、KR280、KR285、KR350や、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製SR2100、SR2101、SR2400、SR2401、SR24010、SR2411等の市販品を用いることができる。
【0040】
導電材としては、従来公知のカーボンブラックやカーボン繊維、金属粉等が好適に用いられる。
【0041】
凸部形成材としては、略球状等に形成されたシリコーンゴムパウダー、ナイロンパウダー、アクリルパウダー等の樹脂粉、鉄、銅、アルミ等の金属粉、およびアルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック粉などが好適に用いられる。
【0042】
これらはキャリアの被覆層を構成する合成樹脂の種類によって適宜、使い分ける必要がある。即ち、合成樹脂に対する濡れ性の悪い凸部形成材であれば、合成樹脂中に均一に分散されずに、キャリア表面に滑らかな凸部を形成することができない。また、合成樹脂と比較して凸部形成材の比重が大きすぎると、被覆層形成時に凸部形成材が被覆層の底に沈降してしまい、凸部形成材の比重が小さすぎると、被覆層形成時に凸部形成材が被覆層の表面に浮いてしまい、いずれもキャリア表面に滑らかな凸部を形成できない。
【0043】
次にキャリアの被覆層組成物の製造方法について説明する。シリコーン樹脂を硬質樹脂製容器にとり、次に、導電材を秤量し、投入する。更に、ジルコニア球状粒子等の分散メディアを投入する。容器を密封し、ボールミル架台で、所定の時間分散させる。分散液をサンプリングし、粒ゲージを用い、カーボンの分散状態を評価する。その後、凸部形成材を所定の量投入し、更に、ボールミル架台で、所定の時間分散、排出する。分散液の粘度調整のために、トルエン等の有機溶剤を適当量調合、攪拌して、被覆層組成物溶液を得ることができる。
【0044】
次に、キャリアの製造方法について説明する。キャリアの芯材となるコア材料を流動床
に投入し、コア材料を流動させた状態で、スプレー塗装方法により、被覆層組成物溶液を塗装する。被覆層組成物溶液の投入量は、キャリア重量に対して0.7重量%とする。また、スプレー塗装時には、流動床に80℃の温風を吹き込み、コア表面に塗装された組成物の表面乾燥を行う。その後、被覆層組成物溶液を塗装したコアをステンレス製バットにとり、200℃、3時間の乾燥を行い、キャリアを得ることができる。
【0045】
上記課題を解決するためになされた第3の発明は、第2の発明に記載のキャリアであって、前記導電材が、0.05μm〜5μmの平均粒径を有するカーボンブラックである構成を有している。
【0046】
この構成により、第2の発明の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0047】
(1)導電材がカーボンブラックであることにより、キャリアの被覆層に適度な導電性を付与することができると共に、0.05μm〜5μmの平均粒径を有することにより、被覆層の表面を滑らかに形成することができ、被覆層表面に凸部形成材を保持して凸部を形成することができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを改善することができる。
【0048】
ここで、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。被覆層組成物中に含まれるカーボンは、平均粒径0.05μm〜5μmに分散させることが好ましい。カーボンの平均粒径が0.05μmより小さくなるにつれ、加工や取扱いが困難になる傾向があり、5μmより大きくなるにつれ、被覆層の表面付近に位置したカーボン粒子により被覆層の表面に凹凸が発生し、トナーとの混合攪拌時に、キャリア表面にトナースペントを引き起こし易くなり、帯電性が悪くなる傾向があり、いずれも好ましくない。キャリアの被覆層に分散させるカーボンの平均粒径を5μm以下とすることで、被覆層の表面付近に位置したカーボン粒子が、被覆層の表面を荒らすことがなく、滑らかな形状を与えることができる。
【0049】
上記課題を解決するためになされた第4の発明は、第2又は第3の発明の内いずれか1項に記載のキャリアであって、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、前記導電材が5重量部〜15重量部含まれている構成を有している。
【0050】
この構成により、第2又は第3の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0051】
(1)シリコーン樹脂100重量部に対し、5重量部〜15重量部の導電材が含まれていることにより、均一な厚みの被覆層を形成することができ、トナーに対し好適な帯電性を与えることができ、画像品質の向上を図ることができる。
【0052】
ここで、導電材の量がシリコーン樹脂100重量部に対して5重量部より少なくなるにつれ、キャリアの被覆層の導電性が所定の値よりも低くなり、トナーに対し好適な帯電性を与えることができなくなる傾向があり、20重量部より多くなるにつれ、キャリアの被覆層の導電性が所定の値よりも高くなり、トナーに対し好適な帯電性を与えることができなくなると共に、被覆層組成物の粘度が上昇し、キャリアのコア表面へ該組成物をコートする際に該組成物の流動性が低下し易く、均一な厚みの被覆層が得られなくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0053】
上記課題を解決するためになされた第5の発明は、第2乃至第4の発明の内いずれか1項に記載のキャリアであって、前記シリコーン樹脂100重量部に対し、前記凸部形成材が5重量部〜20重量部含まれている構成を有している。
【0054】
この構成により、第2乃至第4の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0055】
(1)シリコーン樹脂100重量部に対し、凸部形成材が5重量部〜20重量部含まれていることにより、均一な厚みの被覆層を形成することができると共に、被覆層の表面に十分な数の凸部を形成することができ、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントを効果的に改善することができ耐久性を向上させることができる。
【0056】
ここで、凸部形成材がシリコーン樹脂100重量部に対し、5重量部より少なくなるにつれ、被覆層の表面に十分な数の凸部を形成することができず、トナーとの混合攪拌時に、キャリア表面にトナースペントが発生し易く、帯電性が悪くなる傾向があり、20重量部より多くなるにつれ、被覆層組成物の粘度が上昇し、コア表面へ該組成物をコートする際に該組成物の流動性が低下し易く、均一な厚みの被覆層が得られなくなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0057】
上記課題を解決するためになされた第6の発明は、第1乃至第5の発明の内いずれか1項に記載のキャリアであって、前記凸部が、略半球面状に形成された表面形状を備えている構成を有している。
【0058】
この構成により、第1乃至第5の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0059】
(1)凸部が、略半球面状に形成された表面形状を有するにより、凸部の形状が安定し、長期間に渡って、キャリアの被覆層の磨耗、トナースペントの発生を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0060】
上記課題を解決するためになされた第7の発明は、第2乃至第6の発明の内いずれか1項に記載のキャリアであって、前記凸部形成材が、真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成された球状粒子である構成を有している。
【0061】
この構成により、第2乃至第6の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0062】
(1)凸部形成材が、真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成された球状粒子であることにより、キャリアの表面に形成する被覆層に凸部形成材を混ぜるだけで半球面状の凸部を複数個形成することができ、トナーと混合攪拌する際に、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触するのをより確実に防ぐことができる。
【0063】
ここで、球状粒子の真球度(%)は、対象とする粒子の長径をA、短径をBとするとき、{1−(A−B)/((A+B)/2)}×100(%)で表される。測定は対象とする粒子の光学顕微鏡または電子顕微鏡写真を撮影し、撮影した粒子の径を計ることによって行う。
【0064】
凸部形成材である球状粒子の真球度が90%より小さくなるにつれ、長径と短径の差が大きくなり過ぎて凸部を球面状に形成することができず、トナーとの混合攪拌時に、キャリア表面にトナースペントを引き起こし易く、帯電性が悪くなる傾向があり、99%より大きくなるにつれ、歩留まりが低下し易く、生産性に欠ける傾向があり、いずれも好ましくない。
【0065】
凸部形成材である球状粒子の平均粒径が1.5μmより小さくなるにつれ、凸部形成材が被覆層に埋没して表面に突出し難くなり、球面状の凸部を形成することが困難になる傾向があり、10μmより大きくなるにつれ、キャリアとトナーとの混合攪拌時に、キャリアの被覆層表面に形成される凸部と凸部との間にトナーが付着し易くなり、キャリア表面にトナースペントが発生し、帯電性が悪くなる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0066】
上記課題を解決するためになされた第8の発明は、第1乃至第7の発明の内いずれか1項に記載のキャリアであって、前記被覆層が、2μm〜10μmの表面粗さRzを備えている構成を有している。
【0067】
この構成により、第1乃至第7の発明の内いずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
【0068】
(1)被覆層が、2μm〜10μmの表面粗さRzを有することにより、被覆層を均一に形成することができると共に、被覆層表面に凸部形成材を突出させて保持することができ、被覆層に滑らかな凸部を複数個設けることができ、トナーとキャリアの被覆層が直接、接触するのを確実に防止でき、安定した帯電性をえることができる。
【0069】
ここで、表面粗さRzは、JISハンドブック34金属表面処理に記載の表面粗さ評価基準であり、接触式等の表面粗さ計により求められる断面曲線から基準長さだけ抜き取った部分において、平均線に平行、かつ、断面曲線を横切らない直線から縦倍率の方向に測定した最高から5番目までの山頂の標高の平均値と最深から5番目までの谷底の標高の平均値との差の値をマイクロメートルで表したものをいう。
【0070】
被覆層の表面粗さRzが2μmより小さくなるにつれ、歩留まりが低下し易く、生産性に欠ける傾向があり、10μmより大きくなるにつれ、凸部が被覆層の表面の粗さの中に紛れ、独立した半球面状の凸部を形成することが困難になる傾向があり、いずれも好ましくない。
【0071】
上記課題を解決するためになされた第9の発明は、現像剤であって、請求項1乃至8の内いずれか1項に記載のキャリアと、トナーと、を備えている構成を有している。
【0072】
この構成により、以下のような作用を有する。
【0073】
(1)キャリアの被覆層に滑らかな凸部を複数個設け、また、適度な表面粗さを与えたことにより、トナーとキャリアの被覆層との接触面積を小さくすることができ、キャリアの被覆層の磨耗やトナースペントによる帯電性の変化を引き起こすことがなく、長期間安定した帯電性を保持することができ、現像器の耐久性を向上させることができ、長期にわたる現像を行った際にも、鮮明な画像を安定して得ることができる。
【0074】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について、各図に基づいて説明する。
【0075】
図1(a)は本発明の実施の形態1におけるキャリアを示す拡大模式断面図であり、図1(b)は(a)におけるA部拡大模式断面図である。
【0076】
図1中、11は本発明の実施の形態1におけるキャリア、12は鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属や、マグネタイト、フェライト等の金属酸化物等で粒径が30μm〜300μmの略球状に形成されたキャリア11の芯材となるコア、13はコア12の表面に形成されたキャリア11の被覆層、13aは被覆層13の表面に突出して複数形成された
略半球状の表面形状を有する凸部である。
【0077】
被覆層13は、シリコーン樹脂100重量部に対し、導電材である平均粒径が0.05μm〜5μmのカーボンブラックを5重量部〜15重量部、凸部形成材である真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成されたシリコーンゴムパウダー、ナイロンパウダー、アクリルパウダー等の樹脂粉、鉄、銅、アルミ等の金属粉、およびアルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック粉などの球状粒子を5重量部〜20重量部含む被覆層組成物により形成した。
【0078】
被覆層13の樹脂成分としてシリコーン樹脂を使用することにより、被覆層13表面の離型性が良く、生産性、低コスト性に優れる。
【0079】
導電材の量がシリコーン樹脂100重量部に対して5重量部より少なくなるにつれ、キャリア11の被覆層13の導電性が所定の値よりも低くなり、トナーに対し好適な帯電性を与えることができなくなる傾向があり、20重量部より多くなるにつれ、キャリア11の被覆層13の導電性が所定の値よりも高くなり、トナーに対し好適な帯電性を与えることができなくなると共に、被覆層組成物の粘度が上昇し、キャリア11のコア12表面へ該組成物をコートする際に該組成物の流動性が低下し易く、均一な厚みの被覆層13が得られなくなる傾向があることがわかった。
【0080】
また、導電材であるカーボンブラックのカーボンの平均粒径が0.05μmより小さくなるにつれ、加工や取扱いが困難となって生産性に欠け、5μmより大きくなるにつれ、被覆層13の表面付近に位置したカーボン粒子により被覆層13の表面に凹凸が発生し、トナーとの混合攪拌時に、キャリア11の表面にトナースペントを引き起こし易くなり、帯電性が悪くなることがわかった。
【0081】
キャリア11の被覆層13に分散させるカーボンの平均粒径を5μm以下とすることで、被覆層13の表面付近に位置したカーボン粒子が、被覆層13の表面を荒らすことがなく、滑らかな形状をえられることがわかった。
【0082】
凸部形成材がシリコーン樹脂100重量部に対し、5重量部より少なくなるにつれ、被覆層13の表面に十分な数の凸部13aを形成することができず、トナーとの混合攪拌時に、キャリア11表面にトナースペントが発生し易く、帯電性が悪くなる傾向があり、20重量部より多くなるにつれ、キャリア11の被覆層組成物の粘度が上昇し、コア12表面へ該組成物をコートする際に該組成物の流動性が低下し易く、均一な厚みの被覆層13が得られなくなる傾向があることがわかった。
【0083】
また、凸部形成材である球状粒子の真球度が90%より小さくなるにつれ、長径と短径の差が大きくなり過ぎて凸部13aを半球面状に形成することができず、トナーとの混合攪拌時に、キャリア12表面にトナースペントを引き起こし易く、帯電性が悪くなる傾向があり、99%より大きくなるにつれ、歩留まりが低下し易く、生産性に欠ける傾向があることがわかった。
【0084】
凸部形成材である球状粒子の平均粒径が1.5μmより小さくなるにつれ、凸部形成材が被覆層13に埋没して表面に突出し難くなり、球面状の凸部13aを形成することが困難になる傾向があり、10μmより大きくなるにつれ、キャリア11とトナーとの混合攪拌時に、キャリア11の被覆層13表面に形成される凸部13a同士の間にトナーが付着し易くなり、キャリア11表面にトナースペントが発生し、帯電性が悪くなる傾向があることがわかった。
【0085】
また、被覆層の表面粗さRzは2μm〜10μmに形成した。被覆層13の表面粗さRzが2μmより小さくなるにつれ、歩留まりが低下し易く、生産性に欠ける傾向があり、10μmより大きくなるにつれ、凸部13aが被覆層13の表面の粗さの中に紛れ、独立した球面状の凸部13aを形成することが困難になる傾向があることがわかった。
【0086】
以上のように形成された実施の形態1におけるキャリアを用いた現像剤について、以下、図面を用いて説明する。
【0087】
図2(a)は本発明の実施の形態1におけるキャリアを用いた現像剤を示す拡大模式断面図であり、図2(b)は(a)におけるB部拡大模式断面図である。
【0088】
図2中、14はキャリア11の周りに静電気により引きつけられたトナー、20は本発明の実施の形態1におけるキャリア11を用いた2成分系の現像剤である。
【0089】
現像器内部でトナー14とキャリア11を混合攪拌する際に、トナー14がキャリア11表面の凸部14で接触するので、トナー14がキャリア11の被覆層13に直接、接触するのを防止でき、キャリア11の被覆層13の磨耗を低減させることができ、トナースペントの発生を抑えることができる。
【0090】
以上のように本発明の実施の形態1におけるキャリア及びそれを用いた現像剤は構成されているので、以下のような作用を有する。
【0091】
(1)キャリア11の芯材となるコア12表面に被覆層13を形成し、さらに被覆層13の表面に凸部13aを複数個形成したので、現像器内部でトナー14とキャリア11を混合攪拌する際に、トナー14とキャリア11の被覆層13が直接、接触する接触面積を小さくすることができ、キャリア11の被覆層13の磨耗、トナースペントを改善することができ、長期間、安定した画像を得ることができる。
【0092】
(2)シリコーン樹脂を含む被覆層13をキャリア11のコア12の表面に被覆することにより、キャリア11の表面の離型性を向上させることができ、トナー14の付着力を低下させることができ、キャリア11の表面へのトナースペントの発生を防止することができる。
【0093】
(3)被覆層13が導電材を含むことにより、キャリア11の被覆層13の導電性を調整することができ、トナー14との摩擦帯電においてトナー14を所定の帯電量に帯電させることができ、画像品質を向上させることができる。
【0094】
(4)導電材がカーボンブラックであることにより、キャリア11の被覆層13に適度な導電性を付与することができると共に、0.05μm〜5μmの平均粒径を有することにより、被覆層13の表面を滑らかに形成することができ、被覆層13の表面に凸部形成材を保持して凸部13aを形成することができ、キャリア11の被覆層13の磨耗、トナースペントを改善することができる。
【0095】
(5)シリコーン樹脂100重量部に対し、5重量部〜15重量部の導電材が含まれていることにより、均一な厚みの被覆層13を形成することができ、トナー14に対し好適な帯電性を与えることができ、画像品質の向上を図ることができる。
【0096】
(6)シリコーン樹脂100重量部に対し、凸部形成材が5重量部〜20重量部含まれていることにより、均一な厚みの被覆層13を形成することができると共に、被覆層13の表面に十分な数の凸部13aを形成することができ、キャリア11の被覆層13の磨耗
、トナースペントを効果的に改善することができ耐久性を向上させることができる。
【0097】
(7)凸部13aが、略半球面状に形成された表面形状を有するにより、凸部13aの形状が安定し、長期間に渡って、キャリア11の被覆層13の磨耗、トナースペントの発生を防止することができ、耐久性を向上させることができる。
【0098】
(8)凸部形成材が、真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成された球状粒子であることにより、キャリア11の表面に形成する被覆層13に凸部形成材を混ぜるだけで球面状の凸部13aを複数個形成することができ、トナー14と混合攪拌する際に、トナー14とキャリア11の被覆層13が直接、接触するのをより確実に防ぐことができる。
【0099】
(9)被覆層13が、2μm〜10μmの表面粗さRzを有することにより、被覆層13を均一に形成することができると共に、被覆層13の表面に凸部形成材を突出させて保持することができ、被覆層13に滑らかな凸部13aを複数個設けることができ、トナー14とキャリア11の被覆層13aが直接、接触するのを確実に防止でき、安定した帯電性をえることができる。
【0100】
(10)キャリア11の被覆層13に滑らかな凸部13aを複数個設け、また、適度な表面粗さを与えることによりトナー14と被覆層13との接触面積を小さくした現像剤20を用いることで、キャリア11の被覆層13の磨耗やトナースペントによる帯電性の変化を引き起こすことがなく、長期間安定した帯電性を保持することができ、現像器の耐久性を向上させることができ、長期にわたる現像を行った際にも、鮮明な画像を安定して得ることができ、省資源性に優れる。
【実施例1】
【0101】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0102】
まず、キャリアの被覆層組成物の製造方法について説明する。
【0103】
被覆層を形成する組成物の樹脂成分として、東レ・ダウコーニングシリコーン社製シリコーン樹脂SR−2411(固形分20%)500g(樹脂成分100g)を容量2Lの硬質樹脂製容器にとり、次に、導電材として、Huber社製ミディアム・サーマルカーボンを所定の量((表2)、(表3)参照)秤量し、投入した。更に、φ5mmジルコニア球状粒子を分散メディアとして、500ccカップ一杯分を投入した。その後、容器を密封し、ボールミル架台で、所定の時間分散させた。分散液をサンプリングし、フルスケール25μmの粒ゲージを用い、カーボンの分散状態を評価した。その後、凸部形成材である球状粒子を所定の量((表2)、(表3)参照)投入し、更に、ボールミル架台で、所定の時間分散、排出した。その後、分散液の粘度調整のために、有機溶剤であるトルエンを適当量調合、攪拌して、キャリアの被覆層を形成する被覆層組成物溶液を得た。
【0104】
凸部形成材として、真球度99%の球状シリカ(株式会社アドマテック製アドマファイン)、真球度90%のガラスビーズ(株式会社東芝バロティーニ製中空ガラスビーズ)、真球度70%の不定形シリカ(株式会社富士シリシア化学製サイリシア)を用いた。この凸部形成材C1〜C5の特徴を(表1)に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
次に、本発明のキャリアの製造方法を説明する。
【0107】
キャリアの芯材となるコア材料として、市販のフェライトキャリア(FL−150T、パウダーテック社製)を用いた。コア材料2kgを流動床に投入し、コア材料を流動させた状態で、スプレー塗装方法により、被覆層組成物溶液を塗装した。該組成物の投入量は、キャリア重量に対して0.7重量%とした。また、スプレー塗装時には、流動床に80℃の温風を吹き込み、キャリア表面に塗装された該組成物の表面乾燥を行った。その後、該組成物を塗装したコア材料をステンレス製バットにとり、200℃3時間の乾燥を行い、キャリアを得た。
【0108】
このようにして作製したキャリアを用いて、現像性試験を行った。
【0109】
試験に用いた現像剤は、前述のキャリアと、当社製トナー(品番FCS1970)を調合し、トナー濃度5%の配合比とした。この現像剤を現像器に600g計り取り、当社製プリンタWORKIO DP−3010に装着し、現像性試験を行った。
【0110】
現像性試験で行った評価項目は、初期と12万枚印刷後の帯電量とカブリ及び、キャリアの被覆層の電子顕微鏡観察による磨耗の評価を行った。帯電量については、ブローオフ摩擦帯電量測定装置(東芝ケミカル社製)を用いて評価を行った。
【0111】
キャリア9.5gとトナー0.5gをポリエチレン製100ml容器にとり、この容器を回転台上で毎分300回転の速度で5分間回転させ、その後、キャリアとトナーの混合物約1gを取り出す。これをブローオフ摩擦帯電量測定装置にかけ、計測された帯電量をトナー1g当たりに換算したものを帯電量とした。
【0112】
カブリについては、白色計MODELZ−1001DP(日本電色工業社製)を用いて、用紙の白地部分に発生したカブリの絶対濃度を白色計で測定した。
【0113】
以下に実施例及び比較例の現像性試験結果について説明する。
【0114】
実施例及び比較例に用いたキャリアの被覆層組成物と特性、及び評価結果を(表2)及び(表3)に示す。
【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
(実施例1)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C1を用いて被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は1.5μm、真球度は99%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化は小さく、また、被覆層の表面状態も良好であった。
【0118】
(実施例2)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C3を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は10μm、真球度は90%であ
り、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化は小さく、また、被覆層の表面状態も良好であった。
【0119】
(実施例3)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C1を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は1.5μm、真球度は99%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化は小さく、また、被覆層の表面状態も良好であった。
【0120】
(実施例4)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C3を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は10μm、真球度は90%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化は小さく、また、被覆層の表面状態も良好であった。
【0121】
(比較例1)シリコーン樹脂、導電材を用い、凸部形成材を含まない被覆層組成物を作製した。12万枚印刷後の帯電量、カブリの数値変化が大きく、また、被覆層表面の磨耗が観察された。これは凸部形成材を含まないことにより、被覆層の表面に凸部が形成されなかったためである。
【0122】
(比較例2)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C1を用い被覆層組成物を作製した。導電材の粒径が大き過ぎることにより、導電材の分散が不十分で、被覆層に表面荒れが発生し、均一な被覆層が得られず、以降の評価を中止した。
【0123】
(比較例3)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C2を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は0.3μm、真球度は99%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化が大きく、また、被覆層表面の磨耗が観察された。これは凸部形成材の球状粒子の平均粒径が0.3μmと小さいことにより、凸部形成材が被覆層に埋没し、球面状の凸部が形成されなかったためである。
【0124】
(比較例4)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C4を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は45μm、真球度は90%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化が大きく、また、被覆層の表面の観察ではトナースペント及び、球状粒子が脱落した跡が観察された。これは凸部形成材の球状粒子の平均粒径が45μmと大きいことにより、凸部と凸部との間が開き過ぎてトナーが付着し易くなったためである。
【0125】
(比較例5)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C5を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は1.4μm、真球度は70%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化が大きく、また、被覆層の表面の観察ではトナースペント及び磨耗が観察された。これは、球状粒子の長径と短径の差が大きくなり過ぎて凸部を球面状に形成することができなかったためである。
【0126】
(比較例6)シリコーン樹脂、導電材及び凸部形成材C1を用い被覆層組成物を作製した。作製した該組成物中に含まれる球状粒子の平均粒径は1.5μm、真球度は99%であり、12万枚印刷後の帯電量、カブリの変化が大きく、また、被覆層の表面の磨耗が観察された。これは樹脂成分100重量部に対し凸部形成材が30重量部と多く、被覆層組成物の粘度が上昇し、コア表面へ該組成物をコートする際に該組成物の流動性が低下し易く、均一な厚みの被覆層が得られなかったためである。
【0127】
以上の結果から、本発明のキャリア及びそれを用いた現像剤によれば、現像器内部でキャリア表面が、磨耗したり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく、長期間安
定して帯電安定性を維持することができ、鮮明な画像を得ることができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、画像形成装置に用いる2成分系現像剤のキャリア及びそれを用いた現像剤に関し、現像器内部でキャリア表面が、磨耗したり、トナースペントを引き起こしたりすることがなく、長期間安定して帯電安定性を維持することができる信頼性に優れたキャリアの提供及びそれを用いて鮮明な画像を得ることができ、現像器の耐久性を向上させることができる長寿命性、省資源性に優れた現像剤の提供を実現するものであり、近年の画像品質の長期安定化、現像器のコストダウンに対する要求を満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるキャリアを示す拡大模式断面図、(b)(a)におけるA部拡大模式断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態1におけるキャリアを用いた現像剤を示す拡大模式断面図、(b)(a)におけるB部拡大模式断面図
【図3】従来の画像形成装置を示す要部断面図
【図4】(a)従来の現像剤を示す拡大模式断面図、(b)(a)におけるC部拡大模式断面図
【符号の説明】
【0130】
11 キャリア
12 コア
13 被覆層
13a 凸部
14 トナー
20 現像剤
101 従来の画像形成装置
102 現像器
103 現像剤攪拌ローラ
104 現像剤層形成ブレード
105 マグネットローラ
106 感光体ベルト
110 従来の2成分系の現像剤
111 キャリア
112 コア
113 表層材
113a 表面
114 トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材となるコアと、前記コア表面に形成された被覆層と、前記被覆層の表面に形成された複数の凸部と、を有することを特徴とするキャリア。
【請求項2】
前記被覆層組成物が、シリコーン樹脂と、導電材と、凸部形成材と、を含有することを特徴とする請求項1に記載のキャリア。
【請求項3】
前記導電材が、0.05μm〜5μmの平均粒径を有するカーボンブラックであることを特徴とする請求項2に記載のキャリア。
【請求項4】
前記シリコーン樹脂100重量部に対し、前記導電材が5重量部〜15重量部含まれていることを特徴とする請求項2又は3に記載のキャリア。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂100重量部に対し、前記凸部形成材が5重量部〜20重量部含まれていることを特徴とする請求項2乃至4の内いずれか1項に記載のキャリア。
【請求項6】
前記凸部が、略半球面状に形成された表面形状を有することを特徴とする請求項1乃至5の内いずれか1項に記載のキャリア。
【請求項7】
前記凸部形成材が、真球度90%〜99%、平均粒径1.5μm〜10μmに形成された球状粒子であることを特徴とする請求項2乃至6の内いずれか1項に記載のキャリア。
【請求項8】
前記被覆層が、2μm〜10μmの表面粗さRzを有することを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載のキャリア。
【請求項9】
請求項1乃至8の内いずれか1項に記載のキャリアと、トナーと、を有することを特徴とする現像剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−18129(P2006−18129A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197550(P2004−197550)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】