説明

キャリア及び帯電粒子の製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面に導電性被覆を有する導電性かつ磁性の原料粗粒子にたいし、にじかこうこうていにおいて表面改質を行うキャリア及び帯電性用粒子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式は、暗下での感光体の均一帯電→選択露光による静電潜像の形成現像によるトナー像の形成→転写→定着を基本プロセスとしている。感光体の均一帯電方法としては、従来からコロナ帯電法が用いられているが、オゾンの発生、大電力消費等の問題点があり、近年、このような問題の少ない接触帯電法が検討されている。接触帯電法の一つである粒子帯電法は、特開昭59−133569号公報、同61−57958号公報などに記載されているように、導電性磁性粒子(帯電用粒子)からなる粒状帯電剤を、磁力で半ば拘束して感光体表面に接触せしめ、粒状帯電剤を介して感光体に電圧を印加し、電荷を注入して感光体を均一帯電させるものである。
【0003】本出願人は、このような帯電用の導電性磁性粒子として、磁性粒子コアの表面を導電処理したものを提案した(特願平5−35105号、同5−89422号)。しかしながら、これらの粒状帯電剤は長期使用によって導電性が変化する場合があり、耐久性、帯電安定性の観点からはいっそうの改善が望まれている。また、導電性キャリアは、2成分現像剤において電界効果を高め、現像性能を向上させるのに有効であることから広く用いられており、例えば、磁性微粒子をバインダー中に分散した磁性粒子コアの表面に導電性微粒子を固着させた導電性磁性キャリアおよびその製造方法を提案した(特開平5−53368号公報、同5−80591号公報)。
【0004】また、帯電量を調整することを目的として、キャリアコーティング剤中に導電性カーボンブラックを混入させることも古くから提案されており、キャリアコーティング剤をスプレーするスプレー法の他に、カーボンブラックの存在下にフェライト粒子上で直接エチレンを重合させてカーボンブラック含有ポリエチレンコーティングを形成する方法も知られている(特開平2−187771号公報)。これらキャリアコーティングに導電性カーボンブラックを多量に配合すると、現像剤の導電性キャリアや粒状帯電剤と使用可能な導電性磁性粒子が得られる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性コア粒子に表面層を設けた粒子は一般に使用時にトナー、紙粉等の付着、表面の割れ、欠け、剥れ等により表面状態が変化しやすく、特に、表面を導電化処理した磁性粒子の場合は、この傾向が顕著であった。
【0006】
【課題を解決するための手段】磁性コア粒子を導電化処理して表面に導電性被覆を形成すると、使用時に加わるストレスにより導電性被覆が損傷されやすい。例えば、導電性磁性樹脂キャリアであれば、トナーとの撹拌時、搬送時あるいは感光体との接触によるストレスを受け、粒状帯電剤の場合も撹拌や感光体との接触によるストレスを受ける。導電性磁性粒子では比較的多量の導電性粒子が熱可塑性樹脂により担持されているため、導電性被覆が損傷を受けやすい。本発明者らはこの点に着目し、導電性被覆を有する導電性かつ磁性の原料粗粒子を形成したのち、さらに二次加工して、導電性被覆を均質ないしは安定化することにより本願発明を完成した。この二次加工は、熱の存在化に振動、衝撃力ないしは剪断力を導電性かつ磁性の原料粗粒子に加えることにより達成される。
【0007】すなわち、請求項1にかかる本発明は、磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面固着型の原料粗粒子を用いたキャリアの製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が10〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜70emu/gのキャリアを製造する方法としてある。
【0008】また、請求項2にかかる本発明は、磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面成長型又はコーティング型の原料粗粒子を用いたキャリアの製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動,衝撃又はせん断力を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が1〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜100emu/gのキャリアを製造する方法としてある。
【0009】さらに、請求項3にかかる発明は、磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面固着型の原料粗粒子を用いた帯電用粒子の製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が10〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜70emu/gの帯電用粒子を製造する方法としてある。
【0010】さらにまた、請求項4にかかる発明は、磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面成長型又はコーティング型の原料粗粒子を用いた帯電用粒子の製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動,衝撃又はせん断力を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が1〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜100emu/gの帯電用粒子を製造する方法としてある。
【0011】
【実施例】本発明で二次加工の対象となる導電性かつ磁性の原料粗粒子としては、磁性コア粒子の表面に、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に大別される合成樹脂に担持された導電性微粒子によって導電性被覆が形成されているものであればいずれでもよい。
【0012】このような原料粗粒子の具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
■表面固着型原料粗粒子:磁性微粒子を熱可塑性バインダー樹脂中または架橋前の熱硬化性樹脂中に分散してなる磁性コア樹脂粒子の表面に、機械的な衝撃等によりカーボンブラック等の導電性微粒子が固着されている(特開平5−53368号公報、同5−80591号公報参照)。この場合、導電性微粒子は、磁性コア樹脂粒子のバインダー樹脂によって担持される。
■表面成長型原料粗粒子:カーボンブラックの共存下にフェライト等の磁性粒子に対してエチレン等のモノマーを供給し適当な触媒によってフェライト粒子の表面上で直接ポリエチレンを形成する。カーボンブラックを巻き込むようにしてポリエチレンが析出、成長し、カーボンブラックを含む導電性被膜がフェライト粒子の表面に形成される(特開平2−187771号公報)。
■コーティング型原料粗粒子:アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂または架橋前の熱硬化性樹脂の溶液、分散液あるいは溶融物中に導電性微粒子を分散させ、これをスピラコーター、フローコーター等を用いてフェライト等の磁性粒子コアに適用して表面を被覆し導電性コーティング層を形成する。
【0013】原料粗粒子の表面改質のための二次処理(加工)法としては、以下の方法が例示される。
(1)熱とともに振動を加えて改質する方法得られる導電性磁性粒子が使用時に強い剪断力や衝撃力を受けても、表面の導電性被覆の割れ、欠けを防ぎ安定した表面性を形成するのに有効である。具体的には、Vドライヤー、オムニミキサー等の振動装置を用いて原料粗粒子に振動を与える。この際、磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する熱可塑性樹脂の軟化点ないしそれよりやや低目(軟化点近傍)の温度に、原料粗粒子と接触する装置の部位あるいは装置内温度を設定し、強い振動を与えると粒子同士が激しく混合、衝突し合い、衝突による粒子表面の発熱も相俟って、表面改質が緩やかに進行する。この処理の特徴は、粒子の凹部に対しても、比較的均一な処理ができることである。
【0014】(2)熱と強い剪断力ないし衝撃力を加えて改質する方法例えば、ヘンシェルミキサーに原料粗粒子を入れ、加熱混合することによって表面改質処理をすることができる。この場合、最適な温度で処理すると均一性が向上する。設定温度は、磁性コア粒子の母材を形成するバインダー樹脂や表面導電層を形成するコーティング樹脂の材質に応じて決定することが重要であり、例えば熱可塑性樹脂として軟化点が125℃のポリエチレンを用いる場合は、軟化温度よりも少し低目の温度に加熱しヘンシェルミキサーにより混合して主として剪断力により表面改質を行なう。この場合、撹拌の衝撃によって原料粗粒子の表面が高温になることで、改質が進行していく。
【0015】この改質処理には、ヘンシェルミキサー以外にも、例えば他の高速ミキサー、ハイブリタイザー等の衝撃式改質機((株)奈良機械製作所製)を用いることができ、また、メカノフュージョンに見られる固体同士のメカノケミカル的な効果により、原料粗粒子表面を表面融合させて作成することも可能である。なお、熱硬化性樹脂で導電性被覆を形成する粒子の2次処理に関しては、架橋反応が起こる前、最中または直後に2次処理が行なわれる。
【0016】図1〜3は表面改質について模式的に示す説明図である。図1は、表面固着型原料粗粒子の表面改質について示す説明図である。特開平5−53368号公報や同5−80591号公報に見られるような表面固着型原料粗粒子は、磁性微粒子と熱可塑性樹脂とからなる磁性コア樹脂粒子11の表面に導電性微粒子が打ち込むようにして固着されている。しかしこの固着状態は完全でなく、極く一部しか樹脂粒子11に埋設されていない導電性微粒子13や、半ば静電気的に付着しているものも少なくない。また、樹脂粒子11自体は粉砕、分級により作製されるものであるので球状ではなく凹凸を有する。そのため、導電性微粒子11の固着自体も全表面で一様ではなく、また、凸部等が使用時のストレスにより欠けやすく、欠けた部分は表面導電性を失なう。
【0017】この原料粗粒子に対して本発明の改質処理を施すと、樹脂粒子11自体が軟化・変形し、球形化して表面凹凸が減少し表面積も減少する。また、導電性微粒子13はより深く埋設されて確実に固定され、部分的には導電性微粒子13の複層構造が形成される。したがって、得られる導電性磁性粒子(処理後品)の導電性が向上し、また、使用時にストレスが掛かった場合にも導電性微粒子13の欠落や樹脂粒子11自体の欠けが起こりにくくなる。
【0018】図2は、表面成長型原料粗粒子の改質について示す説明図である。特開平2−187771号公報に見られるような表面成長型原料粗粒子は、フェライト粒子15の表面を活性化処理して直接この表面でエチレンを重合して導電性重合被膜17を形成するものであり、重合は表面活性点で選択的に起こり藻が密生成長するようにして導電性重合被膜17が形成される。したがって、導電性重合被膜17は、緊密な膜を形成しているわけではなく、糸状体の密生集合体であるという一面を有しており、全体として微細孔を有する疎で脆い構造である。また、フェライト粒子15の活性化点を起点として個別に成長するため、表面状態は均一ではなく生長の度合に応じて凹凸を有しており、使用時のストレスが凸部に集中して掛かるおそれがある。さらに、フェライト粒子15の活性化点が形成されていない部分では、導電性重合被膜17の成長が全く見られず、必ずしも均質な膜が形成されているわけではない。
【0019】この原料粗粒子に対して本発明の改質処理を施すと、導電性重合被膜17が軟化し、振動、剪断力、衝撃力等の外的な力により、導電性重合被膜17が圧密化されるとともに、フェライト粒子15に対して均一の厚さで付着するようになり、さらに表面も平滑になり均質化する。よって、得られる導電性磁性粒子の集合体としての体積固有抵抗が低下し、しかも、導電性重合被膜17が強固で均質なため、使用時のストレスによっても損傷を受けにくい。
【0020】図3は、コーティング型原料粗粒子の改質について示す説明図である。改質前の原料粗粒子は、フェライト粒子15に対して導電性コーティング層19が均質に付着していないが、これが改質により均質化される。顕著な圧密化が起こらない点を除いては、図2と同様の均質化処理がなされる。
【0021】以上に説明したような改質処理方法によれば、表面の導電性被覆が均質化され、得られる導電性磁性粒子の集合体としての導電性が向上する。図4はこの状態を示すグラフであり、処理時間の進行に伴ない体積固有抵抗が低下し、ついには安定化領域に達する(抵抗の低下効果が飽和する)。また、表面の導電性被覆が均質化かつ安定化され、機械的強度が向上するため、繰り返し使用によりストレスが加重された場合でも、表面の導電性被覆の損傷が防止される。
【0022】このようにして、表面が改善された原料粗粒子は、2成分現像剤における導電性磁性キャリアとして用いられる。また、電子写真法で暗下に感光体に電荷を注入して感光体を均一帯電させる粒子帯電法(接触帯電法)に用いられる帯電剤用の帯電粒子として使用される。帯電用粒子は、現像剤キャリアの場合と同様にマグローラ等により導電性磁性粒子が磁気ブラシを形成して感光体表面と接触する。
【0023】ここで、現像剤用のキャリアにおける場合は、平均粒径は10〜100μm(好ましくは20〜80μm)、体積固有抵抗は101〜108Ω・cm(好ましくは102〜105Ω・cm)、1エールステッドの磁場での磁力は40emu/g以上(好ましくは45〜70emu/g)とすると好適である。また、粒状帯電剤における帯電用粒子の平均粒径は1〜100μm(好ましくは5〜50μm)、体積固有抵抗100〜105Ω・cm(好ましくは101〜105Ω・cm)、1エールステッドの磁場での磁力は40emu/g以上(好ましくは50〜100emu/g)とすると好適である。なお、導電性磁性樹脂粒子の体積固有抵抗は、底部に電極を有する内径20mmのテフロン製筒体に導電性磁性粒子を入れ、外形20mmの電極を挿入し、上部から1Kgの荷重を掛けて測定したときの値である。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、磁性コア粒子と導電性の表面被覆を有するキャリア及び帯電用の粒子の表面被覆を安定化することができ、使用時の外力に起因するストレスによる表面導電性被覆の損傷が防止され、安定した導電特性を維持することができ、その結果、現像性を高め画像濃度が高くコントラストの鮮明な画像が持続して得られ、また、低い現像電界により画像形成が可能になる等の種々の効果が得られる。
【0025】
【製造例】製造例135μmの平均粒径を有するフェライトキャリアの表面に、導電性カーボンブラックを混合したアクリル樹脂をスピラコーターを用いてスプレーし、熱処理して表面導電コーティング層を形成して原料粗粒子を作成した。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、3×104 Ω・cmであった。原料粗粒子の表面温度がアクリル樹脂の軟化点(150℃)より少し低い温度(130℃)となるように加熱温度を設定し、Vドライヤー(中央化工機製)を用いて30分間振動をかけ、表面改質処理を行ない、本発明の帯電性粒子を得た。得られた帯電用粒子は、粒子同士の摩擦、衝突によって凹部まで均一な表面層を有しており、体積固有抵抗は2×103 Ω・cmであった。また、この帯電用粒子を使用したところ、耐久性が良好で、長期使用後も感光体を安定して均一帯電することができた。
【0026】製造例230μmの平均粒径を有する磁性樹脂コア粒子に導電性カーボンブラックを2%ヘンシェルミキサーを用いて高速混合し、さらにハイブリタイザーを用いて導電性カーボンブラックを表面に打ち込み原料粗粒子を得た。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、6×103 Ω・cmであった。この原料粗粒子に対して、Vドライヤーを用い、樹脂コア粒子の軟化点(120℃)よりやや低い100℃で加熱し、30分間振動処理を行い、表面改質して本発明の帯電用粒子を得た。得られた帯電用粒子は、粒子同士の摩擦、衝突によって導電性粒子がしっかりと固定された均一な表面層を有しており、体積固有抵抗は3×102 Ω・cmであった。また、この帯電用粒子を使用したところ、耐久性が良好で、長期使用後も感光体を安定して均一帯電することができた。
【0027】製造例335μmの平均粒径を有するフェライト粒子の表面に、導電性カーボンブラック30%を含むエチレンガスを供給し、フェライト粒子の表面に直接、導電性ポリエチレン被膜を形成して原料粗粒子を得た。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、8×103 Ω・cmであった。この原料粗粒子に対して、Vドライヤーを用い、ポリエチレンの軟化点(127℃)よりやや低い120℃で加熱し、30分間振動処理を行い、表面改質して本発明の帯電性粒子を得た。得られた帯電性粒子は、粒子同士の摩擦、衝突によって凹部まで均一な表面層を有しており、体積固有抵抗は6×103 Ω・cmであった。また、この帯電用粒子を使用したところ、耐久性が良好で、長期使用後も感光体を安定して均一帯電することができた。
【0028】製造例435μmの平均粒径を有するフェライトキャリアの表面に、導電性カーボンブラックを混合したアクリル樹脂をスピラコーターを用いてスプレーし、熱処理して表面導電コーティング層を形成して原料粗粒子を作成した。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、3×104 Ω・cmであった。原料粗粒子の表面温度がアクリル樹脂の軟化点(150℃)より少し低い温度(130℃)となるように加熱温度を設定し、Vドライヤー(中央化工機製)を用いて30分間振動をかけ、表面改質処理を行ない、本発明のキャリアを得た。
【0029】製造例530μmの平均粒径を有する磁性樹脂コア粒子に導電性カーボンブラックを2%ヘンシェルミキサーを用いて高速混合し、さらにハイブリタイザーを用いて導電性カーボンブラックを表面に打ち込み原料粗粒子を得た。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、6×103 Ω・cmであった。この原料粗粒子に対して、Vドライヤーを用い、樹脂コア粒子の軟化点(120℃)よりやや低い100℃で加熱し、30分間振動処理を行い、表面改質して本発明のキャリアを得た。
【0030】製造例635μmの平均粒径を有するフェライト粒子の表面に、導電性カーボンブラック30%を含むエチレンガスを供給し、フェライト粒子の表面に直接、導電性ポリエチレン被膜を形成して原料粗粒子を得た。この原料粗粒子の体積固有抵抗は、8×103 Ω・cmであった。この原料粗粒子に対して、Vドライヤーを用い、ポリエチレンの軟化点(127℃)よりやや低い120℃で加熱し、30分間振動処理を行い、表面改質して本発明のキャリアを得た。
【0031】製造例4〜6で得られた本発明のキャリアに、絶縁性トナーを10%混合して電子写真現像剤とし、この現像剤の体積固有抵抗を測定した。ついで、京セラ製レーザービームプリンターを用い、10万枚連続印字し、その後の現像剤の体積固有抵抗を測定した。また、本発明の改質を行わなう前の原料粗粒子を無処理キャリアとして用い、同様の実験を繰り返した。以上の結果を表1に示した。製造例4〜6で得られた本発明のキャリアを用いた場合は、いずれも10万枚印字後でも良好な画像が得られたが、無処理キャリアを用いた場合は、いずれも10万枚の印字中にキャリアの表面状態が変化し、現像剤抵抗の変化が大きく、良好な画像が得られなかった。
【0032】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表面改質方法について示す模式図である。
【図2】本発明の表面改質方法について示す模式図である。
【図3】本発明の表面改質方法について示す模式図である。
【図4】2体積固有抵抗の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
11 磁性コア樹脂粒子
13 導電性微粒子
15 フェライト粒子
17 導電性重合被膜
19 導電性コーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面固着型の原料粗粒子を用いたキャリアの製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が10〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜70emu/gのキャリアを製造することを特徴としたキャリアの製造方法。
【請求項2】 磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面成長型又はコーティング型の原料粗粒子を用いたキャリアの製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動,衝撃又はせん断力を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が1〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜100emu/gのキャリアを製造することを特徴としたキャリアの製造方法。
【請求項3】 磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面固着型の原料粗粒子を用いた帯電用粒子の製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が10〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜70emu/gの帯電用粒子を製造することを特徴とした帯電用粒子の製造方法。
【請求項4】 磁性コア粒子と、磁性コア粒子の表面に設けられた磁性コア粒子よりも電気抵抗が小さい導電性被覆とからなり、磁性コア粒子および導電性被覆の少なくともいずれか一方に合成樹脂が含まれ、該樹脂により導電性微粒子が担持された導電性かつ磁性を有する表面成長型又はコーティング型の原料粗粒子を用いた帯電用粒子の製造方法において、二次加工工程で、前記原料粗粒子に、前記磁性コア粒子あるいは表面導電層を形成する合成樹脂の軟化点又はそれよりやや低い温度の熱と、振動,衝撃又はせん断力を付与することによって表面改質を進行させ、平均粒径が1〜100μm、体積固有抵抗が10〜10Ω・cm、磁力が40〜100emu/gの帯電用粒子を製造することを特徴とした帯電用粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3507531号(P3507531)
【登録日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【発行日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−235402
【出願日】平成5年8月26日(1993.8.26)
【公開番号】特開平7−61877
【公開日】平成7年3月7日(1995.3.7)
【審査請求日】平成10年11月17日(1998.11.17)
【審判番号】不服2001−11382(P2001−11382/J1)
【審判請求日】平成13年7月4日(2001.7.4)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 昭57−129444(JP,A)
【文献】特開 昭62−246075(JP,A)
【文献】特開 平3−149564(JP,A)