説明

キュウリモザイクウイルスの診断法

【課題】キュウリモザイクウイルス(CMV )による農作物の被害を軽減するため、CMV を安価かつ簡便なプロセスで高感度に検出できる方法を提供する。
【解決手段】CMV の各系統に共通して保存された塩基配列から設計された、所定の塩基配列と特異的にハイブリダイズする、 LAMP プライマー又は Loop プライマーであるヌクレオチドプライマー、これらのプライマーから構成されるプライマーセット、当該プライマーセットを用いた核酸増幅法、核酸増幅の検出によるCMV 感染の有無の検出方法及び検出用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキュウリモザイクウイルス(Cucumber mosaic virus :以下において単に「CMV 」とも言う)の検出方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、CMV
遺伝子の高感度な遺伝子工学的検出法を利用したCMV 感染植物の診断法と、これに用いるヌクレオチドプライマー、プライマーセット及び CMV診断用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
CMV は非常に広い宿主範囲を持ち、主要な野菜や花きの殆どを含む85科365 属775 種の植物への感染が報告されている。CMV は Bromovirus 科Cucumovirus 属に分類される3 粒子性ウイルスであって、球状ウイルス粒子には3 分節の1 本鎖(+) ゲノム RNA(RNA 1 〜3 )と、外被タンパク質をコードするサブゲノム RNA( RNA4 )が含まれている。CMV は、1916年に Doolittleによって初めて報告された。また、日本では1922年に笠井らによって発見されている。このウイルスは、例えば下記の非特許文献1に開示されるように、汁液伝染とともにアブラムシで伝播することが知られている。
【0003】
【非特許文献1】Tomlinson, J. A. (1987), "Epidemiology and controlof virus diseases of vegetables" Ann. Appl. Biol., 110, 661-681. CMV が感染すると、エンドウやソラマメなどのマメ科野菜ではモザイク症状、トマトやピーマンなどのナス科野菜ではモザイク症状やえそ症状、ウリ科野菜ではモザイク症状や奇形症状を示す。その他、アブラナ科野菜、チューリップ、スイセン・キクなどの多くの花きで、モザイク症状を中心とした病徴を示す(例えば下記の非特許文献2を参照) 。
【0004】
【非特許文献2】都丸敬一ら編.新植物病理学.朝倉書店.202-207 農作物の栽培現場では、CMV に感染した植物体を感染源として、アブラムシによって周辺の農作物に蔓延していくため、伝染源となる罹病植物を早期に取り除くことが最も重要となる。そのために、簡易で高感度なCMV 感染植物診断技術が要求されている。
【0005】
下記の非特許文献3に示すように、Jones とProudlove は、CMV の抗体を用いたELISA 法によって、ルピナスの種子からウイルスを検出できたことを報告している。このELISA 法を用いることにより、100 粒の種子中CMV 感染種子が1 粒でもあれば、検出可能であった。
【0006】
【非特許文献3】Jones, R. A. C. and Proudlove, W. (1991). "Furtherstudies of cucumber mosaic virus infection of narrow-leafed lupin(Lupinas angustifolius):seed-borne infection, aphid transmission,spread and effects on grain yield" Ann. Appl. Biol., 118, 319-329. また、下記の非特許文献4に示すように、Tsuda らは、簡易診断法としてろ紙とラテックスを用いた迅速免疫ろ紙検定法( RIPA )法によるCMV 検出法を開発した。そのCMV 検出法によれば、CMV の抗体をラテックスに感作させ、感作ラテックスをろ紙に塗布し乾燥させた後、ろ紙の下端をCMV が感染した植物の粗汁液に浸し、1 分後、ハサミでろ紙の下端を切除し、標識ラテックスに浸したところ、明瞭なバンドが出現した。
【0007】
【非特許文献4】Tsuda, S., Kameya-Iwaki, M., Hanada, K., Fujisawa,I. and Tomaru, K. (1993). "Simultaneous diagnosis for plants infectedwith multiple viruses employing rapid immunofilter paper assay (RIPA)with two-step method; multi-RIPA" Ann. Phytopath. Soc. Japan, 59, 200-203. さらにWylie らは、下記の非特許文献5に示すように、遺伝子レベルでの検出法として、CMV の RNA3 のコートタンパク質領域に設計したプライマーを利用したRT-PCR法を開発した。
【0008】
【非特許文献5】Wylie, S., Wilson, C. R., Jones, R. A. C. andJones, G. K. (1993). "A polymerase chain reaction assay for cucumbermosaic virus in lupin seeds" Aust. J. Agric. Res., 44, 41-51.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、従来は、一般的に、植物ウイルスの検定には免疫学的な手法がよく用いられている。しかしこれらの免疫学的な手法では検出感度が低いことが問題となっている。
【0010】
一方、免疫学的な手法に変わる RT-PCR 法のような遺伝子学的な手法も提案されている。しかし RT-PCR 法のような手法では、例えばサーマルサイクラーや電気泳動槽のような高額な装置や実験設備が必要であり、農業現場での診断には不向きである。
【0011】
従って、CMV に対して高い検出感度を持ち、しかも簡易かつ安価に実行できる診断法を開発することが要求されている。そこで本発明は、CMV 遺伝子の高感度な遺伝子工学的検出法を利用した、簡易かつ安価に実行できるCMV 感染植物の診断法を開発することを、解決すべき技術的課題とする。
〔着眼点〕
本発明者は、免疫学的な方法やRT-PCR法よりも高感度で特異的な検出方法である LAMP (Loop-mediated isothermal amplification)法に着眼した。但し診断対象が RNAであるから、実際には逆転写過程を伴う RT-LAMP法となる。この高感度な検出法を利用することで、検体に対する特別な抽出法や押潰し等の物理的な操作も不要となり、高額な装置や実験設備を必要とすることなく、例えば、葉を突いた爪楊枝を反応液に浸漬することで、ウイルス感染の有無を調べることができる。
【0012】
また、本発明者は、CMV には各系統間で塩基配列の差異が多い点に鑑み、CMV
の各系統に共通して適用できる検出法を確立するため、多系統のCMV の塩基配列の比較検討を通じて、CMV に特異的な塩基配列であって、しかも各系統で共通に保存されている塩基配列の領域を割出した。そして、これらのCMV に特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするヌクレオチドプライマーを LAMP プライマーとして作製し、更にはプロセスの迅速化のためにLoopプライマーも作製し、これらのプライマーからなるプライマーセットを用いて、RT-LAMP 法により各系統のCMV に特異的な塩基配列を増幅することで、多様な系統のCMV のいずれであっても高感度に検出できることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、配列番号1に示す C7-2 系統のキュウリモザイクウイルス( CMV)の RNA3 の塩基配列における、 1521 〜 1739 番の塩基配列(以下、これを「特定塩基配列」とも言う)から選ばれた塩基配列又はこれと相補的な塩基配列からなり、RT-LAMP 法による増幅用プライマーとして用いられるものである、ヌクレオチドプライマーである。
【0014】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係るヌクレオチドプライマーが、 LAMP プライマーとしてのインナープライマーF(IPF )、インナープライマーR(IPR )、アウタープライマーF(OPF )又はアウタープライマーR(OPR )として用いられるものである、ヌクレオチドプライマーである。
【0015】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明に係るヌクレオチドプライマーが、 Loop プライマーとしてのループプライマーF(LPF )又はループプライマーR(LPR )として用いられるものである、ヌクレオチドプライマーである。
【0016】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係るヌクレオチドプライマーが、少なくとも15塩基を含むものである、ヌクレオチドプライマーである。
【0017】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、第1発明に規定する特定塩基配列において、その5’末端側から3’末端側へ向かって、互いにオーバーラップしないように6つの塩基配列領域 F3 、 F2 、 F1 、R1c 、R2c 、R3c を順次にかつ任意に設定したもとで、これらの6つの塩基配列領域の塩基配列に対する相補的な塩基配列をそれぞれ F3c、F2c 、F1c 、R1、R2、R3としたとき、以下の(1)〜(4)に列挙する各塩基配列を持つ LAMP プライマーからなる、プライマーセットである。
(1)F2より選ばれた塩基配列を3’末端側に有し、 F1cより選ばれた塩基配列を5’末端側に有するインナープライマーF(IPF )。
(2)R2より選ばれた塩基配列を3’末端側に有し、 R1cより選ばれた塩基配列を5’末端側に有するインナープライマーR(IPR )。
(3)F3より選ばれた塩基配列を有するアウタープライマーF(OPF )。
(4)R3より選ばれた塩基配列を有するアウタープライマーR(OPR )。
【0018】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係る6つの塩基配列領域が、第1発明に規定する特定塩基配列におけるそれぞれ次の塩基番号で示される領域である、プライマーセットである。
F3 :配列番号1521〜1540の領域
F2 :配列番号1552〜1572の領域
F1 :配列番号1594〜1614の領域
R1c:配列番号1655〜1675の領域
R2c:配列番号1697〜1717の領域
R3c:配列番号1719〜1739の領域
(第7発明)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第5発明又は第6発明に係る LAMP プライマーIPF 、IPR 、OPF 及びOPR がそれぞれ以下の塩基配列を有する、プライマーセットである。
IPF:配列番号10に示す塩基配列
IPR:配列番号11に示す塩基配列
OPF:配列番号4に示す塩基配列
OPR:配列番号12に示す塩基配列
(第8発明)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、前記第5発明〜第7発明のいずれかに係る6つの塩基配列領域の設定において、塩基配列領域 F2 と F1 との間に塩基鎖のループ構造を形成するに適当な長さの中間塩基配列領域 FLPを残し、塩基配列領域 R1cと R2cとの間に塩基鎖のループ構造を形成するに適当な長さの中間塩基配列領域 RLPc を残すように設定し、かつこれらの中間塩基配列領域 FLP、RLPcに対する相補的な塩基配列をそれぞれ FLPc 、RLP としたときに、前記プライマーセットが更に以下(5)、(6)の各塩基配列を持つ Loop プライマーを含む、プライマーセットである。
(5)FLPcより選ばれた塩基配列を有するループプライマーF(LPF )。
(6)RLPcより選ばれた塩基配列を有するループプライマーR(LPR )。
【0019】
(第9発明)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、前記第8発明に係る中間塩基配列領域 FLP、RLPcが20〜40の塩基配列からなる、プライマーセットである。
【0020】
(第10発明)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、前記第8発明又は第9発明に係る Loop プライマーLPF 及びLPR が、それぞれ以下の塩基配列を有する、プライマーセットである。
LPF:配列番号13に示す塩基配列
LPR:配列番号9に示す塩基配列
(第11発明)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、前記第5発明〜第10発明のいずれかに係る LAMP プライマー及び Loop プライマーが、少なくとも15塩基を含むものである、プライマーセットである。
【0021】
(第12発明)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、第5発明〜第11発明のいずれかに係るプライマーセットを用いて、RT-LAMP 法により、CMV の標的核酸領域の増幅反応を行う、 CMVの検出方法である。
【0022】
(第13発明)
上記課題を解決するための本願第13発明の構成は、前記した第12発明に係る CMVの検出方法が、少なくとも、C7-2系統(GenBank accession No. D42079)N 系統(GenBank accession No. D28486)、FT系統(GenBank accession No. D28487)、Pepo系統(GenBank accession No. D28488)、CS系統(GenBank accession No. D28489)並びに D8 系統(GenBank accession No. AB004781)の CMVを対象とするものである、 CMVの検出方法である。
【0023】
(第14発明)
上記課題を解決するための本願第14発明の構成は、前記第12発明又は第13発明に係る CMVの検出方法によって植物のCMV 感染の有無を診断する、CMV 診断方法である。
【0024】
(第15発明)
上記課題を解決するための本願第15発明の構成は、第1発明〜第4発明のいずれかに係る必要な種類のヌクレオチドプライマーを含み、又は第5発明〜第11発明のいずれかに係るプライマーセットを含む、 CMV診断用キットである。
【発明の効果】
【0025】
以上の本願第1発明〜第15発明からなる本発明によれば、以下の種々の効果が得られる。
【0026】
(第1発明〜第4発明の効果)
第1発明〜第4発明に係るヌクレオチドプライマーは、前記した特定塩基配列から選ばれた塩基配列又はこれと相補的な塩基配列からなる。
【0027】
この特定塩基配列は C7-2 系統の CMVの RNA3 の塩基配列における1495〜1739番の塩基配列であるが、同時に、C7-2系統(GenBank accession No. D42079)N
系統(GenBank accession No. D28486)、FT系統(GenBank accession No. D28487)、Pepo系統(GenBank accession No. D28488)、CS系統(GenBank accession No. D28489)並びに D8 系統(GenBank accession No. AB004781)の CMVの塩基配列の比較検討を通じて、「CMV に特異的な塩基配列であって、しかも各系統で共通に保存されている塩基配列が集中している領域」として割り出したものでもある。従ってこれらのヌクレオチドプライマーを適正に組み合わせてRT-LAMP
法による増幅用プライマーとして用いると、各系統間で塩基配列の差異が多い各系統のCMV に対し、共通して信頼性の高いRT-LAMP 法によるCMV 診断を行うことができる。
【0028】
RT-LAMP 法を行うに当たり、第2発明のように LAMP プライマーとしてのインナープライマーF(IPF )、インナープライマーR(IPR )、アウタープライマーF(OPF )及びアウタープライマーR(OPR )を設定することもでき、更に、RT-LAMP 法の効率を向上させるために、第3発明のように Loop プライマーとしてのループプライマーF(LPF )及びループプライマーR(LPR )を追加して設定することもできる。
【0029】
上記の各種のヌクレオチドプライマーの長さ(塩基数)は必ずしも限定されないが、第4発明のように少なくとも15塩基を含むものが特に好ましい。
【0030】
(第5発明〜第11発明の効果)
第5発明〜第11発明に係るプライマーセットは、第1発明〜第11発明に係るヌクレオチドプライマーと同様、前記した特定塩基配列から選ばれた塩基配列又はこれと相補的な塩基配列からなるプライマーであって、RT-LAMP 法用の1セットのプライマーとして構成されたものである。従って、これらのプライマーセットをRT-LAMP 法による増幅用プライマーとして用いると、各系統間で塩基配列の差異が多い各系統のCMV に対し、共通して信頼性の高いRT-LAMP 法によるCMV
診断を行うことができる。
【0031】
プライマーセットとしては、第5発明のように1セットの LAMP プライマーからなるプライマーセットも利用できるし、第8発明のように更に Loop プライマーを追加した高効率なプライマーセットも利用できる。
【0032】
周知のように、LAMP法においては、標的核酸上において、その3’末端側から5’末端側へ向かって、互いにオーバーラップしないように6つの塩基配列領域を順次に設定し、ここから、第5発明のように、IPF 、IPR 、OPF 、OPR の4つの LAMP プライマーを設定する。
【0033】
上記の6つの塩基配列領域は、CMV の各系統で共通に保存されている塩基配列領域である限りにおいて、限定されない。但し、特に好ましい6つの塩基配列領域が、前記第6発明に規定する F3 、 F2 、 F1 、 R1c、 R2c、 R3cの各領域である。この場合、上記のIPF 、IPR 、OPF 、OPR の4つの LAMP プライマーは、前記第7発明で規定するそれぞれの塩基配列を有することになる。
【0034】
LAMP プライマー及び Loop プライマーからなるプライマーセットを構成する場合には、前記第8発明及び第9発明のようにして、6つの塩基配列領域の他に2つの中間塩基配列領域 FLP、RLPcを設定し、この中間塩基配列領域に基づいて、第8発明の(5)として前記したループプライマーF(LPF )と、第8発明の(6)として前記したループプライマーR(LPR )とを更に設定する。 LAMP プライマーがそれぞれ第7発明で規定する塩基配列を有する場合においては、これらの Loop プライマー LPF及び LPRはそれぞれ第10発明に規定する塩基配列を有することが、特に好ましい。
【0035】
上記の各種のプライマーセットを構成する LAMP プライマーや Loop プライマーの長さ(塩基数)は必ずしも限定されないが、第11発明のように少なくとも15塩基を含むものが特に好ましい。
【0036】
(第12発明及び第13発明の効果)
第12発明及び第13発明によれば、各系統間で塩基配列の差異が多い各系統のCMV に対し、特に、少なくともC7-2系統、N 系統、、FT系統、Pepo系統、CS系統並びに D8 系統の CMVに対し、共通して信頼性の高いRT-LAMP 法によるCMV の検出を行うことができる。
【0037】
しかもこれらの CMVの検出方法は、免疫学的な方法やRT-PCR法よりも高感度で、特異的な検出が可能である。更に、これらの従来法のような面倒な抽出法や物理的な操作も不要となり、高額な装置や実験設備を必要とせず、例えば、葉を突いた爪楊枝を反応液に浸漬することで、ウイルス感染の有無を調べることができる。
【0038】
(第14発明の効果)
第14発明によって、植物のCMV 感染の有無を診断する高感度で特異的なCMV
診断方法が提供される。
【0039】
(第15発明の効果)
第15発明によって、前記第14発明のCMV 診断方法を実行するに好適な CMV診断用キットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明の主要な実施形態は、その最良の形態を含めて、前記した「課題を解決するための手段」の項における本願第1発明〜第15発明の構成の説明において述べられている。本発明の実施形態におけるその他の点を、以下に述べる。
【0041】
本発明において使用される試料としては、植物由来の葉、枝、果実等を適当な大きさの切片としたもの等が挙げられる。そして、この切片試料はCMV の感染の有無を問わず、肉眼的に無病徴であっても、あるいは明らかにモザイク症状を呈しているものであってもよい。植物検体から増幅に用いられる核酸は、この切片をそのまま増幅に使用される緩衝液に浸漬して遊離させるか、あるいは爪楊枝などで突くことによって付着した試料を用いるか、また別にトリス緩衝液やリン酸緩衝液等の緩衝液からなる抽出液と共に試料を磨砕等してから、抽出・精製等の公知の技術より精製させたものを用いることができる。
【0042】
このように植物検体から得られたCMV 由来の核酸の増幅は、近年、納富らが開発した、温度制御が不要な新しい核酸増幅法である上記 LAMP 法(ループ媒介等温増幅法:WO 00/28028)で達成される。この方法は、鋳型となるヌクレオチドに自身の3’末端をアニールさせて相補鎖合成の起点とするとともに、このとき形成されるループにアニールするプライマーを組み合わせることにより、等温での相補鎖合成反応を可能とした核酸増幅法である。
【0043】
また、LAMP法では、プライマー3’末端が常に試料に由来する領域に対してアニールするために、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能する。そしてその結果として、高感度にかつ特異性の高い核酸増幅反応を可能としている。
【0044】
さらに、CMV の核酸のように鋳型がRNA である場合は、RNA を鋳型としてDNA
を合成する逆転写反応と上記のLAMP反応を組み合わせたRT-LAMP 法によって核酸を増幅することができる。
【0045】
RT-LAMP 反応で使用されるヌクレオチドプライマーは、鋳型核酸の塩基配列における前記した6つの塩基配列領域を認識する少なくとも4種類の前記 LAMP プライマー、更には前記した2つの中間配列領域を認識する2種類の前記 Loop プライマーから構成される。
【0046】
これらの6種類のプライマーは、通常、各々インナープライマーF及びRと、アウタープライマーF及びR、更にループプライマーF及びRと呼ぶ。インナープライマーとは、標的塩基配列上の「ある特定のヌクレオチド配列領域」を認識し、かつ合成起点を与える塩基配列を3’末端に有し、同時にこのプライマーを起点とする核酸合成反応生成物の任意の領域に対して相補的な塩基配列を5’末端に有するヌクレオチド(好ましくは、オリゴヌクレオチド)である。一方、アウタープライマーとは、標的塩基配列上の『「ある特定のヌクレオチド配列領域」の3’末端側に存在するある特定のヌクレオチド配列領域』を認識かつ合成起点を与える塩基配列を有するヌクレオチド(好ましくは、オリゴヌクレオチド)である。さらに、ループプライマーとは、第8発明で前記したような中間塩基配列領域を認識し、かつ合成基点を与える塩基配列を有するヌクレオチド(好ましくは、オリゴヌクレオチド)である。
【0047】
ここで、各プライマーにおける「F」とは、標的塩基配列のアンチセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示であり、一方「R」とは、標的塩基配列のセンス鎖と相補的に結合し、合成起点を提供するプライマー表示である。プライマーとして用いられるヌクレオチドの長さは、10塩基以上、好ましくは15塩基以上で、化学合成物あるいは天然物のどちらでも良く、各プライマーは単一の特定された塩基配列に係るヌクレオチドでもよく、部分的に同じ塩基配列を持つ複数種類のヌクレオチドの混合物でもよい。
【0048】
本発明者は、配列番号1 で示される塩基配列から、各系統のCMV に共通する特異的な塩基配列を迅速に増幅できるRT-LAMP 法のプライマーの塩基配列とその組み合わせを鋭意研究した結果、以下のプライマーセットを選定した。
IPF:5'-TAACTCGAATTTGAATGCGCGTATTACCTGATTCAGTCACGG -3' (配列番号10)
OPF:5'-GACCGTGGGTCTTATTATGG-3' (配列番号4 )
IPR:5'-CCGTAAAGTTCCTGCCTCCTCCCGTCCGCAAACATAGCAGAG-3' (配列番号11)
OPR:5'-ATTAACCAGTACCGGTGAGGC-3' (配列番号12)
LPF:5'-AACAAGTTTCTTATC-3' (配列番号13)
LPR:5'-ACTTATCCGTTGCCGCCA-3' (配列番号9 )
核酸合成で使用する酵素は、RNA からDNA を合成する逆転写酵素および鎖置換活性を有する鋳型依存性核酸合成酵素であれば特に限定されない。逆転写酵素としてはAMV 逆転写酵素、M-MLV 逆転写酵素、また、DNA 合成酵素としては、Bst
DNAポリメラーゼ(ラージフラグメント)、Bca (exo-) DNAポリメラーゼ、大腸菌DNA ポリメラーゼI のクレノウフラグメント等が挙げられ、好ましくはAMV 逆転写酵素とBst DNA ポリメラーゼ(ラージフラグメント)の組み合わせが挙げられる。AMV 逆転写酵素とBst DNA ポリメラーゼを用いる場合は、その反応至適温度である65°C付近で反応を行うのが望ましい。
【0049】
RT-LAMP 反応後の核酸増幅産物の検出には、公知の技術を適用できる。例えば、増幅された塩基配列を特異的に認識する標識オリゴヌクレオチドや蛍光性インターカレーター法(特開2001-242169 )を用いたり、あるいは反応終了後の反応液をそのままアガロースゲル電気泳動にかけても容易に検出できる。電気泳動においては、RT-LAMP 増幅産物が、塩基長の異なる多数のバンドがはしご状に検出される。
【0050】
また、RT-LAMP 法では核酸の合成により基質が大量に消費され、副生物であるピロリン酸が、共存するマグネシウムイオンと反応してピロリン酸マグネシウムとなり、反応液が肉眼でも確認できる程に白濁する。従って、この白濁を、反応終了後あるいは反応中の濁度上昇を経時的に観察できる測定機器を用いて、例えば400nm の吸光度変化を通常の分光光度計を用いて、確認することも可能である(W001/83817)。
【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例を具体的に説明する。本発明の技術的範囲は、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0052】
(実施例1:検出限界の確認)
以下のようにして、RT-LAMP 法と、代表的な核酸増幅法であるRT-PCR法との検出感度の比較を行った。
1.試料及び試薬の調整
1)核酸抽出
CMV に感染した植物(キクの葉)を、200 倍容の100mM Tris-HCl (pH 8.0) で磨砕したものを10倍とし、さらに段階的に10倍ずつの希釈操作を繰り返し、10倍までの希釈液を作製し、これらを核酸抽出試料とした。
【0053】
2)RT-PCR法
RT-PCR反応は、ReverTra Dash Kit (Toyobo)を用い、添付されたプロトコールに従って行った。CMV 検出用プライマーとして、CMV ゲノムの約 250bpを増幅する配列番号4及び12の塩基配列からなる2種類のプライマーを使用した。
【0054】
3)RT-LAMP 法
RT-LAMP 法での最終反応溶液 25 μL 中の各試薬濃度が下記になるように調整した。
【0055】
・20 mM Tris-HCl (pH 8.8)
・10 mM KCl
・10mM (NH)SO
・8mM MgSO
・0.1% Tween 20
・0.8M betaine (Sigma-Aldrich)
・1.4 mM dNTPs
・5mM DTT
・8 ユニットの RNase Inhibitor (Promega)
・16ユニットの Bst DNA polymerase (New England Biolabs)
・1.25ユニットの AMV reverse transcriptase (Invitrogen)
・1.6 μM IPF (配列番号10)及びIPR (配列番号11)
・0.2 μM OPF (配列番号4)及びOPR (配列番号12)
・0.8 μM LPF (配列番号13)及びLPR (配列番号9)
(実施例2:核酸増幅法による反応)
1)RT-PCR法による反応
10〜10倍まで希釈した、実施例1に係る各核酸抽出試料1μL を用い、上記の RT-PCR キットを利用してCMV の検出を行った。反応終了後の液5μL について2%アガロースゲルで電気泳動行った。
【0056】
2)RT-LAMP 法による反応
10〜10倍まで希釈した各核酸抽出試料1μL を用い、63°Cで60分のRT-LAMP 反応を行った。反応液の濁度をリアルタイム濁度測定装置 LA-200 (テラメックス)で測定した。
【0057】
(実施例3:各増幅反応の検出限界の比較結果)
図1に示されるように、RT-PCR反応では CMV由来の約 250bpのバンドが10、10倍希釈まで明瞭に観察されたが、10倍希釈ではやや薄く、10倍希釈以上の希釈液からは検出されなかった。図1は、CMV ポジティブコントロールを10〜10倍希釈したサンプルおよびウイルスフリーサンプルを用いたRT-PCR産物の電気泳動像である。M は100bp ラダーである。RT-PCRの結果、CMV が検出されたサンプルでは約 250bpのDNA が増幅される(図の右側の矢印)。
【0058】
一方、図2に示されるように、RT-LAMP 反応では、反応開始から約20分後に10と10倍希釈サンプルで濁度が上昇し始め、その後、23分後に10、25分後に10、29分後に10倍希釈のサンプルの濁度の上昇が認められた。図2は、CMV ポジティブコントロールを10〜10倍希釈したサンプルおよびウイルスフリーサンプルを用いたRT-LAMP 反応液の濁度の変化を示す。図2中、「■」のプロットは10倍希釈を、「□」のプロットは10倍希釈を、「◆」のプロットは10倍希釈を、「◇」のプロットは10倍希釈を、「▲」のプロットは10倍希釈を、「△」のプロットは10倍希釈を、「●」のプロットは10倍希釈を、「○」のプロットはウイルスフリーをそれぞれ示している。RT-LAMP 反応は、63°C、1時間で行った。
【0059】
以上の結果から、実施例に係るプライマーを用いた RT-LAMP法は RT-PCR 法よりも検出感度が約100倍高いことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、CMV に特異的な塩基配列と選択的にハイブリダイズするヌクレオチドプライマーを作製し、RT-LAMP 法によりCMV を高感度に検出することができる。
〔配列表〕
SEQUENCE LISTING
<110> Aichi Prefecture
<120> キュウリモザイクウイルスの診断法
<130> POK-05-024
<160> 13
<210> 1
<211> 2238
<212> RNA
<213> Cucumber mosaic virus
<400> 1
gtaatctaca ctgtgtgtgt gcgtgtgtgt gtgtgtgtgt cgcgtcgtgt cgagtcgtgt 60
tgtccgcaca tttgagtcgt gctgtccgca cattttatct attagtgtgg tgtgttagat 120
ttgccgaggc atggctttcc aaggtaccag taggacttta actcaacagt cctcagcggc 180
tacgtccgac gaacttcaaa agatattatt tagccctgat gccattaaga aaatggctac 240
tgagtgtgac ctaggccggc atcactggat gcgcgccgat aacgctattt cagtccgacc 300
cctcgttccc gaagtaaccc atggaagtat tgcatccttc tttaagtctg gatatgatgc 360
tggtgaatta cgctctaaag gatatatgag cgtccctcaa gtgttgtgtg ctgttactcg 420
aacagtttcc accgatgctg aaggatcttt gagaatttac ctagctgatt taggtgataa 480
ggagttatct cctatagatg ggcaatgcgt ttcattacat aaccatgatc ttcccgcttt 540
ggtgtctttc caaccgacgt atgattgtcc tatggagacg attgggaatc gtaagcggtg 600
tttcgctgtt gttatcgaaa gacatggtta tattgggtat accggcacca cagctagcgt 660
gtgtagtaat tggcaagcac ggttttcttc taagaataac aactacactc atatcgcagc 720
tgggaagact ctagtactac ctttcaacag attagctgag caaacaaaac cgtcggctgt 780
cgctcgcctg ttgaagtcgc agcttaacaa tattgaatct tcgcagtacg tcctatcaaa 840
agcgaagatt aatcagaatg cgcgtagtga gtccgaggaa ttgaatgttg agagcccttc 900
cttcgcaatc gggagttctt ccgcgtcccg ctccgaagcc tttagaccgc aggtggttaa 960
cggtctttag cactttagtg ctttcgttgc gtattagtgt atatatctac ttatgagtct 1020
acatagtatg tatataccta tagtgtcctg tgtgagttga tacagttgac aactgtgacg 1080
cgatgccgtg ttgagaagag aacacatctg gttttagtaa gtccacatca taactttgag 1140
gttcaattcc tctcgttccc tgttgggctc cttacttttt catggatgct tctccacgag 1200
attgcgtttc gtctactgat tatctataga gtctgtgtgt gctgtgtttt ctcttttgtg 1260
tcgtagaatt gagtcgagtc atggacaaat ctgaatcaac cagtgctggt cgtaaccgtc 1320
gacgtcgtcc gcgtcgtggt tcccgctccg ccccctcctc cgcggatgct aactttagag 1380
tcttgtcgca gcaactttcg cgactaaaca agacgttagc agctggtcgt ccaaccatta 1440
accacccaac ctttgtgggg agtgaacgct gtaaacctgg gtacacgttc tcatctatta 1500
ccctgaagcc accgaaaata gaccgtgggt cttattatgg taaaaggttg ttattacctg 1560
attcagtcac ggagttcgat aagaaacttg tttcgcgcat tcaaattcga gttaatcctt 1620
tgccgaaatt tgattctacc gtgtgggtta cggtccgtaa agttcctgcc tcctcggacc 1680
tatccgtcgc cgccatctct gctatgtttg cggacggagc ctcaccggta ctggttaatc 1740
agtatgctgc atccggcgtc caagccaaca acaagttgtt gtatgatctt tcagcgatgc 1800
gagctgatat tggcgacatg agaaagtacg ccgtcctcgt gtattcaaaa gacgatgcgc 1860
tcgagacgga tgaactggta cttcatgtcg acattgagca ccaacgcatt cccacgtctg 1920
gagtgctccc agtgtgaatc cgtgttttcc cagaacctcc ctccgatttc tgtggcggga 1980
gctgagttgg cagttctgct ataaactgtc tgaagtcact aaacgtttta cggtgaacgg 2040
gttgtccatc cagcttacgg ctaaaatggt cagtcgtgga gaaatctacg ccagcagatt 2100
tacaaatctc tgagacgcct ttgaaaccat ctcctaggtt tcttcggaag gacttcggtc 2160
cgtgtacttc tagcacaaga tgctagtttc agggtacagg tgccccccca ctctcgtggg 2220
ggcctccaaa ggagacca 2238
<210> 2
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400〉2
CGCGCATTCA AATTCGAGTT A 21
<210> 3
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 3
TATTACCTGA TTCAGTCACG G 21
<210> 4
<211〉20
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 4
GACCGTGGGT CTTATTATGG 20
<210> 5
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 5
CCGTAAAGTT CCTGCCTCCT C 21
<210> 6
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 6
CTCTGCTATG TTTGCGGACG G 21
<210> 7
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 7
GCCTCACCGG TACTGGTTAA T 21
<210> 8
<211〉15
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 8
GATAAGAAAC TTGTT 15
<210> 9
<211〉18
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 9
ACTTATCCGT TGCCGCCA 18
<210> 10
<211〉42
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 10
TAACTCGAAT TTGAATGCGC GTATTACCTG ATTCAGTCAC GG 42
<210> 11
<211〉42
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 11
CCGTAAAGTT CCTGCCTCCT CCCGTCCGCA AACATAGCAG AG 42
<210> 12
<211〉21
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 12
ATTAACCAGT ACCGGTGAGG C 21
<210> 13
<211〉15
<212〉DNA
<213〉Artificial Sequence
<400> 13
AACAAGTTTC TTATC 13
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】RT-PCR法によるCMV の検出限界を示す図である。
【0062】
【図2】RT-LAMP 法によるCMV の検出限界を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に示す C7-2 系統のキュウリモザイクウイルス( CMV:Cucumber mosaic virus )の RNA3 の塩基配列における 1521 〜 1739 番の塩基配列(特定塩基配列)から選ばれた塩基配列又はこれと相補的な塩基配列からなり、RT-LAMP 法による増幅用プライマーとして用いられるものであることを特徴とするヌクレオチドプライマー。
【請求項2】
前記ヌクレオチドプライマーが、 LAMP プライマーとしてのインナープライマーF(IPF )、インナープライマーR(IPR )、アウタープライマーF(OPF )又はアウタープライマーR(OPR )として用いられるものであることを特徴とする請求項1に記載のヌクレオチドプライマー。
【請求項3】
前記ヌクレオチドプライマーが、 Loop プライマーとしてのループプライマーF(LPF )又はループプライマーR(LPR )として用いられるものであることを特徴とする請求項1に記載のヌクレオチドプライマー。
【請求項4】
前記ヌクレオチドプライマーが、少なくとも15塩基を含むものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヌクレオチドプライマー。
【請求項5】
請求項1に規定する特定塩基配列において、その5’末端側から3’末端側へ向かって、互いにオーバーラップしないように6つの塩基配列領域 F3 、F2、F1、 R1c、 R2c、 R3cを順次にかつ任意に設定したもとで、これらの6つの塩基配列領域の塩基配列に対する相補的な塩基配列をそれぞれ F3c、F2c 、F1c 、R1、R2、R3としたときに、以下(1)〜(4)に列挙する各塩基配列を持つ LAMP プライマーからなることを特徴とするプライマーセット。
(1)F2より選ばれた塩基配列を3’末端側に有し、 F1cより選ばれた塩基配列を5’末端側に有するインナープライマーF(IPF )。
(2)R2より選ばれた塩基配列を3’末端側に有し、 R1cより選ばれた塩基配列を5’末端側に有するインナープライマーR(IPR )。
(3)F3より選ばれた塩基配列を有するアウタープライマーF(OPF )。
(4)R3より選ばれた塩基配列を有するアウタープライマーR(OPR )。
【請求項6】
前記6つの塩基配列領域が、請求項1に規定する特定塩基配列におけるそれぞれ次の塩基番号で示される領域であることを特徴とする請求項5に記載のプライマーセット。
F3 :配列番号1521〜1540の領域
F2 :配列番号1552〜1572の領域
F1 :配列番号1594〜1614の領域
R1c:配列番号1655〜1675の領域
R2c:配列番号1697〜1717の領域
R3c:配列番号1719〜1739の領域
【請求項7】
前記 LAMP プライマーIPF 、IPR 、OPF 及びOPR がそれぞれ以下の塩基配列を有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のプライマーセット。
IPF:配列番号10に示す塩基配列
IPR:配列番号11に示す塩基配列
OPF:配列番号4に示す塩基配列
OPR:配列番号12に示す塩基配列
【請求項8】
前記6つの塩基配列領域の設定において、塩基配列領域 F2
と F1 との間に塩基鎖のループ構造を形成するに適当な長さの中間塩基配列領域FLP を残し、塩基配列領域 R1cと R2cとの間に塩基鎖のループ構造を形成するに適当な長さの中間塩基配列領域 RLPc を残すように設定し、かつ、これらの中間塩基配列領域 FLP、RLPcに対する相補的な塩基配列をそれぞれ FLPc 、RLP としたときに、前記プライマーセットが更に以下(5)、(6)の各塩基配列を持つ Loop プライマーを含むことを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載のプライマーセット。
(5)FLPcより選ばれた塩基配列を有するループプライマーF(LPF )。
(6)RLPcより選ばれた塩基配列を有するループプライマーR(LPR )。
【請求項9】
前記中間塩基配列領域 FLP、RLPcが20〜40の塩基配列からなることを特徴とする請求項8に記載のプライマーセット。
【請求項10】
前記 Loop プライマーLPF 及びLPR が、それぞれ以下の塩基配列を有することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のプライマーセット。
LPF:配列番号13に示す塩基配列
LPR:配列番号9に示す塩基配列
【請求項11】
前記 LAMP プライマー及び Loop プライマーが、少なくとも15塩基を含むものであることを特徴とする請求項5〜請求項10のいずれかに記載のプライマーセット。
【請求項12】
請求項5〜請求項11のいずれかに記載のプライマーセットを用いて、RT-LAMP 法により、CMV の標的核酸領域の増幅反応を行うことを特徴とする CMVの検出方法。
【請求項13】
前記 CMVの検出方法が、少なくとも、C7-2系統(GenBank
accession No. D42079)N 系統(GenBank accession No. D28486)、FT系統(GenBank accession No. D28487)、Pepo系統(GenBank accession No. D28488)、CS系統(GenBank accession No. D28489)並びに D8 系統(GenBank accession
No. AB004781)の CMVを対象とするものであることを特徴とする請求項12に記載の CMVの検出方法。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の CMVの検出方法によって植物のCMV 感染の有無を診断することを特徴とするCMV 診断方法。
【請求項15】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の必要な種類のヌクレオチドプライマーを含み、又は請求項5〜請求項11のいずれかに記載のプライマーセットを含むことを特徴とする CMV診断用キット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−135526(P2007−135526A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336692(P2005−336692)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年5月31日 関西病虫害研究会発行の「関西病虫害研究会報 第47号」に発表
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】