説明

キュービクル形ガス絶縁開閉装置

【課題】優れた絶縁性能を有すると共に、通電時に発生する電磁力を最小限に抑えたC−GISを提供する。
【解決手段】絶縁性ガスがそれぞれ封入され、かつ上下に連結された母線室タンク1および機器室タンク2と、機器室タンク2内に鉛直方向に配置された真空バルブ30と、真空バルブ30の上端部31、下端部32にそれぞれ接続される板状コンタクト43と、板状コンタクト43と嵌合するフィンガーコンタクト44に一端を接続するとともに他端を母線室タンク1および機器室タンク2にそれぞれ収納された断路器7、11に接続した主回路導体8,33を有するキュービクル形ガス絶縁開閉装置において、板状コンタクトと43、フィンガーコンタクト44、主回路導体8、33の長手方向の軸線を真空バルブ30内に対向配置された可動リード45および固定リード46の軸線上の延長線上付近に位置させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キュービクル形ガス絶縁開閉装置に係り、特に真空遮断器の遮断部周辺の配置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キュービクル形ガス絶縁開閉装置(以下、C−GISと称する)には、真空遮断器(以下、VCBと称する)と主回路導体との接続に着脱自在なコンタクトを用いている。これにより、VCBをC−GISの機器室タンク内へ組込む際や、真空バルブ(以下、単にバルブと称する)の点検等でVCBを機器室タンクから引き出す際の水平移動によるVCBの着脱作業を容易にしている。例えば特許文献1の真空遮断器においては、遮断部を構成するバルブの長手方向に対して、垂直に配置したコンタクトに主回路導体を接続している構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−22139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構造では、バルブの一端に接続されたコンタクトからバルブを経てバルブの他端に接続されたコンタクトに至る電路が逆コの字形になっており、大電流通電時には電路に水平方向の電磁力が発生する。これにより、遮断時に電極間に発生するアークが不安定となって電極の一部に集中することで電極の溶融を促進してしまう。さらには、開極時に電磁力によってバルブ内の可動リードが傾くことで、電極同士が閉極時に片当たりして損傷したり、電極同士の接触面積が減少することで、遮断性能に悪影響を及ぼす懸念があった。
【0005】
また、コンタクトから引き回される主回路導体は、母線室または機器室の断路器(以下、DSと称する)へ接続する際、コンタクトから水平方向に出て更に鉛直方向へ引き回す必要がある。このため、主回路導体には電界の集中する屈曲部が発生するので、絶縁距離を大きくとる必要が生じ、その結果機器の大型化をまねくという問題があった。
【0006】
本発明の目的は上記課題を解決するために、遮断時に発生するアークや、バルブ内のリードに作用する電磁力を最小限に抑えて電極の損傷を防ぎ、遮断性能の向上を図るとともに、電界集中部が少なく、優れた絶縁性能を有するC−GISを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、絶縁性ガスがそれぞれ封入され、かつ上下に連結された母線室タンクおよび機器室タンクと、前記機器室タンク内に鉛直に配置された真空バルブと、前記真空バルブの上下端部にそれぞれ接続される板状コンタクトと、前記各板状コンタクトと嵌合するフィンガーコンタクトに一端を接続するとともに他端を前記母線室タンクおよび前記機器室タンクにそれぞれ収納された断路器に接続した主回路導体を有するキュービクル形ガス絶縁開閉装置において、前記各板状コンタクトと、前記各フィンガーコンタクトと、前記各主回路導体それぞれの長手方向の軸線を、前記真空バルブ内に収納された可動リードおよび固定リードの軸線の延長線上付近に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のC−GISは、バルブの上下端部に接続される板状コンタクトと、フィンガーコンタクトと、母線室タンクおよび機器室内のDSに接続される主回路導体のそれぞれの長手方向の軸線をバルブ内の一対のリードの軸線の延長線上付近に位置させているため、バルブ周辺の電路が一直線状となる。これにより、アークを片寄らせるように作用する電磁力は従来の構造と比較して約20%低減されるため、アークの集中による電極の損傷を抑制することが出来る。また、可動リードが電磁力により傾く作用も軽減されるので、電極の片当たりによる損傷や、電極の接触面積の減少を防ぐことが出来、ひいては遮断性能の向上を図ることが出来る。
【0009】
さらに、電路を直線的に配置したため、電界の集中する屈曲部をなくすことができる。これにより、機器室タンク内において必要な絶縁距離が短縮され、かつ機器室タンクの奥行き方向の寸法も縮小することができるため、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施したC−GISの概略縦断面図である。
【図2】本発明の要部拡大図であり、一部構成を破断した図である。
【図3】図2に示したバルブをC-GISへ組込む際の説明図である。
【図4】図3のA−A、B−B矢視図および図2のC−C矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
図1は本発明に係るC−GIS全体を表した構成図である。2は機器室タンクであり、機器室タンク2の上方には母線室タンク1が連結されている。機器室タンク2および母線室タンク1内には絶縁ガス3が封入されている。機器室タンク2及び母線室タンク1は紙面左端の面を前面とし、紙面右端の面を背面とする。
【0012】
母線室タンク1内には、三相スペーサ4を介して三相分の母線5が、母線室タンク1内を紙面に垂直方向に気密貫通している。母線5は主回路導体6、DS7及び主回路導体8を介して機器室タンク2内へ導かれている。なお、主回路導体8は、絶縁スペーサ9を介しており、母線室タンク1内および機器室タンク2内の気密を保持しつつタンク間を貫通している。
【0013】
機器室タンク2内には、VCB10、DS11、接地開閉器12(以下、ESと称する)及び避雷器13(以下、LAと称する)が収納されている。VCB10の遮断部は、バルブ30と、バルブ上端部31、バルブ下端部32から構成されている。また、バルブ上端部31およびバルブ下端部32は支持碍子29によって取付板14に絶縁を保ちながら固定されている。なお、図1中には、1相分の構成が記載されているが、VCB10、DS11、ES12、及びLA13のそれぞれ3相分が紙面と垂直な方向に所定の絶縁距離を保って配置されている。
【0014】
機器室タンク2の前面には、各種機器を組み込むための組立孔が形成されている。この組立孔を塞ぐようにVCB取付板14、DS/ES取付板15、およびLA取付板16が取り付けられており、機器室タンク2の気密を保持している。また、これらの取付板の前面にはそれぞれVCB操作器17、DS/ES操作器18およびLA操作器19が配置されている。
【0015】
さらに、機器室タンク2の背面にはケーブル収納タンク20が配置されている。ケーブル収納タンク20内にはケーブルヘッド21(以下、CHDと称する)およびCT22が収納され、これらは機器室タンク2の背面に取り付けられている。
【0016】
DS11、ES12及びLA13それぞれの図示しない固定側接触子は主回路導体23と接続され、それぞれ碍子24,25を介して機器室タンク2に固定されている。さらに、主回路導体23の上部はCHD21の通電部先端にある端子26と接続されている。
【0017】
図2は、図1に示した本発明に係るC−GISの要部拡大断面図であり、バルブ上端部31と主回路導体8、バルブ下端部32と主回路導体33を破断して接続部構造を示している。
【0018】
以下、各部の構造について説明する。バルブ30内の軸線上には可動リード45および固定リード46が対向配置されている。さらに、可動リード45の下端には可動電極39、固定リード46の上端には固定電極40が接続され、互いに対向するように配置されている。
【0019】
バルブ上端部31内には、可動リード45とバルブ上端部31を電気的に接続するリングコンタクト37、板状コンタクト43a、フィンガーコンタクト44a(以下、FCと称する)可動リード45を駆動するリンク機構が配置されている。このリンク機構は、ロッド34、絶縁ロッド35およびこれらを連結する変換レバー36により構成されている。
【0020】
板状コンタクト43aはバルブ上端部31に接続されるとともに、長手方向の軸線がバルブ30内に収納される可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上付近に位置している。板状コンタクト43aと嵌合するFC44aは主回路導体8の下端に接続されている。さらに、主回路導体8の上端はDS7に接続される。ここで、主回路導体8はその軸線が可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上付近に位置するように直線的に引き回されている。
【0021】
バルブ下端部32内には、前述のバルブ上端部31内に収納した板状コンタクト43aおよびFC44aと同一構成のものが配置されている。すなわち、板状コンタクト43bはバルブ下端部32に接続されるとともに、その長手方向の軸線が可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上付近に位置している。板状コンタクト43bと嵌合するFC44bは主回路導体33の上端に接続されている。さらに、主回路導体33の下端はDS11に接続される。主回路導体33はその軸線が可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上付近に位置するように直線的に引き回されている。
【0022】
以上述べたように、DS7から、バルブ上端部31、バルブ30、バルブ下端部32等を経てDS11に至るまでの電路が、バルブ30内の可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上とほぼ一致するように直線的に構成されている。
【0023】
図3はVCB10を機器室タンク2内へ組込む際の説明図である。機器室タンク2の前面には組立孔が形成されているため、VCB10は図中左から水平に移動させることで、機器室タンク2内に組み込むことが可能である。なお、バルブ上端部31、バルブ下端部32の右側面の一部および主回路導体8、33の左側面の一部には開放部が形成されている。これにより、板状コンタクト43とFC44を水平方向にスライド式に嵌合することができる。板状コンタクト43とFC44が完全に嵌合されると、図2に示す接続状態に至る。
【0024】
図4は図3におけるA−AおよびB−B矢視図、および図2のC−C矢視図である。VCB10を機器室タンク2内へ組み込む際、バルブ上端部31が図4中左に移動し、板状コンタクト43aとFC44aが嵌合する。この時、C−C矢視図で示すようにバルブ上端部31が主回路導体8を囲い込む形となる。
【0025】
次に本発明の作用について説明する。図2において、可動電極39および固定電極40は開極状態を示している。通常の運転時は、両電極は一定の力で圧接された閉極状態にあり、図中上方から下方へと通電される。しかしながら、事故電流などの大電流が発生すると、まずVCB操作器17が動作し、前述のリンク機構を介して可動電極39が固定電極40から開離される。開離直後の一定時間、電極間にはアークが発生する。このときアークには図中左側への電磁力のみが働いている。
【0026】
本発明のように電路を直線的に配置した構成によれば、アークを片寄らせるように作用する電磁力は従来の構造と比較して約20%低減されるため、アークの集中による電極の溶融を抑制することが出来る。さらに、可動リード45が電磁力により傾く作用も軽減されるので、電極の片当たりによる損傷や、電極同士の接触面積の減少を防ぐことが出来、ひいては遮断性能の向上を図ることが出来る。
【0027】
また、DS7からDS11までの電路が可動リード45および固定リード46の軸線の延長線上付近に直線的に配置されたことで、電界の極端に集中する屈曲部をなくすことができる。これにより、機器室タンク2内において必要な絶縁距離が短縮され、かつ機器室タンク2の奥行き方向の寸法も縮小することができるため、装置の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 母線室タンク
2 機器室タンク
7 断路器(DS)
8 主回路導体
11 断路器(DS)
30 真空バルブ
31 バルブ上端部
32 バルブ下端部
33 主回路導体
39 可動電極
40 固定電極
43 板状コンタクト
44 フィンガーコンタクト(FC)
45 可動リード
46 固定リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスがそれぞれ封入され、かつ上下に連結された母線室タンクおよび機器室タンクと、前記機器室タンク内に鉛直に配置された真空バルブと、前記真空バルブの上下端部にそれぞれ接続される板状コンタクトと、前記各板状コンタクトと嵌合するフィンガーコンタクトに一端を接続するとともに他端を前記母線室タンクおよび前記機器室タンクにそれぞれ収納された断路器に接続した主回路導体を有するキュービクル形ガス絶縁開閉装置において、前記各板状コンタクトと、前記各フィンガーコンタクトと、前記各主回路導体それぞれの長手方向の軸線を、前記真空バルブ内に収納された可動リードおよび固定リードの軸線の延長線上付近に位置させたを特徴とするキュービクル形ガス絶縁開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−244628(P2011−244628A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115851(P2010−115851)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【特許番号】特許第4693193号(P4693193)
【特許公報発行日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】