説明

キレート化両親媒性ポリマー

キレート化部分を具備する両親媒性ポリマーが、説明されている。両親媒性ポリマーは、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有するブロック共重合体であり、キレート化部分が親水性ブロックの末端基にリンクされている。開示されているポリマーは、ミセル及びポリマーソームのような構造体へ自己組織化できる。キレート化部分を持つ配位化合物の形式で存在する適切な金属を持つ、本発明のキレート化両親媒性ポリマーは、MRI(T1/T2重み付け造影剤又はCEST造影剤)SPECT、PET又はスペクトルCTのような金属標識を必要とする様々な撮像技術の使用に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造影剤としての使用に適する両親媒性ポリマー、及びそれで作成されるポリマーソーム(polymersomes)のようなナノキャリアに関する。特に、本発明は、磁気共鳴撮像法(MRI)のためのT及び/又はT造影剤、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射断層撮影(PET)の放射性同位元素標識剤、(スペクトル)コンピュータ断層撮影(スペクトルCT)の高いZ要素(Z elements)、及びMRIのための化学交換飽和移動(CEST)造影剤に関する。更に特には、本発明は、薬物担体としてのポリマーソームに基づく撮像ガイド用薬物送達に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、放射性核種又はMR活性金属が組み込まれ得る両親媒性物質についての背景技術文献は、例えば、V.Torchilin、Chemtech1999年、第29巻、ナンバー11、ページ27―34である。この文献は、ポリキレート化両親媒性ポリマーに関する。両親媒性ポリマーは、主に、多重キレート基を持つ親水性断片と、比較的短く、高い親油性リン脂質断片とを有するポリ―L―リジンに基づくポリマーである。後者は、ポリマーをリポソーム及びミセルに組み込むのに役に立つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、両親媒性ポリマーの種々異なる分類、すなわちポリマーソーム、ミセル又はポリマー安定化乳剤へ自己組織化できるものに関係する。これらのポリマーは、好ましくは500g/モル以上の分子量の鎖を持つ少なくとも一つの親水性ブロック(A)と、ポリマーブロックの形式(すなわち脂質でない)で、少なくとも一つの疎水性ブロック(B)とを有するブロックポリマーとして、一般に記述できる。これらのポリマーは、ブロック共重合体ABの形式、トリブロックポリマーABA若しくはBABの形式、又は、末端に親水性ブロック及び末端に疎水性ブロックを持つ他のブロックポリマーの形式をとることができ、曖昧な溶媒の特性(すなわち親水性でもなく疎水性でもない)を持つ鎖(C)を有するポリマー、例えばブロック三量体ACBを含む。一般に、これは、ブロックCが、ブロックAと共に新規な親水性ブロック、又はブロックBと共に新規な疎水性ブロックを形成することを意味する。
【0004】
親水性及び疎水性ブロックの存在の結果として、両親媒性ポリマーは、自己組織化構造体を形成する能力を持つ。最も典型的自己組織化構造体は、水性の環境において形成されるようなミセル及びポリマーソームである。しかしながら、何れの場合でも、これらが形成される媒体に依存して、何れのタイプのブロック(すなわち親水性又は疎水性)も内側又は外側を形成できる。ミセルにおいて、内側は、収束して内向きに向いているポリマー鎖を有し、外側は、発散して外向きに向いているポリマー鎖を有する。ポリマーソームにおいて、自己組織化構造体は、キャビティを囲む壁を有する。最も通常はリポソームと同様である壁は、二重層の内部で互いに向かって疎水性ブロックを持ち、ポリマーソームの外面及びキャビティの内部において親水性ブロックを持つ水性媒体におけるポリマー二重層により形成される。
【0005】
脂質小嚢(すなわちリポソーム)とは対照的に、ポリマーソームは、化学的により安定で、より漏れ易くなく、生物学的膜と干渉しにくく、これらの低い臨界凝集濃度のため動的ではない。これらの特性は、結果的に、より少ないオプソニン効果及びより長い循環時間となる。他方では、リポソームは、撮像剤又はターゲティング部分が脂質層に容易に組み込まれるという利点を提供する。リポソームは、また造影剤として非常によく用いられ、この場合、リポソームは、例えば、MRIのための常磁性ラベル又はSPECT若しくはPETのための放射性核種を具備する。
【0006】
リポソームは、非常に用途が広いアプローチを提供するにもかかわらず、主要な限定要因は、低い程度のペグ化(PEGylation)、すなわち表面に共有結合的に付着されるポリ(エチレングリコール)を供給する程度が低いことである。ペグ化は、人の免疫系から人体に導入されるとき、治療上のタンパク質構成要素をマスキングする既知の技術である。これは、低い程度のオプソニン効果に基づくと考えられていて、この結果、ペグ化された表面は、マクロファージ取り込みの傾向が劣る。これは、ペグ化された構成要素の循環時間を増大するために役立つ。リポソーム及び実際に適切である他のナノキャリアに対して、これらを同じようにマスキングすること、すなわちペグ化されたナノキャリアを供給することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
親水性ブロックが末端基としてキレート化部分を備える親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する自己組織化構造体を形成できる両親媒性ポリマーを提供することが有利であろう。特に、撮像技術で有効なラベルを具備できる免疫系マスキングされた(ステルス)構造体を提供することは有利であろう。
【0008】
好ましくは、斯様な物質を供給し、金属イオン若しくは高いZ要素のようなラベル、常磁性又は放射性ラベルの包含さえ容易にすることが望ましい。
【0009】
前述の要望に良好に対処するために、本発明は、(ポリマーソーム、ミセル又はポリマー安定乳剤へ)自己組織化できるキレート化両親媒性ポリマーを供給する。
【0010】
一つの態様では、親水性ブロック、特にポリ(酸化エチレン)ブロック及び疎水性ブロックを有する両親媒性ポリマーが供給され、親水性ブロックは末端基としてキレート化(chelating)部分を具備する。
【0011】
他の態様では、ポリマー安定化乳剤(すなわち、ポリマーが油滴周辺に層を形成する水中油型乳剤)、ミセル又はキャビティ(ポリマーソーム)を囲む二重層のような、自己組織化構造体を有する重合粒子(ナノキャリアとも呼ばれる)が供給され、ポリマーは親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する両親媒性ポリマーであり、親水性ブロックは末端基としてキレート化部分を具備する。
【0012】
更に他の態様では、MRI造影剤は、前述されたような自己組織化構造体を有するナノキャリアの形式で供給され、ナノキャリアの外表面のキレート化部分が常磁性金属で配位結合される。
【0013】
他の態様において、陽子分析物のプールを有するキャビティを囲む重合シェルを有するポリマーソームを有する磁気共鳴撮像法(MRI)のための化学交換飽和移動(CEST)造影剤が提供され、前記重合シェルは、陽子分析物の拡散を許容し、前記重合シェルは、親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する両親媒性ポリマーであり、親水性ブロックが末端基としてキレート化部分を具備し、常磁性金属が、前記キャビティの内部でキレート化部分と配位結合される。
【0014】
更に他の態様では、前述のような自己組織化構造体を有するナノキャリアの形式で、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は陽電子放射断層撮影(PET)の放射性同位元素標識剤が供給され、ナノキャリアの外表面及び/又はキャビティの内部のキレート化部分が放射性核種と配位結合される。
【0015】
更に他の態様では、ナノキャリアの外表面及び/又はキャビティの内部のキレート化部分が高いZ要素(例えば重金属のような要素)と配位結合される前述のような自己組織化構造体を有するナノキャリアの形式で、(スペクトル)CTの造影剤が供給される。
【0016】
本発明は、更に、薬物送達を伴う特別な使用で、キレート化両親媒性ポリマーを製作し使用する方法を含む。
【0017】
広義に、本発明は、自己組織化できるキレート化両親媒性ポリマーとして説明できる。他のナノキャリアと異なって、本発明のポリマーは、それ自身キレート化ができる(すなわち金属イオンとの配位化合物を形成する)。他のキレート化ポリマーと異なって、本発明のポリマーは、自己組織化構造体を形成でき(例えば、別途既存のリポソームに取付けられるよりはむしろ、ポリマーソームを形成する)、ナノキャリアとしての用途に適するようにする。
【0018】
最も直接の形式では、ポリマーは、その3つの主機能要素:水環境によりはね返される傾向を持つ疎水性ブロック、水環境との接触を探す傾向を持つ親水性ブロック及び親水性ブロックの末端に配置されるキレート化部分、すなわち、親水性ブロックの末端のモノマーの残留機能性残基に関して説明できる。ポリマーチェーンは、キレート化部分も具備できる他の反応側基を有すると想定できるが、これは、100%の側基変更を供給することが通常可能でなく、よって、ポリマーが回避不能に反応の通常荷電される側基で終わるという点で、欠点を持つ。ポリリシン系物質の例のように、これは、自己組織化の能力を危うくする。
【0019】
キレート化部分は、配位化合物を形成するために金属を具備でき、よって本質的に「メタライズされた」ポリマーを供給する。対象の金属に依存して、ラベルを付けられたポリマーが、MRI(T、T、CEST)、核撮像(SPECT、PET)又はスペクトルCTのための造影剤として使用できる。
【0020】
水環境に置かれるとき、キレート化両親媒性ポリマーは、親水性ブロック、よってキレート化部分が水環境の方向に向けられる、自己組織化構造体を形成できるだろう。
【0021】
これはミセルと呼ばれ、疎水性の端が核に収束し、親水性端部は三次元的に外へ出る。ミセルの場合、ミセルの形成の前又は後の何れかで、キレート化部分を持つ配位化合物を形成するために、金属が導入でき、結果は基本的に同じであろう。
【0022】
本発明によって好まれるように、これは、また、ポリマーソームと呼ばれ、両親媒性ポリマーが、水環境において、キャビティを囲む二重層を形成するために作られる。ここでは、疎水性ブロックが、二重層の内部の境界で互いに向いていて、親水性ブロックが、外側の水環境及び内部のキャビティ両方に向いている。この場合、両親媒性ポリマーを持つ金属配位化合物を形成する2つの基本的に異なる態様が想定できる。一方は、最初にポリマーソームを形成可能にし、その後金属を供給する。その場合、ポリマーソームの内部のキャビティで、ポリマーに結合される金属は存在しない。他方は、最初に金属を供給し、よって、実質的に全てのキレート化部分に配位化合物を形成させ、その後ポリマーソームを形成する。その場合、配位金属は、ポリマーソームの内面(すなわちキャビティの内壁)及びポリマーソームの外表面両方に存在する。後者の場合、使用される配位化学に依存して、外表面から金属を除去するか、又は外表面にある金属を異なる金属と置換することも可能である。これは、設計の望ましい柔軟性を提供し、例えばポリマーソームが、異なる技術における造影機能とみなすことができる。
【0023】
ポリマーソーム又はミセルが得られるかどうかが、人体のような水環境で、両親媒性共重合体の親水性断片(fphil)により(fphil=Mw、phil/(Mw、phil+Mw、phob))、決定される。ここで、Mw、phil及びMw、phobは、ポリマーの親水性、疎水性断片それぞれの重量平均分子量である。水性条件において、ポリマーソーム(すなわち、ブロック共重合体小胞)は0.2<fphil<0.4に対して形成される一方、重合ミセルはfphil>0.5で観察される。ポリマーソームの場合、両親媒性ブロック共重合体は、頭尾(head−to−tail)及び尾頭(tail−to−head)の二重層構造体にする。
【0024】
本発明の自己組織化構造体は、ポリマー安定水中油型乳剤でもあり得る。この場合、両親媒性ポリマーの単分子層は、油滴周辺に形成され、疎水性部分は油表面に向けられ、親水性部分は周囲の水性相に向けられる。これは、例えばCT(ヨード化された油を使用する)、F―MRI(全フッ素置換された油を使用する)及び薬物送達(例えば大豆油に基づいた、薬物送達のための幾つかのFDA認可の乳剤が存在する)での有用性を見つける。
【0025】
本発明の様々な要素が、更に以下に説明される。
【0026】
両親媒性ポリマー
自己組織化ができる両親媒性ポリマー自体は知られていて、自己組織化ポリマーソーム構造体のような結果として生じるナノキャリアである。当業者は、これらのポリマーを作るために、適切な全資料を持つ。参照文献は、国際特許公開公報WO2005/016259、米国特許第6,835,394号、米国特許出願第2005/180922号、欧州特許EP1279682、米国特許出願第2008/166382号、国際特許公開公報WO2008/58963のような特許文献だけでなく、これらの文献に記載された様々な従来技術文献を含む。
【0027】
本発明のポリマーは、少なくとも一つの末端の親水性ブロック(A)及び少なくとも一つの末端の疎水性ブロック(B)を一般に有する。好ましくは最も単純な形式において、ポリマーは、まさに上述した2ブロック、すなわち一般構造体ABのポリマーを持つブロック共重合体である。これらのブロック自体は、好ましくは基本的に単一の反復するモノマー単位(それぞれM、M)から成る。結果として生じるブロック共重合体構造体は、このように一般構造式(i)を満たす。
X―[M―[M (i)
ここで、Xはキレート化部分を表し、Mは、親水性繰り返しユニットを表し、Mは、疎水性繰り返しユニットを表し、n及びmは、各々独立して、ブロックを形成するモノマーユニットの数を表す整数である。繰り返しユニットの数に関しては、これは、両親媒性の特性をポリマーまで広げるのに十分でなければならず、一般に少なくとも3である。最大は特に重要でなく、ポリマー生産技術に関する通常の要件により与えられる。よって、典型的上限は、1000000である。n及びmに対する好適範囲は、4から40000まで、好ましくは5から5000まで、最も好ましくは10から225までである。
【0028】
しかしながら、親水性及び疎水性ブロックの何れか又は両方とも2つ以上の異なる繰り返しユニットを有することが可能であり、よって、一般式(ii)を満たすポリマーを供給する。
[MA1―[MA2―[MA3―[MB1―[MB2―[MB2(ii)
【0029】
ここで、MA1、MA2及びMA3は、異なる親水性繰り返しユニットを示し、MB1、MB2及びMB3は異なる疎水性繰り返しユニットを示す。文字p、q、r、x、y及びzは、各々独立して、(p+q+r)及び(x+y+z)の範囲が3から1000000、好ましくは4から40000、より好ましくは、5から5000、最も好ましくは10から225にあるという条件で、0から1000000までの間にある整数を表わす。好まれないが、非常にたくさんの異なる繰り返しの親水性及び疎水性ユニットを満たす類似のマルチブロックポリマーが可能である。
【0030】
前述の式(i)及び式(ii)の何れかのポリマーにおいて、曖昧な溶媒の挙動のブロック(C)(すなわち親水性でもなく、疎水性でもないブロック)が、組み込まれることも可能である。親水性ブロックは、一般に水に溶解するブロックであり、好ましくはポリ(酸化エチレン)、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアクリルアミドの派生物、ポリ(ビニルアルコール)又はポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)のようなポリアルコール類、親水性ポリペプチド及び糖誘導体から成るグループから選択される。最も好ましくは、親水性ブロックは、ポリ(酸化エチレン)ブロック(PEO、PEG)であり、それとともに本発明のポリマーが、ヒト又は動物のボディの水様の環境内で本質的にペグ化されるので、親水性ポリ(酸化エチレン)、すなわちPEGのブロックが、形成される(ポリマーソームのような)自己組織化構造体の外表面を形成し、よって、100%のペグ化された表面、ゆえに最適ステルスを供給する(より少ないオプソニン効果の結果として、より長い循環時間を導く)。上述した因子fphilを参照すると、ポリ(酸化エチレン)ブロックの重量平均分子量は、500から10000であることが好ましい。より長い親水性ブロックは、比較的長い疎水性ブロックに対するニーズに結果としてなり、それは低い生分解性及びより困難な処理(高い粘度)の観点からあまり望ましくない。疎水性ブロックは、一般に水に対する親和性を欠いていて、ポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(エチルエチレン)のような70℃より低いTg(ガラス転移点温度)を持つポリマーから好ましくは選択される。一般に、炭素原子のバックボーン及び疎水性性質の側基を持つ全てのポリマーが、疎水性ブロックのために使用できる。
【0031】
このTg値より上のTgを持つポリマーは、それらの高い粘度からみて、及び/又は処理条件の下、それらの結晶化度からみて、処理がより困難であるので、上述したTgの選択は、また特に、処理に関係する。斯様な高いTgポリマーの場合、処理の間、可塑剤を使用するのが好ましい(例えばTHF(テトラ・ハイドロ・フラン)又はジクロロメチレンのような有機溶剤)。これらの可塑剤は、処理ツールとして役立ち、ポリマーを使用する前に除去される。この処理技術は、ポリマー科学の当業者が、きちんと利用できる。
【0032】
当業者は理解するように、大きな程度の設計柔軟性が、両親媒性ポリマーの分子量及び分子量分布に影響する標準方法により与えられる。これは、ポリマー重量のユニット当たりの末端基の数の角度からも見ることができ、よって、これは、ポリマー重量のユニット当たりのキレート化基の数を調整するための単純なツールを供給する。特別な利点が、比較的短い親水性鎖(特にペグ鎖)を持つキレート化両親媒性ポリマーを、比較的大きなペグ鎖を持つ両親媒性ポリマーと化合させることにより得られる。結果として生じる自己組織化において、このようにキレート化部分が、自己組織化構造体を形成するポリマー層内に含まれる一方、ペグ鎖が構造体の外面を形成し、よって、キレート化部分により邪魔されない十分なペグ表面を供給する。
【0033】
キレート化部分
キレート化部分は、電子ドナー原子を含む部分から引き出され及び/又は選択できる。これらの部分は、例えば、トリポリリン酸ナトリウム及びヘキサメタリン酸のようなポリリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸、N―(2―ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、N,N―di(2―ヒドロキシエチル)グリシン、エチレンビス(ヒドロキシフェニルグリシン)及びジエチレントリアミンペンタ酢酸のようなアミノカルボン酸、アセチルアセトン、トリ・フルオロ・アセチルアセトン及びチエノイルトリフルオロアセトンのような1,3―ジケトン、酒石酸、粘液酸、クエン酸、グルコン酸及び5―スルホサリチル酸のようなヒドロキシカルボン酸酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン及びトリ・アミノ・トリエチルアミンのようなポリアミン、トリエタノールアミン及びN―(2―ヒドロキシエチル)エチレンジアミンのようなアミノアルコール、2,2’―ジピリジル、2,2’―ジ・イミダゾール、ジ・ピコリン・アミン及び1,10―フェナントロリンのような芳香族複素環塩基、サリチルアルデヒド、ジスルホピロカテコール及びクロモトロープ酸のようなフェノール類、8―ヒドロキシキノリン及びオキシンスルホン酸のようなアミノフェノール、ジメチルグリオキシム及びサリチルアルドオキシムのようなオキシム、ポリシステイン、ポリヒスチジン、ポリアスパラギン酸酸、ポリグルタミン酸又は各ポリアミノ酸がポリマー内に2から約20までのアミノ酸を含む斯様なアミノ酸の組合せのような近位のキレート化機能を含むペプチド、ジサリチルアルデヒド1,2―プロピレンジイミンのようなシッフ塩基、四フェニル・ポルフィン及びフタロシアニンのようなテトラピロール、トルエンジオチール、メソ2,3―ジメルカプトコハク酸、ジメルカプトプロパノール、チオグリコール酸、カリウムエチルキサントゲン酸塩、ナトリウムジエチルジチオカルバメイト、ジチゾン、ジエチルジチオリン酸及びチオ尿素のような硫黄化合物、ジベンゾ[18]クラウン―6、6(CH3)−[14]―4,11―ジエン―N4及び(2.2.2)―クリプタートのような合成マクロ環状化合物、及びニトリロ三メチレンホスホン酸、エチレンジアミン四(メチレンホスホン酸)及びヒドロキシエチリデンジホスホン酸のようなホスホン酸、又は上記の薬剤のうちの2つ以上の組合せから選択できる。
【0034】
好ましいキレート化部分は、一つ以上のカルボン酸又はカルボキシレート基を含み、エチレンジアミン―N,N,N',N'―四酢酸(EDTA)、N,N,N',N”,N'”―ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、1,4,7,10―四アザシクロドデカン―N,N',N”,N'”―四酢酸(DOTA)、1,4,7,10―四アザシクロドデカン―N,N',N”―三酢酸(DO3A)、1―オキサ―4,7,10―トリアザシクロドデカン―N,N',N”―三酢酸(OTTA)、トランス(1,2)―シクロヘキサノジエチレントリアミンペンタ酢酸(CDTPA)にある要素を含む。
【0035】
最も好ましいキレート化部分は、DOTA、DTPA、HYNIC(テクネチウムのキレート化のために使用される6―ヒドラジノニコチン)及びガリウムのキレート化のために使用されるデスフェリオキサミン(例えばDesferal(デスフェラール、登録商標)という名前でデスフェリオキサミンメシラートとして利用可能である)である。
【0036】
前述の例がキレート化化合物であり、これらの化合物と比較して、キレート化部分は、ポリマーとの結合を含むという点で、実際にこれらの誘導剤であることは、当業者により理解されるだろう。
【0037】
キレート化部分の結合
処理の他の順番が排除されるわけではないが、最初に両親媒性共重合体(共重合体)を作り、その後キレート化部分をその親水性ブロックと結合させることが好ましい。当業者が理解するように、親水性末端のモノマーとキレート化部分との間の正確な結合は、モノマー末端と、ポリマーのキレート化部分を形成するのに役に立つキレート化化合物とに利用可能な官能基により決定されるだろう。典型的で頻繁な適切な結合は、アミド結合である。
【0038】
本発明の好ましいブロックポリ(ブタジエン)−ポリ(酸化エチレン)ポリマーは、以下のスキーム1に示されるように、以下のように作られる。最初に、ブロックポリマー、この場合ポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)(1)が供給される。ポリマーの主要なアルコールは、共重合体(2)の対応するトシル基に変換される。その後、トシル基は、アミン官能化されたポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)(3)を作るために、NHと反応を起こす。このとき、(3)のアミン基は、DOTA官能化されたポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)(5)を得るために、DOTA(4)のN―スクシンイミジル(succimidyl)エステルと反応を起こす。
スキーム1

【0039】
ここで、反応物及び溶媒は、以下の通りに示される。(i)pTsCl、KOH、DCM、(ii)7N NH、トルエン/MeOH、(iii)EtN、DMF
【0040】
対象のアプリケーションに依存して、DOTA官能化されたブロック共重合体(5)は、システムの単一のキレート化ポリマーの最小と、最大100%(すなわち、存在する全てのポリマー分子がキレート化ポリマーである)との間の比率で、非官能化されたブロック共重合体と混合できる。開発された合成手順は、異なる分子量及び様々なfphil値で広範囲にわたる共重合体に適用でき、これは広範囲にわたる自己組織化構造体の調製を可能にする。その上、同様の合成戦略が、DTPAのような他の金属配位子、及び抗体、ペプチド等のような標的配位子とのブロック共重合体の化学修飾のために適用できる。
【0041】
キレート化部分に基づく配位化合物
本発明の両親媒性ポリマーに存在するキレート化部分は、従来技術で知られているキレート化方法に従って、金属との配位化合物(錯体)を形成するために使用できる。
【0042】
本発明の両親媒性ポリマーが本質的に配位部位を具備するので、大きな選択の自由がキレート化の程度に関して存在し、これは、単一のキレート化されたイオンから、入手できる最大までの範囲があり得る(従来の、それ自身キレート化していない、ポリマーの場合より非常に高い程度のキレート化を達成するという可能性を持つ)。
【0043】
上述のようなDOTAベースの共重合体の例での1つのアプローチにおいて、このポリマーは、Gd(III)錯体(複合体)形成によりフォローされるポリマーソームへ自己組織化される。第2のアプローチにおいて、Gd(III)及びDOTA共重合体との反応は、第1のステップで実施され、その後、Gd(III)DOTA官能化した共重合体は、ポリマーソームへ自己組織化される。第1のアプローチでは、Gd(III)はポリマーソームの外殻にのみ存在し、すなわちGd(III)錯体がバルク水へ向かって外に向いているのに対し、第2のアプローチでは、Gd(III)錯体はポリマーソームの両側へ向く。
【0044】
/TMRI造影剤
本発明のポリマーは、MRI造影剤として使用できる。これは一般に、T及び/又はT加重された造影剤を示す。
【0045】
人のような哺乳類の身体の磁気共鳴撮像法において、器官又は組織の生体内画像は、強い外磁場に撮像されるべき少なくとも身体の一部を配置して、無線周波数エネルギーでパルス化して、器官又は組織内部及び周辺に含まれる陽子の磁気特性上のパルスの効果を観察することにより得られる。これは、身体の循環血管(すなわち血液プール)を撮像する際に特に有効である。多くの磁気パラメータが、測定できる。陽子緩和時間、T及びTは、特に重要である。スピン格子又は縦緩和時間とも呼ばれるT及びスピン−スピン又は横緩和時間とも呼ばれるTは、器官又は組織の水の化学的及び物理的環境の関数であり、Rfパルス技術を使用して測定される。この情報は、コンピュータにより空間位置の関数として分析され、画像を生成するように情報を変換する。
【0046】
しばしば、作成された画像は、例えば正常な組織と病気にかかった組織との間で適当なコントラストを欠いていて、診断効果を低減する。この欠点を解決するために、造影剤が使われてきた。MR造影剤は、磁気的に活性な物質であり、当該造影剤に隣接する分子の核の磁気共鳴パラメータに効果を及ぼす。器官の特定の部分又は組織の特定のタイプ、例えば、病気にかかった組織により優先して取り上げられる場合、理論的には、造影剤は、その組織の結果として生じる画像にコントラストの変化又は増強を提供できる。
【0047】
磁気共鳴撮像がT及びTパラメータの変化により強く影響を受けるゆえに、一方又は両方のパラメータに影響を及ぼす造影剤を持つことが望ましい。調査は、磁気的に活性物質の2つのクラス、すなわち、T及びTを減少させるように作用する常磁性材料及び主にTを減少させるように作用する超常磁性材料に主に集中した。低い濃度では、常磁性材料は、TよりももっとTに影響を及ぼす。
【0048】
常磁性は、対になってないスピンを持つ電子を含む物質で起こる。常磁性材料は、弱い磁化率(付与される磁場に応じた)により特徴づけられる。常磁性材料は磁場がある場合には弱い磁性になり、外部磁場が取り除かれると、急速に斯様な活動を失って、すなわち消磁される。水への常磁性材料の付加が水素核のTパラメータの減少を引き起こすと長く認識されてきた。
【0049】
例えば、常磁性ランタニドを有する常磁性材料、特にGd+3を含む材料は、主にTについての効果のため、MRI造影剤として好ましい。
【0050】
本発明の両親媒性ポリマーのキレート化部分の存在によって、常磁性材料は、キレート化部分を持つ配位化合物を形成可能にすることにより、簡単にポリマーに含まれ得る。
【0051】
これらが外側に存在する常磁性材料を持つ自己組織化構造体に基づくならば、T/T造影剤の場合に好まれる。この場合、ミセルが、このように適切である。しかしながら、本発明のナノキャリアは、ポリマーソームの形式であることが好ましい。
【0052】
SPECT及びPET造影剤
常磁性剤の配位化合物の形成と同様の態様で、本発明のポリマーは、放射性核種を含めるためにも使用できる。
【0053】
単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)は、γ線放射核種の分布を表わす画像を生成する。この撮像モダリティは、非常に高い感度を持ち、バックグラウンド信号の欠如が、放射性核種の生体内分布に関する定量的情報を可能にする。SPECTは、腫瘍領域の定量化及び視覚化のために、最近では、潜在的な新薬又は造影剤の生体内分布の評価のために、病院で一般に適用される。最近の開発は、放射性核種として111Inを使用したSPECTのための脂質安定化乳剤の合成である。ポリマーソーム、重合ミセル及び共重合体安定化乳剤のDTPA又はDOTA官能化された共重合体の組込みは、核撮像アプリケーションのための放射性同位元素(例えば177Lu又は111In)を持つ自己組織化粒子の効率的な放射性同位元素を使った識別を可能にする。
【0054】
本発明は、前述のような両親媒性ポリマー、例えば、乳剤としてDOTA官能化されたポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)を使用して、ポリマー安定化乳剤の調製及び放射性同位元素を使った識別を含む。
【0055】
概念実証として、乳剤は、DOTA末端共重合体で安定化され、これらの構造体は111Inで放射性同位元素を使って識別された。造影剤の生体内分布が、マウスで検討された。図7では、SPECT/CT画像が、心臓、肝臓及び腎臓内の111Inの存在を示す。注射後4時間の血液内の111Inの存在は、放射性同位元素で識別される乳剤の長い血液循環時間を示す。その上、肝臓蓄積は肝胆道経路を介したナノ粒子の排出を示し、膀胱内の111Inの欠如により更に確認される。これらの結果は、DOTA共重合体を使用した放射性同位元素を使って識別される乳剤がSPECT剤として適用できることを実証する。
【0056】
同様に、本発明は、ルビジウム―82、ガリウム―68、銅―64及びジルコニウム―89のような、そこで通常使用される放射性核種のキレート化を供給することにより、PETでの使用を見出す。
【0057】
CEST MRI造影剤
ポリマーソームに自己組織化される本発明のポリマーは、CEST MRI造影剤を形成するための適切な主成分である。CEST方法は、選択されて磁気的に予め飽和された陽子からMRIにより決定されるバルク水分子まで化学交換飽和移動(CEST)を利用することにより画像コントラストを生成するのに役に立つ。
【0058】
常磁性化学シフト試薬(ParaCEST)と組み合わせたCESTは、CEST造影剤の常磁性に移された陽子のプールの磁化が、無線周波数(RF)放射線の付与により選択的に飽和される方法である。陽子交換によるバルク水分子に対するこの飽和の転送は、CEST造影剤の環境内の励起可能な水陽子の減少した量につながる。よって、バルク水信号強度の減少が観察され、MRI画像の(負の)コントラスト増強を作るために使用できる。
【0059】
高いCEST効率を得るためのアプローチは、常磁性シフト試薬(例えばNa[Tm(dotma)(HO)])を含む溶液の多数の水分子を利用することに基づき、ここで、「Hdotma」は、α、α’、α”、α’”―テトラメチル―1、4,7,19―四酢酸を表わし、dotmaは、化学的にシフトされ、従ってRFパルスにより選択的に飽和できる陽子のプールを供給するために、リガンドのそれぞれの4重の脱プロトン化されたテトラ陰イオン形式を表す。このシステムが、キャリア内、ここではポリマーソーム内に封入される場合、磁化飽和は、キャリアの外側でバルク水分子へ転送でき、化学的にシフトされない。磁化転送の量、従ってコントラスト増強の程度は、キャリア内の水量によってだけでなく、キャリアのシェルを通る水の拡散の比率(すなわち水交換率)により決定される。
【0060】
最適な水交換率は、キャリアの内側の陽子プールとキャリアの外側のバルク水との間の化学的シフトの差と直接相関している。ポリマーソーム内部の水分子に誘発される常磁性シフトは、水分子とシフト試薬(δdip)との間の直接的な二極性相互作用から生じる化学的シフト、及びバルク磁化率効果(δbms)により生じる化学的シフトという2つの主要な寄与から成る。全体の常磁性シフトは、これらの2つの寄与の合計である。
δ=δdip+δbms (1)
δbmsは球状粒子に対してはゼロであるが、異方性の粒子に対しては重要であり得る。非球面の粒子は磁場内で磁力を感じ、当該磁力により粒子が、磁力線に沿って並ぶ。リポソームの場合、リポソームがリン脂質膜と関連した常磁性分子を坦持するならば、全体の常磁性シフトが更に増大できることが実証された。
【0061】
非球面のリポソームを使用するCESTに関する参照文献は、Terreno、E等によるAngew.Chem.Int.Ed.46、ページ966―968(2007年)である。
【0062】
本発明の両親媒性ポリマーのキレート化部分の存在によって、常磁性材料は、キレート化部分を持つ配位化合物を形成可能にすることにより、ポリマーに容易に含まれ得る。これは、ポリマー内の任意の比率での適切な常磁性材料(好ましくはランタニド、最も好ましくはTm又はDy)の組込みを可能にする。
【0063】
MRI(T/T)造影剤のための上述の方法と同様に、ランタニドは、ポリマーソームの外面で、又は内面でも供給できる。CESTに関しては、本発明は、多くの設計の自由度を提供することに留意されるべきである。ポリマーソームは、キャビティ内部の陽子のプールに、ランタニドのような、溶解又は懸濁された適切な常磁性材料を供給することにより、多かれ少なかれ標準CEST造影剤として使用できる。ポリマーソームのキレート化している外側は、他の常磁性金属を持つ配位化合物を形成するために使用でき、このおかげで、ポリマーソームの環境内の飽和転送陽子に対する化学的シフト差が、更に強調できる(よって、上述したバルク磁化率効果を強調する)。加えて、キャビティ内部の常磁性材料は、本発明のポリマーのキレート化部分を持つ配位化合物の形式で供給できる。
【0064】
更に、前述の実施例の何れかで、ポリマーソームの形状は、CEST効果を強調するために、非球面になることができる。ポリマーソームは、一般に球形である。ポリマーソームを非球面にすることは、ポリマーソームに、高浸透圧の緩衝液、従って、ポリマーソームの内部の溶液と比較してより高い浸透性を持つ緩衝液に対する透析プロセスを受けさせることによりなされる。透析は、ポリマーソームの内部からバルク溶液への水のネット拡散を引き起こす。これは、ポリマーソームの総内部ボリュームを減らす。ポリマーソームの表面領域は一定のままであるので、ボリューム低減は、ポリマーソームを変形させ、ディスク形状、葉巻形状のような非球面の形状、又は他の非球面の形状を取ることを強いる。
【0065】
非球面ポリマーソームの場合、CEST効果が、また非球面形状の効果に基づいて、すなわちキャビティ内に存在するMR分析物と大幅に相互作用する常磁性シフト試薬なしに、又は、キャビティ内に存在する常磁性シフト試薬との相互作用の欠如が起こる選ばれたMR分析物を持って、充分に得られることに留意されたい。本発明において、これは、設計の柔軟性を増し、上記の如く、キャビティは、金属を装入しないように選択できる。この場合、非球面になる場合、ポリマーソームが、それにもかかわらずCEST造影剤として使用でき、外表面の金属のキレート化は、例えばT及び/又はTに基づいて、付加的なコントラストを導入するために使用できる。
【0066】
CEST効果は、更に、共重合体のブロックの性質及び/又はポリマー層の厚さにより調整できる。これらのパラメータは膜間の水交換の率に影響するからであり、例えば、ポリマーの両親媒性性質は、ポリマーソームを通る陽子交換率に影響を及ぼすために使用できる。これは、一般に、より多くの親水性ブロック及びより多くの疎水性ブロックの長さの比率を変えることによりなされる。
【0067】
水の交換に関しては、これらがポリマーソーム二重層膜を通じた交換ができる限り、CEST効果は、また、小さな有機分子のような他のMR分析物の場合に得られることが理解されるだろう。
【0068】
薬物送達
大部分が特定の組織内に局在化される多くの疾患は、全身的に投与される薬物で治療される。標準癌療法のよく知られた例は、望ましくない生体内分布及び毒性による患者に対して重大な副作用を持って進行する全身化学療法である。これらの薬物の治療濃度域は、一方では病気にかかった組織の最小限必要な治療濃度と、他方では標的ではない器官、例えば肝臓、脾臓の毒性作用とにより、通常定められる。例えば、ナノキャリアからの細胞増殖抑止剤の局所的リリースによる局所的な治療は、標準治療学と比較して、より効果的な治療及びより大きな治療濃度域を約束する。しばしば肝癌に対する場合のように、手術のような他の治療上のオプションがあまりに危険である場合、局所的な薬物送達も重要である。局所的な薬物送達は、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症のような心血管疾患(CVD)の多くの指標のための好適な治療オプションになり得る。
【0069】
磁気共鳴撮像法は、疾患の診断のために病院で一般に使用される重要な診断技術である。MRIは、素晴らしい空間解像度を持つ柔らかい組織の非侵襲性撮像を可能にする。
【0070】
その診断使用の有効な拡張として、MRIは、また、治療用薬物又は診断用薬物のような生体に作用する薬物送達の監視のために提案される。すなわち、MRIは、治療計画のために使用できるだけでなく、画像ガイダンスの下、局所的薬物送達を制御するためにも使用できる。この観点での参照文献は、Ponce等によるJ Natl Cancer Inst2007年;99:ページ53―63である。ここで、薬物、ドキソルビシンは、通常の身体温度では固体であり、数度高い(41−42℃)温度で溶解する温度感受性リポソーム内に受け入れられる。よって、薬物放出は熱を付与することにより容易でき、これがリポソームを開く結果としてなり、薬物放出は、リポソーム型シェルを通じた拡散(あるとしても)により、もはや決定されない。MRIによる薬物放出を監視するために、マンガン塩が、MRI造影剤として製剤に加えられる。
【0071】
本発明のポリマーソームが、薬物キャリアとして使用できる。このキャリアを介して身体に導入される薬物の投与及び送達は、両親媒性、キレート化ポリマーとの錯体を形成する常磁性金属のタイプ及び位置に依存して、(上述のように本発明から明らかであるように)T/T及び/又はCEST MRIにより監視できる。
【0072】
薬物キャリアは、MRIを受ける人の身体に導入されるべきである。これは、例えば、血流内の注入により、又はキャリアを身体液体に導入する他の方法による。
【0073】
薬物は、疾患若しくは障害の治療、療養、予防又は診断に使用されるか、さもなければ物理的又は精神的健康を強化するために使用される化学物質である。本発明で予知されるガイドされた送達は、治療薬物(すなわち、疾患若しくは障害の治療又は予防を目的とする厳密な意味での薬)のためだけでなく、診断目的のために投与される薬物のためにも、多くの場合有効である。生体に作用する他の薬物、すなわち治療又は診断ではない機能性食品物のようなものは、ガイドされ及び/又は監視される送達を一般に受けることはないが、斯様なものも所望により本発明を使用してなされ得る。
【0074】
斯様な送達が本発明により利用できるようになった監視から本来最も利益を受けるので、本発明の最適な使用は、ターゲット治療の場合、すなわちターゲット送達を意図される薬物の場合に達成される。これは、例えば、現場に送達されるべき腫瘍の治療の薬物、冠状動脈のアテローム性動脈硬化症のような心血管障害の予防若しくは治療の薬物、又は癲癇、アルツハイマー疾患、パーキンソン疾患若しくは脳卒中のような神経病の治療に使用できる神経修飾物質のような血液脳関門を通すことを必要とする薬物又は(例えば、血餅を局所的に分解するための)抗血栓症薬物に関係する。ターゲット薬物送達のガイド及び監視からの利点は、ターゲット診断薬物にも適用できる。ターゲット治療と同様に、ここでも癌は、特定地域向けの送達が重要でありえる領域である。
【0075】
本発明の使用に適している生体に作用する薬物は、治療薬、内在性分子を含む生理活性薬物、及び抗体を含む薬理活性薬物;栄養に関する分子;診断薬;並びに、撮像のための付加的造影剤を含む。ここで使用されるように、活性薬物は、活性薬物の薬理的に受け入れられる塩類を含む。
【0076】
本発明のポリマーソームベースの薬物キャリアは、親水性又は疎水性生体活性薬物を有し得る。親水性生体活性薬物は、キャリアの水様の区画に封入できるか、粒子シェルのより親水性部分を伴うか、又は、その分布状態が、これらのオプションの組合せを含み得るのに対し、疎水性生体活性薬物は、キャリアの疎水的な領域、例えばポリマーソームシェル内に組み込まれ得る。核酸、炭水化物、並びに、一般にタンパク質及びペプチドは、水溶性又は親水性である。例えば、小さな微粒子、脂質、リポ多糖類、ポリヌクレオチド及びアンチセンスヌクレオチド(遺伝子治療薬物)である生体活性薬物も想定される。組み込まれ得る斯様な生体的に活性な薬物(生物活性剤)は、このように非ペプチド、非タンパク薬物を含む。重合体態様の薬物を組み込むだけでなく、1500グラム/モル未満又は更に500グラム/モル未満の比較的小さな分子量の薬を組み込むことも、本発明の範囲内で可能である。
【0077】
従って、本発明の状況の中で生物活性剤としての使用のために想定される化合物は、治療的又は予防効果を持つ何れの化合物も含む。前記化合物は、組織の成長、細胞成長、細胞分化に影響する、若しくは関与する化合物でもよいし、免疫反応のような生物学的アクションを引き起こし得る化合物でもよいし、又は一つ以上の生物学的プロセスにおいて何らかの他の役割を果たせる化合物でもよい。非限定的なリストの例は、抗菌薬(抗菌剤、抗ウイルス薬及び抗真菌薬を含む)、抗ウイルス薬、制癌薬、トロンビン抑制剤、反血栓形成薬剤、血栓溶解剤、線維素溶解薬剤、血管攣縮抑制剤、カルシウムチャネル遮断抗体、血管拡張薬、抗高血圧症薬剤、抗菌薬、抗生物質、表面グリコプロテイン受容体の抑制剤、抗血小板薬剤、細胞分裂阻止性物質、微小管抑制剤、反分泌薬剤、アクチン抑制剤(抑制剤、反代謝物質、抗増殖剤(反脈管形成薬剤を含む)、制癌化学療法薬、抗炎症ステロイド又は非ステロイド性の抗炎症剤を改造する免疫抑制薬剤、成長ホルモン拮抗物質、成長因子、ドーパミン作用薬、ラジオ治療薬剤、細胞外マトリックス部品、ACE阻害薬、遊離ラジカルスカベンジャ、キレート化剤、酸化防止剤、反ポリメラーゼ及び光力学性治療薬剤を含む。
【0078】
比較的小さなペプチドは、アミノ酸の数によって呼称される(例えば、ジー、トリ―、テトラペプチド)。比較的小さな数のアミド結合を持つペプチドは、オリゴペプチド(最大50のアミノ酸)とも呼ばれる一方、比較的高い数(50を超えるアミノ酸)を持つペプチドは、ポリペプチド又はタンパク質と呼ばれる。アミノ酸残基鎖のポリマーであることに加えて、特定のタンパク質は、いわゆる四元構造により更に特徴付けられ、アミド結合により必ずしも化学的にリンクされているというわけではなくて、静電力及びファンデルワールス力のような当業者に一般に知られている力により結合されている多くのポリペプチドの集合体により特徴付けられてもよい。本明細書で用いられる用語ペプチド、タンパク質又はこれらの混合物は、上述した可能性をすべて含むものである。
【0079】
通常、タンパク質及び/又はペプチドは、その生物活性に基づいて選択される。選択されるポリマーのタイプに依存して、本プロセスにより取得できる生成物は、タンパク質及びペプチドの徐放に非常に適している。特定の実施例では、タンパク質又はペプチドは、成長因子である。
【0080】
ペプチド、タンパク質、又はロードされたポリマーに好適に含まれるタンパク質又はペプチドを有する実在物の他の例は、限定されるわけではないが、下記のものを含む、免疫原性ペプチド又は免疫原性タンパク質を含む。
【0081】
ジフテリア毒素及び破傷風毒素のような毒素。
【0082】
アデノウイルス、イプシュタイン―バーウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、HIV―I、HIV−2、HTLV―III、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、麻疹ウイルス、パピローマウイルス、パラミクソウイルス属、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、風疹ウイルス、ワクシニア(天然痘)ウイルス及び黄熱病ウイルスのようなウイルスの一部又はウイルス表面抗原。
【0083】
百日咳菌、ヘリコバクターピロリ、破傷風菌、コリネバクテリアジフテリア、大腸菌、ヘモフィルス属インフルエンザ、クレブシエラ属種、レジオネラ・ニューモフィラ菌、マイコバクテリウム‐ボビス、らい菌、マイコバクテリウム結核、淋菌、髄膜炎菌、プロテウス種、緑膿菌、サルモネラ属種、赤痢菌種、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、ビブリオ属コレラ及びペスト菌のような細菌の一部又は細菌表面抗原。
【0084】
三日熱マラリア原虫(マラリア)、熱帯熱マラリア原虫(マラリア)、卵型マラリア原虫(マラリア)、四日熱マラリア原虫(マラリア)、熱帯リーシュマニア(リーシュマニア症)、ドノバァンリーシュマニア(リーシュマニア症)、ブラジルリーシュマニア(リーシュマニア症)、トリパノソーマロードセンス(眠り病)、ガンビアトリパノソーマ(眠り病)、クルーズトリパノソーマ(シャガス病)、マンソン住血吸虫(住血吸虫症)、ビルハルツ住血吸虫(住血吸虫症)、日本住血吸虫(住血吸虫症)、センモウチュウ(旋毛虫病)、ストロンギロイデス鉤虫(鉤虫)、十二指腸鉤虫(鉤虫)、アメリカ鉤虫(鉤虫)、バンクロフト糸状虫(フィラリア症)、マレー糸状虫(フィラリア症)、ロア糸状虫(フィラリア症)、ディペタロネマ糸状虫(フィラリア症)、メジナ虫(フィラリア症)及び回旋糸状虫(フィラリア症)のような寄生虫の一部又は疾患を引き起こしている寄生虫のうち表面抗原。
【0085】
IgG、IgA、IgM、抗狂犬病免疫グロブリン及び抗ワクシニア免疫グロブリンのような免疫グロブリン。
【0086】
ボツリヌス菌抗毒素、ジフテリア抗毒素、ガス壊疽抗毒素、破傷風抗毒素のような抗毒素。
【0087】
口蹄疫に対して免疫反応を誘発する抗原。
【0088】
卵胞刺激ホルモン、プロラクチン、アンジオゲニン、上皮細胞増殖因子、カルシトニン、エリトロポイエチン、甲状腺刺激性放出ホルモン、インシュリン、成長ホルモン、インシュリン様成長因子1及び2、骨格の成長因子、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、黄体形成ホルモン、神経成長因子、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、バソプレッシン、コレシストキニン及び副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンのようなホルモン類及び成長因子;インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子及び腫瘍壊死因子のようなサイトカイン:ウロキナーゼ、腎臓プラスミノゲン活性剤のような線維素溶解酵素;及びプロテインC、第VII因子、第IX因子、第VII因子及びアンチトロンビンIIIのような凝固因子。
【0089】
他のタンパク質又はペプチドの例は、アルブミン、心房性ナトリウム利尿因子、レニン、過酸化物ジスムターゼ、α1である―抗トリプシン、肺界面活性剤タンパク質、バシトラシン、ベスタチン、シクロスポリン、δ睡眠誘発ペプチド(DSIP)、エンドルフィン、グルカゴン、グラミシジン、メラニン形成細胞抑制因子、ニューロテンシン、オキシトシン、ソマスタチン、テプロチド、血清胸腺因子、チモシン、DDAVP、デルモルフィン、メトエンケファリン、ペプチドグリカン、サタエティン、サイモポエチン、フィブリン分解生成物、非エンケファリン―α―エンドルフィン、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン、ロイプロリド、α―MSH及びメトケファミド。
【0090】
アルトレタミン、フルオロウラシル、アムサクリン、ヒドロキシカルバミド、アスパラギナーゼ、イホスファミド、ブレオマイシン、ロムスチン、ブスルファン、メルファラン、クロラムブシル、メルカプトプリン、クロル・メタ・ヒン、メトトレキサート、シスプラチン、マイトマイシン、シクロホスファミド、プロカルバジン、シタラビン、テニポシド、ダカルバジン、チオテパ、ダクチノマイシン、チオグアニン、ダウノルビシン、トレオスルファン、ドキソルビシン、チオフォスファミド、エストラムスチン、ビンブラスチン、エトグルシド、ビンクリスチン、エトポシド、ビンデシン及びパクリタキセルのような制癌薬。
【0091】
アンピシリン、ナフシリン、アモキシシリン、オキサシリン、アズロシリン、ペニシリンG、カルベニシリン、ペニシリンV、ジクロキサシリン、フェネチシリン、フロキサシリン、ピペラシリン、メシリナム、スルベニシリン、メチシリン、チカルシリン、メズロシリン、セファロスポリン:セファクロール、セファロチン、セファドロキシル、セファピリン、セファマンドール、セフラジン、セファトリジン、セフスロジン、セファゾリン、セフタジジム、セフォラニド、セフトリアキソン、セフォキシチン、セフロキシム、セファセトリル、ラタモキセフ及びセファレキシンのような抗生物質。アミカシン、ネオマイシン、ジベカシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、硫酸ネチルマイシン、カナマイシン、トブラマイシンのようなアミノグリコシド。アンホテリシンB、ノボビオシン、バシトラシン、ナイスタチン、クリンダマイシン、ポリミキシン、コリスチン、ロバマイシン、エリスロマイシン、スペクチノマイシン、リンコマイシン、バンコマイシンのようなマクロライド。クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ロリテトラサイクリン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン及びミノサイクリンテトラサイクリン。クロラムフェニコール、リファマイシン、リファンビシン及びチアンフェニコールのような他の抗生物質。
【0092】
スルフォンアミド・サルファダイアジン、スルファメチゾール、スルファジメトキシン、スルファメトキサゾール、スルファジミジン、スルファメトキシピリダジン、スルファフラゾール、スルファフェナゾール、スルファレン、スルフィソミジン、スルファメラジン、スルファメトキサゾール又はスルファメトロールを持つトリメトプリム及びスルフィソキサゾールのような化学療法治療薬。
【0093】
メタンアミン、キノロン類(ノルフロキサシン、シノキサシン)、ナリジキシン酸、ニトロ化合物(ニトロフラントイン、ニフルトイノール)及びオキソリン酸のような尿路消毒剤。
【0094】
メトロニダゾールのような嫌気性感染症のための薬。
【0095】
アミノサルチル酸、イソニアジド、シクロセリン、リファンピシン、エタンブトール、チオカルリド、エチオナミド及びバイオマイシンのような結核のための薬。
【0096】
アミチオゾン、リファンピシン、クロファジミン、ナトリウム・スルホキソン及びジアミノジフェニルスルホン(DDS、ダプソン)のようなハンセン病のための薬。
【0097】
アンホテリシンB、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ナタマイシン、フルシトシン、ナイスタチン及びグリセオフルビンのような抗真菌薬。
【0098】
アシクロビル、イドクスウリジン、アマンチジン、メチサゾン、シタラビン、ビダラビン及びガンシクロビルのような抗ウイルス薬。
【0099】
クロロキン、ヨード・キノール、クリオキノール、メトロニダゾール、デヒドロエメチン、パロモマイシン、ジロキサニド、フロエートチニダゾール及びエメチンのようなアメーバ症の化学療法。
【0100】
クロロキン、ピリメタミン、ヒドロキシクロロキン、キニーネ、メフロキン、スルファドキシン/ピリメタミン、ペンタミジン、ナトリウム・スラミン、プリマキン、トリメトプリム及びプログアニルのような抗マラリア薬剤。
【0101】
酒石酸アンチモンカリウム、ニリダゾール、アンチモン・ナトリウム・ジメルカプトコハク酸、オキサムニキン、ベフェニウム、ピペラジン、ジクロロフェン、プラジカンテル、ジエチルカルバマジン、ピランテルパモエート、ヒカントン、ピリビウムパモエート、レバミゾール、スティボフェン、メベンダゾール、テトラミゾール、メトリホナート、チアベンダゾール及びニクロサミドのような反蠕虫病薬剤。
【0102】
アスピリン酸、メフェナム酸、アクロフェナク、ナプロキセン、アゾプロパノン、ニフルミン酸、ベンジダミン、オキシフェンブタゾン、ジクロフェナク、ピロキシカム、フェノプロフェン、ピルプロフェン、フルルビプロフェン、サリチル酸ナトリウム、イブプロフェンスリンダック、インドメタシン、チアプロフェン酸、ケトプロフェン及びトルメチンのような反炎症性薬剤。
【0103】
コルヒチン及びアロプリノールのような反痛風薬剤。
【0104】
アルフェンタニル、メタドン、ベジトラミド、モルヒネ、ブプレノルフィン、ニコモルフィン、ブトルフェノール、ペンタゾシン、コデイン、ペチジン、デキストロモラミド、ピリトラミド、デキストロプロポキシフェン、スフェンタニル及びフェンタニルのような中枢作用(オピオイド)鎮痛薬。
【0105】
アルチカイン、メピバカイン、ブピバカイン、プリロカイン、エチドカイン、プロカイン、リドカイン及びテトラカインのような局所的麻酔薬。
【0106】
アマンチジン、ジフェンヒドラミン、アポモルヒネ、エトプロパジン、メタンスルホン酸ベンズトロピン、レルゴトリル、ビペリデン、レボドパ、ブロモクリプチン、リスリド、カルビドパ、メチキセン、クロルフェノキサミン、オルフェナドリン、シクリミン、プロシクリジン、デキセチミド及びトリヘキシフェニジルのようなパーキンソン病のための薬。
【0107】
バクロフェン、カリソプロドール、クロルメザノン、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン、ダントロレン、ジアゼパム、フェバルバメート、メフェノキサロン、メフェネシン、メタキサロン、メトカルバモール及びトルペリゾンのような中枢性筋弛緩薬。
【0108】
コルチゾール、デオキシコルチコステロン及びフルオロヒドロコルチゾンのような無機質コルチコステロイド。
【0109】
ベクロメタゾン、ベタメタゾン、コーチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、フルオシノニド、フルオコルトロン、フルオロメトロン、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、メドリゾン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン及びトリアムシノロン(アセトニド)のような副腎皮質ステロイド。
【0110】
ダナゾール、フルオキシメステロン、メステロロン、メチルテストステロン、テストステロン及びその塩類のような治療で使用されるアンドロゲニックステロイド。
【0111】
カルステロン、ナンドロロン及びその塩類、ドロモスタノロン、オキサンドロロン、エチルエストレノール、オキシメトロン、メタンドリオール、スタノゾロール・メタアンドロステノロン及びテストラクトンのような治療で使用される筋肉増強剤。
【0112】
シプロテロン酢酸塩のような抗アンドロゲン。
【0113】
ジエチルスチルベストロール、エストラジオール、エストリオール、エチニルエストラジオール、メストラノール及びキネストロールのような治療で使用されるエストロゲン・ステロイドを有するエストロゲン。
【0114】
クロロトリアニセン、クロミフェン、エタモキシトリフェトール、ナフォキシジン及びタモキシフェンのような抗エストロゲン。
【0115】
アリルエストレノール、デソゲストレル、ジメチステロン、ジドロゲステロン、エチニルエストレノール、エチステロン、エチノジオールジアセテート、エチノジオール、ヒドロキシプロゲステロン、レボノルゲストレル、リネストレノール、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール酢酸塩、ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチノドレル、ノルゲストレル及びプロゲステロンのようなプロゲスチン。
【0116】
甲状腺薬は以下を有する。
左旋サイロニン及びリオチロニンのような治療で使用される甲状腺薬。
【0117】
カルビマゾール、メチマゾール、メチルチオウラシル及びプロピルチオウラシルのような治療で使用される抗甲状腺薬。
【0118】
水溶性である生物活性剤から離れて、抗酸化剤、イオン、キレート薬、染料、撮像化合物のような他の水溶性化合物が組み込まれ得る。
【0119】
好適な治療薬は、癌(例えば抗腫瘍)及び心血管疾患(例えば血栓治療又は防止)の領域内にある。
【0120】
ナノ粒子又はポリマーソーム製剤に適している親油性薬物誘導剤を調製する方法は、公知技術である(例えば、リン脂質の脂肪酸鎖との治療薬物の共有結合を記述する米国特許第5,534,499号を参照)。本発明の薬物は、プロドラッグでもありえる。
【0121】
薬物は、例えばキャビティ内及び/又はポリマーソームのシェル内のキャリアの区画の内側、外側、若しくは両方に存在する。薬物の分布は、常磁性化学シフト試薬又は常磁性薬物のような薬物キャリアに含まれる他の何れの薬物の分布からも独立している。薬物の組合せが使用され、これらの任意の薬が、例えばキャビティ内及び/又はポリマーソームのシェル内の薬物キャリアの区画の内側、外側、若しくは両方に存在してもよい。
【0122】
他の使用:
上記のように、本発明のキレート化両親媒性ポリマーは、非キレート化両親媒性ポリマーと化合し得る。
【0123】
また、キレート化両親媒性ポリマーを本拠とするポリマーソームの場合、疾患に特有の分子プローブは、例えばポリマーソームの表面に深く入りこむために適切な疎水性尾部を持ち、化合物の他端が所望により配位子(リガンド)を含む化合物を持つことにより、ポリマーソーム内に供給できる。これによってポリマーソームが、所望の又は疑わしい身体部位に優先して位置付けられる造影剤として使用でき、MRIにより見られる。
【0124】
前述のように、本発明は、実施例及び式に限定されないことは、理解されるべきである。請求項において、単語「を有する」は、他の要素又はステップを除外しないことも理解されるべきである。名詞を指すとき不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が使用される場合、これは、特に何か明示しない限り、その名詞の複数形を含む。
【0125】
本発明は、以下の非限定的な実施例及び図を参照して例示される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、両親媒性共重合体を含む自己組織化ナノ構造体ポリマーソーム(左)、ポリマー安定化乳剤(中央)及び重合ミセル(右)を示す。
【図2】図2は、MRIのためのT、T加重された造影剤としてGd(III)DOTA官能化されたポリマーソームの概略的表現を示す。
【図3】図3は、DOTA官能化されたポリマーソームの概略的表現を示す。球面ポリマーソームは、ポリマー層にDOTA末端共重合体を含む(6、左)。常磁性金属とのDOTA部分の反応は、常磁性錯体がバルク水へ外に向かっている球面ポリマーソームを作る(10、中央)。浸透圧に応じたポリマーソーム(10)の変形が、非球面ポリマーソームを作る(11、右)。
【図4】図4は、内側の水様の区画内に化学シフト薬物を含むDOTA官能化されたポリマーソームの概略的表現を示す。球面ポリマーソームは、ポリマー層にDOTA末端共重合体を含む(12、左上)。常磁性金属との12のDOTA部分の反応は、常磁性錯体がバルク水へ外に向かっている球面ポリマーソームを作る(13、中央上)。浸透圧に応じた12の変形は、非球面ポリマーソームを与える(15、下)。バルク水へ外に向かっている常磁性錯体及び内側に化学シフト薬物を含む非球面ポリマーソーム(14、右上)は、13又は15から得られる。
【図5】図5は、ポリマー層の両面にDOTA共重合体の常磁性錯体を含むポリマーソームのCEST MRI造影剤の概略的表現を示す。球面ポリマーソーム(16、左上)、非球面ポリマーソーム(17、右上)、内側水様の区画内に化学シフト薬物を含む球面ポリマーソーム(18、左下)及び内側水様の区画内に化学シフト薬物を含む非球面ポリマーソーム(19、右下)。
【図6】図6は、構造体の外側で例えば核撮像のためのラベルを示している、ポリマーソーム、ポリマー安定化乳剤及び核撮像のための重合ミセルを示す。
【図7】図7は、注入後4時間の111Inラベルが付いた乳剤のSPECT/CT画像を示す。SPECT画像と重畳されたCTの最大の強度投影(左上)。心臓及び肝臓を視覚化する冠状SPECT/CTスライス(右上)。心臓、肝臓及び腎臓を視覚化する矢状SPECT/CTスライス(左下)。横断SPECT/CTスライス(右下)。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0127】
DOTA官能化されたポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)(5)
【0128】
PBD(2500)―b―PEO(1300)(1)が、アセトン(18mL)で分解され、溶液が、残留イソプロパノールを除去するために減圧下で濃縮された。水の痕跡を取り除くために、共重合体がトルエン(15mL)に溶かされ、この溶液が真空濃縮された。その後、PBD(2500)―b―PEO(1300)(4.90g、1.29mmol)が、窒素の雰囲気下で、DCM(15mL)に溶かされた。得られた溶液は、0℃まで冷やされ、p―トシルクロリド(0.497g、2.60mmol)が加えられた。混合物は0℃で30分間撹拌され、KOH(0.640g、11.4mmol)がゆっくり加えられた。混合物は、室温で終夜撹拌された。反応混合物は、水(2x30mL)及び塩水(2x15mL)で洗われた。水性層が、DCM(30mL)で抽出され、複合有機層が、MgSOで乾燥されて濾過され、溶液は、(2)(62%、3.2g、0.81mmol)を得るために、減圧下で濃縮された。トシレート官能化された共重合体(2)(3.2g、0.81mmol)がトルエン(12mL)に溶かされ、MeOH(12mL、84mmol)の7N NHの溶液が加えられた。反応が、63時間50℃で実施された。その後、溶媒が、減圧下で除去された。生の混合物が、DCM(10mL)に溶かされた。得られた溶液が、水(2x20mL)、塩水(2x10mL)及び飽和NaHCO(水溶液)(10mL)で洗われた。水性層が、DCM(40mL)で抽出された。複合有機層は、MgSOで乾燥された。懸濁液が濾過され、濾過水が50%の歩留まりで(3)(1.55g、0.41mmol)を与えるために減圧下で濃縮された。アミン官能化された共重合体(3)(1.2g、0.31mmol)がDMF(12mL)に溶かされ、その後、DOTAベースの構築ブロック(4)(0.347g、0.35mmol)及びEtN(0.9mL、6.5mmol)が加えられた。混合物が、窒素の雰囲気下室温で、26時間撹拌された。得られた溶液は、減圧下で濃縮された。生の混合物が、トルエンに溶かされ、溶液が減圧下で濃縮された。DOTA官能化されたポリ(酸化エチレン)―ブロック―ポリ(ブタジエン)(5)が、定量的収率で得られた。
【実施例2】
【0129】
DOTA官能化された共重合体の自己組織化及びGd(III)を持つ錯体生成。
【0130】
100―150nmの平均直径を持つポリマー小嚢が、逐次押出と結合した薄膜水和技術により形成された。手短に言えば、DOTA官能化されたポリ(ブタジエン(1,2―加算)―b―酸化エチレン)(Mn(グラム/モル):PBD(2500)―b―PEO(1300)(PD=1.04及びfEO=0.34)がCHClで分解された。溶媒が、減圧下でゆっくりと除去され、薄いポリマー膜が得られた。当該膜が、20mMのHEPES溶液(pH7.4)で水和した。―177℃及び70℃で10回の結氷融解サイクルにより後続される50℃で一晩加熱の後、分散が、1μm、0.4μm、0.2μm及び0.1μmの孔直径を持つポリカーボネートフィルタを通じて、何回か押出された。その後、pH7.4の20mMのHEPES溶液のGdCl(5当量)の溶液が、2時間50℃で、ポリマーソーム分散に加えられた。その後、ポリマーソームが、Gd(III)の過剰を取り除くために、終夜透析された。透析は、pH7.4で20mMのHEPES溶液に対して実施された。ポリマーソームの平均半径は、動的な光散乱(DLS)により決定された。ポリマー小嚢の形状は、クリオ−TEMにより検討された。ガドリニウムの濃度は、ICP―MSにより決定された。縦及び横緩和時間(T及びT)が、60MHzで決定された。
【実施例3】
【0131】
化学シフト薬物及びDOTA末端ポリマーの常磁性錯体を含む非球面ポリマーソーム(14)
【0132】
例1で説明したように、100―150nmの平均直径を持つポリマー小嚢が、逐次押出と結合する薄膜水和技術により形成された。この場合、膜は、65mM[Tm(hpdo3a)(HO)]を含む20mMのHEPES溶液(pH7.4)で水和された。―177℃及び70℃で10回の結氷融解サイクルにより後続される50℃で一晩加熱の後、分散が、1μm、0.4μm、0.2μm及び0.1μmの孔直径を持つポリカーボネートフィルタを通じて何回か押出された。得られたポリマーソーム(12)は、脂質膜の水和の後、混入されなかった[Tm(hpdo3a)(HO)]を除去し、非球面ポリマーソーム(15)を得るために終夜透析された。透析は、0.3MNaClを含む20mMのHEPESバッファで実施された。その後、0.3MNaClを含む20mMのHEPESバッファのTmCl(5当量)の溶液は、2時間50℃で、ポリマーソーム分散に加えられた。ポリマーソーム(14)は、Tmの過剰を取り除くために終夜透析された。透析は、0.3MNaCl(pH7.4)を含む20mMのHEPESバッファに対して実施された。ポリマーソーム(14)の平均半径は、動的な光散乱(DLS)により決定された。ポリマー小嚢の形状が、クリオTEMにより検討された。ガドリニウムの濃度が、ICP―MSにより決定された。縦及び横緩和時間(T及びT)が、60MHzで決定された。
【実施例4】
【0133】
放射性同位元素を使って識別されるポリマーソーム及び乳剤
【0134】
ポリマー安定化乳剤の調製
乳剤は、2%重量/ボリュームのポリ(ブタジエン(1,2付加)―ブロック―ポリ(酸化エチレン)(fEO0.61;Mwphil=2033グラム/モル;Mwphob=1305グラム/モル)、及び5モル%のDOTA官能化された共重合体(5)を使用して、オクタン―2―イル2,3,5―トリヨードベンゾアート(25%重量/ボリューム)から調製された。乳剤は、70℃で高圧マイクロ流動化システム(Microfluidizer M110S、Microfluidics社、ニュートン、マサチューセッツ州)を使用して、pH7.4で152mMのNaClを含む2.1mMのTHAMバッファで調製された。広範囲な透析は、三日間、Chelex(2g/L)を含むTHAMバッファ(1L)に対して実施された。その後、ポリマー安定化乳剤は、450nmフィルタを通じて濾過された。
【0135】
乳剤を放射性同位元素で識別
DOTA―共重合体(300μL)で安定する乳剤が、70℃で1時間、0.05MのHCl(4μL)内の30MBqの111InClで培養された。その後、自由なDTPAが、自由な111Inを除去するために反応混合物に加えられた。1μLの反応混合物が、シリカ被覆TLCプレート上に付与された。9.0g/LのNaClを含む200mMのEDTAの溶液が、溶離剤として用いられた。TLCが、FLA―7000燐酸撮像器(富士フィルム社、日本国、東京)で分析され、放射標識が、Aidaソフトウェア(富士フィルム社)を使用して定量化された。放射標識効率は、30MBqの111InClで65%であった。より小さなスケールでの放射標識(100μLの乳剤の4.6MBqの111InCl)は、97%の収率を与えた。この収率は高いにもかかわらず、4.6MBqは、撮像目的のために十分ではないだろう。従って、30MBqの111Inで、説明された手順が生体内研究のために用いられた。放射性同位元素で識別された乳剤が、デュアルモダリティSPECT/CTスキャンのため雄のスイスマウス(Charles River、マーストリヒト、オランダ)でテストされた。20.5MBqの放射能で放射性同位元素で識別された乳剤(200μL)が、静脈内に注入された。SPECT/CTスキャンは、NanoSPECT/CT(Bioscan)で実施された。動物実験が、マーストリヒト大学(マーストリヒト、オランダ)の動物実験のための倫理審査委員会(Institutional Ethical Review Committee)により承認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性ブロックが、末端基としてキレート化部分を具備する、当該親水性ブロック及び疎水性ブロックを有する自己組織化可能なキレート化両親媒性ポリマー。
【請求項2】
以下の一般構造式(i)を満たし、
X―[M―[M(i)
Xは、キレート化部分を表し、Mは、親水性ブロックを形成する親水性繰り返しユニットを表し、Mは、疎水性ブロックを形成する疎水性繰り返しユニットを表し、n及びmは、それぞれのブロックを形成するモノマーユニットの数を表わす3から1000000、好ましくは5から5000までの各々独立した整数である、請求項1に記載のキレート化両親媒性ポリマー。
【請求項3】
前記親水性ブロックが、好ましくは500から10000の重量平均分子量を持つ、ポリ(エチレンオキシド)ブロックである、請求項1又は2に記載のキレート化両親媒性ポリマー。
【請求項4】
前記疎水性ブロックは、70℃より低いTgを持ち、好ましくはポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)及びポリ(エチルエチレン)から成るグループから選択される、請求項1乃至3の何れか一項に記載のキレート化両親媒性ポリマー。
【請求項5】
前記キレート化部分は、DOTA、DTPA、HYNIC及びデスフォロキサミンから成るグループから選択される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のキレート化両親媒性ポリマー。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のキレート化両親媒性ポリマーの自己組織化構造体を有する粒子。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のキレート化両親媒性ポリマーと非キレート化両親媒性ポリマーとの組み合わせを有する、請求項6に記載の粒子。
【請求項8】
前記非キレート化両親媒性ポリマーは、親水性ブロックとしてポリ(オキシエチレン)鎖を持ち、当該鎖が、前記キレート化両親媒性ポリマーの前記親水性ブロックより長い、請求項7に記載の粒子。
【請求項9】
薬物を更に有する、請求項6乃至8の何れか一項に記載の粒子。
【請求項10】
造影剤としての請求項6乃至9の何れか一項に記載の粒子の使用。
【請求項11】
請求項6乃至9の何れか一項に記載の粒子のポリマーソームを有する、CEST MRI造影剤であって、前記ポリマーソームが、一つ以上の両親媒性ポリマーの二重層により形成された壁を持ち、前記二重層が、キレート化両親媒性ポリマーを有し、前記壁は、前記壁を通じた拡散が可能である陽子分析物のプールを有するキャビティを囲み、前記キャビティの方向へ延在する前記キレート化両親媒性ポリマーのキレート化部分が、キレート化常磁性材料を具備する、CEST MRI造影剤。
【請求項12】
非球面形状を持つ、請求項11に記載のCEST MRI造影剤。
【請求項13】
請求項6乃至9の何れか一項に記載の粒子のポリマー安定化水中油型乳剤を有するSPECT又はPET造影剤であって、前記キレート化両親媒性ポリマーのキレート化部分が、SPECT又はPETに適しているキレート化放射性核種を具備する、SPECT又はPET造影剤。
【請求項14】
前記キレート化両親媒性ポリマーのキレート化部分が、高いZ物質を具備する、請求項6乃至9の何れか一項に記載の粒子を有する、スペクトルCT造影剤。
【請求項15】
前記キレート化部分の一つ以上が配位化合物の形式で金属イオンを有し、前記金属イオンは内部でキレート化され、キレート化両親媒性ポリマーが、キャビティを囲む二重層を形成するように水様の環境を受け、前記キレート化部分が、前記二重層の形成の前に金属イオンとの配位化合物の形成を受ける、請求項6乃至9の何れか一項に記載の粒子を作る方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−503814(P2013−503814A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525674(P2011−525674)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053921
【国際公開番号】WO2010/029500
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】