説明

キーボード

【課題】各指にホームポジションキーを容易に認識させることができるばかりでなく、ホームポジションキーの上に指を安定して位置させることが可能となる。また、他のキーを操作する場合に基点とするキーを確実に認識することができる。
【解決手段】左右の人指し指、中指、薬指及び小指がそれぞれ対応する左右各4つのホームポジションキーを4,5,6,7,104,105,106,107を設定したパーソナルコンピュータ用キーボード1であって、上記左右各4つのホームポジションキーのうち、上記中指と上記薬指に対応した中間ホームポジションキー5,6,105,106の上面と、この中間ホームポジションキーの両側に配置されて上記人指し指と上記小指に対応する端部ホームポジションキー4,7,104,107の上面に、これら中間ホームポジションキーと端部ホームポジションキーとを手指の触覚で識別できる識別手段21,121,22,122を設けて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、パーソナルコンピュータ用キーボードに関する。詳しくは、タッチタイピングの操作を容易に行えるとともにその習得を促進でき、さらに、視覚障害者が取り扱うのに好適なキーボードに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータに情報を入力するために、文字、記号、数字等に対応した複数の入力用キーが配列されたキーボードが用いられる。
【0003】
上記キーボードのキー配列は、欧文文字を入力するタイプライターのキー配列を基本として形成されたものである。言語等に応じて種々のキー配列を備えるキーボードが提供されているが、アルファベット及び数字を入力するキーの配列は、いずれのキーボードにおいてもほぼ共通している。
【0004】
上記キーボードを用いて、コンピュータに情報を効率よく入力するには、タッチタイピングを習得する必要がある。タッチタイピングは、キーボード面を見ることなく、指先の感覚だけを頼りにして、キーを操作する技術である。これに対し、キーボード面を見て入力を行う場合を、サイトメソッドと呼ぶことが多い。
【0005】
タッチタイピングを習得しない場合、すなわち、サイトメソッドでは、キーボード面とディスプレイとを交互に見ることになるため入力速度が遅くなる。また、キーボード面とディスプレイとの間で視点を移動させる必要があるため、眼精疲労が生じやすい。特に、日本語入力を行うには、入力したかな文字を漢字に変換する必要があるため、漢字の変換結果をディスプレイ上で確認する必要がある。このため、欧文を入力する場合に比べて視点の移動回数が多くなり、眼精疲労が生じやすい。しかも、視覚障害者は、各キーの表面に記載された文字、記号等を認識することが困難であり、従来のキーボードは視覚障害者にとって取り扱いが困難である。
【0006】
一方、タッチタイピンクを習得するには、ある程度の努力と時間が必要になる。また、一旦、サイトメソッドに慣れてしまうと、タッチタイピングを習得する段階において、入力速度が低下するといった問題が生じる。
【0007】
タッチタイピングを行うには、ホームポジションと、キー操作を行う指の分担を習得する必要がある。タッチタイピングにおいては、両手の指10本のうち、両親指を除いた8本の指を主として使用し、親指はスペースバーやかな漢字変換/無変換キー等を操作する場合に使用する。
【0008】
通常、ホームポジションとして、左手人差指をキーボードの上下方向中間列(前後方向中間列)に配置された「F」のキーに、右手人差指をキーボードの中列に配置された「J」のキーに置くとともに、左中指、薬指、小指を「D」「S」「A」の位置に置き、右中指、薬指、小指を「K」「L」「+」の位置に置くことが多い。
【0009】
上記ホームポジションキーの位置を手指の触覚で確認するとともに、ホームポジションに指を位置させるため、上記ホームポジションキーに突起を設けたキーボードが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−213389号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
タッチタイピングにおいては、上記ホームポジションキー以外のキーを操作する場合、いずれかの指を対応する上記ホームポジションキーに置いた状態で、他の指を対応するホームポジションキーから移動させてキー操作を行う。そして、ホームポジションキー以外のキーを操作した後には、各指は対応するホームポジションキーの上に戻る。すなわち、ホームポジションキーの少なくとも一つのキー、換言すると基点となるキーの上に、所定の指を位置させることにより、このキーを基準として他の指の移動距離及び方向を定めているといえる。したがって、タッチタイピングを行うには、ホームポジションキーを認識することが最も重要である。
【0012】
上記従来のタッチタイピング用のキーボードには突起が設けられており、ホームポジションキーを手指の触覚で認識することができる。ところが、上記突起は、同一形態に形成されているため、いずれのキーが左右人差指、中指、薬指及び小指に各々対応するかを識別するのが困難である。
【0013】
また、上述したように、ホームポジション以外のキーを操作する場合には、この操作を行わないいずれかの指をホームポジションキーの上に位置させて、他の指の移動距離及び方向を定める基点とする必要がある。すなわち、ホームポジションキーには、これに対応する指が接触した状態で位置させられることになる。
【0014】
上記先行技術文献に記載されているように、上記ホームポジションキーに突起を設けた場合、各指はホームポジションキーであることを手指の触覚で認識することはできるが、突起が指先を刺激する。このため、長時間キー操作をすると指先に痛みを感じる場合が多い。また、中央に比較的小さな突起が設けられているため、キーの中央部分に指を位置させるのが困難であるとともに安定感がない。したがって、長時間操作を行う場合違和感が生じて疲れやすいといった問題もある。
【0015】
また、初心者にとって、左右手指で操作するキーの範囲を認識するのが困難である。特に、文字入力キー(アルファベットキー)はキーボードの中央部分に配置されているが、操作頻度が高いためこれらキーの操作領域を認識できるか否かが、タッチタイピングを習得する上で重要である。
【0016】
本願発明は上記従来の問題を解決し、各指にホームポジションキーを容易に認識させることができるとともに、ホームポジションキーの上に指を安定して位置させることにより他のキーを操作する場合の誤操作を防止でき、さらに、文字入力キーの範囲を容易に認識して、タッチタイピングを容易に習得できるキーボードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の請求項1に記載した発明は、 左右の人指し指、中指、薬指及び小指がそれぞれ対応する左右各4つのホームポジションキーを設定したパーソナルコンピュータ用キーボードであって、上記左右各4つのホームポジションキーのうち、上記中指と上記薬指に対応した中間ホームポジションキーの上面と、この中間ホームポジションキーの両側に配置されて上記人指し指と上記小指に対応する端部ホームポジションキーの上面に、これら中間ホームポジションキーと端部ホームポジションキーとを手指の触覚で識別できる識別手段を設けて構成される。
【0018】
本願発明では、左右4つのホームポジションキーが、いずれの指に対応するものであるかを、手指の触覚で識別できる識別手段を設けている。特に、本願発明では、左右4つのホームポジションキーを、中指と薬指に対応する中間ホームポジションキーと、人差指と小指に対応する端部ホームポジションキーとに区別できる識別手段を設けている。
【0019】
4つのホームポジションキーがいずれの指に対応するのかを識別するために、それぞれ異なる4つの識別手段を設けることも考えられる。しかしながら、指先の感覚で識別できる4つの異なる識別手段を設けるのは困難である。しかも、現実には高速でキー操作を行う場合、各指に対応した異なる識別手段を識別することはできない。
【0020】
本願発明では、中間ホームポジションキーと端部ホームポジションキーとを識別すればよい。すなわち、2つの識別手段を設ければ足りるばかりでなく、手指がホームポジションからずれた場合にも、これらの2つの識別手段の左右の位置関係を1又は2の手指の触覚で識別することにより、手指のポジションを容易に修正することが可能となる。
【0021】
具体的には、上記ホームポジションキーとして、左手人差指に対応する「F」及び小指に対応する「A」の端部ホームポジションキーと、中指に対応する「D」及び薬指に対応する「S」の中間ホームポジションキーとを識別できる識別手段を設ける。また、右手人差指に対応する「J」及び小指に対応する「+」の端部ホームポジションキーと、中指に対応する「K」及び薬指に対応する「L」の中間ホームポジションキーとを識別できる識別手段を設ける。
【0022】
上記構成を採用することにより、左右各指に対応するホームポジションキーを手指の触覚によって容易に識別することが可能となる。しかも、本願発明では、2つのキーを識別する識別手段を設けているのにも係わらず、左右4つの指のホームポジションキーを識別することが可能となる。
【0023】
上記識別手段の形態は特に限定されることはない。たとえば、請求項3に記載した発明のように、上記ホームポジションキーの識別手段として、上記左右各4つのホームポジションキーの上面に凹部を設けるとともに、上記中間ホームポジションキーの上記凹部の深さを、上記端部ホームポジションキーの凹部の深さよりも深く設定することができる。
【0024】
識別手段として凹部を設けることにより、各指でホームポジションキーを識別することができるばかりでなく、各指を各ホームポジションキーの中央部分に容易に位置決めすることが可能となる。すなわち、各指の先端を上記凹部に収容した姿勢を採らせることが可能となり、各ホームポジションキーに圧力を作用させることなく、各指を対応するホームポジションキー上の中央に容易に位置決めすることが可能となる。
【0025】
しかも、中指と薬指の長さは、人差指や小指より長い。したがって、上記中間ホームポジションキーの上記凹部の深さを、上記端部ホームポジションキーの凹部の深さよりも深く設定することにより、中指及び薬指の長さを吸収することが可能となり、各指をホームポジションキー上に安定して位置させることが可能となるのである。
【0026】
請求項4に記載した発明のように、上記端部ホームポジションキーの上面に設けた上記凹部の底面を平坦状に形成するとともに、周縁部に環状溝を設ける一方、上記中間ホームポジションキーの上面に設けた凹部を椀状に形成するのが好ましい。
【0027】
凹部の底面形態を異ならせることにより、端部ホームポジションキーと中間ホームポジションキーとを容易に識別することができる。特に、平坦状の凹部と椀状の凹部を組み合わせることにより指に刺激を与えることもない。また、上記環状溝を設けることにより、識別機能をさらに高めることができる。さらに、上記環状溝に着色を施すことにより、視覚によって上記ホームポジションキーを容易に識別することが可能となり、初心者や弱視者等が左右の手指を各ホームポジョンに容易に位置させることができる。
【0028】
請求項2に記載した発明は、上記ホームポジションキーを設定した列の上側列と下側列において、左右の手指で操作する境界に位置して上記人指し指で操作するキーと、右小指に対応するホームポジションキーから上列内方側のキーと、右小指に対応するホームポジションキーから下列外方側のキーと、左小指に対応するホームポジションキーから上列外方側のキーと、左小指に対応するホームポジションキーから下列内方側のキーとに、手指の触覚で識別できる領域識別手段を設けたものである。
【0029】
請求項2に記載した発明は、テキスト入力を行う場合の操作キーの領域あるいは範囲を容易に識別できるように構成したものである。発明者が調査したところ、上記ホームポジションキーを認識できるとともに、テキスト入力を行うキーが配列された領域の端部に位置するキーを識別することにより、タッチタイピングを容易に習得できることが判明した。また、上記各キーに上記領域識別手段を設けることにより、これらキーの誤操作を防止することが可能となる。なお、本願発明では、左右の手指で操作するキーの境界側を内方とする一方、境界から離れる方向を外方としている。
【0030】
具体的には、左手で操作するキーとして、「T」、「Q」、「B」、「Z」に、右手で操作するキーとして「Y」、「P」、「N」、「?」のキーに領域識別手段を設ける。これらキーは、ホームポジションキーから斜め方向に位置しているためタッチタンピングする際に位置の特定が困難である。したがって、これらのキー位置を認識できれば、誤操作を防止できるばかりでなく、他のキー操作を迅速に行うことが可能となる。また、タッチタイピングの習得を促進することができる。
【0031】
上記各キーに設ける領域識別手段は特に限定されることはない。請求項1に記載したホームポジションキーを識別するための識別手段と同様の凹部を設けることもできるし、他の形態の領域識別手段を設けることもできる。これにより、これら各キーを手指の触覚によって容易に識別できるとともに、タッチタイピングの習得を促進することが可能となる。
【0032】
請求項5に記載した発明は、左右手指で操作する領域の境界に位置するキー(境界キー)の境界側に、これらキーの側面を延出させた延出部を形成し、左右に隣接して対向するキーの一方のキーを押圧操作した際に他方のキー側面が、上記一方のキーの上面から立ち上がるように構成したものである。
【0033】
タッチタイピングにおいて、左右の手指で操作する領域は決まっており、この境界領域のキーを識別することにより、タッチタイピングをより容易かつ迅速に行うことができる。一方、左右の手指で操作する境界部分に位置するキーは、左右いずれの手指で操作することも可能であるため、場合によって左右異なる手指で操作してしまうことも多い。
【0034】
左右手指で操作する領域の境界に位置するキーの境界側にそれぞれ上記延出部を設けると、左右に隣接して対向するキーの一方のキーを押圧操作した際に他方のキー側面が、上記一方のキーの上面から壁面として立ち上がる。すなわち、他方の手指で操作するキーとの間の段差を手指の触覚で感知しやすくなる。このため、左右の境界領域のキーを容易に識別することが可能となるのである。一方、キーの上面に突起等を設けるものではないため、キーボードの見栄えが低下することもない。
【0035】
上記延出部の形態は特に限定されることはない。たとえば、従来は傾斜面として形成されていた境界側の側面を延出させて、押圧操作するキーの上面と直交する側面、あるいは鉛直な側面をもつ延出部を形成することができる。
【0036】
請求項6に記載した発明のように、上記延出部の上面をキー上面とほぼ面一に形成するとともに、この上面に、手指の触覚で識別できる境界識別手段を設けるのが好ましい。延出部の上面を面一にすることにより、押圧操作領域の面積が大きくなり操作しやすくなる。また、キーの見栄えが低下することもない。
【0037】
上記境界識別手段も特に限定されることはなく、請求項7に記載した発明のように、上記延出部の上面に凹凸を設けて構成することができる。
【0038】
さらに、請求項8に記載した発明のように、上記境界識別手段を、上記延出部に凹部を設けるとともにゴム状材料を埋め込んで形成することができる。上記ゴム状材料は、キーの本体上面と摩擦係数が異なるため、キーを押圧する際に、上記キーを手指の触覚によって容易に識別することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
ホームポジションキーを容易に識別することが可能となり、タッチタイピングを容易に行えるとともに、習得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】キーボードの平面図である。
【図2】図1に示すキーボードの要部の拡大平面図である。
【図3】右手で操作する要部のキー配列を示す平面図である。
【図4】左手で操作する要部のキー配列を示す平面図である。
【図5】図3におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】境界キーの作用を示す要部の断面図である。
【図8】境界キーに係る実施形態を示す斜視図である。
【図9】境界キーに係る実施形態を示す斜視図である。
【図10】境界キーに係る実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0042】
図1に、本願発明が適用されるキーボード1の平面図を示す。キーボード1は、パーソナルコンピュータ等に文字等を入力するために用いられるものであり、板状の筺体の上面に多数のキースイッチ3を設けて構成されている。なお、本願発明では、スペースキーを使用者側に位置させたとき、キーボード面は傾斜した状態におかれ、奥方(図1におけるF方向)を上方、手前側(図1におけるB方向)を下方として説明する。また、左右の手指で操作する境界Sに向かう側を内方あるいは内側、境界Sから離れる側を、外方あるいは外側として説明する。
【0043】
キーボード1には、多数のキースイッチ3が配列形成されている。各キースイッチは、キーを押圧することにより、図示しない接点を閉じて信号を入力できるように構成されている。
【0044】
タッチタイピングを行う場合、左右の手指で操作するキーの領域が設定されており、Sで示す境界の左側を左の手指で、右側を右の手指で操作する。
【0045】
上記各キーの内、アルファベットを入力するキーは、上下方向中央部において左右方向にキーを配列して構成される3つの列X列、Y列、Z列に配置されており、このアルファベットキーを囲むようにして、数字キーや変換キーが配列されている。
【0046】
図2に、図1の要部の拡大図を示す。なお、左右の手指で操作するキー配列はほぼ同様であるので、以下右手指で操作するキーについて説明する。
【0047】
図2〜図4に示すように、本実施形態では、Y列における上記境界線Sに隣接するキー12(Hキー)を一つ飛ばして、4つのホームポジションキー4,5,6,7が連続して設定されている。
【0048】
上記ホームポジションキーとして、「J」4、「K」5、「L」6、「+」7のキーが横方向に連続して設けられており、「J」は人差指、「K」は中指、「L」は薬指、「+」は小指で操作するように設定されている。以下、上記4つのホームポジションキーのうち、「K」5及び「L」6を中間ホームポジションキー、「J」4及び「+」7を端部ホームポジションキーとして説明を行う。
【0049】
図3に示すように、本実施形態では、ホームポジションキーの上面に、これら中間ホームポジションキー5,6と端部ホームポジションキー4,7とを手指の触覚で識別できる識別手段21,22が設けられている。
【0050】
本実施形態に係る上記識別手段21、22は、4つのホームポジションキーの上面に凹部を設けて構成されているとともに、上記中間ホームポジションキー5,6の上記凹部の深さを、上記端部ホームポジションキー4,7の凹部の深さよりも深く設定している。
【0051】
上記識別手列21,22として深さの異なる凹部を設けることにより、各指でホームポジションキーを識別することができるばかりでなく、各指を各ホームポジションキーの中央部分に位置決めすることが可能となる。すなわち、各指の先端を上記凹部に収容した姿勢を採らせることが可能となり、各ホームポジションキーに圧力を作用させることなく、各指を対応するホームポジションキー上の中央部分に容易に位置決めすることが可能となる。
【0052】
上記構成を採用することにより、左右各指に対応するホームポジションキーを手指の触覚によって容易に識別することが可能となる。しかも、本願発明では、2つのキーを識別する識別手列を設けているのにも係わらず、中間ホームポジションキーと端部ホームポジションキーの2つを識別できるため、これら識別手段の左右の位置関係から4つの指に対応するホームポジションキーを容易に識別することが可能となる。
【0053】
しかも、中指と薬指の長さは、人差指や小指より長い。したがって、上記中間ホームポジションキー5,6の上記凹部の深さを、上記端部ホームポジションキー4,7の凹部の深さよりも深く設定することにより、中指及び薬指の長さを吸収することが可能となり、各指をホームポジションキー上に安定して位置させることが可能となる。
【0054】
さらに、上記中間ホームポジションキー5,6の凹部は椀状に形成されている一方、上記端部ホームポジションキー4,7には、上記凹部の底面を平坦状に形成するともに、周縁部に環状溝23が設けられており、この環状溝23に着色が施されている。
【0055】
上記凹部の底部の形態を異ならせることにより、上記端部ホームポジションキー4,7と、中間ホームポジションキー5,6とを容易に識別することが可能となる。さらに、本実施形態では、上記環状溝23を設けることにより、上記凹部の深さ及び底面形態の違いと共働して、中間ホームポジションキー5,6と端部ホームポジションキーと4,7の識別機能を高めている。指先で識別するには、上記各凹部の外径を7〜10mmに設定するとともに、端部ホームポジションキー4,7の深さ(中央平坦面における深さ)を、0.5〜3.0mmに設定する一方、中間ホームポジションキー5,6の中央の深さを1.5〜4.0mmに設定するのが好ましい。また、上記環状溝の幅を、1〜2mmに設定するのが好ましい。これにより、上記凹部の底面の形状を手指の触覚によって容易に感知することが可能となり、上記端部ホームポジションキーと中間ホームポシジョンキーを確実に識別することができる。
【0056】
また、上記環状溝に着色を施すことにより、視覚によって上記ホームポジションキー4,7を容易に識別できる。したがって、タッチタイピング開始時にホームポジションに手指を迅速に位置させることができる。特に、初心者や弱視者は、上記ホームポジションに他に指を位置させるのに時間がかかるが、上記着色を施すことによって、ホームポジションを視覚によって容易に見つけられるため、タッチタイピングに入りやすくなり、タッチタイピングの習得速度が高まる。
【0057】
また、図3及び図4に示すように、本実施形態では、上記ホームポジションキー4,5,6,7,104,105,106,107を設定した列Yの上側列Xと下側列Zにおいて、左右の手指で操作する境界に位置して上記人指し指で操作するキー8,10,108,110と、右小指に対応するホームポジションキー7から上列内方側のキー9と、右小指に対応するホームポジションキー7から下列外方側のキー11と、左小指に対応するホームポジションキー107から上列外方側のキー109と、左小指に対応するホームポジションキー107から下列内方側のキー111とに、手指の触覚で識別できる領域識別手列を設けている。図6に示すように、本実施形態では、上記領域識別手段として、底面が平坦状であるとともに側面43に傾斜を設けた凹部41を設けている。
【0058】
これらキー8,9,10,11は、テキストを入力するキーが配列された領域の角部に位置するキーである。これらのキー8,9,10,11に領域識別手段を設けると、テキストデータ(アルファベット文字等)を入力する領域を容易に認識することができる。特に、上記ホームポジションキー4,5,6,7,104,105,106,107と共働して、手指の移動方向及び距離の指標を提供することができる。このため、タッチタイピングを容易に行うことができばかりでなく、習得速度も向上する。また、上記各キーに上記領域識別手列41を設けることにより、これらキーの誤操作を防止することが可能となる。
【0059】
具体的には、右手で操作するキーとして、「Y」、「P」、「N」、「?」のキーに識別手列41,141を設けている。これらキーは、ホームポジションキーから離れているため位置の特定が困難であり、また誤操作しやすい。これら、キーに上記領域識別手列41,141を設けることにより、左右手指で操作する基本的な領域を容易に認識することが可能となる。したがって、手指の移動距離及び方向を認識して迅速なキー操作を行うことができる。
【0060】
すなわち、上記構成を採用することにより、ホームポジションキー4,5,6,7,104,105,106,107を基点として、テキストを入力する場合のキー領域の左右上下端部のキーを容易に認識することが可能となり、他のキーを入力する際の指標を提供することになる。したがって、タッチタイピングをより容易かつ迅速に行うことができるばかりでなく、タッチタイピングを容易に習得できるのである。
【0061】
タッチタイピングを行うには、左右の手指で操作するキーが交錯しないようにする必要がある。本実施形態では、上記境界領域に位置するキー(境界キー)を識別するため、左右手指で操作する領域の境界に位置するキー8,10,12,108,110,112,の境界側に、それぞれ延出部31を設けている。本実施形態に係る上記延出部31,131は、従来は傾斜面であった側面を、上面と直交する側面あるいは鉛直面を構成するように境界側S側に膨出させることにより形成されている。
【0062】
図7に示すように、左右手指で操作する領域の境界に位置するキーの境界側にそれぞれ上記延出部31,131を設けると、対向する境界キーの一方のキーを押圧操作した際に他方のキー側面12a,112aが、上記一方のキーの上面から立ち上がる。すなわち、他方の境界キーの側面が壁となって、境界キーを手指の触覚で感知しやすくなる。このため、左右の境界領域のキーを容易に識別することが可能となるのである。
【0063】
なお、押圧した時に、対向するキーの段差を認識できれば、上記延出部の形態は特に限定されることはない。境界側の対向面を、キーの上面と直交し、所定の隙間を開けて対向する鉛直面形態とした延出部を設けるのが好ましい。また、操作の邪魔にならないように、上記延出部の上面は、キー本体の上面と面一の連続面とするのが好ましい。
【0064】
さらに、上記延出部31の上面に、種々の識別手列を設けることができる。たとえば、図8に示すように、上記延出部31,131の上面に、指の先端部で識別できる複数の凹凸31aを設けることができる。
【0065】
また、図9に示すように、上記延出部231の上面に、前後方向に延びる溝231aを設けることができる。
【0066】
さらに、図10に示すように、上記延出部331に凹部330を設けるとともにゴム状材料331aを埋め込んで形成することができる。上記ゴム状材料は、キー本体上面と摩擦係数が異なるため、キーを押圧する際に、上記キーを手指の触覚によって容易に識別することが可能となる。なお、上記境界キーに設けた境界識別手段は、左右の境界側のみならず、X列の境界キーの上縁部及びZ列の境界キーの下縁部に設けることもできる。
【0067】
本願発明の範囲は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものでないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
キーボードにおけるタッチタイピングを容易に習得できるとともに、誤操作を防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 キーボード
4 端部ホームポジションキー(人差指)
5 ホームポジションキー(中指)
6 ホームポジションキー(薬指)
7 端部ホームポジションキー(小指)
21 識別手列
121 識別手列
22 識別手列
122 識別手列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の人指し指、中指、薬指及び小指がそれぞれ対応する左右各4つのホームポジションキーを設定したパーソナルコンピュータ用キーボードであって、
上記左右各4つのホームポジションキーのうち、上記中指と上記薬指に対応した中間ホームポジションキーの上面と、この中間ホームポジションキーの両側に配置されて上記人指し指と上記小指に対応する端部ホームポジションキーの上面に、これら中間ホームポジションキーと端部ホームポジションキーとを手指の触覚で識別できる識別手段を設けた、キーボード。
【請求項2】
上記ホームポジションキーを設定した列の上側列と下側列において、
左右の手指で操作する境界に位置して上記人指し指で操作するキーと、
右小指に対応するホームポジションキーから上列内方側のキーと、
右小指に対応するホームポジションキーから下列外方側のキーと、
左小指に対応するホームポジションキーから上列外方側のキーと、
左小指に対応するホームポジションキーから下列内方側のキーとに、
手指の触覚で識別できる領域識別手段を設けた、請求項1に記載のキーボード。
【請求項3】
上記ホームポジションキーの識別手段として、上記左右各4つのホームポジションキーの上面に凹部を設けるとともに、
上記中間ホームポジションキーの上記凹部の深さを、上記端部ホームポジションキーの凹部の深さよりも深く設定した請求項1又は請求項2のいずれかに記載のキーボード。
【請求項4】
上記端部ホームポジションキーの上面に設けた上記凹部は、底面が平坦状に形成されているとともに、周縁部に環状溝が設けられている一方、
上記中間ホームポジションキーの上面に設けた凹部は椀状に形成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキーボード。
【請求項5】
左右手指で操作する領域の境界に位置するキーの境界側に、これらキーの側面を延出させた延出部を形成し、左右に隣接して対向するキーの一方のキーを押圧操作した際に他方のキー側面が、上記一方のキーの上面から立ち上がるように構成した、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のキーボード。
【請求項6】
上記延出部の上面はキー上面とほぼ面一に形成されているとともに、この上面に、手指の触覚で識別できる境界識別手段を設けた、請求項5に記載のキーボード。
【請求項7】
上記境界識別手段が、上記延出部の上面に設けた凹凸である、請求項6に記載のキーボード。
【請求項8】
上記境界識別手段は、上記延出部に凹部を設けるとともに、ゴム状材料を埋め込んで形成されている、請求項6に記載のキーボード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−159158(P2011−159158A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21316(P2010−21316)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(510030582)有限会社尚学社 (1)
【Fターム(参考)】