ギャップ調整装置及び画像形成装置
【課題】記録部の駆動力を利用して記録部とターゲットとのギャップを調整することが可能なギャップ調整装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】ギャップ調整装置は、インクを記録用紙Pに向けて噴射する記録ヘッド23を支持したキャリッジ19を左右方向にガイドしながら支持するガイド軸14と、キャリッジ19の移動に伴って摺接部31とアームとが係合することによって伝達される動力に基づき回動する回動部材18と、該回動部材18が回動することによって回動するカム17と、該カム17のカム面に当接して支持する支持ピン16とを備える。そして、カム17の回動によりガイド軸14の高さを変更することで、キャリッジ19に支持された記録ヘッド23と記録用紙Pとのギャップ(間隔)が調整される。
【解決手段】ギャップ調整装置は、インクを記録用紙Pに向けて噴射する記録ヘッド23を支持したキャリッジ19を左右方向にガイドしながら支持するガイド軸14と、キャリッジ19の移動に伴って摺接部31とアームとが係合することによって伝達される動力に基づき回動する回動部材18と、該回動部材18が回動することによって回動するカム17と、該カム17のカム面に当接して支持する支持ピン16とを備える。そして、カム17の回動によりガイド軸14の高さを変更することで、キャリッジ19に支持された記録ヘッド23と記録用紙Pとのギャップ(間隔)が調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの画像形成装置及び該画像形成装置に備えられるギャップ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャリッジ(記録部)に設けられた記録ヘッド(記録部)からインク滴(流体)を記録用紙(ターゲット)に対して噴射する画像形成装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う)が知られている。このようなプリンタでは、キャリッジを主走査方向にガイドしながら支持するガイド軸が備えられており、キャリッジをガイド軸に沿って主走査方向に往復移動させながらプラテン上に給送された記録用紙に対して記録ヘッドからインク滴を噴射することで印刷が行われる。
【0003】
また、こうしたプリンタでは、印刷がなされる記録用紙は用途に応じて種々の厚みのものが使用されるとともに、記録ヘッドから記録用紙の表面へのインク滴の噴射は記録ヘッドと記録用紙とを相対移動させながら行われる。このため、使用される記録用紙の厚みが変わると、記録ヘッドと記録用紙の表面との間隔が変わってしまい、インク滴の着弾位置がずれるなどの印刷精度の低下を招くこととなる。そこで、従来から、用紙(ターゲット)の厚みに応じてキャリッジ(記録部)を上下方向に移動させることにより、記録ヘッドと用紙とのギャップを適正に調節するギャップ調節手段(ギャップ調整装置)を備えたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この特許文献1のプリンタでは、キャリッジガイド軸(ガイド軸)の軸端にギャップ調節カム(カム)が取り付けられるとともに、ギャップ調節カムと隣接する位置にカムフォロアとして機能する固定ピンが固設されている。そして、特許文献1のプリンタでは、キャリッジガイド軸を回転させることによりギャップ調節カムを回転させ、該ギャップ調節カムの回転に伴うカム作用によりキャリッジガイド軸の軸芯位置を上下方向に移動させることで、記録ヘッドと用紙とのギャップを調節するようにしている。
【特許文献1】特開2007−1071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンタでは、記録ヘッドと用紙とのギャップを調節する際に、用紙を給送するためのPFモータの駆動力を利用してキャリッジガイド軸を回転させている。このため、用紙を給送する際にPFモータに過剰な負荷がかかり、用紙が円滑に給送されなくなるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録部の駆動力を利用して記録部とターゲットとのギャップを調整することが可能なギャップ調整装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のギャップ調整装置は、記録部をターゲットに対向させた状態で走査可能に支持するとともに、前記記録部と前記ターゲットとのギャップを調整可能に移動するガイド軸と、該ガイド軸と直接的または間接的に係合するとともに、回動することにより前記ガイド軸を移動させるカム部と、該カム部とともに回動する回動部材と、該回動部材に備えられるとともに、該回動部材の回動軸線に対して略放射方向に延びるアーム部と、前記記録部が主走査方向に移動することで前記アーム部と係合し、該アーム部を介して前記回動部材を回動させる回動手段とを備えた。
【0008】
この構成によれば、記録部を主走査方向に移動させることで、回動手段によりアーム部を介して回動される回動部材とともにカム部が回動するため、ガイド軸が移動される。したがって、記録部の駆動力を利用して記録部とターゲットとの間隔を調整することが可能となる。
【0009】
本発明のギャップ調整装置において、前記回動手段は、前記記録部とともに主走査方向に移動する摺接部を備えており、前記記録部が主走査方向に移動する際に、前記アーム部が前記摺接部を摺動することにより前記回動部材が回動される。
【0010】
この構成によれば、アーム部が摺接部を摺動することにより、記録部の駆動力を回動部材に対して確実に伝達することが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記摺接部は、前記記録部が往動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第1斜面と、前記記録部が復動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第2斜面とを備えている。
【0011】
この構成によれば、回動部材を回動する際の記録部の移動幅を小さくすることが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記アーム部は、少なくとも3つのアームを備えている。
【0012】
この構成によれば、回動部材において、各アームを回動部材の周方向に沿って等間隔で配置することで、回動手段により回動部材を円滑に回動させることが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記アーム部は、複数のアームを備えており、該各アームのうち一のアームが前記回動手段と係合する際の負荷は、前記各アームのうち前記一のアーム以外の他のアームが前記回動手段と係合する際の負荷と異なる。
【0013】
この構成によれば、各アームが回動手段と係合する際の負荷をそれぞれ検出することで、回動手段と係合しているアームが一のアームであるか否かを判定することが可能となる。
【0014】
本発明のギャップ調整装置において、前記各アームと前記回動手段とが係合する際の負荷を検出する負荷検出手段と、該負荷検出手段による検出結果に基づいて、前記一のアームと前記回動手段との係合に対応した前記カム部の初期位置を判定する判定手段とをさらに備えた。
【0015】
この構成によれば、カム部の初期位置が一のアームと回動手段との係合に対応しているため、一のアームと回動手段とが係合する際の負荷に基づいてカム部の初期位置を確実に判定することが可能となる。
【0016】
本発明のギャップ調整装置において、前記カム部は、前記ガイド軸と同一軸線で一体回動するカムによって構成されている。
この構成によれば、カム部の構成を簡単にすることが可能となる。
【0017】
本発明のギャップ調整装置において、前記回動部材は、前記ガイド軸の両端部側のうち少なくとも一端部側に配設されている。
この構成によれば、回動部材をガイド軸と同一軸線で一体回動させることで、回動部材を効率よく回動させることが可能となる。
【0018】
本発明の画像形成装置は、上記構成のギャップ調整装置を備えた。
この構成によれば、上記したギャップ調整装置と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明をインクジェット式プリンタに具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。なお、特に説明がない限り、以下の記載における前後方向、上下方向及び左右方向は、図1に示したインクジェット式プリンタを基準とした前後方向、上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置としてのインクジェット式プリンタ11は、このインクジェット式プリンタ11の装置全体を覆う略有底長四角箱状の本体ケース12を備えている。本体ケース12の左右両側壁における上端部寄りの位置には、上下方向に長い長孔13が互いに対向するようにそれぞれ貫通形成されている。本体ケース12の左右両側壁間には丸棒状のガイド軸14が左右方向に延びるように配置され、ガイド軸14の両端部は両長孔13にそれぞれ挿通されている。
【0021】
このガイド軸14は、その外径が長孔13における前後方向の幅とほぼ同じになるように設定されており、長孔13内に挿通された両端部が該長孔13に沿って摺動可能になっている。したがって、ガイド軸14は、長孔13により、上下方向の移動が許容されるとともに、前後方向の移動が規制されるようになっている。また、ガイド軸14の両端は、両長孔13を本体ケース12の外側からそれぞれ覆う円板状の蓋体15の中心部にそれぞれ連結されており、両蓋体15における本体ケース12側の面は、本体ケース12の左右両側面にそれぞれ摺接している。
【0022】
本体ケース12の左右両側壁の内面における長孔13の下側には、本体ケース12の内側に向かって突出する支持ピン16がそれぞれ設けられている。一方、ガイド軸14の両端部における本体ケース12の左右両側壁の内面から少し離れた位置には、カム部としての板状をなすカム17がそれぞれ設けられている。
【0023】
図2に示すように、カム17には断面視において真円の一部(図2では下端部)を直線で切り欠いたD字状をなす貫通孔17aが形成されており、該貫通孔17aにガイド軸14が嵌入されている。すなわち、ガイド軸14におけるカム17の貫通孔17aに嵌入される部分の断面形状は、貫通孔17aの形状と対応している。また、カム17は、該カム17の周面で構成されるカム面17bの形状がガイド軸14の軸線Lを中心とした場合に非真円となる多角形(本実施形態では32角形)の形状をしており、このカム面17bにおいて支持ピン16に支持されている。
【0024】
また、図1に示すように、ガイド軸14の右端部側には、カム17の左側面に隣接するように、歯車状の回動部材18が設けられている。この回動部材18には、図2に示すように、カム17の貫通孔17aと対応する貫通孔18aが形成されており、該貫通孔18aにガイド軸14の右端部が嵌入されている。すなわち、ガイド軸14における回動部材18の貫通孔18aに嵌入される部分の断面形状は、貫通孔18aの形状と対応している。そして、ガイド軸14の軸線Lは、回動部材18の回動軸線と一致している。
【0025】
回動部材18は、貫通孔18aが形成された円板状の本体部18bと、該本体部18bの周面に軸線Lを中心として放射方向に延びるように設けられた複数(本実施形態では8つ)のアーム18cとを備えている。この場合、各アーム18cは、回動部材18の周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、各アーム18cによりアーム部が構成されている。
【0026】
図4に示すように、アーム18cは、その基端部が断面略四角形状をなすとともに、その先端面が略三角形状をなしている。すなわち、アーム18cは、四角柱を、該四角柱の先端面における互いに対角線上で対向する2つの頂点と該四角柱の基端部断面における一つの頂点とを通る仮想平面で切断した場合に得られる立体形状をなしている。そして、そのような仮想平面で切断されたアーム18cの切断面は、アーム18cの基端から先端に向かうほどアーム18cの断面積を次第に小さくするように三角形のテーパ状をなす摺接面18dとされている。
【0027】
図1に示すように、ガイド軸14には、記録部を構成するキャリッジ19が、該ガイド軸14に沿って主走査方向である左右方向に移動可能に支持されている。すなわち、図3に示すように、キャリッジ19の後面下部には左右方向に延びる円筒状の支持筒19aが設けられており、該支持筒19aにガイド軸14が挿通されることで、キャリッジ19はガイド軸14に支持されている。
【0028】
図1に示すように、本体ケース12の後壁内面においてガイド軸14の両端部と対応する位置には、駆動プーリ9及び従動プーリ10が回転自在に支持されている。駆動プーリ9にはキャリッジ19をガイド軸14に沿って往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ20が連結され、これら一対のプーリ9,10間にはキャリッジ19を固定支持したタイミングベルト21が掛装されている。
【0029】
従って、キャリッジ19は、ガイド軸14にガイドされながら、キャリッジモータ20の駆動によりタイミングベルト21を介して主走査方向(左右方向)に移動可能となっている。なお、キャリッジモータ20は、本体ケース12内に設けられた負荷検出手段及び判定手段としての制御部22と電気的に接続されており、該制御部22によって駆動状態が制御されるようになっている。
【0030】
キャリッジ19の下端部には記録部を構成する記録ヘッド23が支持されている。記録ヘッド23の下面はノズル形成面23aとされており、該ノズル形成面23aには図示しない複数のノズルが開口している。また、キャリッジ19における記録ヘッド23の上側には、インクカートリッジ24が着脱可能に搭載されている。インクカートリッジ24内には、インクが記録ヘッド23に供給可能に収容されている。
【0031】
本体ケース12内におけるキャリッジ19の下方には、左右方向に延びるプラテン25が設けられている。プラテン25はターゲットとしての記録用紙Pを支持する支持台であり、該プラテン25の上面には図示しない紙送り機構が設けられている。この紙送り機構は、図示しない紙送りモータの駆動により、前方に向かって記録用紙Pを給送(移動)するようになっている。
【0032】
そして、キャリッジ19がガイド軸14に沿って往復移動されながら印刷データに基づいて記録ヘッド23内に備えられた圧電素子(図示略)が駆動されると、記録ヘッド23の各ノズル(図示略)からインクが、前方に向かって給送される記録用紙Pに対してそれぞれ噴射され、記録用紙Pに印刷が行われるようになっている。
【0033】
本体ケース12内の右端部には、印刷を行うことのない非印刷領域が設けられており、該非印刷領域に非印刷時におけるキャリッジ19の待機位置であるホームポジションHPが設けられている。このホームポジションHPの下側には、記録ヘッド23のクリーニングを行うためのクリーニング機構26が備えられている。このクリーニング機構26は、キャップ27、排出チューブ28及び吸引ポンプ29を備えている。
【0034】
キャップ27は、その上面が開口した略有底四角箱状をなしており、非印刷領域に設けられた図示しない昇降機構によって、上下方向に往復移動可能に支持されている。キャップ27の内底壁には、該内底壁を上下方向に貫通する吸引孔27aが形成されている。そして、キャリッジ19がホームポジションHPに移動した状態でキャップ27が上昇されると、キャップ27が記録ヘッド23に当接されて各ノズル(図示略)が封止されるようになっている。
【0035】
キャップ27の吸引孔27aには排出チューブ28の一端が接続され、その排出チューブ28の他端はプラテン25の下方における本体ケース12内の底面上に設けられたインク回収タンク30内に挿入されている。したがって、キャップ27内とインク回収タンク30内とは、排出チューブ28を介して連通している。また、排出チューブ28の途中位置には、キャップ27内をインク回収タンク30側に向かって吸引する吸引ポンプ29が設けられている。
【0036】
そして、この吸引ポンプ29を駆動することにより、記録ヘッド23の各ノズル(図示略)から増粘したインクや気泡がキャップ27内及び排出チューブ28内を介してインク回収タンク30内に排出されることで、記録ヘッド23のクリーニングが行われるようになっている。
【0037】
また、図1及び図3に示すように、キャリッジ19の右面における後側の下端部には、キャリッジ19の往復移動に伴ってアーム18cに対して回動部材18の回動軸線(=ガイド軸14の軸線L)方向から摺接して回動部材18を回動させるためのブロック状の回動手段としての摺接部31が設けられている。図3及び図4に示すように、摺接部31の後面における左下部には前後方向から見て台形状の第1斜面形成部32が後方に向かって突出するように設けられているとともに、摺接部31の後面における右上部には前後方向から見て右側が高くなるように傾斜した長四角形状の第2斜面形成部33が後方に向かって突出するように設けられている。そして、第1斜面形成部32と第2斜面形成部33との間隔は、回動部材18のアーム18cが通過できる程度に設定されている。
【0038】
図4に示すように、第1斜面形成部32の右面は右側が低くなるように傾斜した第1斜面32aとされているとともに、第1斜面形成部32の上面は水平なフラット面32bとされている。一方、第2斜面形成部33の上面は、右側が高くなるように傾斜した第2斜面33aとされている。また、第1斜面形成部32の第1斜面32aは、回動部材18のアーム18cの摺接面18dと対応している。そして、第1斜面形成部32のフラット面32bと第2斜面形成部33の第2斜面33aの下端とは、同じ高さになるように設定されている。
【0039】
なお、本実施形態では、ガイド軸14、支持ピン16、カム17、回動部材18、及びキャリッジ19によりギャップ調整装置が構成されている。そして、このギャップ調整装置は、記録ヘッド23とプラテン25とのギャップ(間隔)であるプラテンギャップPGを調整することで、記録ヘッド23とプラテン25上に給送された記録用紙Pとのギャップ(間隔)を調整するものである。
【0040】
ここで、プラテンギャップPGの調整方法について説明する。
さて、プラテンギャップPGを調整する場合には、図5(a)、(b)に示すように、まず、キャリッジモータ20(図1参照)を駆動することによりキャリッジ19(図4参照)をホームポジションHPに移動させて、摺接部31が回動部材18の近傍位置に配置された状態にする。この状態で、キャリッジ19(図4参照)をさらに非印刷領域側の方向である右方向に移動(往動)させると、図6(a)、(b)に示すように、摺接部31と回動部材18の1つのアーム18cとが係合する。すなわち、第1斜面形成部32の第1斜面32aにアーム18cの摺接面18dが摺接する。
【0041】
引き続き、キャリッジ19(図4参照)をさらに右方向に移動(往動)させると、図7(a)、(b)に示すように、アーム18cの摺接面18dが第1斜面形成部32の第1斜面32aに摺接しながらアーム18cが第1斜面32aに沿って上昇する。このアーム18cの上昇にともなって、回動部材18がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向(図7(a)において矢印で示す方向;所定方向)に回動する。
【0042】
そして、この回動部材18の回動にともなってガイド軸14がその軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に回動し、さらにこのガイド軸14の回動にともなってカム17がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に回動する。すなわち、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、ガイド軸14の軸線Lを中心として一体に回動する。
【0043】
そして、アーム18cが第1斜面32aを上昇しきると、アーム18cにおける摺接面18dの下側に隣接する面がフラット面32bに摺接しながらアーム18cが摺接部31に対して左方向に相対移動し、アーム18cの左端がキャリッジ19(図4参照)の右面に当接する。アーム18cの左端がキャリッジ19(図4参照)の右面に当接すると、今度はキャリッジ19(図4参照)を印刷領域側の方向である左方向に移動(復動)させる。
【0044】
すると、図8(a)、(b)に示すように、アーム18cにおける右下のコーナ部が第2斜面形成部33の第2斜面33aの下端に摺接する。この状態で、キャリッジ19(図4参照)をさらに左方向に移動(復動)させると、図9(a)、(b)に示すように、アーム18cにおける右下のコーナ部が第2斜面33aに摺接しながらアーム18cが第2斜面33aに沿って上昇する。このアーム18cの上昇にともなって、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向(図9(a)において矢印で示す方向;所定方向)に回動する。
【0045】
このように、キャリッジ19(図4参照)を左右方向に往復移動させることで、回動部材18及びガイド軸14を介してカム17が回動すると、カム17のカム面17bが固定配置された状態にある支持ピン16に摺動し、カム17のカム面17bにおいては支持ピン16によるカム17の支持位置が変化する。このため、ガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離が変化するため、キャリッジ19を支持するガイド軸14の高さが変化する。したがって、キャリッジ19及び該キャリッジ19に支持された記録ヘッド23の高さが変化するため、プラテンギャップPGも変化する。
【0046】
よって、ガイド軸14の軸線Lを中心としたカム17の回動角における所定角度毎にガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離を設定しておけば、カム17の回動角を調整することで、プラテンギャップPGを所望の値に調整することができる。そこで、図10には、本実施形態におけるガイド軸14の軸線Lを中心としたカム17の所定回動角毎のガイド軸14の軸線Lと支持ピン16(または、カム17のカム面17b)との距離が示されている。
【0047】
図10に示すように、本実施形態では、キャリッジ19(摺接部31)が右方向の非印刷領域側と左方向の印刷領域側との間を1往復移動すると、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動する。すなわち、キャリッジ19(摺接部31)が右方向へ往動するとカム17が右側から見て時計回り方向に22.5度だけ回動し、摺接部31が左方向へ復動するとカム17が右側から見て時計回り方向にさらに22.5度だけ回動する。
【0048】
また、本実施形態では、ガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離がD1のとき、すなわちプラテンギャップPGがPG1のときに、カム17の回動角を0度とするように設定されている。そして、このカム17の回動角が0度のときのカム17の位置がカム17の初期位置であるホームポジション(以下、「カムHP」という)とされている(図2に示す状態)。
【0049】
また、図10及び図11に示すように、本実施形態では、カム17がカムHPにあるときのプラテンギャップPG(PG1)をプラテンギャップポジション(以下、「PGポジション」という)1としている。さらに、カムHPからカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG2)をPGポジション2としている。
【0050】
またさらに、PGポジション2からカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG3)をPGポジション3としている。またさらに、PGポジション3からカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として180度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG7)をPGポジション4としている。
【0051】
したがって、図11に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンタ11では、PGポジション1〜4までの4段階でプラテンギャップPGを切り替えることが可能となっている。また、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、右側から見て時計回り方向の一方向にしか回動できない。このため、プラテンギャップPGをPGポジション1からPGポジション2に変更する場合にはキャリッジ19(摺接部31)を1往復移動させるだけでよいが、プラテンギャップPGをPGポジション2からPGポジション1に変更する場合にはキャリッジ19(摺接部31)を7往復移動させる必要がある。
【0052】
そこで、図12に、PGポジション1〜4において、プラテンギャップPGを現PGポジションから変更したい目標PGポジションに変更するために必要なキャリッジ19(摺接部31)の往復移動回数が示されたテーブルを示した。この図12に示すテーブルは、上記した制御部22に予め記憶されている。
【0053】
また、回動部材18のアーム18cのうち、カム17の位置がカムHPに戻るときに摺接部31と最後に係合するアーム(以下、「ラストアーム」ともいう)18cは、該ラストアーム18c(一のアーム)以外の他のアーム18cよりも左右方向の幅が若干大きくなるように設定されている。このため、図10に示すように、カム17の回動角が315度から337.5度になる際、すなわちキャリッジ19(摺接部31)が非印刷領域側の方向である右方向へ往動する際には、ラストアーム18cは他のアーム18cよりも若干早くキャリッジ19の右面に当接する。
【0054】
したがって、キャリッジ19(摺接部31)が非印刷領域側の方向である右方向へ往動する際には、ラストアーム18cは他のアーム18cよりも右方向への往動量が若干少なくなる。この場合、ラストアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20にかかる負荷は、他のアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20にかかる負荷よりも大きくなる。
【0055】
すなわち、ラストアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20の駆動電流値は、他のアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20の駆動電流値よりも大きくなる。したがって、キャリッジモータ20の駆動電流値に所定の閾値Nを設定することで、キャリッジモータ20の駆動電流値に基づいて、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18cであるか他のアーム18cであるかを制御部22が判定することができる。
【0056】
すなわち、キャリッジモータ20の駆動電流値が閾値N以上であれば、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18cであり、キャリッジモータ20の駆動電流値が閾値Nよりも小さければ、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18c以外の他のアーム18cであることが分かる。
【0057】
よって、制御部22は、カム17の回動角が337.5度のときにおいて、次のキャリッジ19(摺接部31)の印刷領域側の方向である左方向への復動後にカム17の位置がカムHPに戻ることを認識することができる。したがって、摺接部31とラストアーム18cとの係合は、カムHPに対応していると言える。なお、上記した閾値Nは、制御部22に予め記憶されている。
【0058】
次に、本実施形態の制御部22が実行する制御処理ルーチンのうち、インクジェット式プリンタ11の電源オン時にカム17をカムHPに戻すためのカムHPリセット処理ルーチンについて、図13に基づき説明する。
【0059】
さて、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することにより、ホームポジションHPにあるキャリッジ19を非印刷領域側の方向(右方向)に移動(往動)させて、摺接部31を回動部材18のアーム18cに係合させる(ステップS1)。続いて制御部22は、ステップS1におけるキャリッジモータ20の駆動電流値が閾値N以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0060】
ステップS2の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、その処理を後述するステップS3に移行する。一方、ステップS2の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することによりキャリッジ19を印刷領域側の方向(左方向)に移動(復動)させた後、その処理をステップS1に移行する(ステップS4)。
【0061】
ステップS3において、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することによりキャリッジ19を印刷領域側の方向(左方向)に移動(復動)させる。続いて制御部22は、プラテンギャップPGをPG1として記憶する(ステップS5)。すなわち、制御部22は、カム17の位置がカムHPにあることを記憶する。その後、制御部22は、カムHPリセット処理ルーチンを終了する。
【0062】
次に、本実施形態の制御部22が実行する制御処理ルーチンのうち、プラテンギャップPGを認識するためのPG認識処理ルーチンについて、図14に基づき説明する。
さて、制御部22は、現プラテンギャップPGを確認し(ステップS11)、現プラテンギャップPGが不明であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、その処理を後述するステップS13に移行する。一方、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、上述したカムHPリセット処理ルーチンを実行した後、その処理をステップS11に移行する(ステップS14)。
【0063】
ステップS13において、制御部22は、インクジェット式プリンタ11に接続されたパーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの外部装置から入力される印刷信号に基づいて、あるいは、インクジェット式プリンタ11に設けられた切替スイッチからの制御信号に基づいて、所望のプラテンギャップPGである目標プラテンギャップPGを確認する。続いて制御部22は、現プラテンギャップPGが目標プラテンギャップPGであるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、PG認識処理ルーチンを終了する。
【0064】
一方、ステップS15の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、現プラテンギャップPGを目標プラテンギャップPGにするために必要なキャリッジ19の往復移動回数を図12に示したテーブルに基づいて計算する(ステップS16)。続いて制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することにより、ステップS16の計算結果の回数分だけキャリッジ19を往復移動させて回動部材18を回動させる(ステップS17)。
【0065】
続いて制御部22は、現プラテンギャップPGを目標プラテンギャップPGとして記憶する(ステップS18)。その後、制御部22は、PG認識処理ルーチンを終了する。
以上、詳述した第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(1)キャリッジ19を主走査方向(左右方向)に往復移動させることで、キャリッジ19の下端部に支持された記録ヘッド23が記録用紙Pに対して近接または離間する方向(上下方向)に移動するように、キャリッジ19を支持したガイド軸14を移動する(ガイド軸14の高さを変更する)ことができる。したがって、キャリッジ19の駆動力を利用してプラテンギャップPGを調整することで、キャリッジ19の下端部に支持された記録ヘッド23と記録用紙Pとのギャップ(間隔)を調整することができる。
【0067】
(2)カム部は、ガイド軸14と同一の軸線Lを中心に一体回動するカム17によって構成されているため、カム部の構成を簡単にすることができる。
(3)回動部材18はガイド軸14の右端部側のみに配設されているとともにガイド軸14と同一の軸線Lを中心に一体回動するように構成されているため、該回動部材18を効率よく回動させることができる。
【0068】
(4)回動部材18には、該回動部材18の回動軸線でもあるガイド軸14の軸線Lを中心として放射方向に延びる8つのアーム18cが設けられており、キャリッジ19には、該キャリッジ19が往復移動する際にアーム18cが摺接(係合)して回動部材18を回動させるための摺接部31が設けられている。このため、キャリッジ19の駆動力を回動部材18に対して効率よく確実に伝達することができる。
【0069】
(5)摺接部31は、キャリッジ19が往動(右方向に移動)する際にアーム18cが摺接する第1斜面32aと、キャリッジ19が復動(左方向に移動)する際にアーム18cが摺接する第2斜面33aとを備えている。このため、回動部材18を回動する際のキャリッジ19の左右方向における往復移動幅(振幅)を小さくすることができる。したがって、インクジェット式プリンタ11の小型化に寄与することができる。
【0070】
(6)アーム18cにおける摺接部31の第1斜面32aに摺接する面は、該第1斜面32aと対応するテーパ状になっている。このため、回動部材18を回動するためにキャリッジ19を往動させる場合に、第1斜面32aにアーム18cを円滑に摺動させることができる。
【0071】
(7)カムHPがラストアーム18cと摺接部31との係合に対応しているため、ラストアーム18cと摺接部31とが係合する際にキャリッジモータ20にかかる負荷を制御部22によって検出することで、該制御部22によりカムHPを確実に判定することができる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図15及び図16に示すように、この第2実施形態は、上記第1実施形態におけるブロック状をなす摺接部31の代わりに、後面から見てL字状をなすレバー部材40を摺接部として用いたものである。すなわち、レバー部材40は、前後方向に延びる円筒状の支点部41と、該支点部41の上面から左上方に延びる略四角柱状の作動部42と、支点部41の右面から右上方に向かって延びる略四角柱状の押圧部43とを備えている。この場合、作動部42と押圧部43とのなす角は、90度になっている。
【0073】
そして、レバー部材40は、ガイド軸14の右端部近傍においてガイド軸14の後側かつ回動部材18の左側に位置しており、支点部41において本体ケース12(図1参照)内の後面から延びる支持軸44によって軸支されている。すなわち、レバー部材40の支点部41に支持軸44の先端部が挿通されており、レバー部材40が支持軸44を中心として回動可能になっている。レバー部材40の作動部42の左面にはコイルばね45の一端が接続され、該コイルばね45の他端は作動部42の後斜め左方向延長線上における本体ケース12(図1参照)内の後面に接続されている。
【0074】
また、レバー部材40において、押圧部43は該押圧部43の基端部において前後方向に延びる軸46により支点部41に軸支されている。この場合、押圧部43は、軸46を中心として後方から見て時計回り方向への回動が規制されているとともに、軸46を中心として後方から見て反時計回り方向への傾動が許容されている。
【0075】
さらに、レバー部材40には、押圧部43が軸46を中心として後方から見て反時計回り方向へ傾動した場合に、押圧部43を傾動前の状態(作動部42と90度で交差する状態)に戻す図示しない戻し機構が設けられている。なお、押圧部43は、その先端部において回動部材18のアーム18cと摺接しながらの係合が可能になっている。
【0076】
また、キャリッジ19の支持筒19aにおける右端部には、後方に延びる係合突起47が設けられている。係合突起47は、キャリッジ19を非印刷領域に移動させた場合に、レバー部材40の作動部42の左面におけるコイルばね45の接続位置よりも上側に当接するようになっている。
【0077】
また、この第2実施形態では、回動部材18の外径が第1実施形態の回動部材18の外径よりも若干大きくなっており、アーム18cの数が12個になっている。さらに、この第2実施形態ではアーム18cが略三角柱状になっている。
【0078】
さて、図16に示すように、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動すると、レバー部材40の作動部42が係合突起47によって右方向に押圧される。すると、レバー部材40が、コイルばね45の付勢力に抗して、支持軸44を中心として後方から見て反時計回り方向へ回動された状態となる(図16の2点鎖線で示す状態)。このとき、レバー部材40の押圧部43の先端部が回動部材18のアーム18cと係合するため、押圧部43によってアーム18cが押し下げられる。
【0079】
すると、回動部材18がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に所定角度(この第2実施形態では30度)だけ回動する。この回動部材18の回動にともなって、第1実施形態と同様に、カム17が回動してガイド軸14の高さが変化され、プラテンギャップPGが所定距離だけ変化する。
【0080】
一方、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動すると、レバー部材40が、コイルばね45の付勢力によって、支持軸44を中心として後方から見て時計回り方向へ回動されて元に位置に戻った状態となる(図16の実線で示す状態)。このとき、レバー部材40の押圧部43は、該押圧部43が押し下げたアーム18cの上隣のアーム18cの下面に当接するが、軸46を中心として後方から見て反時計回り方向へ傾動するため、この当接したアーム18cを押し上げることはなく、回動部材18の回動に影響を及ぼさない。そして、押圧部43は、アーム18cから離間すると、図示しない戻し機構により傾動前の元の状態に戻る。
【0081】
以上のようにして、プラテンギャップPGが所望の値になるまで、キャリッジ19を非印刷領域において左右方向に繰り返し往復移動することで、第1実施形態と同様に、プラテンギャップPGの調整が行われる。
【0082】
以上、詳述した第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(8)キャリッジ19を非印刷領域において左右方向に往復移動しなくても、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動(往動)するだけで、回動部材18を所定角度分だけ回動させることができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0083】
・第1実施形態において、摺接部31の第2斜面形成部33を省略してもよい。この場合、第1斜面形成部32の第1斜面32aを長くして、キャリッジ19の右方向への移動(往動)だけで回動部材18(カム17)が45度回動するように構成する必要がある。
【0084】
・第1実施形態において、ガイド軸14の左端部にもカム17の右側面に隣接するように回動部材18を設けてもよい。この場合、キャリッジ19の左面に、上下を逆にした摺接部31を設ける必要がある。このようにすれば、ガイド軸14の左端部に設けた回動部材18を、ガイド軸14の右端部に設けた回動部材18の回動方向とは逆方向に回動することができる。このため、カム17を正逆両方向に回動させることができるので、プラテンギャップPGをPGポジション1〜4の間で素早く切り替えることができる。すなわち、プラテンギャップPGをPGポジション2からPGポジション1へ切り替える場合でも、その切り替え動作を素早く行うことができる。
【0085】
・第1実施形態において、回動部材18のアーム18cの摺接面18dは、必ずしも設ける必要はない。
・第1実施形態において、PGポジションをPGポジション1〜4の4段階に設定したが、PGポジションを5段階以上に設定してもよいし、あるいはPGポジションを2段階や3段階に設定してもよい。ただし、第1実施形態では、PGポジションは最高8段階までしか設定できない。なお、PGポジションの組み合わせは、この8段階のPGポジションから任意に2つ以上を組み合わせてもよい。
【0086】
・第1及び第2実施形態において、ガイド軸14、カム17、及び回動部材18は、これらのうち少なくとも1つが他と異なる軸線を中心に回動するように構成してもよい。この場合、回動部材18の回動力が、ガイド軸14及びカム17に伝達されるように歯車などの動力伝達機構を設ける必要がある。
【0087】
・第1及び第2実施形態において、カム17と回動部材18とは、一体に形成してもよい。すなわち、回動部材18の一部をカム部としてもよい。このようにすれば、部品点数を減らすことができる。
【0088】
・第1及び第2実施形態において、回動部材18のアーム18cは、円柱状や楕円柱状にしてもよいし、あるいは5角柱状や6角柱状などの多角柱状にしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、回動部材18のアーム18cの数は、3つ以上であれば、4つや5つなど任意の数に設定してもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、画像形成装置は、インクカートリッジをインクジェット式プリンタにおけるキャリッジ上以外の場所に設置し、該インクカートリッジのインクをインク供給チューブによって記録ヘッドに供給するようにした、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタであってもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、画像形成装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、ドットインパクトプリンタや熱転写プリンタなどに具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式プリンタの正断面図。
【図2】図1の要部断面図。
【図3】第1実施形態において、キャリッジを後斜め右方向から見たときの斜視図。
【図4】第1実施形態において、摺接部と回動部材との位置関係を示す要部拡大図。
【図5】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図6】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図7】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図8】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図9】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図10】第1実施形態において、カムの回動角とプラテンギャップとの関係を示す説明図。
【図11】第1実施形態において、PGポジションとプラテンギャップとの関係を示す表。
【図12】第1実施形態において、現PGポジションから目標PGポジションへ変更するために必要なキャリッジの往復移動回数を示すテーブル。
【図13】第1実施形態において、カムHPリセット処理ルーチンを示すフローチャート。
【図14】第1実施形態において、PG認識処理ルーチンを示すフローチャート。
【図15】第2実施形態において、キャリッジを後斜め右方向から見たときの斜視図。
【図16】図15の後面図。
【符号の説明】
【0092】
11…画像形成装置としてのインクジェット式プリンタ、14…ガイド軸、17…カム部としてのカム、18…回動部材、18c…アーム部を構成するアーム、19…記録部を構成するキャリッジ、22…負荷検出手段及び判定手段としての制御部、23…記録部を構成する記録ヘッド、31…回動手段としての摺接部、32a…第1斜面、33a…第2斜面、P…ターゲットとしての記録用紙。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンタなどの画像形成装置及び該画像形成装置に備えられるギャップ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャリッジ(記録部)に設けられた記録ヘッド(記録部)からインク滴(流体)を記録用紙(ターゲット)に対して噴射する画像形成装置として、インクジェット式プリンタ(以下、単に「プリンタ」と言う)が知られている。このようなプリンタでは、キャリッジを主走査方向にガイドしながら支持するガイド軸が備えられており、キャリッジをガイド軸に沿って主走査方向に往復移動させながらプラテン上に給送された記録用紙に対して記録ヘッドからインク滴を噴射することで印刷が行われる。
【0003】
また、こうしたプリンタでは、印刷がなされる記録用紙は用途に応じて種々の厚みのものが使用されるとともに、記録ヘッドから記録用紙の表面へのインク滴の噴射は記録ヘッドと記録用紙とを相対移動させながら行われる。このため、使用される記録用紙の厚みが変わると、記録ヘッドと記録用紙の表面との間隔が変わってしまい、インク滴の着弾位置がずれるなどの印刷精度の低下を招くこととなる。そこで、従来から、用紙(ターゲット)の厚みに応じてキャリッジ(記録部)を上下方向に移動させることにより、記録ヘッドと用紙とのギャップを適正に調節するギャップ調節手段(ギャップ調整装置)を備えたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この特許文献1のプリンタでは、キャリッジガイド軸(ガイド軸)の軸端にギャップ調節カム(カム)が取り付けられるとともに、ギャップ調節カムと隣接する位置にカムフォロアとして機能する固定ピンが固設されている。そして、特許文献1のプリンタでは、キャリッジガイド軸を回転させることによりギャップ調節カムを回転させ、該ギャップ調節カムの回転に伴うカム作用によりキャリッジガイド軸の軸芯位置を上下方向に移動させることで、記録ヘッドと用紙とのギャップを調節するようにしている。
【特許文献1】特開2007−1071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンタでは、記録ヘッドと用紙とのギャップを調節する際に、用紙を給送するためのPFモータの駆動力を利用してキャリッジガイド軸を回転させている。このため、用紙を給送する際にPFモータに過剰な負荷がかかり、用紙が円滑に給送されなくなるおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録部の駆動力を利用して記録部とターゲットとのギャップを調整することが可能なギャップ調整装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のギャップ調整装置は、記録部をターゲットに対向させた状態で走査可能に支持するとともに、前記記録部と前記ターゲットとのギャップを調整可能に移動するガイド軸と、該ガイド軸と直接的または間接的に係合するとともに、回動することにより前記ガイド軸を移動させるカム部と、該カム部とともに回動する回動部材と、該回動部材に備えられるとともに、該回動部材の回動軸線に対して略放射方向に延びるアーム部と、前記記録部が主走査方向に移動することで前記アーム部と係合し、該アーム部を介して前記回動部材を回動させる回動手段とを備えた。
【0008】
この構成によれば、記録部を主走査方向に移動させることで、回動手段によりアーム部を介して回動される回動部材とともにカム部が回動するため、ガイド軸が移動される。したがって、記録部の駆動力を利用して記録部とターゲットとの間隔を調整することが可能となる。
【0009】
本発明のギャップ調整装置において、前記回動手段は、前記記録部とともに主走査方向に移動する摺接部を備えており、前記記録部が主走査方向に移動する際に、前記アーム部が前記摺接部を摺動することにより前記回動部材が回動される。
【0010】
この構成によれば、アーム部が摺接部を摺動することにより、記録部の駆動力を回動部材に対して確実に伝達することが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記摺接部は、前記記録部が往動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第1斜面と、前記記録部が復動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第2斜面とを備えている。
【0011】
この構成によれば、回動部材を回動する際の記録部の移動幅を小さくすることが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記アーム部は、少なくとも3つのアームを備えている。
【0012】
この構成によれば、回動部材において、各アームを回動部材の周方向に沿って等間隔で配置することで、回動手段により回動部材を円滑に回動させることが可能となる。
本発明のギャップ調整装置において、前記アーム部は、複数のアームを備えており、該各アームのうち一のアームが前記回動手段と係合する際の負荷は、前記各アームのうち前記一のアーム以外の他のアームが前記回動手段と係合する際の負荷と異なる。
【0013】
この構成によれば、各アームが回動手段と係合する際の負荷をそれぞれ検出することで、回動手段と係合しているアームが一のアームであるか否かを判定することが可能となる。
【0014】
本発明のギャップ調整装置において、前記各アームと前記回動手段とが係合する際の負荷を検出する負荷検出手段と、該負荷検出手段による検出結果に基づいて、前記一のアームと前記回動手段との係合に対応した前記カム部の初期位置を判定する判定手段とをさらに備えた。
【0015】
この構成によれば、カム部の初期位置が一のアームと回動手段との係合に対応しているため、一のアームと回動手段とが係合する際の負荷に基づいてカム部の初期位置を確実に判定することが可能となる。
【0016】
本発明のギャップ調整装置において、前記カム部は、前記ガイド軸と同一軸線で一体回動するカムによって構成されている。
この構成によれば、カム部の構成を簡単にすることが可能となる。
【0017】
本発明のギャップ調整装置において、前記回動部材は、前記ガイド軸の両端部側のうち少なくとも一端部側に配設されている。
この構成によれば、回動部材をガイド軸と同一軸線で一体回動させることで、回動部材を効率よく回動させることが可能となる。
【0018】
本発明の画像形成装置は、上記構成のギャップ調整装置を備えた。
この構成によれば、上記したギャップ調整装置と同様の作用効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明をインクジェット式プリンタに具体化した第1実施形態を図面に従って説明する。なお、特に説明がない限り、以下の記載における前後方向、上下方向及び左右方向は、図1に示したインクジェット式プリンタを基準とした前後方向、上下方向及び左右方向と一致するものとする。
【0020】
図1に示すように、画像形成装置としてのインクジェット式プリンタ11は、このインクジェット式プリンタ11の装置全体を覆う略有底長四角箱状の本体ケース12を備えている。本体ケース12の左右両側壁における上端部寄りの位置には、上下方向に長い長孔13が互いに対向するようにそれぞれ貫通形成されている。本体ケース12の左右両側壁間には丸棒状のガイド軸14が左右方向に延びるように配置され、ガイド軸14の両端部は両長孔13にそれぞれ挿通されている。
【0021】
このガイド軸14は、その外径が長孔13における前後方向の幅とほぼ同じになるように設定されており、長孔13内に挿通された両端部が該長孔13に沿って摺動可能になっている。したがって、ガイド軸14は、長孔13により、上下方向の移動が許容されるとともに、前後方向の移動が規制されるようになっている。また、ガイド軸14の両端は、両長孔13を本体ケース12の外側からそれぞれ覆う円板状の蓋体15の中心部にそれぞれ連結されており、両蓋体15における本体ケース12側の面は、本体ケース12の左右両側面にそれぞれ摺接している。
【0022】
本体ケース12の左右両側壁の内面における長孔13の下側には、本体ケース12の内側に向かって突出する支持ピン16がそれぞれ設けられている。一方、ガイド軸14の両端部における本体ケース12の左右両側壁の内面から少し離れた位置には、カム部としての板状をなすカム17がそれぞれ設けられている。
【0023】
図2に示すように、カム17には断面視において真円の一部(図2では下端部)を直線で切り欠いたD字状をなす貫通孔17aが形成されており、該貫通孔17aにガイド軸14が嵌入されている。すなわち、ガイド軸14におけるカム17の貫通孔17aに嵌入される部分の断面形状は、貫通孔17aの形状と対応している。また、カム17は、該カム17の周面で構成されるカム面17bの形状がガイド軸14の軸線Lを中心とした場合に非真円となる多角形(本実施形態では32角形)の形状をしており、このカム面17bにおいて支持ピン16に支持されている。
【0024】
また、図1に示すように、ガイド軸14の右端部側には、カム17の左側面に隣接するように、歯車状の回動部材18が設けられている。この回動部材18には、図2に示すように、カム17の貫通孔17aと対応する貫通孔18aが形成されており、該貫通孔18aにガイド軸14の右端部が嵌入されている。すなわち、ガイド軸14における回動部材18の貫通孔18aに嵌入される部分の断面形状は、貫通孔18aの形状と対応している。そして、ガイド軸14の軸線Lは、回動部材18の回動軸線と一致している。
【0025】
回動部材18は、貫通孔18aが形成された円板状の本体部18bと、該本体部18bの周面に軸線Lを中心として放射方向に延びるように設けられた複数(本実施形態では8つ)のアーム18cとを備えている。この場合、各アーム18cは、回動部材18の周方向に沿って等間隔に配置されている。なお、本実施形態では、各アーム18cによりアーム部が構成されている。
【0026】
図4に示すように、アーム18cは、その基端部が断面略四角形状をなすとともに、その先端面が略三角形状をなしている。すなわち、アーム18cは、四角柱を、該四角柱の先端面における互いに対角線上で対向する2つの頂点と該四角柱の基端部断面における一つの頂点とを通る仮想平面で切断した場合に得られる立体形状をなしている。そして、そのような仮想平面で切断されたアーム18cの切断面は、アーム18cの基端から先端に向かうほどアーム18cの断面積を次第に小さくするように三角形のテーパ状をなす摺接面18dとされている。
【0027】
図1に示すように、ガイド軸14には、記録部を構成するキャリッジ19が、該ガイド軸14に沿って主走査方向である左右方向に移動可能に支持されている。すなわち、図3に示すように、キャリッジ19の後面下部には左右方向に延びる円筒状の支持筒19aが設けられており、該支持筒19aにガイド軸14が挿通されることで、キャリッジ19はガイド軸14に支持されている。
【0028】
図1に示すように、本体ケース12の後壁内面においてガイド軸14の両端部と対応する位置には、駆動プーリ9及び従動プーリ10が回転自在に支持されている。駆動プーリ9にはキャリッジ19をガイド軸14に沿って往復移動させる際の駆動源となるキャリッジモータ20が連結され、これら一対のプーリ9,10間にはキャリッジ19を固定支持したタイミングベルト21が掛装されている。
【0029】
従って、キャリッジ19は、ガイド軸14にガイドされながら、キャリッジモータ20の駆動によりタイミングベルト21を介して主走査方向(左右方向)に移動可能となっている。なお、キャリッジモータ20は、本体ケース12内に設けられた負荷検出手段及び判定手段としての制御部22と電気的に接続されており、該制御部22によって駆動状態が制御されるようになっている。
【0030】
キャリッジ19の下端部には記録部を構成する記録ヘッド23が支持されている。記録ヘッド23の下面はノズル形成面23aとされており、該ノズル形成面23aには図示しない複数のノズルが開口している。また、キャリッジ19における記録ヘッド23の上側には、インクカートリッジ24が着脱可能に搭載されている。インクカートリッジ24内には、インクが記録ヘッド23に供給可能に収容されている。
【0031】
本体ケース12内におけるキャリッジ19の下方には、左右方向に延びるプラテン25が設けられている。プラテン25はターゲットとしての記録用紙Pを支持する支持台であり、該プラテン25の上面には図示しない紙送り機構が設けられている。この紙送り機構は、図示しない紙送りモータの駆動により、前方に向かって記録用紙Pを給送(移動)するようになっている。
【0032】
そして、キャリッジ19がガイド軸14に沿って往復移動されながら印刷データに基づいて記録ヘッド23内に備えられた圧電素子(図示略)が駆動されると、記録ヘッド23の各ノズル(図示略)からインクが、前方に向かって給送される記録用紙Pに対してそれぞれ噴射され、記録用紙Pに印刷が行われるようになっている。
【0033】
本体ケース12内の右端部には、印刷を行うことのない非印刷領域が設けられており、該非印刷領域に非印刷時におけるキャリッジ19の待機位置であるホームポジションHPが設けられている。このホームポジションHPの下側には、記録ヘッド23のクリーニングを行うためのクリーニング機構26が備えられている。このクリーニング機構26は、キャップ27、排出チューブ28及び吸引ポンプ29を備えている。
【0034】
キャップ27は、その上面が開口した略有底四角箱状をなしており、非印刷領域に設けられた図示しない昇降機構によって、上下方向に往復移動可能に支持されている。キャップ27の内底壁には、該内底壁を上下方向に貫通する吸引孔27aが形成されている。そして、キャリッジ19がホームポジションHPに移動した状態でキャップ27が上昇されると、キャップ27が記録ヘッド23に当接されて各ノズル(図示略)が封止されるようになっている。
【0035】
キャップ27の吸引孔27aには排出チューブ28の一端が接続され、その排出チューブ28の他端はプラテン25の下方における本体ケース12内の底面上に設けられたインク回収タンク30内に挿入されている。したがって、キャップ27内とインク回収タンク30内とは、排出チューブ28を介して連通している。また、排出チューブ28の途中位置には、キャップ27内をインク回収タンク30側に向かって吸引する吸引ポンプ29が設けられている。
【0036】
そして、この吸引ポンプ29を駆動することにより、記録ヘッド23の各ノズル(図示略)から増粘したインクや気泡がキャップ27内及び排出チューブ28内を介してインク回収タンク30内に排出されることで、記録ヘッド23のクリーニングが行われるようになっている。
【0037】
また、図1及び図3に示すように、キャリッジ19の右面における後側の下端部には、キャリッジ19の往復移動に伴ってアーム18cに対して回動部材18の回動軸線(=ガイド軸14の軸線L)方向から摺接して回動部材18を回動させるためのブロック状の回動手段としての摺接部31が設けられている。図3及び図4に示すように、摺接部31の後面における左下部には前後方向から見て台形状の第1斜面形成部32が後方に向かって突出するように設けられているとともに、摺接部31の後面における右上部には前後方向から見て右側が高くなるように傾斜した長四角形状の第2斜面形成部33が後方に向かって突出するように設けられている。そして、第1斜面形成部32と第2斜面形成部33との間隔は、回動部材18のアーム18cが通過できる程度に設定されている。
【0038】
図4に示すように、第1斜面形成部32の右面は右側が低くなるように傾斜した第1斜面32aとされているとともに、第1斜面形成部32の上面は水平なフラット面32bとされている。一方、第2斜面形成部33の上面は、右側が高くなるように傾斜した第2斜面33aとされている。また、第1斜面形成部32の第1斜面32aは、回動部材18のアーム18cの摺接面18dと対応している。そして、第1斜面形成部32のフラット面32bと第2斜面形成部33の第2斜面33aの下端とは、同じ高さになるように設定されている。
【0039】
なお、本実施形態では、ガイド軸14、支持ピン16、カム17、回動部材18、及びキャリッジ19によりギャップ調整装置が構成されている。そして、このギャップ調整装置は、記録ヘッド23とプラテン25とのギャップ(間隔)であるプラテンギャップPGを調整することで、記録ヘッド23とプラテン25上に給送された記録用紙Pとのギャップ(間隔)を調整するものである。
【0040】
ここで、プラテンギャップPGの調整方法について説明する。
さて、プラテンギャップPGを調整する場合には、図5(a)、(b)に示すように、まず、キャリッジモータ20(図1参照)を駆動することによりキャリッジ19(図4参照)をホームポジションHPに移動させて、摺接部31が回動部材18の近傍位置に配置された状態にする。この状態で、キャリッジ19(図4参照)をさらに非印刷領域側の方向である右方向に移動(往動)させると、図6(a)、(b)に示すように、摺接部31と回動部材18の1つのアーム18cとが係合する。すなわち、第1斜面形成部32の第1斜面32aにアーム18cの摺接面18dが摺接する。
【0041】
引き続き、キャリッジ19(図4参照)をさらに右方向に移動(往動)させると、図7(a)、(b)に示すように、アーム18cの摺接面18dが第1斜面形成部32の第1斜面32aに摺接しながらアーム18cが第1斜面32aに沿って上昇する。このアーム18cの上昇にともなって、回動部材18がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向(図7(a)において矢印で示す方向;所定方向)に回動する。
【0042】
そして、この回動部材18の回動にともなってガイド軸14がその軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に回動し、さらにこのガイド軸14の回動にともなってカム17がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に回動する。すなわち、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、ガイド軸14の軸線Lを中心として一体に回動する。
【0043】
そして、アーム18cが第1斜面32aを上昇しきると、アーム18cにおける摺接面18dの下側に隣接する面がフラット面32bに摺接しながらアーム18cが摺接部31に対して左方向に相対移動し、アーム18cの左端がキャリッジ19(図4参照)の右面に当接する。アーム18cの左端がキャリッジ19(図4参照)の右面に当接すると、今度はキャリッジ19(図4参照)を印刷領域側の方向である左方向に移動(復動)させる。
【0044】
すると、図8(a)、(b)に示すように、アーム18cにおける右下のコーナ部が第2斜面形成部33の第2斜面33aの下端に摺接する。この状態で、キャリッジ19(図4参照)をさらに左方向に移動(復動)させると、図9(a)、(b)に示すように、アーム18cにおける右下のコーナ部が第2斜面33aに摺接しながらアーム18cが第2斜面33aに沿って上昇する。このアーム18cの上昇にともなって、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向(図9(a)において矢印で示す方向;所定方向)に回動する。
【0045】
このように、キャリッジ19(図4参照)を左右方向に往復移動させることで、回動部材18及びガイド軸14を介してカム17が回動すると、カム17のカム面17bが固定配置された状態にある支持ピン16に摺動し、カム17のカム面17bにおいては支持ピン16によるカム17の支持位置が変化する。このため、ガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離が変化するため、キャリッジ19を支持するガイド軸14の高さが変化する。したがって、キャリッジ19及び該キャリッジ19に支持された記録ヘッド23の高さが変化するため、プラテンギャップPGも変化する。
【0046】
よって、ガイド軸14の軸線Lを中心としたカム17の回動角における所定角度毎にガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離を設定しておけば、カム17の回動角を調整することで、プラテンギャップPGを所望の値に調整することができる。そこで、図10には、本実施形態におけるガイド軸14の軸線Lを中心としたカム17の所定回動角毎のガイド軸14の軸線Lと支持ピン16(または、カム17のカム面17b)との距離が示されている。
【0047】
図10に示すように、本実施形態では、キャリッジ19(摺接部31)が右方向の非印刷領域側と左方向の印刷領域側との間を1往復移動すると、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動する。すなわち、キャリッジ19(摺接部31)が右方向へ往動するとカム17が右側から見て時計回り方向に22.5度だけ回動し、摺接部31が左方向へ復動するとカム17が右側から見て時計回り方向にさらに22.5度だけ回動する。
【0048】
また、本実施形態では、ガイド軸14の軸線Lと支持ピン16との距離がD1のとき、すなわちプラテンギャップPGがPG1のときに、カム17の回動角を0度とするように設定されている。そして、このカム17の回動角が0度のときのカム17の位置がカム17の初期位置であるホームポジション(以下、「カムHP」という)とされている(図2に示す状態)。
【0049】
また、図10及び図11に示すように、本実施形態では、カム17がカムHPにあるときのプラテンギャップPG(PG1)をプラテンギャップポジション(以下、「PGポジション」という)1としている。さらに、カムHPからカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG2)をPGポジション2としている。
【0050】
またさらに、PGポジション2からカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として45度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG3)をPGポジション3としている。またさらに、PGポジション3からカム17が右側から見て時計回り方向にガイド軸14の軸線Lを中心として180度だけ回動したときのプラテンギャップPG(PG7)をPGポジション4としている。
【0051】
したがって、図11に示すように、本実施形態のインクジェット式プリンタ11では、PGポジション1〜4までの4段階でプラテンギャップPGを切り替えることが可能となっている。また、回動部材18、ガイド軸14、及びカム17は、右側から見て時計回り方向の一方向にしか回動できない。このため、プラテンギャップPGをPGポジション1からPGポジション2に変更する場合にはキャリッジ19(摺接部31)を1往復移動させるだけでよいが、プラテンギャップPGをPGポジション2からPGポジション1に変更する場合にはキャリッジ19(摺接部31)を7往復移動させる必要がある。
【0052】
そこで、図12に、PGポジション1〜4において、プラテンギャップPGを現PGポジションから変更したい目標PGポジションに変更するために必要なキャリッジ19(摺接部31)の往復移動回数が示されたテーブルを示した。この図12に示すテーブルは、上記した制御部22に予め記憶されている。
【0053】
また、回動部材18のアーム18cのうち、カム17の位置がカムHPに戻るときに摺接部31と最後に係合するアーム(以下、「ラストアーム」ともいう)18cは、該ラストアーム18c(一のアーム)以外の他のアーム18cよりも左右方向の幅が若干大きくなるように設定されている。このため、図10に示すように、カム17の回動角が315度から337.5度になる際、すなわちキャリッジ19(摺接部31)が非印刷領域側の方向である右方向へ往動する際には、ラストアーム18cは他のアーム18cよりも若干早くキャリッジ19の右面に当接する。
【0054】
したがって、キャリッジ19(摺接部31)が非印刷領域側の方向である右方向へ往動する際には、ラストアーム18cは他のアーム18cよりも右方向への往動量が若干少なくなる。この場合、ラストアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20にかかる負荷は、他のアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20にかかる負荷よりも大きくなる。
【0055】
すなわち、ラストアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20の駆動電流値は、他のアーム18cがキャリッジ19の右面に当接したときにおけるキャリッジモータ20の駆動電流値よりも大きくなる。したがって、キャリッジモータ20の駆動電流値に所定の閾値Nを設定することで、キャリッジモータ20の駆動電流値に基づいて、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18cであるか他のアーム18cであるかを制御部22が判定することができる。
【0056】
すなわち、キャリッジモータ20の駆動電流値が閾値N以上であれば、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18cであり、キャリッジモータ20の駆動電流値が閾値Nよりも小さければ、摺接部31と係合するアーム18cがラストアーム18c以外の他のアーム18cであることが分かる。
【0057】
よって、制御部22は、カム17の回動角が337.5度のときにおいて、次のキャリッジ19(摺接部31)の印刷領域側の方向である左方向への復動後にカム17の位置がカムHPに戻ることを認識することができる。したがって、摺接部31とラストアーム18cとの係合は、カムHPに対応していると言える。なお、上記した閾値Nは、制御部22に予め記憶されている。
【0058】
次に、本実施形態の制御部22が実行する制御処理ルーチンのうち、インクジェット式プリンタ11の電源オン時にカム17をカムHPに戻すためのカムHPリセット処理ルーチンについて、図13に基づき説明する。
【0059】
さて、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することにより、ホームポジションHPにあるキャリッジ19を非印刷領域側の方向(右方向)に移動(往動)させて、摺接部31を回動部材18のアーム18cに係合させる(ステップS1)。続いて制御部22は、ステップS1におけるキャリッジモータ20の駆動電流値が閾値N以上であるか否かを判定する(ステップS2)。
【0060】
ステップS2の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、その処理を後述するステップS3に移行する。一方、ステップS2の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することによりキャリッジ19を印刷領域側の方向(左方向)に移動(復動)させた後、その処理をステップS1に移行する(ステップS4)。
【0061】
ステップS3において、制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することによりキャリッジ19を印刷領域側の方向(左方向)に移動(復動)させる。続いて制御部22は、プラテンギャップPGをPG1として記憶する(ステップS5)。すなわち、制御部22は、カム17の位置がカムHPにあることを記憶する。その後、制御部22は、カムHPリセット処理ルーチンを終了する。
【0062】
次に、本実施形態の制御部22が実行する制御処理ルーチンのうち、プラテンギャップPGを認識するためのPG認識処理ルーチンについて、図14に基づき説明する。
さて、制御部22は、現プラテンギャップPGを確認し(ステップS11)、現プラテンギャップPGが不明であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、その処理を後述するステップS13に移行する。一方、ステップS12の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、上述したカムHPリセット処理ルーチンを実行した後、その処理をステップS11に移行する(ステップS14)。
【0063】
ステップS13において、制御部22は、インクジェット式プリンタ11に接続されたパーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの外部装置から入力される印刷信号に基づいて、あるいは、インクジェット式プリンタ11に設けられた切替スイッチからの制御信号に基づいて、所望のプラテンギャップPGである目標プラテンギャップPGを確認する。続いて制御部22は、現プラテンギャップPGが目標プラテンギャップPGであるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15の判定結果が肯定判定である場合、制御部22は、PG認識処理ルーチンを終了する。
【0064】
一方、ステップS15の判定結果が否定判定である場合、制御部22は、現プラテンギャップPGを目標プラテンギャップPGにするために必要なキャリッジ19の往復移動回数を図12に示したテーブルに基づいて計算する(ステップS16)。続いて制御部22は、キャリッジモータ20を駆動することにより、ステップS16の計算結果の回数分だけキャリッジ19を往復移動させて回動部材18を回動させる(ステップS17)。
【0065】
続いて制御部22は、現プラテンギャップPGを目標プラテンギャップPGとして記憶する(ステップS18)。その後、制御部22は、PG認識処理ルーチンを終了する。
以上、詳述した第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
(1)キャリッジ19を主走査方向(左右方向)に往復移動させることで、キャリッジ19の下端部に支持された記録ヘッド23が記録用紙Pに対して近接または離間する方向(上下方向)に移動するように、キャリッジ19を支持したガイド軸14を移動する(ガイド軸14の高さを変更する)ことができる。したがって、キャリッジ19の駆動力を利用してプラテンギャップPGを調整することで、キャリッジ19の下端部に支持された記録ヘッド23と記録用紙Pとのギャップ(間隔)を調整することができる。
【0067】
(2)カム部は、ガイド軸14と同一の軸線Lを中心に一体回動するカム17によって構成されているため、カム部の構成を簡単にすることができる。
(3)回動部材18はガイド軸14の右端部側のみに配設されているとともにガイド軸14と同一の軸線Lを中心に一体回動するように構成されているため、該回動部材18を効率よく回動させることができる。
【0068】
(4)回動部材18には、該回動部材18の回動軸線でもあるガイド軸14の軸線Lを中心として放射方向に延びる8つのアーム18cが設けられており、キャリッジ19には、該キャリッジ19が往復移動する際にアーム18cが摺接(係合)して回動部材18を回動させるための摺接部31が設けられている。このため、キャリッジ19の駆動力を回動部材18に対して効率よく確実に伝達することができる。
【0069】
(5)摺接部31は、キャリッジ19が往動(右方向に移動)する際にアーム18cが摺接する第1斜面32aと、キャリッジ19が復動(左方向に移動)する際にアーム18cが摺接する第2斜面33aとを備えている。このため、回動部材18を回動する際のキャリッジ19の左右方向における往復移動幅(振幅)を小さくすることができる。したがって、インクジェット式プリンタ11の小型化に寄与することができる。
【0070】
(6)アーム18cにおける摺接部31の第1斜面32aに摺接する面は、該第1斜面32aと対応するテーパ状になっている。このため、回動部材18を回動するためにキャリッジ19を往動させる場合に、第1斜面32aにアーム18cを円滑に摺動させることができる。
【0071】
(7)カムHPがラストアーム18cと摺接部31との係合に対応しているため、ラストアーム18cと摺接部31とが係合する際にキャリッジモータ20にかかる負荷を制御部22によって検出することで、該制御部22によりカムHPを確実に判定することができる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、この発明の第2実施形態を上記第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図15及び図16に示すように、この第2実施形態は、上記第1実施形態におけるブロック状をなす摺接部31の代わりに、後面から見てL字状をなすレバー部材40を摺接部として用いたものである。すなわち、レバー部材40は、前後方向に延びる円筒状の支点部41と、該支点部41の上面から左上方に延びる略四角柱状の作動部42と、支点部41の右面から右上方に向かって延びる略四角柱状の押圧部43とを備えている。この場合、作動部42と押圧部43とのなす角は、90度になっている。
【0073】
そして、レバー部材40は、ガイド軸14の右端部近傍においてガイド軸14の後側かつ回動部材18の左側に位置しており、支点部41において本体ケース12(図1参照)内の後面から延びる支持軸44によって軸支されている。すなわち、レバー部材40の支点部41に支持軸44の先端部が挿通されており、レバー部材40が支持軸44を中心として回動可能になっている。レバー部材40の作動部42の左面にはコイルばね45の一端が接続され、該コイルばね45の他端は作動部42の後斜め左方向延長線上における本体ケース12(図1参照)内の後面に接続されている。
【0074】
また、レバー部材40において、押圧部43は該押圧部43の基端部において前後方向に延びる軸46により支点部41に軸支されている。この場合、押圧部43は、軸46を中心として後方から見て時計回り方向への回動が規制されているとともに、軸46を中心として後方から見て反時計回り方向への傾動が許容されている。
【0075】
さらに、レバー部材40には、押圧部43が軸46を中心として後方から見て反時計回り方向へ傾動した場合に、押圧部43を傾動前の状態(作動部42と90度で交差する状態)に戻す図示しない戻し機構が設けられている。なお、押圧部43は、その先端部において回動部材18のアーム18cと摺接しながらの係合が可能になっている。
【0076】
また、キャリッジ19の支持筒19aにおける右端部には、後方に延びる係合突起47が設けられている。係合突起47は、キャリッジ19を非印刷領域に移動させた場合に、レバー部材40の作動部42の左面におけるコイルばね45の接続位置よりも上側に当接するようになっている。
【0077】
また、この第2実施形態では、回動部材18の外径が第1実施形態の回動部材18の外径よりも若干大きくなっており、アーム18cの数が12個になっている。さらに、この第2実施形態ではアーム18cが略三角柱状になっている。
【0078】
さて、図16に示すように、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動すると、レバー部材40の作動部42が係合突起47によって右方向に押圧される。すると、レバー部材40が、コイルばね45の付勢力に抗して、支持軸44を中心として後方から見て反時計回り方向へ回動された状態となる(図16の2点鎖線で示す状態)。このとき、レバー部材40の押圧部43の先端部が回動部材18のアーム18cと係合するため、押圧部43によってアーム18cが押し下げられる。
【0079】
すると、回動部材18がガイド軸14の軸線Lを中心として右側から見て時計回り方向に所定角度(この第2実施形態では30度)だけ回動する。この回動部材18の回動にともなって、第1実施形態と同様に、カム17が回動してガイド軸14の高さが変化され、プラテンギャップPGが所定距離だけ変化する。
【0080】
一方、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動すると、レバー部材40が、コイルばね45の付勢力によって、支持軸44を中心として後方から見て時計回り方向へ回動されて元に位置に戻った状態となる(図16の実線で示す状態)。このとき、レバー部材40の押圧部43は、該押圧部43が押し下げたアーム18cの上隣のアーム18cの下面に当接するが、軸46を中心として後方から見て反時計回り方向へ傾動するため、この当接したアーム18cを押し上げることはなく、回動部材18の回動に影響を及ぼさない。そして、押圧部43は、アーム18cから離間すると、図示しない戻し機構により傾動前の元の状態に戻る。
【0081】
以上のようにして、プラテンギャップPGが所望の値になるまで、キャリッジ19を非印刷領域において左右方向に繰り返し往復移動することで、第1実施形態と同様に、プラテンギャップPGの調整が行われる。
【0082】
以上、詳述した第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(8)キャリッジ19を非印刷領域において左右方向に往復移動しなくても、キャリッジ19を非印刷領域において右方向に移動(往動)するだけで、回動部材18を所定角度分だけ回動させることができる。
(変更例)
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
【0083】
・第1実施形態において、摺接部31の第2斜面形成部33を省略してもよい。この場合、第1斜面形成部32の第1斜面32aを長くして、キャリッジ19の右方向への移動(往動)だけで回動部材18(カム17)が45度回動するように構成する必要がある。
【0084】
・第1実施形態において、ガイド軸14の左端部にもカム17の右側面に隣接するように回動部材18を設けてもよい。この場合、キャリッジ19の左面に、上下を逆にした摺接部31を設ける必要がある。このようにすれば、ガイド軸14の左端部に設けた回動部材18を、ガイド軸14の右端部に設けた回動部材18の回動方向とは逆方向に回動することができる。このため、カム17を正逆両方向に回動させることができるので、プラテンギャップPGをPGポジション1〜4の間で素早く切り替えることができる。すなわち、プラテンギャップPGをPGポジション2からPGポジション1へ切り替える場合でも、その切り替え動作を素早く行うことができる。
【0085】
・第1実施形態において、回動部材18のアーム18cの摺接面18dは、必ずしも設ける必要はない。
・第1実施形態において、PGポジションをPGポジション1〜4の4段階に設定したが、PGポジションを5段階以上に設定してもよいし、あるいはPGポジションを2段階や3段階に設定してもよい。ただし、第1実施形態では、PGポジションは最高8段階までしか設定できない。なお、PGポジションの組み合わせは、この8段階のPGポジションから任意に2つ以上を組み合わせてもよい。
【0086】
・第1及び第2実施形態において、ガイド軸14、カム17、及び回動部材18は、これらのうち少なくとも1つが他と異なる軸線を中心に回動するように構成してもよい。この場合、回動部材18の回動力が、ガイド軸14及びカム17に伝達されるように歯車などの動力伝達機構を設ける必要がある。
【0087】
・第1及び第2実施形態において、カム17と回動部材18とは、一体に形成してもよい。すなわち、回動部材18の一部をカム部としてもよい。このようにすれば、部品点数を減らすことができる。
【0088】
・第1及び第2実施形態において、回動部材18のアーム18cは、円柱状や楕円柱状にしてもよいし、あるいは5角柱状や6角柱状などの多角柱状にしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、回動部材18のアーム18cの数は、3つ以上であれば、4つや5つなど任意の数に設定してもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、画像形成装置は、インクカートリッジをインクジェット式プリンタにおけるキャリッジ上以外の場所に設置し、該インクカートリッジのインクをインク供給チューブによって記録ヘッドに供給するようにした、いわゆるオフキャリッジタイプのプリンタであってもよい。
【0090】
・上記各実施形態では、画像形成装置をインクジェット式プリンタ11に具体化したが、この限りではなく、ドットインパクトプリンタや熱転写プリンタなどに具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】第1実施形態におけるインクジェット式プリンタの正断面図。
【図2】図1の要部断面図。
【図3】第1実施形態において、キャリッジを後斜め右方向から見たときの斜視図。
【図4】第1実施形態において、摺接部と回動部材との位置関係を示す要部拡大図。
【図5】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図6】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図7】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図8】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図9】第1実施形態において、(a)は摺接部と回動部材との一動作を示す斜視図、(b)は(a)の側面図。
【図10】第1実施形態において、カムの回動角とプラテンギャップとの関係を示す説明図。
【図11】第1実施形態において、PGポジションとプラテンギャップとの関係を示す表。
【図12】第1実施形態において、現PGポジションから目標PGポジションへ変更するために必要なキャリッジの往復移動回数を示すテーブル。
【図13】第1実施形態において、カムHPリセット処理ルーチンを示すフローチャート。
【図14】第1実施形態において、PG認識処理ルーチンを示すフローチャート。
【図15】第2実施形態において、キャリッジを後斜め右方向から見たときの斜視図。
【図16】図15の後面図。
【符号の説明】
【0092】
11…画像形成装置としてのインクジェット式プリンタ、14…ガイド軸、17…カム部としてのカム、18…回動部材、18c…アーム部を構成するアーム、19…記録部を構成するキャリッジ、22…負荷検出手段及び判定手段としての制御部、23…記録部を構成する記録ヘッド、31…回動手段としての摺接部、32a…第1斜面、33a…第2斜面、P…ターゲットとしての記録用紙。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録部をターゲットに対向させた状態で走査可能に支持するとともに、前記記録部と前記ターゲットとのギャップを調整可能に移動するガイド軸と、
該ガイド軸と直接的または間接的に係合するとともに、回動することにより前記ガイド軸を移動させるカム部と、
該カム部とともに回動する回動部材と、
該回動部材に備えられるとともに、該回動部材の回動軸線に対して略放射方向に延びるアーム部と、
前記記録部が主走査方向に移動することで前記アーム部と係合し、該アーム部を介して前記回動部材を回動させる回動手段と
を備えたことを特徴とするギャップ調整装置。
【請求項2】
前記回動手段は、前記記録部とともに主走査方向に移動する摺接部を備えており、
前記記録部が主走査方向に移動する際に、前記アーム部が前記摺接部を摺動することにより前記回動部材が回動されることを特徴とする請求項1に記載のギャップ調整装置。
【請求項3】
前記摺接部は、前記記録部が往動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第1斜面と、前記記録部が復動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第2斜面とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のギャップ調整装置。
【請求項4】
前記アーム部は、少なくとも3つのアームを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項5】
前記アーム部は、複数のアームを備えており、
該各アームのうち一のアームが前記回動手段と係合する際の負荷は、前記各アームのうち前記一のアーム以外の他のアームが前記回動手段と係合する際の負荷と異なることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項6】
前記各アームと前記回動手段とが係合する際の負荷を検出する負荷検出手段と、
該負荷検出手段による検出結果に基づいて、前記一のアームと前記回動手段との係合に対応した前記カム部の初期位置を判定する判定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載のギャップ調整装置。
【請求項7】
前記カム部は、前記ガイド軸と同一軸線で一体回動するカムによって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項8】
前記回動部材は、前記ガイド軸の両端部側のうち少なくとも一端部側に配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
記録部をターゲットに対向させた状態で走査可能に支持するとともに、前記記録部と前記ターゲットとのギャップを調整可能に移動するガイド軸と、
該ガイド軸と直接的または間接的に係合するとともに、回動することにより前記ガイド軸を移動させるカム部と、
該カム部とともに回動する回動部材と、
該回動部材に備えられるとともに、該回動部材の回動軸線に対して略放射方向に延びるアーム部と、
前記記録部が主走査方向に移動することで前記アーム部と係合し、該アーム部を介して前記回動部材を回動させる回動手段と
を備えたことを特徴とするギャップ調整装置。
【請求項2】
前記回動手段は、前記記録部とともに主走査方向に移動する摺接部を備えており、
前記記録部が主走査方向に移動する際に、前記アーム部が前記摺接部を摺動することにより前記回動部材が回動されることを特徴とする請求項1に記載のギャップ調整装置。
【請求項3】
前記摺接部は、前記記録部が往動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第1斜面と、前記記録部が復動する際に前記アーム部に摺接して前記回動部材を所定方向に回動させる第2斜面とを備えていることを特徴とする請求項2に記載のギャップ調整装置。
【請求項4】
前記アーム部は、少なくとも3つのアームを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項5】
前記アーム部は、複数のアームを備えており、
該各アームのうち一のアームが前記回動手段と係合する際の負荷は、前記各アームのうち前記一のアーム以外の他のアームが前記回動手段と係合する際の負荷と異なることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項6】
前記各アームと前記回動手段とが係合する際の負荷を検出する負荷検出手段と、
該負荷検出手段による検出結果に基づいて、前記一のアームと前記回動手段との係合に対応した前記カム部の初期位置を判定する判定手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項5に記載のギャップ調整装置。
【請求項7】
前記カム部は、前記ガイド軸と同一軸線で一体回動するカムによって構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項6のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項8】
前記回動部材は、前記ガイド軸の両端部側のうち少なくとも一端部側に配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちいずれか一項に記載のギャップ調整装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−302573(P2008−302573A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151394(P2007−151394)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]