説明

クッション材

【課題】 臥床又は着座を長時間続けても、肌刺激の少ないクッション材を提供する。
【解決手段】 表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物からなる表面材を持ったクッション材であって、その表面材のMMD値の経緯平均値が0.001以上、0.04以下であるクッション材、および立体編物の総カバーファクター(TCF)が650以上、1550以下、立体編物表面のメッシュの開孔面積が0.13cm以下、立体編物の連結糸出現面積割合(A)と連結糸直径(D)の積(A×D)が0.001以上、1.200以下であるクッション材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体編物を表面に使用したクッション材に関し、特に長時間皮膚接触時においても肌刺激の少ないクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
寝具等のクッション材の表面に使用される生地の皮膚刺激性は、通常、発汗のない状態での刺激性有無が確認されており、安全性が認められているが、発汗時を想定した評価はなされていないのが現状である。人間の皮膚は、湿潤が継続すると皮膚がふやけた状態となって抵抗力が弱まり、雑菌が繁殖しやすくなる。従って、例えば睡眠中等に発汗しそのまま放置すると、寝具表面との皮膚接触面が長時間湿った状態が持続し、痒みを感じたり、かぶれ等の皮膚障害を生じたりすることがある。
【0003】
また、従来より、立体編物はクッション材として広く使用されているが、その目的の多くは湿潤の解消であり、発汗により湿潤し、かつ長時間皮膚に接触している場合において、編地表面の特性が皮膚に与える刺激性までは考慮されていなかった。
【特許文献1】特開2002−325657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、発汗して皮膚が湿潤し、臥床又は着座を長時間続けた場合においても、肌刺激の少ないクッション材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために、長時間の臥床あるいは着座における肌刺激のメカニズムと、クッション材の表面編地を構成する要件、例えば使用する繊維素材、組織等の構造との関連について詳細な検討を繰り返した結果、表面編地の立体構造と、表面凹凸状態を表すMMD値とが大きく関係することを究明し、本発明に到達するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成された立体編物を有する表面材を持ったクッション材であって、該表面材のMMD値の経緯平均値が0.001以上、0.04以下であることを特徴とするクッション材である(但し、上記MMD値は、カトーテック株式会社製「摩擦感テスターKES−SE」を使用し、評価条件は、感度H、試験台移動速度1.00mm/秒、摩擦静荷重50gf、摩擦子は指先を模した装置付属のものとし、温度20℃、湿度65%RHの環境下で測定した値とする)。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクッション材は、ざらつきが小さく、肌刺激の小さいクッション材であり、発汗した状態で長時間使用しても、皮膚に与える刺激性が小さく、その機能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の表面材に使用する立体編物の特徴について説明する。
【0009】
先ず立体編物の表面(肌が直接触れる面)に使用する繊維素材は、綿、麻、絹、ウール等の天然繊維、キュプラ、レーヨン、精製セルロース繊維、アセテート(ジ並びにトリアセテート)等のセルロース系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、W型等の異型断面糸や吸湿性や吸水性を改質したポリエステル系、ポリアミド系等合成繊維等のいずれでもよい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形があり、繊維の形態も、原糸(未加工糸)、紡績糸、有撚糸、仮撚加工糸、流体噴射加工糸等いずれのものを採用してもよく、マルチフィラメント糸でもモノフィラメント糸でも良く、これらの素材及び又は断面や形態の異なる二種以上を交絡、交撚、複合仮撚加工、交編等の公知の複合手段で混用して用いてもよい。
【0010】
肌触り等の快適性から吸湿性や吸水性に優れたものがより好ましく用いられるが、特に連結糸にモノフィラメント糸を用いる場合、編地表面にモノフィラメント糸が露出しないように、マルチフィラメントの仮撚加工糸、紡績糸等の嵩高糸を用いて被覆率を上げることが好ましい。特にW型や扁平の断面形状を有する糸がしなやかな表面とするために好ましく、W型は吸水速乾性も付与できるためより好ましい。
【0011】
又、裏面(肌に接触しない面)の編地については特に制限は無く、表面の編地と同様の繊維素材、断面、形態のものを用いることができる。
表裏の編地を構成する繊維素材の好ましい繊度は、50〜300dtex、特に100〜250dtexが好ましい。構成する繊維の単糸繊度は1〜7dtex、特に2〜6dtexが好ましい。
【0012】
更に、これら表裏の編地を連結する連結糸としては、モノフィラメント糸が好ましく、ポリエチレンテレフタレート系繊維、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維、ポリブチレンテレフタレート系繊維等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリエステル系エラストマー繊維等、任意の素材の繊維を用いることができるが、このうちポリトリメチレンテレフタレート系繊維を連結糸の少なくとも一部に用いると、得られる編地は、弾力感のあるクッション性を有し、繰り返し或いは長時間圧縮後のクッション性の耐久性が良好となり好ましい。繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよいが、丸型断面が立体編物の圧縮耐久性を向上させる上で好ましい。
【0013】
連結糸は、モノフィラメント糸100%が最適であるが、マルチフィラメント原糸やその仮撚加工糸を混用してもよく、その際はモノフィラメント糸が30質量%以上、特に50質量%以上で構成するのが好ましい。
連結糸の好ましい太さは、モノフィラメント糸の場合は20〜500dtex、特に30〜300dtexが好ましく、マルチフィラメント糸の場合は総繊度では20〜300dtex、特に30〜200dtexが好ましい。単糸繊度は1〜7dtex、特に2〜6dtexが好ましい。
【0014】
連結糸の180℃乾熱収縮率は、5%以上、25%以下、特に、8%以上、20%以下が好ましい。尚、180℃乾熱収縮率とは、編成前の糸を180℃で30分間乾熱した時の糸の収縮率をいう。更に、連結糸の突出防止のため、表糸との180%乾熱収縮率の差は、連結糸の方が収縮を大きくする必要があり、1%以上、より好ましくは、3%以上連結糸の方を大きくすることが望ましい。
【0015】
連結糸の密度については、立体編物2.54cm平方(6.45cm)の面積中にある連結糸の本数をN(本/6.45cm)、連結糸のdtexをT(g/1×106cm)、連結糸の比重をρ(g/cm3)とした時、立体編物6.45cmの面積中にある連結糸の総断面積(N・ T/1×106・ρ)が0.01〜0.3cm2が好ましく、より好ましくは0.03〜0.2cm2である。この範囲に設定することによって、適度な剛性による良好なクッション性を有するものとなる。
又、本発明の表裏の編地または連結糸に用いる繊維は、未着色でもよく、着色されていてもよい。
【0016】
立体編物の構造について説明すると、本発明の立体編物は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができ、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等で編成できるが、寸法安定性のよい立体編物を得るには、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。編機のゲージは9ゲージから28ゲージまでが好ましく用いられる。
【0017】
立体編物の表裏の編地は、編組織は同一である必要は無く、異なる編組織でもよく、4角、6角等のメッシュ編地、マーキゼット編地等複数の開孔部を有する編地にして軽量性、通気性を向上させてもよいが、表面を平坦な組織あるいはメッシュひとつ分の開孔面積が0.13cm2以下の細かいメッシュ組織にして肌触りを良好にしたものが好ましい。又、表面を起毛するとより肌触りの良好なものが得られる。裏面の編組織は、開孔部のあるメッシュ組織であることが通気性を向上させるためには好ましいが、平坦な構造でも立体構造により通気性は確保されるため、特に限定されるものではない。
又、立体編物は、表裏の少なくとも一方の編地のタテ方向及び/又はヨコ方向に挿入糸(モノフィラメント糸及び又はマルチフィラメント糸)が直線状に挿入されていてもよい。
【0018】
連結糸は、表裏の編地中にループ状の編目を形成してもよく、表裏編地に挿入組織状に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表裏の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編物の形態安定性を向上させる上で好ましい。又、表裏糸と連結糸のランナー長のバランスは、連結糸の出現面積に大きな影響を及ぼすため非常に重要である。
【0019】
立体編物の厚みは目的に応じて任意に設定できるが、水分放出性を考慮すると、厚みは1〜12mmが好ましく、特に2〜10mmがより好ましい。
着色方法は、未着色の糸をかせやチーズ状で糸染めする方法(先染め)、紡糸前の原液に顔料、染料等を混ぜて着色する方法(原液着色)、立体編物状で染色したりプリントする方法等によって着色することができる。
【0020】
立体編物の仕上げ加工方法は、立体編物を未着色で用いる場合や、先染め糸や原液着色糸を使用した立体編物の場合は生機をプレヒートセット、精練、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。通常は生機を精練、ヒートセットする工程であるが、プレヒートセットを入れることで、連結糸が締まり、表面に突出するのを防ぐことができる。又、連結糸或いは表裏糸のいずれかが未着色の立体編物の場合は、生機をプレヒートセット、精練、染色、ヒートセット等の工程を通して仕上げることができる。
仕上げ加工後の立体編物は、融着、縫製、樹脂加工等の手段で端部を処理したり、熱成形等により所望の形状にして用いることができる。
【0021】
クッション材として表面の立体編物と組み合わせる他素材としては、天然綿、合成繊維綿、又はこれらの繊維を複合した綿、並びにこれらの繊維綿を適宜圧縮した綿やそれらの綿に合成樹脂を施して圧縮回復性を改良したもの、または、発泡ポリウレタン、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン等の発泡体、並びにこれらの発泡体と綿とを組み合わせたもの、または、熱可塑性樹脂や熱可塑性弾性樹脂からなる繊維が互いに不規則に交絡し、交絡により接触した接点を形成する厚さが5〜50mm程度の立体的構造体等が挙げられる。表面素材と同様あるいは類似の表裏二層の編地と該二層の編地を連結する連結糸から構成された立体編物であってもよい。又、それらを表面材としての立体編物と一体化させるために綿布や合成繊維布等を使用する場合もある。
【0022】
立体編物の肌接触面に当たる表面のMMD値の経緯平均値は、0.001以上、0.04以下好ましくは0.001以上、0.03以下である。MMD値とは、表面の凹凸状態を示す数値であり、大きい程凹凸が大きいことを示す。MMD値の評価は、カトーテック株式会社製「摩擦感テスターKES−SE」を使用し、感度H、試験台移動速度1.00mm/秒、摩擦静荷重50gf、摩擦子は指先を模した装置付属のものとし、温度20℃、湿度65%RHの環境下で実施したものである。この範囲より大きい場合では、立体編物であったとしても肌への刺激が大きく、発汗時でなくても皮膚障害を発生させる危険性があり、この範囲より小さい場合は、すべり過ぎたり、あるいは、発汗時に肌へ貼り付いて不快と感じる。又、編地の経方向のMMD値は0.001以上、0.04以下が好ましく、より好ましくは0.005以上、0.02以下であり、編地の緯方向のMMD値は0.001以上、0.06以下が好ましく、より好ましくは0.005以上、0.04以下である。平面織物あるいは平面編物では空気層が非常に少なく、発生した汗が皮膚表面に残り、皮膚をふやかせて耐久性を低下させ、本発明のMMD値の範囲であったとしても肌刺激を受けやすくなってしまう。従って、皮膚の蒸れによる耐久性低下を抑制するためには、立体編物であることが非常に重要で、必要不可欠な条件であるといえる。
【0023】
尚、本発明の立体編物においては編地表面のMMD値の経緯平均値が0.001以上、0.04以下である必要があるが、ここにいう編地表面とはクッション材として使用する場合に人体に接する面のことをいう。表裏の区別がつかない場合は、いずれか一方の面のMMD値の経緯平均値が範囲内であればよく、他方の面のMMD値の経緯平均値は限定されるものではない。
【0024】
上記のMMD値を達成するために、立体編物の表面の編地を構成する糸、連結部を構成する糸、立体編物の表面状態等について鋭意検討した。その結果、総カバーファクター、メッシュ開孔面積、連結糸出現面積割合(A)と連結糸直径(D)の積(A×D)という3つのファクター全てが特定の範囲を満たすことで、上記MMD値を達成することが可能であることを見出した。この3つのファクターについて、以下に詳細に説明する。
【0025】
まず、好ましいMMD値を達成するために必要な一つ目のファクターは、立体編物の総カバーファクター(TCF)である。TCFは、650以上、1550以下、特に、800以上、1200以下であることが好ましい。
尚、ここで、総カバーファクター(TCF)とは、下記式で計算されるものである。
【0026】
総カバーファクター(TCF)=コースカバーファクター(CCF)+ウェールカバーファクター(WCF)
但し、コースカバーファクター(CCF)=(コース数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
ウェールカバーファクター(WCF)=(ウェール数;本/2.54cm)×(表面の編地を構成する糸条の太さ;dtex)1/2
尚、表面の編地を構成する糸条の太さとは、表面の編地2.54cm平方(6.45cm)の面積中に存在する編目を構成する糸条の太さをいう。例えば2枚筬から同一の針に2本の表糸が供給されて一つの編目を構成する場合は、2本の表糸の太さを合計した太さをいう。
【0027】
編目を構成する糸条の太さが異なる場合は、先ず表面の編地2.54cm平方(6.45cm)の面積中に存在する編目の総数(n)と、各編目を構成する糸条の太さ(D1、D2、D3、・・・、Dn;dtex)を測定する。次いで、各編目を構成する糸条の太さの合計(D1+D2+D3+・・・Dn;dtex)を編目の総数(n)で割ったもので表す。
上記記載の総カバーファクターの範囲は、9ゲージ以上、28ゲージ以下の編機を用い、表糸繊度を総dtexで60dtex以上、300dtex以下、単糸dtexで1dtex以上、5dtex以下にすることで達成することができる。
【0028】
次に、好ましいMMD値を達成するために必要な二つ目のファクターは、立体編物表面のメッシュの開孔面積である。最大の開孔面積(メッシュひとつ分)は、0.13cm以下、特に、0.10cm以下であることが好ましい。
ここで、開孔面積とは、立体編物1cmと面積既知の図を描いた紙を合わせて、表面拡大写真(5〜50倍)を直角方向から撮影し、写真をイメージスキャナーでコンピューターに読み込み、画像解析ソフト「高精細画像解析システムIP1000PC」(商品名、旭化成(株)製)を用いて、編地表面のひとつの開孔部と面積既知の図をそれぞれ領域指定し、領域指定したそれぞれの面積の画素数を比較することにより、開孔ひとつ分の面積を算出したものである。
【0029】
上記記載の最大開孔面積の範囲は、表面を開孔のない編構造とするか、あるいは、8コースリピート以下のメッシュ構造とすることで達成できる。
好ましいMMD値を達成するために必要な三つ目のファクターは、連結糸出現面積割合(A)と連結糸直径(D)の積(A×D)である。A×D値は、0.001以上、1.200以下、特に、0.001以上、0.800以下であることが好ましい。又、連結糸出現面積割合(A)の範囲は30%以下、好ましくは20%以下である。
【0030】
ここで、連結糸出現面積割合(A)とは、立体編物1cmの表面拡大写真(5〜50倍)を直角方向から撮影し、写真をイメージスキャナーでコンピューターに読み込み、画像解析ソフト「高精細画像解析システムIP1000PC」(商品名、旭化成(株)製)を用いて、任意の領域を指定し、連結糸が出現している面積が全体の面積に占める割合を、画素数を比較することにより、百分率で算出したものである。但し、連結糸が出現している面積とは、表面材として用いたときに肌に接触する可能性のある部分の面積であり、例えば、開孔部の中に見えて肌に接触する可能性のないものは含めない。また、連結糸直径(D)は、光学顕微鏡を用いて、任意の3箇所を測定し、それらの平均値を算出したものである。
【0031】
上記記載のA×D値の範囲を達成するためには、連結糸の180℃乾熱収縮率は、5%以上、25%以下、好ましくは、8%以上、20%以下とし、更に、表糸と連結糸の180℃乾熱収縮率の差を、1%以上、より好ましくは、3%以上連結糸の収縮を大きくして連結糸の出現面積を抑えることが必要である。尚、180℃乾熱収縮率とは、編成前の糸を180℃で30分間乾熱した時の糸の収縮率をいう。更に、使用する糸が上記乾熱収縮率を有するだけでなく、生機を精練及びヒートセットする工程で、通常は生機を精練後にヒートセットするが、精練前にプレヒートセットを入れることで、連結糸が締まり、表面に突出するのを防いで、A×D値を最適な範囲内にすることができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例で具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
本発明に用いられる評価方法は以下の通りである。
(1)MMD値(凹凸状態)の評価
(イ)評価装置は、カトーテック株式会社製「摩擦感テスターKES−SE」を使用する。評価条件は、感度H、試験台移動速度1.00mm/秒、摩擦静荷重50gf、摩擦子は指先を模した装置付属のものとし、温度20℃、湿度65%RHの環境下で実施する。サンプルサイズは6cm×8cm(8cmの方が測定方向)とし、おもりを乗せて固定し、測定時に移動しないようにする。サンプルは、クッション材の表面編地1枚とし、クッション材使用時に肌接触面となる側を測定する。
【0034】
(ロ)上記の測定法にて、経緯2方向をそれぞれ3回測定し、その平均値を求める。
尚、MMD値は、表面の凹凸状態を示す数値であり、数値が大きいほど凹凸が大きく、数値が小さいほど滑らかであることを示す。
【0035】
(2)皮膚刺激性の評価
(イ)2cm角の評価生地(クッション材の表面に使用する立体編物またはその比較生地)に水0.5mlを含ませ、被験者の上腕内側部に貼り付ける。この時、製品となったときに肌接触面となる面を肌側となるようにし、幅1cm、長さ4〜6cmの絆創膏2枚で十字になるように固定する。上半身は綿100%の半袖Tシャツを着用し、サンプル貼り付け部に袖が触れないようにする。評価生地を貼り付けた状態で、気温35±2℃、湿度70±5%RH環境下で6時間臥床する。その後の感覚的な皮膚刺激の有無を確認し、更にサンプルを取り除き30分安静後の皮膚の状態変化を観察する。
【0036】
(ロ)上記評価を5名の被験者について実施し、平均点で評価した。採点基準は、下記の通りである。
3点:かゆみ等の刺激を感じず、皮膚の変化はない
2点:かゆみ等の刺激を感じるが、皮膚の変化はない
1点:かゆみ等の刺激を感じ、かつ、皮膚に発赤等の変化が見られた
【0037】
[実施例1]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.2mmのダブルラッセル編機を用い、表面の編地を形成する2枚の筬(L1、L2)から167dtex/48fのW型断面のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(旭化成せんい株式会社製、商標「テクノファイン」仮撚加工糸、180℃乾熱収縮率:3%)をいずれもオールインの配列で供給し、裏面の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)からも同一の仮撚加工糸をいずれも3イン1アウトの配列で供給し、連結糸を形成するL3の筬から56dtexのナイロン66繊維モノフィラメント糸(180℃乾熱収縮率:18%)をオールインの配列で供給して、表面の編地の密度が33.3コース/2.54cm、24.8ウェール/2.54cmの立体編物の生機を下記組織で編成した。
【0038】
L1:2422/2022/
L2:2022/4644/
L3:0220/2002/
L5:4420/2224/2220/2242/4468/6664/6668
/6646/
L6:4468/6664/6668/6646/4420/2224/2220
/2242/
得られた生機をプレヒートセットして精練後、再度ヒートセットして、厚み3.5mmの立体編物Aを得た。この立体編物Aは、表面の編地が平坦な組織で、表面の開孔がなく、裏面の編地がメッシュ組織であり、表面の編地密度は、35.0コース/2.54cm、22.2ウェール/2.54cmであった。実施例1で得られた立体編物Aの総カバーファクター、開孔面積およびA×D値、MMD値、肌刺激性評価等の結果を表1に示す。
【0039】
立体編物Aの表面のMMD経緯平均値は、表1に示すように0.0200であり、皮膚刺激性を評価した結果は、2.8点と極めて優れ、肌触りも良好なものであった。この立体編物を表面材として使用したクッション材に、発汗する環境下で3時間着座しても、皮膚の刺激は全く感じられず、非常に快適なものであった。
【0040】
[実施例2]
6枚筬を装備した22ゲージ、釜間4.2mmのダブルラッセル編機を用い、裏面の編地を形成する筬(L2)に110dtex/36fのポリエチレンテレフタレート系繊維(旭化成せんい株式会社製)をオールインの配列で供給し、表面の編地を形成する2枚の筬(L5、L6)に110dtex/60fのW型断面のポリエチレンテレフタレート系繊維の仮撚加工糸(旭化成せんい株式会社製、商標「テクノファイン」仮撚加工糸、180℃乾熱収縮率:3%)をいずれも3イン1アウトの配列で供給し、連結糸を形成するL3の筬に56dtexのナイロン6繊維モノフィラメント糸をオールインの配列で供給して、表面の編地の密度が37.6コース/2.54cm、25.4ウェール/2.54cmの立体編物の生機を下記組織で編成した。
【0041】
L2:2422/2022/
L3:0220/2002/
L5:4420/2224/2220/2242/4468/6664/6668/6
646/
L6:4468/6664/6668/6646/4420/2224/2220/2
242/
得られた生機をプレヒートセットして精練後、再度ヒートセットして、厚み3.1mmの立体編物Bを得た。
【0042】
得られた立体編物Bの表面の編地密度は、41.0コース/2.54cm、20.0ウェール/2.54cmであった。この立体編物Bの評価結果を表1に示す。
表面にひとつの面積が0.01cmの開孔がある立体編物Bの表面のMMD経緯平均値は、0.0241であり、皮膚刺激性を評価した結果、開孔があるため立体編物Aよりは若干劣るものの、2.6点と優れ、肌触りも良好なものであった。
【0043】
[実施例3]
6枚筬を装備した18ゲージ、釜間5.6mmのダブルラッセル編機を用い、中間に位置する2枚の筬(L3、L4)から連結糸として200dtexのナイロン6モノフィラメント糸を供給し、編機前面に位置する二枚の筬(L1、L2)から表編地用糸として、167dtex/48fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(180℃乾熱収縮率:3%)を、編機背面に位置する二枚の筬(L5、L6)から裏編地用糸として、167dtex/48fのポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸(180℃乾熱収縮率:18%)をL1、L4、L5ガイドに1イン1アウト、L2、L3、L6に1アウト1インの配列で供給した。打ち込み20.7コース/2.5cmに設定して、下記組織で編成した。
【0044】
L1:4644/4244/4644/4244/4644/4222/
2022/2422/2022/2422/2022/2444/
L2:2022/2422/2022/2422/2022/2444/
4644/4244/4644/4244/4644/4222/
L3:6868/6464/6868/2020/6868/6464/
4242/4646/4242/810810/4242/4646/
L4:4242/4646/4242/810810/4242/4646/
6868/6464/6868/2020/6868/6464/
L5:4446/4442/4446/4442/4446/4442/
2220/2224/2220/2224/2220/2224/
L6:2220/2224/2220/2224/2220/2224/
4446/4442/4446/4442/4446/4442/
得られた生機をプレヒートセットして精練後、再度ヒートセットして、厚み4.0mmの立体編物を得た。得られた立体編物は、表裏面共にメッシュ組織で、編地密度27.0コース/2.5cm、13.0ウェール/2.5cmであった。この立体編物Cの評価結果を表1に示す。
【0045】
連結糸に32dtexのポリエチレンテレフタレートモノフィラメント糸(180℃乾熱収縮率:15%)を2本引き揃えて用いた以外は、実施例2の立体編物Bと同様に編成し加工して立体編物Cを得た。評価結果を表1に示す。立体編物Bより連結糸の繊度が低下した結果、A×D値がより良好な範囲となり、MMD経緯平均値は0.0189と若干低下した。肌刺激性は2.8点と極めて優れたものであった。
【0046】
[比較例1]
表編地用糸の繊度を56dtex/60fとした以外は、実施例1の立体編物Aと同様に編成し加工して得られた立体編物について評価を行った。その結果を表1に示す。開孔面積とA×D値は範囲内であったが、総カバーファクターは範囲外となった。MMD値も範囲外となり、肌刺激性は1.8点と劣ったものであった。
【0047】
[比較例2]
連結糸の180℃乾熱収縮率が3%である以外は、実施例1の立体編物Aと同様に編成し加工して得られた立体編物について評価を行った。その結果を表1に示す。総カバーファクターと開孔面積は範囲内であったが、連結糸飛び出し面積(A)が大きく、A×D値は範囲外となった。MMD値も範囲外となり、肌刺激性は1.6点と劣ったものであった。
【0048】
[比較例3]
プレヒートセットをしない以外は、立体編物Aと同様に編成し加工して得られた立体編物について評価を行った。その結果を表1に示す。総カバーファクターと開孔面積は範囲内であったが、連結糸飛び出し面積(A)が大きく、A×D値は範囲外となった。MMD値も範囲外となり、肌刺激性は1.8点と劣ったものであった。
【0049】
[比較例4]
総カバーファクターとA×D値は範囲内であるが、メッシュ構造が12コースリピートで表面の開孔面積が好ましい範囲よりも大きい立体編物Cについて評価を行った。その結果を表1に示す。表面のMMD経緯平均値が0.0501であり、肌刺激性は1.6点と劣ったものであった。
【0050】
[比較例5]
立体ではない二次元の綿織物でMMD経緯平均値が0.0221のものを評価した。その結果、肌刺激性は1.6点で、MMD値が範囲内の立体編地よりも劣ったものであった。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のクッション材は、表面材のざらつきが小さく水分放出性に優れたクッション材であり、臥床又は着座を長時間続け、発汗した場合においても肌刺激が少なく、快適性にも優れたクッション材であるため、特に敷き寝具やシーツに最適であるが、枕や座布団、乗り物用シート、椅子等を含む一般のクッション材やそれらのカバー材として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏二層の編地と、該二層の編地を連結する連結糸とから構成された立体編物を有する表面材を持ったクッション材であって、該表面材の皮膚接触面のMMD値の経緯平均値が0.001以上、0.04以下であることを特徴とするクッション材(但し、上記MMD値は、カトーテック株式会社製「摩擦感テスターKES−SE」を使用し、評価条件は、感度H、試験台移動速度1.00mm/秒、摩擦静荷重50gf、摩擦子は指先を模した装置付属のものとし、温度20℃、湿度65%RHの環境下で測定した値とする)。
【請求項2】
立体編物の総カバーファクター(TCF)が650以上、1550以下、立体編物表面のメッシュの開孔面積が0.13cm以下、立体編物の連結糸出現面積割合(A)と連結糸直径(D)の積(A×D)が0.001以上、1.200以下(但し、Aは30以下)である請求項1に記載のクッション材。

【公開番号】特開2007−44386(P2007−44386A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233955(P2005−233955)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】