説明

クッション材

【課題】平面に対して垂直な荷重に対して十分耐え得るとともに、曲げ方向の荷重に対しても十分耐え得る高強度なクッション材を提供する。
【解決手段】例えば椅子の着座部や背もたれ部或いはベッド等の寝装具に形成されてクッション性を付与すべきクッション材1であって、連続して送り出され、その送り出し方向に繊維が略揃えられた繊維シートを落下させることにより、側面1aが縦方向の繊維の折り畳み目2を有し、且つ、繊維シートに対しその送り出し方向と略直交する方向に波状を形成させつつ落下させることにより、平面1bが折り畳み目2に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目3を有したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有するクッション材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の着座部や背もたれ部或いはベッド等の寝装具に形成されるクッション材は、一般に、ポリエステル等の繊維を積層又は折り畳み、接着剤にて接着させて成る。然るに、従来より、荷重が付与される方向(縦方向)の強度を維持すべく、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有するものが提案されている。即ち、従来のクッション材は101、図6に示すように、側面101aが縦方向(図中上下方向)に繊維の折り畳み目102を有することにより、平面101bに対して略垂直方向に付与された荷重aに十分耐えることができるよう構成されていた。
【0003】
また、従来のクッション材101においては、平面101bが折り畳み目102に対応して幅方向に延びる直線目103を有していた。これは、図7に示すように、落下する繊維シート104(繊維が固着されていない綿状態のものをシート状にしたもの)を折り畳みつつ矢印方向へ送ることにより従来のクッション材101が製造されることから、側面101aに縦方向の繊維の折り畳み目102が形成される過程で、平面101bに幅方向に延びる直線上の直線目103が形成されるのである。
【0004】
そして、例えば繊維シート104に含有させたバインダを溶融、冷却固化等することにより折り畳み目102及び直線目103を接着させれば、所望のクッション材101を得ることができる。このクッション材101によれば、その側面101aにおいて縦方向に延びる繊維の折り畳み目102を有しているため、荷重aに対して十分な強度を保つことができる。尚、かかる先行技術は、文献公知発明に係るものでないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のクッション材においては、その平面101bに直線目103を有しているため、図6に示す荷重b(クッション材を曲げる方向の荷重)が付与された場合、直線目103の接着が解かれ、当該直線目103に沿って割れが生じてしまう虞があった。即ち、従来のクッション材101においては、平面101bに垂直な荷重aに対しては耐え得るものの、曲げ方向の荷重bに対しては弱く、割れによってクッション性の維持が困難となってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、平面に対して垂直な荷重に対して十分耐え得るとともに、曲げ方向の荷重に対しても十分耐え得る高強度なクッション材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、連続して送り出され、その送り出し方向に繊維が略揃えられた繊維シートを落下させることにより、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有するクッション材において、前記繊維シートに対しその送り出し方向と略直交する方向に波状を形成させつつ落下させることにより、平面が前記折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のクッション材において、連続して送り出される繊維シートを、波状に開口した溝から落下させることにより前記波状目が形成されるとともに、落下した繊維シートを所定ピッチで送ることにより前記折り畳み目が形成されることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のクッション材において、前記落下した繊維シートを受ける受け材と、該受け材との間で繊維シートを押圧する押圧材とにより前記折り畳み目及び波状目が形成されるとともに、当該受け材の受け面及び押圧材の押圧面が前記溝の開口形状と略同一とされたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は請求項3記載のクッション材において、前記繊維シートは、所定温度で溶融するバインダを含み、所定温度で加熱後、冷却することにより折り畳み目及び波状目が接着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有しつつ、平面が折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有しているので、平面に対して垂直な荷重に対して十分耐え得るとともに、曲げ方向の荷重に対しても十分耐えることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有しつつ、平面が折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有したクッション材を連続的に得ることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、クッション材の密度を一定としつつ波状目を確実に形成することができるとともに、クッション材を高密度に形成したとしても平面の波状目を維持することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、加熱処理及び冷却処理によって波状目及び折り畳み目を接着してクッション材を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るクッション材は、例えば椅子の着座部や背もたれ部或いはベッド等の寝装具に形成されてクッション性を付与すべきもので、図1に示すように、その側面1aが縦方向(図中上下方向)の繊維の折り畳み目2を有するとともに、平面1bが折り畳み目2に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目3を有したものである。
【0016】
繊維の折り畳み目2は、クッション材1の両側面に形成されており、これにより、従来と同様、平面1bに対して略垂直方向に付与された荷重に十分耐えることができるようになっている。折り畳み目2は、後述するように、クッション材1の材料である繊維シート4(綿状のポリエステル)に含まれるバインダが所定温度で溶融して冷却固化することにより接着される。
【0017】
繊維の波状目3は、クッション材1の平面1b(上面及び下面)に形成されており、これにより、クッション材1の曲げ方向の荷重に対しても十分耐えることができるようになっている。即ち、平面1bにおける繊維の目が従来の如く直線状である場合、クッション材1に対して折り曲げ方向に荷重が付与されると、その荷重により接着が解かれて繊維の目に沿って割れが生じ易くなっているのに対し、本実施形態の如く波状にして繊維の目を屈曲させれば、付与された折り曲げ方向の荷重が分散され、波状目3が割れてしまうのを抑制することができるのである。
【0018】
尚、波状目3は、椅子や寝装具などの用途等に応じて製造過程において適宜設定されるべきものであるが、クッション材1の幅方向に蛇行しつつ延びていれば足りる。また、かかる波状目3も、折り畳み目2と同様、クッション材1の材料である繊維シート4(綿状のポリエステル)に含まれるバインダが所定温度で溶融して冷却固化することにより接着される。
【0019】
次に、上記クッション材1の製造方法について説明する。
まず、図2に示すように、ローラR1〜R3を具備した製綿機(カード)により、所定温度で溶融するバインダを含む綿状のポリエステルをシート状にして繊維シート4を得るとともに、その繊維シート4を板材7上で連続的に送り出す。当該繊維シート4は、その繊維が送り出し方向に略揃えられているとともに、多数の繊維が単に絡まった状態とされて接着されていないため、任意形状への加工が容易となっている。
【0020】
そして、板材7上で送り出された繊維シート4は、図3に示すような波状に開口した溝8に至り、その溝8から下方へ落下することとなる。然るに、落下する際、繊維シート4は、溝8の開口形状に倣い、送り出し方向と略直交する方向(幅方向)の形状が波状となって、波状目3を形成することとなる(図5参照)。尚、繊維シート4を溝8の開口から落下させる際、エアを上方から吹き付けることにより、当該繊維シート4を案内するのが好ましい。
【0021】
一方、溝8から落下した繊維シート4は、図4に示すように、受け材5で受けられつつ押圧材6により所定時間毎に繰り返し押圧されることにより所定ピッチで搬送方向(図中左方向)へ送られることとなる。具体的には、繊維シート4がクッション材1の厚み寸法まで立ち上がった時点(同図(a))で押圧材6を左方へ移動させることにより、繊維シート4を押圧しつつ受け材5も同方向へ移動させて搬送方向へ送る(同図(b))。
【0022】
押圧材6は、繊維シート4を送った後、右方へ移動するので、溝8から落下する繊維シート4は、再びクッション材1の厚み寸法まで立ち上がることとなる。従って、押圧材8による押圧を繰り返し行えば、縦方向に延びる折り畳み目2が連続して複数形成されることとなる。しかして、折り畳み目2が形成される際、それに対応して波状目3が形成されるので、図5に示すように、クッション材1の平面1bにおいて波状目3も連続して形成されることとなる。
【0023】
ところで、図5に示すように、受け材5の受け面5a及び押圧材6の押圧面6aは、それぞれ溝8の開口形状(即ち、落下する繊維シート4の幅方向の形状)と略同一の波状とされており、押圧材6によって押圧された繊維シート4は、その密度が一定とされる。従って、クッション材1を高密度に形成したとしても平面1bの波状目3を維持することができる。
【0024】
尚、図4に示すように、繊維シート4の押圧位置において針Hを上下から突出させておき、押圧材6によって押圧して離間する際、繊維シート4が図中右方向へ戻らないよう構成するのが好ましい。かかる針Hは、繊維シート4が図中右方向へ戻るのを回避する手段であれば、他の構成のものであってもよい。
【0025】
その後、折り畳み目2及び波状目3を形成した繊維シート4は、加熱装置9(図2参照)に搬送され、所定温度(繊維シート4が含有するバインダの溶融温度以上であって繊維の溶融温度以下)に加熱された後、冷却(常温に戻す等)される。これにより、繊維シート4内のバインダが溶融した後、冷却固化するので、折り畳み目2及び波状目3が強固に接着され、クッション材1を得ることができる。
【0026】
本実施形態に係るクッション材1によれば、側面1aが縦方向の繊維の折り畳み目2を有しつつ、平面1bが折り畳み目2に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目3を有しているので、平面1aに対して垂直な荷重に対して十分耐え得るとともに、曲げ方向の荷重に対しても十分耐えることができる。また、上記の如く、連続して送り出される繊維シート4を、波状に開口した溝8から落下させることにより波状目3が形成されるとともに、落下した繊維シートを所定ピッチで送ることにより折り畳み目2が形成されるので、繊維の折り畳み目2を有しつつ繊維の波状目3を有したクッション材1を連続的に得ることができる。
【0027】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば他の製造方法にて製造されたクッション材(側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有しつつ、平面が折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有したクッション材)であってもよく、ポリエステルとは異なる他の材料にて製造されたものであってもよい。更に、側面の折り畳み目は、クッション材の縦方向に延びていればよく、その途中が屈曲形成しつつ縦方向に延びたもの、所定角度有しつつ縦方向に延びたものも含む。
【産業上の利用可能性】
【0028】
連続して送り出され、その送り出し方向に繊維が略揃えられた繊維シートを落下させることにより、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有するクッション材において、繊維シートに対しその送り出し方向と略直交する方向に波状を形成させつつ落下させることにより、平面が折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有したものであれば、他の機能又は性質が付加されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施形態に係るクッション材を示す斜視図
【図2】同クッション材の製造装置を示す全体模式図
【図3】同クッション材の製造装置における溝を示す模式図
【図4】同クッション材の製造方法を示す説明図であって、(a)押圧材による押圧前(b)押圧材による押圧後を示す図
【図5】同クッション材の製造方法を示す説明図であって、平面から見た模式図
【図6】従来のクッション材を示す斜視図
【図7】従来のクッション材の製造方法を示す説明図
【符号の説明】
【0030】
1 クッション材
1a 側面
1b 平面
2 折り畳み目
3 波状目
4 繊維シート
5 受け材
5a 受け面
6 押圧材
6a 押圧面
7 板材
8 溝
9 加熱装置
H 針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して送り出され、その送り出し方向に繊維が略揃えられた繊維シートを落下させることにより、側面が縦方向の繊維の折り畳み目を有するクッション材において、
前記繊維シートに対しその送り出し方向と略直交する方向に波状を形成させつつ落下させることにより、平面が前記折り畳み目に対応しつつ幅方向に対して波状に延びた繊維の波状目を有したことを特徴とするクッション材。
【請求項2】
連続して送り出される繊維シートを、波状に開口した溝から落下させることにより前記波状目が形成されるとともに、落下した繊維シートを所定ピッチで送ることにより前記折り畳み目が形成されることを特徴とする請求項1記載のクッション材。
【請求項3】
前記落下した繊維シートを受ける受け材と、該受け材との間で繊維シートを押圧する押圧材とにより前記折り畳み目及び波状目が形成されるとともに、当該受け材の受け面及び押圧材の押圧面が前記溝の開口形状と略同一とされたことを特徴とする請求項2記載のクッション材。
【請求項4】
前記繊維シートは、所定温度で溶融するバインダを含み、所定温度で加熱後、冷却することにより折り畳み目及び波状目が接着されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のクッション材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−93181(P2008−93181A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278274(P2006−278274)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(301074274)合名会社湖西フェルト (2)
【出願人】(306035074)
【Fターム(参考)】