説明

クッション材

【課題】軽量、かつ圧力を受ける面が三次元形状に変形することにより圧力を分散するクッション材を提供すること。
【解決手段】クッション材は、テープ状体1から構成されており、全体形状は略筒状である。テープ状体1は2枚使用されており、逆向きに螺旋状になっており、互いに交差する部分を有する。テープ状体1は、テープ状体1の長手方向に延在するカーボンフィラメントが熱可塑性樹脂で固化されることにより構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンフィラメント又はカーボンステープルを有するクッション材に関する。
【背景技術】
【0002】
クッション材には、ばね、綿、ウレタン、スポンジ、羽毛等様々なものがあるが、いずれも重量がかなりある。
【0003】
一方、他の材料に比較して同等以上の剛性に必要な量が軽量であり、しかも疲労強度が大きい材料として、炭素繊維複合材料が、航空機の材料等に使用されている。例えば、特許文献1では、炭素繊維複合材料製の航空機用部材が開示されている。また、炭素繊維複合材料をばねに応用したものが特許文献2で開示されている。
【特許文献1】特開平8−300526号公報
【特許文献2】特開平6−264947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のばねはクッション材として使用した場合、ばねの軸方向にしか弾性反発力を示さず、また、人体を支持する領域が狭いため、人体の凹凸のある表面、背中面、頭部等による圧力を分散することが十分にできない。そのため、座り心地や寝心地等があまり良くない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、軽量、かつ圧力を受ける面が三次元形状に変形することにより圧力を分散するクッション材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1の発明は、多数のカーボンフィラメント又はカーボンステープルを面状に配列し熱可塑性樹脂で固化すると共に湾曲させてなるクッション材である。
【0007】
請求項1の発明によれば、クッション材の湾曲している部分で弾性反発力が得られる。このため、人体の重量による圧力が加わった場合に、圧力を受ける面が人体の凹凸に合わせて三次元形状に変化することにより、圧力を分散することができる。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、円筒状に湾曲させたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明によれば、クッション材の円筒状に湾曲している部分で弾性反発力が得られる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1発明において、球状に湾曲させたことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明によれば、クッション材の球状に湾曲している部分で弾性反発力が得られる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1のカーボンフィラメントを有する発明において、多数のカーボンフィラメントを同一方向に延在させて面状に配列したことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明によれば、同一方向に延在し面状に配列したカーボンフィラメントが湾曲している部分で弾性反発力が得られる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、波板状に湾曲させたことを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明によれば、波板状のクッション材の山又は谷において、弾性反発力が得られる。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5のカーボンフィラメントを有する発明において、前記波板の山又は谷と直交する方向にカーボンフィラメントを延在させたことを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明によれば、波板状のクッション材の山又は谷において、弾性反発力が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量、かつ圧力を受ける面が三次元形状に変形することにより圧力を分散するクッション材を提供することができる。これにより、人体の凹凸のある表面、背中面、頭部等が曲面で支持され、人体の重量による圧力を分散できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本発明では、長い連続した繊維糸をフィラメントといい、短く切断した繊維糸をステープルという。
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態のクッション材を示す。このクッション材はテープ状体1から構成されており、全体形状は略筒状である。テープ状体1は2枚使用され、逆向きに螺旋状になっており、互いに交差する部分を有する。交差部分はテープ状体1を構成する後述の熱可塑性樹脂3で互いに固定されている。交差の仕方は、交差するたびに外側になるテープ状体1が入れ替わる、いわゆる平織りである。交差する部分は前述のように熱可塑性樹脂3で固定することに代えて、接着剤等で固定してもよい。なお、この平織りは織り方の一例であって、公知の他の織り方を採用することも可能である。本実施形態のクッション材は、例えば図1(C)に示すように、複数本がカバー8内に平行に一層状(又は多層状)に配列されて使用される。
【0021】
図2は、本発明の第1実施形態に使用されるテープ状体1を示す。このテープ状体1は図2(A)に示すような一定幅のテープ状であり、炭素繊維であるカーボンフィラメント2と熱可塑性の樹脂3から構成される。カーボンフィラメント2は、熱可塑性樹脂3で固化されている。図2(B)に示すようにカーボンフィラメント2はテープ状体1の長手方向Aに平行に延在している。カーボンフィラメント2はテープ状体1の厚さ方向には熱可塑性樹脂3が含浸できる程度の層数であり、テープ状体1には約1万2千本が収束されている。熱可塑性樹脂3は軟らかい(弾性がある)方が望ましく、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂である。
【0022】
なお、テープ状体1に、図2(C)に示すように炭素繊維として多数のカーボンステープル4がランダムに交絡したものを使用してもよい。カーボンステープル4は、カーボンのリサイクルで得ることも可能なため、コスト削減ができる。
【0023】
第1実施形態において、テープ状体1中のカーボンフィラメント2は、円筒の周方向に沿って湾曲している。すなわち、円筒の径方向外方に対して凸である湾曲をしている。そのため、径方向外方からの圧力に対して弾性反発力を有する。特に互いに交差する部分では異なる方向でカーボンフィラメント2が重なるため、更に、弾性反発力が増加している。本実施形態では、円筒状のため中空であり、また、テープ状体1同士の間に隙間があるため、通気性が良くなる。また、中空の部分に一回り小さい本実施形態のクッション材、又は別部材、例えばスポンジを入れることにより、クッションの沈み込み量の大小によって剛性を調節することが可能である。
【0024】
図3は、本発明の第2実施形態のクッション材を示す。このクッション材は、全体形状は球状又は略球状であり、図3(B)に示すように、内部は中空である。図2(A)に比べかなり細幅のテープ状体5、6を平織りすることにより構成されており、テープ状体5は経線方向に、テープ状体6は緯線方向に延在している。図3(C)に示すように、テープ状体5、6は互いに交差する。交差部分はテープ状体5、6を構成する熱可塑性樹脂3で互いに固定されている。交差する部分は前述のように熱可塑性樹脂3で固定することに代えて、接着剤等で固定してもよい。なお、この平織りは織り方の一例であって、公知の他の織り方を採用することも可能である。また、中空の部分に一回り小さい本実施形態のクッション材、又は別部材、例えばスポンジを入れることにより、剛性を調節することが可能である。
【0025】
テープ状体5、6も、テープ状体1と同様に、カーボンフィラメント2が長手方向に延在する。カーボンフィラメント2は、熱可塑性樹脂3で固化されている。テープ状体5、6中のカーボンフィラメント2は、球の中心から外方に向かって凸を成して湾曲している。球の中心に対して対称位置に2つの開口部7があるが、これはテープ状体5、6を配列する際に使用する中子の支持部を挿通するためのものである。
【0026】
なお、本実施形態では、テープ状体5、6はカーボンフィラメント2が長手方向に延在するが、図2(C)に示すようなランダムに交絡したカーボンステープル4を使用してもよい。カーボンステープル4は、カーボンのリサイクルで得ることも可能なため、コスト削減ができる。
【0027】
図4は、本発明の第3実施形態のクッション材を示す。このクッション材は、全体形状は略球状であり、内部は中空である。本実施形態のクッション材は、単一糸のカーボンステープル4を球状に配置した状態で熱可塑性樹脂3により固めたものである。カーボンステープル4はランダムに交絡している(図2(C)参照)。球の中心から外方に向かって凸である湾曲をもつカーボンステープル4が存在するので、適度の弾性反発力が得られる。カーボンステープル4は、カーボンのリサイクルで得ることも可能なため、第2実施形態よりコスト削減が可能である。
【0028】
図5は、本発明の第4実施形態のクッション材を示す。このクッション材は、波板状である。波板の山又は谷に直交する方向(概略の方向を矢印Bで示す)にカーボンフィラメント2が延在している。カーボンフィラメント2は、熱可塑性樹脂3で固化されている。カーボンフィラメント2は、山又は谷の部分で湾曲しているため、弾性反発力を有する。本実施形態ではカーボンフィラメント2が波板の山又は谷に直交する方向に延在する場合を示したが、必ずしもこれに限定されず、カーボンフィラメント2が、波板の山又は谷の部分で湾曲していればよい。本実施形態のクッション材は、例えば図5(C)に示すように、複数個がカバー8内に一層状(又は多層状)に配列されて使用される。
【0029】
なお、本実施形態では、カーボンフィラメント2が波形の山の頂点を連結した直線に垂直な断面に沿って延在するが、図2(C)に示すようなランダムに交絡したカーボンステープル4を使用してもよい。カーボンステープル4は、カーボンのリサイクルで得ることも可能なため、コスト削減ができる。
【0030】
上記実施形態のクッション材は、熱可塑性樹脂3と湾曲したカーボンフィラメント2、4により、弾性反発力が得られる。このため、人体の重量がかかった場合に、重量による圧力を受ける面が人体の凹凸に合わせて3次元形状に変形することにより圧力を分散できる。これにより、寝心地や座り心地等が良好になる。また、軽量であるため、移動が容易である。
【0031】
上記実施形態のクッション材は、クッションの他にも例えば、ベッドのマットレス、枕等の中身として使用できる。例えば、ベッドのマットレスに使用した場合には、人体の重量による圧力を分散するため、寝心地が良く、また床ずれを起こしにくい。また、他の材料に比較して同等以上の剛性に必要な量が軽いため、ベッドの移動や収納が容易になる。また、吸水性がほとんどないため、汚れた場合に洗浄が容易である。第1、2実施形態のように、中空であり、隙間や穴を有している場合には、通気性が良い。これらの効果から例えば介護用のベッドに好適である。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクッション材であり、(A)が斜視図、(B)が縦断側面図、(C)が使用状態の一例の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るクッション材を構成するテープ状体であり、(A)は平面図、(B)は部分拡大図、(C)は変形例の部分拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るクッション材であり、(A)が斜視図、(B)が縦断側面図(内周面の構造は省略)、(C)は(B)の部分拡大図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るクッション材であり、(A)が斜視図、(B)が縦断側面図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係るクッション材であり、(A)が斜視図、(B)が縦断側面図、(C)が使用状態の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1、5、6 テープ状体
2 カーボンフィラメント
3 熱可塑性樹脂
4 カーボンステープル
7 テープ状体で構成された球状又は略球状のクッション材の開口部
8 クッション材のカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のカーボンフィラメント又はカーボンステープルを面状に配列し熱可塑性樹脂で固化すると共に湾曲させてなるクッション材。
【請求項2】
請求項1に記載のクッション材において、円筒状に湾曲させたことを特徴とするクッション材。
【請求項3】
請求項1に記載のクッション材において、球状に湾曲させたことを特徴とするクッション材。
【請求項4】
請求項1に記載のカーボンフィラメントを有するクッション材において、多数のカーボンフィラメントを同一方向に延在させて面状に配列したことを特徴とするクッション材。
【請求項5】
請求項1に記載のクッション材において、波板状に湾曲させたことを特徴とするクッション材。
【請求項6】
請求項5に記載のカーボンフィラメントを有するクッション材において、前記波板の山又は谷と直交する方向にカーボンフィラメントを延在させたことを特徴とするクッション材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−28229(P2009−28229A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194633(P2007−194633)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)