説明

クラウドプリントシステム、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム

【課題】小容量の記憶装置しか持たない安価な画像処理装置にて、クラウドサービスによるセキュアプリントを実現する。
【解決手段】クラウドプリントの指示を受信する受信手段と、前記指示においてセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定手段と、前記記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求手段と、前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータの受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信手段と、前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラウドプリントシステム、画像処理装置、画像処理方法、およびプログラムに関し、特にクラウドプリントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像処理装置が、インターネット上のクラウドサーバからプリントデータを取得し、印刷する機能を実現したクラウドプリントが用いられている。クラウドプリントの利点の一つとして、例えば、ユーザ環境のサーバ管理費用の削減や、他のクラウドサービスとの連携の容易さ等が挙げられる。
【0003】
通常、クラウドプリントのシステム構成では、ファイアウォールが介在するため、インターネット上のプリントサーバを起点として、画像処理装置へプリントデータを送信できない。このため、データの流れが画像処理装置からプリントサーバへデータ取得要求を発行し、プリントデータがプリントサーバから画像処理装置へ送信される、いわゆるPULL型プリントとなる。一方、従来のLAN内のプリントドライバなどから画像処理装置にプリントデータを送信する方法を、PUSH型と呼ぶ。
【0004】
通常、クラウドプリントは利用時に認証が必要とされるが、認証のタイミングは2通りある。1つ目は、画像処理装置がクラウドサーバへプリントデータを取得要求する前である。画像処理装置は操作部での認証処理を行った後に、クラウドサーバへプリントデータの取得要求を送信する。そして、画像処理装置はプリントデータを受信し、展開処理および印刷処理を実行する。
【0005】
2つ目は、画像処理装置が展開処理を完了した後である。画像処理装置はクラウドプリントサーバからプリントデータを受信し、受信したプリントデータを展開処理する。展開処理により生成した画像データを記憶装置に保存するが、保存完了後に画像データを認証可能状態とする。認証後は、保存した画像データを印刷処理する。
【0006】
2つ目の方法は、1つ目の方法と比較して認証処理後に保存した画像データを印刷処理するのみであり、認証後から印刷開始までのユーザ待ち時間が短い。なお、2つ目の方法は従来の認証を行った上でプリントをするセキュアプリントの構成に近い。従来のセキュアプリントは、LAN上で主に使用されている。セキュアプリントは、情報処理装置から投入された印刷結果を第三者に閲覧されることを抑制し、機密性を保持する機能である。
【0007】
本願発明は、上述した2つ目の認証タイミング方式を、クラウドサービスにおけるセキュアプリントに適用した場合に発生する課題を解決する手法を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−293933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近では、小容量の記憶装置しか備えていない画像処理装置がある。安価なHDDレスモデルの画像処理装置において、クラウドサービスにおけるセキュアプリント対応が要望される。しかし、従来のセキュアプリント方法は、HDDなどの大容量の記憶装置を備えていることを前提とするため、小容量に適用すると課題が発生する。この問題に対して、LANのプリントドライバによるPUSH型プリントに対しては、これまでにも提案がなされている。しかし、PULL型プリントであるクラウドプリントは、PUSH型プリントと構成が異なり、別課題が発生する。ここで扱う課題は、3点ある。
【0010】
1点目の課題を説明する。ここで、従来のセキュアプリント方法を、小容量の記憶領域を有する画像処理装置のクラウドプリントに適用した場合について述べる。通常、セキュアプリントにおける画像処理装置の処理順序は、データ受信、データ展開、認証、印刷である。具体的には、画像処理装置はプリントデータを受信すると、展開処理し、画像データを記憶装置に一時的に保存する。
【0011】
画像処理装置は、投入データの全頁分の展開処理の終了後に、該ジョブを認証待ち状態にする。その後、画像処理装置は操作部にて認証情報の入力を受け付ける。そして、画像処理装置は認証処理が成功した場合に、保存した画像データを印刷処理する。この従来のセキュアプリント処理を小容量の記憶領域に対して適用した場合、展開処理した画像データの保存領域が足りず、印刷できないジョブがある。これは、画像処理装置は展開処理中に容量フルが発生した場合に、保護処理としてジョブキャンセルするためである。つまり、小容量の画像処理装置では、容量フルの状態が頻繁に発生し、正常に全頁分の画像データを記憶できない課題が発生することとなる。
【0012】
2点目の課題を説明する。小容量セキュアプリントに関する先行技術として例えば、特許文献1がある。これはPUSH型であり、プリントデータ受信前に認証処理する。この方式は、画像処理装置が認証後にプリントデータ受信から全ての処理を実行するため、認証から印刷開始までにユーザの待ち時間が発生する。クラウドプリントではLANよりもネットワーク帯域が狭い場合が多く、そのため、受信時間が延び印刷開始までの待ち時間が更に長くなる懸念がある。一般的に、ユーザは機密性保持を必要とする原稿に対してセキュアプリントを実行する。そのようなデータに対して、認証直後に印刷処理が開始されないといった好ましくない状況が起きうる。この場合、ユーザは第三者に閲覧されたくないデータのため、印刷開始まで画像処理装置の前で待ち続けなければならない。
【0013】
なお、従来のHDDなどの大容量の記憶装置を備えた画像処理装置では、全頁を展開処理し画像データを記憶領域に保存できる。つまり、認証後に保存済みの画像データを印刷処理するため、この待ち時間は発生しない。
【0014】
3点目の課題を説明する。PUSH型プリントにおける小容量セキュアプリント方法を、クラウドプリントへ適用時に発生するものである。画像処理装置は、プリントドライバ等からPUSH型で送信されたデータの展開処理中に容量フルが発生した場合、ジョブキャンセルせずに、展開及び受信処理を一時停止する。そして、画像処理装置は該ジョブを認証待ち状態に遷移し、待機する。このとき、画像処理装置は、一時停止後からユーザの認証処理の受け付けまで、プリントドライバ等のクライアントとのセッションを維持する。
【0015】
この方法は、クラウドプリントへの適用時には、セッション管理に課題が発生する。クラウドプリントにおけるプリントサーバはインターネット上において限られた資源の構成である。つまり、世界中にある多数の画像処理装置からのプリントデータ取得要求を受け付ける高負荷サーバとなる。
【0016】
本提案は、上述したクラウドにおける小容量セキュアプリントの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本願発明は以下の構成を有する。すなわち、外部ネットワークに属するプリントサーバと、内部ネットワークに属する画像処理装置とを含むクラウドプリントシステムであって、前記画像処理装置は、ユーザから前記プリントサーバを介するクラウドプリントの指示を受信する受信手段と、前記クラウドプリントの指示において印刷物の出力時に認証処理を要するセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定手段と、前記決定手段にて決定された記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求手段と、前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータを受信し、受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信手段と、前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持手段と、前記記憶領域に保持する画像データに対し、認証処理を実行した後、印刷を行う印刷手段とを有し、前記プリントサーバは、前記プリントデータ取得要求にて指定された範囲のプリントデータを応答として送信する応答手段を有する。
【発明の効果】
【0018】
本願発明により、小容量の画像処理装置において、低負荷である、クラウドにおけるセキュアプリントを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】印刷システムの構成例を示す図。
【図2】印刷システムにおける装置間のシーケンス図。
【図3】文書リスト画面の構成例を示す図。
【図4】プリントデータの構成例を示す図。
【図5】クラウドプリント指示の構成例およびプリントデータ取得要求の例を示す図。
【図6】ジョブリスト画面の画面例を示す図。
【図7】画像処理装置におけるフローチャート。
【図8】実施形態2に係る画像処理装置の設定を説明するための図。
【図9】実施形態2に係る画像処理装置のフローチャート。
【図10】実施形態2に係るジョブリスト画面の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
[システム構成]
本発明を実施するための形態について説明する。図1(A)に本実施形態に係るクラウドプリントシステムの全体構成図を示す。このクラウドプリントシステムにて、クラウドサービスによるセキュアプリントを実施する。なお、本明細書において、インターネット1000上のクラウドプリントサーバ1001を介して提供するプリントサービスを“クラウドプリント”と記載する。また、“クラウド”もしくは“クラウドサービス”と記載した場合には、インターネットなどの外部ネットワーク上のサーバを利用したクラウドコンピューティングの利用形態一般を示すこととする。また、本明細書において、“セキュアプリント”とは、ジョブ(もしくはデータ)にパスワード等の認証情報を設定し、紙媒体等の印刷物への出力時にユーザが入力する認証情報により認証処理を実行し、出力を行う印刷処理を指す。また、認証処理を要しない印刷処理を“通常プリント”と記載する。
【0021】
情報処理装置1102と画像処理装置1200とは、内部ネットワークであるLAN1100を介して接続される。また、LAN1100は、ファイアウォール1101を介してインターネット1000に接続する。クラウドプリントサーバ1001は、インターネット1000を介して、LAN1100の情報処理装置1102、および画像処理装置1200と通信可能である。
【0022】
従来のPUSH型プリントは、情報処理装置1102上のプリントドライバ(不図示)から、画像処理装置1200へプリントデータを送信し、画像処理装置1200が印刷処理をする。クラウドプリントは、ファイアウォール1101がインターネット1000とLAN1100との間にあるために、クラウドプリントサーバ1001側を起点としたPUSH型プリントを実行することはできない。情報処理装置1102上のウェブブラウザ(不図示)などからのクラウドプリント指示を受信後に、画像処理装置1200がクラウドプリントサーバ1001へプリントデータを取得要求する。このように、画像処理装置1200がプリントデータを受信し印刷処理する、PULL型プリントとなる。この処理の詳細は、図2のシーケンス図で説明する。
【0023】
画像処理装置1200の内部構成を簡単に説明する。画像処理装置1200内の各モジュールは、システムバス1201にて相互に接続されている。CPU1202は、画像処理装置1200全体の制御処理を担う。画像処理装置1200は、ネットワーク制御部1203にて、LAN1100などのネットワーク上の他の機器と通信処理する。ここでは、情報処理装置1102からのクラウドプリント指示の受信や、クラウドプリントサーバ1001へのプリントデータ取得要求の送信、クラウドプリントサーバ1001からのプリントデータ受信などを処理する。また、ネットワーク制御部1203において、従来の情報処理装置1102からのLAN1100のようなローカルネットワーク内に閉じたデータの送受信によるプリントの受け付けも処理する。
【0024】
画像処理装置1200は受信したプリントデータを、画像展開処理部1207にて画像データに展開する。展開された画像データは1頁単位で、画像データ保存処理部1208にて記憶装置1205に保存する。画像処理装置1200は、セキュアプリント処理の場合、画像データ展開後に該プリントデータに対応するジョブを認証待ち状態に遷移する。
【0025】
セキュアプリントが指定されたジョブの場合、画像処理装置1200は操作部1204を介してユーザからの認証情報の入力を受け付け、認証処理部1206にて認証処理する。画像処理装置1200は、認証成功後に、画像データをプリンタエンジン1209に出力し印刷処理する。画像処理装置1200は、プリンタエンジン1209に出力し、印刷処理を完了した頁の画像データを記憶装置1205より順次削除する。
【0026】
図1(B)に画像処理装置1200の記憶装置1205の画像保存部(不図示)における記憶領域の分割例を示す。画像処理装置1200は、プリント以外にもコピーなどの複数機能を処理する。このため、記憶装置1205の画像保存部はジョブ種毎に分割する。図1(B)では、画像保存部の領域を通常プリントの画像データに使用する領域1031、セキュアプリントの画像データに使用する領域1032、コピー機能の画像データに使用する領域1033等に分割する。なお、記憶領域の分割方法はこれに限らず、別機能用途に更に分割しても良い。
【0027】
[シーケンス図]
図2に、本願発明に係るクラウドサービスにおけるセキュアプリントを実行するプリントシステムのシーケンス図を示す。図2では本実施形態における全体像を説明する。各処理の詳細は別途説明する。
【0028】
ユーザは、情報処理装置1102のウェブブラウザ(不図示)にてクラウドプリント指示を行う。操作開始時に、情報処理装置1102は、ログイン要求をクラウドプリントサーバ1001に通知する(S2001)。クラウドプリントサーバ1001は、情報処理装置1102に対し、ログイン要求の応答を返す(S2002)。情報処理装置1102は、文書リスト取得要求をクラウドプリントサーバ1001に通知する(S2003)。クラウドプリントサーバ1001は、情報処理装置1102に対し、文書リストを返信する(S2004)。
【0029】
情報処理装置1102は、受信した文書リストをウェブブラウザに表示する。ウェブブラウザにて表示される文書リストの画面例を図3(A)に示す。情報処理装置1102は文書リスト画面(図3(A))にて、ユーザからの文書選択を受け付ける。図3の印刷ボタン3002が選択されることにより図3(B)が表示される。また、情報処理装置1102は、選択された文書へのセキュアプリント設定及びパスワード設定を操作画面にて受け付ける。操作画面の構成例を図3(B)に示す。
【0030】
情報処理装置1102は、セキュアプリントを指定された文書の印刷要求をクラウドプリントサーバ1001に通知する(S2005)。この印刷要求には、図3(B)のパスワード設定3012にて受け付け可能な、ユーザ入力によるパスワードが含まれる。クラウドプリントサーバ1001は、指定文書に対応するデータからプリントデータを作成する(S2006)。このとき、クラウドプリントサーバ1001は、併せて図3(B)に示す画面にて入力されたパスワードをプリントデータに付与する。クラウドプリントサーバ1001は、プリントデータ作成後に、情報処理装置1102に応答を返す(S2007)。この応答には、画像処理装置1200に対して印刷要求を送信させる実行文が含まれる。本実施形態では、実行文の記述において、JavaScript(登録商標)を使用する。この実行文には、クラウドプリントサーバ1001にスプールされたプリントデータにアクセスするための位置情報であるURL(Uniform Resource Locator)などの情報が含まれる。なお、実行文については、一般的なクラウドプリントと同様であり、詳細な説明については省略する。
【0031】
情報処理装置1102は受信した実行文より、画像処理装置1200にクラウドプリント指示を送信する(S2008)。このクラウドプリント指示の内容の記述例を図5(A)に示す。このクラウドプリント指示には、クラウドプリントサーバ1001上にスプールされたプリントデータの識別子、それにアクセスするためのURLと、セキュアプリントであることと、画像データサイズ等が含まれる。画像処理装置1200は、クラウドプリント指示(S2008)に対する応答を情報処理装置1102に返す(S2009)。
【0032】
画像処理装置1200におけるクラウドプリント処理を説明する。なお、画像処理装置1200の印刷処理の詳細に関しては、図7にフローチャートを示す。ここでは、引き続き、システムのシーケンス図(図2)にて全体像を説明する。
【0033】
画像処理装置1200は、クラウドプリントサーバ1001にプリントデータの取得要求を通知する(S2010)。ここでは、プリントデータ取得要求において、プリントデータに対する分割範囲指定を使用する。ここでの分割範囲指定は、プリントデータを分割し、その一部を指定するものである。この通知内容を図5(B)に示す。この通知に対し、クラウドプリントサーバ1001は、該プリントデータの状態を「ダウンロード中」に変更する(S2011)。そして、クラウドプリントサーバ1001は、分割範囲指定分のプリントデータを画像処理装置1200に送信する(S2012)。画像処理装置1200は、分割範囲指定した分のプリントデータを受信完了した後に、クラウドプリントサーバ1001とセッションを終了する(S2012)。
【0034】
なお、指定範囲がプリントデータより小さい場合、プリントデータの送信が未完了である。そのため、クラウドプリントサーバ1001は、セキュアプリントであることを考慮し、該プリントデータの状態を「認証待ち」へ変更する(S2013)。
【0035】
画像処理装置1200は、受信したサイズ分のプリントデータの展開処理を行う(S2014)。ここでの展開処理とは、プリントデータを解釈し、出力可能な状態の画像データに変換する処理である。なお、その処理内容は特に限定するものではないため、ここでの詳細な説明は省略する。そして、画像処理装置1200は、該ジョブ状態を「Waiting」へ遷移させる。この状態にてユーザからの認証指示まで待機する。画像処理装置1200は、操作部1204にてユーザのパスワード入力を受け付け、認証処理を行う(S2015)。この際の画像処理装置1200の操作画面に関して図6に示す。
【0036】
画像処理装置1200は認証後に、該ジョブの印刷処理を開始する。このとき画像処理装置1200は、印刷完了した頁の画像データを逐次削除する(S2017)。画像処理装置1200は、S2017の印刷処理と並行し、クラウドプリントサーバ1001とのセッションを再度確立する。そして、画像処理装置1200は、未取得の該プリントデータに対してデータの範囲を指定し、取得要求を行う(S2016)。このとき、画像処理装置1200は、削除により空いた記憶領域を使用して、以降の処理を行うこととなる。
【0037】
残りのプリントデータを送信する際には、クラウドプリントサーバ1001は、該プリントデータの状態を「ダウンロード中」に変更する(S2018)。そして、クラウドプリントサーバ1001は、残りの該プリントデータを画像処理装置1200に送信する(S2019)。画像処理装置1200は、受信した残りの該プリントデータの展開処理及び印刷処理する(S2022)。S2015にてすでに認証処理を行っているため、ここでは展開処理および印刷処理を順次行うようにしてよい。
【0038】
なお、図2に示すシーケンス図では100000KByeteのプリントデータを2回(50000KByteずつ)に分けて送信している。しかし、プリントデータのデータサイズや画像処理装置1200が備える小容量の記憶媒体のサイズに応じて、さらに多くの回数に分割してデータを送信するようにしても構わない。また、プリントデータ取得要求に記載されるデータに対する所定の範囲の値は、通信状況などに応じて任意に設定できるようにしても構わない。
【0039】
本願発明では、以上の処理を行うことで、先に挙げた課題3点を解決し、クラウドによる小容量セキュアプリントを実現する。以降に各処理内容の詳細を記載する。
【0040】
[画面例]
図3(A)、(B)に、情報処理装置において表示される、クラウドプリントの対象となる文書を指定するための画面の例を示す。図3(A)にクラウドプリントサーバ1001から通知され情報処理装置1102にて表示される文書リスト画面3000を示す。文書リスト画面3000は、文書選択チェックボックス3003、文書名3004、文書作成日時3005、文書頁数3006、文書サイズ3007の項目を含む。なお、各文書に対するリスト項目や画面構成はこれに限らず、他の情報などを含むようにしても構わない。
【0041】
情報処理装置1102は、文書選択チェックボックス3003にて文書が選択され、ジョブ設定ボタン3001のクリックを受け付けた場合、ジョブ設定画面3010を表示する。なお、情報処理装置1102は、文書選択チェックボックス3003にて文書が選択され、印刷指示ボタン3002のクリックを受け付けた場合は、クラウドプリントサーバ1001へ印刷指示を送信する。
【0042】
図3(B)にクラウドプリントのジョブ設定画面3010の構成例を示す。ジョブ設定画面3010は、セキュアプリントの無効化・有効化設定3011、セキュアプリント有効時のパスワード設定3012、片面・両面などの仕上げ設定3013、印刷用紙サイズ設定3014の設定項目を含む。なお、ジョブ設定画面3010はこの構成に限らず、他の画面構成を含むようにしても構わない。
【0043】
情報処理装置1102は、ジョブ設定画面3010にてジョブ設定後に、印刷指示ボタン3022のクリックを受け付けると、クラウドプリントサーバ1001へ印刷指示を送信する。
【0044】
なお、図3(B)に示すジョブ設定画面3010の無効化・有効化設定3011において無効化している場合には、本実施形態では、当該ジョブに対して通常プリントを行うものとする。
【0045】
[データ構成]
図4にプリントデータの構成例を示す。ここでは、画像処理装置1200がクラウドプリントサーバ1001から取得するプリントデータ4001を指す。プリントデータ4001は、ジョブ属性部4002とPDLデータ部4003とから構成される。
【0046】
ジョブ属性部4002について説明する。ジョブ属性部4002では、画像処理装置1200での印刷処理に使用する原稿サイズや仕上げ設定などを指定可能である。図4では<原稿設定>として「原稿頁数」「原稿サイズ」を指定し、<仕上げ設定>として「印刷方法」を指定している。なお、ジョブ属性部の設定値はこれに限らない。
【0047】
ジョブ属性部4002には、上記に加えて、<セキュアプリント>の項目においてセキュアプリントに関する設定が可能である。セキュアプリントに関する設定を説明する。まず、セキュアプリントが有効か無効かを設定可能である。画像処理装置1200は、有効であるジョブを受信した場合に、該ジョブをセキュアプリントとして処理する。無効が設定されたジョブ、または、<セキュアプリント>の設定項目が無いジョブは、画像処理装置1200は通常プリントのジョブとして処理する。
【0048】
「ジョブ名称」には、画像処理装置1200のジョブリスト等に表示するジョブ名称を設定可能である。ジョブリストに関しては図6にて説明する。「パスワード」には、該セキュアプリントのジョブの印刷処理開始に必要なパスワードを設定する。
【0049】
PDLデータ部4003に関して説明する。PDLデータはPDL(Page Description Language)の言語仕様に基づき記載される。主に頁単位の描画情報を記述する。例では、1頁目から10頁目までの各頁のPDLデータが記述されている。画像処理装置1200では、このPDLデータに従い、展開処理し、画像データを生成する。なお、PDLの種類については、画像処理装置1200が対応するPDLデータ形式であってよい。
【0050】
[クラウドプリント指示]
図5(A)に、クラウドプリント指示の記述例を示す。図2のS2008にて用いられる、情報処理装置1102から画像処理装置1200へ送信されるデータの内容である。本実施形態では、クラウドプリント指示はXML(eXtensible Markup Language)で記述される。本実施形態に関係するタグを説明する。<JobId>タグには、クラウドプリントサーバ1001のプリントデータの識別子が記述される。<JobUrl>タグには、クラウドプリントサーバ1001上のプリントデータにアクセスするためのURLが記述される。
【0051】
<DataType>タグには、プリントデータの種類が記述される。具体的にはセキュアプリントや通常プリントなどが記述される。<ImageSize>タグには、画像データの展開後のサイズが記述される。以下、ここに記述されたサイズをプリントデータサイズとする。
【0052】
図5(B)、(C)にプリント取得要求の記述例を示す。図2のS2010、S2016にて用いられる、画像処理装置1200からクラウドプリントサーバ1001へ送信する分割範囲を指定したプリントデータ取得要求の記述例を指す。本実施形態ではプリントデータの取得要求にHTTPリクエストを使用する。
【0053】
図5(B)は、画像処理装置1200が情報処理装置1102からクラウドプリント指示を受け付けた後に、クラウドプリントサーバ1001へ送信する最初の分割範囲要求である。つまり、図2のS2010にて用いられるプリントデータ取得要求である。図5(B)の内容を説明する。HTTP GETメソッドを指定し、その後にプリントデータのパスを指定する。フィード名:Hostにてプリントデータが保持されるホストを指定する。プリントデータの範囲指定した取得要求には、Range指定を使用する。なお、ここでのRangeの値の単位は、KByteとする。図5(B)中では先頭から50000KByteを要求している。また、Connection:Keep−Aliveの設定を行わないため、範囲指定分のデータ受信を終了後に、画像処理装置1200はクラウドプリントサーバ1001とのセッション処理を終了可能である。
【0054】
図5(C)は、画像処理装置1200がクラウドプリントサーバ1001とのセッションを再度確立し、残データのプリントデータを範囲指定する取得要求である。つまり、図2のS2016にて用いられるプリントデータ取得要求である。図5(C)は、図5(B)で要求した後の50000KByte−100000KByteを要求している。その他の構成は図5(B)と同様である。
【0055】
[ジョブリスト画面]
図6に画像処理装置のジョブリスト画面の構成例を示す。画像処理装置1200は、操作部1204のジョブリスト画面6000にて、プリントジョブのリスト表示を行う。画像処理装置1200は、ジョブリスト画面6000を介して、ジョブ選択指示の受け付けや、認証指示の受け付けを行う。
【0056】
画像処理装置1200は、ジョブ6011、6012、6013に対応する枠内の押下により、選択指示を受け付ける。画像処理装置1200はジョブの背景色を変えることなどにより、選択指示を受け付けたことを表示する。操作部において、ジョブリスト6002は複数頁を表示可能であり、2頁以降がある場合はボタン6006を押下することにより頁の移動を可能とする。
【0057】
画像処理装置1200は、リスト6001によって選択することにより、プリントジョブのリストを2通りの表示を選択可能とする。表示方法として、「全て」、または、「セキュアプリント」の2通りが挙げられる。なお、他の表示方法を選択できるようにしても構わない。なお、画像処理装置1200は、「全て」が選択されている場合、通常プリントのジョブとセキュアプリントのジョブの両方を表示する。図6(A)のリスト6001のように「セキュアプリント」が選択されている場合は、セキュアプリントのジョブのみ表示する。これは、セキュアプリントのジョブは、ジョブ選択からのパスワード入力が必要になるため、選択を容易にすることを目的とした表示フィルタである。
【0058】
ジョブリスト画面6000の構成を説明する。画像処理装置1200は、処理中のジョブに対するジョブリスト6002を表示する。画像処理装置1200は、ジョブ6011、6012、6013に対応する枠内の押下により、選択指示を受け付ける。このとき、画像処理装置1200はジョブの背景色を変えることなどにより、選択指示を受け付けたことを表示する。操作部1204のジョブリストは複数頁を表示可能であり、ボタン6006を押下することにより2頁以降がある場合は頁の移動を可能とする。
【0059】
ジョブ選択後に押下するボタンに関して説明する。画像処理装置1200は、詳細ボタン6008の押下を受け付けた場合は、該ジョブの詳細情報を表示する(不図示)。画像処理装置1200は、中止ボタン6009の押下を受け付けた場合は、該ジョブを中止する。画像処理装置1200はパスワードボタン6010の押下を受け付けた場合は、認証画面6021を表示する。認証画面6021に関しては図6(B)にて説明する。
【0060】
ジョブリスト6002に示される項目は、アイコン、時刻6003、ジョブ名称6004、ジョブ状態6005等が挙げられる。アイコンは処理であるか待機中が直感的に理解できるものを表示する。時刻6003は、ジョブの受付時刻である。例えば“19:04”などを表示する。ジョブ名称6004は、ユーザが設定したものを表示する。例えば、“クラウド セキュアプリント 1”などを表示する。ジョブ状態6005は、該ジョブの状態を表示する。
【0061】
[状態表示]
セキュアプリントジョブの状態表示に関して説明する。ジョブリスト画面6000のジョブ状態6005において、本実施形態では、セキュアプリントの各ジョブの状態遷移は、以下の順で遷移し表示される。
【0062】
・受信中(クラウド セキュアプリント)
・展開中(クラウド セキュアプリント)
・認証待ち(クラウド セキュアプリント)
・印刷中(クラウド セキュアプリント)
・中止中(クラウド セキュアプリント)
画像処理装置1200がクラウドプリントサーバ1001よりプリントジョブを受信中である場合には、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「受信中」を表示する。画像処理装置1200が受信ジョブを展開処理中である場合には、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「展開中」を表示する。(ジョブ6013)。画像処理装置1200は受信と展開を並行して処理中である場合には、ここでは「展開中」を優先して表示する。
【0063】
画像処理装置1200が受信データ分を展開完了し画像データを保存すると、ジョブを認証待ち状態に遷移させ、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「認証待ち」を表示する(ジョブ6012)。次に認証操作を受け付けるが、認証操作画面については後述し、ジョブ状態を続けて説明する。ジョブの認証処理が成功時は、プリンタエンジン1209での印刷処理を開始し、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「印刷中」を表示する(ジョブ6011)。本実施形態では、印刷処理を開始後に、印刷処理を終了した画像データの空き領域を利用して受信と展開を並行して処理中である場合には、ここでは「印刷中」を優先して表示する。
【0064】
画像処理装置1200は、上記いずれかの処理中にジョブ選択後の中止ボタン6009の押下を受けつけた場合は、該ジョブの処理を中止する。中止指示を受け付けた場合は、画像処理装置1200は、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「中止中」を表示する。画像処理装置1200は、中止処理を完了すると、該ジョブをジョブリスト6002より削除する。
【0065】
なお、上記の説明では並行処理した場合に表示する状態を設定したが、並行処理の状態を交互に表示しても良い。また、ジョブの状態は、上記の設定値に限定するものではなく、必要に応じて他のジョブ状態を設けても構わないし、削減しても構わない。
【0066】
[認証操作画面]
続いて、認証画面6021について説明する。画像処理装置1200はジョブリスト画面6000にて、「認証待ち」のジョブ6012の選択を受け付け、パスワードボタン6010の押下を受け付けると図6(B)に示す認証画面6021を表示する。画像処理装置1200は、その認証画面6021にて認証情報(ここではパスワード)の入力を受け付け、更にOKボタン6022の押下を受け付けた場合に、認証処理部1206にて認証処理を行う。そして、画像処理装置1200は、認証結果を画面上に表示する。
【0067】
画像処理装置1200は認証失敗時に、図6(A)に示すジョブリスト画面6000に戻り、該ジョブ状況は「認証待ち」のままとする。キャンセルボタン6023の押下を受け付けた場合は、認証処理を実行しない。この場合も、図6(A)に示す元のジョブリストの表示画面に戻る。なお、通常プリントが指定されたジョブがジョブリスト6002にて選択されている場合には、パスワードボタン6010は、選択できないように表示しても構わない。
【0068】
[処理フロー]
図7に、画像処理装置1200のフローチャートを示す。本実施形態において、画像処理装置1200は、通常のクラウドプリントと、クラウドにおけるセキュアプリントの両方を処理可能である。本処理フローは、画像処理装置1200のCPU1202が、記憶部である記憶装置1205に記憶されたプログラムを読み出し、実行することによって実現される。
【0069】
画像処理装置1200は、情報処理装置1102からクラウドプリント指示(図5(A))を受け付ける(S7001)。画像処理装置1200は、クラウドプリント指示が、通常のクラウドプリントかセキュアプリントかを判断する(S7002)。
【0070】
通常のクラウドプリントの場合(S7002にてNO)、画像処理装置1200は、クラウドプリントサーバ1001にプリントデータ取得要求を送信する(7003)。そして、画像処理装置1200は、要求の応答として、プリントデータをインターネット1000経由で受信する(S7004)。画像処理装置1200は、受信完了後にセッション終了処理をする(S7005)。また、画像処理装置1200は、受信処理と並行し、展開処理及び印刷処理を行う(S7006)。その後、本処理フローを終了する。
【0071】
セキュアプリントの場合(S7002にてYES)、画像処理装置1200は、記憶装置1205における該ジョブに使用する保存領域サイズを決定する(S7011)。ここでは、図1(B)に示した、記憶装置1205におけるセキュアプリントの画像データに使用する領域中のサイズ1302などを指す。画像処理装置1200は、クラウドプリント指示内に記述されたプリントデータサイズと保存領域サイズを比較する(S7012)。
【0072】
プリントデータサイズが保存領域サイズに収まる場合(S7012にてYES)、画像処理装置1200は、クラウドプリントサーバ1001にプリントデータ取得要求を通知する(S7013)。画像処理装置1200は、クラウドプリントサーバ1001からプリントデータを受信し、受信完了後にクラウドプリントサーバ1001とのセッションの終了処理を行う(S7014)。画像処理装置1200は、全頁分の展開処理を行い、画像データを該ジョブ用の記憶領域に保存する(S7015)。画像処理装置1200は、全頁を展開処理後に該ジョブを「認証待ち」状態に遷移させる。
【0073】
画像処理装置1200は、ユーザからのパスワード入力を受け付け、認証処理後(S7016)に、保存済みの画像データをプリンタエンジン1209に出力し、印刷処理を行う(S7017)。そして、本処理フローを終了する。
【0074】
プリントデータサイズが保存領域サイズより大きい場合(S7012にてNO)、画像処理装置1200は、クラウドプリントサーバ1001にプリントデータを範囲指定し、取得要求する(S7021)。画像処理装置1200は、プリントデータの範囲指定分を受信し、受信完了後に、クラウドプリントサーバ1001とのセッション終了処理を行う(S7022)。画像処理装置1200は、受信したプリントデータを画像展開処理部1207にて展開処理し、画像データ保存処理部1208にて画像データを記憶装置1205に保存する(S7023)。画像処理装置1200は、受信した分の画像データの展開処理が終了後に、該ジョブを「認証待ち」状態に遷移する。
【0075】
画像処理装置1200は、認証を受け付けた後(S7024にてYES)、記憶装置1205に保存済みの画像データをプリンタエンジン1209に出力し、印刷処理を実行する。そして、画像処理装置1200は、印刷処理を完了した画像データを記憶装置1205より削除する(S7025)。画像処理装置1200は、印刷処理/削除処理(S7025)と並行して、削除し空いた該ジョブ用の記憶領域を使用し、クラウドプリントサーバ1001に残りの該プリントデータを範囲指定し取得要求を出す。そして、画像処理装置1200は、プリントデータの受信・展開・印刷処理を実行する。これらの並行処理(S7025とS7026)をジョブ終了まで繰り返し実行する。
【0076】
以上、本実施形態により、小容量の画像処理装置においてセキュアプリントを実現することができる。その際、プリントデータの展開領域が足りずに印刷できない、認証から印刷開始までにユーザに待ち時間が発生するといった点を防止することが可能となる。また、クラウドプリントサーバの冗長なセッション管理を不要とすることが可能となる。
【0077】
<実施形態2>
実施形態2では、画像処理装置1200がLAN1100上のセキュアプリントと、クラウドによるセキュアプリントの両方を処理する構成を説明する。つまり、画像処理装置1200は、ローカルネットワーク内に閉じたプリント指示と、インターネット上のプリントサーバを介したクラウドプリントの指示とに応じた複数のセキュアプリントのジョブを処理する。複数のセキュアプリントのジョブを処理するために、本実施形態では、画像処理装置1200の記憶装置1205のセキュアプリントのジョブ用の展開領域を分割し使用する。
【0078】
図8(A)に、画像処理装置1200の記憶装置1205における画像データの保存領域の構成を示す。セキュアプリントのジョブの画像データに対する展開領域は、セキュアプリントのジョブの上限数に分割する(領域8011,8012,8013,8014,8015)。つまり、この一区分が記憶装置1205上のセキュアプリント1ジョブの展開領域に相当する。従って、図8(A)に示す例の場合は、セキュアプリントのジョブを5つ同時並行して処理することが可能である。
【0079】
画像処理装置1200は、このセキュアプリントの展開領域を、LAN1100からのセキュアプリントと、クラウドからのセキュアプリントの両方に使用する。また、画像処理装置1200は記憶装置1205をセキュアプリントジョブ以外の通常プリントのジョブやコピージョブにも使用し、セキュアプリントとは別領域を当てる(領域8001、8002)。
【0080】
図8(B)に画像処理装置1200のセキュアプリント設定画面を示す。本実施形態ではセキュアプリントの設定画面8021にて、セキュアプリントジョブの上限数(設定8022)と、セキュアジョブ消去時間(設定8023)を設定可能とする。セキュアプリントジョブの上限数(設定8022)が、セキュアプリントのジョブの展開領域の分割数となる。図8(A)の場合は、上限数が“5”として設定されている(領域8011,8012,8013,8014,8015)。
【0081】
セキュアプリントのジョブ特有のその他の設定値にタイマー設定がある。このタイマー(不図示)は、画像処理装置1200が備え、投入されたセキュアプリントのジョブが認証されずに放置されている場合に、画像処理装置1200が該ジョブを一定時間経過後に削除するために使用する。つまり、設定8023にて設定された時間は、記憶部においてジョブのデータの保持時間となる。なお、これらの設定値は画像処理装置1200が再起動後に反映される。また、再起動時にセキュアプリントのジョブが保存されていた場合は削除される。
【0082】
[処理フロー]
図9に、実施形態2における画像処理装置のフローチャートを示す。本処理フローは、画像処理装置1200のCPU1202が、記憶部である記憶装置1205に記憶されたプログラムを読み出し、実行することによって実現される。
【0083】
画像処理装置1200において、LAN1100からのセキュアプリントとクラウドからのセキュアプリントとの両方を処理可能である。画像処理装置1200がいずれを処理するかは、情報処理装置1102からのクラウドプリント指示(図5(A))の受信可否に従う。つまり、画像処理装置1200は、クラウドプリント指示を受信したか否かを判定する(S9001)。画像処理装置1200は、クラウドプリント指示を受信した場合(S9001にてYES)、図7を用いて説明したフローチャートに従い処理する(S9021)。
【0084】
画像処理装置1200は、クラウドプリント指示を受信せずに、プリントジョブを受信した場合(S9001にてNO)、LAN1100からのプリントジョブとして処理する。LAN1100からのプリントドライバ等からのプリントジョブは、図4のプリントデータ構造と同様である。つまり、プリントジョブは、ジョブ属性部4002とPDLデータ部4003から構成される。画像処理装置1200は、受信したプリントジョブのジョブ属性部4002を解析し、セキュアプリントの設定有無を確認する(S9002)。
【0085】
セキュアプリントの設定が無効である場合、または、セキュアプリントの設定自体がジョブ属性に無い場合(S9003にてNO)、画像処理装置1200は、通常プリントとして受信したプリントジョブを処理する。画像処理装置1200は、受信データを展開処理し、画像データを印刷処理する(S9004)。そして、本処理フローを終了する。
【0086】
セキュアプリントの設定が有効である場合(S9003にてYES)、画像処理装置1200は、受信したプリントジョブをセキュアプリントとして処理する。画像処理装置1200は、展開処理し、画像データを記憶装置に保存する(S9011)。画像処理装置1200は、全頁分の画像データを展開処理した後に、該セキュアプリントジョブを「認証待ち」状態に遷移させ、認証指示があるまで待機する(S9012)。
【0087】
画像処理装置1200は、ユーザからの認証指示を受けた場合に認証処理を行い、記憶装置1205に保存ずみの画像データを印刷処理する(S9013)。そして、本処理フローを終了する。
【0088】
[ジョブリスト画面]
図10に、本実施形態に係る画像処理装置1200のジョブリスト画面6000を示す。画面構成は、実施形態1にて示した図6(A)の画面と同様であるため、重複する部分については、説明を省略する。本実施形態において、画像処理装置1200は、同一のジョブリスト6002にて、LAN1100からのセキュアプリントと、クラウドからのセキュアプリントの両方を表示する。
【0089】
ジョブリスト画面6000の構成を説明する。画像処理装置1200は、処理中のジョブに対するジョブリスト6002を表示する。画像処理装置1200は、ジョブ10021、10022、10023に対する枠内の押下により、選択指示を受け付ける。画像処理装置1200はジョブの背景色を変えること等で、選択指示を受け付けたことを表示する。操作部において、ジョブリスト6002は複数頁を表示可能であり、ボタン6006を押下することにより、2頁以降がある場合は頁の移動を可能とする。
【0090】
[状態表示]
本実施形態に係るセキュアプリントジョブの状態表示に関して説明する。画像処理装置1200にて、LAN1100からのセキュアプリントと、クラウドからのセキュアプリントのジョブ状態の表示に差異を設ける。これにより、ユーザに対して、いずれのジョブであるかを明確に示す。
【0091】
ジョブリスト6002のジョブ状態6005において、セキュアプリントのジョブの状態遷移は、以下の順で遷移し表示される。LAN1100上のプリンタドライバ等からのセキュアプリントのジョブ状態を列挙する。
【0092】
・受信中(LAN セキュアプリント)
・展開中(LAN セキュアプリント)
・認証待ち(LAN セキュアプリント)
・印刷中(LAN セキュアプリント)
・中止中(LAN セキュアプリント)
画像処理装置1200が各処理に対応付け、表示する状態を補足する。画像処理装置1200はLAN1100上のプリンタドライバからセキュアプリントのジョブを受信中は、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「受信中(LAN セキュアプリント)」を表示する。画像処理装置1200がLAN1100上の受信ジョブを展開処理中は、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「展開中(LAN セキュアプリント)」を表示する。画像処理装置1200は、LAN1100から受信したジョブの展開処理を全ページ分終了した場合は、ジョブリスト6002のジョブ状態6005に「認証待ち(LAN セキュアプリント)」を表示する。画像処理装置1200は受信したジョブに対し、認証処理後に印刷処理を開始すると、ジョブ状態6005に「印刷中(LAN セキュアプリント)」を表示する。画像処理装置1200は、上記のいずれかのジョブの処理中に中止指示を受け付けると、ジョブ状態6005に「中止中(LAN セキュアプリント)」を表示し、ジョブをキャンセル処理する。
【0093】
なお、クラウドサービスにおけるセキュアプリントのジョブ状態6005の表示(状態遷移)に関しては実施形態1と同様である。
【0094】
・受信中(クラウド セキュアプリント)
・展開中(クラウド セキュアプリント)
・認証待ち(クラウド セキュアプリント)
・印刷中(クラウド セキュアプリント)
・中止中(クラウド セキュアプリント)
例えば図10は、画像処理装置1200にて、クラウドからのセキュアプリント1のジョブ10021およびセキュアプリント2のジョブ10022と、LAN1100上のプリントドライバからのセキュアプリント1のジョブ10023を処理中のものである。
【0095】
1ジョブ目であるジョブ10021は、クラウドからのセキュアプリントのジョブであり、ジョブ状態が「印刷中」である。2ジョブ目であるジョブ10022は、クラウドからのセキュアプリントのジョブであり、ジョブ状態が「認証待ち」である。3ジョブ目であるジョブ10023は、LAN1100からのセキュアプリントのジョブであり、ジョブ状態が「展開中」である。
【0096】
なお、ジョブの状態は、上記の設定値に限定するものではなく、必要に応じて他のジョブ状態を設けても構わないし、削減しても構わない。また、クラウドもしくはLANを表示しているが、さらに詳細な情報(例えば、クラウドサービスの種類など)を表示するようにしても構わない。
【0097】
以上の構成にて、画像処理装置は、HDDなどの大容量の記憶領域を保持しない場合にも、LANからのセキュアプリントとクラウドサービスにおけるセキュアプリントの両方を処理できる。また、ユーザに対し、どのジョブがLANもしくはクラウドによるセキュアプリントかを画面上で提示することができる。
【0098】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ネットワークに属するプリントサーバと、内部ネットワークに属する画像処理装置とを含むクラウドプリントシステムであって、
前記画像処理装置は、
ユーザから前記プリントサーバを介するクラウドプリントの指示を受信する受信手段と、
前記クラウドプリントの指示において印刷物の出力時に認証処理を要するセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定手段と、
前記決定手段にて決定された記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求手段と、
前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータを受信し、受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信手段と、
前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持手段と、
前記記憶領域に保持する画像データに対し、認証処理を実行した後、印刷を行う印刷手段と
を有し、
前記プリントサーバは、
前記プリントデータ取得要求にて指定された範囲のプリントデータを応答として送信する応答手段を有することを特徴とするクラウドプリントシステム。
【請求項2】
前記保持手段は、前記記憶領域に保持する画像データに対し、前記印刷手段による印刷が終了した場合、前記記憶領域から当該画像データを削除することを特徴とする請求項1に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項3】
前記要求手段は、前記記憶領域に保持する画像データの削除が完了した後、前記プリントサーバとのセッションを再度確立し、前記プリントデータのうち未取得の範囲のプリントデータを要求するプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信することを特徴とする請求項2に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項4】
前記通信手段は、前記プリントデータ取得要求にて指定された範囲のプリントデータの受信が完了するごとに、前記プリントサーバと前記画像処理装置とのセッションを終了させることを特徴とする請求項3に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項5】
前記保持手段による印刷が完了した画像データに対する前記記憶領域からの削除処理と、前記プリントデータのうちの未取得の範囲のデータを前記プリントサーバから受信する処理とは、並行して実行することを特徴とする請求項4に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項6】
前記受信手段は、ローカルネットワーク内に閉じた印刷指示を更に受信し、
前記保持手段は、前記ローカルネットワーク内に閉じた印刷指示によりセキュアプリントを指示された場合、前記ローカルネットワーク内に閉じたプリントのために割り当てられた記憶領域を用いて展開処理を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項7】
前記画像処理装置は、印刷指示に対する処理の状態を表示する表示手段を更に有し、
前記表示手段は、前記印刷指示に対する処理の状態と、当該印刷指示が前記クラウドプリントもしくはローカルネットワーク内に閉じたプリントのいずれによる指示かの情報とを表示することを特徴とする請求項6に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項8】
前記記憶領域にて保持されるセキュアプリントを指定されたデータの保持時間を設定する設定手段を更に有し、
前記認証処理が、前記設定手段にて設定された保持時間を経過しても行われない場合は、前記保持手段は画像データを前記記憶領域から削除することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項9】
前記設定手段は更に、前記記憶領域に保持できるセキュアプリントのジョブの上限数を設定し、
前記決定手段は、前記設定手段にて設定されたジョブの上限数に従って、前記記憶領域を割り当てることを特徴とする請求項8に記載のクラウドプリントシステム。
【請求項10】
外部ネットワークに属するプリントサーバと通信可能に接続された、内部ネットワークに属する画像処理装置であって、
ユーザから前記プリントサーバを介するクラウドプリントの指示を受信する受信手段と、
前記クラウドプリントの指示において印刷物の出力時に認証処理を要するセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定手段と、
前記決定手段にて決定された記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求手段と、
前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータを受信し、受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信手段と、
前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持手段と、
前記記憶領域に保持する画像データに対し、認証処理を実行した後、印刷を行う印刷手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
外部ネットワークに属するプリントサーバと通信可能に接続された、内部ネットワークに属する画像処理装置における画像処理方法であって、
受信手段が、ユーザから前記プリントサーバを介するクラウドプリントの指示を受信する受信工程と、
決定手段が、前記クラウドプリントの指示において印刷物の出力時に認証処理を要するセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定工程と、
要求手段が、前記決定工程にて決定された記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求工程と、
通信手段が、前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータを受信し、受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信工程と、
保持手段が、前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持工程と、
印刷手段が、前記記憶領域に保持する画像データに対し、認証処理を実行した後、印刷を行う印刷工程と
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
ユーザから外部ネットワークに属するプリントサーバを介するクラウドプリントの指示を受信する受信手段と、
前記クラウドプリントの指示において印刷物の出力時に認証処理を要するセキュアプリントが指定されている場合、当該指示に対応するプリントデータの展開処理に使用する記憶領域のサイズを決定する決定手段、
前記決定手段にて決定された記憶領域のサイズにて保持できるサイズの範囲で、前記プリントデータの一部を指定したプリントデータ取得要求を前記プリントサーバに送信する要求手段、
前記プリントデータ取得要求に対応するプリントデータを受信し、受信完了後に、前記プリントサーバとのセッションを終了する通信手段、
前記指示に対して決定した記憶領域を使用して、前記プリントデータに対して展開処理を行い生成された画像データを保持する保持手段、
前記記憶領域に保持する画像データに対し、認証処理を実行した後、印刷を行う印刷手段
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−114515(P2013−114515A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261007(P2011−261007)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】