説明

クラウンエーテル化誘導体とその製造方法及びこれを含有する殺虫剤

【課題】農業領域及び公衆衛生領域で有用な新規クラウンエーテル化誘導体の提供。
【解決手段】下記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体及びこれを有効成分として含有する殺虫剤を提供する。
【化20】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
また、併せて、上記クラウンエーテル化誘導体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規クラウンエーテル化誘導体とその製造方法及びこれを有効成分として含有する殺虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農業領域及び公衆衛生領域で用いられる殺虫剤には、従来、多様な特性が求められている。殺虫剤に求められる特性としては、例えば、効果の持続性やスペクトルの広さ、使用時の安全性、他の薬剤や製剤補助材との併用のし易さ等が挙げられる。また、当然に安価であることも求められる。
【0003】
本発明に関連する「クラウンエーテル化誘導体」として、特許文献1には、所定の化学式で示されるアルキルクラウンエーテルを有効成分として含有する抗菌剤が開示されている(当該文献請求項1参照)。また、特許文献2には、クラウン環化合物を有効成分として含有することを特徴とする水中生物付着防止剤が開示され(当該文献請求項1参照)、実施例においてクラウン環化合物としてジベンゾ−18−クラウン−6−エーテルが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−209220号公報
【特許文献2】特開平9−136803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
農業領域及び公衆衛生領域で用いられる殺虫剤では、特定の薬剤を長期間使用することによる薬剤抵抗性を備えた害虫の出現が問題となっている。薬剤抵抗性を備えた害虫の出現を防止するため、また出現した薬剤抵抗性を備えた害虫を駆除するため、上述した種々の特性を備えた新規の殺虫剤の開発が今もなお求められている。
【0006】
これまで、クラウンエーテル化化合物については、農業害虫や衛生害虫防除に用いられる殺虫剤成分としての有用性が検討されたことはない。クラウンエーテル化化合物では、クラウンエーテル化によって従来の殺虫成分にはない薬理効果が発現することが期待され、例えば、細胞膜透過性や受容体親和性の向上によって高い害虫防除効果を発揮する化合物が得られる可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、新規殺虫剤への要請にも鑑み、農業領域及び公衆衛生領域で使用される殺虫剤成分として有用な新規クラウンエーテル化誘導体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本発明は、下記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体及びこれを有効成分として含有する殺虫剤を提供する。
【化8】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
また、本発明は、上記クラウンエーテル化誘導体を製造するため、2通りの製造方法を提供する。
まず、第一の方法では、下記化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、下記化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジンと、を反応させることによって、下記化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物を製造し、この化学式(4)で表される化合物と、下記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物と、を反応させることによって、下記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する。
【化9】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「X」はCI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5又はOSO2C6H4CH3を表す。)
【化10】


【化11】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表す。)
【化12】


(式中、「Z」はCI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5又はOSO2C6H4CH3を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
【化13】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
次に、第二の方法では、前記化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジンと、前記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物と、を反応させることによって、下記化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物を製造し、前記化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、この化学式(6)で表される化合物と、を反応させることによって、前記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する。
【化14】


(「n」は2〜6の整数を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により、農業領域及び公衆衛生領域で使用される殺虫剤成分として有用な新規クラウンエーテル化誘導体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体の第一の製造方法を説明するための図である。
【図2】本発明に係る化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体の第二の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0012】
(A)クラウンエーテル化誘導体
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体は、下記化学式(1)で表される。以下、このクラウンエーテル化誘導体について詳細に説明する。
【0013】
【化15】

【0014】
化学式(1)において、「Ar」は、環上に置換基を有しても良いヘテロ環を表す。ヘテロ環としては、具体的には、例えば、5員又は6員環のヘテロ環としてピリジン、チアゾール、テトラヒドロフラン等が挙げられる。ヘテロ環は、特に好適には3-ピリジル基、5-チアゾリル基、3-テトラヒドロフリル基のいずれかとすることが望ましい。
【0015】
ヘテロ環の置換基としては、特に限定されず、例えばハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれであってもよい)、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のハロゲン化アルキル基、C1〜C4のアルコキシ基、ジ(C1〜C4のアルキル)アミノ基、ニトロ基等が挙げられる。置換基は、特に好適には、塩素原子とすることが望ましい。化学式(1)において、「n」は、2〜6の整数を表す。
【0016】
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体は、広汎な農業害虫又は衛生害虫に対する優れた殺虫活性、殺ダニ活性等を有する。このため、この化合物は、農業害虫又は衛生害虫の殺虫剤、殺ダニ剤、シロアリ等家屋害虫防除剤、動物薬等の有効成分として使用することができる。
【0017】
(B)クラウンエーテル化誘導体の製造方法I
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体の製造方法について以下に説明する。
【0018】
(1)第一工程(製造方法I)
まず、製造方法Iの第一工程として、下記化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、下記化学式(3)で表されるイミダゾリジン化合物(2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン)と、を塩基の存在下で反応させることによって、下記化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物を製造する。第一工程の反応式を図1(A)に示す。
【0019】
【化16】

【0020】
【化17】

【0021】
【化18】

【0022】
化学式(2)及び(4)において、「Ar」は、化学式(1)で説明したように、環上に置換基を有しても良いヘテロ環を表す。また、化学式(2)おいて、「X」は、CI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5、OSO2C6H4CH3又はOSO2CF3を表す。
【0023】
この第一工程において、化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン1倍モルと、化学式(2)で表されるハロゲン化合物1.0〜1.5倍モルとが反応することで、化合物(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物を1倍モル量生成することができる。
【0024】
第一工程において、化学式(2)で表されるハロゲン化合物の添加量は、好適には化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン1倍モルに対して1.0〜1.1倍モルであることが好ましい。
【0025】
なお、化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物は、公知の製造方法(例えば、Journal of Medical Chemistry, 1999, 42(12), 2227-2234)により、もしくはこれらに準じた方法により、合成することもできる。
【0026】
第一工程で用いる塩基は、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0027】
第一工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0029】
第一工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。そして、第一工程の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0030】
(2)第二工程(製造方法I)
次に、製造方法Iの第二工程として、第一工程で得られた化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物と、下記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物とを、塩基の存在下で反応させることによって上記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する。第一工程の反応式を図1(B)に示す。
【0031】
【化19】

【0032】
化学式(5)において、「n」は、2〜6の整数を表す。また、「Z」は、CI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5、OSO2C6H4CH3又はOSO2CF3を表す。
【0033】
この第二工程において、化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物1倍モルと、化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物1倍モル〜1.2倍モルとが反応することで、化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を1倍モル量生成することができる。
【0034】
第二工程において、化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物の添加量は、化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物1倍モルに対して1.0〜1.1倍モルであることが好ましい。
【0035】
第二工程で用いる塩基は、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0036】
第二工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0038】
第二工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、第二工程の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、第二工程の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0039】
(C)クラウンエーテル化誘導体の製造方法II
続いて、本発明に係るクラウンエーテル化誘導体の他の製造方法について以下に説明する。
【0040】
(1)第一工程(製造方法II)
まず、製造方法IIの第一工程として、上記化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジンと、上記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物とを、塩基の存在下で反応させることによって、上記(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物を製造する。第一工程の反応式を図2(A)に示す。
【0041】
この第一工程において、化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン1倍モルと、化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物1倍モル〜1.5倍モルとが反応することで、化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物を1倍モル量生成することができる。
【0042】
第一工程において、化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物の添加量は、化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン1倍モルに対して1.0〜1.2倍モルであることが好ましい。
【0043】
第一工程で用いる塩基については、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CH5)N]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0044】
第1工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0046】
第一工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、本製造方法の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、本製造方法の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0047】
(2)第二工程(製造方法II)
次に、製造方法IIの第二工程として、化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、第一工程で得られた化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物とを塩基の存在下で反応させることによって上記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する。第一工程の反応式を図2(B)に示す。
【0048】
この第二工程において、化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物1倍モルと、化学式(2)で表されるハロゲン化合物1倍モル〜2倍モルとが反応することで、化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を1倍モル量生成することができる。
【0049】
第二工程において、化学式(2)で表されるハロゲン化合物の添加量は、化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物1倍モルに対して1.0〜1.1倍モルであることが好ましい。
【0050】
第二工程で用いる塩基については、その種類は特に限定されないが、好適には水素化ナトリウム(NaH)等のアルカリ金属水素化物、炭酸カリウム(KCO)や炭酸ナトリウム(NaCO)等の炭酸塩、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属水酸化物、トリエチルアミン[(CN]等の第3級アミン類等を用いることができる。
【0051】
第二工程では溶媒を用いることが望ましく、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル等のニトリル類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、水等の溶媒を1種類又は2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
また、反応混合物に、例えば、テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、 クラウンエーテルとその類似物等の相間移動触媒を添加してこれらの反応を行うこともできる。この場合において、用いる溶媒は特に限定されないが、ベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、ヘキサン、トルエン等を用いることができる。
【0053】
第二工程の反応温度は、好適には0〜200℃であることが好ましい。反応温度が0℃未満の場合には反応速度が遅くなり、200℃より高温の場合には反応速度が速くなりすぎ、副反応が進行しやすくなるため好ましくない。また、本製造方法の反応は、減圧下、常温下若しくは加圧下のいずれでも行えるが、常温下において行うことが好ましい。そして、本製造方法の反応時間は、温度条件や圧力条件等を考慮して適宜適当な時間とすることができるが、好適には30分〜24時間の範囲で行うことが好ましい。
【0054】
以上に説明した製造方法I(第一工程〜第二工程)と製造方法II(第一工程〜第二工程)を用いることにより、本発明に係る化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造することができる。
【0055】
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体は、広汎な農業害虫又は衛生害虫に対する優れた殺虫活性、殺ダニ活性、鎮痛作用、神経活性化作用等を有する。このため、この化合物は、農業害虫又は衛生害虫の殺虫剤、殺ダニ剤、シロアリ等家屋害虫防除剤、動物薬、鎮痛剤、神経活性化剤等の有効成分として使用することができる。以下、特に農業害虫又は衛生害虫の殺虫剤について説明する。
【0056】
(D)殺虫剤
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体は、農業害虫又は衛生害虫の殺虫剤の有効成分として好適に用いられ、この殺虫剤が防除作用を有する害虫として以下の害虫が挙げられる。鱗翅目害虫として、例えば、アワノメイガ(Ostrinia furnacalis)、アワヨトウ(Pseudaletia separata)、イネヨトウ(Sesamia inferens)、オオタバコガ類(Heliothis sp. )、カブラヤガ(Agrotis segetum)、キンモンホソガ(Phyllonorycter ringoniella)、コナガ(Plutella xylostella)、コブノメイガ(Cnaphalocrocis medinalis)、サンカメイガ(Scirpophaga incertulas)、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)、ニカメイガ(Chilo suppressalis)、ハスモンヨトウ(Spodoptera litura)、マメシンクイガ(Leguminivora glycinivorella)、モモシンクイガ(Carposina niponensis)、モンシロチョウ(Piers rapae crucivora)、リンゴコカクモンハマキ(Adoxophyes orana fasciata)、ヨトウガ(Mamestra brassicae)、半翅目害虫として、例えば、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis erysimi)、ミカンキジラミ(Diaphorina citri)、ミカンワタカイガラムシ(Pulvinaria aurantii)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、ヤノネカイガラムシ(Unaspis yanonensis)、ワタアブラムシ(Aphis gossypii)等が挙げられる。甲虫目害虫として、例えば、アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)、イネドロオイムシ(Oulema oryzae)、イネミズゾウムシ(Lissorhoptrus oryzophilus)、ウリハムシ(Aulacophora femoralis)、キスジノミハムシ(Phyllotreta striolata)、コクゾウムシ(Sitophilus zeamais)、タバコシバンムシ(Lasioderma serricorne)、ニジュウヤホシテントウ(Epilachna vigintiotopunctata)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)、ヒラタキクイムシ(Lyctus brunneus)、マメコガネ(Popillia japonica)、総翅目害虫として、例えば、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ミナミキロアザミウマ(Thrips palmi)、イネアザミウマ(Stenchaetothrips biformis)、双翅目害虫として、例えば、アカイエカ(Culex pipiens)、イエバエ(Musca domestica)、イネハモグリバエ(Agromyza oryzae)、ウリミバエ(Dacus(Zeugodacus) cucurbitae)、ダイズサヤタマバエ(Asphondylia sp.)、タマネギバエ(Delia antiqua)、タネバエ(Delia platura)、ミカンコミバエ(Dacus(Bactrocera) dorsalis)、網翅目害虫として、例えば、チャバネゴキブリ(Batella germanica)、イエシロアリ(Coptotermes formosanus)、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)、直翅目害虫として、例えば、トノサマバッタ(Locusta migratoria)、ダニ目害虫として、例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、動物に寄生するダニ類として、例えばヒメダニ(Ornithodoros)、ノミ類として、例えばネコノミ(Ctenocephalides felis)及びイヌノミ(Ctenocephalides canis)、シラミ類として、例えばタンカクハジラミ(Menopon)、吸虫類、条虫類、線虫類、コクシジウム等が挙げられる。
【0057】
本発明に係る殺虫剤には、複数種類の化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を混用してもよく、その効果を阻害しない範囲で他の薬剤等を混用してもよい。混用できる薬剤は、特に限定されず、例えば、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料等とすることができる。
【0058】
混用可能な殺虫剤としては、例えば、有機リン系殺虫剤(フェニトロチオン、マラチオン、アセフェート、ダイアジノンなど)、カーバメート系殺虫剤(ベンフラカルブ、メソミル、カルボスルファンなど)、ピレスロイド系殺虫剤(アレスリン、ペルメトリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、シラフルオフェンなど)、ネライストキシン系殺虫剤(カルタップ、チオシクラムなど)、ネオニコチノイド系殺虫剤(イミダクロプリド、アセタミプリド、チアメトキサム、ジノテフランなど)、IGR剤(ジフルベンズロン、シロマジンなど)、フィプロニル、エマメクチン安息香酸塩、ピリダリル、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、BT剤などが挙げられ、混用可能な殺菌剤としては、銅殺菌剤(無機銅、有機銅、ノニルフェニルエーテルスルホン酸銅など)、無機硫黄剤、有機硫黄殺菌剤(マンネブ、マンゼブ、アンバム、プロピネブ、チウラムなど)、有機リン系殺菌剤(ホセチル、トルクロホスメチルなど)、メラニン生合成阻害剤(フサライド、トリシクラゾール、ピロキロン、カルプロパミド、ジクロシメット、フェニキサニル)、ベンズイミダゾール系殺菌剤(チオファネートメチル、ベノミル、ジエトフェンカルブなど)、ジカルボキシイミド剤(イプロジオン、プロシミドンなど)、酸アミド系殺菌剤(メプロニル、フルトラニル、ボスカリド、フルメトピル、チフルザミド、メタラキシルなど)、ステロール生合成阻害剤(トリフルミゾール、テブコナゾール、イプコナゾール、メトコナゾール、エポキシコナゾールなど)、ストロビルリン系殺菌剤(アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、トリフロキシストロビンなど)、アニリノピリミジン系殺菌剤(メパニピリム、シプロジニルなど)、抗細菌剤(オキソリニック酸、テクロフタラムなど)、抗生物質殺菌剤(カスガマイシン、ポリオキシン、ストレプトマイシンなど)、プロベナゾール、フェリムゾン、TPN、フルジオキソニル、イミノクタジン酢酸塩、シアゾファミド、シフルフェナミドなどが挙げられ、混用可能な殺ダニ剤としてはビフェナゼート、ミルベメクチン、エトキサゾールなどが挙げられ、混用可能な除草剤としては、フェノキシ酸系除草剤(2,4-D、クロメプロップ、フルアジホップなど)、カーバメート系除草剤(ベンチオカーブ、モリネート、ピリブチカルブなど)、酸アミド系除草剤(プレチラクロール、ダイフルフェニカン、メフェナセット、カフェンストロール、アシュラムなど)、尿素系除草剤(ダイムロン、イソウロンなど)、スルホニルウレア系除草剤(イマゾスルフロン、チフェンスルフロンメチル、ニコスルフロン、ハロスルフロンメチルなど)、トリアジン系除草剤(アトラジン、シメトリン、シマジン、トリアジフラムなど)、ダイアジン系除草剤(ベンタゾン、ブロマシルなど)、ダイアゾール系除草剤(ピラゾレート、オキサジアゾンなど)、ビピリジリウム系除草剤(パラコートなど)、ジニトロアニリン系除草剤(トリフルラリン、ペンディメタリン、オリザリンなど)、芳香族カルボン酸系除草剤(フェントラザミド、イマザピルなど)、ピリミジルオキシ安息香酸系除草剤(ビスピリバックナトリウム塩など)、脂肪酸系除草剤(テトラピオンなど)、アミノ酸系除草剤(グリホサート、グルホシネートなど)、ニトリル系除草剤(クロルチアミドなど)、シクロヘキサンジオン系除草剤(セトキシジム、クレトジムなど)、フェニルフタルイミド系除草剤(クロルフタリムなど)、ブタミホス、ペントキサゾン、ベンゾビシクロンなどが挙げられ、混用可能な植物生長調節剤としては、ウニコナゾールP、ダミノジット、パラフィン、ワックス、ベンジルアミノプリンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明に係る殺虫剤は、通常、担体と混合され製剤化されて使用される。また、必要に応じて、さらに各種の製剤用補助剤、例えば、界面活性剤、湿展剤、固着剤、増粘剤、安定剤等を添加して、水和剤、粉剤、フロアブル剤等の剤型に製剤して用いることができる。
【0060】
化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を担体と混合する場合、担体の含量は、通常、重量比で0.1〜80%の範囲である。担体としては、カオリン、アッタパルジャイト、ベントナイト、酸性白土、バイロフィライト、タルク、珪藻土、方解石、クルミ粉、尿素、硫酸アンモニウム、合成含水酸化ケイ素等の微粉末あるいは粒状物等の固体担体、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素、イソプロパノール、エチレングリコール、セルソルブ等のアルコール、アセトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン、大豆油、綿実油等の植物油、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、水等の液体担体を用いることができる。
【0061】
乳化、分散、湿展等のために用いられる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリカルボン酸型高分子等の、陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ソルビタン脂肪酸エステル等の、非イオン性界面活性剤等が用いられる。この他、製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)、キサンタンガム等が用いられる。
【0062】
本発明に係る殺虫剤の使用方法は、特に限定されず、例えば、そのまま使用してもよいし、水等の希釈剤により所望の濃度に希釈して散布等によって使用してもよい。希釈して使用する場合、化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体の濃度は、0.001〜1.0%の範囲が好ましい。また、農園芸用殺虫剤として使用される場合、クラウンエーテル化誘導体の使用量は、畑、田、果樹園、温室等の農園芸用地1haあたり、好ましくは、20〜5000g、より好ましくは50〜1000gである。これらの使用濃度及び使用量は、剤形、使用時期、使用方法、使用場所、対象作物等によっても異なるため、上記の範囲に限定されず、適宜調整され得る。
【実施例】
【0063】
以下、製造例、製剤例、試験例を示し、本発明を具体的に説明する。まず、製造例を示すが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す製造例に限定されない。本発明において用いられる化合物は、適宜、市販品を使用することもできる。
【0064】
各製造例で得られた目的化合物の物性値において、融点、プロトン核磁気共鳴スペクトル及び炭素13核磁気共鳴スペクトルの測定は、次に示す条件で行った。
1.融点:BUECHI社製B−545を用いて測定した。
2.プロトン核磁気共鳴スペクトルと炭素13核磁気共鳴スペクトル:測定装置日本電子社製(400MHz)を用いて測定した。内分標準TMS(テトラメチルシラン)、溶媒DMSO−d6(重水素化メチルスルホキシド)を用いた。
【0065】
<製造例1>
4−(2−ニトロイミノイミダゾリジン−1−イル)メチルベンゾ−15−クラウン−5(化合物(1):化学式(6)において「n」=3の化合物)
4−クロロメチルベンゾ−15−クラウン−5(243mg, 0.77mmol)、2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン(100mg, 0.77mmol)及び炭酸カリウム(138mg、1mmol)を無水のアセト二トリル25mlに懸濁し、11時間加熱還流した。析出した生成物の結晶を吸引ろ過し、濾紙上から氷水で洗浄し乾燥した。収率:321mg(81%)、融点168−170℃。
【0066】
<製造例2>
4−(2−ニトロイミノイミダゾリジン−1−イル)メチルベンゾ−18−クラウン−6(化合物(2):化学式(6)において「n」=4の化合物)
4−クロロメチルベンゾ−18−クラウン−6(434mg, 1.2mmol)、2−(ニトロイミノ)イミダゾリジン(157mg, 12mmol)及び炭酸カリウム(216mg、1.57mmol)を無水のアセト二トリル25mlに懸濁し、11時間加熱還流した。溶媒を減圧留去析出した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:エタノール=20:1)によって生成物を分離し、粗結晶をエーテルで洗浄した。収率:234mg(43%)、融点151−154℃。
【0067】
<製造例3>
4−[1−(6−クロロピリジン−3−イルメチル)−2−ニトロイミノイミダゾリジン−1−イル]メチルベンゾ−15−クラウン−5(化学式(1)において「n」=3の化合物)
上記化合物(1)(535mg, 1.3mmol)を10mlのDMFに溶かした溶液に、水素化ナトリウム(60%,63mg,1.6mmol)を少しずつ加えた。激しい水素の発生が止んだら、反応混合物を室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、これにあらかじめ氷冷しておいた6−クロロ−3−ピリジルメチルクロリド(210mg、1.3mmol)を溶かしたDMF溶液2mlを滴下した。その後室温で12時間攪拌を続けた。DMFを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:エタノール=9:1)によって生成物を分離し、無色結晶をエーテルで洗浄した。収率:230mg(43%)、融点27−29℃。
1H NMRδ(CDCl3):3.50(4H,m)、3.76(8H、m)、3.91(4H,m)、4.13(4H,t)、4.40(2H,d)、4.48(2H,s)、6.82(3H,m)、7.36(1H,d)、7.72(1H,dd)、8.31(1H,d)
13C NMRδ:44.59, 45.11, 47.53, 50.61, 69.04, 69.10, 69.51, 69.55, 70.49, 71.14, 113.86, 113.98, 121.80, 125.01, 126.46, 128.97, 139.27, 149.48, 149.57, 149.78, 152,161.2
【0068】
<製造例4>
4−[1−(5−クロロチアゾール−2−イルメチル)−2−ニトロイミノイミダゾリジン−1−イル]メチルベンゾ−15−クラウン−5(化学式(1)において「n」=3の化合物)
上記化合物(1)(535mg, 1.3mmol)を10mlのDMFに溶かした溶液に、水素化ナトリウム(60%,63mg,1.6mmol)を少しずつ加えた。激しい水素の発生が止んだら、反応混合物を室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、これにあらかじめ氷冷しておいた2−クロロ−5−クロロメチルチアゾール(218mg、1.3mmol)を溶かしたDMF溶液2mlを滴下した。その後室温で12時間攪拌を続けた。DMFを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:エタノール=9:1)によって生成物を分離し、無色結晶をエーテルで洗浄した。収率:317mg(45%)、融点128−131℃。
1H NMRδ(CDCl3):3.47-3.58(4H,m)、3.75(8H、m)、3.90(4H,m)、4.12(4H,m)、4.39(2H,s)、4.58(2H,s)、6.77-6.80(3H,m)、7.47(1H,s)
13C NMRδ(CDCl3):43.2, 44.6, 45.1, 50.6, 69.0, 69.1, 69.5, 69.6, 70.5, 71.1, 113.9, 121.7, 126.5, 133.3, 141.6, 149.5, 149.8, 154.1, 160.5
【0069】
<製造例5>
4−[1−(6−クロロピリジン−3−イルメチル)−2−ニトロイミノイミダゾリジン−1−イル]メチルベンゾ−18−クラウン−6(化学式(1)において「n」=4の化合物)
上記化合物(2)(335mg, 0.74mmol)を10mlのDMFに溶かした溶液に、水素化ナトリウム(60%,35mg,0.89mmol)を少しずつ加えた。激しい水素の発生が止んだら、反応混合物を室温で1時間攪拌した。再び氷冷し、これにあらかじめ氷冷しておいた6−クロロ−3−ピリジルメチルクロリド(119mg、0.74mmol)を溶かしたDMF溶液2mlを滴下した。その後室温で12時間攪拌を続けた。DMFを減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(始めイソプロピルエーテル続いてクロロホルム:エタノール=9:1)によって生成物を分離し、無色結晶をエーテルで洗浄した。収率:192mg(45%)、融点33−36℃。
1H NMR(CDCl3)δ:3.50(4H,m)、3.68(4H,bs)、3.71(4H、m)、3.77(4H,m),3.92(4H,m)、4.14(4H,t)、4.40(2H,s)、4.48(2H、s)、6.81(3H,m)、7.37(1H,d)、7.73(1H,dd)、8.31(1H,d)
13C NMRδ:44.60,45.08,47.54,50.61,69.17,69.22,69.61,69.65,70.78,70.94,113.91,114.12,121.81,126.43,128.96,139.27,149.42,149.48,149.62,152.06,161.22
【0070】
次に、化学式(1)で表される化合物について製剤例と試験例を示し、本発明に係るクラウンエーテル化誘導体の殺虫剤成分としての有効性を検証した。
【0071】
<製剤例1;粉剤>
化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が3の場合のクラウンエーテル化誘導体を3重量部、クレー40重量部、タルク57重量部をそれぞれ粉砕混合することで粉剤を調製し、散粉として使用した。
【0072】
<製剤例2;水和剤>
化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が3の場合のクラウンエーテル化誘導体を50重量部、リグニンスルホン酸塩5重量部、アルキルスルホン酸塩3重量部、珪藻土42重量部をそれぞれ粉砕混合することで水和剤を調製し、水で希釈して使用した。
【0073】
<製剤例3;粒剤>
化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が4の場合のクラウンエーテル化誘導体を5重量部、ベントナイト43重量部、クレー45重量部、リグニンスルホン酸塩7重量部を均一に混合して、水を加えて練り合わせた後、押し出し式造粒機で粒状に加工し、乾燥して粒剤として使用した。
【0074】
<製剤例4;乳剤>
化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が4の場合のクラウンエーテル化誘導体を20重量部、ポリオキシエチレンアルキルアリルエ−テル10重量部、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレ−ト3重量部、キシレン67重量部を均一に混合溶解させて乳剤として使用した。
【0075】
<試験例1>
イエバエの防除効果について試験を行った。羽化3,4日目のイエバエ雌の下胸部に、以下のクラウンエーテル化誘導体試験溶液(DMSO)を0.22μl注射し、24時間後の死虫率を求め、LD50を算出した。試験は、1濃度につき10匹5連、6濃度で行った。
【0076】
結果、化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が3の場合のクラウンエーテル化誘導体のLD50は、23±4.4ng/flyであった。また、化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が4の場合のクラウンエーテル化誘導体のLD50は、17±3.1ng/flyであった。なお、参考のため、イミダクロプリド、アセトアミノプリド及びメソミルを用いて同様の試験を行った結果、LD50は、ぞれぞれ0.14ng/fly、0.68ng/fly、60ng/flyであった。
【0077】
<試験例2>
ワタアブラムシの防除効果について試験を行った。製剤例2に準じて調製した水和剤を水で5000倍に希釈して100μg/mlとした薬液に、キュウリ子葉を浸漬した。この子葉を直径9cmシャーレの底に敷いた湿らせたろ紙上に置いた。この処理葉にワタアブラムシ無翅胎生雌虫を30頭放飼した後にシャーレの蓋をし、25℃の定温室内に静置した。120時間後に生死虫数を調査した。
【0078】
結果、有効成分濃度100μg/mlで、化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が3又は4の場合のクラウンエーテル化誘導体で、死亡率50%以上の優れた効果が認められた。
【0079】
<試験例3>
モモアカアブラムシの防除効果について試験を行った。2葉期のハクサイ苗にモモアカカブラムシ成虫を放飼し、数日間放置することで定着させた。その後、地上部を切り取り、製剤例2に準じて調製した水和剤を水で5000倍に希釈して100μg/mlとした薬液に浸漬した。これを直径9cmシャーレの底に敷いた湿らせたろ紙上に設置し25℃の定温室内に静置した。120時間後に生死虫数を調査した。
【0080】
結果、有効成分濃度100μg/mlで、化学式(1)において「Ar」が6−クロロピリジル基、「n」が3又は4の場合のクラウンエーテル化誘導体で、死亡率50%以上の優れた効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るクラウンエーテル化誘導体及びこれを有効成分として含有する殺虫剤は農園芸上および衛生上有害な生物に対し優れた防除効果を示す。従って、本発明は、農園芸生産現場、畜産、衛生管理場面で広く利用することができ、これらの産業に大きく貢献できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体。
【化1】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のクラウンエーテル化誘導体を有効成分として含有する殺虫剤。
【請求項3】
下記化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、下記化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジンと、を反応させることによって、下記化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物を製造する方法。
【化2】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「X」はCI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5又はOSO2C6H4CH3を表す。)
【化3】


【化4】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表す。)
【請求項4】
前記化学式(4)で表されるニトロイミダゾリジン化合物と、下記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物と、を反応させることによって、下記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する方法。
【化5】


(式中、「Z」はCI、Br、I、OSO2CH3、OSO2C6H5又はOSO2C6H4CH3を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
【化6】


(式中、「Ar」は環上に置換基を有しても良いヘテロ環基を表し、「n」は2〜6の整数を表す。)
【請求項5】
前記化学式(3)で表される2−(ニトロイミノ)イミダゾリジンと、前記化学式(5)で表されるベンゾクラウンエーテルハロゲン化合物と、を反応させることによって、下記化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物を製造する方法。
【化7】


(「n」は2〜6の整数を表す。)
【請求項6】
前記化学式(2)で表されるハロゲン化合物と、前記化学式(6)で表されるイミダゾリジンクラウンエーテル化合物と、を反応させることによって、前記化学式(1)で表されるクラウンエーテル化誘導体を製造する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−180187(P2010−180187A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27088(P2009−27088)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】