説明

クラッチプレートにおいてセンタリングされたピストンを備えたトルクコンバータ

【課題】カバーへのピストン及びクラッチプレートの結合を単純化する。
【解決手段】カバーと、カバーに選択的に結合されるためのブリッジングクラッチ118とが設けられており、該ブリッジングクラッチ118が、カバー122に固定されておりかつ内側半径方向面170を有するクラッチプレート164と、該内側半径方向面とは反対側の外側半径方向面168を有するピストン134とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して液圧式トルクコンバータ、特に、ブリッジングクラッチを有する液圧式トルクコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
引用したことにより本明細書に記載されたものとする米国特許第7011196号明細書は、ブリッジングクラッチを備えた液圧式トルクコンバータを記載している。
【0003】
図1において、従来のトルクコンバータ10は、カバー12と、インペラ14と、タービン16と、ブリッジングクラッチ18とを有する。トルクコンバータ10は、孔20において結合されたエンジンによって駆動される。カバー12は、固定結合及びシールされた、例えば溶接された前側カバー22及び後側カバー24を有する。インペラ14は後側カバー24に堅固に取り付けられている。タービン16は例えばリベット28によってタービンハブ26に取り付けられている。タービンハブ26は、例えばスプライン32によってシャフト30に回転不能に取り付けられている。シャフト30は、例えばトランスミッションの入力シャフトであることができる。
【0004】
ブリッジングクラッチ18のピストンを、前側カバー22に後で溶接される別個の部材に結合するために、板ばねが知られている。択一的に、プレートの形式であることができるピストンは、前側カバー22にスプライン結合されており、このことは、がたつき又は騒音苦情を生じるおそれがある。別の方法は、通常は摩擦面の半径方向外側に位置決めされた板ばねを用いてピストンを前側カバー22に取り付けることである。
【特許文献1】米国特許第7011196号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、カバーへのピストン及びクラッチプレートの結合を単純化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はトルクコンバータを提供し、このトルクコンバータは、カバーと、カバーに選択的に結合されるためのブリッジングクラッチとを有し、ブリッジングクラッチは、カバーに固定されたクラッチプレートを有しており、このクラッチプレートは、内側半径方向面を有しており、内側半径方向面と向き合った外側半径方向面を有するピストンを有する。
【0007】
本発明は、トルクコンバータを組み立てる方法をも提供し、この方法は、カバーを提供し、カバーにクラッチプレートを結合し、クラッチプレートが内側半径方向面を有し、ピストンを内側半径方向面に押し込むことを含む。
【0008】
本発明は有利には、カバーへのピストン及びクラッチプレートの結合を単純化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の1つの実施形態が図面を参照しながら説明される。
【0010】
図2は、本発明による、例えばトランスミッションの入力シャフトであることができるシャフト130に結合するためのトルクコンバータ110を示している。トルクコンバータ110は、前側カバー122と、ブリッジングクラッチ118と、カバーフランジ162とを有している。前側カバー122に取り付けられたエンジンは中心軸線CAを中心として前側カバー122を回転させる。前側カバー122からのトルクは、インペラ及びタービンを液圧式に使用する1つのモードにおいて、シャフト130に回転不能に結合されたタービンハブへ伝達される。カバーフランジ162は前側カバー122に堅固に取り付けられており、例えば、カバーフランジ162内に配置されたシャフト130(概略的に示されている)における軸受を介して支持されていることができる。
【0011】
ブリッジングクラッチ118は、ピストン134と、クラッチプレート164と、摩擦面キャリヤ140とを有する。カバー122は摩擦面174を有することができ、摩擦面キャリヤ140は摩擦面176,178を有することができ、クラッチプレート164は摩擦面180を有することができる。組立て工程において、環状の摩擦面キャリヤ140がカバー122に当接して配置されることができ、次いで、ポット状のクラッチプレート164が、例えば板ばね173を用いてカバー122に取り付けられることができる。クラッチプレート164は、例えば、板ばね173を貫通するリベット175によってカバー122にリベット締めされることができる。クラッチプレート164は、軸方向に延びた内側半径方向面170を有している。
【0012】
ピストン134は、環状のピストンプレートであり、カバーフランジ162によって支持されておりかつシール166によってシールされた基部144を有する。ピストン134の、軸方向に延びた外側半径方向面168は、クラッチプレート164の面170内でセンタリングされている。面168と170との間の領域は、シール172によってシールされている。ピストン134と、カバーフランジ162と、クラッチプレート164とは同じ角速度を有するので、シール166,172は回転方向で定置の固定シールである。対照的に、カバーフランジ162とシャフト130とは必ずしも同じ角速度を有するわけではないので、カバーフランジ162は運動用シールを用いてシャフト130に対してシールされている。
【0013】
ピストン134は、領域148と150との間の制御された差圧に従ってトルクコンバータ110内で軸方向に移動することができる。シール172によってピストン134とクラッチプレート164とをシールすることによって、クラッチプレート164の領域とピストン134とは、クラッチを適用する場合に有効領域となる。
【0014】
領域148よりも領域150においてより高い圧力を導入することによってブリッジングクラッチ118が係合されることができる。この差圧はピストン134及びクラッチプレート164を軸方向にカバー122に向かって移動させ、これにより、ばね173を圧縮し、摩擦面174,176,178,180を係合させる。摩擦面174,176,178,180の係合は、ブリッジングクラッチ118を係合させる。ブリッジングクラッチ118が係合させられている場合には、エンジンからのトルクはトルクコンバータ110によって、直接機械結合を介してシャフト130に伝達される。対照的に、ブリッジングクラッチ118が係合させられていない場合には、エンジンからのトルクは、インペラ及びタービンを用いて作動流体を介してトルクコンバータ110によってシャフト130へ伝達される。
【0015】
ピストン134は、有利には、既に組み立てられたポット状のクラッチプレート164内にピストンを押し込むことによって組み立てられることができる。この実施形態における別の結合は不要である。
【0016】
カバーフランジ162とクラッチプレート164との間においてピストン134をセンタリングすることは、スプライン及び溶接を使用することに関連した問題をも回避する。組立ては単純化されている。
【0017】
リベット175は半径方向でカバーフランジ162と、軸方向に延びた面168との間に位置決めされている。リベット175と、カバーフランジ162の軸方向に延びた外面163と、軸方向に延びた面168との半径方向位置は、それぞれ、図2においてR1、R2及びR3である。
【0018】
摩擦面174,176,178,180の半径方向内側の位置R3にリベット175を位置決めすることにより、摩擦面174,176,178,180の半径方向位置R4が最大化されることができ、ひいては有利には摩擦面の面積を最大化する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のトルクコンバータを示す図である。
【図2】本発明によるトルクコンバータの1つの実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
110 トルクコンバータ、 118 ブリッジングクラッチ、 122 前側カバー、 130 シャフト、 134 ピストン、 140 摩擦面キャリヤ、 144 基部、 148,150 領域、 162 カバーフランジ、 164 クラッチプレート、 166 シール、 168 外側半径方向面、 170 内側半径方向面、 172 シール、 173 板ばね、 175 リベット、 174,176,178,180 摩擦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクコンバータにおいて、
カバーと、
該カバーに選択的に結合されるためのブリッジングクラッチとが設けられており、該ブリッジングクラッチが、カバーに固定されておりかつ内側半径方向面を有するクラッチプレートと、前記内側半径方向面と向き合った外側半径方向面を有するピストンとを有することを特徴とする、トルクコンバータ。
【請求項2】
さらに、カバーに固定されたカバーフランジが設けられており、ピストンの内側半径方向面と向き合った、軸方向に延びた面を提供しており、ピストンが半径方向でカバーフランジとクラッチプレートとの間に延びている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項3】
さらに、ピストンとカバーフランジとの間に固定シールが設けられている、請求項2記載のトルクコンバータ。
【請求項4】
さらに、ピストンとクラッチプレートとの間に固定シールが設けられている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項5】
さらに、クラッチプレートをカバーに結合する板ばねが設けられている、請求項4記載のトルクコンバータ。
【請求項6】
さらに、カバーとクラッチプレートとの間に位置決めされた摩擦面キャリヤが設けられている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項7】
クラッチプレートがポット状である、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項8】
ピストンが環状のピストンプレートである、請求項7記載のトルクコンバータ。
【請求項9】
クラッチプレートが、外側半径方向面の内側の半径方向位置においてカバーに結合されている、請求項1記載のトルクコンバータ。
【請求項10】
トルクコンバータを組み立てる方法において、
カバーを提供し、
カバーにクラッチプレートを結合し、クラッチプレートが内側半径方向面を有しており、
内側半径方向面にピストンを押し込むことを含むことを特徴とする、トルクコンバータを組み立てる方法。
【請求項11】
ピストンが環状のピストンプレートである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
カバーへのクラッチプレートの結合が、リベット締めを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
ピストンが、クラッチプレートとカバーとの結合部と同じ半径方向位置において区分を有する、請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−36376(P2009−36376A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194389(P2008−194389)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany