説明

クラッチユニット

【課題】レバー操作時、外側センタリングばねの不安定な挙動による異音の発生を未然に防止する。
【解決手段】レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部11と、レバー側クラッチ部11からの入力トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部12とからなり、レバー側クラッチ部11は、レバー操作により回転するレバー側外輪14と回転が拘束されたカバー24との間に設けられ、レバー側外輪14を中立状態に復帰させる外側センタリングばね19とを備え、カバー24は外側センタリングばね19に当接してその外側センタリングばね19側に膨出する傾斜部24gを有し、その傾斜部24gの最外径に位置する隅R面24g1を、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の外側センタリングばね19の軸方向移動量を抑制する形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達するレバー側クラッチ部と、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを有するクラッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、円筒ころやボール等の係合子を用いるクラッチユニットにおいては、入力側部材と出力側部材との間にクラッチ部が配設される。このクラッチ部は、前述の入力側部材と出力側部材間に形成される楔すきまに円筒ころやボール等の係合子を係合・離脱させることによって、入力トルクの伝達・遮断を制御する構成になっている。
【0003】
本出願人は、例えば、レバー操作により座席シートを上下調整する自動車用シートリフタ部に組み込まれ、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達するレバー側クラッチ部と、入力側からの回転トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とを具備したクラッチユニットを先に提案している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図27は前述の特許文献1に開示された従来のクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図、図28は図27のD−D線に沿う断面図、図29は図27のE−E線に沿う断面図である。
【0005】
図27および図28に示すように、レバー側クラッチ部111は、レバー操作によりトルクが入力される入力側部材としてのレバー側外輪114と、そのレバー側外輪114からのトルクをブレーキ側クラッチ部112に伝達する連結部材としての内輪115と、レバー側外輪114と内輪115間での係合・離脱によりレバー側外輪114からの入力トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子としての円筒ころ116と、各円筒ころ116を円周方向に所定間隔で保持する保持器117と、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪123と、保持器117とブレーキ側外輪123の間に設けられ、レバー側外輪114からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器117を中立状態に復帰させる第一の弾性部材としての内側センタリングばね118と、レバー側外輪114とブレーキ側外輪123の間に設けられ、レバー側外輪114からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力でレバー側外輪114を中立状態に復帰させる第二の弾性部材としての外側センタリングばね119とで主要部が構成されている。
【0006】
なお、図中、113はレバー側外輪114に加締め固定されてレバー側外輪114と共に入力側部材を構成するレバー側側板、131はウェーブワッシャ130を介して出力軸122に取り付けられたワッシャである。
【0007】
一方、図27および図29に示すように、ブレーキ側クラッチ部112は、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪123と、レバー側クラッチ部111からのトルクが入力される連結部材としての内輪115と、ブレーキ側外輪123と出力軸122間の楔すきまに配設され、ブレーキ側外輪123と出力軸122間での係合・離脱により内輪115からの入力トルクの伝達と出力軸122からの逆入力トルクの遮断を制御する複数対の係合子としての円筒ころ127とで主要部が構成されている。
【0008】
なお、内輪115の軸方向端部から径方向外側に延在して軸方向に屈曲した拡径部115cは、円筒ころ127を円周方向に所定間隔で保持する保持器として機能する。図中、124,125はブレーキ側外輪123と共に静止側部材を構成するカバーおよびブレーキ側側板で、ブレーキ側外輪123とカバー124はブレーキ側側板125により一体的に加締め固定される。128は各対の円筒ころ127間に配置された例えば断面N字形の板ばね、129はブレーキ側側板125に取り付けられた制動部材としての摩擦リングである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−210114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に開示された従来のクラッチユニットでは、静止側部材をブレーキ側外輪123、カバー124およびブレーキ側側板125で構成し、ブレーキ側外輪123とカバー124はブレーキ側側板125により一体的に加締め固定された構造を備えている。また、レバー操作でもってレバー側外輪114を回転させることにより、レバー側外輪114からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力でレバー側外輪114を中立状態に復帰させる外側センタリングばね119が、ブレーキ側外輪123と共に静止側部材を構成するカバー124とレバー側外輪114との間に設けられた構造を備え、その外側センタリングばね119をカバー124に当接させている。
【0011】
以上のような構造を備えたクラッチユニットの場合、レバー操作でもってレバー側外輪114を回転させることにより、レバー側外輪114からの入力トルクで外側センタリングばね119が弾性力を蓄積して拡径した後、そのレバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に、カバー124を摺動する外側センタリングばね119がそのカバー124の傾斜部124g(図27参照)に乗り上げて、対向するレバー側外輪114に接触することがある。この外側センタリングばね119の摺動による乗り上げでもって外側センタリングばね119がレバー側外輪114と接触することにより僅かな異音が発生する可能性があった。
【0012】
また、図30に示すように、前述した外側センタリングばね119は、その両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部119aを有するC字状帯板ばねである。一方の係止部119aおよび他方の係止部119aは、外側センタリングばね119の両端の中央部位に一条のスリットを周方向に沿って形成し、そのスリット両側部分の一方を径方向外側に屈曲させることにより形成されている。ここで、一方の係止部119aは帯板幅方向で一方の片側部分を屈曲させることにより形成され、他方の係止部119aは帯板幅方向で他方の片側部分を屈曲させることにより形成されていることから、入力トルクの作用時に、一方の係止部119aを支点として他方の係止部119aを回転させるようなモーメント力が発生し易く、外側センタリングばね119の挙動が安定せず、それが原因で僅かな異音が発生する可能性もあった。
【0013】
そこで、本発明は前述の改善点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、レバー操作時、外側センタリングばねのレバー側外輪への接触やその外側センタリングばねの不安定な挙動による異音の発生を未然に防止し得るクラッチユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るクラッチユニットは、入力側に設けられ、レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、レバー側クラッチ部からの入力トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなる構成を具備する。
【0015】
本発明におけるレバー側クラッチ部は、レバー操作により回転する入力側部材と、回転が拘束された静止側部材と、入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる弾性部材とを備えた構造を具備する。
【0016】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明のクラッチユニットは、静止側部材は弾性部材に当接してその弾性部材側に膨出する傾斜部を有し、その傾斜部を、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状としたことを特徴とする。ここで、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状は、傾斜部の最外径に位置する隅R面、あるいは、傾斜部の最外径から径方向内側に位置する傾斜面に施されていることが望ましい。
【0017】
本発明では、傾斜部を、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状としたことにより、レバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に、静止側部材を摺動する弾性部材がその静止側部材の傾斜部に乗り上げることを抑制することができ、その弾性部材が入力側部材に接触することを回避することができて異音の発生を防止できる。
【0018】
また、本発明のクラッチユニットは、弾性部材がその両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部を有するC字状帯板ばねであり、一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で同一位置に形成したことを特徴とする。ここで、一方の係止部と他方の係止部とは、帯板幅方向で中央位置に形成するか、あるいは、帯板幅方向で両側位置に形成することが望ましい。
【0019】
本発明では、弾性部材がその両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部を有するC字状帯板ばねであり、一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で同一位置に形成したことにより、弾性部材の両端が帯板周方向中心線に対して対称形状となることから、入力トルクの作用時に発生するモーメント力を抑制することができ、外側センタリングばねの挙動が安定化することで異音の発生を防止できる。
【0020】
このクラッチユニットにおけるレバー側クラッチ部は、レバー操作によりトルクが入力される入力側部材と、入力側部材からのトルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する連結部材と、入力側部材と連結部材間での係合・離脱により入力側部材からの入力トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子と、各係合子を円周方向に所定間隔で保持する保持器と、回転が拘束された静止側部材と、保持器と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器を中立状態に復帰させる第一の弾性部材と、入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる第二の弾性部材とを備えた構成が可能である。なお、このレバー側クラッチ部の係合子は円筒ころが望ましい。
【0021】
このクラッチユニットにおけるブレーキ側クラッチ部は、レバー側クラッチ部からのトルクが入力される連結部材と、トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束された静止側部材と、その静止側部材と出力側部材間の楔すきまに配設され、両部材間での係合・離脱により前記連結部材からの入力トルクの伝達と出力側部材からの逆入力トルクの遮断を制御する複数対の係合子とを備えた構成が可能である。なお、このブレーキ側クラッチ部の係合子は円筒ころが望ましい。
【0022】
本発明に係るクラッチユニットは、レバー側クラッチ部およびブレーキ側クラッチ部を自動車用シートリフタ部に組み込むことで自動車用途として適している。その場合、入力側部材が操作レバーに結合され、出力側部材が自動車用シートリフタ部のリンク機構に連結された構造となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、傾斜部を、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状としたことにより、レバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に、静止側部材を摺動する弾性部材がその静止側部材の傾斜部に乗り上げることを抑制することができ、その弾性部材が入力側部材に接触することを回避することができて異音の発生を防止できる。
【0024】
また、弾性部材がその両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部を有するC字状帯板ばねであり、一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で同一位置に形成したことにより、弾性部材の両端が対称形状となることから、入力トルクの作用時、一方の係止部を支点として他方の係止部を回転させるようなモーメント力が抑制することができ、外側センタリングばねの挙動が安定化することで異音の発生を防止できる。
【0025】
その結果、自動車用シートリフタ部にクラッチユニットを組み込んだ場合に、座席シートを上下調整させるレバー操作も良好となり、搭乗者にとって快適なレバー操作が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態におけるクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図である。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】(a)はレバー側側板を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図7】(a)はレバー側外輪の一例を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図8】(a)は内輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図9】保持器を示す斜視図である。
【図10】(a)は保持器を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の断面図である。
【図11】(a)は内側センタリングばねを示す正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図12】(a)は外側センタリングばねの一例を示す斜視図、(b)は外側センタリングばねの他例を示す斜視図である。
【図13】(a)は出力軸を一方の側から見た斜視図、(b)は出力軸を他方の側から見た斜視図である。
【図14】(a)は出力軸を示す断面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図15】(a)はブレーキ側外輪を示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図16】(a)はカバーを示す断面図、(b)は(a)の左側面図である。
【図17】(a)はブレーキ側側板を示す断面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図18】(a)は摩擦リングを示す正面図、(b)は(a)の左側面図、(c)は(a)の右側面図である。
【図19】(a)はブレーキ側側板にブレーキ側外輪を組み付ける前の状態を示す斜視図、(b)はブレーキ側側板にブレーキ側外輪を組み付けた後の状態を示す斜視図である。
【図20】ブレーキ側側板にブレーキ側外輪およびカバーを組み付けた状態を示す斜視図である。
【図21】ブレーキ側側板とブレーキ側外輪とカバーを加締めにより一体化した状態を示す斜視図である。
【図22】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図23】(a)はブレーキ側側板、ブレーキ側外輪、カバーおよび内側センタリングばねに対して保持器を組み付ける前の状態を示す斜視図、(b)はブレーキ側側板、ブレーキ側外輪、カバーおよび内側センタリングばねに対して保持器を組み付けた後の状態を示す斜視図である。
【図24】本発明の他の実施形態におけるクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図である。
【図25】自動車の座席シートを示す概念図である。
【図26】(a)はシートリフタ部の一構造例を示す概念図、(b)はその要部拡大図である。
【図27】従来のクラッチユニットの全体構成を示す縦断面図である。
【図28】図27のD−D線に沿う横断面図である。
【図29】図27のE−E線に沿う横断面図である。
【図30】従来のクラッチユニットにおける外側センタリングばねを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の実施形態におけるクラッチユニットXの全体構成を示す縦断面図、図2は図1に示すクラッチユニットXの右側面図、図3は図1に示すクラッチユニットXの左側面図、図4は図1のA−Aに沿う横断面図、図5は図1のB−B線に沿う横断面図である。また、図6〜図18はクラッチユニットXの主要な各構成部品を示す図である。図19〜図23はクラッチユニットXの主要な構成部品の組み付け状態を示す図である。
【0028】
クラッチユニットXは、例えばレバー操作により座席シートの高さ調整を行う自動車用シートリフタ部〔図25および図26(a)(b)参照〕に組み込まれる。このクラッチユニットXは、図1〜図5に示すように、入力側に設けられたレバー側クラッチ部11と、出力側に設けられた逆入力遮断機能のブレーキ側クラッチ部12とをユニット化した構成となっている。
【0029】
レバー側クラッチ部11は、図1、図2および図4に示すように、例えば操作レバー(図示せず)が連結された入力側部材としてのレバー側側板13およびレバー側外輪14と、そのレバー側外輪14からのトルクをブレーキ側クラッチ部12に伝達する連結部材としての内輪15と、その内輪15の外周面15aとレバー側外輪14の内周面14aとの間に形成された楔すきま20に配設された係合子としての例えば複数の円筒ころ16と、円筒ころ16を円周方向等間隔に保持する保持器17と、その保持器17を中立状態に復帰させるための第一の弾性部材である内側センタリングばね18と、レバー側外輪14を中立状態に復帰させるための第二の弾性部材である外側センタリングばね19とを有する。なお、後述の出力軸22の端部にウェーブワッシャ30を介してワッシャ31を圧入することにより、構成部品の抜け止めとしている(図1参照)。
【0030】
ロック型と称されるタイプで逆入力遮断機能を有するブレーキ側クラッチ部12は、図1、図3および図5に示すようにレバー側クラッチ部11からのトルクが入力される連結部材としての内輪15と、出力側部材としての出力軸22と、回転が拘束された静止側部材としてのブレーキ側外輪23、カバー24およびブレーキ側側板25と、そのブレーキ側外輪23と出力軸22間の楔すきま26に配設され、両部材間での係合・離脱により内輪15からの入力トルクの伝達と出力軸22からの逆入力トルクの遮断を制御する複数対の係合子としての円筒ころ27と、各対の円筒ころ27間に介挿され、それら円筒ころ27同士に離反力を付勢する弾性部材としての例えば断面N字形の板ばね28とで主要部が構成されている。なお、出力軸22には突起22fが設けられ、この突起22fがクリアランスをもって挿入された孔15dが内輪15に設けられている(図1参照)。
【0031】
次に、このクラッチユニットXにおけるレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ部12の主要な構成部品について詳述する。
【0032】
図6(a)(b)はレバー側クラッチ部11のレバー側側板13を示す。このレバー側側板13は、その中央部位に出力軸22および内輪15が挿通される孔13aが形成され、外周縁部に複数(例えば5つ)の爪部13bが突設されている。これらの爪部13bは、軸方向に屈曲成形されてその先端部を二股状とし、後述するレバー側外輪14の切欠き凹部14e〔図7(c)参照〕に挿入して二股状先端部を外側へ拡開させることにより、レバー側側板13をレバー側外輪14に加締め固定している。なお、図中の符号13cは、座席シートの高さ調整を操作するための操作レバー(図示せず)をレバー側側板13に取り付けるための複数(例えば4つ)の孔である。
【0033】
図7(a)〜(c)はレバー側外輪14を示す。このレバー側外輪14は、一枚の板状素材をプレス加工によりカップ状に成形したもので、中央部14cに出力軸22および内輪15が挿通される孔14bが形成され、その中央部14cから軸方向に延びる筒状部14dの内周には、複数のカム面14aが円周方向等間隔に形成されている(図4参照)。
【0034】
このレバー側外輪14の外周縁部には複数(例えば3つ)の爪部14f,14gが突設されて軸方向に屈曲成形されている。これら爪部14f,14gのうち、一つの爪部14fは、後述する外側センタリングばね19の二つの係止部19a〔図12(a)(b)参照〕間に挿入配置されて係止され、残り二つの爪部14gは、後述するブレーキ側外輪23の端面に接触した状態でレバー側外輪14の回転によりそのブレーキ側外輪23の端面上を摺動し、カバー24の外周に設けられた回転ストッパとしての一対の係止部24e,24f〔図16(b)参照〕間で移動してその回転方向の移動端で係止部24e,24fのそれぞれに当接可能とすることで、操作レバーの操作角度を規制するようにしている。
【0035】
レバー側外輪14の外周には、レバー側側板13の爪部13b〔図6(a)(b)参照〕が挿入される複数(図では5つ)の切欠き凹部14eが形成されている。この切欠き凹部14eに挿入されたレバー側側板13の爪部13bを加締めることによりレバー側側板13とレバー側外輪14が連結されている。レバー側外輪14とそのレバー側外輪14に加締め固定されたレバー側側板13とでレバー側クラッチ部11の入力側部材を構成している。
【0036】
図8(a)(b)は内輪15を示す。この内輪15は、出力軸22が挿通される筒状部15bの外径にレバー側外輪14のカム面14aとの間に楔すきま20(図4参照)を形成する外周面15aを備えている。また、筒状部15bの端部から径方向外側に延在して軸方向に屈曲した拡径部15cが一体的に形成され、その拡径部15cをブレーキ側クラッチ部12の保持器として機能させるため、円筒ころ27および板ばね28を収容するポケット15eが円周方向等間隔に形成されている。なお、図中の符号15dは、出力軸22の突起22f(図1参照)がクリアランスをもって挿入される孔である。
【0037】
図9および図10(a)〜(c)は樹脂製の保持器17を示す。この保持器17は、円筒ころ16を収容する複数のポケット17aが円周方向等間隔に形成された円筒状部材である。この保持器17の一方の端部には、二つの切欠き凹部17bが形成され、それぞれの切欠き凹部17bの隣接する二つの端面17cに前述の内側センタリングばね18の係止部18aが係止される(図22参照)。
【0038】
図11(a)(b)は内側センタリングばね18を示す。この内側センタリングばね18は、径方向内側に屈曲させた一対の係止部18aを有する断面円形のC字状ばねであり、外側センタリングばね19の内径側に位置する(図22参照)。この内側センタリングばね18は、保持器17とブレーキ側クラッチ部12の静止側部材であるカバー24との間に配設され、両係止部18aが保持器17の二つの端面17c〔図9および図10(b)参照〕に係止されると共にカバー24に設けられた爪部24b〔図16(a)(b)参照〕に係止されている〔図22および図23(a)(b)参照〕。
【0039】
この内側センタリングばね18では、レバー側外輪14からの入力トルクの作用時、一方の係止部18aが保持器17の一方の端面17cに、他方の係止部18aがカバー24の爪部24bにそれぞれ係合するので、レバー側外輪14の回転に伴って内側センタリングばね18が押し拡げられて弾性力が蓄積され、レバー側外輪14からの入力トルクの開放時、その弾性復元力により保持器17を中立状態に復帰させる。
【0040】
図12(a)は外側センタリングばね19の一例を示す。外側センタリングばね19は、その両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部19aを有するC字状帯板ばねであり、内側センタリングばね18の外径側に位置する(図22参照)。この外側センタリングばね19は、レバー側クラッチ部11のレバー側外輪14とブレーキ側クラッチ部12のカバー24との間に配設され、両係止部19aがレバー側外輪14に設けられた爪部14f〔図7(a)〜(c)参照〕に係止されると共にカバー24に設けられた爪部24d〔図16(a)(b)参照〕に係止されている〔図23(a)(b)参照〕。この係止部19aは、内側センタリングばね18の係止部18aに対して円周方向の位相(180°)をずらせて配置されている(図22参照)。
【0041】
この外側センタリングばね19では、レバー操作によりレバー側側板13から入力トルクが作用してレバー側外輪14が回転した場合、一方の係止部19aがレバー側外輪14の爪部14fに、他方の係止部19aがカバー24の爪部24dにそれぞれ係合するので、レバー側外輪14の回転に伴って外側センタリングばね19が押し拡げられて弾性力が蓄積され、その拡径後、レバー側外輪14からの入力トルクを開放すると、その弾性復元力によりレバー側外輪14を中立状態に復帰させる。
【0042】
図12(a)に示す外側センタリングばね19は、従来の外側センタリングばね119(図30参照)と異なり、一方の係止部19aと他方の係止部19aとを帯板幅方向で同一位置である中央位置に形成している。つまり、一方の係止部19aおよび他方の係止部19aは、外側センタリングばね19の両端に二条のスリットを周方向に沿って形成し、その二条のスリット間に位置する中央部分を径方向外側に屈曲させることにより形成されている。このように外側センタリングばね19の両端を帯板周方向中心線に対して対称形状としたことにより、入力トルクの作用時に発生するモーメント力、つまり、一方の係止部19aを支点として他方の係止部19aを回転させるような力を抑制することができ、外側センタリングばね19の挙動が安定化することで異音の発生を防止できる。
【0043】
なお、外側センタリングばね19の両端は帯板周方向中心線に対して対称形状であればよいことから、例えば、図12(b)に示すような外側センタリングばね19’であってもよい。この外側センタリングばね19’は、その両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部19a’を有するC字状帯板ばねであり、一方の係止部19a’と他方の係止部19a’とを帯板幅方向で同一位置である両側位置に形成している。つまり、一方の係止部19a’および他方の係止部19a’は、外側センタリングばね19’の両端に二条のスリットを周方向に沿って形成し、その二条のスリットの外側に位置する両側部分を径方向外側に屈曲させることにより形成されている。この場合も、入力トルクの作用時に発生するモーメント力、つまり、一方の係止部19a’を支点として他方の係止部19a’を回転させるような力を抑制することができ、外側センタリングばね19’の挙動が安定化することで異音の発生を防止できる。
【0044】
図13(a)(b)および図14(a)〜(c)は出力軸22を示す。この出力軸22は、軸部22cから径方向外側に延びて拡径した大径部22dが軸方向ほぼ中央部位に一体的に形成されている。この軸部22cの先端には、シートリフタ部41と連結するためのピニオンギヤ41gが同軸的に形成されている。
【0045】
大径部22dの外周面には複数(例えば6つ)の平坦なカム面22aが円周方向等間隔に形成され、ブレーキ側外輪23の内周面23bとの間で設けられた楔すきま26(図5参照)に二つの円筒ころ27および板ばね28がそれぞれ配されている。この大径部22dの一方の端面には、摩擦リング29が収容配置される環状凹部22bが形成されている。また、図中の符号22fは、大径部22dの他方の端面に形成された突起で、内輪15の孔15dにクリアランスをもって挿入される〔図1および図8(a)(b)参照〕。
【0046】
図15(a)(b)および図16(a)(b)はブレーキ側外輪23およびそのカバー24を示す。図17(a)(b)はブレーキ側側板25を示す。前述のブレーキ側外輪23とカバー24は、このブレーキ側側板25により一体的に加締め固定される。ブレーキ側外輪23は、一枚の素材をプレスで打ち抜き加工した厚肉の板状部材であり、カバー24は、一枚の別素材をプレス加工により成形したもので、図16(a)(b)に示すように前述した内輪15の拡径部15cに当接した状態で外側センタリングばね19側に膨出する傾斜部24gを有する(図1参照)。なお、図中の符号24c,25bは出力軸22が挿通された孔、符号25cは後述の摩擦リング29の突起29aが嵌合する孔である。
【0047】
このカバー24とレバー側外輪14との間に外側センタリングばね19が配置され、そのカバー24の傾斜部24gの径方向外側で外側センタリングばね19が当接した構造となっている。ここで、レバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に、カバー24を摺動する外側センタリングばね19がそのカバー24の傾斜部24gに乗り上げて、対向するレバー側外輪14に接触して僅かな異音が発生する可能性があることから、カバー24の傾斜部24gを、入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の外側センタリングばね19の軸方向移動量を抑制する形状とする。
【0048】
つまり、図1に示す実施形態では、カバー24の傾斜部24gの最外径に位置する隅R面24g1の曲率半径を、従来のカバー124の傾斜部124gの最外径に位置する隅R面124g1よりも大きくしている(図27参照)。このように、レバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に外側センタリングばね19がカバー24の傾斜部24gに乗り上げる際の外側センタリングばね19の径方向変化に対する傾斜部24gの膨出高さの変化を緩やかにすることで、外側センタリングばね19の軸方向移動量を抑制することができる。その結果、外側センタリングばね19がカバー24の傾斜部24gに乗り上げることを抑制することができ、外側センタリングばね19がレバー側外輪14に接触することを回避することができて異音の発生を防止できる。
【0049】
また、他の実施形態として、図24に示すように、カバー24の傾斜部24gの最外径から径方向内側に位置する傾斜面24g2の角度を、従来のカバー124の傾斜部124gの最外径から径方向内側に位置する傾斜面124g2よりも小さくしてもよい(図27参照)。このように、レバー操作のフルストロークから中立位置に戻す時に外側センタリングばね19がカバー24の傾斜部24gに乗り上げる際の外側センタリングばね19の径方向変化に対する傾斜部24gの膨出高さの変化を緩やかにすることで、外側センタリングばね19の軸方向移動量を抑制することができる。その結果、外側センタリングばね19がカバー24の傾斜部24gに乗り上げることを抑制することができ、外側センタリングばね19がレバー側外輪14に接触することを回避することができて異音の発生を防止できる。
【0050】
ブレーキ側外輪23の外周には複数(3個)の切欠き凹部23aが形成されると共に、これら切欠き凹部23aに対応させて、カバー24の外周にも複数(3個)の切欠き凹部24aが形成されている。図19(a)(b)に示すようにブレーキ側外輪23の切欠き凹部23aにブレーキ側側板25の爪部25aが挿入されると共に、図20に示すようにカバー24の切欠き凹部24aにブレーキ側側板25の爪部25aが挿入される。
【0051】
これら切欠き凹部23a,24aに挿入されたブレーキ側側板25の爪部25aを加締めることによりブレーキ側外輪23とカバー24を連結してブレーキ側側板25と共に一体化する。このブレーキ側側板25の爪部25aの加締めは、加締め治具(図示せず)を利用することにより、その爪部25aの二股状先端部25a1を外側へ拡開させることにより行われる(図21参照)。
【0052】
ブレーキ側外輪23の内周面23bと出力軸22のカム面22aとの間に楔すきま26が形成されている(図5参照)。カバー24には軸方向に突出する爪部24bが形成され、その爪部24bをレバー側クラッチ部11の内側センタリングばね18の二つの係止部18a間に配置している〔図11(b)および図23(a)(b)参照〕。このカバー24の爪部24bは、その爪部形成位置の外径側を面起こしすることにより形成されている。カバー24の外周には軸方向に突出する爪部24dが形成されている。この爪部24dは、レバー側クラッチ部11の外側センタリングばね19の二つの係止部19a間に配置される〔図12(a)および図23(a)(b)参照〕。
【0053】
カバー24の外周には二組の係止部24e,24fが段付き加工により形成されている〔図23(a)(b)参照〕。これら係止部24e,24fは、カバー24がブレーキ側外輪23の端面に接触した状態でレバー側外輪14の回転によりそのブレーキ側外輪23の端面上を摺動する爪部14gと回転方向で当接可能とすることで、操作レバーの操作角度を規制する回転ストッパとして機能する。つまり、操作レバーの操作によりレバー側外輪14が回転すれば、その爪部14gがカバー24の係止部24eと24fとの間でカバー24の外周に沿って移動することになる。
【0054】
ブレーキ側側板25の外周には、シートリフタ部へのクラッチ取付部として、一つのフランジ部25eと二つのフランジ部25fが設けられている(図2〜図4参照)。これら三つのフランジ部25e,25fの先端部には、シートリフタ部への取付用孔25g,25hが穿設されてその取付孔25g,25hを囲撓するように円筒部25i,25jが軸方向に突設されている。
【0055】
図18(a)〜(c)は樹脂製の摩擦リング29を示す。摩擦リング29の端面には、その円周方向に沿って等間隔に円形の突起29aが複数個設けられ、この突起29aをブレーキ側側板25の孔25cに圧入して嵌合させることによりブレーキ側側板25に固着される(図1および図3参照)。
【0056】
この突起29aの圧入時、樹脂材による突起29aの弾性変形でもって孔25cとの嵌合状態が得られる。このように突起29aと孔25cの圧入嵌合構造を採用することにより、搬送時などの取り扱いで摩擦リング29がブレーキ側側板25から脱落することを未然に防止でき、組立時のハンドリング性を向上させることができる。
【0057】
この摩擦リング29は出力軸22の大径部22dに形成された環状凹部22bの内周面22eに締め代をもって圧入される〔図13(a)および図14(a)(b)参照〕。摩擦リング29の外周面29cと出力軸22の環状凹部22bの内周面22eとの間に生じる摩擦力によって、出力軸22に回転抵抗が付与される。
【0058】
この摩擦リング29の外周面29cには、複数の凹溝状のスリット29bが円周方向等間隔に形成されている(図5参照)。このようにスリット29bを設けることにより、摩擦リング29に弾性を持たせることができることから、出力軸22の内径公差および摩擦リング29の外径公差に対する摺動トルクの変化率が大きくなることはない。
【0059】
つまり、摩擦リング29の外周面29cと出力軸22の環状凹部22bの内周面22eとの間に生じる摩擦力によって付与される回転抵抗の設定範囲を小さくすることができて回転抵抗の大きさを適正に設定することが容易となる。また、そのスリット29bがグリース溜まりとなるので摩擦リング29の外周面29cが出力軸22の環状凹部22bの内周面22eとの摺動で摩耗することを抑制できる。
【0060】
以上の構成からなるクラッチユニットXにおけるレバー側クラッチ部11およびブレーキ側クラッチ12の動作を説明する。
【0061】
レバー側クラッチ部11では、レバー側外輪14に入力トルクが作用すると、円筒ころ16がそのレバー側外輪14と内輪15間の楔すきま20に係合し、その円筒ころ16を介して内輪15にトルクが伝達されて内輪15が回転する。この時、レバー側外輪14および保持器17の回転に伴って両センタリングばね18,19に弾性力が蓄積される。その入力トルクがなくなると、両センタリングばね18,19の弾性力によりレバー側外輪14および保持器17が中立状態に復帰する一方で、内輪15は、与えられた回転位置をそのまま維持する。従って、このレバー側外輪14の回転繰り返し、つまり、操作レバーのポンピング操作により、内輪15は寸動回転する。
【0062】
ブレーキ側クラッチ部12では、出力軸22に逆入力トルクが入力されると、円筒ころ27がその出力軸22とブレーキ側外輪23間の楔すきま26と係合して出力軸22がブレーキ側外輪23に対してロックされる。従って、出力軸22からの逆入力トルクは、ブレーキ側クラッチ部12によってロックされてレバー側クラッチ部11への逆入力トルクの還流が遮断される。
【0063】
一方、レバー側外輪14からの入力トルクがレバー側クラッチ部11を介して内輪15に入力され、内輪15が円筒ころ27と当接して板ばね28の弾性力に抗して押圧することにより、その円筒ころ27が楔すきま26から離脱して出力軸22のロック状態が解除され、出力軸22は回転可能となる。内輪15がさらに回転すると、内輪15の孔15dと出力軸22の突起22fとのクリアランスが詰まって内輪15が出力軸22の突起22fと回転方向で当接することにより、内輪15からの入力トルクが突起22fを介して出力軸22に伝達され、出力軸22が回転する。
【0064】
以上で詳述した構造を具備するクラッチユニットXは、例えば自動車用シートリフタ部に組み込まれて使用される。図25は自動車の乗員室に装備される座席シート40を示す。座席シート40は着座シート40aと背もたれシート40bとで構成され、着座シート40aの高さHを調整するシートリフタ部41などを備えている。着座シート40aの高さHの調整はシートリフタ部41の操作レバー41aによって行う。
【0065】
図26(a)はシートリフタ部41の一構造例を概念的に示す。シートスライドアジャスタ41bのスライド可動部材41b1にリンク部材41c,41dの一端がそれぞれ回動自在に枢着される。リンク部材41c,41dの他端はそれぞれ着座シート40aに回動自在に枢着される。リンク部材41cの他端はリンク部材41eを介してセクターギヤ41fに回動自在に枢着される。セクターギヤ41fは着座シート40aに回動自在に枢着され、支点41f1回りに揺動可能である。リンク部材41dの他端は着座シート40aに回動自在に枢着される。
【0066】
前述した実施形態のクラッチユニットXは、着座シート40aの適宜の部位に固定される。このクラッチユニットXの着座シート40aへの固定は、ブレーキ側側板25の三つのフランジ部25e,25fを、その円筒部25i,25jの先端部分を外側へ拡径させるように塑性変形させることで着座シート40aのシートフレーム(図示せず)に加締め固定する。
【0067】
一方、レバー側クラッチ部11のレバー側側板13に例えば樹脂製の操作レバー41aが結合され、ブレーキ側クラッチ部12の出力軸22に回転部材であるセクターギヤ41fと噛合するピニオンギヤ41gが設けられている。このピニオンギヤ41gは、図1、図13(a)(b)および図14(a)(b)に示すように出力軸22の軸部22cの先端に一体的に形成されている。
【0068】
図26(b)において、操作レバー41aを反時計方向(上側)に揺動操作すると、その方向の入力トルクがクラッチユニットXを介してピニオンギヤ41gに伝達され、ピニオンギヤ41gが反時計方向に回動する。そして、ピニオンギヤ41gと噛合するセクターギヤ41fが時計方向に揺動して、リンク部材41cの他端をリンク部材41eを介して引っ張る。その結果、リンク部材41cとリンク部材41dが共に起立して、着座シート40aの座面が高くなる。
【0069】
このようにして、着座シート40aの高さHを調整した後、操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが二つのセンタリングばね18,19の弾性力によって時計方向に回動して元の位置(中立状態)に戻る。なお、操作レバー41aを時計方向(下側)に揺動操作した場合は、上記とは逆の動作によって、着座シート40aの座面が低くなる。また、高さ調整後に操作レバー41aを開放すると、操作レバー41aが反時計方向に回動して元の位置(中立状態)に戻る。
【0070】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0071】
11 レバー側クラッチ部
12 ブレーキ側クラッチ部
13 入力側部材(レバー側側板)
14 入力側部材(レバー側外輪)
15 連結部材(内輪)
16 係合子(円筒ころ)
17 保持器
18 第一の弾性部材(内側センタリングばね)
19 (第二の)弾性部材(外側センタリングばね)
19a 係止部
22 出力側部材(出力軸)
23 静止側部材(ブレーキ側外輪)
24 静止側部材(カバー)
24g 傾斜部
24g1 隅R面
24g2 傾斜面
25 静止側部材(ブレーキ側側板)
26 楔すきま
27 係合子(円筒ころ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側に設けられ、レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、前記レバー側クラッチ部からの入力トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなり、
前記レバー側クラッチ部は、レバー操作により回転する入力側部材と、回転が拘束された静止側部材と、前記入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる弾性部材とを備え、
前記静止側部材は弾性部材に当接してその弾性部材側に膨出する傾斜部を有し、前記傾斜部を、前記入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状としたことを特徴とするクラッチユニット。
【請求項2】
前記入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状は、前記傾斜部の最外径に位置する隅R面に施されている請求項1に記載のクラッチユニット。
【請求項3】
前記入力トルクの開放により初期状態に復帰する際の弾性部材の軸方向移動量を抑制する形状は、前記傾斜部の最外径から径方向内側に位置する傾斜面に施されている請求項1に記載のクラッチユニット。
【請求項4】
入力側に設けられ、レバー操作により出力側への回転トルクの伝達・遮断を制御するレバー側クラッチ部と、出力側に設けられ、前記レバー側クラッチ部からの入力トルクを出力側へ伝達すると共に出力側からの逆入力トルクを遮断するブレーキ側クラッチ部とからなり、
前記レバー側クラッチ部は、レバー操作により回転する入力側部材と、回転が拘束された静止側部材と、前記入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる弾性部材とを備え、
前記弾性部材はその両端を径方向外側に屈曲させた一対の係止部を有するC字状帯板ばねであり、一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で同一位置に形成したことを特徴とするクラッチユニット。
【請求項5】
前記一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で中央位置に形成した請求項4に記載のクラッチユニット。
【請求項6】
前記一方の係止部と他方の係止部とを帯板幅方向で両側位置に形成した請求項4に記載のクラッチユニット。
【請求項7】
前記レバー側クラッチ部は、レバー操作によりトルクが入力される入力側部材と、入力側部材からのトルクをブレーキ側クラッチ部に伝達する連結部材と、前記入力側部材と連結部材間での係合・離脱により入力側部材からの入力トルクの伝達・遮断を制御する複数の係合子と、各係合子を円周方向に所定間隔で保持する保持器と、回転が拘束された静止側部材と、前記保持器と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で保持器を中立状態に復帰させる第一の弾性部材と、前記入力側部材と静止側部材の間に設けられ、入力側部材からの入力トルクで弾性力を蓄積し、その入力トルクの開放により、蓄積された弾性力で入力側部材を中立状態に復帰させる第二の弾性部材とを備えている請求項1〜6のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項8】
前記ブレーキ側クラッチ部は、レバー側クラッチ部からのトルクが入力される連結部材と、トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束された静止側部材と、その静止側部材と出力側部材間の楔すきまに配設され、両部材間での係合・離脱により前記連結部材からの入力トルクの伝達と出力側部材からの逆入力トルクの遮断を制御する複数対の係合子とを備えている請求項1〜6のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項9】
前記レバー側クラッチ部の係合子あるいはブレーキ側クラッチ部の係合子の少なくとも一方を円筒ころとした請求項7又は8に記載のクラッチユニット。
【請求項10】
前記レバー側クラッチ部とブレーキ側クラッチ部が自動車用シートリフタ部に組み込まれている請求項1〜9のいずれか一項に記載のクラッチユニット。
【請求項11】
前記レバー側クラッチ部の入力側部材が操作レバーに結合され、前記ブレーキ側クラッチ部の出力側部材が自動車用シートリフタ部のリンク機構に連結されている請求項10に記載のクラッチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−190863(P2011−190863A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57370(P2010−57370)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)