説明

クラッチ

【課題】入力側部材と出力側部材の間で転動体をロックさせて回転伝達を行うタイプのクラッチにおいて、回転の伝達と遮断を簡単に切り替えられるようにする。
【解決手段】入力側部材4の外輪2の内周側カム面2aに軸方向の勾配をもたせて、カム面2aと出力軸5の外周円筒面との間に、軸方向の一端に向かって次第に狭小となる楔形空間14を形成し、ボール9を保持する保持器10をばね15で楔形空間14の狭小側へ向けて付勢するとともに、出力軸5を軸方向他端側へ移動させると、その中央部に設けた鍔部5bがばね15の弾性力に抗して保持器10を楔形空間14の広大側へ移動させるようにした。これにより、出力軸5の軸方向移動だけで、ボール9を楔形空間14内で軸方向に移動させてボール9のロックあるいはそのロック状態の解除ができるので、入力側部材4と出力側部材6の間の回転の伝達と遮断を簡単に切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力側と出力側の間で回転が伝達される状態と回転の伝達が遮断される状態とを切り替えるためのクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
入力側部材の回転を出力側部材に伝達し、出力側部材の回転は入力側部材に伝達されないようにする逆入力防止クラッチには、出力側部材に逆入力トルクが加えられても出力側部材が空転して、その回転を入力側部材に伝達しないタイプのものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記特許文献1に記載された逆入力防止クラッチは、入力側部材と出力側部材とを同一軸心のまわりに回転するように配し、出力側部材の外周側に円筒面を形成し、入力側部材に出力側部材の円筒面と径方向で対向するカム面を周方向に複数設けて、その円筒面と各カム面との間に周方向で次第に狭小となる楔形空間を形成し、これらの各楔形空間にころを配し、各ころを両部材間に配した保持器のポケットに一つずつ収容して両部材と係合離脱可能に保持し、この保持器を入力側部材にセンタリングばねを介して連結し、保持器と係合した状態で固定部材の円筒部と摺動する摺動ばねを組み込んだものである。
【0004】
そして、入力側部材に入力トルクが加えられたときには、入力側部材と摺動ばねの摺動抵抗を受ける保持器との間でセンタリングばねが弾性変形して、入力側部材と保持器の回転位相差が生じることにより、保持器に保持されたころが相対的に楔形空間の狭小側へ移動して入力側部材および出力側部材と係合し、入力側部材の回転が出力側部材に伝達される一方、出力側部材に逆入力トルクが加えられたときは、ころが保持器によって入力側部材および出力側部材から離脱した状態で保持され、出力側部材の回転が入力側部材に伝達されないようになっている。
【0005】
ところが、上記のような構造の逆入力防止クラッチでは、そのクラッチが組み込まれた装置のメンテナンスや微調整の際に、出力側部材を空転させることはできても入力側部材を空転させることはできない。このため、入力側部材だけを回転させてメンテナンス作業や調整作業を行おうとする場合は、クラッチを一旦装置から取り外して作業終了後に再び組み込むことが必要となり、非常に手間がかかる。
【0006】
また、通常使用時において、入力側部材が停止した状態では、楔形空間内のころがセンタリングばねと保持器により入力側部材および出力側部材から離脱した状態で保持されているので、入力側部材に入力トルクが加えられてからころが入力側部材および出力側部材と係合して出力側部材が回転し始めるまで、ころの楔形空間内での相対移動距離に相当する遅れが生じる。さらに、ころを相対移動させる保持器と摺動ばねとの間の公差等による微小な隙間も、出力側部材の回転遅れを生じる要因となる。従って、このような回転遅れを許容できない用途には使用することができないという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3914778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、入力側部材と出力側部材の間で転動体をロックさせて回転伝達を行うタイプのクラッチにおいて、回転の伝達と遮断を簡単に切り替えられるようにすることを第1の課題とし、回転を伝達する際には回転遅れを生じさせないことを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のクラッチは、入力側部材と出力側部材とを同一軸心のまわりに回転するように内外に配し、前記入力側部材と出力側部材の互いの径方向対向面の一方にカム面を周方向に複数設けるとともに他方を円筒面として、前記各カム面と円筒面の間に転動体を配し、これらの各転動体が前記カム面および円筒面と噛み合ったロック状態において前記入力側部材と出力側部材の間で回転が伝達され、前記ロック状態から入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させることにより、前記ロック状態が解除されて入力側部材と出力側部材の間で回転の伝達が遮断される構成とした。
【0010】
すなわち、入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させるだけで、転動体のロックあるいはそのロック状態の解除ができる構成とすることにより、入力側部材と出力側部材の間の回転の伝達と遮断を簡単に切り替えられるようにしたのである。
【0011】
そして、前記入力側部材または出力側部材のカム面を、前記ロック状態において前記転動体を挟む周方向両側の位置で転動体と噛み合うものとすることにより、入力側部材から出力側部材へ回転を伝達する際の回転遅れをなくすことができる。
【0012】
上記の構成においては、前記カム面または円筒面に軸方向の勾配をもたせて、カム面と円筒面との間に軸方向の一端に向かって次第に狭小となる楔形空間を形成し、前記転動体を楔形空間の狭小側へ押圧してカム面および円筒面と噛み合わせるロック手段を設けることが望ましい。
【0013】
前記ロック手段としては、前記カム面と円筒面との間に前記転動体を転動自在に保持する保持器を設け、前記入力側部材または出力側部材に前記保持器を楔形空間の狭小側へ向けて付勢する弾性部材を設けたものを採用することができる。
【0014】
また、上記構成においては、前記ロック状態から入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させたときに、前記転動体を楔形空間の広大側へ押圧してロック状態を解除するロック解除手段を設けることが望ましい。
【0015】
前記ロック解除手段としては、前記入力側部材と出力側部材のうちで前記カム面または円筒面が軸方向の勾配をもたない方の部材に、前記楔形空間の狭小側で前記保持器と対向する鍔部を設け、この鍔部で保持器を楔形空間の広大側へ押圧することにより前記ロック状態を解除するものを採用することができる。また、前記楔形空間の狭小側で前記保持器と対向する位置に、前記入力側部材および出力側部材と別体のロック解除部材を配し、このロック解除部材を軸方向に移動させて保持器を楔形空間の広大側へ押圧することにより前記ロック状態を解除するものを採用してもよい。
【0016】
ここで、前記カム面または円筒面の軸方向の勾配は、前記入力側部材および出力側部材の軸心を含む断面でカム面と円筒面とがなす角度が10°以下となるように設定することが望ましい。このようにすれば、ロック状態での転動体の軸方向すべりが生じにくくなり、より安定した回転伝達動作が得られる。
【0017】
また、前記転動体としては、ボールあるいは円錐ころを用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のクラッチは、上述したように、入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させるだけで、転動体のロックあるいはそのロック状態の解除ができる構成としたものであるから、入力側部材と出力側部材の間の回転の伝達と遮断を簡単に切り替えることができる。従って、このクラッチを組み込んだ装置では、入力側部材だけを回転させてメンテナンス作業や調整作業を行おうとする場合も、従来のようなクラッチの脱着を行う必要がなく、効率よく作業することができる。
【0019】
また、転動体がロック状態においてカム面と周方向両側で噛み合うようにすることにより、入力側部材から出力側部材へ回転を伝達する際の回転遅れをなくすことができ、回転遅れを許容できない用途への使用に適したものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態のクラッチの縦断正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のロック解除環の斜視図
【図4】図1のクラッチのロック解除動作を説明する縦断正面図
【図5】a、bは、図1のロック解除環の変形例およびその作用の説明図
【図6】図1のクラッチの転動体を円錐ころに代えた例を示す縦断正面図
【図7】a、bは、第2実施形態のクラッチの構成および動作を示す縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図4は第1の実施形態を示す。このクラッチは、図1および図2に示すように、2段筒状の入力軸1と外輪2と入力歯車3とを一体回転するように連結した入力側部材4と、入力側部材4に通される出力軸5を有する出力側部材6と、入力軸1大径部および外輪2を覆うハウジング7と、出力軸5の両端部を回転自在に支持する一対の支持壁8、8と、外輪2と出力軸5との間に配される複数の転動体としてのボール9と、各ボール9を転動自在に保持する保持器10とで基本的に構成されている。
【0022】
前記ハウジング7は、円筒部7aの一端にフランジ部7bを他端に蓋部7cを設けて、一端側内周に押え蓋11を嵌め込んだもので、そのフランジ部7bが出力軸5を通す固定壁12にボルト止めされ、蓋部7cと押え蓋11とで入力軸1大径部と外輪2を挟んで入力側部材4の軸方向移動を規制している。
【0023】
前記入力側部材4は、入力軸1大径部の内周面と外輪2の外周面に互いに嵌合する凹凸が形成され、この凹凸を嵌め合わせることにより、外輪2が入力軸1と一体回転するように連結されている。また、入力軸1小径部の外周面と入力歯車3の内周面には互いに嵌合する平面部が形成され、入力歯車3が入力軸1に一体回転するように嵌め込まれて止め輪13で抜け止めされている。そして、入力軸1の小径部が出力軸5外周に回転自在に嵌め込まれ、入力側部材4と出力側部材6が同一軸心のまわりに回転するようになっている。なお、入力歯車3に代わる回転伝達部材としてプーリ等を用いることもできる。
【0024】
また、入力側部材4の外輪2の内周面には、各ボール9と対向する位置に周方向の両側へ逆向きに傾斜するカム面2aが設けられている。この各カム面2aは軸方向にも勾配をもち、各カム面2aと出力軸5の外周円筒面との間に、軸方向の一端に向かって次第に狭小となる楔形空間14が形成されている。
【0025】
前記保持器10は、ボール9を収容するポケット10aが周方向に複数形成された環状体であり、入力軸1の一端側に取り付けられた第1のばね(弾性部材)15によって楔形空間14の狭小側へ向けて付勢されている。これにより、保持器10に保持されたボール9は、保持器10を介して第1のばね15で楔形空間14の狭小側へ押圧され、外輪2のカム面2aおよび出力軸5の円筒面と噛み合ってロック状態となっている。すなわち、保持器10と保持器10を付勢する第1のばね15が、ボール9をロックするロック手段を構成している。また、このロック状態では、外輪2のカム面2aはボール9を挟む周方向両側の位置でボール9と噛み合っている。
【0026】
ここで、外輪2のカム面2aの軸方向の勾配は、入力側部材4および出力側部材6の軸心を含む断面でカム面2aと出力軸5の外周円筒面とがなす角度が10°以下となるように設定されている。これにより、ロック状態でのボール9の軸方向すべりが生じにくくなり、回転伝達動作の安定化を図ることができる。なお、この実施形態では、カム面に軸方向の勾配をもたせたが、カム面と径方向で対向する円筒面の方を軸方向に勾配をもつように形成してもよい。
【0027】
また、この保持器10は、ポケット10aの内周側開口幅がボール9の直径よりも小さく形成され、出力軸5が通されていない組立途中の状態でもボール9が内周側から脱落しないようになっている。
【0028】
一方、前記出力側部材6は、出力軸5に出力歯車等の回転伝達部材(図示省略)を一体回転するように取り付けたもので、出力軸5の両端部をそれぞれ支持壁8、8に設けられた軸受部8a、8aに回転自在に支持されている。そして、一方(図1中の右側)の支持壁8の軸受部8a内に配された第2のばね16により、軸方向一端側へ付勢されている。
【0029】
前記出力軸5は、図3にも示すように、その一端側に前記ロック状態を解除するためのロック解除環17が取り付けられ、このロック解除環17の切欠き17aに係合するピン5aが設けられている。また、軸方向中央部の環状溝にリング部材が嵌め込まれて、押え蓋11と保持器10の間に挿入される鍔部5bが設けられている。
【0030】
前記ロック解除環17は、出力軸5の外周に相対的に回転可能かつ軸方向移動可能に嵌め込まれ、出力軸5のピン5aに押されて他方(図1中の左側)の支持壁8の軸受部8aに当接している。ここで、ロック解除環17の切欠き17aは、その底面17bが径方向から見てV字状に形成され、前記ロック状態ではその底面17bの最奥部を出力軸5のピン5aに押されるようになっている。
【0031】
また、このロック解除環17は、他方の支持壁8の軸受部8aと出力軸5のいずれとも摺動可能であるが、出力軸5が回転するときには出力軸5のピン5aから受ける回転力により出力軸5と一体に回転して軸受部8aと摺動するように、軸受部8aとの間の摩擦力を小さく設定されている。
【0032】
次に、このクラッチの動作について説明する。このクラッチの通常使用時は、図1および図2に示したように、ボール9がロック状態となっているので、入力側部材4の入力歯車3に回転が加えられると、入力歯車3と一体に入力軸1および外輪2が回転し、外輪2の回転がボール9を介して出力軸5に伝わって、出力側部材6への回転伝達が行われる。また、この状態では外輪2のカム面2aが周方向両側でボール9と噛み合っているので、入力側部材4が正逆いずれの方向に回転しても、回転遅れなく出力側部材6に回転が伝達される。なお、このとき、ロック解除環17は切欠き17aの底面17bの最奥部を出力軸5のピン5aに押された状態で出力軸5と一体に回転するので、ロック解除環17と出力軸5との軸方向相対位置は変わらない。
【0033】
一方、図4は図1および図2に示したロック状態からロック解除環17を出力軸5に対して相対回転させたときの状態を示す。このときには、出力軸5のピン5aがロック解除環17の切欠き17aの底面17bに沿って相対移動することに伴い、出力軸5が第2のばね16の弾性力に抗して軸方向他端側へ移動し、その鍔部5bで保持器10を第1のばね15の弾性力に抗して楔形空間14の広大側へ押圧する。これにより、保持器10とともに楔形空間14の広大側へ移動したボール9が外輪2および出力軸5から離脱してロック状態が解除され、入力側部材4と出力側部材6の一方だけを回転させることが可能となる。ここでは、ロック解除環17と出力軸5のピン5aおよび鍔部5bが、ロック状態を解除するロック解除手段として作用している。
【0034】
そして、図4に示したロック解除状態からロック解除環17を出力軸5に対して上記と逆方向に相対回転させれば、第2のばね16の弾性力によって出力軸5が軸方向一端側へ移動し、第1のばね15の弾性力によって保持器10およびボール9が楔形空間14の狭小側へ移動して、図1および図2に示したロック状態に復帰する。
【0035】
このクラッチは、上述したように、ロック解除環17を出力軸5に対して相対回転させるだけで、ボール9を楔形空間14内で軸方向に移動させて(入力側部材4をボール9に対して軸方向に相対移動させて)、ボール9のロックあるいはそのロック状態の解除ができるので、入力側部材4と出力側部材6の間の回転の伝達と遮断を簡単に切り替えることができる。
【0036】
図5(a)は、上述した第1実施形態のロック解除環17の切欠き17aの形状を変えて、切欠き17aの底面17bの周方向両側に軸方向と直交するピン保持部17cを設けた例を示す。この例では、図5(b)に示すように、ロック解除環17を出力軸5に対して相対回転させ、出力軸5を軸方向他端側へ移動させてロックを解除した状態において、ロック解除環17の切欠き17aのピン保持部17cで出力軸5のピン5aを底面17b奥側へ戻りにくいように保持している。これにより、図1乃至図4に示した例に比べて、出力軸5が軸方向一端側へ戻りにくくなり、ロック解除状態を安定して維持することができる。
【0037】
また、図6は第1実施形態のボール9に代わる転動体として円錐ころ18を用いた例を示す。この例では、図1乃至図4に示した例に比べて、ロック状態における転動体のカム面2aおよび出力軸5円筒面との接触面積が大きくなるので、回転伝達容量を大きく設定することができる。
【0038】
図7は第2の実施形態を示す。この実施形態のクラッチは、図7(a)に示すように、第1実施形態をベースとし、出力軸5の鍔部5bに代えて、ロック解除手段として、押え蓋11と保持器10の間に挿入されるフランジ19aを有する筒状のロック解除部材19を出力軸5と別体に設けたものである。このロック解除部材19は、押え蓋11と固定壁12を貫通する状態で、出力軸5の外周に相対的に回転可能かつ軸方向移動可能に嵌め込まれている。また、図示は省略するが、第1実施形態の出力軸5のピン5a、ロック解除環17および第2のばね16は設けられておらず、出力軸5は軸方向移動しないように支持されている。
【0039】
この実施形態のボール9をロックするロック手段は、第1実施形態と同じである。すなわち、図7(a)に示したように、ボール9が保持器10を介して第1のばね15で楔形空間14の狭小側へ押圧され、外輪2のカム面2aおよび出力軸5の円筒面と噛み合ってロック状態となっている。このロック状態では、ボール9を介して入力側部材4と出力側部材6との間で回転伝達が行われ、ロック解除部材19も出力軸5と一体に回転する。
【0040】
一方、図7(a)に示したロック状態から、図7(b)に示すように、ロック解除部材19を軸方向他端側へ移動させてそのフランジ19aで保持器10を第1のばね15の弾性力に抗して押圧することにより、保持器10とともにボール9が楔形空間14の広大側へ移動してロック状態が解除される。そして、このロック解除状態でロック解除部材19を保持することによって、入力側部材4と出力側部材6の一方だけを回転させることが可能となる。このとき、入力側部材4のみが回転する場合は、保持器10がロック解除部材19のフランジ19aに対して摺動し、出力側部材6のみが回転する場合は、出力軸5がロック解除部材19の内周面に対して摺動する。また、このロック解除状態からロック解除部材19を上記と逆方向に移動させれば、第1のばね15の弾性力によってロック状態に復帰する。
【0041】
すなわち、この実施形態では、ロック解除部材19を操作するだけで、ボール9を楔形空間14内で軸方向に移動させて(入力側部材4および出力側部材6をボール9に対して軸方向に相対移動させて)、入力側部材4と出力側部材6の間の回転の伝達と遮断を簡単に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 入力軸
2 外輪
2a カム面
3 入力歯車
4 入力側部材
5 出力軸
5a ピン
5b 鍔部
6 出力側部材
7 ハウジング
8 支持壁
9 ボール
10 保持器
14 楔形空間
15 第1のばね
16 第2のばね
17 ロック解除環
18 円錐ころ
19 ロック解除部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力側部材と出力側部材とを同一軸心のまわりに回転するように内外に配し、前記入力側部材と出力側部材の互いの径方向対向面の一方にカム面を周方向に複数設けるとともに他方を円筒面として、前記各カム面と円筒面の間に転動体を配し、これらの各転動体が前記カム面および円筒面と噛み合ったロック状態において前記入力側部材と出力側部材の間で回転が伝達され、前記ロック状態から入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させることにより、前記ロック状態が解除されて入力側部材と出力側部材の間で回転の伝達が遮断されるようにしたクラッチ。
【請求項2】
前記入力側部材または出力側部材のカム面を、前記ロック状態において前記転動体を挟む周方向両側の位置で転動体と噛み合うものとしたことを特徴とする請求項1に記載のクラッチ。
【請求項3】
前記カム面または円筒面に軸方向の勾配をもたせて、カム面と円筒面との間に軸方向の一端に向かって次第に狭小となる楔形空間を形成し、前記転動体を楔形空間の狭小側へ押圧してカム面および円筒面と噛み合わせるロック手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のクラッチ。
【請求項4】
前記ロック手段が、前記カム面と円筒面との間に前記転動体を転動自在に保持する保持器を設け、前記入力側部材または出力側部材に前記保持器を楔形空間の狭小側へ向けて付勢する弾性部材を設けたものであることを特徴とする請求項3に記載のクラッチ。
【請求項5】
前記ロック状態から入力側部材と出力側部材の少なくとも一方を転動体に対して軸方向に相対移動させたときに、前記転動体を楔形空間の広大側へ押圧してロック状態を解除するロック解除手段を設けたことを特徴とする請求項4に記載のクラッチ。
【請求項6】
前記ロック解除手段が、前記入力側部材と出力側部材のうちで前記カム面または円筒面が軸方向の勾配をもたない方の部材に、前記楔形空間の狭小側で前記保持器と対向する鍔部を設け、この鍔部で保持器を楔形空間の広大側へ押圧することにより前記ロック状態を解除するものであることを特徴とする請求項5に記載のクラッチ。
【請求項7】
前記ロック解除手段が、前記楔形空間の狭小側で前記保持器と対向する位置に、前記入力側部材および出力側部材と別体のロック解除部材を配し、このロック解除部材を軸方向に移動させて保持器を楔形空間の広大側へ押圧することにより前記ロック状態を解除するものであることを特徴とする請求項5に記載のクラッチ。
【請求項8】
前記カム面または円筒面の軸方向の勾配は、前記入力側部材および出力側部材の軸心を含む断面でカム面と円筒面とがなす角度が10°以下となるように設定したことを特徴とする請求項3乃至7のいずれかに記載のクラッチ。
【請求項9】
前記転動体としてボールを用いたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッチ。
【請求項10】
前記転動体として円錐ころを用いたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−185317(P2011−185317A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48880(P2010−48880)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)