説明

クラッド式正極板の製造方法

【課題】 クラッドチューブ1が真円形でなかったり、反りなどがあったりしたような場合でも、一定本数のクラッドチューブ1を、パレット2に整列させることが可能なクラッド式正極板の製造方法を提供する。
【解決手段】 クラッドチューブ1を、ストック部17からベルトコンベア26に落下させ、移動させて、プレート28に蓄積する。ベルトコンベア26には、伸縮可能なガイド23を有するシリンダ22を設ける。プレート28に蓄積したクラッドチューブ1を、アーム27で挟み込む際には、ガイド23を伸ばしてクラッドチューブ1を上方から押える。そして、突起25を有する一対のアーム27を有する搬送装置24を用いて、チューブストッパ21に蓄積した一定本数のクラッドチューブ1を挟み込んでパレット2に搬送して整列させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド式正極板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動式フォークリフトなどの電動車両には、一般的に、深い放電にも耐えることができるように、クラッド式正極板を用いるクラッド式鉛蓄電池が使用されている。
クラッド式正極板は、図3に示されるようにして製造されていた。すなわち、パレット2に複数個のクラッドチューブ1を整列させ(図3(a))、整列したクラッドチューブ1の一方の端部に、凸部11を有し、その中央部分に穴19があけられている熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂製の上部連座4を押し込んで嵌合させる。そして、クラッドチューブ1と上部連座4との嵌合部分を加熱、例えば嵌合部分に図示されていない熱板を外側から押し当てて熱溶着をし、上部連座4の穴19の部分に集電体としての役割をする芯金6を挿入する(図3(b))。
【0003】
次に、これを逆さまにした状態で、正極活物質としての役割をはたす鉛粉7を上方から自然落下させて、クラッドチューブ1の内側に充填する。最後に、クラッドチューブ1の他方の端部に、凸部11の中央部分に穴を有しない下部連座5を、上方からハンマーなどで叩いて挿入してクラッド式正極板15が完成する(図3(c))。
【0004】
ここで、従来、クラッド式正極板の製造方法としては、図4に示されるように、複数個のクラッドチューブ1が、順にパレット2に送り出されるように自動化して、整列させる検討がされている(例えば、特許文献1参照。)。また、図5に示されるように、ポリエチレン樹脂製の上部連座4をクラッドチューブ1と嵌合させる際に、上部連座4に振動を与えながら圧接させて、短時間で上部連座4をクラッドチューブ1に嵌合させる検討もされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−100662号公報
【特許文献2】特開2005−216689号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、クラッドチューブ1の断面形状が真円形でなかったり、クラッドチューブ1に反りなどがあったりしたような場合には、図3に示されるような略円錐形状をしたストック部17から、パレット2に落下させて整列させる際に、ストック部17とパレット2との隙間に引っかかってしまい、製造作業が一時的に中断するという問題点があった。
【0007】
そして、クラッドチューブ1は、ガラス繊維を筒状に織った後に、樹脂を含浸させて製造しているために、その表面に凹凸があり、表面の摩擦係数が比較的大きく、滑りにくく、引っかかりやすい。したがって、長時間にわたり、自動化してクラッドチューブ1をパレット2に整列させるのは技術的にも難しいという問題点があった。
【0008】
本発明の目的は、クラッドチューブ1が真円形でなかったり、反りなどがあったりしたような場合でも、一定本数のクラッドチューブ1を安定してパレット2に整列することが可能なクラッド式正極板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明に係わるクラッド式正極板の製造方法では、ストック部内のクラッドチューブを、ベルトコンベアに送り出し、一定本数のクラッドチューブをプレートの部分に蓄積する。そして、蓄積された一定本数のクラッドチューブを、一対のアームを有する搬送装置を用いてパレットに整列させることを特徴にしている。
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、パレット2に、一定本数のクラッドチューブ1を整列させて製造するクラッド式正極板15の製造方法において、
前記クラッドチューブ1を、ストック部17からベルトコンベア26に落下させ、該ベルトコンベア26の上を移動させてプレート28に蓄積し、
一対のアーム27を有する搬送装置24を用いて、前記プレート28に蓄積した前記クラッドチューブ1を挟み込んで前記パレット2に搬送して整列させて製造することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ベルトコンベア26には、伸縮可能なガイド23を有するシリンダ22を設け、
前記プレート28に蓄積した前記クラッドチューブ1を、前記アーム27で挟み込む際には、前記ガイド23を伸ばして、前記クラッドチューブ1を上方から押えることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記アーム27には、前記クラッドチューブ1の両端に挿入するための突起25が設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明を用いると、クラッドチューブの断面形状が真円形でなかったり、反りなどがあったりしたような場合でも、一定本数のクラッドチューブを安定してパレットに整列させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において、本発明の実施をするための最良の形態について、図1〜5を用いて詳細に説明する。
【0015】
1.クラッドチューブのストック及び送出し部
クラッドチューブのストック部17は、断面が略円錐形状をしており、上部に開口部16を有し、多数個の筒状をしたクラッドチューブ1を蓄積することができる。すなわち、ストック部17では、多数個のクラッドチューブ1を蓄えることができるとともに、図示されているように、必要に応じて多数個のクラッドチューブ1を上方の開口部16からまとめて補給することができる。
【0016】
略円錐形状をしたストック部17の下部には、クラッドチューブ1の直径よりもやや距離をおいて、ゴム製の一対の送りローラ9を設けるようにした。ここで、ゴム製の一対の送りローラ9を設けることによって、滑りにくい表面をしているクラッドチューブ1でも、確実に下方に送り出すことができる。また、一対のローラ9は、クラッドチューブ1の直径よりもやや距離をおいて設置されているため、クラッドチューブ1がローラ9を通過する際に、擦れたり、変形したりすることもない。
【0017】
送りローラ9の下方には、非接触式のカウンタ10a、例えばレーザー方式のカウンタ10aを設けておき、送り出されて落下したクラッドチューブ1の本数を数え、適宜、底部に設置したストッパ11を作動させて、クラッドチューブ1のベルトコンベア26への供給を停止させるようにした。したがって、後述するベルトコンベア26の上に、常時、必要な本数のクラッドチューブ1を落下させて、送り出すことができる。
【0018】
なお、極めて稀な場合ではあるが、何らかの原因でクラッドチューブ1の1本又は複数本が、ストック部17に斜めになった状態になり、詰ってしまうような場合も認められた。そこで、図1に示すように、ストック部17にはバイブレータ13を設けるようにした。ストック部17にバイブレータ13を設けることによって、クラッドチューブ1が斜めになった状態でストック部17に詰るようなことはない。
【0019】
2.ベルトコンベア部及びパレットへの搬送部
(1)ベルトコンベア部
ストック部17の下方には、ベルトコンベア26を設置した。ストック部17のストッパ11を通過したクラッドチューブ1は、ベルトコンベア26の上に落下する。落下したクラッドチューブ1は、ベルトコンベア26の上に乗った状態で順に左方向に移動する。そして、先頭のクラッドチューブ1が、固定式のプレート28に達すると、順に後方のクラッドチューブ1に押されてチューブストッパ21に達するまで移動する。
【0020】
ここで、チューブストッパ21に蓄積しているクラッドチューブ1の本数を、シリンダ22のガイド23に設置した光学式のカウンタ10bで数えるようにした。なお、シリンダ22のガイド23の部分は、伸縮可能な構造をしている(図2(a)、(b))。
【0021】
図2(a)は、シリンダ22のガイド23を縮めた状態であり、チューブストッパ21に蓄積したクラッドチューブ1を、後述するようにパレット2に搬送した直後の状態を示している。すなわち、固定式のプレート28上には、クラッドチューブ1が一本も蓄積していない状態を示している。
【0022】
その後、ベルトコンベア26上のクラッドチューブ1は、チューブストッパ21方向へプレート28上を順にころがりながら移動する。そして、クラッドチューブ1の移動とともに、シリンダ22のガイド23を伸ばす。ここで、プレート28の後方に位置する複数本のクラッドチューブ1の上方の位置に、シリンダ22のガイド23を伸ばした状態で固定するようにした(図2(b))。すなわち、プレート28に蓄積したクラッドチューブ1を挟み込む際には、シリンダ22のガイド23を伸ばして上方からクラッドチューブ1を押えているようにした。
【0023】
ここで、シリンダ22のガイド23を伸ばした状態で上方からクラッドチューブ1を押えることによって、後方から、ベルトコンベア1に載ってクラッドチューブ1が移動してきても、プレート28上のクラッドチューブ1が、後方のクラッドチューブ1から押されて、上方に浮き上がるようなことがない。
(2)パレットへの搬送部
チューブストッパ21の部分に蓄積されている一定本数のクラッドチューブ1は、一対のアーム27を有する搬送装置24を用いて、パレット2に搬送して整列させるようにした(図1)。ここで、搬送装置24の一対のアーム27には、搬送するクラッドチューブ1の本数に対応する突起25が設置されている。
【0024】
搬送装置24のアーム27は開閉可能とし、閉じた状態のアーム27の間隔も、使用するクラッドチューブ1の長さに応じて可変にすることができるようにした。したがって、異なった長さのクラッドチューブ1にも対応することができる。そして、一対のアーム27で、一定本数の筒状をしたクラッドチューブ1を長さ方向の両端から、突起25を挿入し、はさみ込んで、閉じた状態にして搬送するようにした。
【0025】
すなわち、搬送装置24は、一対のアーム27を開いた状態として、プレート28の部分に蓄積されている一定本数のクラッドチューブ1の位置に移動する。そして、アーム27を閉じた状態にして同時に一定本数のクラッドチューブ1を挟み込む。ここで、それぞれのクラッドチューブ1の両端の部分には、アーム27の突起25が挿入される。
【0026】
なお、プレート28の後方に位置するクラッドチューブ1の上方には、シリンダ22のガイド23を伸ばした状態で固定され、上方から押さえられているので、それぞれのクラッドチューブ1の両端の部分には、確実にアーム27の突起25を挿入することができる。すなわち、それぞれのクラッドチューブ1の両端は、突起25が挿入された状態で、一対のアーム27によってはさみ込まれることになる。
【0027】
ここで、一対の突起25の径として、クラッドチューブ1の開口径よりも十分に小さく、例えば、1/3程度にするようにした。したがって、クラッドチューブ1の断面形状が真円形でないような場合や、クラッドチューブ1に多少の反りなどのバラツキがあったりしたような場合にも、問題なくクラッドチューブ1の両端の部分にアーム27の突起25を挿入することができる。
【0028】
それから、シリンダ22のガイド23を縮めた状態にする。そして、搬送装置24の一対のアーム27を閉じた状態のままで、一定本数のクラッドチューブ1をパレット2の位置まで搬送する。それから、一対のアーム27を開いた状態にして、それぞれのクラッドチューブ1に挿入されている一対の突起25を抜き取ることによって、一定本数のクラッドチューブ1をパレット2に整列させるようにした。
【0029】
ここで、一対のアーム27のそれぞれには、クラッドチューブ1の本数に対応する突起25が設置されており、突起25の数を超えるようなクラッドチューブ1が一対のアーム27に挟み込まれることはない。したがって、あらかじめ予定されている一定本数以上のクラッドチューブ1が、パレット2に供給されて、整列することもない。
【0030】
また、アーム27には突起25が付いているために、クラッドチューブ1がアーム27から外れて、落下することもない。さらに、クラッドチューブ1として、強度の強い長さ方向から、アーム27ではさみ込んでいるために、クラッドチューブ1が折れ曲がったり、変形したりすることもない。
【0031】
加えて、一定本数のクラッドチューブ1は、一対のアーム27に挟み込まれ搬送されているために、それぞれが位置ズレを起こすこともなく、パレット2の上で別途、整列させるような工程を加える必要もない。
【0032】
上述したように、本発明では、搬送装置24のアーム27に多数の突起25を設置し、それぞれのクラッドチューブ1の両端部分には、一対の突起25を挿入した状態で、クラッドチューブ1を、はさみ込んでパレット2まで搬送する方式を用いている。したがって、クラッドチューブ1の断面形状が真円形でなかったり、多少の反りなどの品質バラツキがあったりしたような場合でも、一定本数のクラッドチューブ1を、安定してパレット2に整列させることができる。
【0033】
3.鉛粉充填部
その後、図3に示すように、従来の手法で鉛粉7を充填してクラッド式正極板15を製造する。すなわち、クラッドチューブ1に正極活物質となる鉛粉7を充填してクラッド式正極板を製造するための最終工程について説明する。
【0034】
上述した手法で、パレット2に複数個のクラッドチューブ1を整列させる(図3(a))。
整列したクラッドチューブ1に、凸部11を有し、その中央部分に穴19があけられている熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン樹脂製の上部連座4を押し込んで嵌合させる。ここで、図5に示されるように、ポリエチレン樹脂製の上部連座4をクラッドチューブ1と嵌合させる際に、上部連座4に振動を与えながら圧接すると、短時間で上部連座4をクラッドチューブ1に嵌合させることができる(例えば、特許文献2参照。)。
【0035】
そして、クラッドチューブ1と上部連座4との嵌合部分を加熱、例えば図示されていない熱板を嵌合部分に外側から押し当てて熱溶着をし、上部連座4の穴19の部分に集電体としての役割をする芯金6を挿入する(図3(b))。
【0036】
次に、これを逆さまにした状態で、正極活物質としての役割をはたす鉛粉7を上方から自然落下させて、クラッドチューブ1の内側に充填する。最後に、クラッドチューブ1に、凸部11の中央部分に穴を有しない下部連座5を、上方からハンマーなどで叩いて挿入してクラッド式正極板が完成する(図3(c))。
【0037】
上述したように、本発明では、搬送装置24のアーム27に多数の突起25を設置し、それぞれのクラッドチューブ1の両端部分に一対の突起25を挿入した状態で、はさみ込んでパレット2まで搬送する方式を用いている。したがって、クラッドチューブ1の断面形状が真円形でなかったり、多少の反りなどの品質バラツキがあったりしたような場合でも、一定本数のクラッドチューブ1を、安定してパレット2に整列させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、電動式フォークリフトなどに使用されているクラッド式正極板の製造方法に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係わるクラッドチューブ整列装置の概略図である。
【図2】本発明に係わるシリンダと伸縮可能なガイドの概略図である。
【図3】クラッド式正極板の組み立て工程の概略図である。
【図4】従来のクラッドチューブ整列装置の概略図である。
【図5】上部連座をクラッドチューブに嵌合する装置の概略図である。
【符号の説明】
【0040】
1:クラッドチューブ、2:パレット、3:溝部、4:上部連座、5:下部連座、
6:芯金、7:鉛粉、8:クラッドチューブ整列装置、9:送りローラ、
10a,b:カウンタ、11:ストッパ、13:バイブレータ、14:略円錐状容器、
15:クラッド式正極板、16:開口部、17:ストック部、19:穴、20:チャック、
21:ストッパ、22:シリンダ、23:ガイド、24:搬送装置、25:突起、
26:ベルトコンベア、27:アーム、28:プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレット2に、一定本数のクラッドチューブ1を整列させて製造するクラッド式正極板15の製造方法において、
前記クラッドチューブ1を、ストック部17からベルトコンベア26に落下させ、該ベルトコンベア26の上を移動させてプレート28に蓄積し、
一対のアーム27を有する搬送装置24を用いて、前記プレート28に蓄積した前記クラッドチューブ1を挟み込んで前記パレット2に搬送し、整列させて製造することを特徴とするクラッド式正極板の製造方法。
【請求項2】
前記ベルトコンベア26には、伸縮可能なガイド23を有するシリンダ22を設け、
前記プレート28に蓄積した前記クラッドチューブ1を、前記アーム27で挟み込む際には、前記ガイド23を伸ばして、前記クラッドチューブ1を上方から押えることを特徴とする請求項1記載のクラッド式正極板の製造方法。
【請求項3】
前記アーム27には、前記クラッドチューブ1の両端に挿入するための突起25が設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のクラッド式正極板15の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−302007(P2009−302007A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158066(P2008−158066)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】