説明

クランプの誤操作防止具

【課題】 誤操作により係合部と被係合部とが係合することを防止できるクランプの誤操作防止具を提供すること。
【解決手段】 両端側に設けられた係合部16と被係合部17aとが係合して環状になる本体11と、本体11の内部に分岐管32を挿通させた状態で係合部16と被係合部17aとを係合させたときに分岐管32を押圧する支受凸部14と押圧凸部15とからなる押圧部とを備えたクランプ10における係合部16と被係合部17aとが係合することを防止する誤操作防止具20である。誤操作防止具20は、本体11の両端側の少なくとも一方に着脱可能に取り付けられ、係合部16と被係合部17aとが係合することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブ状部材を閉塞したりチューブ状部材内を流れる液体の流量を調節したりするためのクランプの誤操作を防止するクランプの誤操作防止具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、患者に対して薬液や血液等の液体を、チューブを備えた医療セットを用いて供給することが行われている。このような場合に、チューブを閉塞したり、チューブ内を流れる液体の流量を調節したりするためにクランプが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このクランプは、湾曲した板状体で構成され、その板状体をさらに曲げることにより両端部が係合可能になっている。また、このクランプには、チューブを挿通させる一対の挿通孔と、両端部が係合したときに、チューブを押圧する押圧部とが備わっている。このため、一対の挿通孔にチューブを通しその状態で両端部を係合させることによりチューブを閉塞することができる。また、両端部が係合した状態のクランプをクランプガードで覆うことにより、クランプを両端部が係合した状態に維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0294122 A1号明細書
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、前述した従来のクランプは、両端部が係合した状態のクランプをクランプガードで覆うことにより、クランプを両端部が係合した状態に維持できるが、両端部が係合していない状態のクランプが不意に押圧されて両端部が係合することを防止することはできない。このクランプは、ガイドワイヤの挿入補助をするスタイレットを内部に通すカテーテルの分岐管に組み付けられる場合もある。このような場合に、スタイレットをカテーテルに挿入した状態でクランプの両端を係合させてしまうと、スタイレットの内腔を潰してしまい、後の操作でガイドワイヤをスタイレットに通すことができなくなることがある。このような誤操作を防止するために、従来は、クランプを購入した際に、注意書きが記載されたタグが取り付けられていたがこれだけでは十分でなく、誤操作を防止するための装置の開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、誤操作により係合部と被係合部とが係合することを防止できるクランプの誤操作防止具を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0006】
前述した目的を達成するため、本発明に係るクランプの誤操作防止具の構成上の特徴は、両端側に互いに係合可能な係合部(16)と被係合部(17a)とが設けられた弾性体からなり弾性に抗して両端側どうしが接近するように曲げられることにより係合部と被係合部とが係合して環状になる本体(11)と、本体の内周側に設けられ、本体の内部にチューブ状部材(32)を挿通させた状態で係合部と被係合部とを係合させたときにチューブ状部材を押圧する部分(14,15)とを備えたクランプにおける係合部と被係合部とが係合することを防止するクランプの誤操作防止具(20)であって、本体における被係合部が設けられた端部側に着脱可能に取り付けられ、両端部どうしが接近する際に両端部間に介在することにある。
【0007】
本発明に係るクランプの誤操作防止具は、クランプの両端部間に介在することにより、係合部と被係合部とが係合することを防止できる機能を備えている。このため、例えば、製品出荷時などクランプの係合部と被係合部とが係合することにより不都合が生じる場合には、誤操作防止具をクランプに取り付けることにより、不意に力が加わってクランプの係合部と被係合部とが係合してしまうことを防止できる。この誤操作防止具は、クランプの本体の被係合部が設けられた端部側に着脱可能に取り付けられるものであればよく、係合部と被係合部とが接触することを防止することによって、係合部と被係合部とが係合することを防止できる構造のものであればよい。また、係合部と被係合部は、クランプの本体の両端部に設けてもよいし、端部近傍に設けてもよい。
【0008】
また、本発明に係るクランプの誤操作防止具の他の構成上の特徴は、対向して配置された一対の縦片と一対の縦片の上端部を接続する連結部とで構成され、一対の縦片間に、本体における被係合部が設けられた端部側部分を挿入可能にしたことにある。これによると、クランプの誤操作防止具を本体における被係合部が設けられた端部側部分に被せるようにしてクランプに取り付けることができるため取付操作が容易になるとともに、クランプの誤操作防止具を簡単な構造にして、係合部と被係合部とが係合することを確実に防止できる。
【0009】
また、本発明に係るクランプの誤操作防止具の他の構成上の特徴は、クランプにおける係合部が本体の一端に形成された突部(16)で構成されているとともに、被係合部が本体の他端側に形成された凹部(17a)で構成されており、クランプにおける本体の他端側の内面、先端面および外面を覆うことのできる部材で構成されていることにある。
【0010】
本発明に係るクランプの誤操作防止具は、本体の他端側の内面、先端面および外面を覆うことのできる部材で構成されているため、本体の他端部の内面と外面とを挟んだ状態でクランプに取り付けることができる。これによると、クランプの誤操作防止具を簡単な構造にして、係合部と被係合部とが係合することを確実に防止できる。
【0011】
また、本発明に係るクランプの誤操作防止具のさらに他の構成上の特徴は、クランプにおける凹部が、両端部が互いに接近する方向に直交する方向に延びる段部または溝部で構成されており、クランプにおける本体の他端部に対して段部または溝部が延びる方向にスライドさせて係合できるようにしたことにある。これによると、クランプに対する誤操作防止具の着脱操作が容易になる。
【0012】
また、本発明に係るクランプの誤操作防止具のさらに他の構成上の特徴は、把持部(24)が備わっていることにある。これによると、誤操作防止具をクランプに着脱する際の操作がし易くなる。この把持部は、クランプの誤操作防止具のどの部分に設けてもよいが、クランプの本体の先端面または外面を覆う部分に設けることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る誤操作防止具が取り付けられたクランプの前部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図2】図1のクランプの後部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図3】誤操作防止具が取り外されたクランプの前部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図4】図3のクランプの後部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図5】誤操作防止具の前部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図6】誤操作防止具の後部側を左上方向から見た状態を示した斜視図である。
【図7】図1に示したクランプをカテーテルの分岐管に取り付けた状態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係る誤操作防止具20が取り付けられたクランプ10を示しており、図3および図4は、誤操作防止具20が取り外されたクランプ10を示している。本実施形態では、図1に示したクランプ10の右下側が前部で左上側が後部であるとして説明する。このクランプ10は、ポリプロピレンを一体成形して形成されており、細長い板体が、側面が略三角形になるように形成された形状の弾性を備えた本体11に、挿通孔12,13、支受凸部14および押圧凸部15を設けて構成されている。なお、クランプ10を構成する樹脂としては、ポリプロピレンの他、ABS,ポリアセタール、ポリエチレン等を用いることもできる。
【0015】
本体11は、前部片11aと、底部11bと、上部片11cとで構成されており、底部11bと上部片11cとが略同じ長さで、前部片11aがそれらよりも僅かに短くなっている。また、前部片11aと底部11bとの間および底部11bと上部片11cとの間はそれぞれ滑らかに湾曲した曲面部で構成されている。上部片11cは、力が加わっていない状態では、底部11bに対して略45度程度の角度になって底部11bの後部から斜め上方に延びており、その先端部は、前部片11aの先端部(上端部)から離れた位置にある。
【0016】
そして、上部片11cが下方に押圧されると、底部11bと上部片11cとの間の曲面部がさらに屈曲して上部片11cの先端部は前部片11aの先端部に接近し、さらに前部片11aの内面下方側に移動していく。上部片11cの先端部には、側方から見た状態で、上部片11cの上面に対して鋭角になる傾斜面が形成されており、この傾斜面と上部片11cの上面との間の鋭角の角部で突部からなる係合部16が構成される。この係合部16で本発明に係る突部が構成される。また、係合部16における幅方向の中央部分に、前方に突出する突部16aが設けられ、上部片11cの先端側部分の上面には、左右に延びる複数の突条からなる滑り止め用の凹凸部16bが形成されている。
【0017】
前部片11aは、力が加わっていない状態では、底部11bに対して直角よりもやや後部側に傾く程度の角度で底部11bの前部から上方に延びている。そして、前部片11aの内面における先端側部分は底部11b側部分よりも厚み方向に膨らんだ肉厚部17が形成され、この肉厚部17の下端部に、係合部16と係合可能な段部(凹部)からなる被係合部17aが形成されている。この被係合部17aは、上部片11cを下方に押圧したときに、上部片11cの先端部が前部片11aの先端部に接近していく方向に対して直交する方向に真直ぐに延びている。また、前部片11aの幅方向の中央には、肉厚部17の上部から肉厚部17の下方にかけて延びる縦孔と縦孔の下端から左右に水平に延びる横孔とからなる孔部17bが形成されている。この孔部17bには、上部片11cの突部16aが上下に通過できる。
【0018】
また、前部片11aにおける肉厚部17の先端には、外部側から内部側に向かって下り傾斜になった傾斜部17cが形成されており、この傾斜部17cの上端部は、前部片11aよりも前方に突出している。上部片11cを弾性に抗して下方に押圧すると、突部16aが傾斜部17cの上部側に当接し、その後傾斜部17cに沿って下方に移動する。その突部16aの移動によって、前部片11aの上部は外部側に押圧されて前部側に傾斜する。そして、突部16aが傾斜部17cを通過すると、孔部17b内に入り、前部片11aは突部16aによる押圧を解除され元の状態に戻ろうとする。この場合、前部片11aは、まだ係合部16によって前方に付勢された状態になっている。
【0019】
そして、突部16aが孔部17bの横孔に到達したときに、係合部16と被係合部17aとが係合する。このとき、前部片11aは元の状態に戻ろうとして後部側に付勢されるため、係合部16と被係合部17aとの係合状態が維持される。また、突部16aを横に移動させて孔部17bの横孔の縁部に係合させると、係合部16と被係合部17aとの係合状態はさらに確実に維持される。係合部16と被係合部17aとの係合を解除する場合には、前部片11aの上部を前方に傾ける。これによって、係合部16と被係合部17aとの係合が解除され、上部片11cは弾性によって元の状態に戻る。
【0020】
挿通孔12は、前部片11aと底部11bとの境界の曲面部の内面側に形成された筒状挿通部12a内の貫通孔で構成される。筒状挿通部12aは、前部片11aと底部11bとの境界部分から本体11の内部側に向って斜め上方に延びる短い筒体で構成されており、その先端面は、開口がやや上方を向くように傾斜した面に形成されている。挿通孔13は、底部11bと上部片11cとの境界の曲面部に形成された縦長の楕円状の貫通孔で構成されている。この挿通孔13は、挿通孔12に対向するように配置されており、底部11bに対して前部片11aと上部片11cとを常態からさらに湾曲させても、挿通孔12の延長線上に挿通孔13が位置するようにして形成されている。
【0021】
支受凸部14は、底部11bの上面に形成されており、側方から見た形状が略三角形に形成されている。すなわち、支受凸部14は、底部11bにおける前部片11a側部分から筒状挿通部12aの下部を支持するようにして後部斜め上方に向かって延びる傾斜部14aと、傾斜部14aの上端部から底部11bの後部側に向かって下方に傾斜して延びる長さの短い傾斜部14bとで構成されている。また、傾斜部14aと傾斜部14bとの連結部の上面は縁部に沿って左右に延び上方に向かって半円状に膨らんだ滑らかな曲面で構成されている。
【0022】
押圧凸部15は、上部片11cの下面に形成されており、側方から見た形状が略三角形に形成されている。すなわち、押圧凸部15は、上部片11cにおける前部から後部斜め下方に向かって延びる傾斜部15aと、傾斜部15aの下端部から上部片11cの略中央部に向かって上方に傾斜して延びる長さの短い傾斜部15bとで構成されている。また、傾斜部15aと傾斜部15bとの連結部の下面は縁部に沿って左右に延び下方に向かって半円状に膨らんだ滑らかな曲面で構成されている。なお、傾斜部15aの前部下面は係合部16の下面と同一面上で連なっている。
【0023】
このため、係合部16と被係合部17aとを係合させるように、前部片11aと上部片11cとを曲げていくと、押圧凸部15は、下端の曲面を支受凸部14の上端の曲面に対向させた状態で接近していく。このため、後述するカテーテル30の分岐管32を挿通孔12,13に通し、その状態で係合部16と被係合部17aとを係合させると、支受凸部14と押圧凸部15とに上下から押圧されて分岐管32は閉塞する。この支受凸部14と押圧凸部15とで、本発明に係るチューブ状部材を押圧する部分が構成される。
【0024】
誤操作防止具20は、クランプ10の前部片11aに着脱可能に取り付けられて、係合部16と被係合部17aとが係合することを防止するためのもので、ポリエチレンやポリプロピレン等の硬質樹脂を一体成形して形成されている。この誤操作防止具20は、図5および図6に示したように、前面部21と、後面部22と、前面部21と後面部22とを連結する連結部23と、連結部23に設けられた棒状の把持部24とで構成されている。前面部21と後面部22とで本発明に係る一対の縦片が構成される。前面部21は、上下方向の長さよりも左右方向の長さが僅かに長くなった四角板状に形成され、内面の上部に左右に延びる溝状の凹部21aが形成されている。この凹部21aは、前部片11aの上端に形成された傾斜部17cの突出した前部を収容できる大きさに形成されている。
【0025】
後面部22は、前面部21と同じ幅で縦長の四角板状に形成されている。後面部22は、内面(前面)の下部側部分が上部側部分よりも僅かに前方に突出することにより下部側部分が上部側部分よりも肉厚に形成されている。そして、後面部22の内面における下部側部分と上部側部分との間に左右に延びる段部22aが形成されている。この段部22aは、前部片11aの被係合部17aに係合できる形状に形成されている。すなわち、後面部22の内面は、上部側部分を前部片11aの肉厚部17の内面に沿わせ、下部側部分を前部片11aの内面における肉厚部17の下方の部分に沿わせることにより、前部片11aの内面に接面することができる。そして、後面部22の内面を前部片11aの内面に合わせたときに、段部22aと被係合部17aとが係合する。
【0026】
連結部23は、前面部21および後面部22と同じ幅で前面部21と後面部22との上端部を連結しており、前面部21と後面部22との内面間に、前部片11aを入れることのできる間隔を保たせて前面部21と後面部22とを連結している。また、連結部23の下面は、前部片11aの傾斜部17cに沿うことのできる傾斜面23aで構成されており、この傾斜面23aを形成することによって、連結部23は、前部側から後部側に向かうほど徐々に肉厚になっている。また、後面部22と連結部23との連結部の外面には傾斜面25が形成されている。
【0027】
すなわち、前面部21、後面部22および連結部23の内面は、前部片11aの先端側部分の側面を除く外面にぴったりと接するように形成されている。このため、前面部21、後面部22および連結部23で構成される部分の内部に前部片11aの先端側部分を挿入したときには、誤操作防止具20と前部片11aとの間にがたつきが生じなくなる。また、前面部21、後面部22および連結部23で構成される部分は、凹部21aを傾斜部17cに合わせるとともに、段部22aを被係合部17aに合わせて、前部片11aに対してスライドさせることにより、前部片11aに着脱することができる。このため、誤操作防止具20は、前部片11aに対して前後方向や上下方向には外れることがなくなり、前部片11aに確実に固定できる。また、前面部21、後面部22および連結部23の内面で形成される形状が、誤操作防止具20が前部片11aに対してスライドする際のガイドになる。
【0028】
把持部24は、連結部23の上部における前部側部分に棒状に形成されており、両端が連結部23の左右両側から突出している。また、把持部24の上部は、連結部23の上面よりも僅かに上方に突出しており、把持部24の中央側上部は、左右両側の上部と連続する曲面状に形成されている。そして、図5,6には図示を省略しているが、把持部24の上部における左右方向の中央には、後述するスタイレットの把持部34から延びてくる紐状の連結部24a(図7参照)が接続されている。
【0029】
このように構成された誤操作防止具20は、図1および図2に示したようにして、クランプ10の前部片11aに取り付けられる。この場合、把持部24を手で持って誤操作防止具20を前部片11aの側方から前部片11aに近づけ、凹部21aを傾斜部17cに合わせるとともに、段部22aを被係合部17aに合わせて、誤操作防止具20を前部片11aに対してスライドさせることにより、誤操作防止具20を前部片11aに取り付けることができる。このとき、突部16aは、連結部23の上面に位置し、係合部16は、傾斜面25に位置する。そして、このようにして、誤操作防止具20が取り付けられたクランプ10は、図7に示した製品出荷前のカテーテル30に取り付けられる。
【0030】
カテーテル30は、細長いカテーテル本体31と、カテーテル本体31の後端部に設けられた分岐部31aと、分岐部31aから互いに分岐して延びる2本の分岐管32,33とで構成されており、分岐管32,33は、それぞれ分岐部31aに形成された分岐孔を介してカテーテル本体31に連通している。また、カテーテル本体31と分岐管32とは直線状に延びており、分岐管33はカテーテル本体31に対して傾斜して延びている。また、図示は省略するが、カテーテル本体31の内部には二つの内腔が形成されており、一方の内腔は、分岐部31aを介して分岐管32に連通し、他方の内腔は、分岐部31aを介して分岐管33に連通している。
【0031】
このカテーテル30は、例えば血液透析に用いることができ、一方の内腔を体内から血を取り出す脱血用として用い、他方の内腔を透析した血を体内に送る送血用として用いることができる。そして、分岐管32,33の後端部32a,33aには、それぞれ体内の血液を吸引するための装置や透析した血を体内に送るための供給装置が接続される。また、分岐管32の後端部32aからカテーテル本体31の先端部にかけての内部には、挿入補助用のスタイレットが挿入されている。
【0032】
このスタイレットは、細径筒状の内芯の後端部に把持部34を設けた構成をしており、内部にガイドワイヤ(図示せず)を挿通させるための挿通孔が形成されている。そして、分岐管32に、誤操作防止具20が取り付けられたクランプ10が取り付けられている。誤操作防止具20は、連結部24aによってスタイレットの把持部34に連結されているため、スタイレットをカテーテル30から抜き出したときにはクランプ10から外される。これによって、クランプ10の係合部16と被係合部17aとは係合可能な状態になる。また、分岐管33には、誤操作防止具20が取り付けられていない他のクランプ10aが取り付けられている。このクランプ10aは、クランプ10と略同じ構成をしているため説明は省略する。
【0033】
このように、製品出荷前のカテーテル30は、クランプ10の係合部16と被係合部17aとが係合することを誤操作防止具20によって防止されているため、クランプ10に物が当たって、不意に係合部16と被係合部17aとが係合するといったことが防止される。このため、係合部16と被係合部17aとの係合によって分岐管32内のスタイレットが支受凸部14と押圧凸部15とによって押し潰されることが防止される。なお、分岐管33にもクランプ10aが取り付けられているが、分岐管33にはスタイレットが挿入されていないため、クランプ10aの係合部と被係合部とが不意に係合したとしても特に支障は生じない。
【0034】
カテーテル30を用いて血液透析をする場合には、まず、スタイレットの先端がカテーテル本体31の先端から突出した状態のカテーテル30を体内に挿入してカテーテル本体31の先端を血管に到達させる。つぎに、カテーテル30からスタイレットを抜去する操作を行う。この場合、把持部24を手で持って誤操作防止具20をクランプ10の側方にスライドさせてクランプ10から外したのちに、スタイレットの把持部34を分岐管32の後方外部側に引っ張ってスタイレットをカテーテル30から抜き取る。つぎに、分岐管32,33の後端部32a,33aに、それぞれ血液を吸引する装置や血液を体内に供給する装置を接続する。
【0035】
そして、各装置を作動させて血液の透析を行う。これによって、体内の血液は体外に取り出され透析されたのちに体内に戻される。また、処置を中断する場合などには、適宜、クランプ10の係合部16と被係合部17aやクランプ10aの係合部と被係合部を係合させて分岐管32,33を閉塞する。長時間の使用によりカテーテル30を新しいカテーテル30と交換する場合には、ガイドワイヤを用いる。この場合、分岐管32の後端部32aからカテーテル本体31の先端部に向けてガイドワイヤを挿入し、その先端を血管に到達させる。ついで、ガイドワイヤを体内に残したまま、カテーテル30を体内から抜き取る。
【0036】
つぎに、新しいカテーテル30に挿入されたスタイレットの内部にガイドワイヤを挿入し、カテーテル30とスタイレットをガイドワイヤとともに体内に挿入していく。そして、カテーテル本体31の先端が血管に到達したところで、カテーテル30を体内に残したままスタイレットとガイドワイヤとを体内から取り出す。これによって、カテーテル30の交換が終了する。この操作において、スタイレットをカテーテル30内に挿入しているときには、クランプ10に誤操作防止具20を取り付けておくことが好ましい。
【0037】
なお、カテーテル30の交換の際に、ガイドワイヤだけでなく、スタイレットも用いるのは、ガイドワイヤだけを用いた場合には、ガイドワイヤがカテーテル30の内部でがたついてしまい、操作がし難くなるためである。スタイレットを用いることにより、ガイドワイヤのカテーテル30内でのがたつきを防止できるとともに、カテーテル30の剛性を大きくすることができ、挿入操作をスムーズに行える。このとき、スタイレットが押し潰されてなく、ガイドワイヤがスムーズに挿通できる状態に維持されていることが重要である。
【0038】
このように、本実施形態に係る誤操作防止具20には、前面部21、後面部22および連結部23が備わっており、これによって、クランプ10の係合部16と被係合部17aとが係合できない状態にすることができる。また、誤操作防止具20は、連結部24aによってスタイレットに連結されている。このため、クランプ10をカテーテル30の分岐管32に取り付けたときには、カテーテル30内にスタイレットを挿入しているときだけ、誤操作防止具20をクランプ10に取り付けることができ、スタイレットをカテーテル30から抜き取るときには誤操作防止具20はクランプ10から取り外される。
【0039】
これによって、スタイレットがカテーテル30内に挿入されているときに、不意にクランプ10の係合部16と被係合部17aとが係合してスタイレットが押し潰されることを防止できる。また、カテーテル30内にスタイレットが挿入されていない場合には、必要に応じて、クランプ10を操作して係合部16と被係合部17aとを係合させることによりカテーテル30の分岐管32を閉塞させることができる。また、誤操作防止具20の把持部24を除いた本体部分は、クランプ10の前部片11aの内面、先端面および外面を覆うことができる単純な構造の部材で構成されている。このため、製造が容易であるとともに安価につき、さらに、係合部16と被係合部17aとが係合することを確実に防止できる。
【0040】
また、誤操作防止具20をクランプ10の側方側にスライドさせることによりクランプ10に対して着脱できるため誤操作防止具20の着脱操作が容易になる。さらに、誤操作防止具20には、把持部24が備わっているため、誤操作防止具20を操作する際には、把持部24を手で持つことにより、操作がし易くなる。
【0041】
また、本発明に係るクランプの誤操作防止具は、前述した実施形態に限定するものでなく、本発明の技術的範囲内で適宜変更実施が可能である。例えば、前述した実施形態では、誤操作防止具20に把持部24が備わっているが、この把持部24は設けずに、前面部21、後面部22および連結部23で誤操作防止具を構成してもよい。また、前述した誤操作防止具20では、後面部22の下端部が前部片11aの被係合部17aを覆うところまで延びているが、後面部22の縦方向の長さは、前面部21の縦方向の長さと同程度にしてもよい。すなわち、誤操作防止具20は、前部片11aの先端側部分に係合して、上部片11cの先端に形成された突部16aが連結部23よりも下方に移動することを妨げることができるものであればよい。
【0042】
また、誤操作防止具は、前部片11aと上部片11cとの間に介在して、係合部16と被係合部17aとが係合することを防止できる構造のものであればよい。さらに、前述した実施形態では、係合部を、上部片11cの先端に形成された角部からなる突部で構成しているが、これに代えて突部16aのような上部片11cの先端から突出する突部で構成してもよい。また、被係合部17aは、段部でなく溝状の凹部で構成してもよい。さらに、前述した実施形態では、誤操作防止具20を連結部24aによってスタイレットに連結しているが、連結部24aを設けず、スタイレットとは切り離して使用できるようにしてもよい。また、誤操作防止具20が取り付けられるクランプとしては、一対の挿通孔が設けられてなく、環状に形成される本体の環状内にチューブ状部材を通すようにしたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…クランプ、11…本体、11a…前部片、11c…上部片、14…支受凸部、15…押圧凸部、16…係合部、17a…被係合部、20…誤操作防止具、21…前面部、22…後面部、23…連結部、24…把持部、32…分岐管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端側に互いに係合可能な係合部と被係合部とが設けられた弾性体からなり弾性に抗して前記両端側どうしが接近するように曲げられることにより前記係合部と前記被係合部とが係合して環状になる本体と、
前記本体の内周側に設けられ、前記本体の内部にチューブ状部材を挿通させた状態で前記係合部と前記被係合部とを係合させたときに前記チューブ状部材を押圧する部分と
を備えたクランプにおける前記係合部と前記被係合部とが係合することを防止するクランプの誤操作防止具であって、
前記本体における前記被係合部が設けられた端部側に着脱可能に取り付けられ、前記両端部どうしが接近する際に前記両端部間に介在することを特徴とするクランプの誤操作防止具。
【請求項2】
対向して配置された一対の縦片と前記一対の縦片の上端部を接続する連結部とで構成され、前記一対の縦片間に、前記本体における前記被係合部が設けられた端部側部分を挿入可能にした請求項1に記載のクランプの誤操作防止具。
【請求項3】
前記クランプにおける前記係合部が前記本体の一端に形成された突部で構成されているとともに、前記被係合部が前記本体の他端側に形成された凹部で構成されており、前記クランプにおける前記本体の他端側の内面、先端面および外面を覆うことのできる部材で構成されている請求項1または2に記載のクランプの誤操作防止具。
【請求項4】
前記クランプにおける前記凹部が、前記両端部が互いに接近する方向に直交する方向に延びる段部または溝部で構成されており、前記クランプにおける前記本体の他端部に対して前記段部または溝部が延びる方向にスライドさせて係合できるようにした請求項3に記載のクランプの誤操作防止具。
【請求項5】
把持部が備わっている請求項3または4に記載のクランプの誤操作防止具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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