説明

クランプ装置

【課題】 材木を五軸加工機によって加工する際に、当該材木をより正確に位置出しした姿勢で保持するクランプ装置を提供する。
【解決手段】 前後方向Xに設けた定盤10の左右に、前後方向Xに沿って、垂直軸24を中心として回転する複数のローラー22にベルト23を掛け渡した左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21を設ける。また、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21の相対向するベルト面23aを前後方向Xに水平かつ平行に配置する。そして、材木Wの左側の側面W1を基準面とする場合には、右側ベルトコンベア21を左側ベルトコンベア20に向けて移動させて材木Wを挟持し前後方向Xに移動させる。材木Wの右側の側面W2を基準面とする場合には、左側ベルトコンベア20を右側ベルトコンベア21に向けて移動させて材木Wを挟持し前後方向Xに移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造の建物を建築する際に使用する垂木などの材木の端部を、五軸加工機によって加工する際に、当該材木を保持するクランプ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木造家屋をはじめとする木造の建物を建築する場合、垂木、筋交い、破風、鼻隠し、隅谷木などの材木を使用するが、これら材木の端部をコンベアで搬送し、五軸加工機によって連続的に自動加工する手法が多く採られている。
【0003】
その場合、五軸加工機で加工する際に、材木をクランプ装置によって保持する必要があるが、従来のクランプ装置は、全ての材木を、その一方の側面を基準面として位置出しし、保持している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、全ての材木を、一律的に、その一方の側面を基準面として位置出しして保持する従来のクランプ装置は、材木によっては当該一方の側面が湾曲しており、基準面としては適していないため、当該材木の位置出しを正確に行うことができず、その結果、五軸加工機による加工精度が低下してしまうといった問題がある。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、垂木などの材木を五軸加工機によって加工する際に、当該材木をより正確に位置出しした姿勢で保持することのできるクランプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
図1乃至図6を参照して説明する。請求項1に記載のクランプ装置1は、木造の建物を建築する際に使用する垂木などの材木Wの端部を、五軸加工機2によって加工する際に、当該材木Wを保持する装置であって、前記材木Wを上載すべく前後方向Xに設けた定盤10の左右に、前後方向Xに沿って、垂直軸24を中心として回転する複数のローラー22にベルト23を掛け渡した左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21を設け、前記左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21の相対向するベルト面23aを前後方向Xに水平かつ平行に配置してなるものである。
【0007】
そして、前記材木Wの左側の側面W1を基準面とする場合には、前記右側ベルトコンベア21を前記左側ベルトコンベア20に向けて移動させて、当該左側ベルトコンベア20とで前記材木Wを挟持して前後方向Xに移動させる。
【0008】
また、前記材木Wの右側の側面W2を基準面とする場合には、前記左側ベルトコンベア20を前記右側ベルトコンベア21に向けて移動させて、当該右側ベルトコンベア21とで前記材木Wを挟持して前後方向Xに移動させるものである。
【0009】
請求項2に記載のクランプ装置1は、木造の建物を建築する際に使用する垂木などの材木Wの端部を、五軸加工機2によって加工する際に、当該材木Wを保持する装置であって、前記材木Wを上載すべく前後方向Xに設けた定盤10の左右に、前後方向Xに沿って、垂直軸24を中心として回転する複数のローラー22にベルト23を掛け渡した左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21を設け、前記左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21の相対向するベルト面23aを前後方向Xに水平かつ平行に配置してなるものである。
【0010】
そして、前記材木Wの左側の側面W1を基準面とする場合には、前記右側ベルトコンベア21を前記左側ベルトコンベア20に向けて移動させて、当該左側ベルトコンベア20とで前記材木Wを挟持して前後方向Xに移動させる。
【0011】
また、前記材木Wの右側の側面W2を基準面とする場合には、前記左側ベルトコンベア20を前記右側ベルトコンベア21に向けて移動させて、当該右側ベルトコンベア21とで前記材木Wを挟持して前後方向Xに移動させる。
【0012】
さらに、前記定盤10の直上に、前記左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21で挟持された材木Wを、上から押圧して前記定盤10に押し付ける押圧機構30を設けてなる。
【0013】
請求項3に記載のクランプ装置1は、請求項1および2に記載の発明において、定盤10の前端部またはその前方に、前記材木Wの前端が当接するストッパー40を昇降自在に設けると共に、その近傍に、前記材木Wが所定位置に達したことを感知する確認センサー50を設けてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載のクランプ装置1は、材木Wの左側の側面W1を基準面とする場合には、右側ベルトコンベア21を左側ベルトコンベア20に向けて移動させて、当該左側ベルトコンベア20とで材木Wを挟持して前後方向Xに移動させ、また、その逆に、材木Wの右側の側面W2を基準面とする場合には、左側ベルトコンベア20を右側ベルトコンベア21に向けて移動させて、当該右側ベルトコンベア21とで材木Wを挟持して前後方向Xに移動させるので、材木Wの左側の側面W1と右側の側面W2の両方を基準面することができる。
【0015】
従って、例えば、ある材木Wで左側の側面W1が湾曲している場合には、右側の側面W2を基準面として位置決めを行うことができる。また、他の材木Wにおいて、その逆に右側の側面W2が湾曲している場合には、左側の側面W1を基準面とすることによって左右方向Yの位置決めを正確に行うことができる。これにより、五軸加工機2による自動連続加工の精度を高めることができる。
【0016】
請求項2に記載のクランプ装置1は、請求項1に記載の発明と同様に、材木Wを、左側の側面W1と右側の側面W2のいずれかを基準面として左右方向Yの位置決めを正確に行うことができるので、五軸加工機2による加工精度を高めることができる。
【0017】
また、定盤10の直上に、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21で挟持された材木Wを、上から押圧して定盤10に押し付ける押圧機構30を設けているので、当該材木Wの上下方向(高さ方向)の位置決めも正確に行うことができる。これにより、五軸加工機2の加工精度をさらに高めることができる。
【0018】
請求項3に記載のクランプ装置1は、ストッパー40を設けているので、材木Wの前後方向Xの位置決めを正確に行うことができる。また、確認センサー50を設けているので、当該確認センサー50が材木Wの所定位置への侵入を確認し、ストッパー40を下降させ、また、五軸加工機2へ加工開始の信号を送ることができる。これにより、五軸加工機2の加工精度をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るクランプ装置1の実施形態を、図1乃至図5に示す。これは、図6に示すように、木造家屋を建築する際に使用する垂木、筋交い、破風、鼻隠し、隅谷木などの材木Wの端部を、五軸加工機2によって加工する際に、当該材木Wを保持するために材木生産ラインに設けられたものである。このクランプ装置1は、材木コンベア3と直交して設けられた接続コンベア4にさらに直交する姿勢で、当該接続コンベア4と五軸加工機2との間に設けられている。五軸加工機2は、左右方向Yに前後して2台設け、材木Wの両端部を加工するようにしている。
【0020】
なお、当該生産ラインにおいては、材木コンベア3に沿って、材木Wを所定長さに切断するためのクロスカット装置5、必要な線引きを行うためのインクジェット装置6、および五軸加工機2から排出された廃材を搬送するための廃材コンベア7と廃材箱8を設けている。また、材木Wに、切欠やホゾを加工するための欠き・ホゾ加工機9を併せて設けている。
【0021】
そして、材木Wを上載するために前後方向Xに設けた定盤10の左右のそれぞれに、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21を設けている。左側ベルトコンベア20および右側ベルトコンベア21は、それぞれ、前後方向Xに沿って、モーター25の垂直軸24を中心として回転する大径の駆動ローラー22aと、それと所定間隔を開けて設けた小径の従動ローラー22bとの間に無端ベルト23を掛け渡して構成している。そして、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21の相対向するベルト面23aを前後方向Xに水平かつ相互に平行に配置している。
【0022】
左側ベルトコンベア20および右側ベルトコンベア21は、図3に示すように、それぞれ水平シリンダー26で左右方向に移動自在の基台27を備えるものとし、その基台27を軸受28を介してシャフト29に接続させることができる。これにより、水平シリンダー26を伸縮させることによって当該左側コンベア20および右側コンベア21を左右方向に自在に移動させることができる。
【0023】
本実施形態に係るクランプ装置1は、次のように作動する。材木コンベア3によって前方に搬送された材木Wは、プッシャー61に押されて接続コンベア4に載せられた後、案内コンベア62で送られてその先端部が定盤10上に達する。定盤10上に達した材木Wは、その先端部が左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21によって挟持される。この挟持は、例えば、材木Wの左側の側面W1を基準面とする場合には、図5(a)に示すように、右側ベルトコンベア21が左側ベルトコンベア20に向けて移動し、当該左側ベルトコンベア20とで材木Wを挟持する。このとき、左側コンベア20は移動しない。
【0024】
また、その逆に、材木Wの右側の側面W2を基準面とする場合には、図5(b)に示すように、左側ベルトコンベア20が右側ベルトコンベア21に向けて移動し、当該右側ベルトコンベア21とで材木Wを挟持する。この際、右側ベルトコンベア21は移動しない。これにより、材木Wの左右方向Yの位置決めを行う。
【0025】
材木Wのいずれの面を基準面とするかは、検知装置(図示せず)によって、当該材木Wの左側の側面W1と右側の側面W2がどの程度湾曲しているかを検知させて決定する。この検地装置は、クランプ装置1に設けることもできるし、また、接続コンベア4や材木コンベア3等の他の機構に設けることもできる。
【0026】
材木Wを、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21で挟持した後、両ベルトコンベア20,21を駆動して当該材木Wを前進させ、最初の五軸加工機2によってその端部の加工を行う。そして、端部(前端部)の加工が完了後、当該材木Wを接続コンベア4でさらに左右方向Yに送り、他の端部(後端部)を同様に二つ目の五軸加工機2で加工する。両端部の加工を終えた材木Wは、そのまま左右方向Yに送られ、製品箱60に収納される。
【0027】
なお、本実施形態では、定盤10の直上に、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21で挟持された材木Wを、上から押圧して定盤10に押し付ける押圧機構30を設けており、これによって、材木Wの上下方向の位置決めを行っている。
【0028】
また、定盤10の前端部に、材木Wの前端が当接するストッパー40を昇降自在に設けると共に、その近傍に、材木Wが所定位置に達した際に、それを感知する確認センサー50を設けている。本実施形態では、ストッパー40と確認センサー50を回動台41に取付け、その回動台41を傾斜シリンダー42によって回動させて、ストッパー40および確認センサー50を昇降自在としている。
【0029】
本実施形態に係るクランプ装置1は、材木Wの左側の側面W1と右側の側面W2のいずれかを基準面として位置決めを行うことができるので、湾曲していない左側の側面W1または右側の側面W2を基準面として選択することによって、左右方向Yの位置決めを正確に行うことができる。これにより、五軸加工機2による自動連続加工の精度を高めることができる。
【0030】
また、このクランプ装置1は、押圧機構30を設けているので、左側ベルトコンベア20と右側ベルトコンベア21で挟持された材木Wを、上から押圧して定盤10に押し付けることができ、よって、当該材木Wの上下方向の位置決めも正確に行うことができる。従って、五軸加工機2の加工精度をさらに高めることができる。なお、押圧機構30は、シリンダー(図示せず)によって昇降自在とすることができる。
【0031】
さらに、このクランプ装置1は、ストッパー40を設けているので、材木Wの前後方向Xの位置決めを正確に行うことができる。また、確認センサー50を設けているので、当該確認センサー50が材木Wの所定位置への侵入を確認し、ストッパー40を下降させ、また、五軸加工機2へ加工開始の信号を送ることができる。これにより、五軸加工機2の加工精度をさらに高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係るクランプ装置は、材木Wを五軸加工機2によって加工する場合の他に、他の加工装置によって加工する場合にも適用することができる。また、材木のみでなく、金属や樹脂を加工する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るクランプ装置を設けた材木製造ラインを示す平面図である。
【図2】図1に示す製造ラインの要部を示す拡大図である。
【図3】本発明の実施形態に係るクランプ装置(図2のAで示す装置)を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るクランプ装置を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るクランプ装置の動作を示す平面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るクランプ装置によって加工された製品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 クランプ装置
2 五軸加工機
3 材木コンベア
4 接続コンベア
5 クロスカット装置
6 インクジェット装置
7 廃材コンベア
8 廃材箱
9 欠き・ホゾ加工機
10 定盤
20 左側ベルトコンベア
21 右側ベルトコンベア
22 ローラー
22a 駆動ローラー
22b 従動ローラー
23 ベルト
23a ベルト面
24 垂直軸
25 モーター
26 水平シリンダー
27 基台
28 軸受
29 シャフト
30 押圧機構
40 ストッパー
41 回動台
42 傾斜シリンダー
50 確認センサー
60 製品箱
61 プッシャー
62 案内コンベア
W 材木
W1 左側の側面
W2 右側の側面
X 前後方向
Y 左右方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木造の建物を建築する際に使用する垂木などの材木(W)の端部を,五軸加工機(2)によって加工する際に,当該材木を保持するクランプ装置であって、前記材木を上載すべく前後方向(X)に設けた定盤(10)の左右に,前後方向に沿って,垂直軸(24)を中心として回転する複数のローラー(22)にベルト(23)を掛け渡した左側ベルトコンベア(20)と右側ベルトコンベア(21)を設け、前記左側ベルトコンベアと右側ベルトコンベアの相対向するベルト面(23a)を前後方向に水平かつ平行に配置し、前記材木の左側の側面(W1)を基準面とする場合には,前記右側ベルトコンベアを前記左側ベルトコンベアに向けて移動させて,該左側ベルトコンベアとで前記材木を挟持して前後方向に移動させ、前記材木の右側の側面(W2)を基準面とする場合には,前記左側ベルトコンベアを前記右側ベルトコンベアに向けて移動させて,該右側ベルトコンベアとで前記材木を挟持して前後方向に移動させてなることを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
木造の建物を建築する際に使用する垂木などの材木(W)の端部を,五軸加工機(2)によって加工する際に,当該材木を保持するクランプ装置であって、前記材木を上載すべく前後方向(X)に設けた定盤(10)の左右に,前後方向に沿って,垂直軸(24)を中心として回転する複数のローラー(22)にベルト(23)を掛け渡した左側ベルトコンベア(20)と右側ベルトコンベア(21)を設け、前記左側ベルトコンベアと右側ベルトコンベアの相対向するベルト面(23a)を前後方向に水平かつ平行に配置し、前記材木の左側の側面(W1)を基準面とする場合には,前記右側ベルトコンベアを前記左側ベルトコンベアに向けて移動させて,該左側ベルトコンベアとで前記材木を挟持して前後方向に移動させ、前記材木の右側の側面(W2)を基準面とする場合には,前記左側ベルトコンベアを前記右側ベルトコンベアに向けて移動させて,該右側ベルトコンベアとで前記材木を挟持して前後方向に移動させてなり、前記定盤の直上に,前記左側ベルトコンベアと右側ベルトコンベアで挟持された材木を,上から押圧して前記定盤に押し付ける押圧機構(30)を設けてなることを特徴とするクランプ装置。
【請求項3】
定盤(10)の前端部またはその前方に,前記材木(W)の前端が当接するストッパー(40)を昇降自在に設けると共に,その近傍に,前記材木が所定位置に達したことを感知する確認センサー(50)を設けてなることを特徴とする請求項1または2に記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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