説明

クランプ装置

【課題】クランプユニットでワークパレットを確実にクランプする。
【解決手段】ワークパレット1の挿し部4の筒内面奥側に、前記内面の手前側の挿し部端部5の内径よりも大きな内径を有する段差部6を形成し、挿し部端部5とこの段差部6の内面とをつなぐテーパ面7を形成する。その一方で、クランプユニット3の受け部8に、挿し部4の内面側に向けて、受け部8の周面から突出、及び、この受け部8内に収納自在な突部9を一端側に形成したレバー部材10を設け、この突部9の受け部8奥側に、その奥側ほど軸心側に向かって傾斜するテーパ面11を形成する。この挿し部4を受け部8に挿しこんで、前記突部9を突出させると両テーパ面7、11同士が面接触して、ワークパレット1が確実にクランプされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークをチャッキングするワークパレットと、このワークパレットをクランプするクランプユニットから構成されるクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
5軸制御の加工機等に用いられるクランプ装置は、ワークをチャッキングするワークパレットと、このワークパレットを前記加工機等のテーブルにクランプするクランプユニットから構成される。このクランプ装置は、ワークの高い加工精度を確保するために、ワークパレットで確実にこのワークをチャッキングするとともに、加工中にワークのがたつきが生じないように、ワークパレットをクランプユニットに確実にクランプすることが望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すクランプ装置は、第1ブロック(本願発明の構成におけるクランプユニットに相当)に第2ブロック(同じくワークパレットに相当)を着脱自在に固定するようにしたものであって、第1ブロックに第1継手を設けて、この第1継手に伝動部材、中間部材、ボール形状の係合具等を配設する一方で、第2ブロックに第2継手を設けて、この第2継手に被係止部を形成してこの被係止部で前記係合具を係止するようにしている。また、両継手の嵌合面に圧縮空気を流動させて、その嵌合面のクリーニング作用をもたせ、この嵌合面に異物が挟まるのを防止している。この構成によると、装置を小型化することができ、かつ、ワークの位置決めを精密に行うことができる(同文献明細書段落0006〜0007を参照)。
【0004】
しかしながら、特に5軸制御のマシニングセンタ等の加工機においては、図12にその一例を模式的に示すように、加工ツール36側でX、Y、Z軸方向の3軸制御がなされる一方で、ワークWを載置したステージ2側で前記X軸周り(回転A軸)及びZ軸周り(回転C軸)の回転制御がなされ、合計5軸(直線3軸+回転2軸)の制御がなされるようになっている。すなわち、ステージ2上に設置したワークWの多少の位置ずれは、前記5軸制御により十分補正できるにもかかわらず、この精密な位置決め性を追求するあまり、装置構成が過度に複雑になってしまっているという問題がある。
【0005】
そこで、この装置構成をよりシンプルにしたものとして、特許文献2に示す締結装置が挙げられる。この締結装置は、締結ピンを締結ブッシュに挿し込むことにより二つの部材を締結するものであって、前記締結ピンに設けられたスチールボールを介して、この締結ピン及び締結ブッシュに形成したテーパ面を係合させて両部材の締結を図っている。この装置構成における部品数は、特許文献1に示す構成と比較して大幅に少なく、シンプルなものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−300124号公報
【特許文献2】特開2009−115166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献2に示す構成においては、前記締結ピン及び締結ブッシュに形成したテーパ面とスチールボールとが点接触状態なので、その締結状態が安定せずワークの加工中にがたつきが生じる恐れがある。上述した5軸制御の加工機はワークのチャッキングの位置ずれは各軸の制御でもって補正できるものの、加工中のがたつきまでは補正できない。このため、このがたつきによって、ワークの十分な加工精度を得ることができないという問題を生じ得る。
【0008】
そこで、この発明は、ワークをチャッキングするワークパレットと、加工機のテーブルに固定されたクランプユニットとを、簡単な構成でかつ確実に固定することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明は、ワークをチャッキングするワークパレットと、このワークパレットをテーブル上に固定するクランプユニットから構成されるクランプ装置において、前記ワークパレットが筒状の挿し部を備え、この挿し部の筒内面の奥側に、前記筒内面の手前側の挿し部端部の内径よりも大きな内径を有する段差部を形成して、この段差部と前記挿し部端部の内面とをつなぐテーパ面を形成する一方で、前記クランプユニットが前記挿し部の内面側にぴったりと挿し込まれる受け部を備え、この受け部に、前記挿し部内面側に向けて、受け部の周面から突出、及び、前記受け部内に収納自在な突部を形成したレバー部材を設けるとともに、前記レバー部材に、このレバー部材を前記受け部の軸心側に付勢する付勢部材を設け、このレバー部材の前記受け部軸心側に、カムを前記レバー部材とこのカムのカム面とが当接するように設け、このカムのカム軸周りの回転に伴って、前記突部が前記付勢部材の付勢力に抗して、前記受け部の外周面から外向きに突出するようにし、前記突部の受け部奥側にその奥側ほど軸心側に向かって傾斜するテーパ面を形成し、前記挿し部を受け部に挿し込んで前記突部を突出させ、前記段差部に形成したテーパ面と、前記突部に形成したテーパ面とを当接させて、この当接力でもって前記クランプユニットによる前記ワークパレットのクランプをなすようにする一方で、前記突部を収納し、前記両テーパ面の当接を解除して前記受け部へ挿し部を自在に抜き差しし得るようにした構成を採用した。
【0010】
前記段差部と突部とはテーパ面による面接触状態となるため、前記特許文献2に示したように両者がスチールボールを介して点接触状態となっている場合と比較して、そのクランプ状態をより確実なものとすることができる。すなわち、加工中のワークのがたつきを防止することができ、このワークの高い加工精度を確保することができる。
【0011】
この突部を複数備えるクランプユニットにあっては、その突部は前記受け部の軸心周りに、均等間隔をもって配置されるのが一般的である。この場合、この突部に当接するカムのカム面をその回転軸周りに回転対称(突部が2個の場合は180度回転対称、突部が3個の場合は120度回転対称、等)に形成しておくと、全ての突部が同期するように、前記突出及び収納することができる。このため、複数の突部によってワークパレットの挿し部が均等にクランプされて、ワークのチャッキング状態を一層安定したものとし得る。
【0012】
また、前記構成においては、前記カムのカム軸を、前記受け部の軸心を通り、かつこの軸心方向と垂直となるように構成するのが好ましい。
【0013】
前記クランプユニットによるワークパレットのクランプは、前記受け部に挿し部を挿し込んだ後に、カムをカム軸周りに回転して行うが、このときワークパレットが邪魔になって、カムの回転に支障が生じることがある。そこで、前記のようにこのカムのカム軸を軸心方向と垂直とすることにより、クランプユニットの側面から前記カムの回転操作を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記カム軸を備える構成においては、このカム軸に、押し上げカムを前記カムと同軸に設け、前記クランプユニットによる前記ワークパレットのクランプ時には、前記押し上げカムの小径部が前記受け部に当接して、前記クランプユニットの全長が短くなるようにこの受け部がクランプシャフト側に変位する一方で、前記ワークパレットのアンクランプ時には、前記押し上げカムの拡径部が前記受け部に当接して、前記クランプユニットから前記受け部が突出するように変位する構成とするのが好ましい。
【0015】
このように、押し上げカムのカム軸周りの回転に対応して、前記受け部が変位し得るようにしておくと、アンクランプ時にこの受け部が、ワークパレットを取り外す方向にわずかに押し出す。このため、ワークの加工中にクランプユニットとワークパレットが強固に嵌合した状態となった場合でも、前記押し出しによりその嵌合が解除され、アンクランプ時におけるワークパレットの交換をスムーズに行うことができる。
【0016】
また、前記構成においては、前記クランプユニットによる前記ワークパレットのクランプ及びアンクランプを、前記受け部への作動流体の供給及び遮断に伴う作動流体圧力の変化、又は、前記作動流体の流路の切り替えによってなすようにすることもできる。
【0017】
この作動流体としては、クランプ機構を駆動させる程度の駆動力を有する圧力・流量を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、一般的な作業場に配管されている圧縮空気を用いることができる。このように、クランプ機構の作動を手動ではなく作動流体による駆動力で自動的に行うことによって、ワークパレットのクランプ及びアンクランプを自動制御することができる。さらに、このアンクランプ状態において、このワークパレットを、例えばマシニングセンタのワークパレット交換装置で掴んで自動交換するようにすることによって、複数のワークの加工作業を全自動のもとに行うことができる。このため、作業効率を大幅に向上し得る。このクランプ機構は特に限定されず、上述したカム方式の他に、ばね等の弾性部材を備えたピストンに前記作動流体を送り込んで駆動させる方式を採用することもできる。
【0018】
また、前記各構成においては、前記挿し部の先端に切欠き部を形成する一方で、前記受け部に前記切欠き部が嵌まり込む嵌合部を形成し、前記切欠き部と嵌合部とが嵌合した状態で前記クランプをなすようにすることもできる。
【0019】
このように両者を嵌合させることで、ワークの加工中に、ワークパレットがクランプユニットに対してその軸周りに相対回転できない。このため、このワークのがたつき等も減って、高い加工精度を確保することができる。また、大きさや高さ等の異なる複数の嵌合部を形成するとともに、この嵌合部にそれぞれ嵌る切欠き部を形成しておくと、クランプした際のワークパレットとクランプユニットとの間の相対位置関係を常に同じ状態とすることができる。このため、加工の際の位置決め設定をより簡便に行うことができる。
【0020】
さらに、前記各構成においては、前記クランプユニットの受け部を、この受け部の回りを囲むように設けたガイド部よりもこの受け部先端側に突出させてもよい。
【0021】
このクランプユニットでクランプするワークパレットには種々の大きさのワークがチャッキングされ、その中にはクランプユニットの設置面積よりも大きな面積を有するものもある。しかも、5軸制御の加工機においては、そのワークに様々な方向から加工ツールが当接し、クランプ部近傍では加工機のテーブルに対して横向きのモーメントが作用して、加工中にワークのがたつきが生じることがある。そこで、前記受け部をガイド部よりも突出させると、この受け部がワークパレットの挿し部の内面側奥深くに嵌入することとなって、前記がたつきを抑制する作用を発揮する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、ワークパレットに形成した挿し部のテーパ面と、クランプユニットに形成した受け部のテーパ面とを当接させて、この当接力によりこのワークパレットをクランプするようにした。この当接は面接触によりなされるため、確実な当接力が得られ、ワークの加工の際にこのワークがずれることがなく、高い加工精度を確保することができる。また、前記当接は受け部に形成した突部に当接するカムの回転操作のみによって行うものなので、その操作は非常に簡便である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本願発明に係るクランプ装置の実施形態を示す側面断面図であって、(a)は挿し込み前、(b)は挿し込んでクランプした状態
【図2】本願発明に係るクランプ装置の第一の実施形態を示す正面断面図
【図3】図2に示すクランプ装置のアンクランプ状態を示す正面断面図
【図4】本願発明に係るクランプ装置の分解斜視図
【図5】本願発明に係るクランプ装置の第二の実施形態を示す分解斜視図
【図6】本願発明に係るクランプ装置の第三の実施形態を示す分解斜視図
【図7】本願発明に係るクランプ装置の第四の実施形態を示す分解斜視図
【図8】本願発明に係るクランプ装置の第五の実施形態を示す分解斜視図
【図9】本願発明に係るクランプ装置の第六の実施形態を示す分解斜視図
【図10】本願発明に係るクランプ装置の第七の実施形態を示す分解斜視図
【図11】本願発明に係るクランプ装置の第八の実施形態を示す分解斜視図
【図12】一般的な5軸制御のマシニングセンタを示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明に係るクランプ装置の第一の実施形態を図1から4に示す。このクランプ装置は、ワークWをチャッキングするワークパレット1と、このワークパレット1を加工機のテーブル2上に固定するクランプユニット3とから構成されている。
【0025】
このワークパレット1は、筒状の挿し部4を備えており、この挿し部4の筒内面の奥側に、前記筒内面の手前側の挿し部端部5の内径よりも大きな内径を有する段差部6が形成されている。さらに、挿し部端部5とこの段差部6の内面とをつなぐテーパ面7が形成されている。
【0026】
その一方で、クランプユニット3は、挿し部4の内面側にぴったりと挿し込まれる受け部8を備えており、この受け部8に、挿し部4の内面側に向けて、受け部8の周面から突出、及び、この受け部8内に収納自在な突部9を一端側に形成したレバー部材10が設けられている。この突部9の受け部8奥側には、その奥側ほど軸心側に向かって傾斜するテーパ面11が形成されている。
【0027】
また、このレバー部材10の他端側は、受け部8奥側の回動軸12に軸支されていて、この回動軸12周りに回動し得るようになっている。さらに、このレバー部材10の先端側(突部9が形成されている側)には、コイルばね13が設けられており、このコイルばね13で、この先端側を受け部8の軸心側に付勢している。
【0028】
このレバー部材10の受け部8軸心側には、カム14が、レバー部材10とこのカム14のカム面とが当接するように設けられている。このカム面はそのカム軸15に対して180度回転対称に形成されている。また、このカム14のカム軸15は、受け部8の軸心を通り、かつ、この軸心方向と垂直となっていて、クランプユニット3の側面に、このカム軸15を回転させるためのボルト16が露出している。
【0029】
また、カム軸15には、押し上げカム17がカム14と同軸に設けられている。そして、クランプユニット3によるワークパレット1のクランプ時には、押し上げカム17の小径部が受け部8に当接して、この受け部8がクランプシャフト18側に位置する一方で(図2を参照)、ワークパレット1のアンクランプ時には、図3に示すように、押し上げカム17の拡径部が受け部8に当接して、クランプユニット3から受け部8が突出するように変位する。この変異によって、ワークパレット1の挿し部4が、このワークパレット1の取り外し方向に押し出される。この押し出し作用によって、ワークWの加工中にワークパレット1とクランプユニット3が強固に嵌合した場合でも、この嵌合が解除されて、このワークパレット1の取り外しを容易に行うことができる。
【0030】
また、挿し部4の先端には、深さの異なる2つの切欠き部19、19が形成されている一方で、受け部8には、この切欠き部19がちょうど嵌合する嵌合部20が形成されている。
【0031】
また、クランプユニット3には受け部8の回りを囲むようにガイド部21が設けられており、このガイド部21と受け部8の間の隙間に、挿し部4がぴったりと挿し込まれるようになっている。この受け部8の先端はガイド部21よりも突出して設けられており、この受け部8が挿し部4の内面側に深く挿し込まれる。
【0032】
このクランプユニット3でワークパレット1をクランプする際は、ワークパレット1の挿し部4をクランプユニット3の受け部8に、挿し部4先端の切欠き部19と、受け部8の嵌合部20とが嵌合するように挿し込んだ上で、レンチ等を用いてボルト16を回す。そうすると、カム14のカム軸15が回転し、そのカム面に当接するレバー部材10が、コイルばね13の付勢力に抗して、突部9が受け部8の周面から突出するように回動軸12回りに回動する。この突出によって、突部9に形成したテーパ面11と、挿し部4の内面側に形成したテーパ面7とが当接し、ワークパレット1のクランプがなされる。
【0033】
加工対象のワークWの底部には、ワークパレット1のジョー22が嵌るテーパ面Tが形成されており、このジョー22に設けられた調節ボルト23を回転させて両ジョー22、22を接近させることにより、ワークWをワークパレット1に確実に固定するようになっている。
【0034】
上記の実施形態においては、カム14のカム軸15を受け部の軸心方向と垂直としたが、このカム軸15を前記軸心方向と同軸とすることもできる。このようにカム14を配置することにより、図1等に示した板カムにあっては、回転対称のカム面とすることによって複数のレバー部材10を同期して回動することができる。このカム14は、もちろん板カムに限定されず、このレバー部材10に所定の回動を与え得るものであれば、他のカム形状を採用することもできる。
【0035】
また、挿し部4の先端に形成した切欠き部19及び、受け部8に形成した嵌合部20は必須の構成要素ではなく、段差部6に形成したテーパ面7と、突部9に形成したテーパ面11との当接によって十分なクランプ状態が得られ、ワークWのがたつきが生じないのであれば、適宜省略することもできる。
【0036】
図1等に示す構成は、カム14の回転を手動で行うものであるが、このクランプユニット3に、圧縮空気等の作動流体を導入し、この作動流体の供給及び遮断に対応するようにカム14を回転させて、クランプ及びアンクランプ動作を自動化することができる。さらに、ワークパレット1に周溝状の掴み溝24を形成しておくと、マシニングセンタのクランプユニット交換装置(図示せず)によってこの掴み溝24を把持して、ワークパレット1の交換を自動的に行うことができる。すなわち、ワークWの加工の全自動化を図ることができ、その加工作業の効率を大幅に向上することができる。このクランプユニット3のクランプ機構はカム14に限定されず、例えば、ばね等の弾性部材を備えたピストン機構に置き換えることもできる。
【0037】
このクランプユニット3でクランプするワークパレット1は、当然ながら図1の形態のものに限定されず、図5〜11(第二〜八の実施形態)に示す種々のチャッキング機構を備えたワークパレット1と適宜交換することができる。これらのワークパレット1は、いずれも図1に示したワークパレット1と同じ形状の挿し部4を備え互換性を有するものであって、これらのワークパレット1を取り揃えておくことによって、種々の形状のワークWについて容易に加工を行うことができる。
【0038】
図5に示すワークパレット1は、図1と同様に底部が角形のワークWをチャッキングするものであり、図1に示したものと比較してより多くのジョー22で前記チャッキングを行っている。また、図6に示すワークパレット1は、底部が円柱形のワークWをチャッキングするものである。図5及び6に示すワークパレット1でチャッキングするワークWの前記底部には、ワークパレット1のジョー22が嵌まるテーパ面Tが形成されている。
【0039】
このテーパ面Tを形成しないワークWをチャッキングするワークパレット1として、図7及び8に示すものがある。図7に示すワークパレット1は、凹部25内にワークWを嵌め込むとともに、この凹部25の内壁から固定ボルト26を突出させて、この固定ボルト26とワークWの当接力で、このワークWを確実にチャッキングする。また、図8に示すワークパレット1は、凹部25の一端にストッパ27を備え、このストッパ27から位置調節ボルト28を突出してワークWに当接させ、このワークWの位置を調節するとともに、凹部25の内壁から固定ボルト26を突出させて、この固定ボルト26で上記と同様にワークWを確実にチャッキングする。
【0040】
また、図9に示すように、ワークパレット1の上面側に向けて固定ボルト26を突出させて、ワークWの下面に形成したねじ穴にねじ込むとともに、位置決めピン29を前記下面に形成した位置決め穴に挿し込んで、ワークWのワークパレット1上における回り止めをし、このワークWをワークパレット1に確実にチャッキングすることもできる。また、ワークパレット1のセンタにはインロー部30が形成されている。このワークパレット1でチャッキングするワークWの下面に嵌合突起を形成しておき、この嵌合突起をインロー部30にきっちりと嵌め込むようにすると、この嵌め込みとともに、ワークパレット1に対するワークWの芯出しがなされる。このため、芯出し作業を別途行う必要がなく、このワークWのチャッキングを容易に行い得るとともに、高い加工精度を確保することができる。
【0041】
図9に示した構成とすることで、ワークWにフランジ部を形成することなくワークパレット1にチャッキングできるため、フランジ形成に伴う材料ロスを低減することができる。その一方で、ワークパレット1の上面に固定ボルト穴31を形成しておき、フランジを形成したワークWを固定ボルト26で固定することも可能としている。
【0042】
また、図10に示すように、ワークパレット1のセンタに、その上面側に向けてセンタボルト32を突出させて、ワークWの下面センタに形成したねじ穴にねじ込んでワークパレット1に対するワークWの芯出しをするとともに、位置決めピン29を前記下面に形成した位置決め穴に挿し込んで、ワークWのワークパレット1上における回り止めをする構成とすることもできる。
【0043】
この構成においても、図9に示したワークパレット1と同様に、ワークWにフランジ部を形成することなくワークパレット1にチャッキングできるため、フランジ形成に伴う材料ロスを低減することができる。その一方で、ワークパレット1の上面に固定ボルト穴31を形成しておき、図10に示すように、フランジを形成したワークWを固定ボルト26で固定することも可能としている。
【0044】
さらに、図11に示すように、ワークパレット1に断面T字形のT字溝33を形成し、このT字溝33内にこのT字溝33の上方への抜け出しを防止した係止部材(図示せず)を設けるとともに、このワークパレット1の上面側に、L字形の固定部材34を設け、この固定部材34の一端をワークWの底部側面に形成した係止溝Kに嵌め込みつつ、この固定部材34と係止部材を締結ボルト35で締結するようにした構成とすることもできる。このワークパレット1の上面側に、方向の異なる複数本のT字溝33を形成しておくことで、形状の異なる種々のワークWをチャッキングすることができる。この固定部材34はL字形のものに限定されず、ワークWに形成した係止溝Kの形状に合わせて、最適な形状のものに適宜交換して使用することができる。
【0045】
上述したように、このワークパレット1の形状は、チャッキングするワークWの形状に対応して種々のものを選択し得るが、このワークパレット1及びこれをクランプするクランプユニット3の大きさも、このワークWの大きさに対応して適宜選択することができる。すなわち、このワークパレット1は、国際標準化機構(ISO)のサイズ規格に則って製作されており、そのフランジ部の外径(図1中の矢印dを参照)として、例えば40mm、63mm、80mm、100mm、125mm、160mm等、種々のものを用意できる。そこで、ワークWの形状やサイズに適合するワークパレット1を適宜採用することで、ワークWのチャッキングを確実なものとし、その加工精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 ワークパレット
2 テーブル(ステージ)
3 クランプユニット
4 挿し部
5 挿し部端部
6 段差部
7 (挿し部の)テーパ面
8 受け部
9 突部
10 レバー部材
11 (突部の)テーパ面
12 回動軸
13 コイルばね(付勢部材)
14 カム
15 カム軸
16 ボルト
17 押し上げカム
18 クランプシャフト
19 切欠き部
20 嵌合部
21 ガイド部
22 ジョー
23 調節ボルト
24 掴み溝
25 凹部
26 固定ボルト
27 ストッパ
28 位置調節ボルト
29 位置決めピン
30 インロー部
31 固定ボルト穴
32 センタボルト
33 T字溝
34 固定部材
35 締結ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(W)をチャッキングするワークパレット(1)と、このワークパレット(1)をテーブル(2)上に固定するクランプユニット(3)から構成されるクランプ装置において、
前記ワークパレット(1)が筒状の挿し部(4)を備え、この挿し部(4)の筒内面の奥側に、前記筒内面の手前側の挿し部端部(5)の内径よりも大きな内径を有する段差部(6)を形成して、この段差部(6)と前記挿し部端部(5)の内面とをつなぐテーパ面(7)を形成する一方で、
前記クランプユニット(3)が前記挿し部(4)の内面側にぴったりと挿し込まれる受け部(8)を備え、この受け部(8)に、前記挿し部(4)内面側に向けて、受け部(8)の周面から突出、及び、前記受け部内に収納自在な突部(9)を形成したレバー部材(10)を設けるとともに、前記レバー部材(10)に、このレバー部材(10)を前記受け部(8)の軸心側に付勢する付勢部材(13)を設け、このレバー部材(10)の前記受け部(8)軸心側に、カム(14)を前記レバー部材(10)とこのカム(14)のカム面とが当接するように設け、このカム(14)のカム軸(15)周りの回転に伴って、前記突部(9)が前記付勢部材(13)の付勢力に抗して、前記受け部(8)の外周面から外向きに突出するようにし、前記突部(9)の受け部(8)奥側にその奥側ほど軸心側に向かって傾斜するテーパ面(11)を形成し、
前記挿し部(4)を受け部(8)に挿し込んで前記突部(9)を突出させ、前記段差部(6)に形成したテーパ面(7)と、前記突部(9)に形成したテーパ面(11)とを当接させて、この当接力でもって前記クランプユニット(3)による前記ワークパレット(1)のクランプをなすようにする一方で、前記突部(9)を収納し、前記両テーパ面(7、11)の当接を解除して前記受け部(8)へ挿し部(4)を自在に抜き差しし得るようにしたことを特徴とするクランプ装置。
【請求項2】
前記カム(14)のカム軸(15)が、前記受け部(8)の軸心を通り、かつこの軸心方向と垂直であることを特徴とする請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記カム軸(15)に、押し上げカム(17)を前記カム(14)と同軸に設け、前記クランプユニット(3)による前記ワークパレット(1)のクランプ時には、前記押し上げカム(17)の小径部が前記受け部(8)に当接して、前記クランプユニット(3)の全長が短くなるようにこの受け部(8)がクランプシャフト(18)側に変位する一方で、前記ワークパレット(1)のアンクランプ時には、前記押し上げカム(17)の拡径部が前記受け部に当接して、前記クランプユニット(3)から前記受け部(8)が突出するように変位することを特徴とする請求項2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記クランプユニット(3)による前記ワークパレット(1)のクランプ及びアンクランプを、前記受け部(8)への作動流体の供給及び遮断に伴う作動流体圧力の変化、又は、前記作動流体の流路の切り替えによってなすようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記挿し部(4)の先端に切欠き部(19)を形成する一方で、前記受け部(8)に前記切欠き部(19)が嵌まり込む嵌合部(20)を形成し、前記切欠き部(19)と嵌合部(20)とが嵌合した状態で前記クランプをなすようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記クランプユニット(3)の受け部(8)を、この受け部(8)の回りを囲むように設けたガイド部(21)よりもこの受け部(8)先端側に突出させたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のクランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−115869(P2011−115869A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273555(P2009−273555)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(591286982)株式会社MSTコーポレーション (11)
【Fターム(参考)】