クリップ式コネクタキャップ
【課題】複数のクリップ部42,51によってコネクタに対する保持力を高める一方で、取付作業時の挿入力の増加を抑制して作業性悪化を回避する。
【解決手段】エンジン側燃料パイプと車体側燃料パイプとを接続するコネクタに合成樹脂製のコネクタキャップ1が取り付けられ、コネクタと車体側燃料パイプとの相対回転が防止される。コネクタキャップ1は、軸方向に並んだ第1クリップ部42および第2クリップ部51を有し、コネクタに押し込んで取り付ける際に、第1クリップ部42が先に拡開変形し、その後、第1クリップ部42の変位が収縮方向に反転した段階で第2クリップ部51の拡開変形が始まるように構成されている。第1クリップ部42単体での挿入力が負となるため、全体での必要な挿入力が軽減する。
【解決手段】エンジン側燃料パイプと車体側燃料パイプとを接続するコネクタに合成樹脂製のコネクタキャップ1が取り付けられ、コネクタと車体側燃料パイプとの相対回転が防止される。コネクタキャップ1は、軸方向に並んだ第1クリップ部42および第2クリップ部51を有し、コネクタに押し込んで取り付ける際に、第1クリップ部42が先に拡開変形し、その後、第1クリップ部42の変位が収縮方向に反転した段階で第2クリップ部51の拡開変形が始まるように構成されている。第1クリップ部42単体での挿入力が負となるため、全体での必要な挿入力が軽減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つのパイプを接続するコネクタに取り付けられてパイプとコネクタとの間の相対回転を防止するクリップ式コネクタキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用エンジンの燃料配管においては、エンジンと一体に組み付けられた下流側つまりエンジン側の配管パイプと、車体側に予め組み付けられた車体側の配管パイプとが、車両組立ラインにおいて、エンジンを車体に搭載した後に、コネクタを介して簡単に接続される構造となっている。そして、一方の配管パイプに予め取り付けられたコネクタと他方の配管パイプとの相対回転(これはシール部の摩耗や損傷の誘因となる)を防止するために、特許文献1,2等に開示されるようなクリップ式コネクタキャップをコネクタに取り付けて、コネクタと他方の配管パイプとを保持し、両者の相対回転を規制する構造が一般に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−269088号公報
【特許文献2】特開2003−227581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2においては、合成樹脂等から成形されるコネクタキャップの長手方向の1箇所のみにC字形ないしU字形をなすクリップ部が設けられており、これをコネクタの円筒形部分に押し込んで嵌合させることで該コネクタキャップをコネクタに装着するようにしているが、このように1箇所のみで保持しているのでは、必ずしも十分な保持が得られにくい。一方、コネクタキャップの複数箇所にクリップ部を設けることとすると、当然のことながらコネクタキャップをコネクタに装着する際に必要な挿入力が増大し、作業者による組付作業性が悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、この発明では、クリップ部を複数設けるとともに、一つのクリップ部の弾性反力(クリップ部が閉じようとする力)を利用して、他のクリップ部の挿入を補助するようにした。
【0006】
すなわち、この発明は、端部にコネクタを備えた第1のパイプと第2のパイプとが上記コネクタを介して接続されたパイプ接続構造において、両者の相対回転を防止するように上記コネクタに側方から押し込んで取り付けられるクリップ式コネクタキャップであって、
このコネクタキャップは、第1クリップ部と第2クリップ部とを少なくとも含む複数個のクリップ部が軸方向に並んで設けられており、これらクリップ部は、各々、上記コネクタの各々の被嵌合部に両側から弾性的に嵌合する一対の係止片部を有し、
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第2クリップ部が自由状態にあるまま上記第1クリップ部の拡開変形が先行して生じるように各々の係止片部の位置が設定されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成では、取付作業時に、第1クリップ部が第2クリップ部よりも先に拡開変形し、これよりも遅れて第2クリップ部が拡開変形し始める。作業者の手指等に作用する挿入方向の反力は、静止しているクリップ部が拡開変形し始める瞬間が一般に最も大となるので、第1クリップ部が拡開変形し始めるタイミングと第2クリップ部が拡開変形し始めるタイミングとが僅かに異なることで、コネクタキャップ全体としての必要な最大挿入力が抑制される。
【0008】
そして、第1クリップ部の挿入行程の後半では、係止片部が互いに閉じようとする力によって第1クリップ部がコネクタキャップの被嵌合部に引き寄せられる形となり、つまり、コネクタキャップをその挿入方向に沿って引っ張る力が生じる。換言すれば、第1クリップ部よりも遅れて第2クリップ部が挿入されていく過程で、第1クリップ部により負の挿入力が生じ、コネクタキャップ全体としての挿入力が軽減する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、コネクタキャップが複数のクリップ部を備えることで、コネクタに堅固に保持され、その脱落や緩みがより確実に防止される一方、組付作業時に必要な挿入力の増加が少なく、作業性の悪化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係るコネクタキャップの使用態様を示す説明図。
【図2】このコネクタキャップをコネクタとともに示す縦断面図。
【図3】コネクタキャップが適用されるコネクタの正面図。
【図4】このコネクタの平面図。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図。
【図6】同じくコネクタ単体での側面図。
【図7】コネクタキャップ単体での正面図。
【図8】同じく側面図。
【図9】図7のB−B線に沿った断面図。
【図10】コネクタキャップ単体での底面図。
【図11】第2クリップ部にコネクタが嵌合した状態を示す図9と同様の断面図。
【図12】第1,第2クリップ部を備えたコネクタキャップの挿入力の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明に係るクリップ式コネクタキャップ1の一実施例を示すものであって、この実施例では、自動車用エンジンに予め一体に組み付けられてなるエンジン側燃料パイプ2が先端にコネクタ3を備えており、このコネクタ3に車体側燃料パイプ4が事後的に接続されているとともに、その接続部分を覆うようにコネクタ3にコネクタキャップ1が取り付けられている。
【0013】
なお、以下では、この自動車用エンジンの燃料配管用の実施例に則して本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、同様の配管接続部であればいかなる用途であっても本発明を適用することができる。
【0014】
図2は、上記コネクタキャップ1を断面として示し、エンジン側燃料パイプ2、コネクタ3および車体側燃料パイプ4との全体的な位置関係を示したものである。エンジン側燃料パイプ2は、ゴム等で被覆された金属管からなり、相対的に下方へ向かって延びており、その先端に、略L字形に90°折れ曲がった形にコネクタ3が取り付けられている。車体側燃料パイプ4は、同様にゴム等で被覆された金属管からなり、逆に車体側から上方へ向かって延びており、後述するように、その先端がコネクタ3に軸方向に挿入されて該コネクタ3に接続されている。そして、この車体側燃料パイプ4は、略L字形に90°曲がっており、この車体側燃料パイプ4のL字形折曲部4aに沿うようにコネクタキャップ1は全体として略L字形をなしている。上記コネクタ3においては、該コネクタ3自体と上記車体側燃料パイプ4の先端部(コネクタ3との接続部)との間では、中心軸線Mを中心とする相対回転が規制されておらず、相対回転が許容される。しかし、コネクタキャップ1を取り付けた状態では、上記コネクタ3はコネクタキャップ1に対し後述する異形部23によって回転不能な状態で嵌合し、他方、上記車体側燃料パイプ4は、上記L字形折曲部4aの外側に沿ってコネクタキャップ1が位置することからコネクタキャップ1に対する姿勢が規制されるので、結果的に、上記中心軸線Mを中心とした両パイプ2,4の相対回転が阻止される。従って、図1ないし図2において図の右方(あるいは左方)から見た場合、エンジン側燃料パイプ2下端部と車体側燃料パイプ4上端部とが一直線上に整列する。
【0015】
図3〜図6は、上記コネクタ3の詳細を車体側燃料パイプ4とともに示している。なお、図6は、車体側燃料パイプ4が取り付けられていないコネクタ3単体の図である。
【0016】
このコネクタ3は、例えばガラス繊維強化ポリアミドのような高強度の硬質合成樹脂から成形されたものであって、第1の被嵌合部ともなる小径部11と、第2の被嵌合部ともなる大径部12と、が同軸上にかつ軸方向に連続して形成されており、上記小径部11の端部に、さらに、パイプ接続管13が連続して一体成形されている。このパイプ接続管13は、小径部11および大径部12の中心軸線Mに対し90°折れ曲がっており、ここに上述したエンジン側燃料パイプ2の先端が挿入される。
【0017】
上記小径部11は、図5に示すように、内部で車体側燃料パイプ4の先端を受けるように構成されており、車体側燃料パイプ4との間をシールするために、一対のOリング15,15がスペーサ16とともに挿入配置されている。また図5に示すように、このコネクタ3に挿入される車体側燃料パイプ4の先端部には、予め一対の環状リブ17,18が形成されている。
【0018】
上記大径部12は、側面に矩形の開口部20を有するスケルトン状をなしており、この開口部20に、上記車体側燃料パイプ4の抜け止め保持を行うリテーナ21が配置されている。このリテーナ21は、コネクタ3自体と同様の硬質合成樹脂からなり、中心軸線Mに対し直交する方向に引き出し可能に構成されている。図4は、このリテーナ21を外側へ引き出した状態(車体側燃料パイプ4がロックされていない状態)を示しているが、図5および図6に示すように大径部12に組み合わされた状態では、該リテーナ21が環状リブ17,18の間に係合し、車体側燃料パイプ4を抜け止めする。
【0019】
上記リテーナ21は、図6に示す爪部21aによって大径部12からの脱落(中心軸線Mと直交する方向への抜け)が阻止されるが、上記コネクタキャップ1は、この大径部12を外側から覆うことによって、このリテーナ21の脱落を二重に阻止している。
【0020】
ここで、上記小径部11は、その外周面が上記中心軸線Mを中心とした完全な円筒面をなしている。これに対し、上記大径部12の外周面は、図6に示すように、上記中心軸線Mを中心とした円筒面を基本形状としつつ、上下の2箇所に、断面台形状に外周側に膨出した異形部23を備えている。この異形部23は、コネクタキャップ1に対するコネクタ3の回転姿勢を規定するものであり、図6に示すように、上記パイプ接続管13が延びている方向ならびにこれと180°反対側となる2箇所に対称に設けられている。
【0021】
図7〜図10は、上記コネクタ3に取り付けられるコネクタキャップ1を単体で示している。このコネクタキャップ1は、その全体が、適度な弾性ならびに剛性を有するポリアミド等の合成樹脂材料にて一体成形されたものであって、上記中心軸線Mに沿って延びた主要部をなす本体部分31は、一対の壁部32を頂部33で連結した断面略U字形(図9参照)の基本形状を有し、車体側燃料パイプ4とコネクタ3とを接続した後に、コネクタ3に対し、上記中心軸線Mに直交する方向に沿って押し込んで取り付けるようになっている。上記本体部分31の一端部には、車体側燃料パイプ4のL字形折曲部4aに対応して延長部35が略L字形をなすように延びており、その先端部に、車体側燃料パイプ4が比較的緩く圧入可能なパイプ保持部34が設けられている。このパイプ保持部34は、図10に明らかなように、本体部分31と同様に、L字形折曲部4aの内周側(図7もしくは図10において図左側)が開放された断面U字形をなしているが、本体部分31とこのパイプ保持部34とを接続する延長部35の中間部分は、図2から明らかなように、L字形折曲部4aの外周側(図7もしくは図2において図右側)も開放されており、つまり互いに分離した一対の壁部のみから構成されている。
【0022】
なお、上記コネクタキャップ1の外表面や内表面には、適度な弾性を残しつつU字形に開放した基本的形状の必要な剛性を確保するために、周縁ならびに中心軸線Mと直交する方向に沿った数本のリブ36が適宜に設けられている。
【0023】
また、上記本体部分31の延長部35とは反対側の端部には、スリット41によって切り離された形に第1クリップ部42が形成されている。上記スリット41は本体部分31の頂部33に連続した頂部厚肉部44のみを残して第1クリップ部42を本体部分31から切り離しているが、この頂部厚肉部44は十分な剛性を有し、従って、この頂部厚肉部44によって第1クリップ部42は本体部分31に堅固に連結されている。
【0024】
上記第1クリップ部42は、図8に明らかなように、上記頂部厚肉部44からそれぞれ円弧形に延びた一対の対称な係止片部45,45から構成されている。従って、第1クリップ部42は、全体として略C字形をなしており、その開口部46には、外開きのテーパ面を提供する先端テーパ部45aが設けられている。なお、この先端テーパ部45aのテーパ面と円形をなす第1クリップ部42内周面との間には、実質的な開口部となる略平行な直線部45bが存在する。
【0025】
上記第1クリップ部42は、上記コネクタ3の小径部11に密に嵌合するように該小径部11に対応して形成されており、その内周面は、上記中心軸線Mを中心とした円形をなし、自由状態における内径は、上記小径部11の外径よりもごく僅か小さく設定されている。従って、小径部11に嵌合した状態において、緩みなく小径部11外周面に圧接した状態が得られる。なお、上記係止片部45の外周面には、その剛性ならびに弾性を適宜なものとするために周方向に沿ったリブ47が設けられている。
【0026】
一方、本実施例では、コネクタキャップ1の本体部分31の長手方向の一部、詳しくは第1クリップ部42に隣接する部分が、コネクタ3の大径部12に対応した第2クリップ部51として構成されている。この第2クリップ部51の部分と本体部分31の残りの部分とは、図2に示すコネクタキャップ1内側のリブ36Aによって区分されており、上記の残りの部分が頂部33や壁部32の凹凸形状によって相対的に高い剛性を有しているのに対し、第2クリップ部51の部分は、相対的に剛性が低い。つまりU字形をなす一対の壁部32を図8ないし図9の左右方向に引張ないし圧縮したときに、第2クリップ部51となる部分が相対的に弾性変形し易いものとなっている。なお、必要であれば、第1クリップ部42と同様に、独立した係止片部となるように、第2クリップ部51を本体部分31の残りの部分からスリットを介して切り離して構成してもよい。
【0027】
上記第2クリップ部51は、一対の係止片部として、上記のように図9の左右方向に弾性変形可能な一対の壁部32と、各々の内壁面に突出形成された軸方向に延びた細長い突起部52とから構成されている。一対の壁部32の内周面は、実質的に互いに平行に延びており、その内側の互いに対応する位置に、対称となるように上記突起部52が設けられている。この突起部52は、図9に示すように、基本的に断面矩形をなすように突出しているが、U字形をなす第2クリップ部51の開口部に向かう側は、挿入方向に沿ったテーパ面52aをなしている。
【0028】
また、U字形をなす第2クリップ部51の頂部内周には、コネクタ3の大径部12の異形部23に対応した断面台形状の凹部53が形成されている。
【0029】
図11は、図9のように構成された第2クリップ部51内にコネクタ3の大径部12が嵌合した状態を示している。U字形をなす第2クリップ部51の壁部32の開口幅は、大径部12の円筒面の径と実質的に等しく、かつ突起部52の間の間隔は、大径部12の円筒面の径よりも小さい。そして、この突起部52を乗り越えて第2クリップ部51内に大径部12が嵌合した状態では、U字形をなす内壁面ならびに突起部52によって緩みなく大径部12が保持される。そして、このときに、大径部12の一方の異形部23が第2クリップ部51の凹部53に嵌合し、これによって、コネクタ3のコネクタキャップ1に対する回転姿勢が規定される。
【0030】
なお、上記第2クリップ部51のU字形湾曲部分には、上述したリテーナ21の爪部21a(図6参照)との干渉を回避するための開口部54が左右対称に設けられている(図9参照)。
【0031】
上記のように構成された第1クリップ部42および第2クリップ部51を有するコネクタキャップ1は、コネクタ3およびリテーナ21による両パイプ2,4の接続作業の完了後、例えば作業者が手指によりコネクタ3に押し込むことによって取り付けられるのであるが、本発明では、特に、コネクタ3に押し込んでいったときに、第2クリップ部51がまだ自由状態にある段階で第1クリップ部42の拡開変形が先行して生じるように、各々の位置関係、特に、第2クリップ部51となる突起部52の位置ならびに大きさ(突出高さ)が設定されている。これにより、コネクタキャップ1全体として挿入に必要な挿入力が小さなものとなる。
【0032】
図12は、これを模式的に示した説明図であって、横軸が挿入過程の経過(換言すれば挿入ストローク)を示しており、最上段の(a)は、その挿入過程の中で代表的な4つの段階を図示している。なお、この(a)の欄では、小径部11および大径部12を単純な円筒形で示すとともに、第2クリップ部51も第1クリップ部42と同様のC字形のものとして単純化して示してある。そして、(b)欄は、点線が第1クリップ部42単体での挿入力、一点鎖線が第2クリップ部51単体での挿入力を示し、(c)欄は、コネクタキャップ1全体としての挿入力を点線でもって示す。なお、(c)欄の実線は、参考例として、第1クリップ部42を2つ具備するものと仮定した場合の挿入力である。
【0033】
図示するように、上記実施例では、図12の図下方へコネクタキャップ1を押し込んでいったときに、まず第1クリップ部42の開口端が小径部11に接触し、左右に拡開変形し始める。必要な挿入力はこの瞬間に大きく増加するが、一旦第1クリップ部42が拡がり始めると、それ以降は、挿入力は徐々に低下する。そして、第1クリップ部42の両係止片部45の変位が最大拡開変形状態(第1クリップ部42の開口部46を小径部11の直径部が通過するときの状態)から収縮方向へ反転すると(開口部46における直線部45bを小径部11の直径部が通過し終わった瞬間)、第1クリップ部42が収縮しようとする弾性反力によって第1クリップ部42の挿入力は負となる。つまり、コネクタキャップ1は、小径部11に引き寄せられる。
【0034】
このようなタイミングにほぼ対応して、第2クリップ部51の突起部52(図12の模式図ではC字形に描いてある第2クリップ部51の開口端が突起部52に相当する)が大径部12に接触し、該第2クリップ部51が左右に拡開変形し始める。このとき、第2クリップ部51単体では(b)欄の一点鎖線のように必要な挿入力が増加するが、上述したように第1クリップ部42によって負の挿入力が生じているので、コネクタキャップ1全体として必要な挿入力は非常に小さくなり、各々の反力の設定によっては、(c)欄に示すように全体として負の挿入力ともなり得る。第2クリップ部51の突起部52の間を大径部12の直径部が通過し終われば、第2クリップ部51においても、その変位が収縮方向に反転し、第2クリップ部51単体として挿入力が負となるので、コネクタキャップ1全体として挿入力が負となり、第1クリップ部42および第2クリップ部51の双方が最終的な完全な嵌合位置まで速やかに挿入される。
【0035】
従って、(c)欄の参考例との比較から明らかなように、同一の2つのクリップ部を具備する場合に比べて作業時に必要な挿入力が軽減し、作業性が向上する。
【0036】
なお、図12の説明図では、第1クリップ部42の挿入力が負となるタイミングに対応して第2クリップ部51の変形が開始するが、両者は必ずしも完全に一致する必要はなく、少なくとも第2クリップ部51単体での挿入力が正である期間の一部が第1クリップ部42単体での挿入力が負となる期間と重複するように設定すれば、コネクタキャップ1全体として挿入力を低減する作用が得られる。そして、第2クリップ部51単体での挿入力が最も大となる第2クリップ部51の変形開始時点が、第1クリップ部42単体での挿入力が負となる期間に含まれることが望ましい。
【0037】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は、この実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば上記実施例では、第1クリップ部42と第2クリップ部51とを1つずつ備えているが、これらが複数個あってもよく、例えば第2クリップ部51の前後両側に第1クリップ部42を配置した構成なども可能である。また、上記実施例では、第1クリップ部42に対応する小径部11と第2クリップ部51に対応する大径部12とで径が異なっているが、両者が等しい径である場合にも本発明は適用可能である。また被嵌合部は必ずしも円筒面に限られず、多角形あるいは適宜な曲面などであってもよく、挿入力が負となる特性を考慮して適宜に設定することができる。また、コネクタに対するコネクタキャップの回転規制は上記のような異形部23の係合に限られず、他の部位での係合など種々の構造が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…コネクタキャップ
2…エンジン側燃料パイプ
3…コネクタ
4…車体側燃料パイプ
11…小径部
12…大径部
42…第1クリップ部
51…第2クリップ部
【技術分野】
【0001】
この発明は、2つのパイプを接続するコネクタに取り付けられてパイプとコネクタとの間の相対回転を防止するクリップ式コネクタキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用エンジンの燃料配管においては、エンジンと一体に組み付けられた下流側つまりエンジン側の配管パイプと、車体側に予め組み付けられた車体側の配管パイプとが、車両組立ラインにおいて、エンジンを車体に搭載した後に、コネクタを介して簡単に接続される構造となっている。そして、一方の配管パイプに予め取り付けられたコネクタと他方の配管パイプとの相対回転(これはシール部の摩耗や損傷の誘因となる)を防止するために、特許文献1,2等に開示されるようなクリップ式コネクタキャップをコネクタに取り付けて、コネクタと他方の配管パイプとを保持し、両者の相対回転を規制する構造が一般に採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−269088号公報
【特許文献2】特開2003−227581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2においては、合成樹脂等から成形されるコネクタキャップの長手方向の1箇所のみにC字形ないしU字形をなすクリップ部が設けられており、これをコネクタの円筒形部分に押し込んで嵌合させることで該コネクタキャップをコネクタに装着するようにしているが、このように1箇所のみで保持しているのでは、必ずしも十分な保持が得られにくい。一方、コネクタキャップの複数箇所にクリップ部を設けることとすると、当然のことながらコネクタキャップをコネクタに装着する際に必要な挿入力が増大し、作業者による組付作業性が悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、この発明では、クリップ部を複数設けるとともに、一つのクリップ部の弾性反力(クリップ部が閉じようとする力)を利用して、他のクリップ部の挿入を補助するようにした。
【0006】
すなわち、この発明は、端部にコネクタを備えた第1のパイプと第2のパイプとが上記コネクタを介して接続されたパイプ接続構造において、両者の相対回転を防止するように上記コネクタに側方から押し込んで取り付けられるクリップ式コネクタキャップであって、
このコネクタキャップは、第1クリップ部と第2クリップ部とを少なくとも含む複数個のクリップ部が軸方向に並んで設けられており、これらクリップ部は、各々、上記コネクタの各々の被嵌合部に両側から弾性的に嵌合する一対の係止片部を有し、
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第2クリップ部が自由状態にあるまま上記第1クリップ部の拡開変形が先行して生じるように各々の係止片部の位置が設定されていることを特徴とする。
【0007】
上記構成では、取付作業時に、第1クリップ部が第2クリップ部よりも先に拡開変形し、これよりも遅れて第2クリップ部が拡開変形し始める。作業者の手指等に作用する挿入方向の反力は、静止しているクリップ部が拡開変形し始める瞬間が一般に最も大となるので、第1クリップ部が拡開変形し始めるタイミングと第2クリップ部が拡開変形し始めるタイミングとが僅かに異なることで、コネクタキャップ全体としての必要な最大挿入力が抑制される。
【0008】
そして、第1クリップ部の挿入行程の後半では、係止片部が互いに閉じようとする力によって第1クリップ部がコネクタキャップの被嵌合部に引き寄せられる形となり、つまり、コネクタキャップをその挿入方向に沿って引っ張る力が生じる。換言すれば、第1クリップ部よりも遅れて第2クリップ部が挿入されていく過程で、第1クリップ部により負の挿入力が生じ、コネクタキャップ全体としての挿入力が軽減する。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、コネクタキャップが複数のクリップ部を備えることで、コネクタに堅固に保持され、その脱落や緩みがより確実に防止される一方、組付作業時に必要な挿入力の増加が少なく、作業性の悪化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明に係るコネクタキャップの使用態様を示す説明図。
【図2】このコネクタキャップをコネクタとともに示す縦断面図。
【図3】コネクタキャップが適用されるコネクタの正面図。
【図4】このコネクタの平面図。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図。
【図6】同じくコネクタ単体での側面図。
【図7】コネクタキャップ単体での正面図。
【図8】同じく側面図。
【図9】図7のB−B線に沿った断面図。
【図10】コネクタキャップ単体での底面図。
【図11】第2クリップ部にコネクタが嵌合した状態を示す図9と同様の断面図。
【図12】第1,第2クリップ部を備えたコネクタキャップの挿入力の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1は、この発明に係るクリップ式コネクタキャップ1の一実施例を示すものであって、この実施例では、自動車用エンジンに予め一体に組み付けられてなるエンジン側燃料パイプ2が先端にコネクタ3を備えており、このコネクタ3に車体側燃料パイプ4が事後的に接続されているとともに、その接続部分を覆うようにコネクタ3にコネクタキャップ1が取り付けられている。
【0013】
なお、以下では、この自動車用エンジンの燃料配管用の実施例に則して本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、同様の配管接続部であればいかなる用途であっても本発明を適用することができる。
【0014】
図2は、上記コネクタキャップ1を断面として示し、エンジン側燃料パイプ2、コネクタ3および車体側燃料パイプ4との全体的な位置関係を示したものである。エンジン側燃料パイプ2は、ゴム等で被覆された金属管からなり、相対的に下方へ向かって延びており、その先端に、略L字形に90°折れ曲がった形にコネクタ3が取り付けられている。車体側燃料パイプ4は、同様にゴム等で被覆された金属管からなり、逆に車体側から上方へ向かって延びており、後述するように、その先端がコネクタ3に軸方向に挿入されて該コネクタ3に接続されている。そして、この車体側燃料パイプ4は、略L字形に90°曲がっており、この車体側燃料パイプ4のL字形折曲部4aに沿うようにコネクタキャップ1は全体として略L字形をなしている。上記コネクタ3においては、該コネクタ3自体と上記車体側燃料パイプ4の先端部(コネクタ3との接続部)との間では、中心軸線Mを中心とする相対回転が規制されておらず、相対回転が許容される。しかし、コネクタキャップ1を取り付けた状態では、上記コネクタ3はコネクタキャップ1に対し後述する異形部23によって回転不能な状態で嵌合し、他方、上記車体側燃料パイプ4は、上記L字形折曲部4aの外側に沿ってコネクタキャップ1が位置することからコネクタキャップ1に対する姿勢が規制されるので、結果的に、上記中心軸線Mを中心とした両パイプ2,4の相対回転が阻止される。従って、図1ないし図2において図の右方(あるいは左方)から見た場合、エンジン側燃料パイプ2下端部と車体側燃料パイプ4上端部とが一直線上に整列する。
【0015】
図3〜図6は、上記コネクタ3の詳細を車体側燃料パイプ4とともに示している。なお、図6は、車体側燃料パイプ4が取り付けられていないコネクタ3単体の図である。
【0016】
このコネクタ3は、例えばガラス繊維強化ポリアミドのような高強度の硬質合成樹脂から成形されたものであって、第1の被嵌合部ともなる小径部11と、第2の被嵌合部ともなる大径部12と、が同軸上にかつ軸方向に連続して形成されており、上記小径部11の端部に、さらに、パイプ接続管13が連続して一体成形されている。このパイプ接続管13は、小径部11および大径部12の中心軸線Mに対し90°折れ曲がっており、ここに上述したエンジン側燃料パイプ2の先端が挿入される。
【0017】
上記小径部11は、図5に示すように、内部で車体側燃料パイプ4の先端を受けるように構成されており、車体側燃料パイプ4との間をシールするために、一対のOリング15,15がスペーサ16とともに挿入配置されている。また図5に示すように、このコネクタ3に挿入される車体側燃料パイプ4の先端部には、予め一対の環状リブ17,18が形成されている。
【0018】
上記大径部12は、側面に矩形の開口部20を有するスケルトン状をなしており、この開口部20に、上記車体側燃料パイプ4の抜け止め保持を行うリテーナ21が配置されている。このリテーナ21は、コネクタ3自体と同様の硬質合成樹脂からなり、中心軸線Mに対し直交する方向に引き出し可能に構成されている。図4は、このリテーナ21を外側へ引き出した状態(車体側燃料パイプ4がロックされていない状態)を示しているが、図5および図6に示すように大径部12に組み合わされた状態では、該リテーナ21が環状リブ17,18の間に係合し、車体側燃料パイプ4を抜け止めする。
【0019】
上記リテーナ21は、図6に示す爪部21aによって大径部12からの脱落(中心軸線Mと直交する方向への抜け)が阻止されるが、上記コネクタキャップ1は、この大径部12を外側から覆うことによって、このリテーナ21の脱落を二重に阻止している。
【0020】
ここで、上記小径部11は、その外周面が上記中心軸線Mを中心とした完全な円筒面をなしている。これに対し、上記大径部12の外周面は、図6に示すように、上記中心軸線Mを中心とした円筒面を基本形状としつつ、上下の2箇所に、断面台形状に外周側に膨出した異形部23を備えている。この異形部23は、コネクタキャップ1に対するコネクタ3の回転姿勢を規定するものであり、図6に示すように、上記パイプ接続管13が延びている方向ならびにこれと180°反対側となる2箇所に対称に設けられている。
【0021】
図7〜図10は、上記コネクタ3に取り付けられるコネクタキャップ1を単体で示している。このコネクタキャップ1は、その全体が、適度な弾性ならびに剛性を有するポリアミド等の合成樹脂材料にて一体成形されたものであって、上記中心軸線Mに沿って延びた主要部をなす本体部分31は、一対の壁部32を頂部33で連結した断面略U字形(図9参照)の基本形状を有し、車体側燃料パイプ4とコネクタ3とを接続した後に、コネクタ3に対し、上記中心軸線Mに直交する方向に沿って押し込んで取り付けるようになっている。上記本体部分31の一端部には、車体側燃料パイプ4のL字形折曲部4aに対応して延長部35が略L字形をなすように延びており、その先端部に、車体側燃料パイプ4が比較的緩く圧入可能なパイプ保持部34が設けられている。このパイプ保持部34は、図10に明らかなように、本体部分31と同様に、L字形折曲部4aの内周側(図7もしくは図10において図左側)が開放された断面U字形をなしているが、本体部分31とこのパイプ保持部34とを接続する延長部35の中間部分は、図2から明らかなように、L字形折曲部4aの外周側(図7もしくは図2において図右側)も開放されており、つまり互いに分離した一対の壁部のみから構成されている。
【0022】
なお、上記コネクタキャップ1の外表面や内表面には、適度な弾性を残しつつU字形に開放した基本的形状の必要な剛性を確保するために、周縁ならびに中心軸線Mと直交する方向に沿った数本のリブ36が適宜に設けられている。
【0023】
また、上記本体部分31の延長部35とは反対側の端部には、スリット41によって切り離された形に第1クリップ部42が形成されている。上記スリット41は本体部分31の頂部33に連続した頂部厚肉部44のみを残して第1クリップ部42を本体部分31から切り離しているが、この頂部厚肉部44は十分な剛性を有し、従って、この頂部厚肉部44によって第1クリップ部42は本体部分31に堅固に連結されている。
【0024】
上記第1クリップ部42は、図8に明らかなように、上記頂部厚肉部44からそれぞれ円弧形に延びた一対の対称な係止片部45,45から構成されている。従って、第1クリップ部42は、全体として略C字形をなしており、その開口部46には、外開きのテーパ面を提供する先端テーパ部45aが設けられている。なお、この先端テーパ部45aのテーパ面と円形をなす第1クリップ部42内周面との間には、実質的な開口部となる略平行な直線部45bが存在する。
【0025】
上記第1クリップ部42は、上記コネクタ3の小径部11に密に嵌合するように該小径部11に対応して形成されており、その内周面は、上記中心軸線Mを中心とした円形をなし、自由状態における内径は、上記小径部11の外径よりもごく僅か小さく設定されている。従って、小径部11に嵌合した状態において、緩みなく小径部11外周面に圧接した状態が得られる。なお、上記係止片部45の外周面には、その剛性ならびに弾性を適宜なものとするために周方向に沿ったリブ47が設けられている。
【0026】
一方、本実施例では、コネクタキャップ1の本体部分31の長手方向の一部、詳しくは第1クリップ部42に隣接する部分が、コネクタ3の大径部12に対応した第2クリップ部51として構成されている。この第2クリップ部51の部分と本体部分31の残りの部分とは、図2に示すコネクタキャップ1内側のリブ36Aによって区分されており、上記の残りの部分が頂部33や壁部32の凹凸形状によって相対的に高い剛性を有しているのに対し、第2クリップ部51の部分は、相対的に剛性が低い。つまりU字形をなす一対の壁部32を図8ないし図9の左右方向に引張ないし圧縮したときに、第2クリップ部51となる部分が相対的に弾性変形し易いものとなっている。なお、必要であれば、第1クリップ部42と同様に、独立した係止片部となるように、第2クリップ部51を本体部分31の残りの部分からスリットを介して切り離して構成してもよい。
【0027】
上記第2クリップ部51は、一対の係止片部として、上記のように図9の左右方向に弾性変形可能な一対の壁部32と、各々の内壁面に突出形成された軸方向に延びた細長い突起部52とから構成されている。一対の壁部32の内周面は、実質的に互いに平行に延びており、その内側の互いに対応する位置に、対称となるように上記突起部52が設けられている。この突起部52は、図9に示すように、基本的に断面矩形をなすように突出しているが、U字形をなす第2クリップ部51の開口部に向かう側は、挿入方向に沿ったテーパ面52aをなしている。
【0028】
また、U字形をなす第2クリップ部51の頂部内周には、コネクタ3の大径部12の異形部23に対応した断面台形状の凹部53が形成されている。
【0029】
図11は、図9のように構成された第2クリップ部51内にコネクタ3の大径部12が嵌合した状態を示している。U字形をなす第2クリップ部51の壁部32の開口幅は、大径部12の円筒面の径と実質的に等しく、かつ突起部52の間の間隔は、大径部12の円筒面の径よりも小さい。そして、この突起部52を乗り越えて第2クリップ部51内に大径部12が嵌合した状態では、U字形をなす内壁面ならびに突起部52によって緩みなく大径部12が保持される。そして、このときに、大径部12の一方の異形部23が第2クリップ部51の凹部53に嵌合し、これによって、コネクタ3のコネクタキャップ1に対する回転姿勢が規定される。
【0030】
なお、上記第2クリップ部51のU字形湾曲部分には、上述したリテーナ21の爪部21a(図6参照)との干渉を回避するための開口部54が左右対称に設けられている(図9参照)。
【0031】
上記のように構成された第1クリップ部42および第2クリップ部51を有するコネクタキャップ1は、コネクタ3およびリテーナ21による両パイプ2,4の接続作業の完了後、例えば作業者が手指によりコネクタ3に押し込むことによって取り付けられるのであるが、本発明では、特に、コネクタ3に押し込んでいったときに、第2クリップ部51がまだ自由状態にある段階で第1クリップ部42の拡開変形が先行して生じるように、各々の位置関係、特に、第2クリップ部51となる突起部52の位置ならびに大きさ(突出高さ)が設定されている。これにより、コネクタキャップ1全体として挿入に必要な挿入力が小さなものとなる。
【0032】
図12は、これを模式的に示した説明図であって、横軸が挿入過程の経過(換言すれば挿入ストローク)を示しており、最上段の(a)は、その挿入過程の中で代表的な4つの段階を図示している。なお、この(a)の欄では、小径部11および大径部12を単純な円筒形で示すとともに、第2クリップ部51も第1クリップ部42と同様のC字形のものとして単純化して示してある。そして、(b)欄は、点線が第1クリップ部42単体での挿入力、一点鎖線が第2クリップ部51単体での挿入力を示し、(c)欄は、コネクタキャップ1全体としての挿入力を点線でもって示す。なお、(c)欄の実線は、参考例として、第1クリップ部42を2つ具備するものと仮定した場合の挿入力である。
【0033】
図示するように、上記実施例では、図12の図下方へコネクタキャップ1を押し込んでいったときに、まず第1クリップ部42の開口端が小径部11に接触し、左右に拡開変形し始める。必要な挿入力はこの瞬間に大きく増加するが、一旦第1クリップ部42が拡がり始めると、それ以降は、挿入力は徐々に低下する。そして、第1クリップ部42の両係止片部45の変位が最大拡開変形状態(第1クリップ部42の開口部46を小径部11の直径部が通過するときの状態)から収縮方向へ反転すると(開口部46における直線部45bを小径部11の直径部が通過し終わった瞬間)、第1クリップ部42が収縮しようとする弾性反力によって第1クリップ部42の挿入力は負となる。つまり、コネクタキャップ1は、小径部11に引き寄せられる。
【0034】
このようなタイミングにほぼ対応して、第2クリップ部51の突起部52(図12の模式図ではC字形に描いてある第2クリップ部51の開口端が突起部52に相当する)が大径部12に接触し、該第2クリップ部51が左右に拡開変形し始める。このとき、第2クリップ部51単体では(b)欄の一点鎖線のように必要な挿入力が増加するが、上述したように第1クリップ部42によって負の挿入力が生じているので、コネクタキャップ1全体として必要な挿入力は非常に小さくなり、各々の反力の設定によっては、(c)欄に示すように全体として負の挿入力ともなり得る。第2クリップ部51の突起部52の間を大径部12の直径部が通過し終われば、第2クリップ部51においても、その変位が収縮方向に反転し、第2クリップ部51単体として挿入力が負となるので、コネクタキャップ1全体として挿入力が負となり、第1クリップ部42および第2クリップ部51の双方が最終的な完全な嵌合位置まで速やかに挿入される。
【0035】
従って、(c)欄の参考例との比較から明らかなように、同一の2つのクリップ部を具備する場合に比べて作業時に必要な挿入力が軽減し、作業性が向上する。
【0036】
なお、図12の説明図では、第1クリップ部42の挿入力が負となるタイミングに対応して第2クリップ部51の変形が開始するが、両者は必ずしも完全に一致する必要はなく、少なくとも第2クリップ部51単体での挿入力が正である期間の一部が第1クリップ部42単体での挿入力が負となる期間と重複するように設定すれば、コネクタキャップ1全体として挿入力を低減する作用が得られる。そして、第2クリップ部51単体での挿入力が最も大となる第2クリップ部51の変形開始時点が、第1クリップ部42単体での挿入力が負となる期間に含まれることが望ましい。
【0037】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は、この実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば上記実施例では、第1クリップ部42と第2クリップ部51とを1つずつ備えているが、これらが複数個あってもよく、例えば第2クリップ部51の前後両側に第1クリップ部42を配置した構成なども可能である。また、上記実施例では、第1クリップ部42に対応する小径部11と第2クリップ部51に対応する大径部12とで径が異なっているが、両者が等しい径である場合にも本発明は適用可能である。また被嵌合部は必ずしも円筒面に限られず、多角形あるいは適宜な曲面などであってもよく、挿入力が負となる特性を考慮して適宜に設定することができる。また、コネクタに対するコネクタキャップの回転規制は上記のような異形部23の係合に限られず、他の部位での係合など種々の構造が可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…コネクタキャップ
2…エンジン側燃料パイプ
3…コネクタ
4…車体側燃料パイプ
11…小径部
12…大径部
42…第1クリップ部
51…第2クリップ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部にコネクタを備えた第1のパイプと第2のパイプとが上記コネクタを介して接続されたパイプ接続構造において、両者の相対回転を防止するように上記コネクタに側方から押し込んで取り付けられるクリップ式コネクタキャップであって、
このコネクタキャップは、第1クリップ部と第2クリップ部とを少なくとも含む複数個のクリップ部が軸方向に並んで設けられており、これらクリップ部は、各々、上記コネクタの各々の被嵌合部に両側から弾性的に嵌合する一対の係止片部を有し、
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第2クリップ部が自由状態にあるまま上記第1クリップ部の拡開変形が先行して生じるように各々の係止片部の位置が設定されていることを特徴とするクリップ式コネクタキャップ。
【請求項2】
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第1クリップ部の両係止片部が最大拡開変形状態から収縮方向へ転じた段階で上記第2クリップ部の係止片部の拡開変形が開始することを特徴とする請求項1に記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項3】
上記第1クリップ部に対応する第1の被嵌合部が円筒面をなし、上記第1クリップ部の各係止片部は、この円筒面に嵌合する円弧形をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項4】
上記第2クリップ部の係止片部は、コネクタキャップの本体部分の一部を構成する略U字形の壁部と、該壁部の内側に突出形成された突起部と、から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項5】
上記第2のパイプのL字形折曲部を保持する延長部を備えるとともに、上記第2クリップ部が、該第2クリップ部に対応する第2の被嵌合部の異形部に回転不能に嵌合し、これによって第1,第2のパイプの相対回転を阻止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項1】
端部にコネクタを備えた第1のパイプと第2のパイプとが上記コネクタを介して接続されたパイプ接続構造において、両者の相対回転を防止するように上記コネクタに側方から押し込んで取り付けられるクリップ式コネクタキャップであって、
このコネクタキャップは、第1クリップ部と第2クリップ部とを少なくとも含む複数個のクリップ部が軸方向に並んで設けられており、これらクリップ部は、各々、上記コネクタの各々の被嵌合部に両側から弾性的に嵌合する一対の係止片部を有し、
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第2クリップ部が自由状態にあるまま上記第1クリップ部の拡開変形が先行して生じるように各々の係止片部の位置が設定されていることを特徴とするクリップ式コネクタキャップ。
【請求項2】
上記コネクタに側方から押し込んだときに、上記第1クリップ部の両係止片部が最大拡開変形状態から収縮方向へ転じた段階で上記第2クリップ部の係止片部の拡開変形が開始することを特徴とする請求項1に記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項3】
上記第1クリップ部に対応する第1の被嵌合部が円筒面をなし、上記第1クリップ部の各係止片部は、この円筒面に嵌合する円弧形をなすことを特徴とする請求項1または2に記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項4】
上記第2クリップ部の係止片部は、コネクタキャップの本体部分の一部を構成する略U字形の壁部と、該壁部の内側に突出形成された突起部と、から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクリップ式コネクタキャップ。
【請求項5】
上記第2のパイプのL字形折曲部を保持する延長部を備えるとともに、上記第2クリップ部が、該第2クリップ部に対応する第2の被嵌合部の異形部に回転不能に嵌合し、これによって第1,第2のパイプの相対回転を阻止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のクリップ式コネクタキャップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−158022(P2011−158022A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19716(P2010−19716)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(390039929)三桜工業株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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