説明

クリップ用鉗子

【課題】クリップ用鉗子による脳の損傷を防止する。
【解決手段】枢軸6を支点にして交差するレバー部材1a,1bがクリップ4を挟み持つクリップ把持部とクリップ把持部を開閉操作する取っ手部とされ、一対の保持片10aが回動可能に取り付けられ、取っ手部の操作により保持片を回動させる首振り操作手段が設けられる。首振り操作手段は、取っ手部に取り付けられたトリガーと、一対の首振り用レバー18aと、該レバーの後端に前端が連結され、クリップ把持部の股内に対し出入り可能な一対の昇降レバー26aと、昇降レバーの後端に前端が連結された開閉用レバー19aと、開閉用レバーの後端をトリガーに連結する連接棒17とを有する。トリガーを引くと連接棒及び開閉用レバーが前後方向にスライド運動をし、昇降レバーがクリップ把持部の股回りで揺動運動し、首振り用レバー及び保持片が支点ピンを支点にして回動運動し、クリップが首振り動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のクリップを操作して脳動脈瘤等を挟むためのクリップ用鉗子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脳動脈瘤に対する処置は、頭に穴を空け、種々の処置具により脳動脈瘤までたどり着いた後、クリップ用鉗子で脳動脈瘤用クリップを把持して患部にアプローチし、クリップを解放して脳動脈瘤を挟み込むことにより行われる。
【0003】
ところが、従来の通常のクリップ用鉗子はクリップを静止状態で保持するようになっているので、複雑に入り組んだ脳内患部ヘアプローチするには脳動脈瘤の位置、姿勢等に応じて鉗子の先端で保持したクリップを術者が指で向きを変え、或いはクリップを他の種類のものと交換し、その都度鉗子を脳内に入れたり出したりしなければならない。その為、患部へのクリップの装着作業が煩雑となり、またクリップと鉗子をそれぞれ多種類用意しなければならないなどの問題がある。
【0004】
このような問題を解決することができるクリップ用鉗子として、クリップを把持したまま手元操作によりクリップを首振り動作させることにより脳内患部ヘ容易にアプローチすることができるものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
しかし、この特許文献1に記載されるクリップ用鉗子は、クリップを把持し難いという問題があり、また、クリップに首振り動作させるのが面倒であるという問題がある。
【0006】
この問題点を解決することができるクリップ用鉗子として、クリップの柄部が嵌り込む溝がそれぞれ形成された一対の保持片がクリップ把持部に支点ピンを介し回動可能に取り付けられたものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−177053号公報
【特許文献2】特開2006−304968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載されるクリップ用鉗子は、取っ手部を持つ手の操作により一対の保持片を一体で回動させクリップを首振り動作させる首振り操作手段が設けられたことから、クリップを保持片の溝に食い込ませてしっかり把持することができるのであるが、首振り操作手段を構成するリンク装置のリンクが広範囲にわたって移動し、そのため頭蓋内でクリップを回動させる際にリンクが脳に接触する可能性がある。
【0009】
したがって、本発明は上記不具合を解消することができるクリップ用鉗子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、枢軸(6)を支点にして交差する一対のレバー部材(1a,1b)の前後が各々クリップ(4)を挟み持つクリップ把持部とクリップ把持部を開閉操作する取っ手部とされ、クリップ(4)の柄部(4a)が嵌り込む溝(11)がそれぞれ形成された一対の保持片(10a,10b)が上記クリップ把持部に支点ピン(12)を介し回動可能に取り付けられ、上記取っ手部を持つ手の操作により上記一対の保持片(10a,10b)を一体で回動させてクリップ(4)を首振り動作させる首振り操作手段が設けられたクリップ用鉗子において、上記首振り操作手段が、上記取っ手部に取り付けられたトリガー(13)と、上記一対の保持片(10a,10b)の各々に前端が固着された一対の首振り用レバー(18a,18b)と、この首振り用レバー(18a,18b)の後端に前端がそれぞれ連結され、上記クリップ把持部の股内に対し出入り可能な一対の昇降レバー(26a,26b)と、この昇降レバー(26a,26b)の後端に前端がそれぞれ連結された一対の開閉用レバー(19a,19b)と、一対の開閉用レバー(19a,19b)の後端を上記トリガー(13)に連結する連接棒(17)とを含んでおり、上記トリガー(13)を引くと上記連接棒(17)及び上記一対の開閉用レバー(19a,19b)が上記レバー部材(1a,1b)の前後方向にスライド運動をし、このスライド運動が上記一対の昇降レバー(26a,26b)の上記クリップ把持部の股回りでの揺動運動に変換され、この揺動運動が上記一対の首振り用レバー(18a,18b)及び上記一対の保持片(10a,10b)の上記支点ピン(12)を支点にした回動運動に変換され、この回動運動によって上記クリップ(4)に首振り動作をさせるようにしたクリップ用鉗子を採用する。
【0011】
また、請求項2に記載されるように、請求項1に記載のクリップ用鉗子において、上記連接棒(17)がガイド体(28)によって上記一対のレバー部材(1a,1b)の一方にスライド運動可能に拘束され、上記一対の昇降レバー(26a,26b)が、上記クリップ把持部の股に沿って湾曲した状態で上記連接棒(17)と上記首振り用レバー(18a,18b)とに連結されたものとすることができる。
【0012】
また、請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載のクリップ用鉗子において、上記クリップ把持部に、上記一対の首振り用レバー(18a,18b)を所定位置で停止させるストッパ(27)が設けられたものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、枢軸(6)を支点にして交差する一対のレバー部材(1a,1b)の前後が各々クリップ(4)を挟み持つクリップ把持部とクリップ把持部を開閉操作する取っ手部とされ、クリップ(4)の柄部(4a)が嵌り込む溝(11)がそれぞれ形成された一対の保持片(10a,10b)が上記クリップ把持部に支点ピン(12)を介し回動可能に取り付けられ、上記取っ手部を持つ手の操作により上記一対の保持片(10a,10b)を一体で回動させてクリップ(4)を首振り動作させる首振り操作手段が設けられたクリップ用鉗子において、上記首振り操作手段が、上記取っ手部に取り付けられたトリガー(13)と、上記一対の保持片(10a,10b)の各々に前端が固着された一対の首振り用レバー(18a,18b)と、この首振り用レバー(18a,18b)の後端に前端がそれぞれ連結され、上記クリップ把持部の股内に対し出入り可能な一対の昇降レバー(26a,26b)と、この昇降レバー(26a,26b)の後端に前端がそれぞれ連結された一対の開閉用レバー(19a,19b)と、一対の開閉用レバー(19a,19b)の後端を上記トリガー(13)に連結する連接棒(17)とを含んでおり、上記トリガー(13)を引くと上記連接棒(17)及び上記一対の開閉用レバー(19a,19b)が上記レバー部材(1a,1b)の前後方向にスライド運動をし、このスライド運動が上記一対の昇降レバー(26a,26b)の上記クリップ把持部の股回りでの揺動運動に変換され、この揺動運動が上記一対の首振り用レバー(18a,18b)及び上記一対の保持片(10a,10b)の上記支点ピン(12)を支点にした回動運動に変換され、この回動運動によって上記クリップ(4)に首振り動作をさせるようにしたことから、クリップ(4)を保持片(10a,10b)の溝(11)に食い込ませることによりしっかり把持することができるのはもちろんのこと、昇降レバー(26a,26b)がレバー部材(1a,1b)の枢軸(6)よりも先のクリップ把持部における股内で揺動することによって、連接棒(17)のスライド運動を首振り用レバー(18a,18b)の回動運動に変換するので、首振り用レバー(18a,18b)がレバー部材(1a,1b)のクリップ把持部の股外へと大きく突出するのを防止することができる。したがって、鉗子(1)を脳内に出し入れする際に、脳を傷付けるおそれが顕著に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るクリップ用鉗子を示す平面図であり、(A)は解放状態、(B)は押圧状態をそれぞれ示す。
【図2】クリップ用鉗子の正面図である。
【図3】クリップ用鉗子のクリップ把持部の拡大平面図であり、(A)はクリップ押圧前を示し、(B)はクリップ押圧後を示す。
【図4】クリップ用鉗子の部分切欠縦断面図であり、(A)は首振り前を示し、(B)は首振り後を示す。
【図5】クリップ用鉗子のクリップ把持部の拡大縦断面図である。
【図6】クリップ用鉗子のクリップ把持部のクリップ解放状態を示す斜視図であり、(A)は首振り前を示し、(B)は首振り後を示す。
【図7】クリップ用鉗子のクリップ把持部のクリップ押圧状態を示す斜視図であり、(A)は首振り前を示し、(B)は首振り後を示す。
【図8】(A)はクリップ用鉗子によりクリップを頭部内に挿入する説明図、(B)は脳動脈瘤にクリップを装着した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
図8(A)に示すように、このクリップ用鉗子1は頭部2に開けた穴3から頭蓋内に挿入してクリップ4を脳動脈瘤5等の患部へと搬送するための器具である。
【0017】
クリップ4は、図3(A)(B)、図5および図8(A)(B)に例示するように、柄部4aと挟み部4bとを有し、柄部4aにはバネ4cが一体的に形成される。
【0018】
図3(A)に示すようにクリップ4は解放状態ではバネ4cの付勢力によって挟み部4bを閉じているが、同図(B)に示すように柄部4aが押圧されると挟み部4bが開くようになっている。
【0019】
この実施の形態で使用されるクリップ4は脳動脈瘤5を挟むための小型軽量クリップであり、生体親和性の高い例えばチタン合金、コバルト基合金等の材料で作られる。
【0020】
クリップは図示例のもの以外に各種用意されるが、いずれのクリップにもこのクリップ用鉗子1で把持することが出来る柄部4aが設けられる。
【0021】
図1(A)(B)及び図2に示すように、クリップ用鉗子1は、二本のレバー部材1a,1bを中間で鋏様に交差させ、交差部において縦向きの枢軸6により回動自在に連結した構成とされる。そして、連結された二本のレバー部材1a,1bにおける枢軸6を境に前側がクリップ4を挟み持つクリップ把持部とされ、後側がクリップ把持部を開閉操作する取っ手部とされる。
【0022】
クリップ把持部におけるレバー部材1a,1bの対向部間は、クリップ4の柄部4aを挿入することができる程度の角度で拡開可能である。
【0023】
取っ手部におけるレバー部材1a,1bには、湾曲する板バネ8a,8bがそれぞれ固定される。両板バネ8a,8bはレバー部材1a,1bの後方に伸び、後端同士が連結される。両板バネ8a,8bのバネ作用により、両レバー部材1a,1bは拡開方向に常時付勢され、そのため図1(A)に示すように、取っ手部に力を加えない状態ではクリップ把持部が開状態を保つ。そして、取っ手部に握力を加えると、図1(B)に示すように、クリップ把持部が閉じる。その際、図3(A)に示すように、クリップ把持部内にクリップ4の柄部4aを差し込んでおくと、同図(B)に示すように、クリップ把持部がクリップ4の柄部4aを押圧するのでクリップ4の挟み部4bが拡開する。
【0024】
取っ手部におけるレバー部材1a,1bの内側には、図1(A)に示すように、係止具が設けられる。係止具は各レバー部材1a,1b側から突出するフック状の係止片9a,9bを備える。取っ手部に握力を加えて図1(B)に示すようにクリップ把持部を閉状態にする際に係止片9a,9b同士を係合させると、クリップ把持部が閉状態を保持する。従って、図3(A)のごとくクリップ把持部にクリップ4の柄部4aを挿入したうえで取っ手部を握り図1(B)のごとく係止具の係止片9a,9b同士を係合させると、取っ手部から握力を解除しても係止具の係合力によりクリップ4は、図3(B)のごとく、その挟み部4bを開いたまま鉗子1に保持される。
【0025】
図3(A)(B)、図4(A)(B)、図5、図6(A)(B)及び図7(A)(B)に示すように、このクリップ用鉗子1のクリップ把持部には、クリップ4をしっかりと把持するためにクリップ4の柄部4aが嵌り込む溝11が設けられる。具体的には、一対の保持片10a,10bがクリップ把持部に支点ピン12を介し回動可能に取り付けられ、クリップ4の柄部4aが嵌り込む溝11が一対の保持片10a,10bにそれぞれ形成される。支点ピン12はクリップ把持部の開閉方向に向かって伸びる。
【0026】
このクリップ用鉗子1には、取っ手部を持つ手の操作により一対の保持片10a,10bを一体で回動させることでクリップ把持部に対してクリップ4を首振り動作させる首振り操作手段が設けられる。
【0027】
図1乃至図5に示すように、この首振り操作手段は、上記支点ピン12と、取っ手部に取り付けられた操作部と、操作部の動きを保持片10a,10bに支点ピン12を中心とした回転動作として伝達し保持片10a,10bを介してクリップ4をクリップ把持部上で上下方向に回動させる伝動装置とを備える。
【0028】
操作部は、図2、図4(A)(B)及び図5に示すように、トリガー13として形成され、取っ手部である二本のレバー部材1a,1bのうち、一方のレバー部材1bの内側面に後述する筒体22とブラケット14とを介して取り付けられる。ブラケット14は筒体22に溶接等により固着され、筒体22はレバー部材1bに他のブラケット15で固定される。トリガー13は、クリップ用鉗子1の前後方向に回動可能に、支持ピン16を介してブラケット14に支持される。トリガー13の上端は、後述する伝動装置の連接棒17にピン等により結合される。
【0029】
伝動装置は、図1(A)(B)乃至図7(A)(B)に示すように、一対の保持片10a,10bの各々に前端が固着された一対の首振り用レバー18a,18bと、首振り用レバー18a,18bの後端に前端がそれぞれピン結合された一対の昇降レバー26a,26bと、昇降レバー26a,26bの後端に前端がそれぞれピン結合された一対の開閉用レバー19a,19bと、一対の開閉用レバー19a,19bの双方の後端に前端がピン結合され、後端がトリガー13に連結される連接棒17とを含んでいる。
【0030】
一対の首振り用レバー18a,18bは、図3(A)(B)乃至図7(A)(B)に示すように、それらの前端に上記保持片10a,10bを一体的に有し、これら保持片10a,10bが上記レバー部材1a,1bの先端部における内側に上記支点ピン12を介して連結される。これにより、一対の首振り用レバー18a,18bは支点ピン12を支点にしてクリップ把持部の股内でクリップ用鉗子1の上下方向に回動可能である。
【0031】
一対の保持片10a,10bの対向面上には、図3(A)(B)乃至図7(A)(B)に示すように、溝11が同じ向きに伸びるように形成される。この溝11にクリップ4の柄部4aが嵌り込むことにより、一対の保持片10a,10b間でクリップ4がしっかりと把持される。
【0032】
また、上記レバー部材1a,1bの先端部には、首振り用レバー18a,18bの回動範囲を規制する突起からなるストッパ27が設けられる。このストッパ27により、図5中首振り用レバー18a,18bがクリップ把持部の内側からレバー部材1a,1bの下方へと回動可能になり、これに伴いクリップ4はレバー部材1a,1bの伸び方向に平行な位置から上方向へと回動可能になる。
【0033】
一対の昇降レバー26a,26bは、図3(A)(B)乃至図7(A)(B)に示すように、首振り用レバー18a,18bの後端に前端がそれぞれ連結ピン20で結合される。昇降レバー26a,26bは湾曲したリンクである。連結ピン20はクリップ用鉗子1の略左右方向すなわちクリップ把持部の開閉方向に伸びることから、図5乃至図7(A)(B)に示すように、昇降レバー26a,26bはクリップ把持部の股の内側における首振り用レバー18a,18bの後端からレバー部材1bの上面へ円弧を描くように伸びる。
【0034】
一対の開閉用レバー19a,19bは、図3(A)(B)乃至図7(A)(B)に示すように、それらの前端が昇降レバー26a,26bの後端にそれぞれ連結ピン24を介して連結される。連結ピン24はクリップ用鉗子1の略左右方向すなわちクリップ把持部の開閉方向に伸びる。また、一対の開閉用レバー19a,19bの後端は、クリップ用鉗子1の上下方向に伸びる軸ピン21で連接棒17の前端に連結される。これにより、図3(A)(B)及び図6(A)(B)に示すように、レバー部材1a,1bの開閉動作に伴い、開閉用レバー19a,19bは首振り用レバー18a,18bと共に開閉動作可能となる。
【0035】
連接棒17は、図1及び図2に示すように、レバー部材1bに沿うようにクリップ用鉗子1の前後方向に伸び、その前端が図3(A)(B)、図4(A)(B)、図6(A)(B)及び図7(A)(B)に示すように上記軸ピン21を介して一対の開閉用レバー19a,19bの後端に連結される。また、図3(A)(B)、図4(A)(B)、図6(A)(B)及び図7(A)(B)に示すように、連接棒17の中途は、開閉用レバー19bに固定されたリング状のガイド体28によって保持される。これにより、連接棒17はレバー部材1b上でこのクリップ用鉗子の前後方向に往復スライド運動が可能である。連接棒17の後部はトリガー13へと伸び、トリガー13の上端に支持ピン16と平行なピン29によって結合される。これにより、トリガー13をクリップ用鉗子1の後方側に引くと、図4(B)、図6(B)及び図7(B)に示すように、連接棒17が前方側に押し出され、開閉用レバー19a,19b、昇降レバー26a,26bを介して一対の首振り用レバー18a,18bが支点ピン12を支点にして下方に回動する。この結果、保持片10a,10b間で挟まれたクリップ4が、図5に示すように、破線位置から二点鎖線位置へと上向きに首を振って傾斜する。
【0036】
連接棒17は、図4(A)(B)に示すように、トリガー13の位置よりさらに後方に伸び、レバー部材1bに固定された筒体22内に入り込む。筒体22内にはストッパ部23が挿入され、このストッパ部23に連接棒17の後端が螺合する。筒体22の後端には雄ネジ30が螺合し、この雄ネジ30の中心に工具挿入孔が設けられる。工具挿入孔から図示しない工具を挿入することで、ストッパ部23を回し、ストッパ部23を連接棒17上で螺進退させ、連接棒17のストロークを加減することができる。
【0037】
筒体22内には弾性部材である圧縮コイルバネ(図示せず)が挿入され、この圧縮コイルバネの弾性によって、連接棒17はクリップ用鉗子1の後方側に常時付勢され、トリガー13を解放した状態では、図4(A)に示す位置に保持される。また、トリガー13から保持片10a,10bに至る伝動系も一定の姿勢に保持される。
【0038】
その他、図1及び図2に示すように、クリップ用鉗子のレバー部材1a,1bにおける取っ手部には必要に応じて指当て25が取り付けられる。
【0039】
次に、上記構成のクリップ用鉗子の作用について説明する。
【0040】
図8(A)に示すように、脳動脈瘤5にクリップ4を装着する手術を例にとって説明すると、術者により患者の頭部2に穴3が穿設される。
【0041】
また、術者によりクリップ用鉗子1のクリップ把持部に脳動脈瘤用のクリップ4が取り付けられる。
【0042】
術者は図1(A)及び図6(A)の状態にあるクリップ用鉗子1のクリップ把持部に図3(A)のごとくクリップ4の柄部4aを挿入し、次いで鉗子1の取っ手部を握って押圧する。これにより、図7(A)の如くクリップ把持部が閉じ、図3(B)の如くクリップ把持部の保持片10a,10bがクリップ4の柄部4aを押圧し、クリップ4の挟み部4bを拡開させる。クリップ4の柄部4aは保持片10a,10bの溝11内に嵌り込み、クリップ把持部にしっかりと保持される。
【0043】
また、図1(B)のごとく係止具の係合片9a,9bを係合操作することにより、術者が取っ手部から押圧力を解除してもクリップ把持部は図3(B)に示すクリップ4を拡開した状態で保持する。
【0044】
次に、術者は図8(A)のごとく鉗子1を頭部2の穴3から脳内に挿入し、クリップ4を脳動脈瘤5に接近させる。そして、鉗子1の取っ手部を握る手の指で図4(B)のようにトリガー13を後方に引く。トリガー13の引き量に応じて図7(B)のように保持片10a,10bが傾斜し、従って、クリップ用鉗子1の先端でクリップ4が、図5のように、所望角度首を振るごとく傾斜する。これにより、術者は脳動脈瘤5の位置、姿勢等に応じてクリップ4の向きを変え、クリップ4の挟み部4b内に脳動脈瘤5を導入する。
【0045】
この場合、図4(A)(B)、図5、図6(A)(B)及び図7(A)(B)から明らかなように、連接棒17はガイド体28の規制によってレバー部材1b上で振れることなく直線運動し、また、昇降レバー26a,26bがレバー部材1a,1bの枢軸6よりも先のクリップ把持部における股内で揺動して連接棒17のスライド運動を首振り用レバー18a,18bの回動運動に変換するので、首振り用レバー18a,18bがレバー部材1a,1bの下方に大きく突出しない。したがって、鉗子1を脳内に出し入れする際に、脳を傷付けるおそれが顕著に低減する。
【0046】
そこで、術者が鉗子1の取っ手部を強く握って係止片9a,9bの係合を解除し、取っ手部に加える力を緩めると、鉗子1が板バネ8a,8bの復元作用で図1(A)、及び図3(A)及び図6(B)の如く拡開し、クリップ4がその挟み部4bを閉じて図8(B)に示すごとく脳動脈瘤5をクリッピングし閉鎖する。
【0047】
その後、鉗子1が術者により頭部2の穴3から抜き取られ、クリッピングの処置が終了する。
【0048】
また、クリップ4の種類、位置等が不適当で交換、取り外し等を必要とする場合は、再びクリップ用鉗子を図1に示す解放状態にして頭部2の穴3から脳内に挿入し、トリガー13を引いて保持部10a,10bを所望の向きにセットし、クリップ用鉗子1の取っ手部を握って押圧する。この場合、一対の保持片10a,10bの溝11同士は同じ向きに保たれているので、クリップ4の柄部4aの両側は両溝11内に正確に嵌り込み、しっかりと保持される。これにより、図3(B)の如くクリップ4の挟み部4bが拡開し、クリップ4が脳動脈瘤5から分離可能となる。
【0049】
その後、新たなクリップを上記と同様な操作によってクリップ用鉗子に取り付けて再び脳内に挿入し、脳動脈瘤5をクリッピングし閉鎖する。
【0050】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記実施の形態では患者の頭部の施術について説明したが他の部位の施術についても適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1a,1b…レバー部材
4…クリップ
4a…柄部
6…枢軸
10a,10b…保持片
11…溝
12…支点ピン
13…トリガー
17…連接棒
18a,18b…首振り用レバー
19a,19b…開閉用レバー
26a,26b…昇降レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢軸を支点にして交差する一対のレバー部材の前後が各々クリップを挟み持つクリップ把持部とクリップ把持部を開閉操作する取っ手部とされ、クリップの柄部が嵌り込む溝がそれぞれ形成された一対の保持片が上記クリップ把持部に支点ピンを介し回動可能に取り付けられ、上記取っ手部を持つ手の操作により上記一対の保持片を一体で回動させてクリップを首振り動作させる首振り操作手段が設けられたクリップ用鉗子において、上記首振り操作手段が、上記取っ手部に取り付けられたトリガーと、上記一対の保持片の各々に前端が固着された一対の首振り用レバーと、この首振り用レバーの後端に前端がそれぞれ連結され、上記クリップ把持部の股内に対し出入り可能な一対の昇降レバーと、この昇降レバーの後端に前端がそれぞれ連結された一対の開閉用レバーと、一対の開閉用レバーの後端を上記トリガーに連結する連接棒とを含んでおり、上記トリガーを引くと上記連接棒及び上記一対の開閉用レバーが上記レバー部材の前後方向にスライド運動をし、このスライド運動が上記一対の昇降レバーの上記クリップ把持部の股回りでの揺動運動に変換され、この揺動運動が上記一対の首振り用レバー及び上記一対の保持片の上記支点ピンを支点にした回動運動に変換され、この回動運動によって上記クリップに首振り動作をさせるようにしたことを特徴とするクリップ用鉗子。
【請求項2】
請求項1に記載のクリップ用鉗子において、上記連接棒がガイド体によって上記一対のレバー部材の一方にスライド運動可能に拘束され、上記一対の昇降レバーが、上記クリップ把持部の股に沿って湾曲した状態で上記連接棒と上記首振り用レバーとに連結されたことを特徴とするクリップ用鉗子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のクリップ用鉗子において、上記クリップ把持部に、上記一対の首振り用レバーを所定位置で停止させるストッパが設けられたことを特徴とするクリップ用鉗子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−78563(P2011−78563A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233202(P2009−233202)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】