説明

クリップ

紙束をクリップするのに適した双安定クリップであり、上側面(3)に少なくとも1つの穴を有した金属シートから作られており、(紙の収容または取り出しを行うための)安定した開状態と(紙を掴んでおくための)安定した閉状態との間でトグルし、背骨部分(2)を有し、当該背骨部分(2)において材料の形状を作ることで、ある程度まで当該背骨部分が強化される、というクリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上のアイテムを掴んだりクランプしたりするのに適した双安定クリップに関する。こうしたクリップは、可能な用途が数多くあり、特に紙を束ねるのによく適している。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、紙クリップは多くの異なる種類のものが知られている。特に、多くの双安定紙クリップが公知である。こうした双安定紙クリップの多くは、ただ1枚の金属シートをU字形に折り曲げて製造される。本発明はこうしたクリップ(以下「折り曲げクリップ」)に適用できる。そして、そうした折り曲げクリップの折り曲げ領域のことを、本文書では「背骨部分(spine)」と呼ぶことにする。折り曲げクリップの例としては、US5136754、US2002/0095748、US4991269、WO96/21573、US3898717、US4947524、JP11−042878、JP2000−190670、そしてUS4793030がある。
【0003】
おそらく、現在市場にあって最も商業的に成功している双安定クリップは、紙クリップでは全くなく、ヘアクリップである。ヘアクリップは通常、こうした折り曲げ特性を有していない。その好例は、US3082773、US4011639、そして、実用新案USD392415およびUSD202016に見られる。また、紙クリップにも、類似した形(折り曲げ特性を持たない形)で設計されたものがある(例:US4397577)。こうした、折り曲げ特性を持たない装置のことを、本文書では「ヘアクリップ」と呼ぶことにする。
【0004】
DE 80280に示される基本的な双安定クリップは、折り曲げクリップでもヘアクリップでもない。それは2枚の金属シートから作られたクリップであり、(紙束の下側の位置に来る)平らな下側面と中央のへこみのために双安定性を示す上側面とを有する。クリップは、正面側エッジを押えてクリップを開状態から閉状態までトグルさせることにより、紙束の上で閉じることができる。また、その後、中央のへこみを押えることによってクリップを開けば、クリップはトグルして開状態に戻る。
【0005】
しかし、DE 80280に記述されたクリップは、開状態と閉状態との間の移動距離が充分でないため、当該クリップはあまり有用ではない。上で触れた折り曲げクリップの大部分は、双安定面に1つ以上の穴を有しており、それによって移動距離をより大きくできる。それでも、こうしたクリップのデザインは、クリップを製造するのに使う材料の厚みの選択にあたって、妥協が必要となる。クリップを作る材料は、安定した開状態と安定した閉状態との間でクリップが充分に形状変化するのを可能とするだけの薄さでなければならない。しかし、同時に、紙束を掴むのに充分なクランプ力を提供するのに充分な厚みの材料で作らなければならず、それと共に、背骨部分の内外で材料が弾性限度を越えて緊張させられる事態を生じさせてはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの対立する必要条件から矛盾が生じ、そこから妥協が必要となる。本発明が目指すのは既存の折り曲げクリップの改良である。そのために、この妥協を克服するための手段を提供し、より薄い材料から製造されながら、紙束を掴むのに充分なクランプ力を実現する、という折り曲げクリップを可能にする。本発明では、特に背骨部分の中および周辺で、クリップの強度(使用時の、開くことに対する抵抗)は大きく向上する。クリップの側面プロフィールが、側面プロフィールを通じての材料の厚みよりも深くなっているからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明が提供するのは、単一片の材料から成るクリップであって、当該材料は折り曲げられて第1および第2の部材を形成し、これら部材は両者の間にクリップ対象の単数又は複数のアイテムを収容する形に配置されており、前記第1の部材は内部に開口を有し、材料の少なくともいくらかは前記開口の周囲で可塑的に変形させられ、それによって、前記第1の部材は、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凸形の形状を有することになる第1の安定状態と、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凹形の形状を有することになる第2の安定状態とを有する形となり、前記第2の安定状態では、折り曲げにおける前記材料の少なくとも一部が、前記折り曲げを開こうとする力に抵抗するような形状にされる、というクリップである。
【発明の効果】
【0008】
また、本発明が提供する別のクリップは、第1および第2の部材を有するクリップであって、これら部材は両者の間にクリップ対象の単数又は複数のアイテムを収容する形に配置されており、前記第1の部材はシート材料から形成されており、内部に開口を有し、材料の少なくとも一部は前記開口の周囲で塑性変形させられ、それによって、前記第1の部材は、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凸形の形状を有することになる第1の安定状態と、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凹形の形状を有することになる第2の安定状態とを有する形となり、前記第2の部材は、前記第1の部材の状態に関係なくその形状を保つのに充分な強度を有し、前記クリップは、単一片のシート材料を前記第1および第2の部材が折り曲げセクションで連結された形に形成されるように折り曲げられることで形成され、前記シート材料は、前記第1の部材の1つの面および前記折り曲げセクションの1つの面と前記第2の部材の1つの面とを有する外側面と、そして、前記第1の部材の反対側の面および前記折り曲げセクションの反対側の面と前記第2の部材の反対側の面とを有する内側面とを有し、前記折り曲げセクションは、前記クリップを一方の側面から見た場合には、クリップのエッジだけでなく、前記第1の部材と外側面の少なくとも一部および前記折り曲げセクションの外側面の少なくとも一部も目に見える、という形で形成されているクリップである。
【0009】
さらに、本発明によって提供される別のクリップは、第1および第2の部材を有するクリップであって、これら部材は両者の間にクリップ対象の単数又は複数のアイテムを収容する形に配置されており、前記第1の部材はシート材料から形成されており、内部に開口を有し、材料の少なくとも一部は前記開口の周囲で塑性変形させられ、それによって、前記第1の部材は、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凸形の形状を有することになる第1の安定状態と、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凹形の形状を有することになる第2の安定状態とを有する形となり、前記第2の部材は、前記第1の部材の状態に関係なくその形状を保つのに充分な強度を有し、前記クリップは、単一片のシート材料を前記第1および第2の部材が折り曲げセクションで連結された形に形成されるように折り曲げられることで形成され、そして、前記折り目セクションの有する少なくとも1つの領域では、前記シート材料が(例えば楕円的に(spheroidally)変形されて、2次元的な曲げ加工だけでは作れない3次元的な形状となり、それによって、前記クリップが解けたり開いたりして平らになってしまう事態を防止している、というクリップである。
【0010】
ここから、第1の部材は上側面、第2の部材は下側面と呼ぶ。
本発明の少なくともいくつかの実施の形態は、内側エッジを永続的に圧縮力の中に置き、外側エッジを永続的に引張り力の中に置くことから、双安定性の一部又は全てを引き出す、という双安定クリップとして理解できるであろう。DE 80280の発明は、上側面を塑性変形させてドーム状の構造にすることで双安定性を実現するのに対し、ヘアクリップは同じことを、不規則な円錐台形(frustoconical)への弾性変形によって実現する。クリップの全体的な性能は、内側エッジにおける永続的な圧縮状態が上側面の大部分の弾性変形によって生じる場合、上側面の大部分の塑性変形によって生じる場合よりも向上する(この弾性変形は局所的な塑性変形によって生じる)。
【0011】
こうした構成では、クリップが安定した開状態または安定した閉状態にある場合ですら、内側エッジ(穴のエッジ)の大部分は圧縮されている、そして、これらの2つの安定した状態の間でクリップをトグルさせる動作は、この内側エッジに沿っての圧縮を強める。
本発明の少なくともいくつかの好適な実施の形態によって達成される効果を以下にいくつか示す。
・本クリップは、最少で2枚のシートから最多で相当の厚みの紙束まで、どんな量の紙でも確実に保持することができる。
・本クリップは、手動で(他のいかなる道具も用いずに)簡単に取り外しおよび再使用ができる(理想的には「押しボタン」の方式で)。
・本クリップは会社商標を印刷するのに適した面を持つことができる。
・本クリップは「重ね組みする」ことができる。それによって、クリップ同士のもつれを防止し、クリップに取られるスペースを小さくできる。
・本クリップは、紙束に付けられた状態でのプロフィールが非常に低く、留める対象の紙束にあまり厚みを加えない。
・本クリップは非常に低いコストで製造でき、大量製造も可能である。
・本クリップは再使用が可能である。
【0012】
いくつかの好適な実施の形態では、上側面の開口の周りの塑性変形は、クリップの正面エッジをクリンプするやり方で実行すればよい。それにより、クリップの正面を横切る形で、そして、上側面の外側エッジの周りで引張り力が生じるが、上側面の穴のエッジの周囲の大部分では圧縮力が生じる。
他の好適な実施の形態では、上側面の開口の周りの塑性変形は、開口の周囲の一部または全体をピーニングするやり方で実行すればよい。それにより、外側エッジの周囲の一部または全体ではフープ応力が、内側エッジの周囲の一部または全体ではフープ圧縮力が生じる。
【0013】
好適な実施の形態では、下側面の少なくとも一部にゆるく波形が付けられ、その波形は、湾曲した背骨部分の軸にほぼ直行する方向に走っている。こうした波形は、下側面の堅さを大きく増すが、湾曲した背骨部分の近くでは特に重要である(この領域は最も高い曲げモーメントを受けるため)。
好適な実施の形態では、波形は湾曲した背骨部分の少なくとも一部にあたりに広がり、1以上の隆起を形成するが、これにより、湾曲した背骨部分の堅さは大きく増す。
【0014】
いくつかの好適な実施の形態では、上側面は複数の穴を有する。こうした実施の形態は、上側面の穴の形に応じて異なる性能特性を有する。例えば、1つの実施の形態は、圧縮支柱で隔てられた一対の穴を有する。そして、圧縮支柱の軸は湾曲した背骨部分の軸に対してほぼ垂直である。この圧縮支柱により、クリップの双安定性能が向上すると共に、クリップを閉状態からの開状態へトグルさせるために押下するのに便利な場所が提供される。さらに、開いたクリップに挿入される紙束が穴の後ろ側エッジに噛まれる事態を防止するのにも役立つ。
【0015】
いくつかの好適な実施の形態では、上側面および/または下側面は更に歯を有する。これらの歯は、まとめてクリップされる紙束の上側および/または下側の何枚かに食い込むように設計されている。また、いくつかの実施の形態では、歯は鋭くなく、伸ばされてフランジになっている。これは、歯のある実施の形態と歯のない実施の形態との間の中間の形態である。
【0016】
好適な実施の形態では、クリップを重ね組みすることができ、それによって、クリップが取るスペースを小さくでき、クリップ同士のもつれも防止できる。
したがって、本発明の実施の形態は、従来の「宝石」タイプの紙クリップや従来の折り曲げクリップに勝る効果があると評価されるであろう。本発明に関するこれら及び他の特徴は、例として挙げる2ヶ所隆起型の実施の形態に関する後述の説明を、添付図面を参照しながら読むことで、より深く理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の2ヶ所隆起型の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
図1、2に示すクリップは、下側面1、カーブした背骨部分(spine)2、そして上側面3を有する。上側面3の周囲には外側エッジ19があり、このエッジ19以外の部分で上側面3と背骨部分2とはつながっている。下側面1は一対の波形部(corrugation)4を有する。それらは背骨部分2の周辺に延び、背骨部分2の所で一対の隆起部(bump)5を作っている。上側面3は穴6を有し、穴の周囲は内側エッジ18である。そして穴6によって一対のアーム7が隔てられた形になっている。穴6の背後にはハイポイント16があり、ハイポイント16の背後には窪み20がある。穴6の前方で、アーム7は鼻8につながっている。鼻8は一対のクリンプ9を有する。各クリンプ9の前面には、下側面1の方に向いた上側歯10が1本ある。上側面3の後ろの方には移行領域22があり、ここでは、背骨部分2の2ヶ所隆起したプロフィールと上側面3のほぼ円錐台形(frustoconical)な双安定領域との間の移行部に湾曲がある。
【0018】
図3〜9に示す図は、様々な2ヶ所隆起型の実施の形態である。本クリップは、2つの面を有した1枚の薄いスチールから製造され、U字形になるように折り曲げられて、面のうち一方は内面27に、もう一方は外面28となる。図3〜8では内面を網掛けし、それによって外面(網掛けなし)と区別してある。
図1、2にはさらに、下側面1が一対の穴11を有することを示しており、その背後には、上側面3の方を向いた一対の下側歯12が形成されている。
【0019】
開状態にある時、クリップは口13が開いている。図23は、厚い書類束14を挟んで閉じた状態のクリップを示す。図14は出っ張り17を有したクリップを示す。図16、20は長手方向支柱15を更に有したクリップを示す。そして、図17は、横方向ブリッジ21をさらに有したクリップを示す。
ここからは、クリップの背骨部分の方の端部のことを「背面」と呼び、クリップの鼻の方の端部を「前面」と呼ぶことにする。
【0020】
図3を参照する。クランプ動作から生じるクリップ内の曲げ応力は、面A−Aの左側にある領域では低く、面A−Aと面B−Bとの間では中程度であり、面B−Bの右側では高い。所定の厚みのスチールに対し、本発明では、平らまたは筒形(cylindrical)の背骨部分を有する他の折り曲げ型クリップよりも剛性が高くなっている。それは、面B−Bの右に位置する領域の幾何学形状による。この領域では、波形部によって生じる下側面の湾曲と、2つの隆起によって生じる背骨部分の湾曲と、そして、移行領域における湾曲とにより、曲げ応力を受けるプロフィールの厚みが、全体でスチールの厚みよりも相当に厚くなることが確実となる。面B−Bの右の領域全体を通じての剛性は、下側面、背骨部分、そして、移行領域の外面が、図3に示すクリップの側面プロフィールにおいて全て目に見える状態になっている、という事実と関連している。
【0021】
2ヶ所隆起型の実施の形態において、各隆起は基本的に樽形(barrel-shaped)である。背骨部分の素材の形状は基本的に、(図4、5、7、8に示すような)弧に近い下側面の波形プロフィールを一掃した(sweep)場合に出来上がる形状である。実質的に平らなシートから始めて、この形状を2次元的な曲げ加工だけで作ることはできない。こうした形状を作るには、素材に対して、引っ張り加工、および/または、圧縮加工、および/または、せん断加工を行う必要がある。従って、背骨部分の軸のあたりの曲率半径は、背骨部分に沿って変化し、各隆起の中心(材料が引っ張られた箇所)ではより大きくなり、隆起同士の間および隆起の外側(材料が圧縮される箇所)ではより小さくなっている。引っ張りおよび圧縮に関しては、下側面の波形プロフィールを一掃した場合の弧の長さを考えてみれば理解できる。弧の長さは、各隆起の中心の近くではより長くなり、隆起同士の間および隆起の外側ではより短くなる。
【0022】
図29は、丸い形のプロフィールを有していない背骨部分を備えた実施の形態を示す側面図である。この実施の形態の背骨部分の3次元形状は基本的に、弧ではないカーブに沿って波形プロフィールを下側面から一掃することで作られる形状である。本発明は、背骨部分の断面の形が円弧(arc of a circle)になっている、というクリップに限定されない。
【0023】
以下、図面を参照しながら、2ヶ所隆起型の実施の形態の動作を説明する。
クリップが図2に示す開状態にある時、その口13は大きく開いており、相当の厚みの書類束14を受け入れることができる。上側面3の外側エッジ19は引張り力を受けており、上側面3の外面28は、図7、8で示すように、ほぼ凹形となっている。紙束14は、紙束14用のエンドストッパとして機能する背骨部分2にその先端が達する状態になるまで、クリップの中に簡単に入れることができる。その後は、単にクリップの鼻8を押えるだけで、クリップを閉じて紙束14を挟むことができる。この圧力によってクリップはトグルさせられて、安定した開状態から安定した閉状態(図1参照)に移る。
【0024】
クリップが図1で示すように閉状態にある時、上側面3の外側エッジ19は引張り力を受けて、上側面3の外面28は、図4、5に示すようにほぼ凸形となる。
鼻8と下側面1との間で生じるクランプ力は、数多くの要因に左右されるが、クリップがスプリングの働きをするため、クランプ力はクランプされる書類束の厚みに依存する。図23に示すように束が厚ければ、クランプ力は大きいが、束が図22に示すように薄ければ、クランプ力はより小さくなる。
【0025】
そこで、図22に示すように枚数の少ない紙束にクリップが使用される際に、確実に紙束14を保持する助けとなるように、上側の歯10と下側の歯12とが作られている。クリップをホチキス留めと同程度の強さにするために、上側の歯10と下側の歯12とが紙束14に食い込むようにしてもよい。紙は破らない限り取り外せない、という場合も多い。
【0026】
より厚い紙束では、上側の歯10および下側の歯12は、束の一番上の数枚と一番下の数枚に食い込むのみである。しかし、その間にある紙は、クリップのクランプ力だけで保持される。この力は、こうした紙を確実に掴むのに充分な強さである。
ここで、クリップが図1に示すように閉状態にある時、クリップのハイポイント16を押えれば、クリップをトグルさせて開状態に移し、紙束を解放することができる。この圧力により、クリップは安定した閉状態から安定した開状態へとトグルさせられ、そうすると、クリップを紙束14から取り外すことができる。
【0027】
上述した通りの動作を示すようにするためのクリップの設計を理解することが重要である。
本発明の設計に関する重要な側面は、適正な厚みの適正な材料を選択することである。好適な実施の形態はばね鋼から作られるが、それはカーボンばね鋼でもステンレスばね鋼でもよい。
【0028】
材料の厚みは重要である。材料が薄すぎると、紙を充分な強さで掴むだけの強度を持たないであろう。しかし、材料が厚すぎると、双安定の上側面の形状を変形させる前に弾性限界に達してしまうであろう。
本発明の好適な実施の形態が比較的薄い材料を用いながら、下側面の波形や背骨部分の隆起によって強化する、という形にしてあるのは、これが理由である。こうした特長により、背骨部分および下側面で材料が強化されると共に、上側面での運動の量を大きくすることが可能となる。
【0029】
例えば、ピーニング加工の実施の形態は、厚さ0.25mmの高張力ステンレス鋼シートから製造することができ、長さ約25mm、幅20mmである。寸法はこれらの値に限定されず、特に、クリップのサイズは小さくすることができる。これより小さいクリップは、より薄い材料から製造できる。
下側面に波形を付けるのは簡単であり、これは単純な曲げ操作である。しかし、背骨部分に隆起を入れることは難しい。なぜなら、この作業では、材料に対して引っ張り、および/または、せん断、および/または、バックリング(buckle)の加工が必要となる。こうした隆起を形成し、且つバックリングを避ける技術について、いくつか後述する。
【0030】
下側面および背骨部分は、1つの波形/隆起でも強化することができるが、2つの波形/隆起で強化した場合ほどの効果はない。その理由は、1つの隆起しか備えない背骨部分は驚くほど柔軟だということである。隆起は、材料が2つの直角する方向に楕円的に(spheroidally)曲がることで作られる(背骨部分の軸のまわりで、そして波形を形成する形で)。そして、湾曲はこれら2方向の間で変化させられる。これが意味するのは、クリップのクランプ力が低いということである。その理由は、ヒンジ軸を基準に湾曲をより深い隆起に変えることで、クリップを簡単に開けられるからである。2つの隆起を備えたクリップは、こうした複雑なモードでの弾性変形に対する抵抗がはるかに大きい分、強固さも大きく高まる。
【0031】
図4、5、7、8には2ヶ所隆起型実施の形態の断面における下側面の波形が見られる。そして、図9は同じ湾曲が続いて、背骨部分の隆起を形成している様子を示す。
上側面の穴は重要な特徴である。穴の正面側のエッジは波形によって引張り力を受けた状態に保たれる。しかし、背面のエッジと特に側面のエッジとは圧縮状態にあり、これらの圧縮部材はバックリング可能な支柱として働く。このバックリング可能性がクリップの双安定性の源である。
【0032】
DE 80280号に記述されている可塑変形ドーム構造では、ドームの形成のために材料を引っ張り加工する必要があるが、これと異なり、本発明の大部分の実施の形態での上側面は、弾性変形を受ける平らなシートであり、ヘアクリップと類似している。クリンプ加工やピーニングを別として、上側面を変形させる手法は弾性折り曲げだけである(引っ張りや剪断ではない)。平らなシーツを弾力的に曲げる場合、その結果は2つの形しかありえない。筒形または円錐形である。そして、本発明の場合、上側面は変形させられて、不規則ではあるが、ほぼ円錐台形となる(むしろ、薄い皿ばね(Belleville washer)に似ている)。
【0033】
この円錐台形の形によって、上側面の側面プロフィールは材料の厚みよりも相当に深くなり、従って、上側面には充分な強度が与えられる。下側面は波形によって強化され、背骨部分は隆起によって強化される。しかし、それでもなお、それほど強くない領域が、円錐台形の上側面と2つの隆起との間に移行部の周辺には存在しうる。いくつかの好適な実施の形態では、ハイポイントの後にある中央の窪み又は中央の出張りによって、上側面と背骨部分との間に弱い移行部分ができるのをいく分か防いでいる。この窪み又は出張りによって、クリップ製造もより簡単になるのだが、その理由は後述する。
【0034】
本発明の好適な実施の形態では、上側面の円錐台形の形状が有する強化特性は、非常に望ましいものでありながら、直感的には認識しにくいものである。クリップが閉状態にあって上側の歯に力が加わっている際、この力がクリップをトグルさせる方向に働くことは全くない。その代わりに、こうした力はクリップの上側面の外側エッジでの引張り力を高める。それによって、円錐形のフォームをさらに深くし、上側面の側面プロフィールをより深くすることで、構造を強化し閉状態においてさらに安定させる。
【0035】
クリンプ型の実施の形態(ピーニング型や円錐型の実施の形態以外の全て)において、円錐台形の上側面の形成は、鼻8の塑性変形によって作られるクリンプ9によってクリップの鼻が狭くなる際に生じる内部応力によって実現される。円錐台形の形状はクリンピング以外の手段で作ることもできるが、クリンピングには以下のような効果がある:
・実行が比較的簡単で、付加的な構成要素が必要ない。
【0036】
・上側の歯を配置するのに有用な場所が作られる。
・クリップの双安定性に対して、開状態または閉状態(こちらがより望ましい)のいずれかの方向に偏らせることが可能となる。
・紙束から上側面に対して加わる力が正確なポイントで作用することで、上述の望ましい(しかし直感しにくい)強化特性の効果が確実なものになる。
【0037】
・比較的小さい量の塑性変形を生じさせることが比較的簡単である。
ヘアクリップの場合は、鼻の幅の縮小幅をはるかに大きくする必要があり、通常はリベットされる。リベットは比較的高コストである上、鼻の幅の縮小幅を小さくするには不適当である。本発明の25mm×20mmの実施の形態では、約1mmの鼻の幅の縮小が必要となる。
【0038】
ヘアクリップもピーニングされる場合があるが、その場合、ヘアクリップの上側面の細長い穴の各端部に1回ずつの打撃を加える。本発明の円錐台形の形状を作る内部応力もピーニングによって作られる(図18に示す)。
上側面の穴の両側にはクリップのアームがある。好適な実施の形態では、クリップのアームはクリップの背面に向かって広くなり、その結果として穴は狭くなっていく。上側面から最大の形状変化を得る最良の方法は、上側面の全体を多少一様に変形させることである。多少とも一定な曲率半径になるように曲げ、そうした半径は材料の弾性限度によって制限される。
【0039】
本発明の好適な実施の形態は、アームをクリップの背面に向かって広くすることによって、この条件を達成する。クリップの背面に向かってアームを広げることは、曲げモーメントが最大となるクリップの背面の周辺で強度を高めることでもある。
本発明の製造にあたっては、上側の歯および下側の歯を有する形にしてもよいし、持たない形にしてもよい。歯を持たない場合は、全くの紙クリップとして働き、完全に以下の要因に依存する。
【0040】
・上側面と下側面との間のクランプ力
・紙束とクリップとの間の摩擦
・紙束の中での1枚の紙と次の紙との間の摩擦
一般に、1枚の紙と次の紙との間にある摩擦は、紙とクリップとの間にある摩擦よりも大きい。従って、クリップが確実に書類を保持する能力は、歯によって大きく強化される(これらの歯が小さくて1枚の紙しか貫通しない場合であっても)。
【0041】
いくつかの実施の形態では、歯は何枚かの紙を突き通す(少なくとも噛む)のに充分な大きさがあり、これによって、クリップが紙を確実に保持する能力は向上する。
歯によって紙に生じる損傷は問題であるが、それは、歯を細長いフランジと置き換えれば、実質的に克服されるであろう。そうしたフランジを備えたクリップ(図21に示すようなもの)は、紙に与える損傷が歯の場合よりも少ない。それでも、歯もフランジも持たないクリップに比べれば、より確実に紙束を掴むことができるだろう。
【0042】
クリップのデザインは全く単純に見えるかもしれないが、背骨部分に隆起を作るのは難しい。本発明の2ヶ所隆起型の実施の形態の製造方法の1つを以下に示す。
1.ブランク加工。薄板鋼をプレスして2次元に広がる形状に打ち抜く。
2.予備曲げ加工。これは任意の初期の塑性変形であり、スチールにいくらかの残留応力を与えることを意図している。2次元のブランクを長さ方向に沿って(背骨部分に対して垂直に)緩やかに曲げる。
3.波形形成。ブランクを長さ方向の約半分にわたって塑性変形させることで、下側面の波形を作る。
4.背骨部分の曲げ加工。背骨部分を、円筒形のフォーマ(直径約3mmが適当)、または隆起を2つ形成するような形状のフォーマに巻く形にして、塑性的に曲げる。いずれの場合も、背骨部分の曲げ加工プロセスにより、背骨部分の予備の曲げおよび隆起の一部が失われるが、これらの先行の塑性変形からいくらかの残留応力が残る。背骨部分は約180度まで曲げるべきだが、この段階では、スプリングバックによって約150度の最終角度が残るであろう。
5.隆起の形成。漸進的な一連のパンチおよびダイを用い、背骨部分に2つの隆起を再形成する。この操作では、スチールを剪断し、引っ張り、そして圧縮することで正しい形状を作り出す必要がある。この操作では、素材は、それが圧縮状態にある位置において座屈(buckle)させられるため、漸進的な一連のパンチおよびダイを用いて座屈の制御を保つのが最善のやり方である。パンチとダイとの第1の組によって与えられる背骨部分は、形がほとんど筒形で非常に浅い隆起しかない状態であるが、そこから、パンチとダイとの各組が漸進的に曲がりを大きくして行き、最終の組によって隆起の形成は完了する。出っ張りや窪みが隆起と同時に形成され、いずれの場合もどこかで、隆起の間から移動させる余剰の材料をもたらす。
6.クリンピング。クリンプは、適切に形づくられたパンチとダイとを用い、クリップの鼻に作られる。 これは、波形の形成中に材料を引っ張ることを避けるために、いくつかの段階に分けて実行しなければならないかもしれない。クリップと装置との間の摩擦があまりに大きいと、材料が伸びる傾向が見られるかもしれない。クリップはクリンプされて開状態になるのが理想的である。そうでなければ、次の操作の前にトグルさせなければならない。
7.歯の形成。材料を局所的に曲げて歯を形成する。
8. 偏り加工。クリップは、閉じている時は非常に安定しているが、開いている時は少しだけ安定している、というのが理想的である。偏りは、この段階で、クリンプや上側面の他の部分の微妙な塑性変形によって調節することができる。
9.背骨部分の絞り加工(squeezing)。この段階でのクリップは、背骨部分曲げ加工からのスプリングバックによって、まだ大きく開いている場合もある(ただし、正確な角度は後続の操作に影響を受けているだろう)。そこで、最後の段階は、クリップの背骨部分を絞って正しい角度にすることである。これは、クリップをトグルさせて開状態にする、というのが最善の実行方法である。
【0043】
状況によっては、これらの手順の実行順は、製造の必要条件を満たすために変更してもよい。
「隆起の形成」プロセスは、これらプロセスの中で最も難しいであろう。このプロセスでは、材料を可塑的に、引っ張ること、および/または、せん断すること、および/または、圧縮することが必要だからである。他のプロセスは、単なる曲げプロセスであるため、これよりも簡単である。可塑的圧縮は、材料の座屈を生じさせる傾向があって望ましくないが、図9、10で示す1つ又は2つの隆起を備えた形でなく、図11、12に示す1つ又は2つの張出し(ridge)を備えた形でクリップを製造するのであれば、可塑的圧縮は回避できる。
【0044】
図12は1ヶ所張出型の実施の形態を示す。このクリップでは、一対の実質的に筒形のセクション26の間に1つの張出しが配置されている。筒形セクションは、上述の「背骨部分の曲げ加工」プロセスにおいて、単純な曲げ加工で作られて、後続の「隆起の形成」プロセスによっても、実質的には変形しない。1ヶ所張出型の実施の形態の場合は、「隆起の形成」プロセスの間に張出しが形成される。その方法は、張出し位置で材料を引っ張り、張出しと筒形セクションとの間で材料を剪断する、というものである。この領域で材料を引っ張るのに必要な引っ張り力は、筒形セクションの圧縮力によって相殺されるが、この圧縮力は筒形セクションを介して分散され、円筒形の領域の圧縮応力のレベルが材料の弾性限度を上回らない形となっている。そのため、材料が座屈することはない。さらに、筒形セクションは「隆起の形成」プロセスの間は変形されない。そのため、装置の設計は、このプロセスの間、筒形セクションがダイとパンチの一時的静止部分との間で強くクランプされると共に、パンチの可動部分が両筒形セクションの間で材料を引っ張り、剪断することで張出しを形成する、という形にすることができる。形成プロセスの間の筒形セクションの保持力もまた、「隆起の形成」プロセス中の座屈の防止に役立つ。図11に示す2ヶ所張出型の実施の形態も同様の方向で作られる。
【0045】
1ヶ所張出型または2ヶ所張出型の実施の形態における張出しの幾何学形状によっては、波形を作る操作の間に背骨部分に張出しを形成し、形状を付けたフォーマに巻く形で背骨部分を曲げる背骨部分の曲げ加工の間も当該張出しを保持しておく、という形も可能であろう。この場合、隆起形成操作は不要となるかもしれない。
クリップの背骨部分にいくらかの「楕円性(spheroidality)」を作らなければ、本発明の利点を完全に達成することは不可能である。楕円性とは、クリップの背骨部分の材料の一部が2つの直行する方向に同時に曲げられる際に生じる 状態である。これは、単純に曲げるだけでは実行できず、材料を引っ張ること、および/または、せん断すること、および/または、圧縮することが必要である。そして、その結果として、「展開する」(広げる)ことにで平らなシートの状態に戻す、ということができなくなる。
【0046】
大量製造においては、これらの手順は、漸進的なダイ機械(die machine)の複数段階のダイで全て完了されるであろう。その場合、個々のクリップの単価を非常に低くできる。
本発明は、2ヶ所隆起型の実施の形態に限定されない。本発明の別の実施の形態のいくつかについて、以下に述べる。
【0047】
図14に示すような出っ張り付きの実施の形態は、2ヶ所隆起型の実施の形態に類似しているが、背骨部分が上側面につながる箇所の領域が、凹形で窪みとなっているのでなく、凸形で出っ張りを形成している、という点が異なる。
図15に示す平坦な実施の形態も、2ヶ所隆起型の実施の形態と類似しているが、背骨部分が上側面につながる箇所の領域が凸形でも凹形でもなく、凸形の上側面が背骨部分の2つの隆起の間の凹形領域と滑らかに一体化している、という点が異なる。平坦な実施の形態は、より単純ですっきりした線を持っていることから、美学的には心地良い。ただし、製造はこちらの方が難しい。どこにも、2つの隆起の間からの移動させる余分の材料がないため、窪み付き又は出っ張り付きの実施の形態と異なり、この領域の材料には、引っ張り、および/または、せん断を行う必要がある。
【0048】
支柱付きの実施の形態は、図16、20にそのバージョンを示してあるが、平坦な実施の形態と類似している。ただし、背骨部分の軸と直行する方向で穴を分割する支柱15が存在する点で異なっている。支柱付き実施の形態は2つの穴を持つ。支柱は、クリップの安定した開状態と安定した閉状態との両方において、圧縮状態にあり、そのため支柱は、もう1つの座屈可能な部材として働く。従って支柱は、安定した2つの状態の両方においてクリップの安定性を増し、さらに、クリップの上側面での動きの量を大きくすることもできる。
【0049】
支柱付き実施の形態は、閉状態から開状態までトグルするのが、2ヶ所隆起型の実施の形態よりも容易であるが、それは、ユーザが、ハイポイントでなく支柱に圧力を加えることができるからである。
支柱付き実施の形態の好ましいバージョンでは、支柱が鼻につながる箇所で2つのクランプの間にギャップがある。
【0050】
本発明の支柱付き実施例は、いくつかの共通の特徴をWO96/21573号(これもまた中心に圧縮支柱を有する)と共有する。しかし、WO96/21573では、主要な引張り力はアームにある(背骨部分の軸に直行する向きに働く)のに対し、本発明では、主要な引張り力は鼻を横切る(背骨部分の軸と平行な向きに働く)。あるいは、支柱付き実施の形態のうちピーニングされ円錐状にされた実施の形態の場合、主要な引張り力は、クリップの上側面の全周にわたって存在する。
【0051】
WO96/21573の基本的メカニズムは、線形圧縮座屈可能な支柱が、一対の線形張力部材の間で圧縮状態に保持されていることであるのに対し、本発明の好適な実施の形態の基本的メカニズムは、皿ばねにより似ている。皿ばねにおいては、クリップの上側面の外側エッジの周りのフープ張力が、クリップの内側エッジ(穴の周囲)の周り(大部分)でのフープ圧縮と釣り合う。
【0052】
ブリッジ付き実施の形態の1つのバージョンを図17に示してあるが、これは平坦な実施の形態と類似している。ただし、第1の穴と背骨部分との間に第2の穴が存在する点で異なる。2つの穴の間に残る一片の材料をブリッジと呼ぶ。支柱付き実施の形態と同様に、ブリッジ付き実施の形態は、閉状態から開状態にトグルする操作が、2ヶ所隆起型の実施の形態よりも容易であるが、これも、ユーザがハイポイントでなくブリッジに圧力を加えることができるからである。
【0053】
また、支柱付き実施の形態と同様に、ブリッジは、安定した開状態と安定した閉状態との両方において圧縮状態にあり、そのため、ブリッジは追加の座屈可能部材として動作する。ブリッジは、圧縮状態にあるために曲がっている。そして、ブリッジの湾曲はクリップの側面の湾曲を大きくすることもある。そうすると、この実施の形態の機能はさらに強化される。
【0054】
支柱付き実施の形態をブリッジ付き実施の形態と結合して上側面に3つ又は4つの穴を持つ形とすることで、さらに、図24〜26に示す3つの実施の形態を作ることができる。4つの穴の形は、図27に示す形にも変えることができる。これらの実施の形態は各々、異なる機械的、人間工学的、そして美的な特徴を有するので、これらの実施の形態は、各々異なる必要条件を満たすように選択すればよい。
【0055】
これまでの実施の形態は全てがほぼ対称形であるが、非対称の実施の形態にも効果がある。その1つの例を図29に示す。
図18に示す、ピーニングした実施の形態は、2ヶ所隆起型の実施の形態に類似している。ただし、穴の周りでの圧縮力が、鼻に沿って引張り力を生じさせるクリンプではなく、内側エッジに沿った(穴の周囲に沿った)ピーニング加工によって生じる、という点で異なる。ピーニングによって、穴の周囲に沿って材料の厚みは小さくなり、こうして厚みが小さくなることは、内側エッジの長さが対応して伸びる結果につながる。そして、このことは、内側エッジの周囲での圧縮力と、対応する外側エッジの周囲での引張り力とを発生させる。
【0056】
図19に示す、円錐形にされた穴の実施の形態は、クリップの鼻をクリンプする必要がないという点で、ピーニング型の実施の形態と類似している。円錐形にされた穴の実施の形態では、上側面を可塑変形させて浅い円錐の形にした後に上側面を逆に形成(reverse forming)して反対方向に浅い円錐を作ることによって、穴の周囲にそって圧縮力が発生する。この第2の(逆)形成により、クリップの上側面での残留応力への制御が与えられる。
【0057】
ピーニングされた実施の形態および円錐状の穴を付けた実施の形態は、美的には、2ヶ所隆起型の実施の形態よりも単純であるが、それはクランプが付けられていないからである。また、例えば漸進的なダイマシンでの大量製造では、クリップの鼻をクリンプするよりも、穴の周囲をピーニングするか円錐状に形成し、その後に上側面を逆に形成する方が簡単であろう。さらに、細長いフランジも、これらの実施の形態のいずれかであれば、実装がより簡単であろう。細長いフランジはクランプとは衝突してしまう。
【0058】
図20に示す1ヶ所隆起形の実施の形態は、2つでなく1つだけ隆起を備えた背骨部分を有する。これだと、隆起が2つある場合に比べて背骨部分の強度は劣るが、製造はより簡単であろう。
本発明の好適な実施の形態による特別な効果は、図13に示すように、開状態のクリップを重ね組みできる点である。これにより、多数のクリップを比較的小さなスペースに保持できると共に、各クリップが隣接するクリップと同じ向きになることが確実となる。そのため、クリップ同士がもつれることがない。
【0059】
これまでの説明と図面とから理解されるであろうが、説明した実施の形態だけが本発明で可能な実施の形態を構成しているわけではない。説明した特徴は、多くの異なる形でも組み合わせることができる。例えば、背骨部分に2つの隆起を備え、上側面には穴が1つだけある、というクリップでは、
1.背骨部分が上側面につながる領域は、なめらかであっても、窪みが付いていても、出張りが作られていてもよい。
2.上側面の双安定性を生じさせるのに必要な上側面の塑性変形は、鼻をクリンプすること、内側エッジをピーニングすること、穴を円錐形または逆円錐形にすること、のいずれによって達成してもよい。
3.クリップは、上側の歯、および/または、下側の歯、および/または、上側および/または下側のフランジ、を有してもいても、有していなくてもよい。
【0060】
これらの変形の大部分はまた、背骨部分に1つだけある隆起、または、背骨部分にある1つまたは2つの隆起、および/または、上側面の2つ以上の穴と共に実施可能である(図9〜12、20、24〜28に示す)。これらはまた、丸みのあるプロフィールを持たない背骨部分と共に実現することも可能である(図29に示す)。
さらに、本発明は潜在的に多くの異なる種類の折り曲げクリップにも適用できると考えられる。その中には、ここで参照した特許および特許出願に記述されたものが含まれる(ただし、それらに限定はされない)。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】2ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図2】2ヶ所隆起型の実施の形態を開状態で示す斜視図である。
【図3】2ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す側面図である。
【図4】2ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す第1の断面図である。
【図5】2ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す第2の断面図である。
【図6】2ヶ所隆起型の実施の形態を開状態で示す側面図である。
【図7】2ヶ所隆起型の実施の形態を開状態で示す第1の断面図である。
【図8】2ヶ所隆起型の実施の形態を開状態で示す第2の断面図である。
【図9】2ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す平面図である。
【図10】1ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す平面図である。
【図11】2ヶ所張出型の実施の形態を閉状態で示す平面図である。
【図12】1ヶ所張出型の実施の形態を閉状態で示す平面図である。
【図13】平坦型の実施の形態による開状態の複数のクリップを重ね組みした状態で示す斜視図である。
【図14】出っ張り型の実施の形態の閉状態で示す斜視図である。
【図15】平坦型の実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図16】支柱付きの実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図17】ブリッジ付きの実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図18】ピーニング加工の実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図19】円錐形(coned)の実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図20】1ヶ所隆起型の実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図21】フランジ付きの実施の形態を閉状態で示す斜視図である。
【図22】2ヶ所隆起型実施の形態を、少ない枚数の紙を挟んで閉じた状態で示す側面図であり、歯が紙を掴む様子を示す図である。
【図23】2ヶ所隆起型実施の形態を、厚い紙束を挟んで閉じた状態で示す側面図であり、強化されたクランプ力で紙を掴む様子を示す図である。
【図24】穴3つの実施の形態を示す平面図である。
【図25】別の穴3つの実施の形態を示す平面図である。
【図26】穴4つの実施の形態を示す平面図である。
【図27】別の穴4つの実施の形態を示す平面図である。
【図28】非対称形の実施の形態を示す平面図である。
【図29】円形のプロフィールを持たない背骨部分を備えた実施の形態を示す側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一片の材料から成るクリップであって、当該材料は折り曲げられて第1および第2の部材を形成し、これら部材は両者の間にクリップ対象の単数又は複数のアイテムを収容する形に配置されており、
前記第1の部材は内部に開口を有し、材料の少なくともいくらかは前記開口の周囲で可塑的に変形させられ、それによって、前記第1の部材は、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凸形の形状を有することになる第1の安定状態と、前記第1の部材の少なくとも自由端部がおおよそ凹形の形状を有することになる第2の安定状態とを有する形となり、前記第2の安定状態では、折り曲げにおける前記材料の少なくとも一部が、前記折り曲げを開こうとする力に抵抗するような形状にされること、
を特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記折り曲げは第1のセクションを有し、当該第1のセクションが前記折り曲げの周囲で有している曲率半径は、前記第1のセクションの両側に位置する1つ以上の第2のセクションの前記折り曲げの周囲での曲率半径よりも大きくなっていること、
を特徴とする請求項1に記載のクリップ。
【請求項3】
前記折り曲げは、前記第1のセクションを2つ以上を有すること、
を特徴とする請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記折り曲げにおける前記材料の少なくとも一部は、2次元的な折り曲げだけでは形成できない3次元形状に変形させられること、
を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のクリップ。
【請求項5】
前記第2の部材は、その強度が高められてシート材料だけの強度を上回るように、形状が決められていること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のクリップ。
【請求項6】
前記塑性変形は、前記開口の周囲での前記材料の一部の1つ以上のクランプまたは曲がり(bend)という形を取ること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のクリップ。
【請求項7】
前記1つ以上のクランプまたは曲がりは、前記折り曲げの位置からは、前記開口の反対側にあること、
を特徴とする請求項6に記載のクリップ。
【請求項8】
前記塑性変形には、前記開口の周囲で前記材料を薄くする変形、および/または、引き伸ばす変形が含まれること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のクリップ。
【請求項9】
前記第1の部材が複数の開口を有すること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のクリップ。
【請求項10】
前記材料はシート材料であること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のクリップ。
【請求項11】
前記シート材料は金属シートであること、
を特徴とする請求項10に記載のクリップ。
【請求項12】
前記第1の部材および前記第2の部材の一方又は両方に形成された1つ以上の歯をさらに有すること、
を特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−504506(P2008−504506A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518701(P2007−518701)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002593
【国際公開番号】WO2006/003415
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(507000350)イノバース エンジニアリング リミテッド (1)
【出願人】(501130291)
【Fターム(参考)】