クリップ
【課題】アンカーを取付け孔から無理なく抜き取ることを可能とし、クリップを繰り返し使用しても取付け孔に対するアンカーの保持力を維持する。
【解決手段】相手部材の取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、アンカー20が、軸線に沿って分割されているとともに、互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱22と、これらの支柱に個別に結合された弾性爪28とを備えている。アンカー20を相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪28を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカー20の保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱22を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用する。
【解決手段】相手部材の取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、アンカー20が、軸線に沿って分割されているとともに、互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱22と、これらの支柱に個別に結合された弾性爪28とを備えている。アンカー20を相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪28を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカー20の保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱22を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるボデーパネル等の相手部材に貫通して開けられている取付け孔に、アンカーを挿入して相手部材に取付けられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップには種々の形式のものがあり、アンカーの形状についても多岐にわたっている。すなわち、クリップの全体構造については、それによって相手部材に装着される対象物(装着部材)の種類や形状によって異なり、またアンカーの形状は相手部材の取付け孔に対する挿入荷重や保持力の要求値に応じて設定される。
しかしながら、アンカーの基本形状については概ね共通している。例えば、ボデーパネルにトリムボード等の装着部材を装着するクリップのアンカーは、支柱と、この支柱の先端部側から両側に張り出した弾性爪とを備えている。このアンカーを相手部材の取付け孔に挿入することにより、弾性爪が相手部材の裏面側において取付け孔の縁周辺に係合して保持力を発揮し、クリップが相手部材に取付けられる。
【0003】
メンテナンス等に際して相手部材から装着部材を取外す場合、アンカーにその保持力を超える抜去力を加え、取付け孔の縁周辺に対する弾性爪の係合を外してアンカーを取付け孔から抜き取る。これにより、クリップを繰り返し使用することができる。
なお、繰り返し使用するクリップの一例としては、特許文献1あるいは特許文献2に開示された技術が既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−25290号公報
【特許文献2】特開平11−93924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリップがポリアセタール(P0M)などの価格の割安な樹脂で成形されている場合、アンカーを相手部材の取付け孔から抜き取るときに弾性爪が取付け孔の縁によって削り取られる。このため、クリップを繰り返し使用すると、取付け孔に対するアンカーの保持力が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、アンカーを取付け孔から無理なく抜き取ることを可能とし、クリップを繰り返し使用しても取付け孔に対するアンカーの保持力を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
相手部材に貫通して開けられている取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、アンカーが、軸線に沿って分割されているとともに、個々の基端部側を支点として互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱と、これらの支柱に個別に結合されてそれぞれ外方へ張り出した弾性爪とを備えている。そしてアンカーを相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカーの保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用するように構成されている。
【0008】
好ましくは、アンカーを構成する支柱の少なくとも一方に、これらの支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに干渉する突部を設けることである。この突部は、支柱に作用する傾倒力が規定値を超えたときに干渉を乗り越える形状に設定される。
【0009】
より好ましくは、アンカーを構成する少なくとも一対の支柱を、それぞれが互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに破断される脆弱部によって相互に結合することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、相手部材の取付け孔に挿通させたアンカーに、その保持力を超える抜去力を加えることで、少なくとも一対の支柱が互いに交差する方向へ傾倒して取付け孔の縁周辺に対する弾性爪の係合が解除され、アンカーを取付け孔から無理なく抜き取ることができる。これにより、クリップがP0M材などの安価な樹脂で成形されていても、アンカーを抜き取るときに弾性爪が取付け孔の縁によって削り取られることがなく、クリップを繰り返し使用しても取付け孔に対するアンカーの保持力が維持される。
【0011】
また、支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに、これらの支柱に作用する傾倒力が規定値を超えるまでは突部の干渉によって支柱の傾倒を阻止することにより、アンカーを取付け孔から抜き取る場合でも、抜去荷重が要求値を超えるまではアンカーを相手部材の側に保持することができる。
【0012】
さらに、アンカーに加えられる抜去力に基づき、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用したときに破断が予定されている脆弱部によって支柱同士を結合したことにより、アンカーに抜去力が加えられるまでは支柱が傾倒する方向へ個別に動くのを規制し、クリップによって相手部材に装着されるトリムボード等の浮き上がり等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】クリップを表した斜視図。
【図2】クリップを表した正面図。
【図3】クリップを表した平面図。
【図4】クリップを一部断面で表した正面図。
【図5】クリップ挿入の初期状態を表した概略図。
【図6】クリップ挿入の途中状態を表した概略図。
【図7】クリップ挿入の完了状態を表した概略図。
【図8】クリップに抜去力を加える前の取付け状態を表した概略図。
【図9】クリップ抜去の第1段階を表した概略図。
【図10】クリップ抜去の第2段階を表した概略図。
【図11】クリップ抜去の第3段階を表した概略図。
【図12】クリップ抜去の最終段階を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面に示されているクリップ10は、P0Mなどの樹脂材による成形品で、その構造は基板12の下面側に位置する連結部16と、基板12の上面から突出したアンカー20とに大別される。なお、基板12の外周部分は、外方へ皿形状に張り出したスタビライザ14になっている。
【0015】
クリップ10の連結部16は、装着部材であるトリムボード等の座部(図示省略)に結合可能であり、それによってクリップ10がトリムボード側に組付けられる。この連結部16は、一対の鍔16a,16bが頸部16cを介して相対向した構成になっている。これらの鍔部16a,16bの間にトリムボード等の座部が入り込むことで、連結部16と座部とが結合されるのは周知のとおりである。
【0016】
クリップ10のアンカー20は、基板12の上面中心部(スタビライザ14の中心部)から上方向へ突出している。このアンカー20は、相手部材である自動車のボデーパネル30に貫通して開けられた取付け孔32に挿入可能である(図4〜図7)。アンカー20が取付け孔32に挿入された状態で保持されることにより、クリップ10によってパネル30にトリムボード等が装着される。なお、トリムボード等は、パネル30に開けられた複数の取付け孔32に複数個のクリップ10によって装着される。
【0017】
アンカー20は、軸線に沿って二つに分割された一対の支柱22と、両支柱22の外側にそれぞれ位置する一対の弾性爪28とを備えている。両支柱22は、それぞれの基端部22aが基板12と一体に結合されており、個々の先端部22bは自由端になっている。したがって、両支柱22は個々の基端部22aを支点として撓むことにより、個別に傾倒することが可能である。ただし、両支柱22の先端部22bは、破断が予定されたノッチ24によって互いに結合されており、両支柱22が個別に傾倒する方向へ動くのを規制している。なお、このノッチ24が本発明の「脆弱部」に相当する。
【0018】
両支柱22は、それぞれの断面形状がほぼ扇形になっている。そして、扇形の弧に相当する両支柱22の曲面が外側に向いており、そこに弾性爪28がそれぞれ位置している。また、扇形の一方の半径に相当する両支柱22の平坦な一側面22cは、基板12の直径に相当する直線に沿って位置している(図3)。なお、ノッチ24が破断された後の両支柱22は基板12の内方へ個別に傾倒可能であり、このときに個々の一側面22cは干渉することなく、互いにすれ違って交差するように設定されている。ただし、両支柱22の一側面22cには、両支柱22が傾倒し始めたときに一時的に干渉する突部26がそれぞれ設けられている。これらの突部26の機能については、後で説明する。
【0019】
一対の弾性爪28は、両支柱22の先端部22b側に個別に結合されて両側(外側)に張り出している。これらの弾性爪28は個々の先端が自由端になった、いわゆる「片持ち梁」の構造が採用されている(図4)。したがって、両弾性爪28は支柱22との結合部を支点として内外方向へ撓むことができる。両弾性爪28は、それぞれの自由端寄りにおいて係合面28aを備えている。アンカー20がパネル30の取付け孔32に挿入された状態においては、両弾性爪28の係合面28aが取付け孔32の縁周辺に係合する(図4および図7)。
【0020】
つづいて、クリップ10の使用について説明する。
前述のように、クリップ10はその連結部16を装着部材であるトリムボード等の座部(図示省略)に結合した後、アンカー20を相手部材であるパネル30の取付け孔32に挿入する。これにより、図5および図6で示すようにアンカー20の両弾性爪28が個々の支柱22との結合部を支点として内方向へ撓みながら取付け孔32を通過する。そして、図7で示すようにアンカー20の挿入が完了した状態では、パネル30の内側において両弾性爪28の係合面28aが取付け孔32の縁周辺に係合する。この係合によってパネル30に対するアンカー20(クリップ10)の保持力が得られ、パネル30に対してトリムボード等が装着状態に保持される。
【0021】
つぎに、パネル30からトリムボード等を取外す必要が生じた場合に、クリップ10のアンカー20をパネル30の取付け孔32から抜き取る手順について主に図8〜図12によって説明する。なお、図8〜図12において各図の(A)はクリップ10の縦断面外形をそれぞれ示し、各図の(B)は各図の(A)におけるX−X矢視方向の断面をそれぞれ示している。
図8で示すクリップ10の取付け状態(図7と同じ状態)において、アンカー20(クリップ10)にその保持力を超える抜去力が加えられると、パネル30側から両弾性爪28を通じて両支柱22の先端部22bを外方から内方へ押し撓める力が作用する。これにより、図9で示すように両支柱22がそれぞれ内方へ傾倒し始め、ノッチ24が破断されるとともに、両支柱22の一側面22cに設けられている突部26が干渉する。
【0022】
アンカー20に作用する抜去力、すなわち両支柱22に作用する傾倒力が規定値を超えると、図10で示すように突部26同士が乗り越え、その後の突部26は個々の斜面に沿って相互に通過していく(図11および図12)。つまり、抜去力(傾倒力)が規定値を超えるまではアンカー20はパネル30側に保持され、さらに大きな抜去力が加えられることで、図11および図12で示すように両支柱22が互いにすれ違って交差するように傾倒する。この結果、図12で示すように取付け孔32の縁周辺に対する両弾性爪28の係合が外れ、アンカー20をパネル30の取付け孔32から無理なく抜き取ることができる。したがって、両弾性爪28が取付け孔32の縁によって削り取られることがなく、クリップ10を繰り返し使用してもアンカー20の保持力が初期値のまま維持される。
【0023】
アンカー20を取付け孔32から一度抜き取るまでは、前述のように両支柱22はノッチ24で結合されて個別に動くことが規制されているので、トリムボード等がパネル30から浮き上がるなどの不具合は生じない。
また、前述のように両弾性爪28は個々の先端が自由端になった「片持ち梁」の構造であるため、取付け孔32に対し、その孔開けパンチ加工時に生じたバリ側からアンカー20を挿入する場合でも、挿入荷重が低く安定する。
【0024】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、アンカー20を構成する一対の支柱22および弾性爪28については、1個ずつで対をなす構成について説明したが、対をなす片方あるいは双方を2個以上にすることも可能である。また、両弾性爪28においては前述のように「片持ち梁」構造とすることが好ましいが、「片持ち梁」としての機能が要求されない場合には両弾性爪28の先端を基板12又は個々の支柱22と結合した「両持ち梁」構造、あるいは支柱22から一体に張り出した構造に代えてもよい。
両支柱22に作用する傾倒力が規定値を超えるまでは互いに干渉して両支柱22の傾倒を阻止する突部26の構造としては、片方の支柱22にのみ突部26を設け、この突部26を他方の支柱22に直接干渉させることも可能である。さらに、突部26が弾性によって撓みながら干渉する構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 クリップ
20 アンカー
22 支柱
22a 基端部
22b 先端部
28 弾性爪
30 パネル
32 取付け孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車におけるボデーパネル等の相手部材に貫通して開けられている取付け孔に、アンカーを挿入して相手部材に取付けられるクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のクリップには種々の形式のものがあり、アンカーの形状についても多岐にわたっている。すなわち、クリップの全体構造については、それによって相手部材に装着される対象物(装着部材)の種類や形状によって異なり、またアンカーの形状は相手部材の取付け孔に対する挿入荷重や保持力の要求値に応じて設定される。
しかしながら、アンカーの基本形状については概ね共通している。例えば、ボデーパネルにトリムボード等の装着部材を装着するクリップのアンカーは、支柱と、この支柱の先端部側から両側に張り出した弾性爪とを備えている。このアンカーを相手部材の取付け孔に挿入することにより、弾性爪が相手部材の裏面側において取付け孔の縁周辺に係合して保持力を発揮し、クリップが相手部材に取付けられる。
【0003】
メンテナンス等に際して相手部材から装着部材を取外す場合、アンカーにその保持力を超える抜去力を加え、取付け孔の縁周辺に対する弾性爪の係合を外してアンカーを取付け孔から抜き取る。これにより、クリップを繰り返し使用することができる。
なお、繰り返し使用するクリップの一例としては、特許文献1あるいは特許文献2に開示された技術が既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−25290号公報
【特許文献2】特開平11−93924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クリップがポリアセタール(P0M)などの価格の割安な樹脂で成形されている場合、アンカーを相手部材の取付け孔から抜き取るときに弾性爪が取付け孔の縁によって削り取られる。このため、クリップを繰り返し使用すると、取付け孔に対するアンカーの保持力が低下してしまう。
【0006】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、アンカーを取付け孔から無理なく抜き取ることを可能とし、クリップを繰り返し使用しても取付け孔に対するアンカーの保持力を維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するためのもので、以下のように構成されている。
相手部材に貫通して開けられている取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、アンカーが、軸線に沿って分割されているとともに、個々の基端部側を支点として互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱と、これらの支柱に個別に結合されてそれぞれ外方へ張り出した弾性爪とを備えている。そしてアンカーを相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカーの保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用するように構成されている。
【0008】
好ましくは、アンカーを構成する支柱の少なくとも一方に、これらの支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに干渉する突部を設けることである。この突部は、支柱に作用する傾倒力が規定値を超えたときに干渉を乗り越える形状に設定される。
【0009】
より好ましくは、アンカーを構成する少なくとも一対の支柱を、それぞれが互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに破断される脆弱部によって相互に結合することである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、相手部材の取付け孔に挿通させたアンカーに、その保持力を超える抜去力を加えることで、少なくとも一対の支柱が互いに交差する方向へ傾倒して取付け孔の縁周辺に対する弾性爪の係合が解除され、アンカーを取付け孔から無理なく抜き取ることができる。これにより、クリップがP0M材などの安価な樹脂で成形されていても、アンカーを抜き取るときに弾性爪が取付け孔の縁によって削り取られることがなく、クリップを繰り返し使用しても取付け孔に対するアンカーの保持力が維持される。
【0011】
また、支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに、これらの支柱に作用する傾倒力が規定値を超えるまでは突部の干渉によって支柱の傾倒を阻止することにより、アンカーを取付け孔から抜き取る場合でも、抜去荷重が要求値を超えるまではアンカーを相手部材の側に保持することができる。
【0012】
さらに、アンカーに加えられる抜去力に基づき、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用したときに破断が予定されている脆弱部によって支柱同士を結合したことにより、アンカーに抜去力が加えられるまでは支柱が傾倒する方向へ個別に動くのを規制し、クリップによって相手部材に装着されるトリムボード等の浮き上がり等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】クリップを表した斜視図。
【図2】クリップを表した正面図。
【図3】クリップを表した平面図。
【図4】クリップを一部断面で表した正面図。
【図5】クリップ挿入の初期状態を表した概略図。
【図6】クリップ挿入の途中状態を表した概略図。
【図7】クリップ挿入の完了状態を表した概略図。
【図8】クリップに抜去力を加える前の取付け状態を表した概略図。
【図9】クリップ抜去の第1段階を表した概略図。
【図10】クリップ抜去の第2段階を表した概略図。
【図11】クリップ抜去の第3段階を表した概略図。
【図12】クリップ抜去の最終段階を表した概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
図面に示されているクリップ10は、P0Mなどの樹脂材による成形品で、その構造は基板12の下面側に位置する連結部16と、基板12の上面から突出したアンカー20とに大別される。なお、基板12の外周部分は、外方へ皿形状に張り出したスタビライザ14になっている。
【0015】
クリップ10の連結部16は、装着部材であるトリムボード等の座部(図示省略)に結合可能であり、それによってクリップ10がトリムボード側に組付けられる。この連結部16は、一対の鍔16a,16bが頸部16cを介して相対向した構成になっている。これらの鍔部16a,16bの間にトリムボード等の座部が入り込むことで、連結部16と座部とが結合されるのは周知のとおりである。
【0016】
クリップ10のアンカー20は、基板12の上面中心部(スタビライザ14の中心部)から上方向へ突出している。このアンカー20は、相手部材である自動車のボデーパネル30に貫通して開けられた取付け孔32に挿入可能である(図4〜図7)。アンカー20が取付け孔32に挿入された状態で保持されることにより、クリップ10によってパネル30にトリムボード等が装着される。なお、トリムボード等は、パネル30に開けられた複数の取付け孔32に複数個のクリップ10によって装着される。
【0017】
アンカー20は、軸線に沿って二つに分割された一対の支柱22と、両支柱22の外側にそれぞれ位置する一対の弾性爪28とを備えている。両支柱22は、それぞれの基端部22aが基板12と一体に結合されており、個々の先端部22bは自由端になっている。したがって、両支柱22は個々の基端部22aを支点として撓むことにより、個別に傾倒することが可能である。ただし、両支柱22の先端部22bは、破断が予定されたノッチ24によって互いに結合されており、両支柱22が個別に傾倒する方向へ動くのを規制している。なお、このノッチ24が本発明の「脆弱部」に相当する。
【0018】
両支柱22は、それぞれの断面形状がほぼ扇形になっている。そして、扇形の弧に相当する両支柱22の曲面が外側に向いており、そこに弾性爪28がそれぞれ位置している。また、扇形の一方の半径に相当する両支柱22の平坦な一側面22cは、基板12の直径に相当する直線に沿って位置している(図3)。なお、ノッチ24が破断された後の両支柱22は基板12の内方へ個別に傾倒可能であり、このときに個々の一側面22cは干渉することなく、互いにすれ違って交差するように設定されている。ただし、両支柱22の一側面22cには、両支柱22が傾倒し始めたときに一時的に干渉する突部26がそれぞれ設けられている。これらの突部26の機能については、後で説明する。
【0019】
一対の弾性爪28は、両支柱22の先端部22b側に個別に結合されて両側(外側)に張り出している。これらの弾性爪28は個々の先端が自由端になった、いわゆる「片持ち梁」の構造が採用されている(図4)。したがって、両弾性爪28は支柱22との結合部を支点として内外方向へ撓むことができる。両弾性爪28は、それぞれの自由端寄りにおいて係合面28aを備えている。アンカー20がパネル30の取付け孔32に挿入された状態においては、両弾性爪28の係合面28aが取付け孔32の縁周辺に係合する(図4および図7)。
【0020】
つづいて、クリップ10の使用について説明する。
前述のように、クリップ10はその連結部16を装着部材であるトリムボード等の座部(図示省略)に結合した後、アンカー20を相手部材であるパネル30の取付け孔32に挿入する。これにより、図5および図6で示すようにアンカー20の両弾性爪28が個々の支柱22との結合部を支点として内方向へ撓みながら取付け孔32を通過する。そして、図7で示すようにアンカー20の挿入が完了した状態では、パネル30の内側において両弾性爪28の係合面28aが取付け孔32の縁周辺に係合する。この係合によってパネル30に対するアンカー20(クリップ10)の保持力が得られ、パネル30に対してトリムボード等が装着状態に保持される。
【0021】
つぎに、パネル30からトリムボード等を取外す必要が生じた場合に、クリップ10のアンカー20をパネル30の取付け孔32から抜き取る手順について主に図8〜図12によって説明する。なお、図8〜図12において各図の(A)はクリップ10の縦断面外形をそれぞれ示し、各図の(B)は各図の(A)におけるX−X矢視方向の断面をそれぞれ示している。
図8で示すクリップ10の取付け状態(図7と同じ状態)において、アンカー20(クリップ10)にその保持力を超える抜去力が加えられると、パネル30側から両弾性爪28を通じて両支柱22の先端部22bを外方から内方へ押し撓める力が作用する。これにより、図9で示すように両支柱22がそれぞれ内方へ傾倒し始め、ノッチ24が破断されるとともに、両支柱22の一側面22cに設けられている突部26が干渉する。
【0022】
アンカー20に作用する抜去力、すなわち両支柱22に作用する傾倒力が規定値を超えると、図10で示すように突部26同士が乗り越え、その後の突部26は個々の斜面に沿って相互に通過していく(図11および図12)。つまり、抜去力(傾倒力)が規定値を超えるまではアンカー20はパネル30側に保持され、さらに大きな抜去力が加えられることで、図11および図12で示すように両支柱22が互いにすれ違って交差するように傾倒する。この結果、図12で示すように取付け孔32の縁周辺に対する両弾性爪28の係合が外れ、アンカー20をパネル30の取付け孔32から無理なく抜き取ることができる。したがって、両弾性爪28が取付け孔32の縁によって削り取られることがなく、クリップ10を繰り返し使用してもアンカー20の保持力が初期値のまま維持される。
【0023】
アンカー20を取付け孔32から一度抜き取るまでは、前述のように両支柱22はノッチ24で結合されて個別に動くことが規制されているので、トリムボード等がパネル30から浮き上がるなどの不具合は生じない。
また、前述のように両弾性爪28は個々の先端が自由端になった「片持ち梁」の構造であるため、取付け孔32に対し、その孔開けパンチ加工時に生じたバリ側からアンカー20を挿入する場合でも、挿入荷重が低く安定する。
【0024】
以上は本発明を実施するための最良の形態を図面に関連して説明したが、この実施の形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で容易に変更または変形できるものである。
例えば、アンカー20を構成する一対の支柱22および弾性爪28については、1個ずつで対をなす構成について説明したが、対をなす片方あるいは双方を2個以上にすることも可能である。また、両弾性爪28においては前述のように「片持ち梁」構造とすることが好ましいが、「片持ち梁」としての機能が要求されない場合には両弾性爪28の先端を基板12又は個々の支柱22と結合した「両持ち梁」構造、あるいは支柱22から一体に張り出した構造に代えてもよい。
両支柱22に作用する傾倒力が規定値を超えるまでは互いに干渉して両支柱22の傾倒を阻止する突部26の構造としては、片方の支柱22にのみ突部26を設け、この突部26を他方の支柱22に直接干渉させることも可能である。さらに、突部26が弾性によって撓みながら干渉する構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
10 クリップ
20 アンカー
22 支柱
22a 基端部
22b 先端部
28 弾性爪
30 パネル
32 取付け孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手部材に貫通して開けられている取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、
アンカーが、軸線に沿って分割されているとともに、個々の基端部側を支点として互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱と、これらの支柱に個別に結合されてそれぞれ外方へ張り出した弾性爪とを備え、アンカーを相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカーの保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用するように構成されているクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたクリップであって、
アンカーを構成する支柱の少なくとも一方に、これらの支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに干渉する突部が設けられ、この突部は、支柱に作用する傾倒力が規定値を超えたときに干渉を乗り越える形状に設定されているクリップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたクリップであって、
アンカーを構成する少なくとも一対の支柱は、それぞれが互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに破断される脆弱部によって相互に結合されているクリップ。
【請求項1】
相手部材に貫通して開けられている取付け孔にアンカーを挿入することで、この相手部材に取付けられるクリップであって、
アンカーが、軸線に沿って分割されているとともに、個々の基端部側を支点として互いに交差する方向へ傾倒可能な少なくとも一対の支柱と、これらの支柱に個別に結合されてそれぞれ外方へ張り出した弾性爪とを備え、アンカーを相手部材の取付け孔に挿入して弾性爪を取付け孔の縁周辺に係合させることで、相手部材に対するアンカーの保持力が得られ、アンカーに保持力を超える抜去力が加えられると、支柱を互いに交差する方向へ傾倒させる力が作用するように構成されているクリップ。
【請求項2】
請求項1に記載されたクリップであって、
アンカーを構成する支柱の少なくとも一方に、これらの支柱が互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに干渉する突部が設けられ、この突部は、支柱に作用する傾倒力が規定値を超えたときに干渉を乗り越える形状に設定されているクリップ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたクリップであって、
アンカーを構成する少なくとも一対の支柱は、それぞれが互いに交差する方向へ傾倒し始めたときに破断される脆弱部によって相互に結合されているクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−112464(P2012−112464A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262450(P2010−262450)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】
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