クリップ
【課題】シート状の被挟持物を簡単に挟持したり取り外したりすることが可能で、かつ、使用中に被挟持物が外れ難く、所望の場所に様々な形態で簡単に取り付けることができるクリップを提供する。
【解決手段】一対の挟持部材を備え、各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、挟持部材のうちの一方の挟持部材には挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、他方の挟持部材の挟持面側には、相手側の挟持部材の楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、楔片部を抱持枠内に押し込むことで抱持枠によって楔片部を他方の挟持部材側に押圧させて両挟持部材によって被挟持物を挟みつける。
【解決手段】一対の挟持部材を備え、各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、挟持部材のうちの一方の挟持部材には挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、他方の挟持部材の挟持面側には、相手側の挟持部材の楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、楔片部を抱持枠内に押し込むことで抱持枠によって楔片部を他方の挟持部材側に押圧させて両挟持部材によって被挟持物を挟みつける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の展示物やバナー等の端部を挟持して所望の場所に取り付けるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、垂れ幕や旗、テント、タープ、ポスター等のシート状のものを所望の場所に設置する場合には、従来、ハトメや鋲を使用したり、端部を袋とじにしてパイプを通し、パイプの両端を固定する等の方法が取られてきた。しかし、ハトメや鋲を使用する方法では、シート状物に孔を空けなければならない。また、端部を袋とじにする作業は手間がかかり、利便性がよくない。
【0003】
一方、例えば洗濯バサミのようなバネ弾性を利用した汎用のクリップを使用してシート状物の端部を挟持し、そのクリップを固定することも考えられるが、従来のクリップでは、例えばシート状物を張ろうとして引っ張ったり、シート状物が風であおられることにより挟持部が外れてしまい、使用箇所によっては危険な場合がある。逆に、挟持部を外れ難くするためにクリップの挟持力(バネ弾性等)を強く設定すると、今度は設置したり取り外したりする作業に力を要し、作業性が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−178217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シート状の被挟持物を簡単に挟持したり取り外したりすることが可能で、かつ、使用中に被挟持物が外れ難く、所望の場所に様々な形態で簡単に取り付けることができるクリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、一対の挟持部材を備え、前記各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、前記挟持部材のうちの一方の挟持部材には前記挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、他方の前記挟持部材の前記挟持面側には、相手側の前記挟持部材の前記楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、前記楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、前記挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、前記楔片部を前記抱持枠内に押し込むことで前記抱持枠によって前記楔片部を前記他方の挟持部材側に押圧させて前記両挟持部材によって前記被挟持物を挟みつけるところに特徴を有する。
【0007】
上記本発明によれば、シート状の被挟持物を挟持する際には、一対の挟持部材をそれらの挟持面が互いに対向する方向に配置し、どちらか一方の挟持部材の挟持面上に被挟持物を載置した上で、一方の挟持部材の楔片部が他方の挟持部材の抱持枠内に挿入されるように両挟持部材を相対的に移動させる。この時、楔片部は厚さの薄い先端側から抱持枠内に挿入されるから、挿入開始時には、楔片部は抱持枠内である程度のクリアランスを有しており、スムーズに挿入される。そして、楔片部が抱持枠の奥方に挿入されるにつれて、楔片部のうち厚みが厚い基部側が抱持枠内に位置することとなり、これにより、互いの挟持部材が正規の姿勢に誘導されつつ挟持面が徐々に締め付けられて、一対の挟持部材(挟持面)の間に被挟持物がしっかりと挟持されることとなる。
【0008】
このように、本発明のクリップによれば、どちらか一方の挟持部材の挟持面上に被挟持物を載置し、楔片部を抱持枠内に挿入するように両挟持部材を移動させるという簡単な作業により、被挟持物を一対の挟持部材の間にしっかりと挟持させることができる。
【0009】
また、一方の挟持部材にこれを固定箇所に固定するための被固定部を設け、他方の挟持部材の挟持面に粗面部を設けた場合には、被挟持物が挟持された状態において、もし被挟持物に挟持面から引き抜かれる方向の力が作用した場合でも、被挟持物が引き抜かれ難くなる。
【0010】
すなわち、被挟持物に引き抜かれる方向の力が作用した場合、被挟持物は、粗面部が設けられた摩擦係数の大きい他方の挟持部材とともに力が作用する方向に引っ張られる。しかし、一方の挟持部材は被固定部により固定箇所に固定されており、楔片部のうち他方の挟持部材と対向する面の反対側の面は傾斜面とされて基部側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物が引っ張られれば引っ張られるほど、すなわち、被挟持物とともに他方の挟持部材が引っ張られるほど、抱持枠内により厚みが厚い楔片部の基部側を引き込むこととなる。これにより、互いの挟持部材がより強く締め付けられることとなり、被挟持物を挟持する力が増して、被挟持物はますます引き抜かれ難くなる。
【0011】
このように、本発明のクリップによれば、被挟持物に対して、挟持面から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、被挟持物がクリップから簡単に外れることはない。
【0012】
また、被固定部には吸盤や磁石、紐等を取り付けたり、直接フックに引っ掛けたりすることが可能であり、クリップを所望の箇所に適宜の形態で取り付けることが可能である。
【0013】
また、一対の挟持部材のうちいずれか一方に、相手側の挟持部材に当接可能な突部を挟持面とは反対側の端部付近に形成しておくことにより、一対の挟持部材が被挟持物を挟持した状態において、挟持面とは反対側の端部がその突部により相手側の挟持部材と引き離されることとなる。すなわち、対向する挟持面がより強く押し付け合うこととなり、被挟持物をより抜け難くすることができる。
【0014】
また、楔片部を、抱持枠に押圧されたときに他方の挟持部材側に撓み変形可能となるように他方の挟持部材から離れて設けることにより、楔片部が他方の挟持部材との間の空間内に撓んだ場合に弾発力を有し、一対の挟持部材がより強く押圧し合うこととなる。ひいては、被挟持物に対する挟持力がより強く、安定したものとなる。
【0015】
このような本発明のクリップを被挟持物から取り外したい場合には、楔片部を抱持枠内から引き抜く方向に一対の挟持部材を相対的に移動させるだけで、簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明のクリップによれば、楔片部を抱持枠内に挿入したり後退させたりする操作、すなわち、一対の挟持部材をスライドさせるという簡単な操作で、シート状の被挟持物を簡単に挟持したり取り外したりすることが可能である。しかも、被挟持物に引き抜かれる方向の力がかかった場合でも、その力が大きければ大きいほど挟持力が増大する構成であるので、被挟持物は外れ難い。さらに、必要に応じて被固定部に吸盤やフック、紐等を使用することができるので、用途に応じで様々な形態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1のクリップの分解斜視図
【図2】同じく平面図
【図3】同じく下面図
【図4】同じく第2の挟持部材の斜視図
【図5】同じくクリップの分解側面図
【図6】同じくクリップの分解の正面図
【図7】同じく楔片部を抱持枠内に挿入途中の側断面図
【図8】同じく被挟持物を挟持した状態の側断面図
【図9】同じくクリップを吸着面に取り付けた状態を示す側断面図
【図10】同じくクリップを組み合わせた状態の下面図
【図11】同じくクリップを組み合わせた状態の側面図
【図12】同じくクリップを組み合わせた状態の正面図
【図13】同じくクリップの一使用例を示す平面図
【図14】本発明の実施形態2のクリップの第1の挟持部材の平面図
【図15】同じくクリップの第1の挟持部材の側面図
【図16】同じくクリップの第2の挟持部材の平面図
【図17】同じくクリップの第2の挟持部材の側面図
【図18】同じく被挟持物を挟持した状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
図1は本実施形態のクリップの分解斜視図、図2はその平面図、図3は下面図である。このクリップ10は、ほぼ同等の大きさの略矩形をなす一対の挟持部材11,21を組み合わせてなり、図13に示すように、例えばポスター等のシート状の被挟持物Pの四隅に取り付けてガラス等の平滑面に固定する場合に用いられる。
【0019】
このうち、図1中上側に示す一方の挟持部材(以下第1の挟持部材とする)11の一端側には、後述する第2の挟持部材21との間で被挟持物Pを挟持するための平坦な挟持面12が設けられており、その挟持面12の両側部から一対の略L字型の受け片14,14が挟持面12と面一に、かつ、互いに並行するように延設されている。またこの一対の受け片14,14の間には、挟持面12から挟持部材11の厚み方向に後退するように段差をつけて、かつ、挟持面12と平行に延びる楔片部13が、一対の受け片14,14と所定の距離を介して設けられている。なおこの楔片部13は、その基部側13Aの厚みが先端側13Bの厚みよりも厚くなるように、挟持面12側の面とは反対側の面が傾斜面13Cとされている(図7参照)。また、楔片部13の先端側13Bには、後述する吸盤Sを取り付けるための孔部15(本発明の被固定部に相当)が設けられている。
【0020】
さらに、挟持面12の裏面には、図3および図7に示すように、一対の挟持部材11,21を組み合わせる際に楔片部13を後述する抱持枠24内に押し込むための押圧部16が、挟持面12とは垂直方向の面を有するように形成されている。この押圧部16は、図7に示すように、楔片部13の付け根から立ち上がり状態とされており、その高さは、一対の挟持部材11,21が組み合わされた場合に後述する抱持枠24の外面高さより若干高くなるように設定されている(図9参照)。
【0021】
一方、図1中下側に示す他方の挟持部材(以下第2の挟持部材とする)21のうち上述した第1の挟持部材11の挟持面12と対向する部分は、図4の斜視図に示すように、多数の角錐状の滑止突起23(本発明の粗面部に相当)を備えた挟持面22とされるとともに、この第2の挟持部材21の長手方向の中央付近には、上述した第1の挟持部材11の楔片部13を受け入れるための抱持枠24が、挟持面22側の面からコ字状に立ち上がるように設けられている。この抱持枠24の内面側の高さは、その内部に楔片部13が挿入されて両挟持部材11,21が組み合わされた場合に、この抱持枠24内に位置する楔片部13の外面のうち基部13A側の端部と摺接する高さとなるように設定されている(図8および図9参照)。なお、この抱持枠24は、楔片部13に後述する吸盤Sを取り付ける場合にその吸盤Sを逃がすために、その付け根部分から頂部に向けて斜めに切り欠かれた形状とされている(図8および図10参照)。
【0022】
さらに図4に示すように、第2の挟持部材21の挟持面22を含む面のうち、その長手方向において挟持面22とは反対側の両端部付近には、一対の突部25,25が設けられている。この突部25の高さは、上述した滑止突起23の高さとほぼ同等に設定されている(図6参照)。
【0023】
上述した本実施形態のクリップ10を使用する場合には、まず、例えば図7に示すように、被挟持物Pの端部を第1の挟持部材11の平坦な挟持面12上に載置するとともに、第2の挟持部材21の挟持面22側の端部と、第1の挟持部材11の楔片部13の先端とを相対的に近づけ、第1の挟持部材11の押圧部16を押圧しながら楔片部13を第2の挟持部材21の抱持枠24内にスライドさせるように挿入する。この挿入開始時には、楔片部13のうち厚さが薄い先端部13Bが抱持枠24内に位置しており、楔片部13の外面(図7中下面)と抱持枠24の内面との間にはある程度のクリアランスがある状態なので、第2の挟持部材21を、その挟持面22側の先端部が第1の挟持部材11から若干浮き上がるよう傾いた状態としておくことにより、滑止突起23が被挟持物Pに引っかかることなく、楔片部13を抱持枠24内に挿入することができる。楔片部13が抱持枠24の奥方に挿入されるにつれて、楔片部13のうち厚みが厚い基部13A側が抱持枠24内に位置するようになるので、楔片部13の外面が抱持枠24の内面を徐々に押し下げることとなり、すなわち、第2の挟持部材21を第1の挟持部材11側に引き寄せることとなり、第2の挟持部材21は傾いた状態から正規姿勢に誘導される。
【0024】
そして、図8に示すように、第1および第2の挟持部材11,21が組み合わせ状態となると、抱持枠24内に位置する楔片部13の基部13A側の端部外面が抱持枠24の内面と摺接した状態となるとともに、第1および第2の挟持部材11,21の対向する挟持面12,22により被挟持物Pがしっかりと挟持された状態となる。またこの時、第2の挟持部材21の端部に設けられた一対の突部25,25が第1の挟持部材11の一対の受け片14,14の先端付近に当接することにより、第1および第2の挟持部材11,21のうち挟持面12,22とは反対側の端部が互いに離れた状態に保たれる。すなわち、挟持面12,22がより強く押圧し合うこととなり、被挟持物Pがよりしっかりと挟持された状態となる。
【0025】
このように被挟持物Pが挟持面12,22間に挟持された状態となったら、吸盤Sの係止部を楔片部13の孔部15に挿入するとともに楔片部13の先端方向にスライドさせて抜け止め状態とし、図9に示すように被吸着面Wに吸着させてクリップ10を固定する。なおこの状態で、押圧部16の端部側面16Aが被吸着面Wと当接するように予め設定しておくことにより、被吸着面Wに吸着したクリップ10が使用中に傾くことが防止され、被挟持物Pを安定した状態で固定することができる。
【0026】
またこの状態において、仮に被挟持物Pがクリップ10から抜ける方向の力(図9のAの方向の力)を受けた場合でも、本実施形態のクリップ10によれば、被挟持物Pが簡単に抜けてしまうことがない。すなわち、第2の挟持部材21の挟持面22には滑止突起23が形成されているため、被挟持物Pは摩擦係数の大きい第2の挟持部材21とともにAの方向に引っ張られるが、第1の挟持部材11は被吸着面Wに固定されており、楔片部13の外側の面は傾斜面13Cとされて基部13A側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物Pおよび第2の挟持部材21がAの方向に引っ張られるほど、抱持枠24内により厚みが厚い楔片部13の基部13A側を引き込むこととなる。しかも、楔片部13は抱持枠24内に強く引き込まれることにより第2の挟持部材21との間の空間内に撓むから、その弾発力よって互いの挟持部材11,21がより強く締め付けられることとなり、被挟持物Pを挟持する力が増して、被挟持物Pはますます引き抜かれ難くなる。
【0027】
このように、本実施形態のクリップ10によれば、一対の挟持部材11,31をスライドさせるという簡単な作業により、被挟持物Pに対してクリップ10取り付けることが可能である。また、被挟持物Pに対して挟持面12,22から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、クリップ10から簡単に外れることはない。
【0028】
また被挟持物Pからクリップ10を外す場合には、楔片部13を抱持枠24から引き抜く方向の力を加えて一対の挟持部材11,21をスライドさせればよく、取り外し作業も簡単である。
【0029】
<実施形態2>
本発明の実施形態2のクリップ30を図14ないし図18によって説明する。
図14は本実施形態のクリップ30の第1の挟持部材31の平面図、図15は同じく第1の挟持部材31の側面図、図16は同じく第2の挟持部材41の平面図、図17は同じく第2の挟持部材41の側面図、図18は同じく被挟持物Pを挟持した状態の側面図である。
【0030】
このクリップ30は、ほぼ同等の大きさの略ひし形の一対の挟持部材31,41を組み合わせてなり、図18に示すように、バナー等の被挟持物Pの端部に取り付けてフックFに引っ掛けて使用する。
【0031】
図14および図15に示す第1の挟持部材31は、後述する第2の挟持部材41と対向する面が平坦面とされて、図中下側が挟持面32とされるとともに、図中上側が細長く矩形に延びる形状とされて、楔片部33とされている。この楔片部33のうち、挟持面32側の面とは反対側の面は、基部側33Aの厚みが先端側33Bの厚みよりも厚くなるように、傾斜面33Cとされている(図15参照)。また、楔片部33の先端13B付近には、フックFに引っ掛けるための孔部34(本発明の被固定部に相当)が設けられている。
【0032】
一方、図16および図17に示す第2の挟持部材41のうち上述した第1の挟持部材31の挟持面32と対向する部分は、多数の横溝43(本発明の粗面部に相当)が形成された挟持面42とされるとともに、この第2の挟持部材41の長手方向の中央付近には、上述した第1の挟持部材31の楔片部33を受け入れるためのコ字形状の抱持枠44が、挟持面42側の面から立ち上がるように設けられている。この抱持枠44の内面は、その中に楔片部33が挿入され両挟持部材31,41が組み合わされた場合に、この抱持枠24内に位置する楔片部13の外面がぴったり摺接する形状とされている(図17および図18参照)。またこの第2の挟持部材41の上端部付近には、フックFに引っ掛けるための縦長の長孔部45が設けられている。この長孔部45は、一対の挟持部材31,41が組み合わされた場合に、第1の挟持部材31の孔部34と連なる位置に形成されている。
【0033】
上述した本実施形態のクリップ30を使用する場合には、被挟持物Pの端部を例えば第2の挟持部材41の挟持面42上に載置するとともに、第2の挟持部材41の挟持面42側の端部と、第1の挟持部材31の楔片部33の先端とを相対的に近づけ、楔片部33を第2の挟持部材41の抱持枠44内にスライドさせるように奥方まで挿入する。第1および第2の挟持部材31,41が組み合わされると、抱持枠44内に位置する楔片部33の外面が抱持枠44の内面とぴったり摺接した状態となるとともに、第1および第2の挟持部材31,41の対向する挟持面32,42により被挟持物Pがしっかりと挟持された状態となる。
【0034】
この状態において、第1の挟持部材31の孔部34と第2の挟持部材41の長孔部45とは連なった状態となっているから、この連なり部分をフックFに引っ掛けてクリップ30を固定する(図18参照)。
【0035】
この状態において、仮に被挟持物Pがクリップ30から抜ける方向の力(図18のAの方向の力)を受けた場合、第2の挟持部材41の挟持面42には多数の横溝43が形成されているため、被挟持物Pは摩擦係数の大きい第2の挟持部材41とともにAの方向に引っ張られるが、第1の挟持部材31の楔片部33は基部33A側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物Pおよび第2の挟持部材41がAの方向に引っ張られるほど、抱持枠44内により厚みが厚い楔片部33の基部33A側を引き込むこととなる。すなわち、互いの挟持部材31,41がより強く締め付けられることとなり、被挟持物Pを挟持する力が増して、被挟持物Pはますます引き抜かれ難くなる。
【0036】
このように、本実施形態のクリップ30によっても、バナー等の被挟持物Pに対して簡単に取り付けることが可能であり、しかも、挟持面32,42から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、被挟持物Pがクリップ30から簡単に外れることはない。
【0037】
また、被挟持物Pからクリップ30を外す場合には、楔片部33を抱持枠44から引き抜く方向に一対の挟持部材31,41をスライドさせればよく、取り外し作業も簡単である。
【0038】
さらに、孔部34および長孔部45の連なり部分には、フックFに限らず紐やベルト等を取り付けることも可能であり、用途に応じて様々な形態で固定することが可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態1では、クリップ10をポスター等のシート状の被挟持物Pの四隅に取り付けて吸盤Sによりガラス等の平滑面に固定する例を示したが、上記実施形態に限るものではなく、被挟持物は垂れ幕や旗、テント、タープ等シート状のものであればよく、また固定方法も吸盤に限らず、クリップ10をフックに引っ掛けたり、紐やベルト、磁石等を利用して所望の場所に取り付けることができる。実施形態2のクリップ30も同様である。
【0040】
(2)上記実施形態1では、他方の挟持部材21の挟持面22に、粗面部として多数の角錐状の滑止突起23を設ける構成とし、第2実施形態では、横溝43を設ける構成としたが、例えば円錐状の突起を設けたり、格子溝を設ける等、他の態様としてもよく、要は、挟持面と被挟持物Pとの摩擦係数が大きくなる構成であればどのような構成でもよい。
【0041】
(3)また、このような粗面部や、一方の挟持部材の被固定部は、必ずしも設けなくてもよい。
【0042】
(4)上記実施形態1では、第2の挟持部材21に突部25を設ける構成としたが、第1の挟持部材41に突部を設け、第2の挟持部材21で受ける構成としてもよい。また、突部は一対でなくてもひとつ、あるいは3つ以上でもよく、必ずしも設けなくてもよい。
【0043】
(5)上記実施形態では抱持枠をコ字状としたが、一対のL字状や、単なるL字状等としてもよく、要は、楔片部を挿入して押さえ込み可能な構成であればどのような構成でもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、30…クリップ
11、21…第1の挟持部材
12、22…挟持面
13、33…楔片部
13C、33C…傾斜面
14…受け片
15…孔部(被固定部)
16…押圧部
21、41…第2の挟持部材
22、42…挟持面
23…滑止突起(粗面部)
24、44…抱持枠
25…突部
34…孔部(被固定部)
45…長孔部
P…被挟持物
S…吸盤
W…被吸着面
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の展示物やバナー等の端部を挟持して所望の場所に取り付けるためのクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、垂れ幕や旗、テント、タープ、ポスター等のシート状のものを所望の場所に設置する場合には、従来、ハトメや鋲を使用したり、端部を袋とじにしてパイプを通し、パイプの両端を固定する等の方法が取られてきた。しかし、ハトメや鋲を使用する方法では、シート状物に孔を空けなければならない。また、端部を袋とじにする作業は手間がかかり、利便性がよくない。
【0003】
一方、例えば洗濯バサミのようなバネ弾性を利用した汎用のクリップを使用してシート状物の端部を挟持し、そのクリップを固定することも考えられるが、従来のクリップでは、例えばシート状物を張ろうとして引っ張ったり、シート状物が風であおられることにより挟持部が外れてしまい、使用箇所によっては危険な場合がある。逆に、挟持部を外れ難くするためにクリップの挟持力(バネ弾性等)を強く設定すると、今度は設置したり取り外したりする作業に力を要し、作業性が悪くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−178217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シート状の被挟持物を簡単に挟持したり取り外したりすることが可能で、かつ、使用中に被挟持物が外れ難く、所望の場所に様々な形態で簡単に取り付けることができるクリップを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明は、一対の挟持部材を備え、前記各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、前記挟持部材のうちの一方の挟持部材には前記挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、他方の前記挟持部材の前記挟持面側には、相手側の前記挟持部材の前記楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、前記楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、前記挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、前記楔片部を前記抱持枠内に押し込むことで前記抱持枠によって前記楔片部を前記他方の挟持部材側に押圧させて前記両挟持部材によって前記被挟持物を挟みつけるところに特徴を有する。
【0007】
上記本発明によれば、シート状の被挟持物を挟持する際には、一対の挟持部材をそれらの挟持面が互いに対向する方向に配置し、どちらか一方の挟持部材の挟持面上に被挟持物を載置した上で、一方の挟持部材の楔片部が他方の挟持部材の抱持枠内に挿入されるように両挟持部材を相対的に移動させる。この時、楔片部は厚さの薄い先端側から抱持枠内に挿入されるから、挿入開始時には、楔片部は抱持枠内である程度のクリアランスを有しており、スムーズに挿入される。そして、楔片部が抱持枠の奥方に挿入されるにつれて、楔片部のうち厚みが厚い基部側が抱持枠内に位置することとなり、これにより、互いの挟持部材が正規の姿勢に誘導されつつ挟持面が徐々に締め付けられて、一対の挟持部材(挟持面)の間に被挟持物がしっかりと挟持されることとなる。
【0008】
このように、本発明のクリップによれば、どちらか一方の挟持部材の挟持面上に被挟持物を載置し、楔片部を抱持枠内に挿入するように両挟持部材を移動させるという簡単な作業により、被挟持物を一対の挟持部材の間にしっかりと挟持させることができる。
【0009】
また、一方の挟持部材にこれを固定箇所に固定するための被固定部を設け、他方の挟持部材の挟持面に粗面部を設けた場合には、被挟持物が挟持された状態において、もし被挟持物に挟持面から引き抜かれる方向の力が作用した場合でも、被挟持物が引き抜かれ難くなる。
【0010】
すなわち、被挟持物に引き抜かれる方向の力が作用した場合、被挟持物は、粗面部が設けられた摩擦係数の大きい他方の挟持部材とともに力が作用する方向に引っ張られる。しかし、一方の挟持部材は被固定部により固定箇所に固定されており、楔片部のうち他方の挟持部材と対向する面の反対側の面は傾斜面とされて基部側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物が引っ張られれば引っ張られるほど、すなわち、被挟持物とともに他方の挟持部材が引っ張られるほど、抱持枠内により厚みが厚い楔片部の基部側を引き込むこととなる。これにより、互いの挟持部材がより強く締め付けられることとなり、被挟持物を挟持する力が増して、被挟持物はますます引き抜かれ難くなる。
【0011】
このように、本発明のクリップによれば、被挟持物に対して、挟持面から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、被挟持物がクリップから簡単に外れることはない。
【0012】
また、被固定部には吸盤や磁石、紐等を取り付けたり、直接フックに引っ掛けたりすることが可能であり、クリップを所望の箇所に適宜の形態で取り付けることが可能である。
【0013】
また、一対の挟持部材のうちいずれか一方に、相手側の挟持部材に当接可能な突部を挟持面とは反対側の端部付近に形成しておくことにより、一対の挟持部材が被挟持物を挟持した状態において、挟持面とは反対側の端部がその突部により相手側の挟持部材と引き離されることとなる。すなわち、対向する挟持面がより強く押し付け合うこととなり、被挟持物をより抜け難くすることができる。
【0014】
また、楔片部を、抱持枠に押圧されたときに他方の挟持部材側に撓み変形可能となるように他方の挟持部材から離れて設けることにより、楔片部が他方の挟持部材との間の空間内に撓んだ場合に弾発力を有し、一対の挟持部材がより強く押圧し合うこととなる。ひいては、被挟持物に対する挟持力がより強く、安定したものとなる。
【0015】
このような本発明のクリップを被挟持物から取り外したい場合には、楔片部を抱持枠内から引き抜く方向に一対の挟持部材を相対的に移動させるだけで、簡単に取り外すことができる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明のクリップによれば、楔片部を抱持枠内に挿入したり後退させたりする操作、すなわち、一対の挟持部材をスライドさせるという簡単な操作で、シート状の被挟持物を簡単に挟持したり取り外したりすることが可能である。しかも、被挟持物に引き抜かれる方向の力がかかった場合でも、その力が大きければ大きいほど挟持力が増大する構成であるので、被挟持物は外れ難い。さらに、必要に応じて被固定部に吸盤やフック、紐等を使用することができるので、用途に応じで様々な形態で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1のクリップの分解斜視図
【図2】同じく平面図
【図3】同じく下面図
【図4】同じく第2の挟持部材の斜視図
【図5】同じくクリップの分解側面図
【図6】同じくクリップの分解の正面図
【図7】同じく楔片部を抱持枠内に挿入途中の側断面図
【図8】同じく被挟持物を挟持した状態の側断面図
【図9】同じくクリップを吸着面に取り付けた状態を示す側断面図
【図10】同じくクリップを組み合わせた状態の下面図
【図11】同じくクリップを組み合わせた状態の側面図
【図12】同じくクリップを組み合わせた状態の正面図
【図13】同じくクリップの一使用例を示す平面図
【図14】本発明の実施形態2のクリップの第1の挟持部材の平面図
【図15】同じくクリップの第1の挟持部材の側面図
【図16】同じくクリップの第2の挟持部材の平面図
【図17】同じくクリップの第2の挟持部材の側面図
【図18】同じく被挟持物を挟持した状態の側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図13によって説明する。
図1は本実施形態のクリップの分解斜視図、図2はその平面図、図3は下面図である。このクリップ10は、ほぼ同等の大きさの略矩形をなす一対の挟持部材11,21を組み合わせてなり、図13に示すように、例えばポスター等のシート状の被挟持物Pの四隅に取り付けてガラス等の平滑面に固定する場合に用いられる。
【0019】
このうち、図1中上側に示す一方の挟持部材(以下第1の挟持部材とする)11の一端側には、後述する第2の挟持部材21との間で被挟持物Pを挟持するための平坦な挟持面12が設けられており、その挟持面12の両側部から一対の略L字型の受け片14,14が挟持面12と面一に、かつ、互いに並行するように延設されている。またこの一対の受け片14,14の間には、挟持面12から挟持部材11の厚み方向に後退するように段差をつけて、かつ、挟持面12と平行に延びる楔片部13が、一対の受け片14,14と所定の距離を介して設けられている。なおこの楔片部13は、その基部側13Aの厚みが先端側13Bの厚みよりも厚くなるように、挟持面12側の面とは反対側の面が傾斜面13Cとされている(図7参照)。また、楔片部13の先端側13Bには、後述する吸盤Sを取り付けるための孔部15(本発明の被固定部に相当)が設けられている。
【0020】
さらに、挟持面12の裏面には、図3および図7に示すように、一対の挟持部材11,21を組み合わせる際に楔片部13を後述する抱持枠24内に押し込むための押圧部16が、挟持面12とは垂直方向の面を有するように形成されている。この押圧部16は、図7に示すように、楔片部13の付け根から立ち上がり状態とされており、その高さは、一対の挟持部材11,21が組み合わされた場合に後述する抱持枠24の外面高さより若干高くなるように設定されている(図9参照)。
【0021】
一方、図1中下側に示す他方の挟持部材(以下第2の挟持部材とする)21のうち上述した第1の挟持部材11の挟持面12と対向する部分は、図4の斜視図に示すように、多数の角錐状の滑止突起23(本発明の粗面部に相当)を備えた挟持面22とされるとともに、この第2の挟持部材21の長手方向の中央付近には、上述した第1の挟持部材11の楔片部13を受け入れるための抱持枠24が、挟持面22側の面からコ字状に立ち上がるように設けられている。この抱持枠24の内面側の高さは、その内部に楔片部13が挿入されて両挟持部材11,21が組み合わされた場合に、この抱持枠24内に位置する楔片部13の外面のうち基部13A側の端部と摺接する高さとなるように設定されている(図8および図9参照)。なお、この抱持枠24は、楔片部13に後述する吸盤Sを取り付ける場合にその吸盤Sを逃がすために、その付け根部分から頂部に向けて斜めに切り欠かれた形状とされている(図8および図10参照)。
【0022】
さらに図4に示すように、第2の挟持部材21の挟持面22を含む面のうち、その長手方向において挟持面22とは反対側の両端部付近には、一対の突部25,25が設けられている。この突部25の高さは、上述した滑止突起23の高さとほぼ同等に設定されている(図6参照)。
【0023】
上述した本実施形態のクリップ10を使用する場合には、まず、例えば図7に示すように、被挟持物Pの端部を第1の挟持部材11の平坦な挟持面12上に載置するとともに、第2の挟持部材21の挟持面22側の端部と、第1の挟持部材11の楔片部13の先端とを相対的に近づけ、第1の挟持部材11の押圧部16を押圧しながら楔片部13を第2の挟持部材21の抱持枠24内にスライドさせるように挿入する。この挿入開始時には、楔片部13のうち厚さが薄い先端部13Bが抱持枠24内に位置しており、楔片部13の外面(図7中下面)と抱持枠24の内面との間にはある程度のクリアランスがある状態なので、第2の挟持部材21を、その挟持面22側の先端部が第1の挟持部材11から若干浮き上がるよう傾いた状態としておくことにより、滑止突起23が被挟持物Pに引っかかることなく、楔片部13を抱持枠24内に挿入することができる。楔片部13が抱持枠24の奥方に挿入されるにつれて、楔片部13のうち厚みが厚い基部13A側が抱持枠24内に位置するようになるので、楔片部13の外面が抱持枠24の内面を徐々に押し下げることとなり、すなわち、第2の挟持部材21を第1の挟持部材11側に引き寄せることとなり、第2の挟持部材21は傾いた状態から正規姿勢に誘導される。
【0024】
そして、図8に示すように、第1および第2の挟持部材11,21が組み合わせ状態となると、抱持枠24内に位置する楔片部13の基部13A側の端部外面が抱持枠24の内面と摺接した状態となるとともに、第1および第2の挟持部材11,21の対向する挟持面12,22により被挟持物Pがしっかりと挟持された状態となる。またこの時、第2の挟持部材21の端部に設けられた一対の突部25,25が第1の挟持部材11の一対の受け片14,14の先端付近に当接することにより、第1および第2の挟持部材11,21のうち挟持面12,22とは反対側の端部が互いに離れた状態に保たれる。すなわち、挟持面12,22がより強く押圧し合うこととなり、被挟持物Pがよりしっかりと挟持された状態となる。
【0025】
このように被挟持物Pが挟持面12,22間に挟持された状態となったら、吸盤Sの係止部を楔片部13の孔部15に挿入するとともに楔片部13の先端方向にスライドさせて抜け止め状態とし、図9に示すように被吸着面Wに吸着させてクリップ10を固定する。なおこの状態で、押圧部16の端部側面16Aが被吸着面Wと当接するように予め設定しておくことにより、被吸着面Wに吸着したクリップ10が使用中に傾くことが防止され、被挟持物Pを安定した状態で固定することができる。
【0026】
またこの状態において、仮に被挟持物Pがクリップ10から抜ける方向の力(図9のAの方向の力)を受けた場合でも、本実施形態のクリップ10によれば、被挟持物Pが簡単に抜けてしまうことがない。すなわち、第2の挟持部材21の挟持面22には滑止突起23が形成されているため、被挟持物Pは摩擦係数の大きい第2の挟持部材21とともにAの方向に引っ張られるが、第1の挟持部材11は被吸着面Wに固定されており、楔片部13の外側の面は傾斜面13Cとされて基部13A側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物Pおよび第2の挟持部材21がAの方向に引っ張られるほど、抱持枠24内により厚みが厚い楔片部13の基部13A側を引き込むこととなる。しかも、楔片部13は抱持枠24内に強く引き込まれることにより第2の挟持部材21との間の空間内に撓むから、その弾発力よって互いの挟持部材11,21がより強く締め付けられることとなり、被挟持物Pを挟持する力が増して、被挟持物Pはますます引き抜かれ難くなる。
【0027】
このように、本実施形態のクリップ10によれば、一対の挟持部材11,31をスライドさせるという簡単な作業により、被挟持物Pに対してクリップ10取り付けることが可能である。また、被挟持物Pに対して挟持面12,22から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、クリップ10から簡単に外れることはない。
【0028】
また被挟持物Pからクリップ10を外す場合には、楔片部13を抱持枠24から引き抜く方向の力を加えて一対の挟持部材11,21をスライドさせればよく、取り外し作業も簡単である。
【0029】
<実施形態2>
本発明の実施形態2のクリップ30を図14ないし図18によって説明する。
図14は本実施形態のクリップ30の第1の挟持部材31の平面図、図15は同じく第1の挟持部材31の側面図、図16は同じく第2の挟持部材41の平面図、図17は同じく第2の挟持部材41の側面図、図18は同じく被挟持物Pを挟持した状態の側面図である。
【0030】
このクリップ30は、ほぼ同等の大きさの略ひし形の一対の挟持部材31,41を組み合わせてなり、図18に示すように、バナー等の被挟持物Pの端部に取り付けてフックFに引っ掛けて使用する。
【0031】
図14および図15に示す第1の挟持部材31は、後述する第2の挟持部材41と対向する面が平坦面とされて、図中下側が挟持面32とされるとともに、図中上側が細長く矩形に延びる形状とされて、楔片部33とされている。この楔片部33のうち、挟持面32側の面とは反対側の面は、基部側33Aの厚みが先端側33Bの厚みよりも厚くなるように、傾斜面33Cとされている(図15参照)。また、楔片部33の先端13B付近には、フックFに引っ掛けるための孔部34(本発明の被固定部に相当)が設けられている。
【0032】
一方、図16および図17に示す第2の挟持部材41のうち上述した第1の挟持部材31の挟持面32と対向する部分は、多数の横溝43(本発明の粗面部に相当)が形成された挟持面42とされるとともに、この第2の挟持部材41の長手方向の中央付近には、上述した第1の挟持部材31の楔片部33を受け入れるためのコ字形状の抱持枠44が、挟持面42側の面から立ち上がるように設けられている。この抱持枠44の内面は、その中に楔片部33が挿入され両挟持部材31,41が組み合わされた場合に、この抱持枠24内に位置する楔片部13の外面がぴったり摺接する形状とされている(図17および図18参照)。またこの第2の挟持部材41の上端部付近には、フックFに引っ掛けるための縦長の長孔部45が設けられている。この長孔部45は、一対の挟持部材31,41が組み合わされた場合に、第1の挟持部材31の孔部34と連なる位置に形成されている。
【0033】
上述した本実施形態のクリップ30を使用する場合には、被挟持物Pの端部を例えば第2の挟持部材41の挟持面42上に載置するとともに、第2の挟持部材41の挟持面42側の端部と、第1の挟持部材31の楔片部33の先端とを相対的に近づけ、楔片部33を第2の挟持部材41の抱持枠44内にスライドさせるように奥方まで挿入する。第1および第2の挟持部材31,41が組み合わされると、抱持枠44内に位置する楔片部33の外面が抱持枠44の内面とぴったり摺接した状態となるとともに、第1および第2の挟持部材31,41の対向する挟持面32,42により被挟持物Pがしっかりと挟持された状態となる。
【0034】
この状態において、第1の挟持部材31の孔部34と第2の挟持部材41の長孔部45とは連なった状態となっているから、この連なり部分をフックFに引っ掛けてクリップ30を固定する(図18参照)。
【0035】
この状態において、仮に被挟持物Pがクリップ30から抜ける方向の力(図18のAの方向の力)を受けた場合、第2の挟持部材41の挟持面42には多数の横溝43が形成されているため、被挟持物Pは摩擦係数の大きい第2の挟持部材41とともにAの方向に引っ張られるが、第1の挟持部材31の楔片部33は基部33A側ほどその厚みが厚くなるように形成されているから、被挟持物Pおよび第2の挟持部材41がAの方向に引っ張られるほど、抱持枠44内により厚みが厚い楔片部33の基部33A側を引き込むこととなる。すなわち、互いの挟持部材31,41がより強く締め付けられることとなり、被挟持物Pを挟持する力が増して、被挟持物Pはますます引き抜かれ難くなる。
【0036】
このように、本実施形態のクリップ30によっても、バナー等の被挟持物Pに対して簡単に取り付けることが可能であり、しかも、挟持面32,42から引き抜かれる方向の力が作用したとしても、被挟持物Pがクリップ30から簡単に外れることはない。
【0037】
また、被挟持物Pからクリップ30を外す場合には、楔片部33を抱持枠44から引き抜く方向に一対の挟持部材31,41をスライドさせればよく、取り外し作業も簡単である。
【0038】
さらに、孔部34および長孔部45の連なり部分には、フックFに限らず紐やベルト等を取り付けることも可能であり、用途に応じて様々な形態で固定することが可能である。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態1では、クリップ10をポスター等のシート状の被挟持物Pの四隅に取り付けて吸盤Sによりガラス等の平滑面に固定する例を示したが、上記実施形態に限るものではなく、被挟持物は垂れ幕や旗、テント、タープ等シート状のものであればよく、また固定方法も吸盤に限らず、クリップ10をフックに引っ掛けたり、紐やベルト、磁石等を利用して所望の場所に取り付けることができる。実施形態2のクリップ30も同様である。
【0040】
(2)上記実施形態1では、他方の挟持部材21の挟持面22に、粗面部として多数の角錐状の滑止突起23を設ける構成とし、第2実施形態では、横溝43を設ける構成としたが、例えば円錐状の突起を設けたり、格子溝を設ける等、他の態様としてもよく、要は、挟持面と被挟持物Pとの摩擦係数が大きくなる構成であればどのような構成でもよい。
【0041】
(3)また、このような粗面部や、一方の挟持部材の被固定部は、必ずしも設けなくてもよい。
【0042】
(4)上記実施形態1では、第2の挟持部材21に突部25を設ける構成としたが、第1の挟持部材41に突部を設け、第2の挟持部材21で受ける構成としてもよい。また、突部は一対でなくてもひとつ、あるいは3つ以上でもよく、必ずしも設けなくてもよい。
【0043】
(5)上記実施形態では抱持枠をコ字状としたが、一対のL字状や、単なるL字状等としてもよく、要は、楔片部を挿入して押さえ込み可能な構成であればどのような構成でもよい。
【符号の説明】
【0044】
10、30…クリップ
11、21…第1の挟持部材
12、22…挟持面
13、33…楔片部
13C、33C…傾斜面
14…受け片
15…孔部(被固定部)
16…押圧部
21、41…第2の挟持部材
22、42…挟持面
23…滑止突起(粗面部)
24、44…抱持枠
25…突部
34…孔部(被固定部)
45…長孔部
P…被挟持物
S…吸盤
W…被吸着面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の挟持部材を備え、前記各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、
前記挟持部材のうちの一方の挟持部材には前記挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、
他方の前記挟持部材の前記挟持面側には、相手側の前記挟持部材の前記楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、
前記楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、前記挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、
前記楔片部を前記抱持枠内に押し込むことで前記抱持枠によって前記楔片部を前記他方の挟持部材側に押圧させて前記両挟持部材によって前記被挟持物を挟みつけることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記一方の挟持部材を固定箇所に固定するための被固定部が前記一方の挟持部材に設けられ、前記他方の挟持部材の前記挟持面には前記一方の挟持部材の前記挟持面よりも前記被挟持部材との摩擦力を大きくするための粗面部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記一対の挟持部材のうちのいずれか一方には、相手側の前記挟持部材に当接可能な突部が前記挟持面とは反対側の端部付近に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記突部が前記他方の挟持部材の端部付近に一対設けられており、前記一方の挟持部材には前記楔片部の両側に位置して前記突部を受けるための一対の受け片が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記楔片部は前記抱持枠に押圧されたときに前記他方の挟持部材側に撓み変形可能に前記他方の挟持部材から離れて設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のクリップ。
【請求項1】
一対の挟持部材を備え、前記各挟持部材には互いの間にシート状の被挟持物を挟持する挟持面が形成されたクリップであって、
前記挟持部材のうちの一方の挟持部材には前記挟持面の面方向に沿って延びる楔片部が一体に延設されており、
他方の前記挟持部材の前記挟持面側には、相手側の前記挟持部材の前記楔片部を挿入可能な抱持枠が立ち上がるように設けられており、
前記楔片部は、基部側の厚みが厚く先端側ほど薄くなるように、前記挟持面とは反対側の面が傾斜面とされており、
前記楔片部を前記抱持枠内に押し込むことで前記抱持枠によって前記楔片部を前記他方の挟持部材側に押圧させて前記両挟持部材によって前記被挟持物を挟みつけることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記一方の挟持部材を固定箇所に固定するための被固定部が前記一方の挟持部材に設けられ、前記他方の挟持部材の前記挟持面には前記一方の挟持部材の前記挟持面よりも前記被挟持部材との摩擦力を大きくするための粗面部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
前記一対の挟持部材のうちのいずれか一方には、相手側の前記挟持部材に当接可能な突部が前記挟持面とは反対側の端部付近に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のクリップ。
【請求項4】
前記突部が前記他方の挟持部材の端部付近に一対設けられており、前記一方の挟持部材には前記楔片部の両側に位置して前記突部を受けるための一対の受け片が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のクリップ。
【請求項5】
前記楔片部は前記抱持枠に押圧されたときに前記他方の挟持部材側に撓み変形可能に前記他方の挟持部材から離れて設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のクリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−247487(P2012−247487A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116854(P2011−116854)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(591067657)株式会社ファースト (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(591067657)株式会社ファースト (13)
【Fターム(参考)】
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