説明

クリーニングタグ用基材

【課題】 引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性、耐漂白剤性、及び乾燥後の耐折性に優れ、使用時にタグが切れて紛失することを防ぐと共に、人体に有害な物質を放出することがないクリーニングタグ用基材を提供する事。
【解決手段】 パルプ:100質量部、ポリアミン樹脂及びその誘導体から選択された少なくとも一種の湿潤紙力増強剤:0.2〜3.0質量部、及びウレタン樹脂:0.2〜3.0質量部を含有する耐洗紙からなることを特徴とするクリーニングタグ用基材。好ましくはパルプ100質量部当たり、スチレン系樹脂を0.05〜1.0質量部含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品管理のために被洗濯物に取り付ける業務用クリーニングタグに関し、特に、水分が2%未満という乾燥時の耐折強度が改善された業務用クリーニングタグに関する。
【背景技術】
【0002】
衣類のクリーニング業においては、多量の被洗濯物を管理するため、被洗濯物に、管理番号、取扱店名等の情報を記入又は印刷した管理用のタグを取り付けている。
一方、業務用クリーニングには、水を使用するランドリークリーニングと溶剤を使用するドライクリーニングがあり、被洗濯物はタグが付された状態でこれらのクリーニングに掛けられ、場合によっては更に漂白されることもある。従ってクリーニングタグ用基材には、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性等が要求されるが、更に、タグの脱落を防止するための耐折性も求められる。特に耐折性については、洗濯時のみならず、乾燥工程中やアイロン掛け時など、タグの水分が失われたときにタグが折り切れし易くなるため、タグが水分を失っても耐折性が維持されている必要がある。
【0003】
従来は、上記の機能を有する基材として、メラミン樹脂を含浸させた耐洗紙が多用されてきたが、メラミン樹脂の製造時にホルマリンが使用され、樹脂中に微量とは言えホルマリンが含有されているため、抄紙、加工、使用時等にホルマリンが遊離し、人体を害する危険性があった。
そこで、ホルマリンを使用しない耐洗紙として、ポリアミン樹脂及びその誘導体から選ばれた少なくとも一種を紙力増強剤として使用したクリーニングタグ用基材が提案されており、他の紙力増強剤としてポリエピクロルヒドリン系樹脂及び/又はアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂を併用することが好ましいとも記載されている(特許文献1)。しかしながらこの基材は耐水性、耐溶剤性には優れているものの、乾燥後の耐折性が低く、クリーニング時にタグが折り切れするという問題があった。
【特許文献1】特開2001−246200
【0004】
そこで、本発明者等は、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性と共に、ホルマリンのような有害物質を発生せず、耐折性にも優れたクリーニングタグ用基材を得るために鋭意検討した結果、パルプ100質量部に対して、一定量の、ポリアミン樹脂及びその誘導体から選択された少なくとも一種の湿潤紙力増強剤、及びウレタン樹脂を含有する紙が、上記特性を有するクリーニングタグ用基材として好適であること、更にスチレン系樹脂を含有させた場合には、顔料の定着性が向上するので、着色クリーニングタグ用基材として好適であることを見出し、本発明に到達した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、ホルマリンを含有せず、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性に優れると共に、乾燥後の耐折性にも優れ、使用時にタグ切れが生じない、種々の洗濯条件に耐え得るクリーニングタグ用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、
(1)パルプ:100質量部、
ポリアミン樹脂及びその誘導体から選択された少なくとも一種の湿潤紙力増強剤:0.2〜3.0質量部、及び
ウレタン樹脂:0.2〜3.0質量部
を含有する耐洗紙からなることを特徴とするクリーニングタグ用基材、及び、
(2)パルプ100質量部当たり、スチレン系樹脂0.05〜1.0質量部を含有する耐洗紙からなる(1)に記載されたクリーニングタグ用基材である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクリーニングタグ用基材は、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性に優れているため、ランドリークリーニング及びドライクリーニングのいずれにも、また、漂白処理する場合にも使用できるばかりでなく、乾燥時の耐折性が優れているため、乾燥中にタグが折り切れして紛失することを防ぐことができる。
また、メラミン樹脂を使用しないため、抄紙、加工、使用時においてホルマリンが遊離せず、人体に害を及ぼすこともない。更に、スチレン系樹脂を含有させた場合には、顔料の定着が改善されるので着色タグ用基材として特に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のクリーニングタグ用基材について詳述する。
本発明のクリーニングタグ用基材は、少なくとも下記の素材を含有する。
パルプ:100質量部、
ポリアミン樹脂及びその誘導体から選択された少なくとも一種の湿潤紙力増強剤:0.2〜3.0質量部、
ウレタン樹脂:0.2〜3.0質量部。
本発明で使用することのできるパルプは、主として天然パルプを抄紙した紙が好ましい。天然パルプとしては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ等の木材パルプ、亜麻、大麻、椿、三椏などの靭皮繊維が挙げられる。本発明においては、特に木材繊維からなる木材パルプを使用することが、強度や抄紙性の点で好ましい。このような木材パルプの具体例としては、長繊維N−BKP(針葉樹晒クラフトパルプ)、短繊維L−BKP(広葉樹晒クラフトパルプ)、等がある。これらのパルプは、一種、又は二種以上混合して使用することができる。
【0009】
本発明で使用するポリアミン樹脂及びその誘導体は、基材に耐水性を付与するための湿潤紙力増強剤として作用するものであり、ポリアミン樹脂とは、アミノ基又はイミノ基を2つ以上持つ、いわゆるポリアミン類とエピハロヒドリンから得られる樹脂及びその誘導体であり、例えば星光PMC(株)よりWS−4010として市販されているものが使用できる。
本発明におけるポリアミン樹脂又はその誘導体の含有量は、パルプ100質量部に対し0.2〜3.0質量部であることが必要であり、特に0.5〜2.5質量部であることが好ましい。0.2質量部未満では耐水性、耐洗剤性が不十分となり、3.0質量部を超えて含有させても、その効果が更に向上することがないので不経済である。
【0010】
本発明で使用するポリウレタン樹脂は、乾燥した後の基材に耐折性を付与する。このようなポリウレタン樹脂は、特に制限はないがTgが0℃〜120℃のものが好ましく、50℃〜100℃のものがより好ましい。Tgが120℃を超えると固くなるので耐折強度が低下し、Tgが0℃未満ではべとつきが発生するおそれがある。これらは一種のみを使用しても二種以上を併用してもよい。ポリウレタン樹脂の含有量は、パルプ100質量部に対し0.2〜3.0質量部であることが必要であるが、特に0.5〜2.5質量部とすることが更に好ましい。0.2質量部未満では、乾燥後の耐折性が十分でなく、また必要とされる耐折性は3.0質量部で十分であり、3.0質量部を超えて含有させることは不経済である。
【0011】
本発明では、更に少量のスチレン系樹脂を添加することによって、基材の上記特性を損なうことなく、顔料の定着性を向上させることができる。特に、クリーニングタグは、被洗濯物の種類、クリーニングの方法等使用目的に応じて色分けして用いられることが多いので、所望により基材を着色する場合には、顔料と共にスチレン系樹脂を添加することが好ましい。スチレン系樹脂とは、スチレンとアクリルモノマーやアクリルアミドなどとの共重合体であり、例えば荒川化学工業(株)よりポリマロン351、ポリマロンLM−35として市販されているものが使用できる。
本発明に使用できるスチレン系樹脂は公知のものの中から適宜選択することができる。かかるスチレン系樹脂の含有量は、
パルプ100質量部に対し0.05〜1.0質量部とすることが好ましく、0.1〜0.5質量部とすることが更に好ましい。0.05質量部未満では顔料の定着が不十分となりやすく、また1.0質量部を超えると耐折強度に悪影響を及ぼす傾向がある。
本発明においては、その他、サイズ剤、填料等の添加剤を適宜添加することができる。これらの添加剤の種類及び添加量は、基材の物性を損なわない限り特に限定されない。
【0012】
本発明のクリーニングタグ用基材は、公知の抄紙方法で製造することができる。ポリアミン樹脂等の湿潤紙力増強剤は、耐洗剤性を付与するため、添加する前に予め水酸化ナトリウム等のアルカリで活性化処理する必要がある。
湿潤紙力増強剤、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂その他の添加剤の添加は、抄紙時にパルプスラリーに添加する内添式、抄紙後にサイズプレス等で含浸させる外添式のいずれでもよく、あるいは両方を組み合わせてもよい。
クリーニングタグを着色する場合には、スチレン系樹脂、顔料を添加する。これらの添加は内添式、外添式のいずれでもよく、あるいは両方を組み合わせてもよい。
本発明のクリーニングタグ用基材の米坪量は、60〜250g/mとすることが好ましく、100〜180g/mとすることが更に好ましい。
以下、本発明を実施例に基いて更に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例1】
【0013】
針葉樹晒クラフトパルプ85質量%と広葉樹晒クラフトパルプ15質量%からなる木材パルプ原料を水中で叩解処理し、23°SRのパルプスラリーを得た。
次いでこのパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部当たり、予め水酸化ナトリウムで活性化したポリアミン樹脂(星光PMC(株)製:WS−4010)1.6質量部、ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス870:Tg=78℃)1.2質量部、スチレン系樹脂(荒川化学工業(株)製:ポリマロン1301)0.2質量部、黄色顔料(山陽色素(株)EMACOL COLOR Y−IRN)1質量部、及びAKD系サイズ剤(星光PMC(株)製:AD−1600)0.2質量部をそれぞれ添加し、角形シートマシンにて抄紙し、米坪量145g/mのクリーニングタグ用基材を得た。
尚、前記ポリアミン樹脂は、該ポリアミン樹脂(固形分)40質量部に対し水酸化ナトリウム10.8質量部を用いて活性化し、これを用いた。
【実施例2】
【0014】
針葉樹晒クラフトパルプ85質量%と広葉樹晒クラフトパルプ15質量%からなる木材パルプ原料を水中で叩解処理し、23°SRのパルプスラリーを得た。
次いでこのパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部当たり、予め水酸化ナトリウムで活性化したポリアミン樹脂(星光PMC(株)製:WS−4010)1.6質量部、ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス870:Tg=78℃)1.2質量部、黄色顔料(山陽色素(株)EMACOL COLOR Y−IRN)1質量部、及びAKD系サイズ剤(星光PMC(株)製:AD−1600)0.2質量部をそれぞれ添加し、角形シートマシンにて抄紙し、米坪量145g/mのクリーニングタグ用基材を得た。
尚、前記ポリアミン樹脂は、該ポリアミン樹脂(固形分)40質量部に対し水酸化ナトリウム10.8質量部を用いて活性化し、これを使用した。
【実施例3】
【0015】
針葉樹晒クラフトパルプ70質量%と広葉樹晒クラフトパルプ30質量%からなる木材パルプ原料を水中で叩解処理し、23°SRのパルプスラリーを得た。
次いでこのパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部当たり、ポリアミン樹脂(星光PMC(株)製:WS−4010)1.6質量部、ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製:スーパーフレックス870:Tg=78℃)1.2質量部、スチレン系樹脂(荒川化学工業(株)製:ポリマロン1301)0.2質量部、及びAKD系サイズ剤(星光PMC(株)製:AD1600)0.2質量部をそれぞれ添加し、角形シートマシンにて抄紙し、米坪量145g/mのクリーニングタグ用基材を得た。
尚、前記ポリアミン樹脂は、該ポリアミン樹脂(固形分)40質量部に対し、水酸化ナトリウム10.8質量部を用いて活性化し、これを使用した。
【0016】
比較例1.
針葉樹晒クラフトパルプ70質量%と広葉樹晒クラフトパルプ30質量%からなる木材パルプ原料を水中で叩解処理し、23°SRのパルプスラリーを得た。
次いでこのパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部当たり、予め水酸化ナトリウムで活性化したポリアミン樹脂(星光PMC(株)製:WS−4010)1.6質量部、アニオン性アクリルアマイド(PAM)(荒川化学工業(株)製:ポリストロン191)1.8質量部、及びAKD系サイズ剤(星光PMC(株)製:AD1600)0.2質量部をそれぞれ添加し、角形シートマシンにて抄紙し、米坪量145g/mのクリーニングタグ用基材を得た。
尚、前記ポリアミン樹脂は、該ポリアミン樹脂(固形分)40質量部に対し水酸化ナトリウム10.8質量部を用いて活性化し、これを用いた。
【0017】
比較例2.
針葉樹晒クラフトパルプ70質量%と広葉樹晒クラフトパルプ30質量%からなる木材パルプ原料を水中で叩解処理し、23°SRのパルプスラリーを得た。
次いでこのパルプスラリーに、パルプ固形分100質量部当たり、メラミン樹脂(ヘキストジャパン(株)製:マドリッドSMW155)3質量部、ロジンサイズ剤(荒川化学工業(株)製:サイズパインE−50)0.7質量部、及び硫酸バンド(住友化学(株)製:硫酸バンド)2.5質量部を添加し、角形シートマシンにて抄紙し、米坪量145g/mのクリーニングタグ用基材を得た。
【0018】
各実施例及び比較例で得られたクリーニングタグ用基材について、下記の方法で引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性及び耐折性を測定した。結果を表1に示す。
(1)引張強さ
JIS P 8138に基づいて引張強さを測定した。
【0019】
(2)耐水性
JIS P 8135に準じて湿潤引張強さを測定し、耐水性を評価した。
【0020】
(3)耐溶剤性
水をパークロロエチレンに代えると共に、浸積時間を20分としたこと以外はJIS P 8135の方法に準じて、湿潤引張強さを測定し、耐容剤性を評価した。
【0021】
(4)耐漂白剤性
次亜塩素酸ソーダ(市販の漂白剤)5%溶液で20分間煮沸した後JIS P 8135の方法に準じて引張強度を測定し耐漂白性を評価した。
【0022】
(5)耐折性
水分の含有率が2%未満になるまで乾燥させた基材の耐折強度を測定した。
試料を150℃で3分間加熱処理し、チャック付きビニール袋に入れた。冷却後、ビニール袋から取り出し、JIS P 8115に準じて耐折度を測定した。
(6)色合
試料を目視で観察し、濃淡を評価した。
【0023】
【表1】

【0024】
表1より、本発明のクリーニングタグ用基材は乾燥後の引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性が良好であるばかりでなく、乾燥後の耐折性が著しく優れていることは明らかである。従って、クリーニングタグに本発明の基材を使用すれば、洗濯、乾燥時又は乾燥後にタグが切れることを防ぐことができる。
これに対し、PAMを使用した場合(比較例1)には、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性は良好であるが、乾燥後の耐折性が極度に低いため、乾燥後にタグ切れが生じる可能性が高いことがわかる。
更に、メラミン樹脂を使用した場合(比較例2)には、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性は良好であるが、ホルマリンが発生するため、人体に害を及ぼすおそれがある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のクリーニングタグ用基材は、引張強さ、耐水性、耐溶剤性、耐漂白剤性が良好であるばかりでなく、特に乾燥後の耐折性が優れているので、使用時にタグ切れが生じることがなく、クリーニングタグとしての使用に最適である。また、ホルマリンを含有していないので人体に害を及ぼすおそれもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプ:100質量部、
ポリアミン樹脂及びその誘導体から選択された少なくとも一種の湿潤紙力増強剤:0.2〜3.0質量部、及び
ウレタン樹脂:0.2〜3.0質量部
を含有する耐洗紙からなることを特徴とするクリーニングタグ用基材。
【請求項2】
パルプ100質量部当たり、スチレン系樹脂0.05〜1.0質量部を含有する耐洗紙からなる請求項1に記載されたクリーニングタグ用基材。

【公開番号】特開2006−288744(P2006−288744A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113796(P2005−113796)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】