説明

クリーニング業トラブル防止方法及び同方法を使用するためのクリーニング業用POSシステム

【課題】商品取次店でのトラブルの発生又は増大を防ぐためのトラブル防止方法を提供する。
【解決手段】クリーニング業用POSシステムを構成するPOS端末において、商品預かり時に接客画面上で顧客ごとのトラブル情報の登録・更新を可能にし、接客開始時に顧客情報を呼び出し、その顧客の過去のトラブル情報を接客画面に表示する。そのトラブル情報には、少なくともトラブル内容と未解決・解決のいずれであるかを示す情報とが含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング業におけるトラブル防止方法、同方法を使用するためのクリーニング業用POSシステム、POS端末及びPOS中央装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チェーン店を構成する複数の商品取次店において顧客より預かった衣類(以下、商品という。)をクリーニング工場でクリーニングをし、その商品を商品取次店に返送して、引取りに来店した顧客に返却するクリーニング業においては、POSシステムが採用されている。
【0003】
このようなクリーニング業においては、「トラブル」が切っても切り離せない問題であり、その解決が長年の課題となっている。トラブルは、顧客より預かった商品に関するトラブル、商品取次店のレジ担当者などの店員(以下、単に店員という。)の接客に関するトラブル、顧客特有のトラブルなど、様々である。
【0004】
商品取次店に設置される従来のPOS端末の主たる機能は、顧客に関する情報(顧客情報)及び商品に関する情報(商品情報)の登録機能と、レジ(料金精算)機能であり、トラブル情報を登録・管理する機能を十分に備えているとはいえなかった(先行技術文献は特にない。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トラブルは、店員の接客中に発生することが主であり、顧客ごとに過去に発生したトラブル情報を管理することが重要である。トラブルに対応した店員と、その後フォローする担当者が異なる場合に、トラブル情報の共有ができていないと、さらなるトラブルが発生する虞がある。
【0006】
何らかの方法によりこれらのトラブル情報を管理し、これを各商品取次店の全店員又は全商品取次店間で共有すれば、トラブルの発生・増発の予防が可能になり、顧客の満足度向上に繋げることが可能になると思われる。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、クリーニング業におけるトラブルの発生又は増大を防ぐためのトラブル防止方法を提供することを第一の目的とする。そのトラブル防止方法を実現するためのクリーニング業用POSシステムを提供することを第二の目的とする。また、クリーニング業用POSシステムの構成に好適なPOS端末を提供することを第三の目的とする。さらに、そのPOSシステムの構成に好適なPOS中央装置を提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記第一の目的を達成する本発明によるトラブル防止方法は、次の事項を特徴とする。
1.クリーニング業用POSシステムを構成するPOS端末において、トラブルが発生したときに、そのトラブル情報を顧客ごとに登録・更新し、その後の接客時にその顧客の顧客情報を呼び出して、その顧客の過去のトラブル情報を接客画面に表示するものであり、トラブル情報には、少なくともトラブル内容と未解決・解決の状況を示す情報とが含まれる(請求項1)。
2.未解決のトラブル情報については、接客画面に強調表示することが望ましい(請求項2)。
3.POS端末において、売上日報データ作成時に当日発生したトラブル情報を集計して、出力される売上日報に当日のトラブル発生件数を加えることが望ましい(請求項3)。
4.トラブル情報を登録・更新するたびに、又は、売上日報の出力時に、そのトラブル情報をPOS端末からPOS中央装置に送信し、POS本部でそのトラブル情報を把握できるようにすることが望ましい(請求項4)。
5.POS中央装置において、送信されてきたトラブル情報を蓄積し、POS本部でこれを分析可能にすることが望ましい(請求項5)。
【0009】
上記第二の目的を達成するための本発明によるクリーニング業用POSシステムは、クリーニング工場又は管理本部に設置されたPOS中央装置と、各商品取次店に設置され、POS中央装置に双方向通信可能に接続されたPOS端末とからなり、前記POS中央装置は、前記POS端末から受信した顧客情報及びトラブル情報を蓄積する蓄積手段と、その蓄積した情報を各POS端末に配信する送信手段とを備え、前記POS端末は、顧客識別情報を含む顧客情報と商品情報とトラブル情報を入力する入力手段と、入力された顧客情報と商品情報とトラブル情報を登録する登録手段と、顧客識別情報を入力された時に、その顧客識別情報に対応して登録されているトラブル情報を接客画面に表示する表示手段とを備えていることを特徴としている(請求項6)。
【0010】
上記第三の目的を達成するための本発明によるPOS端末は、次の事項を特徴とする。
7.顧客識別情報を含む顧客情報と商品情報とトラブル情報を入力する入力手段と、入力された顧客情報と商品情報とトラブル情報を登録する登録手段と、顧客識別情報を入力された時に、その顧客識別情報に対応して登録されているトラブル情報を接客画面に表示する表示手段とを備えている(請求項7)。
8.POS端末に顧客ごとにトラブル情報を登録・変更・削除する機能を備えて、そのトラブル情報をすべての店員が共有できるようにした(請求項8)。
9.POS端末には、顧客情報とこれに対応して登録されているトラブル情報をPOS中央装置へ送信する送信手段を備えることが望ましい(請求項9)。
10.POS端末は、売上日報作成時にトラブル発生件数を集計する集計手段を備えていることが望ましい(請求項10)。
【0011】
そして、上記第四の目的を達成するための本発明によるPOS中央装置は、次の事項を特徴とする。
11.POS端末から受信した顧客情報及びトラブル情報を蓄積する蓄積手段と、その蓄積した情報を各POS端末に配信する送信手段と、その蓄積したトラブル情報を表示する表示手段とを備えている(請求項11)。
すなわち、POS端末からPOS中央装置に顧客情報、トラブル内容と解決・未解決の識別情報を含むトラブル情報を送信し、POS中央装置でそれらの情報を蓄積・管理することにより、トラブル情報をPOS本部と全商品取次店間で共有できるようにした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び請求項6、7の発明によれば、店員は、接客が始まった時点(POS端末で顧客情報を呼び出した時点)でその顧客の過去のトラブル情報を接客画面に表示して閲覧し、未解決のトラブルがあれば、そのトラブルに対応し、次のトラブルの発生予防を図ることができる。
請求項2の発明によれば、未解決のトラブルに注意が届き易く、優先的に対応することができ、顧客に対するサービスの向上に繋がる。
請求項3の発明によれば、売上日報とともに当日のトラブル発生件数を知ることができる。
請求項4の発明によれば、トラブル情報を登録・更新するたびに、又は、売上日報の出力時に、トラブル情報をPOS端末からPOS中央装置に送信し、POS本部でそのトラブル情報を把握することができる。
請求項5の発明によれば、POS本部において、蓄積されたトラブル情報を分析することにより、トラブルに対する今後の事前防止対策を立てるための情報として活用することが可能となる。
請求項8の発明によれば、トラブルが未解決の場合、トラブル対応の店員が変わっても、トラブル情報を商品取次店内で共有することで、円滑な対応をとることが可能となり、また、顧客に対して失礼な態度をとるなどの二重のトラブル発生を防止することができる。
請求項9の発明によれば、POS本部において、商品取次店から送信されたトラブル情報を一括管理し、全商品取次店でのトラブル情報の共有が可能となる。
請求項10の発明によれば、トラブル発生件数の集計結果から事前防止対策の要否を検討し又は事前防止対策の有効性を評価することができる。
請求項11の発明によれば、トラブル情報をPOS本部と全商品取次店間で共有することができ、トラブル発生の事前防止効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るクリーニング業用POSシステムの全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】同POSシステムの一つの構成要素であるPOS端末の構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】商品メニューテーブル及びそれに登録された商品マスタデータの一例を示す図である。
【図4】商品マスタデータの登録画面(商品情報登録画面)を示す図である。
【図5】顧客マスタデータの登録画面(顧客情報登録画面)を示す図である。
【図6A】トラブル情報登録画面の一例を示す図である。
【図6B】トラブル情報一覧画面の一例を示す図である。
【図7】担当者マスタデータの一例を示す図である。
【図8A】表示部の接客画面の説明図である。
【図8B】同接客画面に顧客情報が表示された一例を示す図である。
【図8C】同接客画面に預かり商品に関する情報が表示された一例を示す図である。
【図9】POS端末の作用を説明するフローチャートである。
【図10】本発明に係るクリーニング業用POSシステムの他の構成要素であるPOS中央装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】POS中央装置の他の実施の態様を説明する図である。
【図12】POS本部におけるトラブル情報一覧画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[POSシステムの構成]
本発明に係るクリーニング業用POSシステムは、図1に示すように、商品取次店に設置されるPOS端末10と、クリーニング工場又は管理本部などに設置されるPOS中央装置20とからなっている。POS端末10とPOS中央装置20との間はインターネットその他のネットワーク30により双方向通信可能に接続されている。POS端末10とPOS中央装置20との間は専用通信回線で接続しても良い。
【0015】
クリーニング業用POSシステムの大きな処理の流れは従来と同じであり、顧客が商品取次店に来ると、顧客の名前、住所、電話番号などの顧客情報登録処理を行い、商品の預かりや返却の確認などの商品情報登録処理を行い、その後、商品のクリーニング料金などの会計処理を行う。
【0016】
本発明の要部は、商品情報登録処理と顧客情報登録処理に並行して行われるトラブル情報処理にあるので、会計処理についての説明は省略する。
【0017】
[POS端末の構成]
POS端末10は、図2に例示するように、入力部11と、記憶部12と、表示部13と、預り証発行部14と、通信部15と、制御部16とを有している。
【0018】
入力部11は、例えば、表示部13の表面に設けられたタッチパネル11a、キーボード11b、ハンディスキャナー11c及びカードリーダ11dから構成されている。タッチパネル11aは、後述されるように来店した顧客に関する顧客情報、顧客から預かる商品に関する商品情報及びトラブル情報などを登録するために使用される。キーボード11bはタッチパネル11aと同等の操作を行う場合に使用される。顧客情報及び商品情報の入力、並びに各種指示に、タッチパネル11aとキーボード11bのいずれを用いるかは任意である。ハンディスキャナー11cは、再来顧客が提示する利用カードの顧客識別情報としてのバーコードを読み取ったり、返却される商品に付されているタグに記載されている商品識別情報としてのバーコードを読み取ったりするためのものである。カードリーダ11dは、再来顧客が提示する利用カードの顧客識別情報としての磁気データを読み取る場合に使用される。
【0019】
記憶部12には、所要のプログラムやワーキングデータのほか、次のようなデータベースが備えられている。すなわち、データベースには、クリーニング受付可能な商品についての商品マスタデータを登録した商品メニューテーブルT1(図3参照)、来店した各顧客についてのデータを登録した顧客マスタテーブルT2(図示省略)、店舗の担当者についてのデータを登録した担当者マスタテーブルT3(図7参照)、及び商品メニューの中の顧客から預かった商品についてのデータを登録した預かり商品履歴テーブルT4(図示省略)が格納されている。
【0020】
商品メニューテーブルT1には、図3に例示するように、商品コード、商品名、商品分類コード、洗い区分、収納区分、単価、ランク、仕上日数、タグ数等のクリーニング受付可能な商品情報が、商品マスタデータとして登録されている。
【0021】
商品メニューテーブルT1への商品マスタデータの登録は、1商品ごとに、図4に例示する後記表示部13の商品マスタデータ登録画面(すなわち、商品情報登録画面)13Aを見ながら、キーボード11bを用いて、左側の項目に対応する右側の空欄に前記商品情報を入力し、登録ボタンb1をタッチすることにより、行われる。商品マスタデータの登録は、外部装置により作成されたデータを、USBを用いて又はダウンロードにより登録しても良い。
【0022】
顧客マスタテーブルT2への顧客マスタデータの登録は、図5に例示する後記表示部13の顧客マスタデータ登録画面(すなわち、顧客情報登録画面)13Bを見ながら、キーボード11bを用いて、各新規顧客について顧客番号、氏名、電話番号、住所などの顧客情報を入力し、登録ボタンb1をタッチすることにより、行われる。
【0023】
担当者マスタテーブルT3には、図7に例示するように、当該商品取次店の店員の担当者コード、氏名、担当者レベルなど、店員に関するデータが担当者マスタデータとして登録されている。
【0024】
預かり商品履歴テーブルT4には、詳細な図示がされていないが、図8Cについて後述されるように、顧客のクリーニング依頼を受付ける際に、表示部13の商品メニュー表示エリア136に表示されている商品メニューの中のその顧客から預かる商品に対応する商品名にタッチし、受付ボタン138をタッチした時に預かり商品履歴データが作成され、その預かり商品履歴データが登録されるようになっている。
【0025】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイ装置などで構成され、図8A〜図8Cに例示するように、その表示画面130には、担当者表示エリア131、顧客名表示エリア132、コメント表示エリア133、トラブル情報表示エリア134、利用履歴表示エリア135、商品メニュー表示エリア136、預かり商品表示エリア137が設けられているとともに、顧客から商品を受付けた時にタッチされる受付ボタン138、顧客に商品を返却した時にタッチされる返却ボタン139、及びクリーニング代の会計処理をするときにタッチされる会計ボタン140が設けられている。
【0026】
図8Bに示すように、担当者表示エリア131には、このPOS端末を起動させた担当者が担当者コードを入力したときに、担当者マスタテーブルT3の中のそのコードに対応する担当者氏名が呼び出され、コードとともに表示される。顧客名表示エリア132には、顧客の利用カードから顧客コードを読取ったときに、その顧客の氏名が表示される。また、このとき、コメント表示エリア133には、顧客に係るコメント、例えば、傘の忘れ物がある旨のコメントが表示される。トラブル情報表示エリア140をタッチすると、図6Aに例示するようなトラブル情報登録画面13Cが接客画面に表示されるので、図6Aに示される各項目をキーボード11bから入力し、登録ボタンb1をタッチすると、そのトラブル情報がトラブル情報記憶領域123に登録される。利用履歴表示エリア134には、例えば、初回受付日、来店回数、最終受付日(返却日)などの顧客の利用履歴が表示され、商品メニュー表示エリア136には受付可能な商品名群、すなわち、商品メニューが表示され、預かり商品表示エリア137には、商品メニュー表示エリア136の商品メニューのうち、顧客から預かる商品の商品名をタッチしたときに、その商品名、点数、価格などが表示される。図8Cは、商品メニューのスーツ上下の商品名をタッチした場合に、預かり商品表示エリア137の最下欄に、「スーツ上下1点1200円」が表示されている状態を示している。
【0027】
預り証発行部14は、顧客のクリーニング注文を受け付けた場合に、領収したクリーニング料金額と上記預かり商品情報とを印字した預り証を発行するものである。図示されていないが、預かった商品にしみ、汚れ、破れ、ボタン取れなどがあることが分かった場合に、それらの修繕を指示するための商品タグを発行するタグ発行部が備えられるのが通例である。
【0028】
通信部15は、POS端末10とPOS中央装置20との間で通信するためのものであり、POS端末10で入力された顧客情報、商品情報及びトラブル情報、あるいはこれらの情報に売上情報を付加したPOS情報をPOS中央装置20に送信したり、後述されるように、POS中央装置20で他のPOS端末10で発生したトラブル情報を全商品取次店で共有するために送信する場合の、そのトラブル情報を受信するために用いられる。
【0029】
制御部16は、CPUで構成され、商品情報登録部161と、顧客情報登録部162と、トラブル情報登録部163と、印刷制御部164と、売上日報作成部165と、トラブル発生件数集計部166と、送信制御部167とを含む。
【0030】
商品情報登録部161は、入力部11から商品メニュー登録指令を入力した後、上述したように、店員が図4に示される商品マスタデータ登録画面13Aを見ながら入力部11から入力する受付可能な商品情報を記憶部12の図3に例示する商品メニューテーブルT1に商品マスタデータとして登録する。また、商品情報登録部161は、入力部11から受付商品登録指令を入力した後、上述したように、図8A〜図8Cに示される接客画面130を見ながら入力する預かり商品に関する情報を記憶部12の商品情報記憶領域121の預かり商品履歴テーブルT4に預かり商品履歴マスタデータとして登録する。
【0031】
顧客情報登録部162は、上述したように、店員が図5に示される顧客情報登録画面13Bを見ながら入力部11から入力する顧客情報を記憶部12の顧客マスタテーブルT2に顧客マスタデータとして登録する。新規顧客が来店するたびに、同様にして当該顧客の顧客情報が顧客マスタテーブルT2に登録される。
【0032】
また、トラブル情報登録部163は、店員が図6Aのトラブル情報登録面13C を見ながら、入力部11から入力するトラブル情報を記憶部12のトラブル情報記憶領域123に記憶させる。
【0033】
トラブル情報は、一例として、トラブル発生日、トラブルに対応した店員名又は店員コード番号、トラブル分類、商品コード、商品名、トラブル内容、未解決か解決かの状況等から構成されている。トラブル内容には、商品に関するものとしては、例えば、しみ・破れ・ボタン取れ、変色・退色、縮みなどのトラブル、クレーム情報が含まれ、その他に店員の接客や応対に対するクレーム、料金に対するクレーム、商品紛失や誤返却のクレーム、営業時間に対するクレーム等も含まれる。
【0034】
制御部16は、さらに、記憶部12に記憶されている顧客ごとのマスタデータを読み出して表示部13に表示させたり、入力部11からの送信指令入力に基づき、マスタデータ及びPOS情報をPOS中央装置20に送信させたりする。POS中央装置20から他商品取次店のトラブル情報を受信する場合は、その受信した他商品取次店のトラブル情報を記憶部12のトラブル情報記憶領域123に記憶させたりする。
【0035】
印刷制御部164は、預り証発行部14及びタグ発行部に対して預り証発行及びタグ発行のための制御を行うものである。
【0036】
売上日報作成部165は、例えば営業終了時に、入力部11から入力される売上日報作成指示に基づき、顧客情報記憶領域122に記録されている全顧客情報の中の当日のクリーニング料金額を集計して、その集計結果である合計額を計上した売上日報データを作成する。この売上日報データは入力部11からPOS本部への送信指示を入力されたときに、 POS中央装置20に送信される。
【0037】
トラブル発生件数集計部166は、例えば営業終了時に、入力部11からトラブル発生件数集計指示を入力されたときに、 トラブル情報記憶領域123に記録されている全トラブル情報の中の当日発生のトラブルの件数を集計して、その集計結果であるトラブル発生件数情報を一時記憶する。そして、トラブル発生件数情報は、その入力部11からPOS本部への送信指示を入力されたときに、 POS中央装置20に送信される。
トラブル発生件数集計部166は、例えば営業終了時に、入力部11からトラブル発生件数集計指示を入力されたときに、 トラブル情報記憶領域123に記録されている全トラブル情報の中の当日発生のトラブルの件数を集計して、その集計結果であるトラブル発生件数情報を一時記憶する。そして、トラブル発生件数情報は、その入力部11からPOS本部への送信指示を入力されたときに、 POS中央装置20に送信される。
【0038】
結局、POS端末10からPOS中央装置20に送信されるPOS情報には、顧客情報、商品情報、トラブル情報、売上日報、トラブル発生件数情報がある。売上日報とトラブル発生件数は、POS中央装置20においてPOS端末10から受信する顧客情報、商品情報、トラブル情報、POS情報を集計・編集して作成するようにしても良い。
【0039】
続いて、顧客から商品を預かる場合の店員の応対及びPOS端末10の作用について図9のフローチャートを参照しながら説明する。
[POS端末の作用]
(1)接客処理
POS端末10は、起動されると、まず、表示部13に図8Aに示される接客画面130を表示する(S301)。これに応じて、図示されていないが、店員が担当者コードを入力して、担当者表示エリア131に担当者コードと氏名を表示させる。続いて、担当者は来客のたびに顧客識別情報を入力する(S302)。顧客が再来顧客である場合は、例えば、利用カードの提示を求め、その利用カードをハンディスキャナー又はカードリーダで読み取って顧客識別情報の入力を行う。顧客が新規顧客である場合は、新たに発行する利用カードを読み取って顧客識別情報の入力を行う。利用カードをハンディスキャナー又はカードリーダで読み取ることに代えて、例えば電話番号を入力しても良い。
【0040】
入力された顧客識別情報がすでに登録されているか否かで、その顧客が新規顧客か再来顧客かを判断する(S303)。来客が新規顧客であるとき(S303でY)は、店員がその顧客の住所、電話番号、氏名などの顧客情報を入力する(S308)。再来顧客であるとき(S303でN)は、データベースの顧客マスタテーブルから当該顧客のマスタデータを読み出し、接客画面の顧客名表示エリア132に当該顧客の氏名を表示する(S304)。
【0041】
(2)過去のトラブル情報の表示
当該顧客についてトラブル情報記憶領域123にトラブル情報が記憶されている場合は、その過去のトラブル情報を呼び出す(S305)。トラブル情報がある場合(S305でY)、接客画面のトラブル情報表示エリア134に直近のトラブル情報を表示する(S306)。そのトラブル情報表示エリア134をタッチすると、図6Aのトラブル情報登録画面13Cで登録された過去のトラブル情報の詳細が、図6Bに例示するようにトラブル情報表示画面に一覧可能に表示される。
【0042】
トラブル情報の表示をどの画面位置で行うか、また、表示内容は、任意である。望ましい実施の形態においては、表示されるトラブル情報には、トラブル内容と未解決・解決済の情報も含まれる。未解決である場合は、赤色又は点滅等により強調表示される。強調表示により、店員は未解決のトラブルが存在することを速やかに気付き、接客開始当初にトラブル内容に適合する対応を行うことができる。また、店員は表示されている過去のトラブル情報を考慮して、再発防止に心掛けることが期待できる。
【0043】
新規顧客と再来顧客のいずれの場合も、顧客から商品を預かるケースか、商品を返却するケースかを、例えばタッチパネルの受付ボタン138又は返却ボタン139をタッチして入力する(S307)。受付ボタン138をタッチした場合は、顧客マスタテーブルT2から当該顧客の顧客情報が呼び出され、図8Bに示すように、接客画面130の顧客名表示エリア132にその顧客の氏名が、及び、その顧客情報にコメントが含まれている場合はそのコメントがコメント表示エリア133に表示され、利用履歴表示エリア134に利用履歴が表示される。さらに、商品メニューテーブルT1から商品メニューが呼び出されて、商品メニュー表示エリア136に受付可能な商品のメニューが表示される(S309)。
【0044】
(3)商品預かり処理
受付ボタン138をタッチした場合(S307においてYの場合)は、商品預かり処理を次のように行う。すなわち、預かる商品にシミ、汚れ、破れ、変色、退職等の問題が無いか否かを丹念に点検した後、接客画面130の商品メニュー表示エリア136に表示(S309)された商品情報を入力する(S310)。
【0045】
次に、店員は顧客に当該商品のクリーニング料金の前払いを求め、クリーニング料金受領を終了したときに入力部に精算終了を入力する(S311においてY)と、制御部は、一時記憶していた預かり商品履歴マスタデータを商品情報登録部161により預かり商品履歴テーブルT4に登録する(S312)。また、引き続いて、店員が預り証発行指示を入力すると、預り証発行部を構成するプリンタ14が預かった商品についての預り証を発行する(S313)。さらに、タグ印刷部が設けてある場合は、商品識別番号を印刷したタグを発行する(S314)。このタグは預かった商品を他の商品と区別するために付される。これにより、商品預かり処理が終了する。
【0046】
(4)商品返却処理
返却ボタン139をタッチした場合(S307においてNの場合)は、商品返却処理を次のように行う。すなわち、顧客が持参した預り証の登録番号又は顧客コードを入力(S315)すると、預かり商品表示エリア137に商品が表示される(S316)。商品メニュー表示エリア136に表示されている商品メニューのうち、返却する商品に対応するものをタッチした後、返却ボタン139をタッチする(S317)と、その商品について返却した旨が登録されて、預かり商品履歴テーブルT4の預かり商品履歴データが更新される(S318)。他に返却するべき商品がある場合は、全ての商品の返却を終了するまで、返却商品名の入力と預かり商品履歴テーブルの更新(S316、S317、S318)が繰り返される。
【0047】
(5)トラブル情報登録
接客の際に、顧客との間で何らかのトラブルが発生した場合(S319でYの場合)は、店員が顧客とともにトラブル内容を確認し、解決した場合、解決しなかった場合のいずれについても、トラブル情報登録画面13Cにおいて、トラブル発生日、トラブルに対応した店員名又は店員コード番号、トラブル分類、商品コード、商品名、トラブル内容、未解決か解決かの状況等のトラブル情報を入力し、トラブル情報記憶領域123に登録する(S320)。
【0048】
全商品の返却を終了したときに店員が商品情報登録画面13Aに表示されている返却終了ボタンをタッチするか、又はキーボードの所定の返却終了キーを押すと(S321でY)、制御部は商品返却処理を終了する。
【0049】
POS端末10の制御部16は、記憶部12に記憶されている全マスタデータ、すなわち、顧客情報、商品情報及びトラブル情報を、例えば、終業時(S322においてYのとき)に入力部11からの送信指示入力(S323においてY)に基づいて読み出し、通信部15を介してPOS中央装置20に送信する(S324)ように構成されている。
【0050】
また、POS端末の入力部11から売上日報指示を入力する(S325でY)と、制御部16の売上日報作成部165が全てのマスタデータの中の当日受領したクリーニング料金を集計して、商品取次店名又は商品取次店コード番号、集計日、受付けた顧客数、売上合計金額からなる売上日報データを作成し(S326)、一時記憶する(S327)。
【0051】
さらに、全てのマスタデータの中の当日に発生したトラブルの件数を集計して、トラブル発生件数データを作成し、一時記憶する(S328)。
【0052】
そして、送信指示を入力すると(S329においてY)、一時記憶された上記売上日報データとトラブル発生件数データをPOS中央装置20に送信する(S330)。
【0053】
[POS中央装置の構成]
POS中央装置20は、図10に示すように、入力部21と、記憶部22と、表示部23と、出力部24と、通信部25と、制御部26とからなっている。
【0054】
POS中央装置20は、通信部25を介して各商品取次店のPOS端末10から受信する売上日報データ、POS情報、トラブル情報、トラブル発生件数データを記憶部22に格納するので、常時又は必要時に各商品取次店の売上日報、トラブル発生件数などを表示部23に表示させて、閲覧することができる。
【0055】
POS中央装置20が各POS端末10からマスタデータ及びPOS情報を受信するようにした場合は、POS端末10に代わって、これらを蓄積する蓄積手段を用い、その蓄積されたマスタデータ、POS情報及びトラブル情報を集計して売上日報データ、トラブル発生件数データをPOS中央装置20側で作成することきができる。
【0056】
また、本発明の好ましい実施の形態においては、図11に示すように、各POS端末10とPOS中央装置20との間で双方向でトラブル情報の受け渡しが可能であり、両方でトラブル情報を更新・更新・削除することができる。そして、営業情報、すなわち、少なくとも売上日報、POS情報、トラブル発生件数を把握することができ、又は、これらに加えて、全顧客のマスタデータ(顧客情報、商品情報、トラブル情報)をも把握することができる。
【0057】
さらに、本発明の好ましい実施の形態においては、POS中央装置20では、トラブル情報が顧客データと結び付けられて、POS中央装置20と複数のPOS端末の間が1:多の関係にある。
【0058】
さらに、本発明の好ましい実施の形態においては、収集されたトラブル情報の全部又は重要な一部を選択して、定期的に又は必要に応じて、いずれかの商品取次店で発生したトラブル情報を他商品取次店のPOS端末に送信して、各商品取次店が互いにそのトラブル情報を共有し、表示部13に表示して全商品取次店又は全店員が閲覧できるようにしてある。
【0059】
また、別の実施の形態にいては、POS中央装置20の上位装置として全商品取次店を統括するPOS本部40を設け、そのPOS本部40に備えたコンピュータの表示部に、図12に例示するようなトラブル情報一覧画面41を表示して、各商品取次店のトラブルを閲覧することを可能にしている。従って、POS本部40では、表示内容を分析・検討して、業績改善、トラブル発生の事前防止策などを立案し、実行することができる。
【0060】
POS本部40のデータは、ブラウザよりログインして閲覧することが可能であり、各店舗のトラブルや全店舗のトラブルを閲覧することができる。このようなトラブル情報の相互共有により、全商品取次店でのトラブルの発生又は増発を有効に防止することが可能である。
【0061】
POS本部40の機能は、POS中央装置20に組み込むことでもよい。
【0062】
以上のように、本発明によれば、クリーニング業界において、トラブル情報を良く管理し、これを全商品取次店及び全店員で共有することにより、トラブル発生又は増発を未然に防止し、顧客満足度の向上に繋げることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーニング業用POSシステムを構成するPOS端末において、商品預かり時に接客画面上で顧客ごとのトラブル情報の登録・更新を可能にし、接客開始時に顧客情報を呼び出し、その顧客の過去のトラブル情報を接客画面に表示し、そのトラブル情報には、少なくともトラブル内容と未解決・解決のいずれであるかを示す情報とが含まれることを特徴とするクリーニング業におけるトラブル防止方法。
【請求項2】
未解決のトラブルについては、接客画面にトラブル情報を強調表示することを特徴とする請求項1に記載のクリーニング業におけるトラブル防止方法。
【請求項3】
POS端末において、売上日報データ作成時にトラブル情報を集計して、出力される売上日報に当日のトラブル発生件数を加えることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング業におけるトラブル防止方法。
【請求項4】
トラブル情報を登録・更新するたびに、又は、売上日報の出力時に、そのトラブル情報をPOS端末からPOS中央装置に送信し、POS本部でそのトラブル情報を把握できるようにすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のクリーニング業におけるトラブル防止方法。
【請求項5】
POS中央装置で、送信されてきたトラブル情報を蓄積し、これを分析可能にすることを特徴とする請求項4に記載のクリーニング業におけるトラブル防止方法。
【請求項6】
クリーニング工場又は管理本部に設置されたPOS中央装置と、各商品取次店に設置され、POS中央装置にネットワークを介して双方向通信可能に接続されたたPOS端末とからなるクリーニング業用POSシステムであって、
前記POS中央装置は、前記POS端末から受信した顧客情報及びトラブル情報を蓄積する蓄積手段と、その蓄積した情報を各POS端末に配信する送信手段とを備え、
前記POS端末は、顧客識別情報を含む顧客情報と商品情報とトラブル情報を入力する入力手段と、入力された顧客情報と商品情報とトラブル情報を登録する登録手段と、顧客識別情報を入力された時に、その顧客識別情報に対応して登録されているトラブル情報を接客画面に表示する表示手段とを備えていることを特徴とするクリーニング業用POSシステム。
【請求項7】
顧客情報と商品情報とトラブル情報を入力する入力手段と、入力された顧客情報と商品情報とトラブル情報を登録する登録手段と、顧客識別情報を入力された時に、その顧客識別情報に対応して登録されているトラブル情報を接客画面に表示する表示手段とを備えているPOS端末。
【請求項8】
顧客ごとにトラブル情報を登録・変更・削除する機能とそのトラブル情報を表示する機能を備えて、そのトラブル情報をすべての店員が共有できるようにした請求項7に記載のPOS端末。
【請求項9】
顧客情報とこれに対応して登録されているトラブル情報をPOS中央装置へ送信する送信手段を備えた請求項7又は8に記載のPOS端末。
【請求項10】
売上日報作成時にトラブル発生件数を集計する集計手段を備えていることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載のPOS端末。
【請求項11】
前記POS端末から受信したトラブル情報を蓄積する蓄積手段と、その蓄積したトラブル情報を各POS端末に配信する送信手段と、その蓄積したトラブル情報を表示する表示手段とを備えているPOS中央装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−243122(P2012−243122A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113313(P2011−113313)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【特許番号】特許第4951134号(P4951134)
【特許公報発行日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(502038842)株式会社デジアイズ (18)
【出願人】(501363969)株式会社デジジャパン (4)
【Fターム(参考)】