説明

クリーニング装置、定着装置及び画像形成装置

【課題】表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去する方式において、被清掃体の表面の付着物を長期間に渡って良好に除去することができるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】塗布部材クリーニング装置70は、表面移動する被清掃体である塗布ローラ41の表面上の付着物である残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを除去手段によって除去するクリーニング装置であり、除去手段として、塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能に張架した帯状のフィルム部材であるウェブ72と、ウェブ72と塗布ローラ41表面とが接触する当接位置Eでウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接するクリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に用いられるクリーニング装置、並びに、これを備えた定着装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ及び複写装置のような画像形成装置は、紙、布、及びOHP用シートのような記録媒体に、画像情報に基づいて文字や記号を含む画像を形成する装置である。特に、電子写真方式の画像形成装置は、普通紙に高精細な画像を高速で形成することができるため、広くオフィスで使用されている。このような電子写真方式の画像形成装置においては、記録媒体上のトナーを加熱して溶融させ、溶融したトナーを加圧することによって、トナーを記録媒体上に定着させる熱定着方式が広く用いられている。この熱定着方式は、高い定着速度及び高い定着画像品質等を提供することができるため、好適に用いられている。
【0003】
しかし、このような熱定着方式を採用した電子写真方式の画像形成装置における消費電力の半分以上は、熱定着方式の定着装置においてトナーを加熱処理のために消費されている。一方、近年における環境問題対策の観点からは、低消費電力(省エネルギー)の画像形成装置が望まれている。このため、従来の画像形成装置における消費電力の半分以上を消費する定着装置での省エネルギー化が求められている。従来の熱定着方式の定着装置では加熱処理に多くの電力を消費していたため、トナーを定着するためにトナーを加熱する温度を今までよりも極端に低下させる定着方式、又は、トナーを加熱することを必要としない定着方式が望まれている。特に、トナーを加熱することなくトナーを記録媒体に定着させる非加熱定着方式が低消費電力の点で理想的である。
このような非加熱定着方式としては、トナーの樹脂成分の少なくとも一部を溶解または膨潤させることでトナーを軟化させる軟化剤を含有する定着液を記録媒体表面上のトナー像に付与してトナー像を定着させる湿式定着方式が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4に記載の定着装置で用いる定着方式)。このように、湿式定着方式の定着装置ではトナーを軟化させるために加熱処理を行う必要がないため、熱定着方式に比べて省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
特許文献1〜特許文献4の何れの特許文献に記載の定着装置も、接触型の定着液付与手段である塗布ローラを用いて定着液を液状のまま記録媒体に塗布することで、定着液を記録媒体上の未定着トナー像に付与する構成である。このような液状の定着液をトナー像に塗布して定着を行う構成では、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止を両立させることが極めて難しいという問題があった。以下、この問題について説明する。
【0005】
塗布ローラを用いて記録媒体上の未定着トナー像へ定着液を塗布する構成において、定着液を記録媒体に微量付与するために、塗布ローラ上の定着液の層の厚みが未定着トナー像の層よりも薄くした場合、次のような問題が生じることがあった。塗布ローラの表面が記録媒体と接触した後、塗布ローラの表面が記録媒体から剥離する位置で、記録媒体に付与されず塗布ローラ表面に残った定着液の液膜によって生じる表面張力で記録媒体上のトナー層のトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラの表面にオフセットしたトナー粒子が付着し、塗布ローラと剥離した後の記録媒体上のトナー像が大幅に乱れてしまう。
【0006】
逆に、塗布ローラ上の定着液の層の厚みを未定着トナー層よりも十分厚くすると、塗布ローラが記録媒体から剥離する位置では、液量が多いため塗布ローラの表面の液膜による表面張力が記録媒体上のトナー層のトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ側にトナーが付着しにくくなるが、記録媒体の表面に多量の定着液が塗布されるため、記録媒体上で過剰な定着液により定着液の拡散にともないトナー粒子が流れ画質劣化を生じたり、定着液の乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、記録媒体に著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。また、定着液が水を含有するものであると、紙等のセルロースを含有する記録媒体への定着液の塗布量が多い場合、紙等の記録媒体が著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生する恐れがある。
このように、塗布ローラを用いて定着液を塗布する構成では、定着液の塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、定着液の乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下、記録媒体によっては紙詰まりが発生しやすくなる、といった問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために定着液を微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラの表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。
よって、塗布ローラで定着液を塗布する構成では、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために記録媒体上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラへのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
【0007】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、特許文献5には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、特許文献5のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献5に記載の定着装置のように、塗布ローラ等の塗布部材を用いて泡状定着液を記録媒体に塗布する構成の場合、記録媒体に泡状定着液を塗布したあとの塗布部材から除去手段によって除去する塗布部材クリーニング装置を設けることが望ましい。これは、記録媒体に泡状定着液を塗布する塗布位置を通過した後の塗布部材には記録媒体に塗布しきれずに残った残留泡状定着液が付着しており、この残留泡状定着液を回収するためである。残留泡状定着液は、泡状定着液として塗布部材に供給された後、時間が経過しており、且つ、塗布位置で機械的な力を受けているため、泡の一部が消泡するなど、塗布部材に供給されたときよりも泡状定着液の密度が上昇することが考えられる。このため、塗布部材に残留泡状定着液が残留している状態で新たな泡状定着液を塗布部材に供給すると、密度が異なる泡状定着液が混ざって記録媒体に泡状定着液を均一に付与することができなくなるおそれがある。さらに、泡状定着液を用いることにより、オフセットして塗布部材に付着するトナーは通常の液状の定着液を用いる構成に比べて少なくなるものの、オフセットは起こり得るものであり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写され、画像劣化となるおそれがある。このように、記録媒体に付与する泡状定着液が不均一になったり、オフセットしたトナーが記録媒体に再転写されたりすることを防止するために、塗布部材クリーニング装置を設けて残留泡状定着液を塗布部材表面から除去するのである。
【0009】
しかしながら、本発明者らは、塗布部材クリーニング装置の除去手段として、塗布部材の表面に当接してその表面上のオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を除去するクリーニングブレードを設けたところ、次のような問題を引き起こしてしまった。即ち、クリーニングブレードを塗布部材の表面に当接させると、クリーニングブレードと塗布部材との当接部の入口(当接部に対して塗布部材の表面移動方向上流側)でオフセットトナーを含んだ残留泡状定着液を塞き止め滞留させる。このオフセットトナーは、画像形成動作中には定着液によって軟化した状態になっているが、画像形成動作が停止して長期間放置されると、硬い樹脂の塊になる。この樹脂の塊は、クリーニングブレードと塗布部材表面との両方に対して固着した状態になる。この状態で画像形成動作を開始すると、硬い樹脂の塊を粉砕しながら、粉砕物をクリーニングブレードと塗布部材との当接部に進入させて、ブレード表面や塗布部材表面を傷付けてしまう。そして、この傷付きにより、クリーニング不良が発生してしまう。
【0010】
このような問題は、塗布部材の表面上の泡状定着液を用紙などの最終的な記録媒体に塗布する構成ではなく、中間転写体などの中間的なトナー像担持体に塗布する構成でも生じ得る。また、定着液として泡状定着液を塗布する構成に限るものではなく、通常の液状の定着液を塗布する構成でも、同様の問題を生じ得る。
なお、このような問題は、上述のように、軟化させたトナー粒子が経時で硬化するような定着液を用いた定着装置の塗布部材クリーニング装置のように、被清掃体上の除去対象となる付着物がトナー粒子を含有する定着液であるクリーニング装置において生じ易い。しかし、被清掃体上の除去対象となる付着物が他のものである場合も同様の問題を生じ得る。
例えば、被清掃体が加熱式の定着装置の定着部材であるクリーニング装置のように除去対象となる付着物がオフセットトナーの場合や被清掃体がトナー像担持体であるクリーニング装置のように除去対象となる付着物が転写残トナーの場合であっても、何らかの理由により被清掃体上に硬い異物が付着し、クリーニングブレードとの当接部に滞留し続けると、被清掃体の表面を傷付けるおそれがある。このように、被清掃体の表面にクリーニングブレードを当接するクリーニング装置であれば、付着物がクリーニングブレードと被清掃体との当接部に滞留し続けることに起因して被清掃体の表面を傷付ける問題が生じ得る。そして、この傷付きによってクリーニング不良が発生してしまう。
【0011】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去する方式において、被清掃体の表面の付着物を長期間に渡って良好に除去することができるクリーニング装置、並びにこれを備えた定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去手段によって除去するクリーニング装置において、上記除去手段は、上記被清掃体表面に接触し、該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状のフィルム部材と、該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置で該フィルム部材を挟んで該被清掃体表面に当接するクリーニングブレードとを備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のクリーニング装置において、上記フィルム部材の2つの面のうちの上記クリーニングブレードが接触する側の面が粗面処理が施されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のクリーニング装置において、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向上流側及び下流側の該フィルム部材における該クリーニングブレードが接触する側の表面と接触し、該フィルム部材をガイドするガイド部材を備えることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記フィルム部材は、繰り出し軸から繰り出され、上記クリーニングブレードが上記清掃体表面に当接する位置を通過した後、巻き取り軸に巻き取られる巻き取り式のウェブであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記フィルム部材は、無端移動可能なエンドレスベルト状の部材であり、該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置から離れた位置で該フィルム部材の表面上の付着物を除去するフィルム部材清掃手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5のクリーニング装置において、上記フィルム部材清掃手段は、上記フィルム部材の表面に接触して該フィルム部材の表面上の付着物を除去するブレード状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブレードを備え、該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置よりも該フィルム部材の移動方向下流側、且つ、該フィルム部材清掃ブレードが該フィルム部材に接触する位置よりも該フィルム部材の移動方向上流側に、ブレード状とは異なる構成のフィルム部材清掃部材を備えることを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6のクリーニング装置において、上記フィルム部材清掃ブレードは、清掃対象である上記付着物に対して耐性を有することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項5乃至7のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記フィルム部材清掃手段は、ブラシ繊維が上記フィルム部材の表面に接触して該フィルム部材の表面上の付着物を除去する回転ブラシ状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブラシを備え、無端移動する表面が該フィルム部材清掃ブラシに接触し、該フィルム部材清掃ブラシに付着した付着物を回収するブラシ清掃ローラと、該ブラシ清掃ローラの表面に接触して該ブラシ清掃ローラの表面上の付着物を除去するブレード状のローラ部材清掃ブレードとを備えることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8のクリーニング装置において、上記フィルム部材清掃手段は、上記フィルム部材の無端移動方向の複数箇所に上記フィルム部材清掃ブラシが接触するように、複数の該フィルム部材清掃ブラシを備えることを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向上流側または下流側の該フィルム部材における該フィルム部材の表面移動方向に対して直交する幅方向の端部の位置を検出するフィルム端部検出手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項4のクリーニング装置において、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材の表面移動方向に対して直交する幅方向の端部の位置を検出するフィルム端部検出手段と、上記巻き取り軸の軸方向の一端を上記ウェブの巻き取り方向に対してほぼ直交する方向に移動させる巻き取り軸移動機構を備え、該巻き取り軸移動機構は該フィルム端部検出手段の検出結果に基づいて該巻き取り軸の該一端の位置を調節することを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記被清掃体は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を表面に担持し得る表面移動体であり、上記フィルム部材は該定着液に対して耐溶剤性を有することを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記被清掃体は、泡状の液体を表面に担持し得る表面移動体であり、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材を加熱する加熱手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項13のクリーニング装置において、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材の該クリーニングブレードが接触する側の表面と接触し、該フィルム部材をガイドするガイド部材を備え、上記加熱手段は、該ガイド部材を介して該フィルム部材を加熱することを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項13または14のクリーニング装置において、上記加熱手段は、上記フィルム部材の耐熱温度以下の範囲で加熱することを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、上記被清掃体は、泡状の液体を表面に担持し得る表面移動体であり、上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側で、該フィルム部材の該被清掃体表面と接触する側の表面と対向する位置で該フィルム部材に付着した上記泡状の液体を加熱する加熱手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項17の発明は、請求項16のクリーニング装置において、上記加熱手段を、上記フィルム部材の表面上から落下した付着物が回収される位置に配置し、該加熱手段の付着物と接触し得る表面は付着物に対して耐性を有することを特徴とするものである。
また、請求項18の発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に付与する泡状定着液付与手段とを有し、該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至17のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項19の発明は、請求項18の定着装置において、上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とするものである。
また、請求項20の発明は、樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、該定着手段として、請求項18または19に記載の定着装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、フィルム部材を挟んでクリーニングブレードが被清掃体表面に当接する当接部の入口で、被清掃体表面上の付着物を塞き止めて滞留させるが、フィルム部材を適切なタイミングで表面移動させることによって、入口部に滞留していた異物を当接部の入口から取り去ることができる。これにより、付着物がクリーニングブレードと被清掃体との当接部に滞留し続けることに起因して被清掃体の表面を傷付けることを防止し、被清掃体の表面が傷付くことに起因するクリーニング不良の発生を防止することができる。これにより、被清掃体の表面の付着物を長期間に渡って良好に除去することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態の塗布部材クリーニング装置の拡大説明図。
【図2】実施形態に係るプリンタの要部を示す概略構成図。
【図3】同プリンタのK用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図4】同プリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図5】同定着装置の定着液供給部を示す拡大構成図。
【図6】同定着装置における膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図7】図6よりも膜厚調整ギャップを広くした状態の膜厚調整ブレードと塗布ローラとを示す拡大模式図。
【図8】塗布ニップにおける塗布ローラ表面と転写紙とを拡大して示す拡大模式図。
【図9】泡状定着液を示す拡大模式図。
【図10】定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的遅く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図。
【図11】定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的速く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図。
【図12】300[μm]のジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験にて、泡状定着液の膜厚をトナー層の厚みと同等以上にした場合における塗布ニップを示す拡大模式図。
【図13】同ラージスケールモデル実験にて、泡状定着液の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした場合における塗布ニップを示す拡大模式図。
【図14】実験に用いた浸透時間測定装置の一例を示す概略図。
【図15】第1測定例における上部電極に形成した各泡状定着液層の厚みと、トナー層浸透時間との関係を示すグラフ。
【図16】第2測定例における塗布時圧力(=ニップ圧)と浸透時間との関係を示すグラフ。
【図17】泡状定着液の各泡粘度と、トナー層に対する泡の浸透時間との関係を示すグラフ。
【図18】画像濃度と泡状定着液の塗布量との関係を示すグラフ。
【図19】泡膜温度と、泡状定着液の泡粘度との関係を示すグラフ。
【図20】第二ガイドローラとその周囲構成とを示す拡大構成図。
【図21】フィルム当接ブレードが塗布ローラから離間した状態の説明図。
【図22】当接位置の下流側のガイド部材としてガイド板を設けた構成の説明図。
【図23】残留泡状定着液を担持する側のウェブ表面と対向するヒータを設けた構成の説明図。
【図24】第1変形例に係るプリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図25】第2変形例に係るプリンタの定着装置を示す拡大構成図。
【図26】第3変形例に係る定着液塗布部の拡大説明図。
【図27】(a)は、従来の定着装置において、比較的薄定着液の層を塗布ローラから転写紙に塗布している状態を示す模式図、(b)は、同状態における塗布ローラと転写紙との間の拡大して示す拡大模式図。
【図28】従来の液定着方式の定着装置における定着液塗布部を拡大して示す拡大構成図(液層厚みが比較的大きいとき)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタ100という)の実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタ100の基本的な構成について説明する。図2は、プリンタ100の要部を示す概略構成図である。同図において、プリンタ100は、イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),黒(K)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3Y,M,C,K、転写ユニット20、紙搬送ユニット28、レジストローラ対15、定着装置30、図示しない光書込装置などを備えている。
【0016】
図示しない光書込装置は、レーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、プロセスユニット3Y,M,C,Kにおけるドラム状の感光体4Y,M,C,Kに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4Y,M,C,Kの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像になる。なお、符号の後に付されたY,M,C,Kという添字は、イエロー,マゼンタ,シアン,黒用の仕様であることを示している。
【0017】
プロセスユニット3Y,M,C,Kはそれぞれ、潜像担持体たる感光体4と、その周囲に配設される各種機器とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ100本体に対して着脱可能になっている。黒用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、図3に示すように、感光体4Kの他、現像装置6K、帯電装置7K、除電ランプ8K、ドラムクリーニング装置9K等を備えている。
【0018】
感光体4Kとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。無端ベルト状のものを用いても良い。
【0019】
現像装置6Kは、図示しない磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて静電潜像を現像してKトナー像を得る二成分現象方式のものである。二成分現像剤の代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤によって現像を行うタイプのものを使用してもよい。感光体4Kの表面上で現像されたKトナー像は、後述する一次転写ニップで中間転写ベルト25に一次転写される。
【0020】
一次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーは、ドラムクリーニング装置9Kによって感光体4K表面から除去される。同図では、ドラムクリーニング装置9Kとして、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレードによって転写残トナーを掻き取る方式のものを示しているが、他の方式によって転写残トナーを除去するものを用いてもよい。
【0021】
除電ランプ8Kは、光照射によって感光体4Kを除電する。除電された感光体4Kの表面は、帯電装置7Kによって一様に帯電せしめられることで、初期化する。帯電装置7Kとしては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4Kに当接させながら回転させるものを示したが、感光体4Kに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0022】
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの感光体4Y,M,C,Kには、これまで説明してきたプロセスによってY,M,C,Kトナー像が形成される。4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの下方には、転写ユニット20が配設されている。この転写ユニット20は、複数の張架ローラ(21、22、23)によって張架している中間転写ベルト25を、感光体4Y,M,C,Kに当接させてY,M,C,K用の一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト25を駆動ローラ21の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動させる。
【0023】
Y,M,C,K用の一次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された一次転写ローラ26Y,M,C,Kによって中間転写ベルト25を感光体4Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら一次転写ローラ26Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって一次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の一次転写ニップには、感光体4Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる一次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の一次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各一次転写ニップで各色トナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0024】
転写ユニット20の図中下方には、駆動ローラ29bと二次転写ローラ29aとの間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。この紙搬送ユニット28は、自らの二次転写ローラ29aと、転写ユニット20の中間転写ベルト25との間に、紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する二次転写ニップが形成されている。
【0025】
紙搬送ユニット28の二次転写ローラには図示しない電源によって二次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット20の中間転写ベルト25のループ内で、中間転写ベルト25が掛け回されている転写バックアップローラ23は、接地されている。これにより、二次転写ニップに二次転写電界が形成されている。
【0026】
この二次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対15が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。二次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が二次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙Pに一括二次転写され、転写紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って図示しない定着装置30へと搬送される。
【0027】
二次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、二次転写ニップで転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置24によって掻き取り除去される。
【0028】
図4は、実施形態に係るプリンタの定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30は、転写紙Pに定着液を塗布する定着液塗布部140と定着液供給部130とからなる。
定着液塗布部140は、塗布ローラ41、加圧ローラ43、塗布部材クリーニング装置70、加圧部材クリーニング装置80などを備える。
【0029】
図5は、定着装置30の定着液供給部130を示す拡大構成図である。
定着液供給部130は、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを泡化させながら、得られた泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給するものである。具体的には、定着液収容器31内に収容されている液状定着液31aを、搬送ポンプ33及び液搬送パイプ34等からなる定着液輸送手段によって気体・液体混合部35に送る。
【0030】
搬送ポンプ33としては、ギヤポンプ、ベローズポンプ、チューブポンプ等を用いることが可能であるが、中でもチューブポンプを用いることが望ましい。ギヤポンプ等などのように、定着液中で駆動する機構があると、ポンプ内で液が起泡し、液に圧縮性が出て、搬送能力が低下させるおそれがある。また、前述の機構を構成する材料によって定着液を汚染したり、機構を定着液で劣化させたりするおそれもある。これに対し、チューブポンプは、チューブ内の液を、チューブを変形させながら押し出す機構であり、定着液内で駆動する機構がないため、それらの不具合を引き起こすことがない。
【0031】
気体・液体混合部35においては、定着液の流入とともに空気口36から空気を取り入れて液状定着液31aと空気とを混合しながら、それらを微小孔シート37に通すことで、定着液を泡化させる。微小孔シート37の孔径は、例えば30〜100[μm]程度である。微小孔シート37の代わりに、連泡構造の多孔質部材である焼結セラミックス板、不織布、発泡樹脂シート等を用いてもよい。また、液状定着液31aと空気口36からの空気とを羽根状攪拌子で攪拌して液に気泡を巻き込みませることで泡化させたり、搬送ポンプ33の吐出側に空気供給ポンプを接続して泡化させたりする構成を採用してもよい。
【0032】
気体・液体混合部35としては何れの構成であっても、例えば0.5〜1[mm]程度の比較的大きな泡径の泡をごく短時間で生成することができる。但し、後述するように、定着用の泡としては、できるだけ細かくする方が望ましい。そこで、プリンタ100では、気体・液体混合部35で得られた比較的大きな泡の泡状定着液Buを、泡微細化部38で微細化させる。
【0033】
気体・液体混合部35で生成された比較的大きな泡の泡状定着液Buは、泡搬送パイプ38cを通って泡微細化部38に供給される。
泡微細化部38は、比較的大きな泡径の泡をせん断力の付与によって2つ以上に分割して微細化させる。外側円筒38aの中に内側円筒38bを内包する二重円筒構造になっており、泡状定着液Buを不動の外側円筒38aと、回転する内側円筒38bとの隙間に通すことで、泡状定着液Buの比較的大きな泡径の泡にせん断力を付与する。このせん断力により、大きな泡を2つ以上の微小な泡に分割しながら、外側円筒38aに設けられた泡の出口38dからノズル39へ、所望の微小な泡径を有する泡状定着液Buを排出する。
【0034】
なお、液搬送速度は、回転する内側円筒38bの回転数や、内側円筒38bの軸線方向長さに基づいて決定することが望ましい。外側円筒38aの内径をd1[mm]、内側円筒38bの軸線方向長さをL[mm]で表し、且つ内側円筒38bの外径d2[mm]、回転数をR[rpm]で表すと、微小な泡を生成するための液搬送速度V[mm/秒]は、「V=L×π×(d1−d2)/4/(1000/R)」という演算式で決まることがわかった。
【0035】
例えば、d1が10[mm]、d2が8[mm]、Lが50[mm]、回転数が1000[rpm]とすると、液搬送速度は約1400[mm/秒](1.4[cc/秒])となる。A4サイズの転写紙Pに定着処理を施すために必要な泡状定着液の量が3[cc]であると仮定すると、液状定着液31aから必要量の泡状定着液Buを生成するのに、約2秒の立ち上がり時間ですみ、極めて素早く、所望の泡径を有する泡状定着液Buを生成可能となる。内側円筒38bにらせん状の溝を設けて、外側円筒38a内での搬送性を向上させてもよい。
【0036】
このように、液状定着液31aを大きな泡径の泡からなる泡状定着液Buへと泡化させる気体・液体混合部35と、大きな泡にせん断力を加えて微小な泡に分割する泡微細化部38とを組み合わせることで、液状定着液31aを極めて短時間に5〜50[μm]程度の微小な泡径の泡からなる泡状定着液Buに変化させることができる。
【0037】
なお、泡状定着液Buのかさ密度としては、0.01〜0.1[g/cm]の範囲が望ましい。また、定着液は、転写紙P上のトナー等の樹脂含有微粒子の層への塗布時に泡状となっていればよく、定着液収容器31内で泡状である必要はない。定着液収容器31中では気泡を含有しない液体の状態にしておき、容器から液を供給する時点や、樹脂含有微粒子の層へ付与するまでの液搬送経路で泡状にすることで、定着液の輸送体積や保存体積の減容を図って、輸送コストや保存コストを低減することができる。
【0038】
泡微細化部38で得られた微細な泡状定着液Buについては、図4に示したように、ノズル39に通して、塗布ローラ41表面に供給する。供給された泡状定着液Buは、塗布ローラ41表面に対して自らの先端を所定の間隙を介して対向させている膜厚調整ブレード42により、塗布ローラ41表面上での膜厚が調整される。この膜厚調整ブレード42は、図6、図7に示すように、片持ち支持された状態で、固定端側のブレード回動軸42aを中心にして回動することで、自らの先端と、塗布ローラ41との間隙を変化させる。図示しない制御部は、モータ駆動によるブレード回動で前述の間隙を調整することで、図6に示すように、泡状定着液Buの塗布ローラ41表面上における膜厚を比較的薄くしたり、図7に示すように比較的厚くしたりする膜厚調整を行う。
【0039】
なお、膜厚調整ブレード42の代わりに、ワイヤーバーによって膜厚を調整してもよい。この場合、膜厚調整ブレード42に比べ、塗布ローラ41表面上における軸線方向の膜厚を均一にすることが可能になる。
【0040】
トナー像が形成された転写紙Pに泡状定着液Buを塗布するための塗布ローラ41には、弾性ローラ部を具備する加圧ローラ43が当接して塗布ニップCを形成している。上述した紙搬送ベルト29によって二次転写ニップから定着装置30に向けて搬送される転写紙Pは、画像面を塗布ローラ41に向けた状態でこの塗布ニップC内に挟み込まれる。そして、塗布ニップC内において、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが画像面に塗布される。
【0041】
次に本発明に係る定着装置30の定着の原理について概説する。
本発明は、樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させることで樹脂を含有する微粒子を軟化させる軟化剤を含有した泡状定着液を、記録媒体等の定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子に付与する。これにより、定着液塗布対象の表面上の樹脂微粒子を軟化させ、樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着方法を取っている。言うまでもないことだが、ここで、表記している樹脂微粒子とは、特に何であるかを限定はしないが、画像形成装置に適用した場合だと、トナーのことを指す。
【0042】
次に、従来の湿式定着方式を用いた定着装置について説明する。
上述した上記特許文献1には、トナーを溶解または膨潤可能で、水に不溶または難溶な有機化合物が水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いる湿式定着方式の定着装置が記載されている。この定着装置では、未定着のトナーが所定位置に配設された被定着物の表面に対して定着液を噴霧または滴下してトナーを溶解または膨潤させた後、被定着物を乾燥させる構成である。
【0043】
しかし、上記特許文献1の定着装置では、水に不溶又は難溶な有機化合物が、水に分散混合された水中油滴型の定着液を用いている。このため、多量の定着液を未定着トナーに付与した場合には、転写紙などの記録媒体(非定着物)が、定着液の水分を吸収し、記録媒体にシワやカールが発生する。これにより、画像形成装置に必要とされる安定かつ高速な記録媒体の搬送を著しく損なうこととなる。そこで、乾燥装置を用いて、定着液に含まれる多量の水を蒸発させることにより、記録媒体に付与された定着液から水分を除去しようとすると、熱定着方式を用いる画像形成装置の消費電力に匹敵する電力を必要とすることとなる。
【0044】
また、撥水性処理された未定着トナーを弾かない定着液として、油性溶媒に、トナーを溶解又は膨潤させる材料を溶解させた油性の定着液が従来よりいくつか提案されている。その一つとして例えば、上記特許文献2には、トナーを構成する樹脂成分を溶解又は膨潤させる材料を成分としての脂肪族二塩基酸エステル等を希釈液(溶媒)として不揮発性のジメチルシリコーンで希釈した(溶解させた)定着液が提案されている。また、上記特許文献3には、未定着トナー画像の定着液として、トナーを溶解し、かつシリコーンオイルと相溶性を有する溶剤の100の容量に対し、シリコーンオイル8〜120容量部を混合してなる相溶状態の定着液が提案されている。これにより、静電気的方式で形成された未定着トナー像を、画像を乱すことなく鮮明にかつ容易に記録媒体上に固着できる。このような油性の定着液は、撥水性処理された未定着トナーとの高い親和性を有する油性溶媒を含むため、撥水性処理された未定着トナーを弾くことなく、トナーを溶解又は膨潤させ、トナーを記録媒体に定着させることができる。
【0045】
このような従来の湿式定着方式では定着液を通常の液体状のまま記録媒体状のトナー像に付与していたため、記録媒体上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラへのトナーオフセット防止を両立することが極めて難しいという問題があった。この問題について図27及び図28を用いて説明する。
【0046】
図27は、従来の湿式定着方式の液状定着液を用いる定着装置60の説明図である。図27(a)は液状定着液を用いる定着装置60の概略説明図である。また、図27(b)は、液状定着液を用いる定着装置60における記録媒体である転写紙Pと転写紙Pに接触して液状定着液31aを塗布する塗布部材である塗布ローラ41との近接部の拡大説明図である。
図27(a)に示すように、塗布ローラ41を用いて転写紙P上の未定着のトナー層Tへ液状定着液31aを塗布する構成において、液状定着液31aを転写紙Pに微量付与するために、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚が未定着のトナー層Tの厚みよりも薄くなる場合、図27(b)のようになる。塗布ローラ41上の液状定着液31aには、塗布ローラ41の表面が転写紙Pと接触する塗布位置で塗布ローラ41から転写紙Pに付与されるものの他に、図27(b)中の矢印F1で示すように塗布位置を通過した後も塗布ローラ41の表面に残留するものがある。そして、塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置で、塗布ローラ41表面に残留する液状定着液31aの液膜によって生じる表面張力(図27(b)中の矢印F2方向に働く)で未定着のトナー層Tのトナー粒子が引っ張られてしまう。これにより、塗布ローラ41の表面にオフセットしたトナー粒子Taが付着し、塗布ローラ41と剥離した後の転写紙P上の定着トナー層Tbによって形成される画像が大幅に乱れてしまう。
【0047】
逆に、塗布ローラ41上の液状定着液31aの膜厚を未定着のトナー層Tよりも十分厚くすると、図28のようになる。塗布ローラ41の表面が転写紙Pから分離する位置では、液状定着液31aの液量が多いため塗布ローラ41表面の液膜による表面張力が未定着のトナー層Tのトナー粒子に作用しにくくなる。これにより、塗布ローラ41側にオフセットしたトナーが付着しにくくなるが、転写紙Pの紙面に多量の液状定着液31aが塗布されるため、過剰な液状定着液31aにより転写紙P上のトナー粒子が流され画質劣化を生じたり、転写紙Pに付与した液状定着液31aの乾燥時間が長くなり定着応答性に問題が生じたりしてしまう。また、転写紙Pに著しい残液感(紙を手で触れたときの湿った感触)が発生する。さらに、液状定着液31aが水を含有するものであると、記録媒体として紙等のセルロースを含有する転写紙Pへの液状定着液31aの塗布量が多い場合、紙等の転写紙Pが著しくカールし、画像形成装置などの装置内における記録媒体搬送時に紙詰まりが発生する恐れがある。
このように、塗布ローラ41を用いて液状定着液31aを塗布する構成では、液状定着液31aの塗布量が多すぎると、トナー粒子が流されることによる画質劣化、液状定着液31aの乾燥時間が長くなることによる定着応答性の低下という問題が生じる。さらに、記録媒体の材質によっては紙詰まりが発生しやすくなるという問題が生じる。一方、これらの問題を防止するために液状定着液31aを微量塗布する構成とすると、上述したように塗布ローラ41の表面にトナー粒子がオフセットしてしまう。よって、定着応答性向上や残液感低減やカール防止のために転写紙P上のトナー層に定着液を微量塗布することと塗布ローラ41へのトナーオフセットを防止することとを両立することが極めて難しい。
【0048】
定着液の微量塗布とトナーオフセットの防止とを両立することができる定着方式として、上記特許文献5には、定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とし、この泡状定着液を塗布ローラを用いて記録媒体上のトナー像に塗布する構成が記載されている。このように、定着液を泡状とすることにより定着液の密度を下げることが出来るため、従来よりも少量の定着液で塗布ローラ表面上の定着液の膜厚を厚くすることが出来、液体の表面張力の記録媒体上のトナー粒子に対する影響を軽減することができる。また、少量の定着液であるため、記録媒体上の残液感を抑制することが出来、泡状の定着液は通常の液体状の定着液よりも流れ難いため、定着液によってトナー粒子が流されることによる画像劣化も防止することができる。よって、上記特許文献5のように泡状定着液を用いて定着を行うことにより、従来よりも少量の定着液塗布量でトナー画像を乱すことなく定着することができる。
そして、本実施形態の定着装置30も上記特許文献5と同様に定着液を泡状にして記録媒体上のトナー層に塗布する構成である。
【0049】
また、上記特許文献5に記載の定着装置は、塗布部材である塗布ローラ上の泡状定着液の膜厚を制御する泡状定着液膜厚制御手段を備えている。そして、塗布ローラが記録媒体に接して泡状定着液を記録媒体上の樹脂微粒子に付与している時間が、塗布ローラによって塗布される泡状定着液が記録媒体上の樹脂微粒子層を浸透して記録媒体に到達する浸透時間より同じ又は長くなるように膜厚を制御する。これにより、樹脂微粒子の塗布ローラへのオフセット付着を防止でき、樹脂微粒子を乱すことなく、かつ樹脂微粒子を担持した記録媒体に定着液を塗布した後は素早く樹脂微粒子の記録媒体への定着が可能となる。このため、定着応答性に優れた定着を行うことができる。
【0050】
図8は、本実施形態の定着装置30において塗布ローラ41が転写紙Pと接触する部分(塗布ニップC)の拡大説明図である。
定着液を、少量であっても厚みの嵩張る泡状定着液Buの状態で転写紙Pに塗布することで、図示のように、液状の場合に比べてニップ出口から遠い位置で塗布ローラ41表面上の定着液と転写紙P上の定着液とを分離させる。更に、泡状にすることで、塗布ローラ41表面上の定着液の表面張力によるトナーの引き込みを解消する。これらの結果、塗布ローラ41へのトナーのオフセットを有効に抑えることができ、オフセットによる白抜け画像の発生を解消することができた。
【0051】
なお、未定着のトナー層Tのトナー粒子Tpの粒径が5〜10[μm]程度である場合、未定着のトナー層Tを乱すことなく泡状定着液Buを未定着のトナー層Tに付与するには、泡状定着液Buの泡径範囲を5〜50[μm]程度にすることが望ましい。プリンタ100では、泡微細化部38での泡微細化により、このような微細な径の泡をつくり出している。
【0052】
また、泡微細化部38で微細化した泡は、図9に示すように、気泡Bu−Aと、それぞれの気泡Bu−Aを区切る液膜境界Bu−B(以下、プラトー境界と称す)とから主に構成されている。
【0053】
泡状定着液Buを用いることで液状の定着液に比べ微量塗布量で画像劣化のない定着が行えるようになったが、定着速度を速くすると塗布ローラ41にトナーをオフセットさせることがあった。
【0054】
図10は、定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的遅く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図である。なお、図示の塗布部材51は、撥液性を発揮し、且つ記録媒体53は親液性を発揮するものとする。この場合、塗布ニップにおいては、トナー同士、トナーと記録媒体53との間、トナーと塗布部材51との間に、それぞれ液の表面張力による結合力が生じる。但し、同図においては、次のことが可能になる程度まで定着速度を遅く設定している。即ち、塗布部材51の表面上の定着液52が記録媒体53上のトナー層54に接触・浸透し、記録媒体53まで到達した後のタイミングで塗布部材51を分離することが可能になる程度である。塗布部材51は撥液性を発揮する材料からなり、且つ記録媒体53は親液性を発揮する材料からなる。すると、トナーと記録媒体53との結合力が勝り、トナーは塗布部材51に付着することなく塗布部材51から分離される。
【0055】
図11は、定着液を泡状にせずに且つ定着速度を比較的速く設定した条件で定着処理を行った場合における塗布ニップの様子を示す拡大模式図である。同図においては、塗布部材51がトナー層54に接触した後、定着液52がトナー層54を完全に浸透して記録媒体53まで到達する前に、塗布部材51が記録媒体53から分離している。このような条件において、定着液52の浸透したトナー同士や、トナーと塗布部材51との間には、液の表面張力による結合力が生ずる。この一方で、乾いたトナー間には弱い結合力しか生じないため、乾いたトナー間でトナー層54の分離が起こる。そして、塗布部材51にトナー層54のオフセットが発生してしまう。
【0056】
このようなオフセットの発生を防止するためには、塗布部材51の記録媒体53との接触時間が、トナー層54に対して定着液を浸透させて記録媒体53に到達させる時間よりも長くする必要がある。なお、ニップとは、塗布部材51の記録媒体53に対する接触開始点から分離開始点までの間の部分のことを示す。従って、ニップ時間は、接触開始から分離開始までの時間である。また、ニップ幅は、接触開始点から分離開始点までの長さを示す。また、ニップ圧は、ニップ部に加えられる圧力であり、ニップ部への加重をニップ部の面積で割った値を示す。
【0057】
本発明者らは、300[μm]のジルコニアビーズを用いたラージスケールモデル実験にて、泡状の定着液55がトナー層54に浸透する様子を光学顕微鏡観察した。その結果、図12に示すように、泡状の定着液55は、破泡することなく、ジルコニア粒子56の隙間を浸透し、ジルコニア粒子56に接した泡状の定着液55をその上部の泡が加圧しながらジルコニア粒子56の隙間を泡状の定着液55が浸透することがわかった。一般に、液体の場合、微粒子間を浸透する力は、液体の表面張力による毛管現象によるものである。これに対し、泡の場合、柔軟な連続体のような挙動を示し、微粒子間に浸透した泡をその上部の泡が押しながら連続的に泡が微粒子の隙間を埋めていくことが解った。トナーなどの6μmサイズの微粒子層においても、ラージスケールモデル実験と同様に、微粒子間に浸透した泡をその上部の泡が押しながら連続的に浸透すると考えられる。
【0058】
このようなラージスケールモデル実験にて、泡膜の厚みが微粒子層の厚みよりも薄い場合、図13に示すように、泡を押す力が途中で止まってしまい、泡状の定着液55は記録媒体53まですばやく到達できないことも観察された。
【0059】
また、上述した実験から、実際のスケールにおいて、泡状定着液Buの塗布部材51上の厚みと記録媒体53上におけるのジルコニア粒子56層の厚みは、定着液の粒子層に対する浸透時間と深い相関があることがわかった。
【0060】
そこで、本発明者らは、トナー等の樹脂含有微粒子層を定着液が浸透し記録媒体に到達するまでの時間(浸透時間と定義する)を測定しながら、樹脂含有微粒子層のニップ通過時間と、浸透時間との関係を調査してみた。
【0061】
図14は、実験に用いた浸透時間測定装置の一例を示す概略図である。なお、定着液としては泡状定着液を用い、且つ、トナーとしては樹脂製のものを用いた。定着液はイオン性の材料、例えばフォーム化に必要な起泡剤や分散剤が含有されているため、抵抗値10[Ω・cm]以下の導電性を発揮する。同図において、上部電極61は、定着装置の塗布部材に相当する。また、下部電極62は、定着装置内の記録媒体に相当する。上部電極61上に泡状の定着液63の層を形成し、下部電極62の面上にトナー層64を形成した。そして、下部電極62の下に加重検知ロードセル65を配置し、上下電極間には電圧を印加する。上部電極61を下部電極62に接触させると、加重検知ロードセル65が上部電極61の加重を検知し、接触開始点を決める。その後、泡状の定着液63がトナー層64を通過して下部電極62に到達すると電極間に電流が流れ、印加電圧値が変化する。加重検知ロードセル65の検出から電圧変化開始までのタイミングを測定することでトナー層浸透時間を計測することができる。
【0062】
図示の浸透時間測定装置を用いて浸透時間を測定した測定例について、説明する。
[第1測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]の嵩密度で上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層64を30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した状態の上部電極61に対して、下部電極62を0.03[kgf/cm]の圧力(塗布時圧力)で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いで、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0063】
この第1測定例における上部電極61に形成した各泡状定着液層の厚みと、トナー層浸透時間との関係を図15に示す。泡状定着液層の厚みがトナー層の厚みと同じかそれ以上の場合には、浸透時間がほぼ一定の値になるが、泡状定着液層の厚みがトナー層厚みよりも薄い場合は、泡状定着液層の厚みが薄くなるほど、浸透時間が長くなる。このことは、図12や図13に示したように、トナー層の隙間に入った泡を上部の泡が連続的に泡の厚み分まで押し続けながら泡がトナー層の隙間を浸透することを裏付けている。
【0064】
[第2測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]のかさ密度、且つ50[μm]の厚みで上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層を、30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した状態の上部電極61に対して、下部電極62を様々な圧力(塗布時圧力)の条件で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いから、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0065】
この第2測定例における塗布時圧力(=ニップ圧)と浸透時間との関係を図16に示す。図示のように、塗布時圧力が高くなるほどトナー層に対する泡状定着液の浸透時間が短くなっていることがわかる。このことは、トナー層の隙間に泡が浸透し上部の泡が連続的に押す場合に、押す力が強くなるほど浸透速度が速くなる、即ち浸透時間が短くなることを裏付けている。
【0066】
[第3測定例]
平均泡径20[μm]の泡状定着液層を、0.05[g/cm]のかさ密度、50[μm]の厚みで上部電極61上に形成した。また、平均粒径6[μm]の球形トナーからなるトナー層を、30[μm]の厚みで下部電極62上に形成した。上部電極61、下部電極62としては、それぞれ同一材料(SUS304)からなるものを用いた。リニアステージに固定した上部電極61に対して、下部電極62を0.03[kgf/cm]の圧力で接触させた。電極間で定着液の電気分解が起こらないようにする狙いから、電圧間への印加電圧については0.8[V]とした。
【0067】
泡状定着液の各泡粘度と、トナー層に対する泡の浸透時間との関係を図17に示す。なお、泡粘度については、次のようにして測定した。即ち、コーンプレート式回転粘度計を用いた。回転子としては、外径Φが60[mm]であるものを用いた。コーン角1度のコーン部とプレート部との隙間を3[mm]に設定し、25[℃]の液温にて、10秒で1回転する回転速度にて回転開始10秒後、つまり1回転後の回転粘度測定値を泡粘度とした。
【0068】
図17からわかるように、泡粘度が小さいほどトナー層浸透時間が短い。これは、トナー層隙間に泡が浸透し上部の泡が連続的に押す場合に、泡が柔らかいほど浸透速度が速くなり浸透時間が短くなることを裏付けている。
【0069】
以上の実験結果から、塗布部材へのトナー層のオフセットを防止するためには、塗布部材と記録媒体との接触部(塗布ニップ)に対するトナー層通過時間を、泡状定着液の浸透時間と同じかそれ以上に設定する必要があることがわかった。
【0070】
また、各測定例から、トナー粒子が5[μm]前後の粒径である場合、泡状定着液の浸透時間はおおよそ50ミリ秒から300ミリ秒の範囲にある。そこで、実施形態に係るプリンタにおいては、塗布ニップに対する塗布対象の通過時間を、最低でも50ミリ秒から300ミリ秒の範囲を確保している。
【0071】
先に示した図4において、転写紙Pの塗布ニップ通過時間(例えば先端がニップ入口に進入してから先端がニップ出口から排出される間での時間)を、50ミリ秒から300ミリ秒の範囲に設定している。これにより、転写紙Pの塗布ニップ通過時間を、泡状定着液の浸透時間と同じかそれ以上にしている。塗布ニップ通過時間(以下、ニップ時間という)については、「(ニップ幅)/(紙の搬送速度)」という数式によって算出することが可能である。転写紙Pの搬送速度は、紙搬送駆動機構の設計データにより求めることができる。ニップ幅は、塗布ローラ全面に乾燥しない着色塗料を薄くつけて、転写紙Pを塗布ローラ41及び対峙する加圧ローラ43に挟んで加圧(ローラは回転させない状態で)し、紙に着色塗料を付着させ、着色部(通常長方形の形に着色)における紙搬送方向の長さをニップ幅として測定することで求めることができる。転写紙Pの搬送速度に応じて、ニップ幅を調整することでニップ時間を泡状定着液のトナー層浸透時間と同じかそれ以上にする必要がある。
【0072】
実施形態に係る定着装置30では、加圧ローラ43を弾性多孔質体(以下、スポンジと記す)とすることで、紙の搬送速度に応じて、塗布ローラ41とスポンジの加圧ローラ43の軸間距離を変更してニップ幅を変えることが容易となる。スポンジの代わりに、弾性ゴムも適するが、スポンジは、弾性ゴムよりも弱い力で変形させることが可能であり、塗布ローラ41の加圧力を過剰に高くすることなく長いニップ幅を確保することができる。
【0073】
なお、定着液中には樹脂軟化または膨潤剤が含有されており、スポンジの加圧ローラ43に定着液が万が一付着した場合、スポンジ素材が軟化等の不具合が発生する恐れがある。このため、スポンジ素材の樹脂材は、軟化剤または膨潤剤に対し軟化や膨潤を示さない素材が望ましい。また、ローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43については、ローラ表面を可撓性フィルムで覆った構成であってもよい。スポンジ素材が軟化剤または膨潤剤で劣化する素材であっても、軟化剤または膨潤剤により軟化や膨潤を示さない可撓性フィルムで覆うことでスポンジの加圧ローラ43の劣化を防止することができる。スポンジ素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂の多孔質体などが適する。また、スポンジを覆う可撓性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、四フッ化エチレン・バーフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)などを例示することができる。
【0074】
塗布ローラ41とローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43とが常時接触している場合、転写紙Pが搬送されていない時に塗布ローラ41上の泡状定着液Buがスポンジの加圧ローラ43に付着し汚す恐れがある。この付着を防止する狙いから、紙先端検知手段(図示せず)を塗布ローラ41へ紙が搬送される手前に設け、紙先端検知信号に応じて、紙の先端から後方にのみ泡状定着液Buが塗布されるようなタイミングで塗布ローラ41に泡状定着液Buを形成することが望ましい。
【0075】
加圧ローラ43は、図示しない接離機構により、待機時は塗布ローラ41から離間する位置まで移動される。塗布時だけ、前述の紙先端検知手段の検知結果に基づいて塗布ローラ41に圧接する位置まで接離機構によって移動せしめられる。塗布ローラ41から離間するタイミングについては、紙の後端検知結果に基づいて決定される。
【0076】
また、図17に示したように、泡状定着液の泡粘度により浸透時間が変化する。このため、ニップ時間及びニップ圧力一定であると、例えば定着液の処方の変更や使用環境温度の低下が原因で泡粘度が上昇した場合、泡のトナー層に対する浸透時間がニップ時間よりも長くなり画像劣化を起こす恐れがある。これを防止するため、ニップ圧力により浸透時間が変化することを利用し、泡状定着液の泡粘度に応じて、必ずニップ時間が浸透時間よりも同じか長くなるよう調整することが望ましい。この場合、定着装置30において泡状定着液の泡粘度を検知する必要がある。泡粘度は、上述したように、コーンプレート式回転粘度計における回転粘度であり、検知手段としては、この測定原理に近い手段を用いることが望ましい。例えば、図4において、所望の泡状定着液を作成した後、補給口であるノズル39から出す手前の流路パイプ内の回転子にかかるモータトルクを検出し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段を例示することができる。カンチレバー型の振動子の固有振動数変化を検知し、正式な回転粘度の代用値として泡粘度とみなす手段であってもよい。また、ニップ圧力の調整手段としては、塗布ローラ41と加圧ローラ43との軸間距離を可変できる機構において、泡粘度検出信号に応じて、塗布ローラ41と加圧ローラ43の軸間距離を変える手段を例示することができる。
【0077】
泡のトナー層に対する浸透時間をなるべく短くするためには、上述したように、塗布ローラ41等の塗布部材上における泡状定着液Buの層厚を未定着のトナー層Tの厚み以上とする必要がある。カラー画像では、転写紙P上の未定着のトナー層Tの厚みは色や明暗により異なる。そこで、泡状定着液Buの層厚については、未定着のトナー層Tの転写紙P上における厚みの最大値を基準として設定する。画像信号から未定着のトナー層Tの厚みの最大値については、画像信号に基づいて求めることができる。画像信号に応じて、未定着のトナー層Tの最大値に対し、膜厚調整ブレード42の隙間制御により行い、必ず未定着のトナー層Tの厚みの最大値以上になるように泡状定着液Buの層厚を制御する。各画像機器において、転写紙P上の未定着のトナー層Tは、スキャナやPCからの画像信号に応じて設定テーブルに基づき算出された値によって一定に決まる。そこで、画像信号をもとに転写紙P上に付着する設定値の最大値に合わせてその最大値以上に塗布ローラ41上の泡状定着液Bu層厚を調整する。
【0078】
また、未定着のトナー層Tの厚みが異なると、泡のトナー層に対する浸透時間が異なる(トナー層が厚いほど浸透時間は長くなる)ことから、未定着のトナー層Tの厚みに応じてニップ時間を可変にする必要がある。ニップ時間可変手段としては、紙搬送速度を変化させる手段やニップ幅を変化させる手段が適する。画像情報信号から転写紙P上における未定着のトナー層Tの厚みの最大値を算出し、浸透時間を換算しその浸透時間以上となるようにニップ幅や紙搬送速度を変化させる。
【0079】
泡状の定着液は、上述したように、軟化剤を含有した液体中に気泡を含有するものである。軟化剤を含有した液体は、気泡を安定に含有し、なるべく均一な気泡の大きさからなる気泡層を構成する泡状とするため、起泡剤及び増泡剤を有することが望ましい。また、ある程度粘度が高いほうが、気泡が安定して液体中に分散するため、増粘剤を含有することが望ましい。
【0080】
起泡剤としては、陰イオン界面活性剤、特に、脂肪酸塩が望ましい。脂肪酸塩は界面活性を有するため、水を含有する定着液の表面張力を下げ、定着液を発泡し易くするとともに、泡表面で脂肪酸塩が層状ラメラ構造をとるため泡壁(プラトー境界)が他の界面活性剤よりも強くなり、泡沫安定性が極めて高くなる。また、脂肪酸塩の起泡性を効果的にするため、定着液には水を含有することが望ましい。脂肪酸としては、大気中での長期安定性の観点から酸化に強い飽和脂肪酸が望ましい。但し、飽和脂肪酸塩を含有する定着液に若干の不飽和脂肪酸塩を含有することで脂肪酸塩の水に対する溶解・分散性を助け、5〜15[℃]までの低気温において、優れた起泡性を有することができ、広い環境温度範囲において定着の安定を可能とし、また、定着液長期放置中の脂肪酸塩の定着液中分離を防止することができる。
【0081】
飽和脂肪酸塩に用いる脂肪酸としては、炭素数12、14、16及び18の飽和脂肪酸、具体的にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が適する。炭素数が11以下の飽和脂肪酸塩は臭気が大きくなり、当該定着液を用いるオフィス・家庭で用いる画像形成機器に適さない。また、炭素数19以上の飽和脂肪酸塩は、水に対する溶解性が低下し、定着液の放置安定性を著しく低下させてしまう。これらの飽和脂肪酸による飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。
【0082】
また、不飽和脂肪酸塩を用いてもよく、炭素数18で2重結合数が1から3の不飽和脂肪酸が望ましい。具体的には、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が適する。2重結合が4以上では反応性が強いため、定着液の放置安定性が劣ってしまう。これらの不飽和飽和脂肪酸による不飽和脂肪酸塩を単独もしくは混合して起泡剤として用いる。また、上記飽和脂肪酸塩と不飽和脂肪酸塩を混合して起泡剤として用いても構わない。
【0083】
更に、上記飽和脂肪酸塩又は不飽和脂肪酸塩において、当該定着液の起泡剤として用いる場合、ナトリウム塩、カリウム塩もしくはアミン塩であることが望ましい。定着装置30に電源を投入後、素早く定着可能な状態にすることは定着装置30の商品価値として重要な要素である。定着装置30において定着可能な状態とするためには、定着液が適切な泡状となっていることが必須であるが、上述の脂肪酸塩を素早く起泡させることで、電源投入後定着可能な状態を短時間でつくることができる。特に、アミン塩とすることで、定着液にせん断力を加えたときに最も短時間で起泡させ、泡状定着液を容易に作製することが可能であり、定着装置への電源投入後の定着可能な状態を最も短時間でつくることができる。
【0084】
樹脂を溶解又は膨潤することで軟化させる軟化剤は、脂肪族エステルを含んでいる。この脂肪族エステルは、トナー等に含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる溶解性又は膨潤性に優れている。
【0085】
更に、記録媒体に対するトナーの定着は、密封された環境において頻繁に使用される機器で行われ、軟化剤はトナーの記録媒体への定着後にもトナー中に残留するため、記録媒体に対するトナーの定着は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の発生を伴わないことが好ましい。すなわち、軟化剤は揮発性有機化合物(VOC)及び不快臭の原因となる物質を含まないことが好ましい。脂肪族エステルは、一般に汎用される有機溶剤(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなど)と比較して、高い沸点及び低い揮発性を有し、刺激臭を持たない。
【0086】
なお、オフィス環境等における臭気を高い精度で測定することができる実用的な臭気の測定尺度として、官能測定である三点比較式臭袋法による臭気指数(10×log(物質の臭気が感じられなくなるまでの物質の希釈倍率))を臭気の指標とすることができる。また、軟化剤に含まれる脂肪族エステルの臭気指数は、10以下であることが好ましい。この場合には、通常のオフィス環境では、不快臭を感じなくなる。更に、軟化剤のみならず、定着液に含まれる他の液剤も同様に、不快臭及び刺激臭を有さないことが好ましい。
【0087】
上述の脂肪族エステルとしては、飽和脂肪族エステルを含むものが望ましい。上述の脂肪族エステルが、飽和脂肪族エステルを含む場合には、軟化剤の保存安定性(酸化、加水分解などに対する耐性)を向上させることができる。また、多くの飽和脂肪族エステルは、トナーに含まれる樹脂を1秒以内で溶解又は膨潤させることができる。更に、飽和脂肪族エステルは、記録媒体に提供されたトナーの粘着感を低下させることができる。これは、飽和脂肪族エステルが、溶解又は膨潤したトナーの表面に油膜を形成するためであると考えられる。
【0088】
よって、定着液としては、上述の飽和脂肪族エステルが「R1COOR2」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式におけるR1は、炭素数が11以上14以下のアルキル基を示している。また、R2は、炭素数が1以上6以下の直鎖型もしくは分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。なお、その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0089】
上述の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、トリデシル酸エチル、トリデシル酸イソプロピル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族モノカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、上記の化合物である脂肪族モノカルボン酸エステルの多くについては、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0090】
また、定着液としては、上述の脂肪族エステルが脂肪族ジカルボン酸エステルを含むものを用いることが望ましい。上述の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、より短い時間でトナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができる。例えば、60[ppm]程度の高速印字では、記録媒体における未定着のトナーに定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するまでの時間は、1秒以内であることが望ましい。上述した脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸エステルを含む場合には、記録媒体における未定着のトナー等に定着液を付与し、トナーが記録媒体に定着するのに要する時間を、0.1秒以内にすることが可能となる。更に、より少量の、軟化剤の添加によって、トナーに含まれる樹脂を溶解又は膨潤させることができるため、定着液に含まれる、軟化剤の含有量を低減することができる。
【0091】
上述の脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、「R3(COOR4)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R3は、炭素数が3以上8以下のアルキレン基を示している。また、R4は、炭素数が3以上5以下の直鎖型又は分岐型アルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0092】
上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸エステルとしては、例えば、コハク酸2エチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソデシル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。上記の化合物であるこれらの脂肪族ジカルボン酸エステルの多くは、油性溶媒に溶解するが、水には溶解しない。よって、水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。更に、本発明における定着液において、好ましくは上記の脂肪族エステルは、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む。上記の脂肪族エステルが、脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを含む場合には、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0093】
上述の脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、「R5(COOR6−O−R7)」で表される化合物を含むものを用いることが望ましい。この化合物の一般式において、R5は、炭素数が2以上8以下のアルキレン基を示している。また、R6は、炭素数が2以上4以下のアルキレン基を示している。また、R7は、炭素数が1以上4以下のアルキル基を示している。R1及びR2の炭素数がそれぞれ所望の範囲よりも少ないと臭気が発生し、所望の範囲よりも多いと樹脂軟化能力が低下する。その化合物は、臭気指数が10以下であり、不快臭及び刺激臭を有さない。
【0094】
また、上述の化合物である脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルとしては、例えば、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジブトキシエチル、アジピン酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジブトキシエチル、セバシン酸ジエトキシエチル等が挙げられる。これらの脂肪族ジカルボン酸ジアルコキシアルキルを水性溶媒では、グリコール類を溶解助剤として定着液に含有し、溶解又はマイクロエマルジョンの形態とする。
【0095】
また、脂肪酸エステルではないが、クエン酸エステルや炭酸エチレンや炭酸プロピレンも軟化もしくは膨潤剤として適する。
【0096】
泡状定着液において、塗布接触ニップ部にてトナー等の微粒子層に泡状定着液を押し込みながら浸透させる際に泡が破泡すると浸透阻害となる。そこで泡沫安定性に優れる泡が求められる。このため、定着液中に脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有することが望ましい。脂肪酸アルカノールアミドには(1:1)型と(1:2)型があるが、本発明における泡沫安定性には(1:1)型が適することがわかった。
【0097】
なお、定着の対象となる樹脂を含有する微粒子は、トナーに限定されず、樹脂を含有する微粒子であれば何れでもよい。例えば、導電性部材を含有した樹脂含有微粒子でもよい。また、記録媒体は、記録紙に限定されず、金属、樹脂、セラミックス等何れでもよい。但し、媒体は定着液に対し浸透性を有することが望ましく、媒体基板が液浸透性を持たない場合は、基板上に液浸透層を有する媒体が望ましい。記録媒体の形態もシート状に限定されず、平面及び曲面を有する立体物でもよい。例えば、紙のごとき媒体に透明樹脂微粒子を均一に定着させ紙面を保護する(所謂、ニスコート)用途においても適用することが可能である。
【0098】
上述した樹脂を含有する微粒子のうち、電子写真プロセスで用いるトナーは、本発明の定着液との組合せにおいて最も定着への効果が高い。トナーは、色剤と帯電制御剤と結着樹脂や離型剤などのような樹脂を含む。トナーに含まれる樹脂は、特に限定されないが、好適な結着樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、離型剤としては、例えばカルバナウワックスやポリエチレンなどのワックス成分などが挙げられる。トナーは、結着樹脂の他に、公知の着色剤、電荷制御剤、流動性付与剤、外添剤などを含んでもよい。また、トナーは、メチル基を有する疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子をトナーの粒子の表面に固着させることによって、撥水性処理されていることが好ましい。媒体のうち、記録媒体は、特に限定されず、例えば、紙、布、及び液体透過層を有するOHP用シートのようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。本発明における油性とは、室温(20[℃])における水に対する溶解度が、0.1[重量%]以下である性質を意味する。
【0099】
また、泡状となった定着液は、好ましくは、撥水性処理されたトナーの粒子に対して、十分な親和性を有することが望ましい。ここで、親和性とは、液体が固体に接触したときに、固体の表面に対する液体の拡張濡れの程度を意味する。すなわち、泡状となった定着液は、撥水性処理されたトナーに対して十分な濡れ性を示すことが好ましい。疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンのような疎水性微粒子で撥水性処理されたトナーの表面は、疎水性シリカ及び疎水性酸化チタンの表面に存在するメチル基によって覆われており、おおよそ20[mN/m]程度の表面エネルギーを有する。現実には撥水性処理されたトナーの表面の全面が疎水性微粒子によって完全に覆われてはいないため、撥水性処理されたトナーの表面エネルギーは、おおよそ、20〜30[mN/m]であると推測される。よって、撥水性トナーに対して親和性を有する(十分な濡れ性を有する)ためには、泡状となった定着液の表面張力は、20〜30[mN/m]であることが好ましい。
【0100】
水性溶媒を用いる場合、界面活性剤を添加することで、表面張力を20〜30[mN/m]とすることが好ましい。また、水性溶媒の場合、単価もしくは多価アルコールを含有していることが望ましい。これらの材料は、泡状の定着液における気泡の安定性を高め、破泡しにくくする利点を有する。例えばセタノールなどの単価アルコールや、グリセンリン、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコールなどの多価アルコールが望ましい。また、これらの単価又は多価のアルコール類を含有することで紙等の媒体のカール防止に効果を有する。
【0101】
また、定着液中に浸透性改善や紙等媒体のカール防止のために油性成分を含有してO/WエマルジョンやW/Oエマルジョンを形成する構成も望ましく、その場合、具体的な分散剤としては、ソルビタンモノオレエートやソルビタンモノステレートやソルビタンセスキオレートなどのソルビタン脂肪酸エステルやショ糖ラウリン酸エステルやショ糖ステアリン酸エステルなどのショ糖エステルなどが望ましい。
【0102】
なお、定着液中での軟化剤を溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させるため方法としては、例えば、回転羽根によるホモミキサーやホモジナイザーのような機械的に攪拌する手段、及び超音波ホモジナイザーのような振動を与える手段が挙げられる。何れにしても、強いせん断応力を定着液中の軟化剤に加えることで溶解もしくはマイクロエマルジョン分散させる。
【0103】
定着装置30には、定着液をトナーに供給した後、トナーに含まれる樹脂の少なくとも一部を溶解又は膨潤させる部剤(軟化剤)によって溶解又は膨潤したトナーを加圧する、一対の平滑化ローラ(ハードローラ)を設けてもよい。一対の平滑化ローラ(ハードローラ)によって、溶解又は膨潤したトナーを加圧することによって、溶解又は膨潤したトナーの層の表面を平滑化して、トナーに光沢を付与することが可能となる。更に、記録媒体内へ溶解又は膨潤したトナーを押し込むことによって、記録媒体に対するトナーの定着性を向上させることができる。
【0104】
次に、本発明者らが行った各定着実験例について説明する。なお、以下に説明する各定着実験例では、樹脂含有微粒子としてトナーを用いた。
[第1定着実験例]
まず、次のような処方の、軟化剤を含有する液体を用意した。
(1)希釈溶媒
・イオン交換水:53[wt%]
(2)軟化剤
・コハク酸ジエトキシエチル(クローダ社 クローダDES):10[wt%]
・炭酸プロピレン:20[wt%]
(3)増粘剤
・プロピレングリコール:10[wt%]
(4)増泡剤
・ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:1)型(松本油脂 マーポンMM):0.5[wt%]
(5)起泡剤
・パルミチン酸アミン:2.5[wt%]
・ミリスチン酸アミン:1.5[wt%]
・ステアリン酸アミン:0.5[wt%]
(6)分散剤
・POE(20)ラウリルソルビタン(花王 レオドールTW−S120V):1[wt%]
・ポリエチレングリコールモノステアレート(花王 エマノーン3199):1[wt%]
【0105】
なお、分散剤は、軟化剤の希釈溶媒への溶解性を助長するために用いた。脂肪酸アミンは、脂肪酸とトリエタノールアミンにより脂肪酸アミンを合成した。
【0106】
上述した処方にて、液温120[℃]で軟化剤を除いて混合攪拌し溶液を作製した。次に、軟化剤を混合し、超音波ホモジナイザーを用いて軟化剤が溶解した定着液(フォーム化する前の原液)を作製した。
【0107】
大きな泡径の泡状定着液Buを生成するための構成については、次のようにした。定着液収容器31として、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂からなるボトルを用いた。また、搬送ポンプ33として、チューブポンプ(チューブ内径2[mm]、チューブ材質:シリコーンゴム)を用いた。また、液搬送パイプ34として、内径2[mm]のシリコーンゴムチューブを用いた。また、大きな泡を作るための微小孔シート37として、#400のステンレス製メッシュシート(開口部約40[μm])を用いた。
【0108】
微小な泡径を生成するための構成については、次のようにした。2重円筒の内側円筒38bを回転軸に固定し、図示しない回転駆動モータにより回転させた。2重円筒の材質は、PET樹脂とした。外側円筒38aとしては、内径10[mm]、長さ120[mm]のものを用いた。また、内側円筒38bとしては、外径8[mm]、長さ100[mm]のものを用いた。回転数については、1000〜2000[rpm]の範囲で可変とした。
【0109】
泡状定着液Buを塗布ローラ41の表面に供給するための構成については、次のようにした。微少な泡状定着液Buを、ノズル39により、塗布ローラ41表面と、膜厚調整ブレード42との間に供給する構成とした。膜厚調整ブレード42と塗布ローラ41とのギャップについては、25[μm]と40[μm]の2通りに設定した。
【0110】
加圧ローラ43としては、アルミ合金製ローラ(φ10[mm])からなる芯金の表面上に、外径Φ50[mm]のポリウレタンフォーム材(イノアック社商品名「カラーフォームEMO」)からなるローラ部を形成したものを用いた。また、塗布ローラ41としては、PFA樹脂を焼付け塗装したSUS製ローラ(φ30[mm])を用いた。また、膜厚調整ブレード42としては、アルミ合金製支持板に厚み1[mm]の並板ガラスを接着したものを用いた。これのガラス面を塗布ローラ41側に向け、10〜100[μm]の範囲で塗布ローラ41とガラス面との隙間を制御できるようにした。紙搬送速度については、150[mm/s]に設定した。
【0111】
以上の条件を具備させたプリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像が形成されたPPC用紙(リコーT−6200)を定着装置30に挿入するタイミングで、搬送ポンプ33を駆動した。そして、定着液をくみ上げ、液流路を通過させながら、大きな泡径の泡状定着液Buを生成する大きな泡生成部である気体・液体混合部35と泡状定着液Buの泡を微小にする微小な泡生成部である泡微細化部38に定着液を通過させた。すると、ノズル39の液排出口から1秒後に泡径5〜30[μm]の微小な泡を有する泡状定着液Buを塗布ローラ41に供給することができた。このときの泡状定着液Buのかさ密度はおおよそ0.05[g/cm]であった。
【0112】
ローラ部がスポンジからなる加圧ローラ43と、塗布ローラ41との軸間距離を変えて、ニップ幅1[mm](ニップ時間6[ms])、15[mm](ニップ時間100[ms])、21[mm](ニップ時間140[ms])における塗布テストを実施した。トナー層の厚みは30〜40[μm]とした。
【0113】
この結果を図18に示す。泡状定着液Buのトナー層に対する浸透時間は、80〜100[ms]であった。転写紙P上の泡状定着液Buの塗布量を0.15[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡状定着液Buの厚み(以下、泡の膜厚という)は50[μm]程度であった。また、塗布量を0.1[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡の膜厚は35[μm]程度であった。また、塗布量を0.2[g/A4サイズ紙]にした条件において、塗布ローラ41上での泡の膜厚は70[μm]程度であった。なお、画像濃度の低下は、塗布ローラ41にトナーが付着しオフセットしてしまい、転写紙P上で画像抜けが発生することを意味している。
【0114】
図18のグラフより、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも厚くした条件(塗布量=0.15[g/A4サイズ紙]以上)において、トナー層の浸透時間以上のニップ時間では、定着画像の濃度が画像抜けのない濃度であり、良好な定着性であることがわかる。逆に、膜厚をトナー層以上であっても、ニップ時間が浸透時間よりも短いと、塗布ローラ41にトナーがオフセットし、転写紙P上に画像抜けが発生し画像濃度が著しく低下することもわかった。
【0115】
また、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした条件(塗布量=0.15[g/A4サイズ紙]以下)において、ニップ時間を100[ms]以上にしても、塗布ローラ41にトナーがオフセットし、転写紙P上に画像抜けが発生し画像濃度が著しく低下している。これは、図15に示したように、泡の膜厚をトナー層の厚みよりも薄くした条件では、泡のトナー層に対する浸透時間が極端に長くなるため、ニップ時間が浸透時間よりも短くなっていることが原因と思われる。
【0116】
[第2定着実験例]
定着液の処方や定着装置30の構成については、第1定着実験例と同じにした。但し、装置の使用環境温度を15[℃]、25[℃]、35[℃]にて定着テストを実施した。図19に、泡膜温度と、泡状定着液の泡粘度(上記のコーンプレート回転粘度測定。回転子径φ60[mm]、コーン角1度、回転子間ギャップ3[mm]、1秒当りの回転数10での測定結果)との関係を示す。同図より、温度により泡粘度が変化(高温で低粘度化)することがわかった。また、泡粘度によりトナー層浸透時間が変化することは、図17に示した通りである。そこで、図19のデータをテーブルデータとし、定着装置30内に温度検知手段を設け、温度信号に応じてニップ時間がトナー層浸透時間以上となるように塗布ローラ41とスポンジローラからなる加圧ローラ43の軸間距離を変化させる機構を設けた。
【0117】
かかる機構を設けたプリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、15〜35[℃]の間で環境温度を変化させたが、いずれの使用環境においても画像抜けのない良好な定着を行うことができた。
【0118】
[第3定着実験例]
第1定着実験例において、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型の効果を確認するため、第1定着実験例と全て同じ処方、脂肪酸アルカノールアミドを除いた以外は同じ処方、及び(1:1)型の脂肪酸アルカノールアミドの代わりに脂肪酸アルカノールアミド(1:2)型(ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド(1:2)型(松本油脂 マーポンLS))を用いた以外は同じ処方の3通りの処方で、それぞれ定着液を準備した。そして、プリンタ試験機(リコー社製 IpsioColorCX8800)を用い、未定着トナーのカラー画像を作製し、それぞれの定着液に定着試験を行った。
【0119】
その結果、次の表1に示すように、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有した泡状定着液では、塗布ローラ41上に泡状液膜にピンホールはなく、均一な膜で、良好な定着が行えた。一方、脂肪酸アルカノールアミドを含有しない、または、(1:2)型を含有の定着液では、塗布ローラ上の泡状液膜に細かなピンホール(φ0.5[mm]程度)が発生し、定着後のトナー画像に、無数のピンホール状の定着不良が発生した。
以上のように、脂肪酸アルカノールアミド(1:1)型を含有した泡状定着液の良好な効果が確認できた。
【表1】

【0120】
次に、図4を用いて塗布ローラ41のクリーニングについて説明する。
塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過した転写紙P上の未定着のトナー層Tは、泡状定着液Buが付与されることで軟化する。泡状定着液Buを転写紙Pに塗布する塗布ローラ41は、転写紙P上の未定着のトナー層Tに対して接触しながら泡状定着液Buを付与する。このとき、転写紙Pが塗布ローラ41と接触する塗布位置である塗布ニップCを通過すると、塗布ローラ41上の泡状定着液Buが全て転写紙Pに付与され、塗布ローラ41がクリーンな状態になるのが理想である。しかし、現実的には、部品や組み付けのばらつき、環境変動、経時変動等の影響により、全てのプロセスが理想どおりに進むとは考え難い。このため、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に泡状定着液Buやオフセットしたトナー粒子Taを残留させることがある。
【0121】
この塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41上に残留する泡状定着液Bu(以下、残留泡状定着液Baと呼ぶ)は、液状の定着液よりも塗布ローラ41の表面移動に対して追従した動きをとる。このため、塗布ローラ41の回転によってその表面が上昇移動をしたとしても、液状の定着液のように下方に流れず、塗布ローラ41表面の表面移動に伴って良好に上昇する。このため、残留泡状定着液Baは、殆ど液だれすることなく、塗布ニップCを通過後のほぼ全量が塗布ローラ41の表面に連れ回りながら移動する。
このような残留泡状定着液Baが塗布ローラ41上に残留したままだと、塗布ローラ41が1周したときに、上述したノズル39から塗布ローラ41に供給される新たな泡状定着液Buと、残留泡状定着液Baとが混ざることで塗布ローラ41上の泡膜の厚みが不安定になったり、オフセットしたトナー粒子Taが転写紙Pに再転写して画像品質の低下を招いたりする恐れがある。さらには、トナーを含んだ残留泡状定着液Baが循環することになり、汚れた泡状定着液Buを用いることになって、定着の品質が低下する恐れがある。このため、塗布ローラ41に残留した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを塗布ローラ41上から除去する必要がある。
【0122】
次に、プリンタ100の特徴的な構成について説明する。
図1は、塗布ローラ41と塗布部材クリーニング装置70との拡大説明図である。
定着装置30の定着液塗布部140は、転写紙Pに泡状定着液Buを塗布する塗布位置としての塗布ニップCを通過した後、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置に進入する前の塗布ローラ41表面に対して、PET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルム部材からなるウェブ72を当接させる塗布部材クリーニング装置70を備える。
塗布部材クリーニング装置70は、塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能に張架した帯状のウェブ72と、ウェブ72が塗布ローラ41の表面に接触する当接位置Eでウェブ72を挟んで塗布ローラ41の表面に当接するクリーニングブレードとしてフィルム当接ブレード71とを備える。
【0123】
この塗布部材クリーニング装置70は、回転可能な繰り出し軸73の周面に帯状のウェブ72を何重にも巻き付けている。帯状のウェブ72の表面移動方向下流側は、回転可能な巻き取り軸74に巻き付けられている。巻き取り軸74が図中時計回り方向に回転駆動することで、巻き取り軸74がウェブ72を巻き取るとともに、その分だけ繰り出し軸73からウェブ72が矢印Aで示すように送り出される。
【0124】
帯状のウェブ72における繰り出し軸73と巻き取り軸74との間の箇所は、所定のテンションで張架されながら、フィルム当接ブレード71によって塗布ローラ41の表面に押圧されている。この押圧により、ウェブ72が塗布ニップCを通過後の塗布ローラ41表面に圧接して当接位置Eに対して、塗布ローラ41の表面移動方向上流側のくさび状の空間(以下、当接位置入口部と呼ぶ)で残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを堰き止める。
【0125】
当接位置Eに対してウェブ72の表面移動方向(矢印A方向)の上流側には第一ガイドローラ75を備え、当接位置Eに対してウェブ72の表面移動方向の下流側には第二ガイドローラ76を備える。塗布部材クリーニング装置70は、第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76とによって、当接位置Eにおける塗布ローラ41の接線に対して平行に張られたウェブ72の背面からフィルム当接ブレード71によって塗布ローラ41に押し付けて塗布ローラ41の表面をクリーニングする構成である。
フィルム当接ブレード71は不図示の接離機構により、その先端を塗布ローラ41に対して接離可能となっているが、フィルム当接ブレード71の当接が解除されれば、ウェブ72も塗布ローラ41から離間する。
【0126】
また、塗布部材クリーニング装置70では、第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76とによって、ウェブ72の蛇行やシワの発生を押さえ込むようにしている。蛇行防止の為に第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76は軸方向の両端部に対して中央部の径が僅かに大きい太鼓状またはつづみ状の形状を有している。
ウェブ72は、フィルム当接ブレード71の先端部の線圧を受け、塗布ローラ41上に付着した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taを当接位置入口部で堰き止めて、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置への進入を防止している。
巻き取り軸74を任意のタイミングで巻き上げることで常時、ウェブ72の新しい表面が現れ、当接位置入口部に滞留した残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taはウェブ72の表面に付着して巻き取られていく。
【0127】
定着液に含まれる軟化剤に対して、ウェブ72が耐溶剤性を有していればフィルム当接ブレード71はウェブ72の裏面から加圧しているため、定着液に直接接触することはない。その結果、フィルム当接ブレード71の材質は耐溶剤性を有していなくても良い。
クリーニングブレードとして用いられる材質としては、ウレタンゴムが一般的である。しかし、定着液を塗布する塗布部材のクリーニングブレードとして、ウレタンゴムブレードを用いると、定着液に含まれる軟化液に対して膨潤してしまう。このため、塗布部材にクリーニングブレードが直接接触する構成では、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)、シリコン、フッ素ゴム等の別の材料を用いる必要がある。しかし、これらの材料からなるクリーニングブレードはウレタンゴムよりも耐久性に課題があるため、部品交換サイクルが短くなり、ほかの交換パーツと寿命が異なって交換コストが高くなる不具合がある。
一方、本実施形態の塗布部材クリーニング装置70のように、フィルム当接ブレード71はウェブ72の裏面から加圧する構成であれば、軟化剤に対して膨潤するウレタンゴムブレードであってもクリーニングブレードとして使用することができる。
なお、この条件を満たすためには、ウェブ72の表面移動方向に対して直交する幅方向について、ウェブ72の幅がフィルム当接ブレード71の幅よりも広い構成が前提である。
【0128】
塗布ニップCにおける転写紙Pに対する泡状定着液Buの塗布は、転写紙Pのサイズに合わせて同様な面積を塗布できれば無駄が無い。しかし、転写紙Pの表面に対して全面塗布が前提であるので転写紙Pのスキュー等の余裕度、レジストの誤差等の位置精度の余裕度、紙間の泡の切れ具合など、いくつかの余裕度を見ておく必要のある要素があり、これらに起因して加圧ローラ43の表面にも泡状定着液Buが付着してしまうことになる。
加圧ローラ43に付着した泡状定着液Buは、クリーニングしないと転写紙Pの裏面に付着してしまう。転写紙Pの裏面は、定着後の紙搬送経路を構成するガイド板、ローラ等に接触する。さらには両面モードでは中間転写ベルトや感光体等のトナー像担持体に接触するので、機内の構成部品に与える影響は大きい。そのため、加圧ローラ43に対しても十分なクリーニングが行われることが望ましい。
このため、本実施形態の定着装置30では、図4に示すように、加圧部材クリーニング装置80として、塗布部材クリーニング装置70と同様なクリーニング装置を配置している。
【0129】
なお、加圧ローラ43はトナー付着が無い分、ウェブ72を巻き上げるタイミングは塗布部材クリーニング装置70よりも遅くて良く、巻き上げ量は少なくて済む。このため、ウェブ72の交換サイクルを考えれば、塗布部材クリーニング装置70のウェブ72の巻き取り速さに対して、1/nの巻き取り速さであれば、塗布部材クリーニング装置70側のウェブ72のn回毎の交換時に同時に交換すれば交換作業が効率的である。
【0130】
図20は、第二ガイドローラ76近傍の拡大図である。
図20に示すように、第二ガイドローラ76の内部には、ヒータ93を配置し、サーミスタ92によって第二ガイドローラ76の温度をコントロールする。残留泡状定着液Baはヒータ93によって加熱されることにより、素早く消泡され液状の定着液に戻り、オフセットしたトナー粒子Taはウェブ72に付着したまま巻き取られる。液状の定着液はその量が多ければ自重により落下し定着液回収皿77で回収され、定着液回収パイプ77aを通って定着液回収容器78に回収される。
定着液回収容器78としては、塗布部材クリーニング装置70と加圧部材クリーニング装置80とで、共通でも単独でもよいが、図4にしめすように、2つのクリーニング装置で共通の定着液回収容器78のほうが回収の手間が省ける。
定着液回収容器78は、満タン検知センサ79を有しており回収時期をユーザーまたはサービスマン等の管理者に連絡することが可能となっている。
【0131】
また、巻き取り軸74は軸方向の一方の端部から駆動が入力され、他方の端部は、巻き取り軸移動機構によってウェブ72の巻き取り方向に対してほぼ直交する方向である図中矢印G方向に移動可能となっている。巻き取り軸移動機構としては、巻き取り軸74の他方の端部が矢印G方向が長手方向となるスライドガイド穴74aに嵌合しており、巻き取り軸74の他方の端部の矢印G方向における位置をウォームホィール74bの回転によって調節可能となっている。
また、第二ガイドローラ76と巻き取り軸74との間に張架される位置のウェブ72の幅方向端部の位置を検出してウェブ72の寄りを検知する寄り検知センサ91を備える。そして、寄り検知センサ91によって検知された信号(寄り方向と量の情報)に基づいて、不図示の制御手段によりウォームホィール74bの回転を制御し、巻き取り軸74の他方の端部の矢印G方向における位置を制御する。
【0132】
一般的なウェブの巻き取りであっても蛇行は発生するが、塗布部材クリーニング装置70が備えるウェブ72の表面には、定着液やトナーが付着しているため、ウェブ72の見かけ上の厚みが変化する。これは、オフセットしたトナー粒子Taの位置や付着量は画像が一枚一枚違うように、ウェブ72上でも変わるためである。巻き取り軸74によって巻き取るときには、オフセットしたトナー粒子Taの位置や付着量が影響するため、積極的な寄りの制御が必要となる。
【0133】
寄りの制御のために、ウェブ72の寄りを検知する寄り検知センサ91としては、光による検知のほうが、機械的な検出よりも薄いフィルム部材からなるウェブ72に与える影響は少ない。
しかし、光による検知でウェブ72の幅方向の端部の位置を検知する場合、ウェブ72を構成するPETフィルムには透明なものがあり、透明なフィルムからなるウェブ72では光による検知でその端部の位置を検出することができない。
このような問題に対して、カラーのフィルム部材からなるウェブ72、端部のみパターン印刷したウェブ72、粗面処理が施されたウェブ72等光を遮る工夫をすることで光による検知を行うセンサで寄りの検出が可能となる。
【0134】
図21は、図20の状態からフィルム当接ブレード71が塗布ローラ41から離間した状態の説明図である。フィルム当接ブレード71が図21中の破線で示すように塗布ローラ41に当接した状態から、上記不図示の接離機構を作動させることで、フィルム当接ブレード71が図21中の実線で示すように塗布ローラ41から離間し、フィルム当接ブレード71の塗布ローラ41に対する当接が解除される。また、フィルム当接ブレード71が塗布ローラ41から離間することで、フィルム当接ブレード71によって図21中の破線で示すように塗布ローラ41の表面に押圧されていたウェブ72が図21中の実線で示すように塗布ローラ41から離間する。
このとき、ウェブ72は第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76との間の張架面72aは、図21に示すように略平面となる。また、塗布部材クリーニング装置70では、図21に示すように、塗布ローラ41との当接が解除された状態のフィルム当接ブレード71の延在方向(図21中の矢印H方向)とウェブ72の張架面72aとが略平行となる。
【0135】
なお、上述した構成では、当接位置Eに対してウェブ72の表面移動方向下流側のガイド部材はローラ状の第二ガイドローラ76であるが、この位置のガイド部材としては、ローラ状に限らず、図22に示すように、ガイド板76bであってもよい。
図22に示すようなガイド板76bによってウェブ72をガイドする場合は、ウェブ72が接触する面は表面の摩擦係数を低減した処理、または材質を用いることが望ましい。
摩擦係数を低減する表面の材質としては、一般的にはテフロン(登録商標)、フッ素コート、POMや超高分子ポリエチレン等があり、表面状態としては鏡面のような平坦ではなく細かい凹凸を設けて、接触面積を小さくすることにより、摩擦係数を低減することができる。
このように、ガイド板76bの表面の摩擦係数を低減することは、ウェブ72の巻き取り抵抗を軽減する為であり、この部分でのシワ発生を抑える狙いもある。
【0136】
また、上述した構成では、ウェブ72のフィルム当接ブレード71が接触する側の表面と接触し、ウェブ72をガイドする第二ガイドローラ76の内部にヒータ93を配置し、ヒータ93は第二ガイドローラ76を介してウェブ72を加熱する。しかし、ヒータ93が加熱すべき対象はウェブ72そのものではなく、ウェブ72の塗布ローラ41と接触する側の表面に付着した残留泡状定着液Baである。
残留泡状定着液Baを加熱する構成としては、図23に示すように、ウェブ72の塗布ローラ41と接触する側の表面と対向する位置で発熱する消泡ヒータ94を配置する構成であってもよい。
【0137】
図23にしめすように、消泡ヒータ94はウェブ72と定着液回収皿77との間に配置されており、消泡ヒータ94の加熱によって残留泡状定着液Baが液化すると、液状定着液が消泡ヒータ94に接触する配置である。このため、消泡ヒータ94が定着液と接触し得る表面は定着液に含まれる軟化剤に対して耐溶剤性を有している。
【0138】
本発明者らは、図20に示すガイドローラ(第二ガイドローラ76)にヒータ93を配置した構成や図22に示すようにガイド板76bにヒータ93を配置した構成で、実際に性能評価を実施した。その結果、ウェブ72の厚みとヒータ93の温度とはウェブ72のシワ発生に対してトレードオフの関係があった。すなわち、シワの発生を防止するためにはウェブ72の厚みは厚い方がよく、ヒータ93の温度は低い方がよい。しかし、加熱すべき対象である残留泡状定着液Baはヒータ93に対してウェブ72を挟んで反対側に存在するため、ウェブ72の厚みを厚くするとヒータ93の熱が残留泡状定着液Baに伝達し難くなる。そこで、十分な熱を残留泡状定着液Baに伝達するためにヒータ93の温度を高くすると、シワが発生し易くなる。
【0139】
これに対して、図23に示すようにウェブ72と定着液回収皿77との間に図中の紙面に直行する方向に延在する線状の消泡ヒータ94を設けることにより、シワの発生を防止するためウェブ72を厚くしてもこれに起因して消泡ヒータ94の熱が残留泡状定着液Baに伝達し難くなることがない。そして、残留泡状定着液Baを消泡するとともに液化した定着液を定着液回収皿77にすみやかに流して回収効率を上げることができる。
また、図20や図21に示す構成と比べて、加熱手段とウェブ72との間に空間があることで断熱効果もあるため、ウェブ72の耐熱温度に対する加熱手段の設定温度を高く設定できる。これにより、残留泡状定着液Baに対してより高温の加熱を行うことができ、より確実に消泡を行うことができる。
【0140】
次に、実施形態に係るプリンタの各変形例について説明する。なお、如何に特筆しない限り、以下の各変形例に係るプリンタの構成は、上述した実施形態と同様である。
[第1変形例]
図24は、第1変形例に係るプリンタの定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30においては、塗布部材として、塗布ローラの代わりに、塗布ベルト81を用いている。無端状の塗布ベルト81は、複数の張架ローラ83によって張架されながら、何れか1つの張架ローラ83の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。そして、ローラ間の展張箇所を加圧ローラ43に当接させて塗布ニップCを形成している。塗布ベルト81を加圧ローラ43の表面に沿って柔軟に湾曲させることで、塗布ローラを用いる場合に比べて長い塗布ニップを形成することができる。塗布ベルト81としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETフィルムなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いている。
【0141】
このように、塗布ベルト81を用いる構成では、塗布ニップCのニップ幅を容易に広くして、ニップ時間の拡大化を図ることができる。なお、塗布ニップCを通過した塗布ベルト81の表面は実施形態と同様の構成の塗布部材クリーニング装置70によってクリーニングがなされる。
また、加圧ローラ43についても、実施形態と同様に加圧部材クリーニング装置80によってクリーニングがなされる。
【0142】
[第2変形例]
図25は、第2変形例に係るプリンタの定着装置30を示す拡大構成図である。この定着装置30においては、塗布ニップCで塗布部材に当接する部材として、加圧ローラの代わりに、加圧ベルト85を用いている。無端状の加圧ベルト85は、複数の加圧張架ローラ86によって張架されながら、何れか1つの加圧張架ローラ86の回転駆動によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。そして、ローラ間の展張箇所を塗布ローラ41に当接させて塗布ニップCを形成している。加圧ベルト85を塗布ローラ41の表面に沿って柔軟に湾曲させることで、加圧ローラ43を用いる場合に比べて長い塗布ニップCを形成することができる。加圧ベルト85としては、例えばシームレスニッケルベルトやシームレスPETフィルムなどの基体にPFAのような離型性フッ素樹脂をコートした部材を用いている。
なお、図25に示す例では、加圧ベルト85を加圧ベルトクリーニングブレード82によってクリーニングする構成であるが、実施形態の加圧ローラ43をクリーニングする加圧部材クリーニング装置80と同様の構成のクリーニング装置によってクリーニングしてもよい。
【0143】
上述した実施形態及び各変形例では、帯状のフィルム部材が巻き取り可能に張架されたウェブ72である構成について説明したが、フィルム当接ブレード71と塗布ローラ41との間に挟まれるフィルム部材としては、無端移動するループ状の部材であってもよい。
以下、第3変形例として、フィルム部材が無端移動するループ状の部材であるエンドレスベルト172を用いる構成について説明する。
【0144】
〔第3変形例〕
図26は、第3変形例に係る定着液塗布部140の拡大説明図である。
第3変形例の定着液塗布部140は、転写紙Pに泡状定着液Buを塗布する塗布位置としての塗布ニップCを通過した後、定着液供給部130による泡状定着液Buの供給位置に進入する前の塗布ローラ41表面に対して、PET(ポリエチレンテレフタレート)のフィルム部材からなるエンドレスベルト172を当接させる塗布部材クリーニング装置70を備える。
塗布部材クリーニング装置70は、塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、無端移動可能に張架された帯状のエンドレスベルト172と、エンドレスベルト172が塗布ローラ41の表面に接触する当接位置Eでエンドレスベルト172を挟んで塗布ローラ41の表面に当接するクリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71とを備える。
【0145】
さらに、この塗布部材クリーニング装置70は、当接位置Eからから離れた位置でエンドレスベルト172の表面上の付着物を除去するフィルム部材清掃手段であるフィルム部材清掃装置180を備える。
エンドレスベルト172は、第一張架ローラ173、第二張架ローラ174、第三張架ローラ175、及び、第四張架ローラ176の4つの張架ローラの何れか1つの張架ローラの回転駆動によって図中矢印J方向に無端移動せしめられる。
また、エンドレスベルト172が第一張架ローラ173と第二張架ローラ174との間でフィルム当接ブレード71に押圧される構成は、図1に示す実施形態のウェブ72が第一ガイドローラ75と第二ガイドローラ76との間でフィルム当接ブレード71によって押圧される構成と同様である。
【0146】
フィルム部材清掃装置180は、エンドレスベルト172の表面移動方向最下流側に、エンドレスベルト172の表面に当接するブレード状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブレード181を備える。さらに、当接位置Eよりもエンドレスベルト172の表面移動方向下流側、且つ、フィルム部材清掃ブレード181がエンドレスベルト172に接触する位置よりもエンドレスベルト172の移動方向上流側に、ブレード状とは異なる構成のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブラシ182を備える。
フィルム部材清掃ブラシ182は、ブラシ繊維がエンドレスベルト172の表面に接触してエンドレスベルト172の表面上の付着物を除去する回転ブラシ状のフィルム部材清掃部材である。
【0147】
また、フィルム部材清掃装置180は、無端移動する表面が2つのフィルム部材清掃ブラシ182に接触し、フィルム部材清掃ブラシ182に付着した付着物を回収するブラシ清掃ローラ183と、ブラシ清掃ローラ183の表面に接触してブラシ清掃ローラ183の表面上の付着物を除去するブレード状のローラ部材清掃ブレード184とを備える。
【0148】
第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のように、フィルム部材としてエンドレスベルト172を使用する構成であれば、ウェブ72を使用する構成に比べて、フィルム部材を繰り返し使用することができるため、消耗品とはなりにくいという利点がある。
しかし、塗布ローラ41から回収され、フィルム部材に付着した回収トナーは定着液によって溶けており、フィルム部材上で長期放置すると固化又は高粘性を有する固体に変化する。このため、フィルム部材をエンドレスベルト172として使用する場合は、長期放置すると固化又は高粘性を有する固体に変化する回収物をさらにエンドレスベルト172上から除去する必要があり、装置は複雑になる。また、このようなエンドレスベルト172を備えたクリーニング手段では、フィルム部材が繰り返し当接位置Eで塗布ローラ41の付着物を除去する除去性能のレベルの維持が困難である。
【0149】
定着液で軟化したトナーが固化してしまうと、固化したトナーが付着した部分でエンドレスベルト172をクリーニングする部材の破損、この部材が張り付くことによるエンドレスベルト172の破損、さらには、塗布ローラ41の駆動不良等が発生するおそれがある。
しかし、定着液で軟化されたトナーが軟化液中の水分が揮発する事で高濃度の軟化液のなかで固化せずに存在する形態もありえる場合、第3変形例のエンドレスベルト172のように、無端移動するフィルム部材を用いる構成も実現可能である。
【0150】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のように、エンドレスベルト172のクリーニング機構が複雑になっても、エンドレスベルト172はそのクリーニング機構(フィルム部材清掃装置180)の配置を本来のクリーニング対象である塗布ローラ41から離れた位置に構成することが出来る。その結果、フィルム部材の繰り返し使用が可能となる。
【0151】
第3変形例の定着装置30は、塗布ローラ41からエンドレスベルト172に付着物が回収され、エンドレスベルト172に付着したままの状態で、プリンタ100のプリントジョブを終了する度に、必要な長さ分のエンドレスベルト172をクリーニングする。これにより、エンドレスベルト172に軟化したトナーが付着したままの状態で放置される放置状態を解消できる。このため、当接位置Eでトナーが固化することを防止するために必要以上のフィルム部材を消費することを防止できる。
【0152】
第3変形例の塗布部材クリーニング装置70では、エンドレスベルト172は、塗布ローラ41から離れた位置に他の張架ローラに比して大径の第四張架ローラ176を有する。第四張架ローラ176が駆動ローラとして回転駆動することによってエンドレスベルト172が図中矢印J方向に無端移動する。また、この塗布部材クリーニング装置70は、第四張架ローラ176のエンドレスベルト172を挟んだ外周部に、2つのフィルム部材清掃ブラシ182を有し、それらに接触するブラシ清掃ローラ183を有している。
【0153】
フィルム部材清掃ブラシ182は、その表面移動方向がエンドレスベルト172の表面移動方向とは逆方向に回転している。フィルム部材清掃ブラシ182の回転方向としては、その表面移動方向がエンドレスベルト172の表面移動方向と同じ方向であってもよいが、その場合は、エンドレスベルト172の線速とは大きく異なる線速となるように回転速度を設定する。
フィルム部材清掃ブラシ182のブラシ繊維でかき取った残留泡状定着液Baとオフセットしたトナー粒子Taとは、ブラシ清掃ローラ183と接触しそのローラ表面に付着した部分が回収される。ここで、ブラシ清掃ローラ183の回転方向はフィルム部材清掃ブラシ182の回転方向に関係なく設定可能である。
【0154】
また、図26に示す第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材清掃装置180は、エンドレスベルト172の表面移動方向の二箇所にフィルム部材清掃ブラシ182を配置している。このように複数箇所に配置した構成であれば、エンドレスベルト172の表面移動方向上流側に配置したフィルム部材清掃ブラシ182は、エンドレスベルト172上のクリーニングを積極的に実施する構成としてもよい。このような構成の場合、エンドレスベルト172の表面移動方向下流側に配置されたフィルム部材清掃ブラシ182は、上流側に配置されたフィルム部材清掃ブラシ182の取り残しと、表面移動方向最下流側のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブレード181の先端に溜まる回収物のクリーニングも実施しながら回転する。このため、エンドレスベルト172の表面移動方向下流側に配置されたフィルム部材清掃ブラシ182が、フィルム部材清掃ブレード181の先端部に対して食い込みながら回転するレイアウトになっている。
【0155】
ブラシ清掃ローラ183には、専用にローラ部材清掃ブレード184が配置されており、フィルム部材清掃ブラシ182からブラシ清掃ローラ183が回収したトナーと定着液との回収を実施する。
このローラ部材清掃ブレード184としては、定着液に対して膨潤しない材質が求められるが、100[%]に近いクリーニング性能を維持する必要は無いため、高分子ポリエチレン等が使用可能である。
また、塗布部材クリーニング装置70を停止させるときには、各部材の表面に付着するトナー等の付着物の量を軽減させるために、エンドレスベルト172の表面移動停止→フィルム部材清掃ブラシ182の回転停止→ブラシ清掃ローラ183の回転停止の順に停止する事が望ましい。
【0156】
第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のようにフィルム部材としてエンドレスベルト172を用いる構成の場合、残留泡状定着液Baを加熱して消泡を促す消泡ヒータ94の配置としては、エンドレスベルト172を挟んで第一張架ローラ173と対応する位置や、フィルム部材清掃装置180によって除去された付着物が落下してくる位置などに配置する。付着物が落下してくる位置に消泡ヒータ94を配置することで、消泡しきれず泡状のまま落下してきた定着液を消泡させることができ、回収した定着液を泡状ではなく、液状で取り扱うことができ、回収した定着液の取り扱いが容易になる。
【0157】
なお、上述した塗布部材クリーニング装置70のように、除去部材として、被清掃体表面に接触し、被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状のフィルム部材と、フィルム部材が被清掃体表面に接触する位置でフィルム部材を挟んで被清掃体表面に当接するクリーニングブレードとを備える構成は、塗布部材や加圧部材のクリーニング装置に限らず適用可能である。すなわち、定着装置に限らず、被清掃体の表面にクリーニングするクリーニング装置であれば、適用可能である。
【0158】
以上、本実施形態の定着装置30が備える塗布部材クリーニング装置70は、表面移動する被清掃体である塗布ローラ41の表面上の付着物である残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを除去手段によって除去するクリーニング装置である。そして、この塗布部材クリーニング装置70の除去手段は、塗布ローラ41表面に接触し、塗布ローラ41の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能に張架した帯状のフィルム部材であるウェブ72と、ウェブ72が塗布ローラ41表面に接触する当接位置Eでウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接するクリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71とを備える。このような構成であれば、ウェブ72を挟んで挟んでフィルム当接ブレード71が塗布ローラ41表面に当接する当接位置Eの当接位置入口部で、塗布ローラ41の表面上の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを塞き止めて滞留させる。そして、ウェブ72を適切なタイミングで巻き上げて表面移動させることによって、当接位置入口部に滞留していた残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Ta等の異物を当接位置入口部から取り去ることができる。これにより、残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taがフィルム当接ブレード71と塗布ローラ41との当接位置Eの当接位置入口部に滞留し続けることに起因して塗布ローラ41の表面を傷付けることを防止できる。よって、塗布ローラ41の表面が傷付くことに起因するクリーニング不良の発生を防止することができる。これにより、塗布ローラ41の表面の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを長期間に渡って良好に除去することができる。
なお、本出願人は、特願2009−000125号(以下、「先願」という)において、泡塗布ローラ表面に接触する面が不織布をベースのPETフィルムに貼り付けたウェブを背面から加圧するローラで塗布ローラに押し付けるクリーニング装置を提案している。このような構成の理由は、いくつか有るが、塗布ローラのような回転体に対してカウンター方向の巻き取りであり、巻き上げ速度もゆっくりなことからウェブの巻上げ抵抗を軽減でき、加圧するローラを用いることで十分はニップ幅を確保できていた。しかし、表面が不織布では回収量が少ないという問題が生じた。そこで、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、本実施形態のウェブ72のように、PETフィルムそのものを使い、加圧するローラの代わりにブレードによって塗布ローラに対して加圧した結果、非常に高いクリーニング性能を奏するこうができることを見出した。ここで、同様に加圧するローラを用いて高い加圧力でPETフィルムを背面から押しても同様な効果は得られなかった。これは、ブレードによる当接の高い線圧が、高いクリーニング性能を発揮している。
また、PETフィルムは今回使用の泡定着方式での軟化剤には耐溶剤性があることから、クリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71に軟化剤を含有する定着液が接触することが回避できる。このため、耐溶剤性という点からみてもブレード材質の選択に制限が無くなった。
【0159】
また、塗布部材クリーニング装置70としては、ウェブ72の2つの面のうちのフィルム当接ブレード71が接触する側の面に粗面処理を施したものを用いてもよい。
本実施形態の塗布部材クリーニング装置70では、ウェブ72としては透明なPETフィルムを使用している。このようなフィルム部材を使用したところ、フィルム部材の塗布ローラ41に接触する表面の平面性は重要で僅かなシワもクリーニング性能に影響してくることが分かった。すなわち、表面が不織布のウェブを用いた場合のすり抜けと、シワによる影響から鑑みて、クリーニング性能の維持には塗布ローラ41と接触する表面の表面平滑性が重要である事がわかった。また、フィルム当接ブレード71による当接の線圧が高いことがクリーニング性能に影響することから、線接触時の表面粗さの規制は重要なポイントとなる。フィルム部材のフィルム当接ブレード71と接触する側の面は、粗面処理がなされている方が、フィルム部材とフィルム当接ブレード71との密着性が低下滑りがよくなることから、巻き上げ時の抵抗低減に繋がる。しかし、大きな凹凸を持つ粗面処理では使用に影響も出やすい。そこで、粗面処理により形成される凹凸の差が、凹部におけるフィルムの厚みよりも小さくすることで使用面への影響を無くすことが可能である。
【0160】
また、塗布部材クリーニング装置70は、フィルム当接ブレード71がウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接する当接位置Eに対して、ウェブ72の表面移動方向上流側に第一ガイドローラ75、そして、ウェブ72の表面移動方向下流側に第二ガイドローラ76を備える。これらのガイド部材でガイドすることにより、シワの発生を防止することができる。
第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76はウェブ72におけるフィルム当接ブレード71が接触する側の表面と接触し、ウェブ72をガイドするガイド部材である。ウェブ72のレイアウトとしては、当接位置Eにおける塗布ローラ41の接線に対して平行に張られたウェブ72の背面からフィルム当接ブレード71によって塗布ローラ41に押し付けて塗布ローラ41の表面にウェブ72を当接させる構成が、ウェブ72の巻き取り、及び、送り出しの面で有利である。このため、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76を結んだ直線が当接位置Eにおける塗布ローラ41の接線に対して平行となるように配置する。なお、第一ガイドローラ75及び第二ガイドローラ76がウェブ72の内周面側からガイドすることで、これらのガイド部材の材料選択の自由度が広がる。
【0161】
また、実施形態の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材は、繰り出し軸73から繰り出され、フィルム当接ブレード71が塗布ローラ41表面に当接する位置を通過した後、巻き取り軸74に巻き取られる巻き取り式のウェブ72である。単純にフィルム部材を使うのであれば、シームレスベルト等の筒状のエンドレスフィルムを使いクリーニング位置とは違う場所で表面をクリーニングしながらリサイクル出来れば、非常に簡単な構成とすることも可能である。しかし、定着液で高粘度化した溶解トナーをその表面から100[%]近いクリーニングする手段はなかなか無い。残ってしまえば、新たにクリーニング位置に回った際にはクリーニング不良の原因となるからである。また、上記エンドレスフィルム上に溜まった残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taトナーと泡をクリーニングする手段も必要となる。そこで、高粘性の残留泡状定着液Baでは巻き取りで絶えず新しい面を使う事で最初から終わりまで一定の条件でクリーニング性能を維持することが出来る。
なお、塗布部材クリーニング装置70の特徴部を備えたクリーニング装置によって回収されるトナーが乾式トナーで、エンドレスベルト上の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taーのクリーニングが十分に出来る構成であれば、エンドレスベルトの使用か可能である。
【0162】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材は、無端移動可能なループ状のエンドレスベルト172であるため、フィルム部材の消費を抑制することが出来る。また、エンドレスベルト172は繰り返し使用するため、そのクリーニング機構であるフィルム部材清掃装置180は複雑になる。しかし、エンドレスベルト172と塗布ローラ41とが接触する当接位置Eから離れた位置にフィルム部材清掃装置180を配置することによって、塗布ローラ41から離れたところに配置することができるため、ある程度複雑な構成となってもフィルム部材清掃装置180を組み込むことができる。
【0163】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材清掃装置180は、エンドレスベルト172の表面に接触してエンドレスベルト172の表面上の付着物を除去するブレード状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブレード181を備える。さらに、当接位置Eよりもエンドレスベルト172の移動方向下流側、且つ、フィルム部材清掃ブレード181がエンドレスベルト172に接触する位置よりもエンドレスベルト172の移動方向上流側に、ブレード状とは異なる構成のフィルム部材清掃部材として、フィルム部材清掃ブラシ182を備える。ブレード状のクリーニング部材は清掃能力が高いが、多くの除去対象が当接部に進入すると固着や損傷が生じ易い。このため、フィルム部材清掃ブラシ182のようにブレード状とは異なる清掃部材で予めエンドレスベルト172上を清掃して、最後にとりきれなかった付着物をフィルム部材清掃ブラシ182で除去することにより、長期にわたって良好なエンドレスベルト172のクリーニングを行うことができる。
【0164】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材清掃ブレード181は、清掃対象である付着物に含有する定着液に対して耐性を有し、定着液に対して膨潤しない材質から構成されている。このようなフィルム部材清掃ブレード181の材料としては、PET、EPDM、シリコンゴム、フッ素ゴム、超高分子ポロエチレン等を挙げることができる。このような材料を用いることで、使用によるフィルム部材清掃ブレード181の劣化を防止し、安定したクリーニングを行うことができる。
【0165】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材清掃装置180は、ブラシ繊維がエンドレスベルト172の表面に接触してエンドレスベルト172の表面上の付着物を除去する回転ブラシ状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブラシ182を備える。さらに、無端移動する表面がフィルム部材清掃ブラシ182に接触し、フィルム部材清掃ブラシ182に付着した付着物を回収するブラシ清掃ローラ183と、ブラシ清掃ローラ183の表面に接触してブラシ清掃ローラ183の表面上の付着物を除去するブレード状のローラ部材清掃ブレード184とを備える。このような構成により、長期間放置されると固化するおそれのある定着液によって軟化したトナーを確実に除去することができる。
【0166】
また、第3変形例の塗布部材クリーニング装置70のフィルム部材清掃装置180は、エンドレスベルト172の無端移動方向の複数箇所にフィルム部材清掃ブラシ182が接触するように、複数のフィルム部材清掃ブラシ182を備える。これにより、各フィルム部材清掃ブラシ182の配置に応じたクリーニング性能を持たせることで、より確実に安定したクリーニングを行うことができる。
【0167】
塗布部材クリーニング装置70は、フィルム当接ブレード71がウェブ72を挟んで塗布ローラ41の表面に当接する位置に対して、ウェブ72の表面移動方向下流側のウェブ72における表面移動方向に対して直交する幅方向の端部の位置を検出するフィルム端部検出手段である寄り検知センサ91を備える。この寄り検知センサ91として、ウェブ72に用いるフィルム部材の一部に遮光部分を設け、端部の位置を光学的に検出するセンサである。残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Ta回収トナー量、泡そして消泡により表面に付着した定着液、それらがランダムに巻き取られてくるため、巻き取りは平坦な状態ではない。その為、巻き取り時の蛇行やシワの発生が生じる。
シワ対策の一環として、ガイド部材でフラットなウェブ面を維持する方法も有るが、蛇行には効果は期待できない。このため、蛇行を防止する制御が必要である。その為にはウェブ72の巻き取り状態を検知する必要があり、そのひとつの手段としてウェブ72の端部をセンサで検知し、規定範囲を外れた場合に補正をするものである。ウェブ72としては透明なPETを使用しているので、検出側の端部には、反射型、透過型に関係なく光を通さない処理をする必要がある。なお、機械的な検出では薄いフィルムには大きな抵抗となり、かえってシワの発生元となりかねない。ウェブ72で用いるフィルム部材の端部に遮光パターンが印刷されており、そのパターンを見ていることで蛇行を検出する。
【0168】
塗布部材クリーニング装置70は、巻き取り軸74の軸方向の一端をウェブ72の巻き取り方向に対してほぼ直交する方向に移動させる巻き取り軸移動機構としてスライドガイド穴74a及びウォームホィール74bを備え、寄り検知センサ91の検出結果に基づいて巻き取り軸74の一端の位置を調節する。寄り検知センサ91によって、ウェブ72の蛇行が検出された場合には、巻き取り軸74を制御することで蛇行の防止が可能となる。この制御方法の一つとして、巻き取り軸74を巻き取り方向と直交する方向に移動させることが一般的な方法であり、このウェブ72の方式でも有効な方法の一つである。ただ、従来のウェブを用いた構成と比較しての課題は巻き取り条件がいつも一定な条件ではなく、残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taが液に戻って表面に付着した状態で巻き取るなど絶えず変化しており、また巻き取り速度も非常にゆっくりであるため、わずかな位置の変化に対しての予測制御が重要である。
【0169】
塗布部材クリーニング装置70の塗布ローラ41は、オフセットしたトナー粒子Taを含有した残留泡状定着液Baを表面に担持する表面移動体であり、フィルム部材であるウェブ72は定着液に対して耐溶剤性を有するPETからなる。フィルム部材が軟化剤を含有する定着液に対して、耐溶剤性を有していることにより、内側に構成したクリーニングブレード等の保護ができ、内側に配置した部材の材料選択の自由度が広がる。また、ウェブ72自体が定着液によって劣化しないため、巻き上げ時のテンションによって破断や変形が起きることを防止することができ、ウェブ72を巻き上げるときの巻上げ条件の安定性が確保できる。
【0170】
塗布部材クリーニング装置70の塗布ローラ41は、泡状の液体である残留泡状定着液Baを表面に担持する表面移動体であり、フィルム当接ブレード71がウェブ72を挟んで塗布ローラ41表面に当接する位置に対して、表面移動方向下流側のウェブ72を加熱する加熱手段であるヒータ93を備える。塗布部材クリーニング装置70のように、ウェブ72の裏面からフィルム当接ブレード71でウェブ72を押圧し、塗布ローラ41当接させる構成であれば、オフセットしたトナー粒子Taのクリーニングは非常に良好なものとなった。このため、上記先願の構成に比べてウェブの巻き取り量を大幅に低減させることができた。
本発明者らが実験を行ったところ、上記先願の構成に比べてウェブの巻き上げ量が1/10以下で済むことが確認された。そして、オフセットトナーの量やプロセス線速にもよるが、ウェブ72を10[mm]巻き上げた後に3分〜5分の連続プリントも可能であった。
しかしながら、巻き上げ量と巻き上げ速度はクリーニング性能だけでは決まらない。クリーニング性能が高くても、当接位置入口部に溜まった残留泡状定着液Baやオフセットしたトナー粒子Taの回収量とのバランスを取る必要がある。すなわち、クリーニング性能が高くても、巻き上げ量が少なかったり、巻き上げ速度が遅かったりすると、当接位置入口部に大量の残留泡状定着液Baとオフセットしたトナー粒子Taとが溜まってしまう。残留泡状定着液Baは自然に消泡するには時間がかかり、当接位置入口部に滞留した状態ではオフセットしたトナー粒子Taを残留泡状定着液Baが押し上げるように滞留する傾向がある。このように滞留したものが当接位置入口部から溢れると、せっかく回収したオフセットしたトナー粒子Taが盛り上った泡に運ばれて、いろいろな場所に付着して定着装置30内の汚染となってしまう。このため、当接位置入口部に大量の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taが溜まる前に、ウェブ72を巻き取り、当接位置入口部から溢れないように制御する必要がある。
さらに、残留泡状定着液Baを泡状のままで回収すると、その粘性により、ウェブ72の幅方向の中央部にある泡が幅方向外側に広がりにくいため、ウェブ72を巻き取ることで横から搾り出すことは困難である。その結果、ウェブ72を巻き取ったときに部分的に厚みが変わり、ウェブ72の蛇行やシワの発生原因となる。
このように、残留泡状定着液Baは泡状の特性から消泡に時間がかかり、そのために、クリーニングに問題が生じないからといって、ウェブ72の巻き取りを行わないと、当接位置入口部に滞留している残留泡状定着液Baとオフセットしたトナー粒子Taとが当接位置入口部から溢れ出ることを抑制できなくなる。
このため、当接位置入口部で堰き止めた残留泡状定着液Baは液状とすることが求められる。残留泡状定着液Baは加熱することで泡を消すことができる。塗布部材クリーニング装置70はヒータ93によってウェブ72を介して残留泡状定着液Baを加熱する構成を備えているため、当接位置入口部で堰き止めた残留泡状定着液Baを液状として回収することができる。これにより、残留泡状定着液Baとオフセットしたトナー粒子Taとが当接位置入口部から溢れ出ることを防止することができる。
【0171】
また、塗布部材クリーニング装置70が備えるヒータ93は、ガイド部材である第二ガイドローラ76内に配置され、第二ガイドローラ76を介してウェブ72を加熱するものである。加熱手段を配置する位置としては、他の位置にも配置することができるが、ウェブ72に接触する部材を介して加熱することで、ウェブ72を効率良く加熱することができる。
なお、本発明者らが、実験を行ったところ、残留泡状定着液Baの泡は、40[℃]〜50[℃]程度で破泡して液化していくことを確認した。このとき、温度が高ければ高いほど破泡が早い。しかし、大量の残留泡状定着液Baの場合には熱源に近いところ(ウェブ72に接触する箇所の近傍)の泡は消えても、残留泡状定着液Baの厚みが厚ければ厚い程、ウェブ72に付着した残留泡状定着液Baの上の泡は消えない。厚みがある残留泡状定着液Baを完全に液化しようとすると温度を上げていくしかない。しかし、ウェブ72と残留泡状定着液Baとの間に一度詳報して液状に戻った定着液は存在する液状の定着液を泡状定着液Buが消泡する温度まで上げないとその上の泡は消えない。
ウェブ72上の残留泡状定着液Baの厚みが約10[mm]を超えるような場合、全ての残留泡状定着液Baを液化するためにはウェブ72の泡と接触する表面の温度100[℃]以上にする必要があった。
このため、残留泡状定着液Baは、当接位置入口部で大量の泡にしてから回収するのではなく、塗布入口部で塞き止められる量の条件に合わせて、ウェブ72の表面で3〜5[mm]程度よりも残留泡状定着液Baの厚みが薄い状態のうちにウェブ72を巻き取るように、巻き上げ速度や巻き上げ量を設定することが望ましい。
ヒータ93の温度設定や巻き挙げの条件があるものの、加熱手段であるヒータ93を備えることにより、無いものに比べて早い時間で残留泡状定着液Baの消泡を行うことができる。
【0172】
また、塗布部材クリーニング装置70が備えるヒータ93は、サーミスタ92によって温度を制御し、ウェブ72をウェブ72の材料である樹脂フィルムの耐熱温度以下の範囲で加熱する。ヒータ93によって加熱することで、残留泡状定着液Baを消泡する効果は十分に確認できた。しかし、加熱の温度設定は高ければ良いというわけではない。温度が高くしすぎると、非加熱定着方式を採用するメリットが薄まる。また、加熱の温度設定が高いことにより、ヒータ93の周辺部材への影響も考慮する必要がある。ヒータ近傍の各部材の材料には耐熱温度があるため、その温度以下で使用する必要がある。ここで、塗布部材クリーニング装置70のフィルム当接ブレード71に用いるウレタンゴムは耐熱温度が80[℃]程度であり、ウェブ72に用いるPETフィルムは85[℃]程度である。このため、塗布部材クリーニング装置70では、ウェブ72が接触する第二ガイドローラ76の表面にサーミスタ92を配置し、第二ガイドローラ76の表面温度が60[℃]以下になるようにヒータ93による加熱をコントロールする。
【0173】
また、図23を用いて説明した構成は、塗布ローラ41は、残留泡状定着液Baを表面に担持し得る表面移動体であり、当接位置Eに対して、ウェブ72の表面移動方向下流側で、ウェブ72の塗布ローラ41表面と接触する側の表面と対向する位置でウェブ72に付着した残留泡状定着液Baを加熱する加熱手段である消泡ヒータ94を備える。これにより、ウェブ72を挟んで残留泡状定着液Baを加熱する構成に比して、より確実に消泡を行うことができる。
【0174】
また、図23を用いて説明した構成は、消泡ヒータ94を、ウェブ72の表面上から落下した付着物が回収される位置であるウェブ72と定着液回収皿77との間に配置し、消泡ヒータ94の付着物と接触し得る表面は付着物に対して耐性を有する加工を行っている。例えば、自己制御型ヒータには外部と接触し得る表面をシリコンゴムで覆ったものがあり、シリコンゴムは本実施形態で用いる定着液に対して耐性を有している。消泡ヒータ94をウェブ72と定着液回収皿77との間に配置することで、消泡しきれず泡状のまま落下してきた定着液を消泡させることができ、回収した定着液の取り扱いが容易になる。さらに、消泡ヒータ94の表面は定着液に対して耐性を有するため、安定した消泡を行うことができる。
【0175】
また、本実施形態の定着装置30は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液31aを液中に気泡が分散した泡状定着液Buとする定着液泡状化手段である定着液供給部130と、樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層である未定着のトナー層Tを担持する定着液付与対象である転写紙Pの表面に泡状定着液Buを付与する泡状定着液付与手段である定着液塗布部140とを有し、泡状定着液Buを付与することで軟化したトナー粒子が軟化した未定着のトナー層を記録媒体である転写紙Pに定着する定着装置である。定着液供給部130によって泡状定着液Buになり、転写紙Pに付与されず、表面移動体である塗布ローラ41及び加圧ローラ43に付着した状態の泡状定着液Buをクリーニングする泡状定着液クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70及び加圧部材クリーニング装置80を備える。泡状の定着液を用いることで、転写紙P上のトナー像への定着液の微量塗布と塗布ローラ41へのトナーオフセット防止を両立することができる。ここで、塗布ニップCで転写紙Pに付与されなかった泡状定着液Bu(残留泡状定着液Ba)が塗布ローラ41に付着したままとなると新しい泡状定着液Buと混ざって適切な定着が出来なくなるおそれがある。さらに、泡状定着液Buが加圧ローラ43に付着したままとなると、定着液が転写紙Pの裏面に付着して機内の構成部品に付着するおそれがある。これに対して、定着装置30は、塗布部材クリーニング装置70及び加圧部材クリーニング装置80によって塗布ローラ41及び加圧ローラ43を長期間に渡って良好にクリーニングすることができるので、塗布ローラ41や加圧ローラ43に泡状定着液Buが付着したままとなることに起因する不具合を防止することができる。
【0176】
また、本実施形態の定着装置30の泡状定着液付与手段である定着液塗布部140は、表面移動する表面に供給された泡状定着液Buを、定着液付与対象である転写紙Pと対向する塗布位置である塗布ニップCで転写紙Pの表面に塗布する塗布部材である塗布ローラ41を有し、塗布ニップCを通過した後の塗布ローラ41の表面上の泡状定着液Buである残留泡状定着液Baをクリーニングする塗布部材クリーニング手段として、塗布部材クリーニング装置70を用いる。残留泡状定着液Baとともに塗布部材クリーニング装置70によってクリーニングされる位置に到達するオフセットしたトナー粒子Taは、軟化し形態が変化している。そして、このオフセットしたトナー粒子Taは、粘性が高く、流動性はほとんど無いため、当接位置でクリーニング部材に付着すると付着したままとなり、そのまま硬化することがあるが、塗布部材クリーニング装置70ではウェブ72に付着したオフセットしたトナー粒子Taをウェブ72の表面移動によって当接位置Eから強制的に回収する。これにより、当接位置Eでオフセットしたトナー粒子Taが硬化することに起因する不具合を防止することができる。さらに、クリーニングブレードであるフィルム当接ブレード71等、定着液が接触して問題のある部材をウェブ72の内側に配置することで、定着液に接触することに起因する問題を防止することができる。
【0177】
本実施形態の画像形成装置としてのプリンタ100は、樹脂と色剤を含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体である転写紙P上に未定着のトナー層Tを形成するトナー像形成手段であるプロセスユニット3等と、転写紙P上にトナー像を定着せしめる定着手段とを備え、定着手段として、本実施形態の定着装置30を用いる。定着装置30では塗布ローラ41上の残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taを良好に回収することができるため、プリンタ100では、残留泡状定着液Ba及びオフセットしたトナー粒子Taが塗布ローラ41に残留することに起因する定着不良や画像品質の低下を防止することができ、良好な画像形成を行うことができる。さらに、定着装置30は非加熱の定着方式であるため、熱定着方式の定着装置を備えた構成よりも省エネルギー化を実現できる。
【符号の説明】
【0178】
3 プロセスユニット
4 感光体
6 現像装置
7 帯電装置
8 除電ランプ
9 ドラムクリーニング装置
15 レジストローラ対
20 転写ユニット
21 駆動ローラ
23 転写バックアップローラ
24 ベルトクリーニング装置
25 中間転写ベルト
26 一次転写ローラ
28 紙搬送ユニット
29 紙搬送ベルト
29a 二次転写ローラ
29b 駆動ローラ
30 定着装置
31 定着液収容器
31a 液状定着液
33 搬送ポンプ
34 液搬送パイプ
35 気体・液体混合部
38 泡微細化部
38a 外側円筒
38b 内側円筒
38c 泡搬送パイプ
38d 泡の出口
39 ノズル
41 塗布ローラ
42 膜厚調整ブレード
42a ブレード回動軸
43 加圧ローラ
51 塗布部材
52 定着液
53 記録媒体
54 トナー層
55 泡状の定着液
56 ジルコニア粒子
60 液状定着液を用いる定着装置
61 上部電極
62 下部電極
63 泡状の定着液
64 トナー層
65 加重検知ロードセル
70 塗布部材クリーニング装置
71 フィルム当接ブレード
72 ウェブ
72a 張架面
73 繰り出し軸
74 巻き取り軸
74a スライドガイド穴
74b ウォームホィール
75 第一ガイドローラ
76 第二ガイドローラ
76b ガイド板
77 定着液回収皿
77a 定着液回収パイプ
78 定着液回収容器
79 満タン検知センサ
80 加圧部材クリーニング装置
81 塗布ベルト
82 加圧ベルトクリーニングブレード
83 張架ローラ
85 加圧ベルト
86 加圧張架ローラ
91 寄り検知センサ
92 サーミスタ
93 ヒータ
94 消泡ヒータ
100 プリンタ
130 定着液供給部
140 定着液塗布部
172 エンドレスベルト
173 第一張架ローラ
174 第二張架ローラ
175 第三張架ローラ
176 第四張架ローラ
180 フィルム部材清掃装置
181 フィルム部材清掃ブレード
182 フィルム部材清掃ブラシ
183 ブラシ清掃ローラ
184 ローラ部材清掃ブレード
Ba 残留泡状定着液
Bu 泡状定着液
Bu−A 気泡
Bu−B 液膜境界
C 塗布ニップ
E 当接位置
P 転写紙
T 未定着のトナー層
Ta オフセットしたトナー粒子
Tb 定着トナー層
Tp トナー粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0179】
【特許文献1】特許第3290513号公報
【特許文献2】特開2004−109749号公報
【特許文献3】特開昭59−119364号公報
【特許文献4】特開2004−109747号公報
【特許文献5】特開2007−219105号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する被清掃体の表面上の付着物を除去手段によって除去するクリーニング装置において、
上記除去手段は、上記被清掃体表面に接触し、該被清掃体の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように、巻き取り可能あるいは無端移動可能に張架した帯状のフィルム部材と、
該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置で該フィルム部材を挟んで該被清掃体表面に当接するクリーニングブレードとを備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
請求項1のクリーニング装置において、
上記フィルム部材の2つの面のうちの上記クリーニングブレードが接触する側の面に粗面処理が施されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項3】
請求項1または2のクリーニング装置において、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向上流側及び下流側の該フィルム部材における該クリーニングブレードが接触する側の表面と接触し、該フィルム部材をガイドするガイド部材を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記フィルム部材は、繰り出し軸から繰り出され、上記クリーニングブレードが上記清掃体表面に当接する位置を通過した後、巻き取り軸に巻き取られる巻き取り式のウェブであることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記フィルム部材は、無端移動可能なエンドレスベルト状の部材であり、
該フィルム部材と該被清掃体表面とが接触する位置から離れた位置で該フィルム部材の表面上の付着物を除去するフィルム部材清掃手段を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項6】
請求項5のクリーニング装置において、
上記フィルム部材清掃手段は、上記フィルム部材の表面に接触して該フィルム部材の表面上の付着物を除去するブレード状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブレードを備え、
該フィルム部材が該被清掃体表面に接触する位置よりも該フィルム部材の移動方向下流側、且つ、該フィルム部材清掃ブレードが該フィルム部材に接触する位置よりも該フィルム部材の移動方向上流側に、ブレード状とは異なる構成のフィルム部材清掃部材を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項7】
請求項6のクリーニング装置において、
上記フィルム部材清掃ブレードは、清掃対象である上記付着物に対して耐性を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記フィルム部材清掃手段は、ブラシ繊維が上記フィルム部材の表面に接触して該フィルム部材の表面上の付着物を除去する回転ブラシ状のフィルム部材清掃部材であるフィルム部材清掃ブラシを備え、
無端移動する表面が該フィルム部材清掃ブラシに接触し、該フィルム部材清掃ブラシに付着した付着物を回収するブラシ清掃ローラと、該ブラシ清掃ローラの表面に接触して該ブラシ清掃ローラの表面上の付着物を除去するブレード状のローラ部材清掃ブレードとを備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項9】
請求項8のクリーニング装置において、
上記フィルム部材清掃手段は、上記フィルム部材の無端移動方向の複数箇所に上記フィルム部材清掃ブラシが接触するように、複数の該フィルム部材清掃ブラシを備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向上流側または下流側の該フィルム部材における該フィルム部材の表面移動方向に対して直交する幅方向の端部の位置を検出するフィルム端部検出手段を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項11】
請求項4のクリーニング装置において、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材の表面移動方向に対して直交する幅方向の端部の位置を検出するフィルム端部検出手段と、
上記巻き取り軸の軸方向の一端を上記ウェブの巻き取り方向に対してほぼ直交する方向に移動させる巻き取り軸移動機構を備え、
該巻き取り軸移動機構は該フィルム端部検出手段の検出結果に基づいて該巻き取り軸の該一端の位置を調節することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体は、樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有する定着液を表面に担持し得る表面移動体であり、
上記フィルム部材は該定着液に対して耐溶剤性を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体は、泡状の液体を表面に担持し得る表面移動体であり、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材を加熱する加熱手段を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項14】
請求項13のクリーニング装置において、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側の該フィルム部材の該クリーニングブレードが接触する側の表面と接触し、該フィルム部材をガイドするガイド部材を備え、
上記加熱手段は、該ガイド部材を介して該フィルム部材を加熱することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項15】
請求項13または14のクリーニング装置において、
上記加熱手段は、上記フィルム部材の耐熱温度以下の範囲で加熱することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項16】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載のクリーニング装置において、
上記被清掃体は、泡状の液体を表面に担持し得る表面移動体であり、
上記クリーニングブレードが上記フィルム部材を挟んで上記清掃体表面に当接する位置に対して、該フィルム部材の表面移動方向下流側で、該フィルム部材の該被清掃体表面と接触する側の表面と対向する位置で該フィルム部材に付着した上記泡状の液体を加熱する加熱手段を備えることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項17】
請求項16のクリーニング装置において、
上記加熱手段を、上記フィルム部材の表面上から落下した付着物が回収される位置に配置し、
該加熱手段の付着物と接触し得る表面は付着物に対して耐性を有することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項18】
樹脂の少なくとも一部を溶解または膨潤させることで樹脂微粒子を軟化させる軟化剤を含有した液状定着液を液中に気泡が分散した泡状定着液とする定着液泡状化手段と、
該樹脂微粒子からなる樹脂微粒子層を担持する定着液付与対象の表面に該泡状定着液を付与する泡状定着液付与手段とを有し、
該泡状定着液を付与することで軟化した該樹脂微粒子を記録媒体に定着する定着装置において、
上記定着液泡状化手段によって上記泡状定着液になり、上記定着液付与対象に付与されず、表面移動体に付着した状態の該泡状定着液をクリーニングする泡状定着液クリーニング手段を備え、
該泡状定着液クリーニング手段として、請求項1乃至17のいずれか1項に記載のクリーニング装置を用いることを特徴とする定着装置。
【請求項19】
請求項18の定着装置において、
上記泡状定着液付与手段は、表面移動する表面に供給された上記泡状定着液を、上記定着液付与対象と対向する塗布位置で該定着液付与対象の表面に塗布する塗布部材を有し、
上記クリーニング装置を、該塗布位置を通過した後の該塗布部材の表面上の該泡状定着液をクリーニングする塗布部材クリーニング手段に用いることを特徴とする定着装置。
【請求項20】
樹脂と色剤とを含有する樹脂微粒子を含むトナーを用いて記録媒体上に画像情報に基づいてトナー像を形成するトナー像形成手段と、
記録媒体に転写するトナー像を担持するトナー像担持体の表面、または、トナー像を担持する記録媒体の表面である定着液付与対象の表面に泡状定着液を塗布し、
該記録媒体上に該トナー像を定着せしめる定着手段とを備える画像形成装置であって、
該定着手段として、請求項18または19に記載の定着装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−34048(P2011−34048A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32371(P2010−32371)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】