説明

クリーニング装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】ブラシ毛同士の絡まりによる硬化を防止し、回転体に対する傷や摩耗の抑制と放電生成物等の付着物の除去との両立を簡易な構成で安定して維持する。
【解決手段】像保持回転体15に接触して、像保持回転体15上の残留トナーを除去するブラシ回転体180と、ブラシ回転体180により除去された残留トナーを回収する回収回転体185とを具備し、ブラシ回転体180は、回転軸180s周りに形成された弾性体層181と、ブラシ毛183bを有するブラシ層183とを備え、ブラシ回転体180と像保持回転体15とが接触する際と、ブラシ回転体180と回収回転体185とが接触する際とで、ブラシ回転体180のブラシ毛183bが同一の方向に倒れるように、ブラシ回転体180、像保持回転体15及び回収回転体185相互の回転方向及び/又は相対回転速度が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置としては、例えば感光ドラム表面を帯電、露光して形成した静電潜像を現像してトナー像化し、当該トナー像を中間転写体へ一次転写した後、記録用紙等の記録媒体に二次転写し、これを加熱加圧してトナー像を定着して所望の画像を形成するものが知られている。そして一般に、このような電子写真方式の画像形成装置においては、転写後の感光ドラム表面に残留する転写残トナー等をクリーニング(清掃除去)する手段として、例えばブラシ部材を備えたクリーニング装置が用いられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここで、特許文献1には、感光ドラムの表面を摺擦して残留しているトナーを除去する回転自在のブラシ部材と、このブラシ部材に付着したトナーを回収する回収ローラと、この回収ローラにトナー回収用のバイアス電圧を印加する電圧印加手段等とを備えたクリーニング装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ブラシ毛を有するブラシ層の下に弾性体層を形成したブラシ回転体を有するクリーニング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04−093974号公報
【特許文献2】特開2008−309847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的とするところは、ブラシ毛同士の絡まりによる硬化を防止し、回転体に対する傷や摩耗の抑制と放電生成物等の付着物の除去との両立を簡易な構成で安定して維持することができるクリーニング装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のクリーニング装置は、その表面にトナー像が形成される像保持回転体に接触して、像保持回転体上の残留トナーを除去するブラシ回転体と、前記ブラシ回転体に接触して、ブラシ回転体により除去された残留トナーを回収する回収回転体とを具備し、前記ブラシ回転体は、回転軸周りに形成された弾性体層と、この弾性体層上に植設されたブラシ毛を有するブラシ層とを備え、前記ブラシ回転体と前記像保持回転体とが接触する際と、前記ブラシ回転体と前記回収回転体とが接触する際とで、前記ブラシ回転体のブラシ毛が同一方向に倒れるように、前記ブラシ回転体、像保持回転体及び回収回転体相互の回転方向及び/又は相対回転速度が設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載のクリーニング装置は、請求項1に記載の構成において、前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体の回転方向は、いずれも対向回転方向に設定されていることを特徴とするものである。
【0009】
ここで、対向回転方向とは、2つの回転体が接触する領域において、その周面が互いに逆方向に移動する回転方向をいうものとする。
【0010】
請求項3に記載のクリーニング装置は、請求項1に記載の構成において、前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体のうち、一方の回転方向が対向回転方向に設定されていると共に、他方の回転方向が従動回転方向に設定されている場合には、従動回転方向に設定されている回転体の周速度は、前記ブラシ回転体の周速度以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0011】
ここで、従動回転方向とは、2つの回転体が接触する領域において、その周面が互いに連れ回る方向に移動する回転方向をいうものとする。また、周速度とは、2つの回転体の共通接線方向の線速度をいうものとする。
【0012】
請求項4に記載のクリーニング装置は、請求項1に記載の構成において、前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体の回転方向がいずれも従動回転方向に設定されている場合には、前記ブラシ回転体の周速度は、前記像保持回転体及び回収回転体のいずれの周速度に対しても、同方向の速度差が設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、同方向の速度差とは、ブラシ回転体の周速度が像保持回転体の周速度よりも速く設定されている場合には、当該ブラシ回転体の周速度は回収回転体の周速度に対しても速く設定されており、ブラシ回転体の周速度が像保持回転体の周速度よりも遅く設定されている場合には、当該ブラシ回転体の周速度は回収回転体の周速度に対しても遅く設定されている意である。
【0014】
請求項5に記載のクリーニング装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の構成において、前記像保持回転体は、その表面層が架橋樹脂により形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6に記載のクリーニング装置は、請求項1ないし5のいずれかに記載の構成において、前記像保持回転体に押し当てられる前の状態における前記ブラシ回転体のブラシ層と弾性体層とを合わせた総層厚をA、前記ブラシ層のブラシ毛の高さをBとし、前記像保持回転体に押し当てられた状態における前記ブラシ回転体のニップ部のブラシ層と弾性体層とを合わせた総層厚をCとすると、B<A−Cであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載のクリーニング装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の構成において、前記ブラシ回転体のブラシ層におけるブラシ毛は、斜毛処理されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載のクリーニング装置は、請求項1ないし6のいずれかに記載の構成において、前記ブラシ回転体のブラシ層におけるブラシ毛は、捲縮処理されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載の画像形成装置は、請求項1ないし8のいずれかに記載のクリーニング装置と、このクリーニング装置にその表面がクリーニングされる像保持回転体と、該像保持回転体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された像保持回転体に静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像に現像剤を供給して静電潜像を可視化する現像手段と、可視化した現像像を中間転写体や記録用紙に転写する転写手段とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、ブラシ毛同士の絡まりによる硬化を防止し、回転体に対する傷や摩耗の抑制と放電生成物等の付着物の除去との両立を簡易な構成で経時的に安定して維持することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、簡易な設定で、像保持回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向と、回収回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向とを同一方向とすることができる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、簡易な設定で、像保持回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向と、回収回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向とを同一方向とすることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、簡易な設定で、像保持回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向と、回収回転体とブラシ回転体とのニップ部におけるブラシ毛の毛倒れ方向とを同一方向とすることができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、放電生成物等の付着物の除去と摩耗の抑制とのバランスが困難な硬化膜表面層を有する像保持回転体における付着物除去性能と摩耗抑制性能とを効果的に両立させることができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、ブラシ毛による掻き取り機能と、弾性体層による圧接機能とを確実に分離して、転写残トナーや放電生成物等の付着物の除去性能と圧接力の付与性能とのバランスを経時的により安定して維持することができる。
【0025】
請求項7に記載の発明によれば、像保持回転体に対するダメージを抑制すると共に、ブラシ回転体の弾性体層による安定した圧接力を付与することができる。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、像保持回転体に対するダメージを抑制すると共に、ブラシ回転体の弾性体層による安定した圧接力を付与することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明によれば、上記いずれかのクリーニング装置を画像形成装置に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明が適用可能な画像形成装置の一例としてのタンデム型のデジタルカラー複写機を示す模式的構成図である。
【図2】本実施の形態に係るクリーニング装置の構成を説明するための感光ドラム周囲の構成機器の配置を示す模式図である。
【図3】クリーニング装置の別の構成を説明するための感光ドラム周囲の構成機器の配置を示す模式図である。
【図4】本実施の形態に係るブラシロールの構成を示すための模式図であり、(a)はブラシ毛が直毛状態のレースを示す斜視図であり、(b)はブラシ毛が直毛のブラシロール180の軸方向に直交する断面図である。
【図5】本実施の形態に係るブラシロールの食い込み量の設定を説明するための模式図である。
【図6】(a)はブラシ毛を斜毛処理した状態を示す模式図であり、(b)はブラシ毛を捲縮処理した状態を示す模式図である。
【図7】ブラシロールの回転方向・周速度に対する感光ドラム及びデトーニングロールの回転方向・周速度の相対条件を抽出整理した図表である。
【図8】本実施の形態に係るブラシロール、感光ドラム及びデトーニングロールの回転方向・周速度の設定パターンを説明するための模式図である。
【図9】本実施の形態に係るブラシロール、感光ドラム及びデトーニングロールの回転方向・周速度の設定パターンを説明するための模式図である。
【図10】本実施の形態に係るブラシロール、感光ドラム及びデトーニングロールの回転方向・周速度の設定パターンを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
まず、本発明が適用可能な画像形成装置の概略構成について図1を参照して説明する。ここで、図1は、本発明が適用可能なタンデム型のカラー電子写真複写機の概略構成を示す模式図である。なお、このタンデム型のカラー電子写真複写機は、画像読取装置を備えているが、画像形成装置としては、画像読取装置を備えずに、不図示のパーソナルコンピュータ等から出力される画像データに基づいて画像を形成するカラープリンターやファクシミリ等であってもよい。
【0031】
図1において、1はタンデム型のカラー電子写真複写機の本体を示すものであり、このカラー電子写真複写機本体1は、その一端側の上部に、原稿2の画像を読み取る画像読取装置(IIT:Image Input Terminal)4を備えていると共に、当該カラー電子写真複写機本体1の内部には、画像読取装置4や不図示のパーソナルコンピュータ等から出力される画像データ、あるいは電話回線やLAN等を介して送られてくる画像データに、予め定められた画像処理を施す画像処理装置(IPS:Image Processing System)12と、当該画像処理装置12で予め定められた画像処理が施された画像データに基づいて画像を出力する画像出力装置(IOT:Image Output Terminal)100とが配設されている。
【0032】
上記画像読取装置4では、プラテンカバー3によってプラテンガラス5上に押圧された原稿2や、不図示の自動原稿搬送装置によって自動的に搬送される原稿の画像が読み取られる。この画像読取装置4は、プラテンガラス5上に載置された原稿2を光源6によって照明し、原稿2からの反射光像を、フルレートミラー7及びハーフレートミラー8,9及び結像レンズ10からなる縮小光学系を介してCCD等からなる画像読取素子11上に走査露光して、この画像読取素子11によって原稿2の色材反射光像を予め定められたドット密度(例えば、16ドット/mm)で読み取るように構成されている。
【0033】
上記画像読取装置4によって読み取られた原稿2の色材反射光像は、例えば、赤(R)、緑(G)、青(B)(各8bit)の3色の原稿反射率データとして画像処理装置12に送られ、この画像処理装置12では、原稿2の反射率データに対して、シェーデイング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消し、色/移動編集等の予め定められた画像処理が施される。
【0034】
そして、上記の如く画像処理装置12で予め定められた画像処理が施された画像データは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)(各8bit)の4色の原稿色材階調データ(ラスタデータ)に変換され、次に述べるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ユニット13Y、13M、13C、13Kの露光装置14Y,14M,14C,14Kに送られ、これらの露光装置14Y,14M,14C,14Kでは、予め定められた色の原稿色材階調データに応じてレーザー光LBによる画像露光が行われる。
【0035】
上記タンデム型のカラー電子写真複写機本体1の内部には、上述したように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kが、水平方向に一定の間隔をおいて並列的に配置されている。
【0036】
これらの4つの画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kは、すべて同様に構成されており、大別して、矢印A方向に沿って予め定められた速度で回転駆動される像保持回転体としての感光ドラム15Y,15M,15C,15Kと、この感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面を一様に帯電する帯電手段としてのスコロトロン16Y,16M,16C,16Kと、当該感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面に各色の画像情報に応じたレーザービームを走査露光して静電潜像を形成する露光装置14Y,14M,14C,14Kと、感光ドラム15Y,15M,15C,15K上に形成された静電潜像を現像する現像装置17と、転写後に感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面に残留した転写残トナーを除去するドラムクリーニング装置18Y,18M,18C,18K等とから構成されている。
【0037】
上記露光装置14Y,14M,14C,14Kは、対応する半導体レーザー19を原稿色材階調データに応じて変調して、この半導体レーザー19からレーザー光LBを階調データに応じて出射する。この半導体レーザー19から出射されたレーザー光LBは、反射ミラー20,21を介して回転多面鏡22によって偏向走査され、再び反射ミラー20,21及び複数枚の反射ミラー23,24を介して感光ドラム15Y,15M,15C,15K上に走査露光される。
【0038】
感光ドラム15Y,15M,15C,15Kは、導電性の金属製円筒体の表面(周面)に、有機光導電体等からなる感光層が積層されて構成され、図中、矢印A方向(時計回り方向)へ予め定められたプロセススピードで回転するようになっている。なお、本実施の形態において、上記感光層は、電荷発生層と電荷輸送層が順次積層された機能分離型であり、通常は高抵抗であるが、レーザー光線が照射されると、レーザー光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を有している。
【0039】
上記画像処理装置12からは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kの露光装置14Y,14M,14C,14Kに各色の画像データ(ラスタデータ)が順次出力され、これらの露光装置14Y,14M,14C,14Kから画像データに応じて出射されるレーザービームLBが、それぞれの感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面に走査露光されて静電潜像が形成される。上記各感光ドラム15Y,15M,15C,15Kに形成された静電潜像は、対応する現像装置17Y,17M,17C,17Kによって、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像として現像される。
【0040】
上記各画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kの感光ドラム15Y,15M,15C,15K上に、順次形成されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の未定着トナー像は、当該感光ドラム15Y,15M,15C,15Kと中間転写体としての中間転写ベルト25とが接する一次転写位置において、中間転写ベルト25の表面に互いに重ね合わされた状態で順次転写される。この一次転写位置における中間転写ベルト25の裏面側には、一次転写手段としての半導電性の一次転写ロール26Y,26M,26C,26Kが配設されており、これらの一次転写ロール26Y,26M,26C,26Kによって中間転写ベルト25が感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面に当接するようになっている。上記一次転写ロール26Y,26M,26C,26Kには、トナーの帯電極性と逆極性の電圧が印加されており、感光ドラム15Y,15M,15C,15K上に形成された各色の未定着トナー像は、それぞれ中間転写ベルト25上に順次静電的に吸引され、フルカラーの画像が形成される。なお、感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの表面の転写残トナーは、ドラムクリーニング装置18Y,18M,18C,18Kによりクリーニングされる。
【0041】
上記中間転写ベルト25は、駆動ロール27と、従動ロール28と、テンションロール29と、従動ロール30と、二次転写用の対向ロールであるバックアップロール31と、アイドルロール32との間に、一定のテンションで張架されており、不図示の定速性に優れた専用の駆動モーターによって回転駆動される駆動ロール27により、感光ドラム15Y,15M,15C,15Kの回転と同期して矢印B方向に予め定められた速度で循環駆動されるようになっている。
【0042】
なお、単色の画像を形成する場合には、所望の色の画像形成ユニット13Y,13M,13C,13Kのみを動作させ、中間転写ベルト25上に所望の単色の未定着トナー像が形成される。
【0043】
このようにして、上記中間転写ベルト25上に多重に一次転写されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の未定着トナー像は、中間転写ベルト25の回動に伴って記録用紙P(記録媒体)の搬送経路に面した二次転写位置へと搬送され、この二次転写位置において、中間転写ベルト25から記録用紙Pに未定着トナー像が二次転写される。記録用紙Pは、用紙トレイ39,40,41のいずれかからフィードローラ42によって給紙され、複数の搬送ローラ43,44を備えた用紙搬送路46によってレジストローラ47まで搬送されて一旦停止される。次に、上記記録用紙Pは、レジストローラ47によって予め定められたタイミングで搬送され、二次転写ロール33と中間転写ベルト25との間に挟み込まれる。また、二次転写位置における中間転写ベルト25の裏面側には、二次転写ロール33の対向をなすバックアップロール31と、当該バックアップロール31に当接する不図示の金属ロールが配設されている。上記二次転写位置では、金属ロールにトナーの帯電極性と同極性の電圧(正規の転写バイアス)を印加することにより、二次転写ロール33を対向電極として転写電界を形成させ、中間転写ベルト25上に保持された未定着トナー像は、二次転写位置において記録用紙Pに静電転写される。なお、上記二次転写ロール33は、不図示のブラシロールによって清掃されるようになっている。
【0044】
そして、未定着トナー像が転写された記録用紙Pは、中間転写ベルト25から剥離された後、2連の転写材搬送手段としての用紙搬送ベルト35,36によって定着装置37に送り込まれ、未定着トナー像の定着処理がなされ、装置本体1の外部に設けられた排出トレイ38上に排出される。なお、未定着トナー像の二次転写が終了した中間転写ベルト25は、二次転写部の下流に位置するベルトクリーニング装置48によって残留トナー(転写残トナー)が除去されるようになっている。
【0045】
次に、本実施の形態に係るクリーニング装置(本例では、ドラムクリーニング装置)18Y,18M,18C,18Kの構成について、図2及び図3を参照して説明する。ここで、図2は、本実施の形態に係るクリーニング装置18Y,18M,18C,18Kの構成を説明するための感光ドラム15Y,15M,15C,15K周囲の構成機器の配置を示す模式図であり、図3は、クリーニング装置18Y,18M,18C,18Kの別の構成を説明するための感光ドラム15Y,15M,15C,15K周囲の構成機器の配置を示す模式図である。なお、各色(Y,M,C,K)ユニットにおける構成機器及びその構成部材は、全て同様な構造であるので、簡単のため、以下、各符号は総称表記(例えば、クリーニング装置18)とする。
【0046】
図2に模式的に示すように、感光ドラム15の周囲には、その回転方向上流側から順に、感光ドラム15の表面(周面)を予め定められた電位に一様に帯電する帯電装置としてのスコロトロン16と、一様に帯電された感光ドラム15の表面(周面)に、色分解された画像データ(画像信号)に基づくレーザー光線(像光)を照射し、露光によって静電潜像を形成する露光装置14と、帯電したトナーを静電潜像に転移させて(現像して)トナー像とする現像装置17と、感光ドラム15に接触する経路で周回可能に張架された無端ベルト状の中間転写ベルト25と、感光ドラム15上に形成されたトナー像を中間転写ベルト25へ転写する一次転写手段としての一次転写ロール26と、一次転写後に感光ドラム15の表面に残留した転写残トナーを除去する(ドラム)クリーニング装置18とが配置されている。
【0047】
本実施の形態に係る感光ドラム15は、導電性の金属製支持体の上に電荷発生層、電荷輸送層といった機能層が積層された構成を有しており、その表面層は、摺擦による磨耗を抑制して感光ドラム15の長寿命化を図るため、例えばフェノール・メラミン・ベンゾグアナミン等の架橋性樹脂により形成された、いわゆる硬化膜表面層となっている。
【0048】
スコロトロン16は、感光ドラム15側を開口側とする感光ドラム15の回転軸と直交する断面がコ字状のシールド16aと、このシールド16aの開口側に設けられたグリッド16bと、シールド16a内に設けられ感光ドラム15の回転軸方向を長手方向(軸方向)とするワイヤー16cとを有し、コロナ放電を用いて感光ドラム15の表面を帯電させるようになっている。なお、本実施の形態では、帯電装置16として、非接触帯電方式のスコロトロンを用いているが、接触帯電方式の帯電ロールを用いてもよい。
【0049】
また、本実施の形態において、一次転写ロール26とクリーニング装置18との間には、転写残トナーの極性を揃えるためのプレクリーニングコロトロンPCCと、感光ドラム15を除電するためのプレクリーニングランプPCLとが配設されている。
【0050】
本実施の形態に係るクリーニング装置18は、一次転写ロール26の下流側であって、帯電装置16の上流側に設けられており、感光ドラム15の表面(周面)に圧接し、感光ドラム15上に付着した転写残トナー等の付着物を除去するブラシ回転体としてのブラシロール180と、ブラシロール180に付着した転写残トナー等の付着物を回収する回収回転体としての回収ロール185とが不図示の筐体内に配設されている。
【0051】
本実施の形態において、ブラシロール180は、感光ドラム15の表面と接触するように配置されており、その詳細を後述するように、予め定められた電圧(例えば、+260V)が印加される金属シャフト周りにスポンジやゴム等で弾性体層を形成し、この弾性体層上にパイル織りしたレースをスパイラル巻きして形成されている。
【0052】
回収ロール185は、ブラシロール180に接触配置されており、その表面層がカーボンブラックを分散させて抵抗値を調整したフェノール樹脂から形成されたいわゆるデトーニングロールであり、予め定められた電圧(例えば、+460V)が印加されるようになっている。また、本実施の形態において、デトーニングロール185には、その表面の付着物を掻き取るためのスクレーパ185SRがさらに接触配置されている。なお、デトーニングロール185には、例えば、アルミニウム合金やステンレス合金鋼等の金属ロールに、スクレーパ185SRとの摺動を円滑に行なうためのフッ素樹脂等(例えば、テフロン(登録商標))の被膜を形成したものを用いてもよい。
【0053】
そして、例えば、一次転写後に感光ドラム15上に残留した転写残トナー及び中間転写ベルト25上から感光ドラム15上に再転写された逆極性のトナー(以下、リトランスファートナーとも称する)は、プレクリーニングコロトロンPCCにより大部分がマイナス極性に揃えられる。その後、感光ドラム15の電位は、プレクリーニングランプPCLにより約−50Vに除電される。マイナス極性に揃えられたトナーは、プラスを印加したブラシロール180に突入してクリーニングされ、感光ドラム15からブラシロール180に転移したトナーは、さらにデトーニングロール185に移されてスクレーパ185SRにて掻き落とされて回収される。
【0054】
なお、本実施の形態では、プレクリーニングコロトロンPCCにより、ほとんど全てのリトランスファートナーがマイナス極性に揃えられているので、ブラシロール180はプラスの電圧(例えば、+260V)を印加した1本のみでクリーニングする構成を採用しているが、リトランスファートナーの量が多いなどシステムによってはプレクリーニングコロトロンPCCを使用しても逆極性のままのトナーが存在する場合がある。その場合は、例えば、図3に模式的に示すように、ブラシロール180の下流側にさらにマイナスの電圧を印加した同様な構成のブラシロール280(例えば、−400Vを印加)及びデトーニングロール285(例えば、−800Vを印加)を配設することで両極性のトナーをクリーニングするように構成してもよい。
【0055】
次に、本実施の形態に係るブラシロール180の詳細について、図4〜図6を参照してさらに説明する。ここで、図4は、本実施の形態に係るブラシロール180の構成を示すための模式図であり、(a)はブラシ毛183bが直毛状態のレースを示す斜視図であり、(b)はブラシ毛183bが直毛のブラシロール180の軸方向に直交する断面図である。また、図5は、本実施の形態に係るブラシロール180の食い込み量の設定を説明するための模式図である。さらに、図6(a)は、ブラシ毛183bを斜毛処理した状態を示す模式図であり、図6(b)は、ブラシ毛183bを捲縮処理した状態を示す模式図である。
【0056】
図4に示すように、ブラシロール180は、感光ドラム15の回転軸と平行に配置された金属製のシャフト180sの上に導電性を有するスポンジやゴムなどの弾性体層181を設け、この弾性体層181の上にパイル織りされた導電性を有するレース183L(図4(a)参照)をスパイラル状に捲くことで導電性のブラシ層183が形成されている。なお、上記レース183Lは、図4(a)に示すように、基布183a上に予め定められた密度でブラシ毛183bを植設(パイル織り)することにより形成されている。そして、予め定められた食い込み量で、感光ドラム15に押し当てる(圧接する)ことにより、転写残トナーの除去のみならず、放電生成物の除去を可能として、高温高湿環境下における画像の白抜け等の画像欠陥を未然に防止するようになっている。
【0057】
このように構成したブラシロール180においては、主としてブラシ層183のブラシ毛183bに掻き取り機能を担わせると共に、主として弾性体層181に圧接機能を担わせることにより機能分離している。すなわち、ブラシ層183のブラシ毛183bの腰の力によらず、弾性体層181の歪み(弾性力)により感光ドラム15に対して圧接力を付与することにより、感光ドラム15上に付着した放電生成物等をブラシ毛183bにて除去すると共に、ブラシロール180の食い込み量の変化に対する圧接力の変化を抑制している。
【0058】
なお、本実施の形態において、ブラシロール180の感光ドラム15に対する食い込み量は、図4(b)に示すように、感光ドラム15に押し当てる前の状態におけるブラシ層183と弾性体層181とを合わせた総層厚をA、ブラシ層183のブラシ毛183bの高さをBとし、また、図5に模式的に示すように、感光ドラム15に押し当てた後におけるニップ部のブラシ層183と弾性体層181とを合わせた総層厚をCとすると、食い込み量は(A−C)となる。そして、本実施の形態では、(A−C)>Bとなるように食い込み量が設定、すなわち、ブラシ層183のブラシ毛183bの高さBよりも食い込み量(A−C)が大きくなるように設定されている。これにより、ブラシ層183のブラシ毛183bの腰によらず、弾性体層181の歪み(弾性力)によって、安定して圧接力が付与されることとなり、ブラシ層183のブラシ毛183bによる掻き取り機能と、弾性体層181による圧接機能とを確実に分離して、転写残トナーや放電生成物の除去性能と圧接力の付与性能とを経時的により安定して維持することを可能としている。
【0059】
さらに、ブラシ毛183bによる掻き取り機能と、弾性体層181による圧接機能との機能分離を促進すると共に、感光ドラム15に対する傷等のダメージを抑制するという観点からは、ブラシ層183のブラシ毛183bは、予め熱や機械的な圧力による斜毛処理や捲縮処理が施されていることが好ましい。
【0060】
具体的には、図6(a)に模式的に示すように、基布183aに植設(パイル織り)されたブラシ毛183bを予め熱や機械的な圧力により一定の方向に寝かせた斜毛処理を施したレース183L1や、図6(b)に模式的に示すように、基布183aに植設(パイル織り)されたブラシ毛183bを予め熱や機械的な圧力によりカールさせた捲縮処理を施したレース183L2を用いてブラシ層183を形成することが好ましい。これにより、ブラシ毛183bが直毛の構成に比し、ブラシ毛183bの腰が弱まり、感光ドラム15表面に対する傷の発生やブラシ毛183bの摩耗を抑制すると共に、弾性体層181による一層安定した圧接力の付与が可能となる。なお、本例では、レース状態で斜毛処理したが、ブラシ状に巻いた後に斜毛処理等を行っても差し支えない。
【0061】
ところで、一般的に、弾性層が無くシャフトにブラシレースを巻いた通常のブラシロールでは、製造誤差によるブラシ外径のバラツキや取り付け位置の誤差などによって、食い込み量は±250μm程度のバラツキが生じる。つまり、一般的な精度(部品精度や取付精度など)で構成された場合におけるブラシロールの食い込み量は、±250μm程度のバラツキが不可避的に生じてしまう。そして、このようにブラシロールの食い込み量にバラツキが生じると、その先端力(圧接力)にもバラツキが生じ、ブラシロールによる感光ドラム15表面の付着物の除去性能にもバラツキが生じることとなる。
【0062】
一方、感光ドラム15に対しては、上記通常のブラシロールを使用するときに、画像の白抜け等の画像欠陥の要因となる放電生成物等の付着物の除去能力と感光ドラム15の磨耗の抑制とが両立し得る(両者のバランスが取れた)先端力(圧接力)が求められるが、特に、硬化膜表面層を有する硬い感光ドラム15においては、その求められる先端力が比較的大きく食い込み量に対する先端力の感度が高いので、食い込み量のバラツキによる振れで先端力(圧接力)が大きく変動してしまう。このため、上述したような一般的な食い込み量のバラツキ範囲内において、食い込み量が低い側に振れると放電生成物の除去が不十分となったり、逆に高い側に振れると感光ドラム15の磨耗が大きくなるといった問題が生じる虞がある。
【0063】
これに対して、上述のように構成したブラシロール180を用いた場合には、弾性体層181とブラシ層183とで機能分離することにより、食い込み量に対する先端力の感度を鈍らせて、食い込み量の振れがあっても感光ドラム15の磨耗の抑制と放電生成物や転写残トナーの除去性能とを両立させることが可能となるが、感光ドラム15、ブラシロール180、デトーニングロール185相互の回転方向や相対回転速度によっては、ブラシロール180のブラシ毛183b同士が互いに絡まり合ってソリッド化(硬化)してしまい、感光ドラム15や、回収ロール185の表面に傷をつけたり、それらの磨耗を促進してしまうといった問題が生じることが本発明者らの研究によって判明した。
【0064】
以下に、上述のように構成した本実施の形態に係るクリーニング装置18における各回転体(感光ドラム15、ブラシロール180、デトーニングロール185)相互の回転方向や相対周速度と、感光ドラム15の摩耗や画像欠陥の発生について、比較検証を行った結果を説明する。なお、検証に当たっては、各回転体の仕様を下記のように設定した。
・感光ドラム15:表面層(オーバーコート層:OCL)として架橋樹脂からなる硬化膜層を有する有機感光体を使用し、外径Φ84mmとした。
・デトーニングロール185:表面層としてカーボンブラックを分散させたフェノール樹脂層を有する金属ロールを使用し、外径Φ16mmとした。
・ブラシロール180の弾性体層181:(株)INOAC Corporationの発泡ポリウレタンスポンジを使用し、抵抗は6logΩ、外径Φ10mm、内径(シャフト径)Φ6mmとした。
・ブラシロール180のブラシ層183:ブラシ繊維はKBセーレン(株)のC.B分散ナイロン(登録商標)の導電糸で割繊繊維を使用した(割繊前の太さが370T/50Fであり、アルカリ溶液により割繊した後の太さが0.5d(248T/450F))。この繊維をパイル織りし幅15mmのレース183Lを作成した。なお、基布183aの厚みは約1mmであり、パイル密度は486Kf/inchでパイル長は2mmとした(図4(a)参照)。このレース183Lに一定の熱と圧力をかけ、高さが0.5mmになるように斜毛処理し(図6(a)参照)、上記弾性体層(スポンジロール)181にパイル織りした幅15mmのレース183L1をスパイラル状に巻き付けて両面テープで接着し、外径がΦ13mmのブラシロール180を形成した。
・ブラシロール180の食い込み量:感光ドラム15及びデトーニングロール185のいずれに対しても食い込み量は1.0mmに設定した。
【0065】
ここで、ブラシロール180の回転方向・周速度に対する感光ドラム15及びデトーニングロール185の回転方向・周速度の相対条件を抽出整理すると、図7に示すような9つの条件に分解される。
【0066】
上記条件にて、感光ドラム15、ブラシロール180、デトーニングロール185のそれぞれの回転方向・相対周速度を組み合わせて、28℃,85%の高温高湿環境下にて3万枚の通紙テストを実施し、テスト後に感光ドラム15の磨耗量を測定して磨耗率(nm/Kcyc)を算出した。
【0067】
図7に示した条件1〜9の組み合わせ全てについて比較検証したところ、以下に示す3つの集約パターンについては、いずれも感光ドラム15の磨耗率が2〜4nm/Kcycであり高温高湿環境下での画像白抜け(いわゆるDeletion)も未発生であった。また、検証後のブラシ毛183bも特に絡まるようなことは無くほぼ初期状態を維持していた。上記3つの集約パターンの具体的な内容としては、
【0068】
<パターン1>:ブラシロール180から見て、感光ドラム15及びデトーニングロール185の回転方向をいずれも対向回転方向(カウンター方向)に設定した場合(図7の条件1×条件3に相当)。具体的には、図8に模式的に示すように、例えば、感光ドラム15の回転方向を時計回りに設定し、ブラシロール180の回転方向を時計回りに設定し、デトーニングロール185の回転方向を時計回りに設定した場合。
【0069】
<パターン2>:ブラシロール180から見て、感光ドラム15及びデトーニングロール185のいずれか一方の回転体の回転方向を対向回転方向(カウンター方向)に設定し、他方の回転体の回転方向を従動回転方向(連れ回り方向)に設定し、かつ、その周速度をブラシロール180の周速度以下に設定した場合(図7の条件1×条件4、条件2×条件3に相当)。具体的には、図9(a)に模式的に示すように、例えば、感光ドラム15の回転方向を時計回りに設定すると共に、ブラシロール180の回転方向を時計回りに設定し、かつ、デトーニングロール185の回転方向を反時計回りに設定すると共に、その周速度Vをブラシロール180の周速度V以下に設定した場合、又は、図9(b)に模式的に示すように、例えば、感光ドラム15の回転方向を時計回りに設定し、ブラシロール180の回転方向を反時計回りに設定すると共に、その周速度Vを感光ドラム15の周速度V以上に設定し、かつ、デトーニングロール185の回転方向を反時計回りに設定した場合。
【0070】
<パターン3>:ブラシロール180から見て、感光ドラム15及びデトーニングロール185をいずれも従動回転方向(連れ回り方向)に設定し、かつ、ブラシロール180の周速度を、感光ドラム15及びデトーニングロール185のいずれの回転体の周速度に対しても、同方向の速度差が生じるように設定した場合(図7の条件2×条件4、条件6×条件7に相当)。具体的には、図10(a)に模式的に示すように、例えば、感光ドラム15の回転方向を時計回りに設定し、ブラシロール180の回転方向を反時計回り方向に設定すると共に、その周速度Vを感光ドラム15の周速度Vよりも速く設定し、かつ、デトーニングロール185の回転方向を時計回り方向に設定すると共に、その周速度Vをブラシロール180の周速度V以下に設定した場合、又は、図10(b)に模式的に示すように、例えば、感光ドラム15の回転方向を時計回りに設定し、ブラシロール180の回転方向を反時計回り方向に設定すると共に、その周速度Vを感光ドラム15の周速度Vよりも遅く設定し、かつ、デトーニングロール185の回転方向を時計回り方向に設定すると共に、その周速度Vをブラシロール180の周速度V以上に設定した場合。
【0071】
ここで、上記<パターン1>〜<パターン3>の場合は、いずれにおいても感光ドラム15とブラシロール180とのニップ部でのブラシ毛183bの倒れ易い方向と、ブラシロール180とデトーニングロール185とのニップ部でのブラシ毛183bの倒れ易い方向とが一致した。なお、ブラシロール180から見て、感光ドラム15及びデトーニングロール185の回転方向をいずれも従動回転方向に設定する(パターン3)際に、いずれか一方の回転体(例えば、感光ドラム15)とブラシロール180とが等速度の場合には、他方の回転体(例えば、デトーニングロール185)とのニップ部で生じた毛倒れ方向を維持すると考えられる。従って、パターン3の場合に、感光ドラム15及びデトーニングロール185のいずれか一方の周速度を、ブラシロール180の周速度に対して速度差が生じるように設定した際には、図10(a),(b)に模式的に示したように、他方の回転体の周速度を、ブラシロール180の周速度と等速に設定しても差し支えない。
【0072】
また、使用初期段階における感光ドラム15及びデトーニングロール185の表面に対する傷や過度の摩耗を防止するという観点からは、斜毛処理等によりブラシ毛183bを予め寝かせた方向(毛倒れさせた方向)と、ブラシロール180と感光ドラム15及びデトーニングロール185とが接触する際のブラシ毛183bが倒れ易い方向とを一致させることが好ましい。すなわち、上記パターン1〜3にて、ブラシ毛183bが倒れる方向と、ブラシ毛183bを予め寝かせた方向とが一致するようにブラシロール180を設定配置することが好ましい。
【0073】
一方、上記3つの集約パターン以外の各条件(具体的には、図7において比較例として示した条件1×条件5、条件2×条件5、条件6×条件8、条件6×条件9)では、感光ドラム15の磨耗率は12〜15nm/KcycでありDeletionは未発生であったが、検証後のブラシ毛183bがひどく絡まって硬くソリッド化していた。これは、上記パターン以外の組み合わせでは、いずれも感光ドラム15とブラシロール180とのニップ部でのブラシ毛183bの毛倒れ方向とブラシロール180とデトーニングロール185とのニップ部でのブラシ毛183bの毛倒れ方向とが異なる(反対となる)ため、ブラシ毛183bが互いに絡んで硬化してしまい感光ドラム15を異常に磨耗させてしまったためと考えられる。なお、上記3つのパターン以外の条件では、感光ドラム15の磨耗が大きいために放電生成物は除去されてDeletionは未発生であったが、感光ドラム15のライフ(寿命)が異常にショートライフとなってしまい望ましくない。
【0074】
これに対して、上記3パターンでは、いずれも感光ドラム15とブラシロール180とのニップ部でのブラシ毛183bの毛倒れ方向とブラシロール180とデトーニングロール185とのニップ部でのブラシ毛183bの毛倒れ方向とが同一方向となるため、ブラシ毛183bが互いに絡まらずに、ブラシ毛183bのソリッド化(硬化)に起因する異常な感光ドラム15の磨耗を防止でき、かつ、感光ドラム15の磨耗率は放電生成物を十分除去できる(Deletionが発生しない)範囲の低磨耗を実現し、本実施の形態に係るブラシロール180の長所を十分に引き出せることが確認できた。
【0075】
また、パイル織りの繊維として2d導電性ナイロン繊維を用い、熱と物理的な力でカールさせる捲縮処理を施してレース183L2(図6(b)参照)を作成し、同様な検証を行った場合でも、上記3パターンについては、検証後のブラシ毛183b同士が互いに絡まって硬化するようなことは無くほぼ初期状態を維持しており、感光ドラム15の異常な摩耗やDeletionも未発生であった。
【0076】
すなわち、感光ドラム15とブラシロール180とのニップ部でのブラシ毛183bの倒れ易い方向と、ブラシロール180とデトーニングロール185とのニップ部でのブラシ毛183bの倒れ易い方向とが同一の方向となるように、感光ドラム15、ブラシロール180、デトーニングロール185相互の回転方向及び/又は相対回転速度(周速度)を設定することにより、簡易な構成でブラシ毛183b同士の絡まりによるソリッド化を防止し、放電生成物等の付着物の除去性能と感光ドラム15の摩耗の抑制とのバランスを経時的に安定して維持できることが確認できた。
【0077】
以上、本発明に係るクリーニング装置18によれば、感光ドラム15、ブラシロール180、回収ロール185相互の回転方向及び/又は相対回転速度の関係を簡易な設定で規定することにより、ブラシロール180による感光ドラム15の異常な磨耗を促進させてしまうブラシ毛183b同士の絡まりを防止しながら、バラツキ等による感光ドラム15への食い込み量の振れがあっても感光ドラム15の磨耗を低磨耗に抑制しつつ、かつ、高温高湿環境下での白抜け等の画像欠陥の要因となる放電生成物等の付着物を十分に除去して、長期に亘って安定した信頼性の高いクリーニング性能を実現することができる。
【0078】
なお、上述した実施の形態では、像保持回転体の表面層として硬化膜層を有する感光ドラム15を用いた構成を例示したが、表面層として硬化膜層を有しない感光ドラム15に対しても当然に適用することができる。また、有機感光ドラム(OPC)以外の感光ドラムであっても、例えば、アモルファスシリコン製の感光ドラム等は表面層が硬いので、硬化膜層を有する有機感光ドラム15と同様に、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1:画像形成装置、4:画像読取装置、12:画像処理装置、13Y,13M,13C,13K:画像形成ユニット、14Y,14M,14C,14K:露光装置、15Y,15M,15C,15K:感光ドラム、16Y,16M,16C,16K:スコロトロン、17Y,17M,17C,17K:現像装置、18Y,18M,18C,18K:クリーニング装置、25:中間転写ベルト、26Y,26M,26C,26K:一次転写ロール、31:バックアップロール、33:二次転写ロール、35,36:用紙搬送ベルト、37:定着装置、38:排出トレイ、39,40,41:用紙トレイ、48:ベルトクリーニング装置、180,280:ブラシロール、180s:シャフト、181:弾性体層、183:ブラシ層、183L,183L1,183L2:レース、183a:基布、183b:ブラシ毛、185,285:デトーニングロール、185SR:スクレーパ、P:記録用紙、PCC:プレクリーニングコロトロン、PCL:プレクリーニングランプ、V:ブラシロールの周速度、V:感光ドラムの周速度、V:デトーニングロールの周速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その表面にトナー像が形成される像保持回転体に接触して、像保持回転体上の残留トナーを除去するブラシ回転体と、
前記ブラシ回転体に接触して、ブラシ回転体により除去された残留トナーを回収する回収回転体と
を具備し、
前記ブラシ回転体は、回転軸周りに形成された弾性体層と、この弾性体層上に植設されたブラシ毛を有するブラシ層とを備え、前記ブラシ回転体と前記像保持回転体とが接触する際と、前記ブラシ回転体と前記回収回転体とが接触する際とで、前記ブラシ回転体のブラシ毛が同一方向に倒れるように、前記ブラシ回転体、像保持回転体及び回収回転体相互の回転方向及び/又は相対回転速度が設定されていることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体の回転方向は、いずれも対向回転方向に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体のうち、一方の回転方向が対向回転方向に設定されていると共に、他方の回転方向が従動回転方向に設定されている場合には、従動回転方向に設定されている回転体の周速度は、前記ブラシ回転体の周速度以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記ブラシ回転体から見て、前記像保持回転体及び回収回転体の回転方向がいずれも従動回転方向に設定されている場合には、前記ブラシ回転体の周速度は、前記像保持回転体及び回収回転体のいずれの周速度に対しても、同方向の速度差が設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクリーニング装置。
【請求項5】
前記像保持回転体は、その表面層が架橋樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項6】
前記像保持回転体に押し当てられる前の状態における前記ブラシ回転体のブラシ層と弾性体層とを合わせた総層厚をA、前記ブラシ層のブラシ毛の高さをBとし、前記像保持回転体に押し当てられた状態における前記ブラシ回転体のニップ部のブラシ層と弾性体層とを合わせた総層厚をCとすると、B<A−Cであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項7】
前記ブラシ回転体のブラシ層におけるブラシ毛は、斜毛処理されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項8】
前記ブラシ回転体のブラシ層におけるブラシ毛は、捲縮処理されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のクリーニング装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載のクリーニング装置と、このクリーニング装置にその表面がクリーニングされる像保持回転体と、該像保持回転体の表面を帯電する帯電手段と、帯電された像保持回転体に静電潜像を形成する露光手段と、静電潜像に現像剤を供給して静電潜像を可視化する現像手段と、可視化した現像像を中間転写体や記録用紙に転写する転写手段とを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−169746(P2010−169746A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9969(P2009−9969)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】